〔綜 説〕
(霰ξ璽灘駕翻言)
顕微鏡的組織化学の研究法
東京女子医科大学解剖学教室教 授 飯
イイ沼 守
ヌマ モリ(受付昭和32年7月10日)
夫 オ 組織化学と云う言葉は二通りに用いられてい る。一つは顕微鏡的組織化学で,他は生化学的組 織化学である。顕微鏡的組織化学は顕微鏡で捕え うる形態と,顕微鏡町に認め得る物質の存在とを 結びつける学問で,生化学的組織化学の後を追う もので,まだ充分な発達をとげていないD(以下 組織化学を云う言葉は顕微鏡組織化学を意味す る)組織化学の歴史は古いが,その研究方法を一一一 つにまとめたものとしてはLisonが1936年に出 したt’Histochimie animalei’がその最初である。 高松,Gomoriによる燐酸酵素の検出法の考案, Feulgenのデソキシリボ核酸の染色法の発蓑があ いついで行われ,又Casperssonの紫外線を用い ての細胞内の核酸に関する偉大な研究が行われ,更に第二次世界大戦後Glick, Lillie, Pearse,
Gomori等により組織化学の研究法に関する優秀 な図書が書かれ,又専門雑誌として米国では」. Histochemistry and Cytochemistry,東独では
Acta hiStochemica,フランスではAnn. d’His− tochimie,イタリーではRivista di istochimica が刊行されている。吾国における組織化学の研究 は病理学者によって多くのものがはじめられてい る。高松教授の燐酸酵素,石川教授の諸種物質の 検出法ならびにそれの発生学への応用,浜崎教授 のケトエノール物質の研究,今,武田教授の組織 銀反応,岡本教授の有機試薬による金属の検出, 竹屋教授一派の各種酵素の検出等が有名であり, 現在では解剖,病理あるいは臨床の研究において 組織化学的研究が次第にH常行われるようになっ てきた。専門の学会としては細胞化学会があり, 機関誌として細胞化学シンポジウムを出している が,外国のものと異り,生化学的細胞化学の研究 発表が多く,形態学を学ぶ者にとって物足りなき を感じきせている。 組織化学の研究方法,即ち各種物質を組織切片 上で検出する方法を学ぶのも一つの学問であり得 るが,物質の組織切片上における局在性,或いは 生理的,病理的変化を検討する事がより興味深い 事と思う。勿論新しい方法なくしては,学問の進 歩はないのであるが,方法論に終始する事は避け るべきではないか。組織化学の研究は難かしいよ うに考える人もあるが,当る意味においてはむし ろやさしい。組織学的にヘマトキシリン・エオジ ン染色を最も良好な状態に作り上げる事はかなり 困難である。まして細胞学的な標本,例えばミト コンドリア,Golgi装置を見る為めには,染めた り色ぬきをしたり,並々ならぬ苦労及びコッを必 要とする。いわば一種の芸術品を作るに似てい る。組織化学的の標本を作るには処方,時間,温 度等を一定にすればよい。一定の処理条件を守る 事が難かしいのであって,標本を作る事が難かし いのではない。しかし,組織学的或いは細胞学的 標本を見て理解し得る眼をもつていないとジ物質 の局在性を見極める事は不可能である。 組織化学の研究方法は色々あるが,その性質よ り分ければ次のようになる。 1.分析化学,又は生化学で行われる反応と同 じ原理によるもの。鉄の検出,或いは酵素活性の
Morio, IHNUMA (Department of Anatomy, Tokyo Women’s Medical College) : Methods in micro− scopic histochemistry.
検出がそれである。しかし顕微鏡で見る場合は沈 澱である必要があり,叉白色の沈澱では位相差顕 微鏡で見なければならないので,反応生成物が有 色沈澱でなければならない。その為原法とは幾分 異った方法になっているのが普通である。 2. ある物質を特異的に湿る事が経験的に分っ ているが,その反応の本体が未解決のもの。グリ コーゲンを染めるBestのカルミン染色,ムチン を染めるムチカルミンの如きもの。 3. 脂肪の染色は多くは,染料が脂肪にとける と云う物理的性状を利用したものである。 4。Caspersson一派の行っている紫外線顕微 測光法では1μ2中に存在する核酸の測定ができる が,一般的な方法ではない。 5.放射性同位元素を用いるラジオオートグラ フ法は,或る分野においては極めて有用である。 6.組織切片を灰化して,出来た灰像を分析す る事によって無機物質の細胞内における局在性を 知る事ができる。鉄,硅素はこの顕微灰化法でた やすく認め得る。 無機物質の検出法 1. カリウム……新鮮凍結切片に亜硝酸ソー ダ,硝酸コバルト等を作用させて,亜硝酸コバル トカリウムの沈澱を作り,これを硫化コバルトに 変えて鏡検する。カリウム塩の拡散がある為仲 働よい標本を作り得ない。 2. マグネシウム……無水アルコール固定の切 片をチタン黄A叉はGで染めると樫官話は赤色に 回る。(岡本,妹尾,芝田法) 3. カルシウム……カルシウムの検出法には古 来色々のものが考案されているが,現在最:もよく 用いられているK:6ssaの方法は燐酸の検出法で あって,燐酸カルシウムの検出にはすぐれている が他のカルシウム塩の検出は困難である。K6ssa の法は切片を硝酸銀溶液につけて,日光にあて, 黒化した部分がカルシウムであるとする。硝酸銀 処理で黒くなるものは他にもあるので,適当な方 法を用いて鑑別しなければならない。 4. 鉄……人体内にはかなりの量の鉄が含有さ れている。その鉄化合物中には鉄イオンが直々分 離iせず,検出しにくいものも多い。鉄の証明法に は数多くの研究がある。その中のPerls−Stieda 法はゆるい結合状態にある鉄の検出法で,黄血塩 を作用させてベルリン青を沈澱させる。赤血塩を 作用させて切片上にターンブル青を作るのがTi− rmann−Schmelzer法である。 結合の強い所謂仮面鉄の検出法には岡本法があ る。これは切片に過硫酸アンモニウムと食塩との 混合溶液よりでるガス(CI,及び03)を切片に作用 させてからP6rls−Stieda法を行う。 5.銅……胎児叉は肝硬変症の肝には銅を含有 しているが,岡本,宇多村のP一ジメチルアミノベ ンチリデン・ロダニンを用いて赤褐色∼赤紫色に 染め出す事が出来る。 6.亜鉛……人間の膵のランゲルハンス氏島に は亜鉛が大量に存在する。その他の臓器において も検出せられている。岡本等の亜鉛の有機試薬で あるジフエニルチオカルバチツド,ジチゾンを用 いて赤色の沈澱にして検出できる。 7.水銀……生体に外部より与えられた水銀の 検出が目的であって,硫化水素を用いる方法と, 岡本等の有機試薬を用いる方法とがある。 その他,アルミニウム,トリウム,マンガン, ニッケル,金,銀,鉛,アンチモン,錫,タリウ ム,カドミウム,パラジウム,蒼鉛,砒素,硅 素,塩素,臭素,沃素,燐酸等が薄切切片上で顕 微鏡的に検出しうる。 核酸の検出法 一般的に云ってデソキシリボ核酸(D:NA)は核 の染色質に,リボ核酸(RNA)は細胞形質及び核 小体に存在する。 デソキシリボ核酸の検出には,幾分の疑問が提出 されてはいるがFeu}gen反応が多く用いられてい る。この反応はデソキシリボ核酸を加水分解し, 糖成分より生じたアルデヒドをSchiffの試薬(無 色のフクシン)で検出するのであって極めて美麗 な染色を示す。加水分解の時間により染色され方 が異ると云うが,本法を用いて染るのはデソキシ リボ核酸であると老えてよい。 古くより用いられているUnnaのピロニン・メ チル緑混液による染色はDNAはメチル緑により 青く,RNAはピロニンにより赤く染る事が分つ た。しかし,両種色素の純度,混合比,溶液濃度 染色時間等の問題があり実際の染色はかなりむつ かしい。 Turchini等の9一メチルー2,3,7一トリヒドロキ シー6一フルオロンを用いて染めれば,D:NAは紫 に,R:NAは黄→赤に染り,その染色過程は比較 一 346 一
的だやすいが,染めわけられた色が見分けにくい 難点がある。 チオニン又はトルイジンブルーの適当濃度の水
溶液を用いて染めればDNAは青く, RNAは赤
紫に煎るが,溶液のpH,染色時間,アルコール に入れる時三等で,染り方に差が出来仲々一定の 結果を得がたい。 いずれにしても染色されたものがDNA,又は R:NAであることをたしかめる為に,結晶性のデ ソキシリボヌクレアーゼ,リボヌクレアーゼを用 いて消化し,消化後染色されなければD:NA或は RNAであると副えてよい。しかしかかる酵素は 極めて高価であり,又何時でも入手し得るもので はないので,過塩素酸,食塩三塩化酪酸等によ る除去法がこころみられているが特異性は疑われ ている。 低分子DNAの検出には浜崎の方法がある。 アミノ酸の検出法 αアミノ酸の検出にニンヒドリン(紫色),アロ キサン(赤色)の呈色反応が一般に用いられている が,その際アルデヒドが出来る事に安聞及び市川 は著目して,そのアルデヒドをSchiffの試薬で 検出する事を添え出した。この方法で染めた場合 一見エオジン染色の如き感を与える。Mazia等は ブPムフエノル青に水銀を結合せしめたもので染 色を行うと,α一アミノ酸のみが染ると云う。この 染色は前述のニンヒドリンSchiff法或はアロ キサンSchiff法にくらべ染りの階調が豊富であ る。SH基の検出法
優秀な検出法がないが,Chもvremont et Fre− deric法は次の原理にもとつく。 フエワシアン化物をSH基で還元しフェロシア ン化物にし,それに三価のフェリイオンをつけて ベルリン青の沈澱を作る。他の還元性の物質も染 るので,対照としてSH基を封鎖してから本法を 行う必要がある。SS基の検出法
Pearseは過蟻酸をもちいて酸化してアルデヒ ドをつくり,それにSchiffの試薬を作用させて 赤心させる。この方法で燐脂質も織るので鑑別を 要する。 炭水化物の検出法 この中で比較的たやすく検出しうるのは多糖 類,糖蛋白,糖脂質である。 これらを検出するのに現代の方法の原理は大体 おなじで酸化してアルデヒドを作り,それをSc− hiff試薬で染め出すのである。酸化剤として用い られるものは四品酸鉛,蒼:鉛酸ソーダ,四酪酸マ ンガン,クローム酸,過ヨード酸であるが,その 中でも過ヨード酸はその反応の機横が化学的に明 らかにせられており,その酸化作用がある程度以 上進まないと云われ,極めてすぐれた方法であ る。ただ糖そのものの検出法でなく,その構成成 分の一部の検出にすぎず糖の特異的な反応でない と云う反論もあるが通常出るものは多糖類である と考えて差支えなさそうである。 ブドー糖……極めて水溶性で組織に固定する事 が難しいが,岡本等は水酸化バリウム,酷酸鉛等 を以て固定し,後硝酸銀で染めるのに成功した。 グリコーゲン……グリコーゲン不溶性の固定液 で組織を固定してから,過ヨード酸Schiff法官 糖類の検出法で染めだす。グリコーゲンのみを染 め出す方法はないから,対照として必ずグリコー ゲンの消化試験(唾液或はジアスターゼを用いる) を行わねばならない。 ピアルウロン酸……Haleは鉄イオンがピアル ウロン酸に特異的に吸着する事を利用して染色 し,叉,大野等は,あるpHでトルイジンブルー が異調染色をする事より他の多糖類とピアルウロ ン酸とを鑑別している。その他種々の方法がある が,切片にする場合,固定液をよく吟味しなけれ ばならない。ピアルウロン酸を固定する,つまり 逃げ出さないような液を用いなければならない。 過ヨード酸Schiff法でもピアルウロン酸は染る と思われるが,一部の人は染らないと云ってい る。いずれにしてもピアルロニダーゼ消化法を行 って対照試験してみる必要がある。 肪脂の検出法 色々の脂肪があるが一一一・般的に脂肪を染めるもの としてはスダンIH等の脂溶性のものがあり,最近 はスダン黒がよく用いられる。色素をとかすアル コールに脂肪も溶けるので,染色しうる脂肪がか なりの量存在している官邸のみ検出しうる。ホル マリン固定で凍結切片を作って染めても,存在す る脂肪のすべてを染め出し得ない。古くより細胞 学において用いられているオスミウム酸を含む固 定液を用いればよく脂肪が固定染色される。細胞 一847一内に存在する微少脂肪滴も認める事ができる。ス ダン系統の色素を用いる場合,溶媒としてアルコ ールを用いないエ:夫が多くの人によってなされて いる。 脂肪酸類……脂肪酸はアルコール,エーテルに とけるが,カルシウム石鹸にすれば不溶性にな る。この原理を用いて多くの脂肪酸の検出法が考 案されている。 コレステリン・・…偏光顕微鏡が古くより用いら れている。染色法には硫酸を用いる方法がいくつ か発表されているが,永久標本を作り得ない。 類脂肪……重クnム酸塩を媒染剤として用いて ヘマトキシリンで染める事が出来,種々の:方法が ある。 ビタミンの検出法 ビタミンA……ホルマリン固定組織の凍結切片 をつくり,紫外線を当てると,このものが存在す れば輝緑色に螢光を発する。その螢光は10∼60秒 で消失する。又三塩化アンチモン,或いは硫酸を 加えて青く染める方法がある。 ビタミンB1……赤1血塩で酸化せしめて,青色 の螢光を螢光顕微鏡でみる。パラフィン切片で無 作しうる。 ビタミンB2……ホルマリン固定の凍結切片を 還元液に入れてロイコ・フラビンをつくり,更に 酸化して赤いPドフラビンを作る。 ビタミンC……凍結切片又は組織塊を酸性の硝 酸銀溶液で処理すると,硝酸銀がビタミンCによ り還元されて黒血する。 酵素の検出法 現代の組織化学で重要な役目をしているのは酵 素の検出であって,エステラーゼで染め出し得る ものは,アルカリ性燐酸酵素,酸性燐酸酵素,5一 ヌクレオチダーゼ,アルドラーゼ,アデノシン三 燐酸酵素,ホスホアミダーゼ,リパーゼ,コリン エステラーゼ,スルフアターゼ等,グリコシダー ゼではβ一グルク戸戸ダーゼ,β一ガラクトシダー ゼ,β一グルコシダー前出,酸化酵素ではチロジナ ーゼ,アミン酸化酵素,過酸化酵素,チトクロー ム酸化酵素等である。 エステラーゼ検出法の原理はエステルを酵素活 性により分解し,できた酸又はアル1 一一ルを有色 沈澱として顕微鏡下にとらえる。酸を検出するに は金属イオンを加えて沈澱とし,更にそれを硫化 物(有色の沈澱)とする。アルコールの検出には ジアゾ化合物と反応させてアゾ色素を作る。 アルカリ性燐酸酵素……pH 9前後で検出しう る燐酸酵素である。基質雨中にある燐酸エステル を切片の燐酸酵素が分解して出来た燐酸を,燐酸 カルシウムにし,次に燐酸の金属塩を作り,更に 金属の硫化物の有色沈澱を生ぜしめて鏡検する。 この方法で用いる基質はグリセロ燐酸ソーダであ る。最終の生成物は硫化コバルトで,染め上るま でに色々の問題がある。酵素の拡散,コバルト塩 の物理的吸着,自家基質による反応等が考えられ る。従って染色の対照として,切片を熱処理して 酵素活性をなくしてから染め,或いは基質液より 基質を除いて染めたりしなければならない。 酵素活性により生じたアルコールの検出法は次 の如くする。βナフトールの燐酸塩より酵素の作 用でβナフトールを遊離せしめ,それにジアゾ化 した又ナフチチールアミンを化合せしめてアゾ色 素を作る。アゾ色素法は酵素活性が弱い出合は検 出しがたいQ (伺骨組織のアルカリ性燐酸酵素も脱灰後検出す る方法がいくつか考えられている)。 酸性燐酸酵素……pH 5前後で作用する燐酸酵 素で,アルカリ性燐酸酵素よりも組織化学的に検 出しにくいlGomoriの改良法は最も鋭敏な検出 法である。この方法は酵素活性によりグリセロ燐 酸ソーダを分解してできた燐酸に鉛をつけ,燐酸 鉛を硫化鉛に変えて顕微鏡で見るのである。ここ でも鉛の酵素活性によらない沈着がおこる事があ るので対照試験は必ず行わねばならない。アゾ色 素法もいくつかある。 5一ヌクレオチダーゼ……アデノシン5鱗酸を基 質として用い,燐酸酵素と同じ原理で染色する。 燐酸酵素とは異った局在性を示す。 デソキシリボ核酸燐酸酵素,リボ核酸燐酸酵素 はアルカリ性,及び酸性域で働くものが,同じ方 法で検出されている。 アデノシン三燐酸酵素……ATPを基質として 用い,ホスハ「 ^ー一一 tf同様の原理で検出しうるが, その特異性を疑う人もある。 リパーゼ……脂肪酸の水溶性エステル(Tween 40,60,80等)を基質とし,不溶性の石鹸をつく って,それを更に有色沈澱に変える。パラフィン ・切片で実施しうる。 一一 848 一
コリンエステラーゼ……凍結切片を用いた割 合,リパーゼの証明法でも,コリンエステラーゼ の活性のあらわれる揚合がある。コリンエステラ ーゼに特異的に働く抑制剤を使用してたしかめな くてはならない。普通基質として使用するもの は,ミリストイルコリン,ラウロイルコリン,パ ルミトイルコリン,ステアPtイルコリンである。 又基質にアセチルチオコリンを用い,抑制剤(非 特異性コリンエステラーゼに対する)としてジイ ソプロピルフルオロ燐酸を用いる事により,特異 性コリンエステラーゼを染め出し得る。非特異性 コリンエステラー一一 tiと,特異性コリンエステラー ゼとを組織切片上で区別して見得る。 ホスホリラーゼ……ブドウ糖燐酸を基質として 用い酵素活性により生じたグリコーゲンをたくみ に検出する。汗腺において興味ある所見が得られ ている。 オキシダーゼ……水素の移動に関係ある酵素で ある。ジメチルパラフ馬齢レンジアミンとαナフ ts 一一ルの混合溶液に組織のオキシダーゼを作用さ せて青色の色素を作らせる。この反応は酵素活性 のない揚合でも顕色する事があるから,古くより 色々の批判がある。 過酸化酵素……過酸化物の存在している時,ベ ンチジンその他の物質を酸化する酵素である。 コハク酸脱水素酵素……ネオテトラゾリウム等 の試薬に,酵素活性でコハク酸よりでた水素がつ いて還元し,有色沈澱をつくって見る。 β一グルクロニダーゼ……6一プロモー2一ナフトー ルグルクUニドに組織の酵素が作用し,分解生成 物である6一プロモー2一ナフトールからアゾ色素を を作らせて染める。 炭酸脱水酵素……重炭酸コバルト等を基質とし て用い,酵素活性により生じた炭酸コバルト等を 染め出す。 ペプチダーゼ……この酵素の検出法は少し変っ ている。ポリペプチツドをペプチダーゼが分解す る時,コバルトがその作用を促進すると云う事実 があるので,・基質液中にコバルト塩を入れ,その コパル’g塩の吸着状況を検出し,酵素活性を知る のである。 結 語 組織化学的標本の製作には時間,温度,溶液濃 度等が規定されており,その定められた通りの方 法を行えば,色々の物質を検出し,それら物質 と,顕微鏡的形態との関係を研究しうるはずであ る。しかし実際はながなか困難である。切片上の 微量物質,或は酵素活性が分らない原因で消失し たり,入手し得る薬品が不純な事多く,全く入手 し得ない揚合も少くない。酵素活性を検出する揚 合,凍結切片を作らねばならない時は,材料及び 切片の厚さで制約を受け,研究の分野をかぎられ る。従って現在の日本にわいて日常行い得る研究 :方法は極めて限られたもののみである。 組織化学の進歩は生化学,分析化学の癸達によ ってのみ可能である。より多くの物質を,疎く微 量の物質を,生活時と同様の局在性を以て証明し 得るようになっていくと思う。現在はまだ物質の 検出が論ぜられていて,その物質と,古典的組織 学,細胞学でいわれている形態との結びつきが不 充分である。電子顕微鏡写真技術の発達とあいま って,超微細構造と,物質との関係が明らかにせ られるのもまもない事であろう。 文 献 組織化学的技術書(個々の研究法の原著は極めて多 数であるので単行本のみ上げる)。
1) Glick, D.:Techniques of histo−and cytoch− emistry. New York Interscience Publishers,
Inc. (1949)
2) Gomori, G. : Microscopic histochemistry, principles and practice. Univ. Chicago press, Chicago. (1952)
3)市川 牧;細胞化学一その理論と術式一本
田書店,東京(1953)
4)石川太刀雄:動物組織化学実験法,生物学実験 法講座皿D,中山書店,東京(1955)
5) liiTiie, R.D.: Histopathologic technic and practical histochemistry. The Blakiston Com−
pany, New Yorl〈. (1954)
6) Lison, L.:Histochemie et cytochemie ani−
male. Gauthier Villars, Paris. (1953)
7)岡田耕造他:顕微鏡的組織化学,医学書院,東 京(1955)
8) Pearse, A.G.E.: Histochemistry, theoretical and applied. 」. & A. Churchill Ltd. (1954)
9) Romeis, B.: Mikroskopische Technik, Leibnitz Verl., Mlinchen (1948)
10)山田李彌他:新しい組織学研究法,医歯薬出版 株式会社,:東京(1955) ノ