254 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(66) タン バ オリ丹波 さ織(昭和
博士(医学) 乙第1313号平成4年10月16日
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
ヒト鼓室神経叢の形態学的研究 (主査)教授 石井 哲夫 (副査)教授 小林 愼雄,門間 和夫論 文 内 容 の 要 旨
目的 鼓室神経叢の形態学的観察の歴史は古いが,その生 理学的機能の全容は明らかにされていない.本研究で は電子顕微鏡による観察を含め,ヒトの鼓室神経叢を 多角的に観察し,その形態学的特徴から機能的,臨床 的意義を推測した. 対象および方法 ヒト側頭骨5個をdissectionにて走行を確認し,臨 床における鼓膜穿孔を通して隅角に神経叢が明瞭に視 認できる鼓膜写真33耳,側頭骨連続切片(水平断42耳, 垂直断3耳)の再構成を用いて鼓室神経叢の走行を観 察した.また手術的に採取した鼓室神経と舌咽神経舌 枝の電子顕微鏡による微細構造の観察と,神経線維の 計算と分析を行った. 結果 中鼓室での鼓室神経叢の走行は,鼓膜写真と水平断 連続切片による観察法で大凡一致した.主幹は1本の 型と分岐型とが約50%ずつ観察された.耳管枝,頸上 神経の観察される比率はそれぞれ約90%で,内耳窓枝, 鼓膜枝の存在は確認されなかった. 鼓室神経叢全体,特にアブミ二二より上方に多数の 小神経節細胞が存在したが,細胞数は個体差が大き かった.微細構造上神経節細胞は無穎粒小胞を含む神 経終末とのシナプス形成を認めた. 神経線維分析では,鼓室神経主幹の横断面積は, 0.126mm2でありその中の有髄線維は410本,無髄線維 は2,959本であった.同一横断面積の舌咽神経舌枝では 有髄983本,無髄785本であった.また無髄線維の Schwann cell unit(1つのSchwann cellが多数の軸索 を含む1単位)は鼓室神経477本,側枝257本であった. 有髄線維の太さについては,鼓室神経の直径は5~7 μmが最多で,最大値は16μmであった.舌枝は直径 4~6μmが最多で,最大値は20μmであった.無髄神経 のSchwann cell unitの太さは鼓室神経で2~4μm径 が最多で,舌枝は1~2μm径が最多であった. 考察 鼓室神経叢の走行および小神経節の存在は過去の報 告と一致した.微細構造の上から神経節細胞は自律神 経系であり,副交感性であると推測する.そして中耳 での機能は,鼓室粘膜,耳管粘膜の血管拡張および腺 分泌で,滲出液の鼓室内貯留,耳管狭窄に関与すると 思われる.神経線維分析の結果,鼓室神経の多数の無 髄線維は知覚線維で,その一部は内臓知覚系で中耳の 恒常性維持に係わる機能を持つと推測する. 結語 鼓室神経叢の解剖学的な観察を多角的に行った.鼓 室神経叢には副交感系と思われる小神経節細胞が存在 し,また知覚性の多数の無髄線維が存在した.鼓室神 経のこれら知覚成分は中耳機能の維持に携わると考え る. 一888一255