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脊椎カリエスにおける腹部異常石灰陰影について

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72 (東京女医大虚第28巻第8号頁632−638昭和33年8月〉

脊椎カリエスにおける腹部異常

石茨陰影に/)いて

東京女子医大整形外科教室(主任 森崎直木教授)

イイ .島 ジマ

【シ

(受付昭和33年7月7H)

脊椎カリエスのレ持寄真読影の際に,腹部より 骨盤部にかけて見られる異常陰影には,脊椎ゐリ エスに直接由来するものと,直接関係のないもの とがある。前者には腐骨,二野,膿瘍のr部石灰

化などがあり,後者には尿路結石症,腎結核の

石灰化,リンパ節の石灰化せるもの,静脈石,胆 石,腸内容物等がある。 われわれはこの中,従来より屡々問題とされて いる尿路結石症を中心として,之等異常陰影につ き比較検討を試みた。

症 例

1) 脊椎カリエスに由来する異常石灰像 症例1 26才 :女 初発症状は腰痛である。2年後東大整形外科にて第 3,4回忌カリエスと診断されギプスベット使用,パ スを約1年川いた後,当科に入院した。当時は左腸骨 窩に波動抵抗をふれ,左腸腰筋拘縮があった。レ線写 真は第1図のごとく,第4,5腰椎の左方に異常陰影 を示す。 この様に病巣部椎体に近くパラパラと散在し,病巣 部から離れて上方に拡がっていないのは,病巣より生 じた腐骨の典型的な影像であると考えられる。 この場合,膿瘍造影術,あるいは鍍孔造影術を行っ て,第2図の様に石灰像が造影剤影像内に含まれれば 更に確かである。しかしこれも絶対的とはいえない。 すなわち掻爬を行って腐骨を捌出し(第3図),,術後の レ三三(第4図)において,その影像が減少乃至消失 しているのを確かめて,始めて確認出来るのである。 しかし次の症例で示す様に,腐骨は心ずしも,レ線 上陰影を現わすとは限らない。

症例2 31才 女

20才より肺結核で某療養所に入院していたが,肺結 核好転し,第2∼5蝉椎カリエスの治療のため当科に 入院。当時両側腸骨窩に波動があった。入院後2ヵ月 にて両腸骨窩の掻爬を行った6術前レ線写真(第5図) では,病巣左側のみに一コの大きな異常陰影が認めら れるが,術後のヒ線写真(第6図)ではとの陰影は消 失している。「しかし術時第7図に示す様な多量の腐骨 を両側から掻爬した。術前の第5図にはこの多量の腐 骨を想像させる様な異常陰影は.見当らない。 2)「脊椎カリエスに直接由来しない異常石灰像 イ)尿路結石症 上記のごとき脊椎カリエスに直接由来する陰影 と鑑別を要する最:も重要なものは,尿路結石であ る。 脊椎カリエスのレ線写真における異常陰影につ いて,尿路結石か,どうかを鑑別する時には,ま ず,泌尿器の解剖学釣位置に沿っているか,どう かを一つの根拠とすべきであるが,形,数等の上 から前者との区別は困難で,痂痛,血尿等の型幅 症状は勿論,尿検査所見,更にはピエログラフィ ー,プノイモグラフィー等にも依らなければなら ない。以下脊椎カリエスに腎結石症を合併した旧 例をあげよう。 症例341才 女 (第3,4,5腰椎カリエス) 昭和28年頃腰痛あり,昭和29年8月,左大腿部に 痩孔を生じ,昭和29年10月当科入院,当時左腸骨窩 に波動あり,左大腿蜜孔より大最の膿汁を分泌し,入 院以後絶対安静にて化学療法を行っていた。入鴎後1 年9力編突然,両側腎部の疵痛と血尿があった。第

Toshio IIJIMA(Department of Orthopedic Surgery, Tokyo Women’s PmMedical College):On the

ヤ チ

pathological calcific shadows observed in the area of the abdoπ1en in the patient of the tuberculosis

(2)

8図の様な異常陰影を認めたので静脈性ピエ・グラブ イー(第9.図)を行い,腎結石と診断された。入院当 初からのレ線像を読み返すと,入院後略3ヵ月にて, 第10図のごとく病巣部から3椎体も離れた頭側部に, 位農的には腎結石の疑いのある験影が准在したが,こ れが漸次増大して約1年1町月後には(第11図)腎蓋 の形が見られる。そこで,この腰痛発作後は出来うる 限「り下肢の運動,時々の体位変換を行うように努め た。発作後1ヵ月(以下発作後を略)腎孟:部の石灰化 像には変化がなかった。当時脊椎の病勢は漸次好転し 痩孔も時に閉鎖するようになっており,尿中にsand があり鏡検にてT wa結晶を認めたが,しかし3ヵ月半 金より陰影は減少しはじめた。』約10力士後脊椎固定術 を行い,発作の1年後儲位,足踏練習をはじめてから 陰影は著明に減少し,1年3ヵ月後には,第12図に見 るごとく,左方に2コの陰影を認めうるのみとなり, 1年7ヵ月半の第13図では,疑わしい陰影を見出す事 は出来なくなった。しかしこの間,最初の発作後7カ 月,1年3ヵ月,1年5ヵ月に頭痛発作があり,その 度に小豆大脳の結石を排出した。 症例429才 男(第4,5腰椎カリ午ス、 昭和28年3月,腰痛あり,昭和30年6月より両側 腸骨窩に流注膿瘍を生じ,、臥床していた。昭和30年10 月13日当科入院。入院時(第14図)すでに病巣部に 近い多数の陰影の他に,戯評部陰影に気付いた。入院 後5ヵ月にて病痛,血尿があり,その1ヵ月後の静脈 性腎孟造影像によれば,第15図のように右腎部陰影の 少なくとも一部は腎結石とは決め難い。なお,病巣部 に近い陰影も尿管との関係はない。しかしその直後, 尿中に粟粒大結石1コが排出された。 症例553才 男(第4,5腰椎カリエス) 18年前,第4,5腰椎カリエスの診断にて約1年間 臥床したことがある。3年前から左大転子部に腫脹あ り,昭和31年6月9日来院,左大転子結核の診断に て入院,腰椎部はすでに塊椎を形成し治癒している。 入院時すでに右専意に陰影(第16図)がある。静脈可 融孟造影術により(第17図)腎結石と診断されたが既 往にも,その後現在迄も臨床症状に正常は認められな い。

症例631才女(第2,3腰椎カリエス)

昭和31年7・月9日腰部に激痛あり,3日後入院し た。3年前にも同様の発作があったといい,落痛は一 見尿路結石による疵痛発作である。入院時所見は第2 腰椎に圧痛,叩打痛があり,レ線写真(第18図)に第 2,3腰椎々跳板狭少があるのみにて第5腰椎右横突 起先端部に尿管結石を疑わしめる陰影があった。静脈 性腎孟造影術(第19図)によれば,尿管は上記陰影を 避けて通っている上に,尿所見に変化なきおめプ輸尿 管結石は否定された。この例はその後冷性膿瘍1を生 じ,腰椎カリエスなることが確認された。 m ) Beckenflecke 骨盤部の異常陰影として第20図の様に,小さな

丸い陰影を呈するBeckenfleckeと称するものが

ある。静脈結石,或いはリンパ節の石灰化による ものといわれている。 考 按・

脊椎カリエスと尿路結石との関係について

Schulzeは,脊椎カリエス47心中,尿路結石患者

は6例(12.7%)であり,罹患椎は腰椎5例,胸

椎1例となっているが,われわれの例では131藩

中に3例(2.3%)の少数しか発見し得なかった。 これらは記すべて腰椎に病巣を有し’ている。 脊椎カリエスの如く,長期臥床を要する患者に わいては,尿停滞,高石灰尿,尿路の細菌感染等 が原因となり結石形成を来すといわれているが,

Herrmansdorfは骨折,骨髄炎,骨関節結核等の

長期臥床患者と尿路結石形成とを関係づける確実 な根拠がないといっている。 尿停滞の予防としては,第一に充分に水分を与 えることであって,楠によると長期臥床の場合,

初診6∼12週の問に結石形成がされやすく,特に

この頃には水分摂取に意を用いるべきだとしてお り,土屋氏は結石核は非常に短い時間に形成され るので,僅か一時の減尿さえも起さぬようにする

ことが大切であるとしSchulzは安静を必要とす

る患者には毎朝300ccの水を与えよとさえいって

いる。

しかしSchuizによると,ギブスベットに臥床

中の患者は排尿回教を減らそうとして屡々水分摂

取をひかえ,特に婦人は1日の排尿を1回しか行

わぬものさえあるとしている。我々の結石例,す

なわち第3,4,5例においては排尿回教は5∼

6回で特に少ないものは見られない。. つぎに身体の位置の変換により尿停滞,特に石 灰塩の停潜を防ぐことで,楠は2週間に一度位, 頭,足の交互挙上,、或は背腹を交代せしめて数時 間わくことをすすめている。

高カルシウム尿についてMeyer.及びMorgensen

は骨関節結核の急性期はほとんど高カルシウム尿 であり,慢性期になると不定であるが,鎮静期に は尿中カルシウムは正常値になっているという。

(3)

74

結石の証明された症例中,第3例の発作直後には

結石の増大.しつつあるためか,血沈1時間値50 粍,左腸骨窩屡孔より膿汁分泌多量,.未だ急性期 を脱せず,尿中カルシウム値,.1日量:681醒にて

高く,結石の増大をみない第4例は血沈1時間値

15粍で鎮静期にあって,尿中カルシウム値127鷹

で普通である。. 著者の第3例は,入院時尿所見に変化はなく, 絶対安静3ヵ月.後,レ線上にはじめて腎結石の陰 影を認めるこ.とができた。この頃尿検査は行って

いない。入院後1年9ヵ月で,発作を生じた頃に

は病勢なほ盛んで,高カルシウム尿であったが, その1カ月後頃より脊椎カワエスも漸次好転し, 叉下肢運動,体位変換を行わしめたためか,発作

後3カ月半よら漸次,腎結石の陰影は減少し,特

に坐位,足踏練習.を.は.じめてから消退の.度は進

み,1.年9ヵ月半後,すなわち陰影発現以後3年

3カ月後には尿所見,レ線写真共に正常となっ

たb

結 ・語

以上脊椎カリエスの際の腹部より骨盤部にかけ ての読影に.際しては,脊椎カリエスに直接原因し ない陰影,殊に尿路結石について考慮をはらう必 要を強調すると共に数例の特異なレ線像を示して 説明した。 本稿は森崎教授の御指導,御検閲を賜り,また東京 逓信病院土屋文雄.博士め御教示を頂きました。深く感 謝申し上げます。

文 献

1)楠 隆光:尿路結石癒・‘自本医書出版社(昭24) 2)・土屋女雄:.腎臓結石め発生原因,診断と治療, 42, 383 (目召.29)

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