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水生微生物の電子顕微鏡観察のためのイオン液体を用いた前処理方法

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Academic year: 2021

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水生微生物の電子顕微鏡観察のためのイオン液体を用いた前処理方法

教科・ 領域教育専攻 生活“健康系コース(技術・工業 ・情報) 山 下 泰 史 1 .はじめに 今日,走査型電子顕微鏡

(SEM)

は,医学・生物 学分野の研究において欠くことのできない機器 として広く普及している1)。しかし,水生微生物 のような表面構造が柔らかく水分を含んでいる 試料を

SEM

で観察する際チャージアップや変形 が生じることが多いという問題がある。 その解決方法として,従来では,凍結乾燥法と 呼ばれる試料の前処理法が採られてきたが,この 方法を用いると多くの作業ステップと時間を要 する上に,蒸着装置や液体窒素などの様々な器具 や薬品が必要になる。 本研究では,従来の凍結乾燥法に比べて簡単に 行える前処理法としてイオン液体を用いた方法 に着目し,その方法が水生微生物の

SEM

観察に 適用可能な条件について検討した。

2

.

走査型電子顕微鏡

(SEM)

SEM

は,電子線を試料に照射する際に試料表 面から放出される2次電子や反射電子を検出す ることで,試料表面を観察する顕微鏡である。図

1

SEM

の原理図を示した。図

1

に示すように,

SEM

は電子銃,電子レンズ(集束レンズ,対物 レンズ),走査コイル,検出器から構成される。 電子銃によって電子線が生成される。電子銃の 模式 i~ を図 1 に示す。 細い (O.lmm 程度)タン グステン線のフィ ラメント(陰極)に電流を流す ととで, 2800K程度の高温に加熱して熱電子を 放出させる。対向して置いた金属板(陽極)に数 10kVの正の高電圧を印加することで熱電子を静 電加速し, 電子線を生成する。電子線は陽極中央 の孔を通過して引き出される。

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レシズ 図

1

SEM

の原理図 指導教員 宮本賢治 3.イオン液体について イオン液体(図2)は,常温で液体状態の塩で ある。蒸気圧が限りなく Oに近く、熱しでも、真 空下でも蒸発することが無い。そのゆえ,発揮し ない溶媒ならびに電解液として有機合成や電気 化学反応のための溶媒としての研究が盛んに行 われている。 当研究グループは,種々の電気化学反応にイオ ン液体を利用する研究を行ってきた。その研究を 推進する中で,イオン液体を電子顕微鏡で直接的 に観察できることを発見した。この現象を利用す るとイオン液体中での電気化学反応をinsituで 電子顕微鏡観察することが可能となる。

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図2 イオン液体 (EMI • BF4) イオン液体を用いた生体試料の観察例として ワカメが報告されており(図的,乾燥状態と濡 れた状態で明らかに形状が異なることが示され ている。また,昆虫や花粉,ネズミの繊維芽細胞 の観察例も報告されている。 図

3

イオン液体を用いたワカメの

SEM

画像

4

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イオン液体を用いた前処理方法

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一 品 一 四 占 z

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-本 a 一 -h J J 一 -L 口 一 m h

町 一 h J 一 T 7 一 明 プ 一 趨の鎚・を取り除く. 強曹*分量取り除<. 注怠:白銀乾織によりブランウ トンが干からびIiいよう にすること. 3固.り返す 鉱科台(lcmX1問。の上l二プラン ヲトンをSせ.自然乾燥させる.

1時間 2mlのピベットを用いてイオン議体 {..温度1'.,)を自粛蚤らす.

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初 分 臨 イオン漉体・19+エ!11-J~:現均 ハロゲンランプモ用いて、 工IJIールをJI,*させる. 図4 前処理方法

(2)

- 412 - 水生微生物を SEM観察するためにイオン液 体 ( EMI• BF4)を用いた前処理方法を開発し た。その手順を図4に示す。 まずプランクトンに付着している塩の結品を 取り除くために,フィルタにプランクトンを載 せてスポイトを用いて真水を掛ける。 次にイオン液体をエタノールで溶媒として, 重量比で 1%に希釈した溶液を試料に塗布する。 この作業によってプランクトン体内の水分をイ オン液体に置換し,SEM装置内でのプランクト ンの収縮による形状変化やチャージアップを抑 制するという理由から,置換は、 3回行う必要が ある。

5

.

実験結果 図4の作業手順で前処理したアルテミア・サリ ーナのSEM画像を図5に示す。アルテミア・サ リーナは,チャージアップすることなく,凹凸の ある表面の構造まで観察することができた。一方, イオン液体を塗布しない場合のアルテミア・サリ ーナのSEM画像を図6に示す。図6に示すよう に真空中で変形が生じて,元の形状とは大きく異 なることがわかる

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また,チャージアップの生じ た個所は白い線状として現れている。以上から, イオン液体を用いて適切な回数の置換を行うこ とで,水生微生物が真空内でも乾燥せず導電性を 保つことができた乙とが実験によって明らかに なった。 図5 画像 図6イオン液体を塗布しない場合の SEM画像 6.光学顕微鏡とSEMの比較 一般的にSEMを用いた観察と光学顕微鏡を用 いた観察には以下の違いがある。 (1)光学顕微鏡より SEMの方が解像度が高い ため生物の細かい部分の観察が行える。 (2)光学顕微鏡では,二次元的にしか像を捉え ることができない。 (3) SEMでは,三次元的な像が得ることができ るので表面の凹凸部分の観察も行える。 アルテミア・サリーナ,ミジンコ,ミカヅキの光 学顕微鏡による画像とSEM画像を図7に比較し た。上記の (2),(3)の違いが明白に現れてい ることが分かる。 (b)SEM 図7 アルテミア・サリーナの光学顕微鏡による 画像とSEM画像の比較 同様にイオン液体濃度 1%で水生微生物であ るミジンコの観察を行った。図8に示す。 図8 ミジンコ イオン液体濃度 1 %で同様にミジンコの観察 鵜を行ったところ三次元的な像が得ることがで きた。また光学顕微鏡では可視化することが出来 なかった表面の凹凸部分の観察も行えた。(図 8) に示す。 4.まとめ 水生生物の一種であるアルテミア・サリーナの SEM観察に対して,イオン液体を用いた前処理 法の適用を試みた結果,エタノールとの置換回数 やイオン液体濃度の最適化条件を明らかにした。 この最適化条件の下,簡易にかつ再現性よく SEM観察できることを実験的に確認した。

参照

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