• 検索結果がありません。

Kluyveromyces marxianusを用いたホエイ由来新規発酵飲料の開発と複合型官能評価の応用

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "Kluyveromyces marxianusを用いたホエイ由来新規発酵飲料の開発と複合型官能評価の応用"

Copied!
94
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

士 論 文

Kluyveromyces marxianus を用いたホエイ由来

新規発酵飲料の開発と複合型官能評価の応用

(Application of multiple sensory evaluations to

produce fermented whey-based beverages using

Kluyveromyces marxianus)

2020 年 9 月

立命館大学大学院生命科学研究科

生命科学専攻博士課程後期課程

(2)

立命館大学審査博士論文

Kluyveromyces marxianus を用いたホエイ由来

新規発酵飲料の開発と複合型官能評価の応用

(Application of multiple sensory evaluations to

produce fermented whey-based beverages using

Kluyveromyces marxianus)

2020 年 9 月

September 2020

立命館大学大学院生命科学研究科

生命科学専攻博士課程後期課程

Doctoral Program in Advanced Life Sciences

Graduate School of Life Sciences

Ritsumeikan University

山畑 直樹

YAMAHATA Naoki

研究指導教員:若山 守 教授

(3)

1

チーズ生産の副産物であるホエイを利用するために、様々なホエイ由来飲料が開発され てきた。しかし、ホエイ自体の嗜好性が低いために、ホエイ飲料の嗜好性を向上させる ためのアプローチが必要である。本研究では、純粋培養した Kluyveromyces marxianus NBRC 1735 で単一のホエイを発酵させ、複合型官能評価を用いることで、嗜好性の高い ホエイ由来発酵飲料を開発できる条件を決定した。最適な発酵条件は、ホエイ原料とし て脱塩ホエイを用い、基質濃度20% w/v、発酵温度 30℃、初期 pH 7 という条件であっ た。また、本研究で開発したホエイ由来発酵飲料の保存期間は、最大4 週間であるとわ かった。発酵産物の成分分析の結果、分枝鎖アミノ酸や含硫アミノ酸を含み、総アミノ 酸量は310.72 mg/L であり、香気成分としてアセトアルデヒド (4.71 mg/L)、n-プロピル アルコール (31.86 mg/L)、イソブチルアルコール (132.95 mg/L)、イソアミルアルコール (101.56 mg/L)、2-フェニルエチルアルコール (18.24 mg/L)、酢酸エチル (39.25 mg/L)、酢 酸2-フェニルエチル (8.88 mg/L) を含むことがわかった。また、抗酸化能は 24.6 µmol TE/100 mL であり、残存タンパク質としてウシ血清アルブミン、β-ラクトグロブリン、 および α-ラクトアルブミンを含むことが明らかになった。本研究において提唱した複 合型官能評価を用いることで、嗜好性と強度の相関を明らかにでき、最適条件の判断の 根拠を増やすことができる。

(4)

2

1. 序論 ... 4 2. 実験方法 ... 15 2.1. 菌株・培地 ... 15 2.2. ホエイ発酵 ... 16 2.2.1. 原料ホエイの選択 ... 17 2.2.2. 基質濃度の決定 ... 17 2.2.3. 至適発酵温度の決定 ... 18 2.2.4. 至適初期pH の決定 ... 18 2.2.5. 保存期間の評価 ... 19 2.3. 官能評価... 20 2.3.1. 原料ホエイの選択 ... 21 2.3.2. 基質濃度の決定 ... 23 2.3.3. 至適初期pH の決定 ... 24 2.3.4. 保存期間の評価 ... 26 2.4. 統計分析... 27 2.4.1. 官能評価 (ノンパラメトリック検定) ... 28 2.4.2. 嗜好性と強度の相関 ... 28 2.4.3. 順位グラフ ... 29 2.5. 成分分析... 33 2.5.1. ラクトース定量 ... 34 2.5.2. エタノール定量 ... 35 2.5.3. pH 測定 ... 35 2.5.4. アミノ酸定量 ... 36 2.5.5. 香気成分定量 ... 38 2.5.6. 抗酸化能の評価 ... 40 2.5.7. 残存タンパク質の確認 ... 41

(5)

3

3. 結果および考察 ... 43 3.1. 原料ホエイの選択 ... 43 3.1.1. 発酵試験 ... 44 3.1.2. 官能評価 ... 45 3.2. 基質濃度の決定 ... 48 3.2.1. 発酵試験 ... 48 3.2.2. 官能評価 ... 49 3.3. 至適発酵温度の決定 ... 54 3.3.1. 発酵試験 ... 54 3.4. 至適初期pH の決定 ... 57 3.4.1. 発酵試験 ... 57 3.4.2. 官能評価 ... 60 3.5. 保存期間の評価 ... 65 3.5.1. 官能評価 ... 65 3.6. 成分分析... 71 3.6.1. アミノ酸定量 ... 71 3.6.2. 香気成分定量 ... 73 3.6.3. 抗酸化能の評価 ... 77 3.6.4. 残存タンパク質の確認 ... 79 4. 結論 ... 81 5. 参考文献 ... 82 6. 副論文目録 ... 91 7. 謝辞 ... 92

(6)

4

1.

本研究の目的はホエイを原料とした新規発酵飲料の開発である。ホエイ (whey) の定義 は、牛乳中のカゼインタンパク質および乳脂肪をレンネットまたは酸によって凝集させ、 牛乳から取り除いた残りの液体成分である (Smithers, 2008)。身近な例としてはヨーグ ルトの上澄み液がある。牛乳とホエイの成分比較をFigure 1-1 に示す (Smithers, 2008)。 Figure 1-1 より、ホエイは牛乳の固形成分の約半分を含み、脂肪やカゼインをほとんど 含まないことがわかる。ホエイの固形成分の約78%はラクトースであり、11%がホエイ タンパク質、1%がカゼイン、2%が脂肪、8%が灰分である (Smithers, 2008)。ホエイの主 成分であるラクトースは、ガラクトースとグルコースがβ-1,4 グリコシド結合した二糖

である (Guimarães, Teixeira, & Domingues, 2010)。酵母を用いてラクトースを発酵させる ことで、ホエイの特徴を有した機能性飲料を醸造できると考えた。

0

2

4

6

8

10

12

Fat

Casein protein

Whey protein

Ash

Lactose

Total solids

Content (% w/v)

Milk

Whey

Figure 1-1. Comparison of component between milk and whey (Smithers, 2008). Ash means the

(7)

5

ホエイの機能性について述べる。Smithers 氏によって、ホエイタンパク質の組成やそれ らに起因する様々な栄養的、生理的効果が総説にまとめられている (Smithers, 2008, 2015)。以下に総説の一部を抜粋する。ホエイタンパク質の組成は β-ラクトグロブリン (50%)、α-ラクトアルブミン (20%)、グリコマクロペプチド (20%)、その他のタンパク質 やペプチド (10%) である。その他のタンパク質やペプチドは、免疫グロブリン、ラク トフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、血清アルブミン、リゾチーム、成長因子などを 含む。これらのタンパク質やペプチドは、以下に示す機能性を有する: (i) 運動後の筋 肉の回復、および全体的な筋肉の健康、(ii) 満腹感、体重管理、および肥満の制御、(iii) 傷の治癒および修復、(iv) 心血管の健康、および危険因子の改善、(v) 微生物感染およ びウイルス感染の制御、(vi) 幼児の成長および栄養摂取、(vii) 抗がん活性。ホエイタン パク質の生物価は食肉、大豆、カゼイン、魚よりも高く、生物価のベンチマークとなる 卵よりも15%高い。生物価とは、タンパク質に代表される栄養素が生体のタンパク質に 取り込まれる割合のことである。実質的には、生体が消費したタンパク質を、どれだけ 速くどの程度利用できるかを指す。さらに、ホエイタンパク質は必須アミノ酸を卵、カ ゼイン、食肉、大豆より多く含んでおり、筋肉の健康に重要な分枝鎖アミノ酸 (BCAA; ロイシン、イソロイシン、バリン) の割合も 20% w/w と高い。分枝鎖アミノ酸は、代謝 調節因子としてタンパク質やグルコースの恒常性、および脂質代謝に関わると考えられ ており、体重管理に役立つ可能性がある。また、ホエイタンパク質は含硫アミノ酸を豊 富かつバランス良く含んでいる。含硫アミノ酸は、1 炭素代謝およびタンパク質の折り 畳みと機能において重要な役割を果たし、抗酸化作用において重要な役割を占めるグル タチオンの前駆体となる(Smithers, 2008, 2015)。 2010 年には、ホエイ飲料が若者における高血圧患者の血圧を下げる作用をもつことが 発表された (Fluegel et al., 2010)。また、Yadav 氏らによって、ホエイタンパク質の生産 および機能性についての詳しい総説が報告されている (Yadav et al., 2015)。これらの報 告より、ホエイの機能性に注目が集まっていることがわかる。ホエイを原料とした発酵 飲料にもこれらの機能性を期待できる。

(8)

6

一方で、歴史的にチーズ製造業者はホエイを廃棄物とみなしていた (Smithers, 2008)。ホ

エイはチーズ生産の主な副産物であり、チーズを1 kg 製造するとホエイは 9 kg 生産さ

れる (Kosikowski, 1979)。世界のホエイ生産量は毎年 1–2%増えており、2015 年には年 間生産量が2 億トンを上回ったとされる (Smithers, 2008, 2015)。また、ホエイは有機物 含有量が多く、生化学的酸素要求量 (BOD: biochemical oxygen demand) は 30000–50000 ppm、化学的酸素要求量 (COD: chemical oxygen demand) は 60000–80000 ppm と高いた め、最も汚染性の高い食品副産物の一つであるとみなされてきた (Siso, 1996; Smithers, 2008)。20 世紀後半には、地域活動団体や環境局、および加工業者が、未処理のホエイ の廃棄によって引き起こされる環境被害について認識し、問題性を強調した (Smithers, 2015)。1996 年以前には、長年ホエイの利用可能性について評価されてきたにもかかわ らず、世界のホエイ生産量の約半分は未処理のまま廃水として廃棄されていた (Siso, 1996)。

(9)

7

生産されたホエイの残りの半分は様々な食品産物や工業製品に加工されており、1996 年

にSiso 氏によってホエイの利用例がまとめられた (Siso, 1996)。Siso 氏がホエイの利用

例についてまとめた図を、一部改変した図をFigure 1-2 に示す。ここでは、ホエイの主

成分であるラクトースに着目して、Siso 氏による総説から一部を抜粋する。ラクトース

は、甘味がスクロースの40%程度であり、水への溶解度が室温で 18%と低いため、甘味

料として利用するためには加水分解する必要がある。ラクトースの加水分解は微生物由

来のβ-ガラクトシダーゼ (EC. 3.2.1.32) を用いることが多いが、人体に安全な酵母や糸

状菌は限られている。例えば、酵母ならKluyveromyces lactis や K. marxianus、糸状菌な

Aspergillus oryzae や A. niger である (Siso, 1996)。ラクトースを発酵してバイオエタノ

ールを得る研究も数多く報告されており、Guimarães 氏らによってまとめられている (Guimarães et al., 2010)。バイオエタノール生産はホエイ中のラクトースを利用する有望 な手段の一つである (Parashar, Jin, Mason, Chae, & Bressler, 2016)。しかし、バイオエタ ノール生産では、前述した様々な機能性を有するホエイタンパク質を有効に利用できて いないと言える。

Whey

Condensed or

powdered whey Demineralized Lactose Ultrafiltration Biogas

Lactose hydrolysis Permeate WPC

Sweeteners Fermentation Lactose hydrolysis

Purified lactose Lactitol Lactulose Lactosylurea Others SCP β-galactosidase Ethanol Beverages Organic acids Galactose Glycerol Xanthan gum Flavors Carotenoids Gibberellic acid Others

Figure 1-2. Scheme for the commercial utilizations of whey (Siso, 1996). WPC stands for whey

protein concentrate; SCP stands for single cell protein. The green colored item represents end products.

(10)

8

ここで、2004 年に報告されたホエイの利用率を、Figure 1-3 に示す (Clark, 2004)。世界

中で生産されたホエイの59%は工業利用され、高付加価値製品に加工されているとみな

されている。その内58%が粉末ホエイやラクトースとして、35%がホエイタンパク質濃

縮物 (WPC: whey protein concentrate) およびホエイタンパク質単離物 (WPI: whey protein isolate) として、残りの 7%がその他の工業製品として加工されている (Clark, 2004)。

Guimarães 氏らによると、ホエイラクトースの主要な用途には、食品成分、乳児用調製 粉乳の成分、医薬品産業におけるタブレットの充填剤またはコーティング剤、および付 加価値の高い乳糖誘導体の生産原料などがある (Guimarães et al., 2010)。Guimarães 氏ら の総説からさらに一部を抜粋する。ホエイ中のラクトースにおける別の主要な用途とし て、発酵による有益な化合物生産の基質としての応用がある。典型例としてはエタノー ル生産および単細胞タンパク質生産があるが、他にも、バイオガス、有機酸、アミノ酸、 ビタミン類、多糖、脂質、酵素などの生産例がある。微生物バイオテクノロジーの急速 な進歩により、付加価値の高い製品を得るための発酵原料として、ホエイラクトースの 利用が促進される可能性がある (Guimarães et al., 2010)。微生物発酵によるホエイ由来 有用産物生産に関しては、Pescuma 氏らによって使用した菌株などの詳しい情報がまと

められている (Pescuma, de Valdez, & Mozzi, 2015)。Figure 1-3 中の粉末ホエイおよびラ クトースの工業利用には、上記の用途が含まれていると推測する。

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

Whey production

Industrially utilized

Industrially utilized

(59%) Feed, Fertilizer, Waste(41%)

Whey powder + Lactose

(58%) WPC / WPI(35%)

Others (7%)

Figure 1-3. The balance of global utilization of whey (Clark, 2004). WPC stands for whey protein

(11)

9

ラクトースがホエイ固形成分の75%以上を占め、様々な有用化合物生産の基質になる一 方で、ホエイの工業利用における WPC および WPI の占める割合は比較的高いと言え る。ホエイタンパク質がホエイ固形成分の約11%程度であるにもかかわらず、ホエイの 工業利用の35%を占めている理由は、ホエイタンパク質の高い機能性が主な要因である と推測する。実際、消費者の健康志向は1990 年代から高まっており、ホエイを原料と した製品の市場機会が創出されている (Smithers, 2015)。特にスポーツ栄養学の分野に おいて、ホエイタンパク質と筋肉の健康に関連する多くの科学的根拠に基づいて、ホエ イ成分の利用が2000 年代から着実に増加している (Smithers, 2015)。 しかしながら、ホエイ生産量の41%は工業利用されておらず、詳細な内訳は不明である が、家畜の飼料や農業の肥料として利用されるか、単に廃棄されている (Clark, 2004)。 1996 年の報告では、ホエイの利用は主に飼料や肥料としてであった (Siso, 1996)。しか し、ホエイを家畜の飼料として利用する市場は徐々に縮小している (Parashar et al., 2016)。 ホエイに関する別の問題として、保存性の悪さがある。ホエイには主に乳酸菌などの微 生物が存在することが知られており、液体状態のホエイを常温で 1 週間以上放置する と、ラクトースが消費され乳酸が生産される (Parashar et al., 2016)。よって、生産された ホエイをできるだけ早く工業利用することが重要である。 ホエイの主成分であるラクトース、および様々な機能性を有するホエイタンパク質の両 方を有効活用する方法として、発酵飲料の開発は効果的である。機能的かつ嗜好性の高 いホエイ由来発酵飲料を開発できれば、工業利用されていないホエイの割合を減らすだ けでなく、新たな需要や価値を生み出すこともできると考えた。

(12)

10

ホエイを原料として用いた飲料について述べる。前述したとおり、ホエイは環境汚染の 観点から工業利用が求められており、機能性が高いため食品への応用が期待できる。そ れにもかかわらず、ホエイを原料とした飲料の開発はエタノール生産の研究に比べて進 んでいないと言える。その原因はホエイ自体の嗜好性の低さではないかと推測する。実 際、過去の研究より、ホエイタンパク質は望ましくない後味や渋味、および不快な香り を有するため、官能嗜好性が低いとされる (Beecher, Drake, Luck, & Foegeding, 2008; Childs & Drake, 2010; Smithers, 2008)。ホエイタンパク質を用いた酸性飲料においては、 渋味よりむしろフレーバーが不快であり、改善の余地があることを示唆している (Childs & Drake, 2010)。

多くの食品研究者が、特定のアプローチを用いてホエイベースの飲料を開発し、ホエイ の官能嗜好性が低いという課題に取り組んでいる。以下に、ホエイを原料として用いた 飲料を列挙する:ホエイワイン (Kosikowski & Wzorek, 1977)、ケフィアグレインを用い た 発 酵 飲 料 (Athanasiadis, Paraskevopoulou, Blekas, & Kiosseoglou, 2004; Kourkoutas, Psarianos, et al., 2002; Karina Teixeira Magalhães et al., 2011)、乳酸菌を用いた発酵飲料 (Gomes et al., 2013; Pescuma, Hébert, Mozzi, & Font de Valdez, 2010)、フルーツとの混合物 (Castro et al., 2013; Janiaski, Pimentel, Cruz, & Prudencio, 2016; Jaworska, Sady, Grega, Bernaś, & Pogoń, 2011; Sabokbar & Khodaiyan, 2015; Sabokbar, Moosavi-Nasab, & Khodaiyan, 2015)、 低アルコール飲料 (Kourkoutas, Dimitropoulou, et al., 2002; Javier Parrondo, Garcia, & Diaz, 2000)、蒸留酒 (Dragone, Mussatto, Oliveira, & Teixeira, 2009)。なお、これらの例には、複 数のアプローチを組み合わせた飲料 (例えばケフィアグレインを用い、かつフルーツを 混ぜるなど) もある。

(13)

11

ホエイを用いた飲料の中でも、マンゴー、バナナ、パイナップル、グァバ、イチゴなど のフルーツを加えて嗜好性を改善した飲料が多いとされる (Kourkoutas, Psarianos, et al., 2002)。ケフィアグレインを用いた発酵飲料も数多く報告されている (Koutinas et al., 2007)。ケフィアグレインとは不規則な形と大きさの顆粒であり、酵母 (例えば、

Kluyveromyces 属や Saccharomyces 属) や乳酸菌 (例えば、Lactobacillus 属、Lactococcus

属、Leuconostoc 属) などがケフィラと呼ばれる多糖、およびカゼインとともに複合体を

形成したものである (Karina Teixeira Magalhães et al., 2010)。また、乳酸菌を用いた発酵 飲料の例も非常に多く、Pescuma 氏らによって総説にまとめられている (Pescuma et al., 2015)。 一方で、純粋培養した酵母を用いて高アルコールホエイ飲料を開発した例は比較的少な いと言える。また、ホエイのみを原料として単一の酵母で発酵させた飲料において、詳 しい官能評価を実施した例はなかった。そこで本研究の目的を、ホエイ中のラクトース を単一の酵母によって直接発酵させ、エタノール濃度が他の研究と比べて高い飲料を開 発することとした。ホエイのみを原料としても嗜好性が高い発酵飲料を開発するために、 最適なホエイ原料や基質濃度、発酵条件などを検討した。なお、目標とするエタノール 濃度は、ビールやワインなどの他の醸造酒と競合しない8–10%程度である。

(14)

12

本研究で使用する酵母、Kluyveromyces marxianus について述べる。K. marxianus につい

ては、Fonseca 氏らや Lane 氏らによって総説が報告されている (Fonseca, Heinzle, Wittmann, & Gombert, 2008; Lane & Morrissey, 2010)。K. marxianus はラクトース発酵性で あり、GRAS (generally recognized as safe) ステータスを有する (Lane & Morrissey, 2010)。 よって、ホエイから発酵飲料を醸造するという目的において有用であると考えた。また、

Kluyveromyces 属の主要な研究種である Kluyveromyces lactis と比較して、K. marxianus は

様々な基質を資化でき、成長速度が速く、耐熱性であることから、産業利用に広く採用 されている (Fonseca et al., 2008; Lane & Morrissey, 2010)。さらに、K. marxianus のラクト ースからのエタノール生産量はK. lactis より高い (Guimarães et al., 2010)。一方で、一般

的な醸造用酵母であるSaccharomyces cerevisiae はラクトースを資化できないため、プロ

トプラスト融合や遺伝組換え、またはラクトースの加水分解などのアプローチが必要で ある (Guimarães et al., 2010)。実際に、K. marxianus (以前は Kluyveromyces fragilis として 知られていた) はホエイワインの製造や高温でのアルコール飲料生産に用いられてい る (Kosikowski & Wzorek, 1977; Kourkoutas, Dimitropoulou, et al., 2002)。ホエイを原料と

したエタノール生産においても、K. marxianus を用いることは、他の酵母や遺伝子組換

えなどのアプローチを用いるよりも優れていることが多いとされる (Guimarães et al., 2010; Koushki, Jafari, & Azizi, 2012)。

Oda 氏らは 14 株の K. marxianus (アナモルフである Candida kefyr を含む) においてホエ イからのエタノール生産量を調べ、NBRC 1963 株が最も高いエタノール生産量を示す ことを明らかにした (Yuji Oda & Nakamura, 2009)。対して、NBRC 1963 株は単離源が不

明であったため、本研究においてはヨーグルトから単離されたNBRC 1735 株を採用し

た。NBRC 1735 株は Oda 氏らの研究において 2 番目に高いエタノール生産量を示した (Yuji Oda & Nakamura, 2009)。Lane 氏らの研究においても、NBRC 1735 株 (別名として CBS 397) は高いエタノール生産量および耐熱性を示した (Lane et al., 2011)。また、 NBRC 1735 株は半数体 (MATa) である (Lane et al., 2011)。よって、本論文とは直接関係 ないが、セルフクローニングにおいても扱いやすいと期待できる。

(15)

13

発酵特性の評価に加えて官能評価を用いることで、ホエイ発酵飲料の開発における最適 条件を決定した。官能評価とは、人の感覚を利用して製品の特性を把握するための方法 で、機器測定とともに、基盤研究、製品開発、品質管理など様々な場面で用いられてい る (Kunieda, 2014)。官能評価は官能検査とも呼ばれ、英語では sensory evaluation または sensory analysis が対応する。

乳製品に関する官能評価については、Drake 氏によって総説にまとめられている (Drake,

2007)。以下に総説の一部を抜粋する。官能評価には大きく分けて二つのグループがあ り、それぞれ分析型官能評価 (analytical test)、嗜好型官能評価 (affective test) と呼ばれ る。分析型官能評価は識別テスト (discrimination test)、閾値テスト (threshold test)、記述 分析型官能評価 (descriptive sensory analysis) などを含み、基本的には訓練された評価パ ネルを用いる。嗜好型官能評価は消費者テスト (consumer test) とも呼ばれ、受容テスト (acceptance test) や嗜好順位テスト (preference ranking test) などを含む。受容テストは好 みの程度を評価する試験であり、9 段階の快不快尺度 (hedonic scale) を用いて採点する ことが多い。官能特性の強度についても、9 段階の強度尺度 (intensity scale) を用いて評 価することができる。嗜好型官能評価においては、典型的な消費者から評価パネルを選 定する必要があるため、訓練された評価パネルを用いるべきではないとされる (Drake, 2007)。 本研究では、最適な発酵条件の決定における根拠を増やすために、複数の官能評価を同 時に実施し、複合型官能評価 (multiple sensory evaluations) と名付けた。本研究では 3 種 類の官能評価を採用した。快不快尺度を用いた受容テストにより、発酵飲料の嗜好性を 定量的に評価した。強度尺度を用いた評価を併用し、一部の官能特性において嗜好性と 強度の相関を明らかにした。また、嗜好順位テストも同時に実施することで、最も好ま れている発酵飲料を直接評価した。便宜上、快不快尺度を用いた試験を嗜好法、強度尺 度を用いた試験を強度法、嗜好順位テストを順位法とした。

(16)

14

最適な原料条件 (原料ホエイと基質濃度)、および発酵条件 (至適発酵温度と至適初期 pH) について検討し、開発した発酵飲料の保存期間を評価した。また、最終産物に関し て、アミノ酸および香気成分の定量、抗酸化能の評価、残存タンパク質の確認をおこな った。

(17)

15

2.

2.1.

Kluyveromyces marxianus NBRC 1735 株 (NITE Biological Resource Center, Chiba, Japan; 以

下NBRC 1735) を YPD スラント培地 (酵母粉末エキス 1.0% w/v、ポリペプトン 2.0%、 D(+)-グルコース 2.0%、寒天 1.5%) に画線培養し、4℃で保存した。NBRC 1735 の前培 養として、20 mL の YPL 液体培地 (酵母粉末エキス 1.0% w/v、ポリペプトン 2.0%、ラ

クトース一水和物2.0%) を 100-mL 容バッフル付き三角フラスコに入れてオートクレー

(18)

16

2.2.

ホ エ イ 培 地 の 基 本 的 な 調 製 法 お よ び 発 酵 法 を 記 す 。 購 入 し た ホ エ イ パ ウ ダ ー (MORINAGA MILK INDUSTRY CO., Ltd., Tokyo, Japan) および脱塩ホエイパウダー (MEGMILK SNOW BRAND Co., Ltd., Hokkaido, Japan) を 4℃で保存した。以下、ホエイ をRW (raw whey)、脱塩ホエイを DMW (demineralized whey) とする。DMW とは、一般 的に、イオン交換法や電気透析法、ナノろ過法などを用いて、ホエイからミネラルを除 いたものである (Smithers, 2008)。ホエイ溶液の調製には、日本生活協同組合連合会が販 売している、ナチュラルミネラルウォーターあずみ野の水 (カリウム 0.4 mg/L、カルシ ウム5.2 mg/L、マグネシウム 2.2 mg/L、硬度約 22 mg/L、pH 7.4) を用いた。培養容器に は500-mL 容メディウム瓶を用い、後述する条件で各ホエイ溶液を低温殺菌し、氷浴お よび30℃の恒温槽を用いて約 30℃まで急激に冷却してホエイ培地とした。すべての発 酵試験において、各条件のホエイ溶液を3 本ずつ用意した。 前培養した酵母をミネラルウォーターで2 回遠心洗浄 (4℃、3000 rpm、5 分) した。再 懸濁した酵母を、初期濁度が0.1 となるようにホエイ培地に植菌し、シリコセンで蓋を して静置培養した。培養温度は、至適発酵温度の実験以外は30℃とした。経時的に培養 液をサンプリングし、エタノール濃度およびラクトース濃度を測定した。至適初期 pH の実験では、同時にpH も測定した。発酵後、各発酵飲料を吸引ろ過し、官能評価に用 いるまで4℃で保存した。なお、同じ条件で培養した 3 本の溶液を、ろ過後に一つの 1-L 容メディウム瓶に入れ、蓋を固く閉じて保存した。 ホエイ培地の調製に用いた器具の滅菌処理法を記す。食品への利用を前提としたため、 経口摂取する際に抵抗のあるオートクレーブによる滅菌を採用しなかった。器具を十分 に洗浄し、次亜塩素酸 (台所用漂白剤) および消毒用エタノールで殺菌した後、乾燥さ せ、クリーンベンチ内で20 分以上紫外線照射した。シリコセンについては、さらに乾 熱滅菌 (170℃、2 時間以上) をおこなった。

(19)

17

2.2.1.

原料ホエイとして RW と DMW の二つのホエイを用いて発酵試験を実施した。NBRC 1735 がこれらのホエイを発酵できるか、および原料ホエイの違いによって発酵速度が 異なるかの確認を目的とした。 本研究で用いたRW および DMW の構成成分は、それぞれの原料品質保証書によると、 RW (ラクトース 76.9%、タンパク質 12.5%、脂肪 1.0%、灰分 5.6%、水分 4.0%)、DMW (ラクトース 78.8%、タンパク質 12.5%、脂肪 8.0%以下、灰分 2.0%以下、水分 4.0%以下) であった。RW パウダーおよび DMW パウダーをそれぞれ 50 g ずつメディウム瓶に量 り取り、65℃に予熱したミネラルウォーター500 mL を加えてよくかき混ぜ、65℃で 1 時間低温殺菌した後、前述した「ホエイ発酵」の方法で発酵させた。

2.2.2.

後述する「原料ホエイの選択」の結果から、DMW を原料に用いた飲料の方が、RW を 原料に用いた飲料より嗜好性が高いとわかったため、以降の研究ではDMW を発酵飲料 の原料として用いた。 発酵飲料の開発において最適な初期 DMW 濃度を決定するために、10% w/v (50 g/500 mL)、15% (75 g/500 mL)、20% (100 g/500 mL) という三つの異なる濃度の DMW 溶液を 調製し、発酵試験を実施した。NBRC 1735 が高濃度の DMW 溶液でも発酵できるか、 および基質濃度が異なることで発酵速度に違いが生じるかの確認を目的とした。 低温殺菌および発酵は前述した「原料ホエイの選択」と同じ方法を用いた。 便宜上、初期DMW 濃度が 10% w/v の飲料を DMW10、15%の飲料を DMW15、20%の 飲料をDMW20 とした。

(20)

18

2.2.3.

後述する「基質濃度の決定」の結果から、DMW20 が最も好まれるとわかったため、以 降の研究では初期DMW 濃度を 20% w/v とした。 NBRC 1735 株を用いたホエイ発酵において、至適発酵温度の決定を目的として、20°C、 25°C、30°C、35°C、40°C の条件で 20% w/v DMW 溶液を発酵させた。至適発酵温度を 発酵速度に基づいて決定することとしたため、官能評価については実施しなかった。 なお、以降の実験における低温殺菌法については、前述した「原料ホエイの選択」にお ける殺菌条件の簡略化を図り、ミネラルウォーターを予熱せず、低温殺菌の時間を1 時 間から30 分に短縮した。

2.2.4.

pH

後述する「至適発酵温度の決定」の結果から、至適発酵温度が30℃であるとわかったた め、以降の研究では発酵温度を30℃とした。 NBRC 1735 株を用いたホエイ発酵において、至適初期 pH の決定を目的として、DMW 溶液の初期pH が pH 7、pH 6、pH 5、pH 4 の条件で発酵させた。20% w/v DMW 溶液の 元のpH は 7.0 であった。pH 調整には食品添加物規格の乳酸 (90%) を用いた。予備実 験より、任意のpH に調整するための乳酸添加量は、pH 6 において 250 µL、pH 5 にお いて675 µL、pH 4 において 1800 µL であった。

(21)

19

2.2.5.

後述する「至適初期pH の決定」の結果より、至適初期 pH を pH 7 と決定した。ホエイ 由来発酵飲料の開発における最適条件をまとめると、ホエイ原料としてDMW を用い、 DMW 濃度は 20% w/v、発酵温度は 30℃、初期 pH は pH 7 という条件になった。 上記の条件で、ラクトース濃度が1% w/v 以下になるまで DMW 溶液を発酵させた。発 酵飲料の保存期間の評価を目的とし、発酵後のDMW 溶液をろ過した後、4℃で 0、2、 4 週間保存した飲料を用いて官能評価を実施した。なお、官能評価を同時に実施するた めに、DMW 溶液の発酵の開始時期を各保存期間に応じて調整した。

(22)

20

2.3.

官能評価の方法として、基本的に国際標準化機構 (ISO: international organization for standardization) の ISO 6658:1985 および ISO 4121:1987 を参考にした。すべての試験に おいて、評価パネルは官能評価の訓練をおこなっていない、立命館大学の学生または教 員であった。評価サンプルをあらかじめ氷浴によって冷却した。各サンプル約20 mL を、 3 桁の乱数でコードした 60-mL 容の透明なプラスチックカップに入れ、1 サンプルずつ ランダムな順番で提供した。サンプルを口にする前に、ミネラルウォーターで口をすす ぐように指示した。まず総合的な好ましさについて評価してもらい、続いて嗜好性の各 項目を、その後に強度の各項目を評価してもらった。全てのサンプルを評価した後、総 合的な好ましさについて順位を付けてもらった。異なるサンプルに対して同じ順位を付 けないように指示した。 フェイスシートにおいて、性別、年齢、および乳アレルギーの有無を確認し、官能評価 をおこなうことに対して評価パネルの同意を得た。 評価項目、尺度、および評価パネル数は実験によって異なるため、セクションごとに詳 述する。

(23)

21

2.3.1.

原料ホエイの違いによって発酵飲料の嗜好性が異なるかを確認するために、RW を発酵 原料とした飲料 (RW 飲料) と DMW を発酵原料とした飲料 (DMW 飲料) とを用いて 官能評価を実施した。また、より嗜好性の高い飲料を開発することができたホエイを、 今後の研究における原料ホエイとして選択することも目的とした。 原料ホエイの選択に用いた評価項目は以下である。 (a) 嗜好法 (Acceptance) ● 総合的な好ましさ (Overall acceptability) ● 見た目の好ましさ (Appearance) ● 香りの好ましさ (Aroma)

● 舌触りの好ましさ (Feeling on the tongue) ● 味の好ましさ (Taste)

● 甘味の好ましさ (Sweetness) ● 乳感の好ましさ (Milky feeling) ● 後味の好ましさ (Aftertaste)

(b) 強度法 (Intensity)

● 酒としての香りの強さ (Aroma as alcohol beverage) ● 酒としての味の強さ (Taste as alcohol beverage) ● 甘味の強さ (Sweetness)

(24)

22

嗜好法では、7 段階の快不快尺度を用いた。 1 非常に嫌い (Dislike extremely)

2 とても嫌い (Dislike very much) 3 やや嫌い (Dislike moderately)

4 好きでも嫌いでもない (Neither like nor dislike) 5 やや好き (Like moderately)

6 とても好き (Like very much) 7 非常に好き (Like extremely) 強度法では、7 段階の強度尺度を用いた。 1 非常に弱い (Extremely weak) 2 とても弱い (Very weak) 3 やや弱い (Moderately weak) 4 普通 (Neutral) 5 やや強い (Moderately strong) 6 とても強い (Very strong) 7 非常に強い (Extremely strong) 評価パネル数は33 人であり、男性 21 名、女性 12 名、年齢は 20 代から 50 代であった。 原料ホエイの選択では、評価サンプルが二つのみであったため、順位法を実施しなかっ た。 なお、評価フォームの技術的な問題で、9 段階ではなく 7 段階の快不快尺度および強度 尺度を用いた。一般的には9 段階の尺度を用いるが、7 段階の尺度でも問題ないとされ る (Drake, 2007; Lim, 2011)。

(25)

23

2.3.2.

「原料ホエイの選択」で実施した官能評価において、DMW 飲料は味が薄いとの指摘が 複数あった。初期DMW 濃度を上げることで味が濃くなり、嗜好性が高まるのではない かと仮説を立てた。また、初期DMW 濃度が異なると最終的なエタノール濃度も異なる と予想できた。そこで、ホエイ由来発酵飲料において、エタノール濃度の違いが嗜好性 に与える影響を明らかにすることも目的とした。 別の指摘として、DMW 飲料には乳感を感じないという意見が複数あった。また、飲料 間の主な違いはエタノール濃度であった。よって、基質濃度の決定に用いた評価項目で は、「原料ホエイの選択」における評価項目の乳感の好ましさを、アルコール感の好ま しさ (Alcohol feeling) に置き換えて評価した。 快不快尺度および強度尺度については、「原料ホエイの選択」と同じ7 段階の尺度を用 いた。 以降の実験では、3 種類のサンプルがあったため、順位法も同時に実施した。 評価パネル数は43 人であり、男性 27 名、女性 16 名、年齢は 20 代から 50 代であった。

(26)

24

2.3.3.

pH

初期pH を変えることで、NBRC 1735 の発酵速度が変化するだけでなく、嗜好性にも影 響を及ぼすのではないかと仮説を立てた。また、乳酸濃度の違いが嗜好性に与える影響 を明らかにすることも目的とした。 至適初期pH の決定に用いた評価項目は以下である。 (a) 嗜好法 (Acceptance) ● 総合的な好ましさ (Overall acceptability) ● 香りの好ましさ (Aroma) ● 味の好ましさ (Taste) ● 酸味の好ましさ (Sourness) ● 渋味の好ましさ (Astringency) ● 後味の好ましさ (Aftertaste) (b) 強度法 (Intensity) ● 酸味の強さ (Sourness) ● 渋味の強さ (Astringency) なお、見た目の好ましさ、舌触りの好ましさ、乳感の好ましさ、アルコール感の好まし さ、ならびに、酒としての香りの強さ、酒としての味の強さの評価項目については、濃 度20% w/v の DMW を原料とする限り比較する意味がないと考え、至適初期 pH の決定 の実験では削除した。酸味および渋味の嗜好性が、pH および乳酸濃度によって変わる ことを期待して、これらの項目を追加した。

(27)

25

また、評価フォームの技術的な問題が解決できたので、至適初期pH の決定の実験から

は、7 段階ではなく 9 段階の尺度を用いた。

嗜好法では、9 段階の快不快尺度を用いた。 1 非常に嫌い (Dislike extremely)

2 とても嫌い (Dislike very much) 3 やや嫌い (Dislike moderately) 4 わずかに嫌い (Dislike slightly)

5 好きでも嫌いでもない (Neither like nor dislike) 6 わずかに好き (Like slightly)

7 やや好き (Like moderately) 8 とても好き (Like very much) 9 非常に好き (Like extremely) 強度法では、9 段階の強度尺度を用いた。 1 非常に弱い (Extremely weak) 2 とても弱い (Very weak) 3 弱い (Weak) 4 やや弱い (Moderately weak) 5 普通 (Neutral) 6 やや強い (Moderately strong) 7 強い (Strong) 8 とても強い (Very strong) 9 非常に強い (Extremely strong) 評価パネル数は57 人であり、男性 39 名、女性 18 名、年齢は全員 20 代であった。

(28)

26

2.3.4.

ホエイ由来発酵飲料の開発における今後の展開に向けて、本研究で開発した飲料がどの 程度の期間、嗜好性を保てるのかを明らかにすることを目的とした。 保存期間の評価に用いた評価項目は以下である。 (a) 嗜好法 (Acceptance) ● 総合的な好ましさ (Overall acceptability) ● 見た目の好ましさ (Appearance) ● 香りの好ましさ (Aroma) ● 味の好ましさ (Taste) ● 甘味の好ましさ (Sourness) ● 後味の好ましさ (Aftertaste) (b) 強度法 (Intensity) ● 酸味の強さ (Sourness) ● 苦味の強さ (Bitterness) 最終産物のpH は同じで、タンパク質濃度にも違いがないと推測できたため、嗜好法に おける酸味と渋味の評価項目を削除した。保存期間が長いと、色の変化や浮遊物の発生 など、外観の違いが生じる可能性があったので、見た目の好ましさの項目を追加した。 最終産物のラクトース濃度に差があったため、甘味の好ましさの項目を追加した。強度 法では、食品の保存において重要であると考えた、酸味および苦味の項目を追加した。 快不快尺度および強度尺度については、「至適初期 pH の決定」と同じ 9 段階の尺度を 用いた。 評価パネル数は53 人であり、男性 32 名、女性 21 名、年齢は全員 20 代であった。

(29)

27

2.4.

ホエイ発酵試験については、すべて 3 連でおこない、結果を平均値と標準偏差 (SD:

standard deviation) で示した。平均値の差について統計検定をする場合は、対応の無い t 検定 (unpaired t-test) を用いた。標本の分散が等しいかどうかを F 検定 (F test) で判断 し、分散が等しくない場合はウェルチのt 検定 (Welch t-test) を用いた。3 サンプル以上 の場合は、ボンフェローニ法 (Bonferroni correction) を用いて有意水準を補正した。発 酵前後の平均値の差について統計検定する場合は、対応の有る t 検定 (paired t-test) を 用いた。 官能評価試験については、結果を平均値で示した。官能評価における統計検定について は、検定ごとに後述する。 すべての検定において、有意水準をα = 0.05 とした。F 検定のみ片側検定とし、その他 すべての検定では両側検定を用いた。

統計解析にはMicrosoft Excel 2016 および統計プログラム ystat2013 (Igaku Tosho Press, Co. Ltd., Tokyo, Japan) を用いた。ノンパラメトリック検定に関しては、ystat2013 の指示に 従って解析した。

(30)

28

2.4.1.

(

)

官能評価の結果に対する統計検定については、すべてノンパラメトリック法を用いた。 なぜなら、官能評価の結果は正規分布するとは限らないためである。例えデータが正規 分布していたとしても、ノンパラメトリック検定を適用することができる。

サンプル間の差については、ウィルコクソンの符号付き順位検定 (Wilcoxon signed rank test) を用いて評価した。3 サンプル以上の場合はまず、対応の有る一元配置分散分析と して、フリードマン検定 (Friedman test) を用いて各評価項目に有意差があるか確認し た。フリードマン検定はパラメトリック検定の二元配置分散分析 (two-way ANOVA) に 対応する。その後、フリードマン検定において有意差があった評価項目について、ウィ ルコクソンの符号付き順位検定を用いてサンプル間の多重比較をおこなった。多重比較 においては、ボンフェローニ法を用いて有意水準を補正した。

2.4.2.

嗜好法と強度法の相関を、ノンパラメトリック検定であるスピアマンの順位相関係数 (Spearman rank correlation coefficient) を用いて検定した。すべての試験において、嗜好法 の評価項目として総合的な好ましさを用いた。強度法の評価項目として、「官能評価」 で記述した各実験の強度法における項目を用いた。強度法の評価項目を横軸に、総合的 な好ましさを縦軸にとって作図した。各評価項目において、すべてのサンプルにおける 評価結果を合わせたデータを用いた。

(31)

29

2.4.3.

順位法の評価では、Baba 氏の方法を用いて順位データをグラフで解析した (Baba, 1986)。 順位グラフを用いる利点は、表を用いずに帰無仮説を視覚的に検査できる点と、一つの グラフに多くの情報を組み込むことができる点である (Baba, 1986)。以下に、順位デー タのグラフ表現法について簡単に述べる。 Baba 氏は、順位連結グラフと順位グラフという二つのグラフを提唱した。順位連結グ ラフ (linked rank graph) の例を Figure 2-1 に、順位グラフ (rank graph) の例を Figure 2-2

に示す。なお、それぞれのグラフのサンプル数は8 個である。詳細は後述するが、各グ ラフの要素について簡単に説明する。それぞれの図の外側の円は、半径1 の半円である。 角度0 度の方向は第1位を表わし、角度 180 度の方向は第 8 位を表わす。その間に第 2 位から第7 位の方向が均等に並んでいると考える。順位連結グラフ上の折れ線は、各順 位 (方向) における評価パネル数の割合 (長さ) をベクトルとし、第 1 位から第 8 位ま での線分をつなげた線である。あるサンプルに対して、原点から第1 位の方向に、第 1 位と評価した評価パネル数の割合だけ進み、次に第2 位、第 3 位…というように上位の 順位に対応する線分から順につないでいく。つまり、方向が順位に対応し、長さがその 順位の割合に対応する。順位グラフ上の直線は、順位連結グラフの原点と終点とをつな いだ線分であり、すなわち順位連結グラフ上の折れ線の合成ベクトルを表わす。順位グ ラフ上の楕円は棄却楕円と呼ばれ、有意水準5%の範囲を表わす。

Figure 2-1. An example of a linked rank

graph (Baba, 1986). This example shows a case with 8 rankings.

Figure 2-2. An example of a rank graph with

the critical ellipse which represents the critical region of α = 0.05 (Baba, 1986).

(32)

30

順位連結グラフおよび順位グラフの簡単な理論と一般化した作図方法を記す。ここでは、 n 人の評価パネルが k 個のアイテム (サンプル) について順位を付けたとする。j 番目の アイテムを第l 順位とした評価パネル数 fjlを式 (2-1) に、割合 pjlを式 (2-2) に示す。 ∑𝑘𝑙=1𝑓𝑗𝑙 = 𝑛(𝑗 = 1, 2, ⋯ , 𝑘) (2-1) 𝑝𝑗𝑙= 𝑓𝑗𝑙⁄ (𝑗 = 1, 2, ⋯ , 𝑘; 𝑙 = 1, 2, ⋯ , 𝑘) 𝑛 (2-2) ここで、Figure 2-1 および Figure 2-2 の半円上において、第 l 順位を表わす方向を角度 θl とすると、θlは式 (2-3) で表わされる。 𝜃𝑙 = 𝑙−1 𝑘−1𝜋(𝑙 = 1, 2, ⋯ , 𝑘) (2-3) 第1 位の方向が 0、第 2 位の方向が π / (k − 1)、…、第 k 位の方向が π である。アイテム j の第 l 順位に対応するベクトル xjlを式 (2-4) に示す。 𝑥𝑗𝑙= (𝑝𝑗𝑙cos 𝜃𝑙, 𝑝𝑗𝑙sin 𝜃𝑙) (2-4) ベクトルxj1xj2、…、xjkの順に結合してできる折れ線をグラフ上に描く。半径1 の半円 とすべてのアイテムにおける折れ線とを含んだグラフが順位連結グラフである。ベクト ルxjlの長さは、アイテムj が第 l 順位となる割合を表わしている。よって、順位連結グ ラフでは、対応するアイテムの各順位における分布がわかる。なお、以下に示す式 (2-5) より、各アイテムの折れ線全体の長さは1 となり、したがって折れ線は常に半円の内側 にある。 ∑𝑘𝑙=1𝑝𝑗𝑙= 1(𝑗 = 1, 2, ⋯ , 𝑘) (2-5) 次に、順位連結グラフ上の折れ線の原点と終点とを結ぶ線分を引く。この線分は、式 (2-6) に示す、合成ベクトル xjを表わす。 𝑥𝑗= ∑𝑘𝑙=1𝑥𝑗𝑙(𝑗 = 1, 2, ⋯ , 𝑘) (2-6) この合成ベクトルを便宜上アイテムベクトルと呼ぶ。半径1 の半円とすべてのアイテム ベクトルとを含んだグラフが順位グラフである。アイテムベクトルの方向は平均順位を 表わし、長さは順位の付け方のバラツキを表わす。例えば、全員が同じ順位を付けると アイテムベクトルの長さは1 となり、順位が第 1 位と最下位のみで評価者数が同数であ ると長さは0 となる。アイテムベクトルが半円の円周に近いほど順位が一致している。

(33)

31

以下では、アイテムベクトルを用いた、帰無仮説の視覚的な検定方法について述べる。 対立仮説を「一つのアイテムがランダムに順位付けされていない、つまり他のサンプル と比べて有意な差がある」としたい。もしアイテム間に差が無ければ、評価パネルはそ れらのアイテムをランダムに順位付けるはずである。そこで、帰無仮説H0を式 (2-7) と おく。 𝐻0: 𝑝𝑙 = 1 𝑘(𝑙 = 1, 2, ⋯ , 𝑘) (2-7) ここで、plは一つのアイテムが第 l 順位と評価される確率を表わす。その確率が 1/k で あるということは、評価パネルがあるアイテムについてランダムに順位を付けているこ とを示す。つまり、この帰無仮説は、「どの順位も同じ確率で出現する、つまりサンプ ル間に差は無い」ことを意味する。 アイテムベクトルの座標を (c, s) と書くことにする。帰無仮説が真であるとき、(c, s) の 分布は平均ベクトルμ、分散共分散行列Σの二次元正規分布で近似できる。平均ベクトμ を式 (2-8) に、分散共分散行列Σを式 (2-9) に示す。 𝜇 = (0, 𝜇0) (2-8) Σ = [ 𝑘+1 2𝑛𝑘 0 0 𝑘−1−2𝑘𝜇02 2𝑛𝑘 ] (2-9) ここで、μ0は式 (2-10) である。 𝜇0= 𝑘−1cot(𝜋/2(𝑘 − 1)) (2-10) これらの式より、(c, s) に対する棄却限界を表わす楕円を描くことができる。有意水準 をα としたときの楕円の方程式を式 (2-11) に示す。 𝑐2 𝑎2+ (𝑠−𝜇0)2 𝑏2 = 1 (2-11) ここで、a2を式 (2-12) に、b2を式 (2-13) に示す。 𝑎2= −𝑘+1𝑛𝑘 ln 𝛼 (2-12) 𝑏2= −𝑘−1−2𝑘𝜇02 𝑛𝑘 ln 𝛼 (2-13)

(34)

32

これらの式を用いて、後述する方法で作図した棄却楕円がFigure 2-2 の楕円である。ア イテムベクトルがこの楕円の外側にある場合は、帰無仮説 H0を棄却して対立仮説を採 用できることを表わす。例えば、Figure 2-2 において楕円より右側にある水色のアイテ ムベクトルに着目すると、このサンプルは他のサンプルと比べて有意に好まれているこ とがわかる。一方、Figure 2-2 において楕円より左側にある点線で表わしたアイテムベ クトルに着目すると、このサンプルは他のサンプルと比べて有意に評価が低いことがわ かる。このように、順位グラフと棄却楕円を用いることで、サンプル間の好ましさに有 意な差があるかどうかを視覚的に検定することができる。 以上が、Baba 氏による順位データのグラフ解析の簡単な理論である (Baba, 1986)。より 詳しい理論は文献を参照していただきたい。 なお、本文中の式 (2-13) に対応する文献中の式は誤植であると思われる。 以下に、実際に棄却楕円を作図する方法を記す。 エクセル上で楕円を描くために、媒介変数θ を用いて式 (2-11) を変形し、式 (2-14) お よび式 (2-15) を得た。なお、媒介変数 θ はラジアンを表わす。 𝑐 = 𝑎 cos 𝜃 (2-14) 𝑠 = 𝑏 sin 𝜃 + 𝜇0 (2-15) 式中のa および b は、それぞれ式 (2-12)、式 (2-13) の平方根を取った値である。角度 0°–360°まで 5°刻みの角度に対応するラジアンにおいて座標 (c, s) を計算し、各座標を 線でつなぎ、棄却楕円とした。なお、棄却楕円は、式 (2-10)、(2-11)、(2-12)、(2-13) か らわかるように、変数が評価パネル数n、サンプル数 k、および有意水準 α のみで構成 されている。

(35)

33

2.5.

発酵中のサンプルには、炭酸ガスが含まれていることがあるので、サンプリング後に激 しく撹拌した。ラクトース定量、エタノール定量、およびpH 測定の前に、サンプルを 12000 rpm、5 分間、室温で遠心分離した。アミノ酸定量および香気成分定量の前に、サ ンプルを孔径0.45 µm のマイクロフィルターでろ過後、分画分子量 1 万の限外ろ過膜で ろ過した。なお、各成分の定量には、決定係数がR2 = 0.99 以上となった検量線を用い た。 アミノ酸定量、香気成分定量、抗酸化能の評価、および残存タンパク質の確認では、ホ エイ原料としてDMW を用い、DMW 濃度は 20% w/v、発酵温度は 30℃、初期 pH は pH 7 という条件で、NBRC 1735 を用いて 16 日間発酵させた溶液をサンプルとした。アミ ノ酸定量および香気成分定量には、限外ろ過したサンプルの原液を用いた。抗酸化能の 評価には、遠心分離したサンプルの上清を用いた。残存タンパク質の確認には、発酵前 のサンプル全体と、発酵後のサンプルの上清および全体を用いた。

(36)

34

2.5.1.

ラクトースの定量にはSomogyi-Nelson 法を用いた (N. Nelson, 1944; Somogyi, 1952)。1.5-mL 容マイクロチューブにソモギー銅液 40 µL と適当に希釈したサンプル 40 µL とを入

れ、撹拌後、10 分間煮沸した。煮沸後、サンプルチューブを水で急冷し、ネルソン液 40

µL を加えて撹拌した。この溶液に水 1000 µL を加え、撹拌後、室温で 10 分間反応させ た。10 分後、分光光度計 (U-1900, Hitachi High-Technologies Co., Tokyo, Japan) を用いて

波長540 nm における吸光度を測定した。なお、吸光度が 0.1–0.6 程度になるようにサン プルを希釈した。ラクトース・一水和物の標準液を用いて作成した検量線より、サンプ ルのラクトース濃度を計算した。ホエイ中の還元糖はすべてラクトースであるとみなせ るため、還元糖ではなくラクトースと記すこととした。 ラクトース定量における検量線の作成には、0.0, 1.0, 1.5, 2.0 2.5, 3.0 mM のラクトース・ 一水和物水溶液を用いた。

(37)

35

2.5.2.

エタノールの定量にはガスクロマトグラフィー (GC-2025, SHIMADZU Co., Kyoto, Japan) を用いた。検出器には水素炎イオン化検出器 (FID)を、カラムには Stabilwax キ ャピラリーカラム (長さ 30 m、内径 0.25 mm、膜厚 0.25 µm; Restek Co., Pennsylvania, USA)を、ガードカラムには極性不活性化ガードカラム (長さ 5 m、内径 0.25 mm; Restek) を、コネクターにはSiltek 処理済 Press Tight コネクター (Restek) を用いた。解析ソフ トにはLabSolutions (Version 5.51; SHIMADZU Co.) を用いた。キャリアガスにはヘリウ

ムを用い、スプリット比を1:25、線速度を 35 cm/s とした。 インジェクターおよび FID を 230°C に加熱した。カラムの昇温プログラムは以下であ る:50°C で 5 分間保持、15°C/min で 200°C まで昇温、200°C で 3 分間保持した。内部 標準として終濃度 0.01% v/v の n-アミルアルコールを用い、1 µL のサンプルを注入し た。各培養液を遠心分離後100 倍希釈した溶液 900 µL と、0.1% v/v の n-アミルアルコ ール水溶液100 µL とを混ぜた溶液をサンプルとした。エタノールの標準液を用いて作 成した検量線より、サンプルのエタノール濃度を計算した。 エタノール定量における検量線の作成には、0.005, 0.01, 0.05, 0.1, 0.2% v/v のエタノール 水溶液を用いた。各濃度のエタノール標準液900 µL と、0.1% v/v の n-アミルアルコー ル水溶液100 µL とを混ぜ、この溶液 1 µL を GC に注入した。エタノール標準液と内部 標準液との濃度比を横軸に、ピーク面積比を縦軸にとって検量線を作成した。

2.5.3. pH

前述した「至適初期pH の決定」における、任意の pH に調整するための乳酸添加量を

決定した予備実験には、pH メーターLAQUAact D-71 (HORIBA, Ltd., Kyoto, Japan) を用

いた。発酵試験における pH の経時変化の測定には、pH メーターLAQUAtwin pH-22

(HORIBA, Ltd., Kyoto, Japan) を用いた。遠心分離後のサンプルの上清 500 µL を用いて pH を測定した。

(38)

36

2.5.4.

アミノ酸の定量には高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を用いた。送液ユニットに はLC-20AD (SHIMADZU Co.) を、脱気ユニットには DGU-20A5 (SHIMADZU Co.) を、 蛍光検出器には RF-20A (SHIMADZU Co.) を、解析ソフトには Smart Chrom (Version 2.20J; Techno Alpha Co., Ltd., Tokyo, Japan) を用いた。逆相クロマトグラフィーカラムに はCOSMOSIL 5C18-MS-Ⅱパックドカラム (長さ 250 mm、内径 4.6 mm、粒径 5 µm; Nacarai

Tesque, Inc., Kyoto, Japan) を、ガードカラムには COSMOSIL 5C18-MS-Ⅱガードカラム (長

さ10 mm、内径 4.6 mm; Nacarai Tesque, Inc.) を用いた。

流速を1 mL/min、注入量を 5 µL、励起波長を 344 nm、蛍光波長を 450 nm とした。蛍光

誘導体化試薬として、o-フタルアルデヒド (OPA) を、反応助剤として 3-メルカプトプ

ロピオン酸 (MPA) を用いた。OPA 10 mg と MPA 5µL とをメタノール 1 mL に溶かし、 蛍光誘導体化溶液とした。蛍光誘導体化として、0.4 M ホウ酸バッファー (pH 9.0) 395 µL、蛍光誘導体化溶液 100 µL、サンプル 5 µL を混合後、約 2 分間反応させた。なお、 0.4 M ホウ酸バッファーの調製方法は以下である:ホウ酸 2.47 g を水に溶かし、0.1 M 水 酸化ナトリウム水溶液でpH 9.0 に調整し、100 mL にメスアップした。水系移動相 (A 液) として 50 mM リン酸カリウムバッファー (pH 6.0) を、有機系移動相 (B 液) とし てアセトニトリル:メタノール:水 (50 : 50 : 10, v/v/v) の混合溶液を用いた。なお、50 mM リン酸カリウムバッファーの調製方法は以下である:50 mM リン酸二水素カリウ ム (KH2PO4) 溶液 (3.40 g/500 mL) に、50 mM リン酸水素二カリウム (K2HPO4) 溶液 (1.36 g/200 mL) を、pH 6.0 になるまで加えた。移動相 A 液および B 液を調製後、孔径 0.45 µm のマイクロフィルターで吸引ろ過し、超音波で 10 分間脱気した。移動相のグラ ジエントプログラムは以下である:初期B 液濃度 14%、20 分間で B 液濃度 14%–18%、 20 分時点で B 液濃度 34%に上昇、10 分間で B 液濃度 34%–38%、7 分間で B 液濃度 38%–59%、37 分時点で B 液濃度 100%に上昇、B 液濃度 100%で 3 分間保持、40 分時点 でB 液濃度 14%に下降、B 液濃度 14%で 5 分間保持した。各アミノ酸の混合標準液を 用いて作成した検量線より、サンプルのアミノ酸濃度を計算した。

(39)

37

アミノ酸定量における検量線の作成には、25, 50, 250, 500, 2500 µM のアミノ酸混合標準 液を用いた。アミノ酸混合標準液には、システイン、プロリン、セレノシステイン、ピ ロリシンを除いたタンパク質を構成するアミノ酸18 種 (すべて L 体)、および γ-アミノ 酪酸 (GABA) を用いた。アミノ酸混合標準液の濃度を横軸に、ピーク面積を縦軸にと って検量線を作成した。 アミノ酸のクロマトグラムをFigure 2-3 に示す。グリシンとスレオニン以外のピークの 分離度は1.5 以上であった。グリシンとスレオニンのピークが完全に分離しなかったた め、この二つのアミノ酸のピーク面積を合わせた面積を用いて検量線を作成した。また、 濃度の表記もグリシンとスレオニンを合わせて計算した値を示した。 Asp Glu Asn Ser Gln His Gly Thr Arg Ala Tyr GABA Val Met Trp Phe Ile Leu Lys

-10

10

30

50

70

90

110

130

150

170

0 3 6 9 12 15 18 21 24 27 30 33 36 39 42 45

mV

Time (min)

(40)

38

2.5.5.

エタノール定量と同じ機器・測定方法を用いて、香気成分を定量した。ただし、内部標 準として終濃度100 mg/L の n-アミルアルコールと終濃度 10 mg/L のカプロン酸メチル を用いた。限外ろ過した各培養液180 µL と、内部標準液 (1000 mg/L の n-アミルアルコ ール溶液と 100 mg/L のカプロン酸メチル溶液) 20 µL とを混ぜた溶液をサンプルとし た。各香気成分の混合標準液を用いて作成した検量線より、サンプルの香気成分濃度を 計算した。 同定・定量する香気成分として、アルコール・アルデヒド系 (アセトアルデヒド、n-プ ロピルアルコール、イソブチルアルコール、イソアミルアルコール、2-フェニルエチル アルコール) の香気成分と、エステル系 (酢酸エチル、ダイアセチル、酢酸イソアミル、 カプロン酸エチル、酢酸2-フェニルエチル) の香気成分を用いた。 アルコール・アルデヒド系の香気成分各1000 mg とエステル系の香気成分各 100 mg と をエタノール100 mL に溶かし、さらに水で 10 倍希釈し、香気成分混合標準液とした。 検量線の作成には、この混合標準液と、混合標準液を 10% v/v エタノール水溶液で 10 倍、50 倍、100 倍、200 倍に希釈した溶液とを用いた。アルコール・アルデヒド系の内 部標準としてn-アミルアルコールを、エステル系の内部標準としてカプロン酸メチルを 用いた。n-アミルアルコール 1000 mg とカプロン酸メチル 100 mg とをエタノール 100 mL に溶かし、さらに水で 10 倍希釈し、内部標準液とした。各希釈倍率の香気成分混合 標準液900 µL と、内部標準液 100 µL とを混ぜ、この溶液 1 µL を GC に注入した。混 合標準液と内部標準液との濃度比を横軸に、ピーク面積比を縦軸にとって検量線を作成 した。

(41)

39

香気成分のクロマトグラムをFigure 2-4 に示す。Figure 2-4 における、アルコール・アル デヒド系の香気成分の濃度は100 mg/L、エステル系の香気成分の濃度は 10 mg/L であ る。ダイアセチル以外のピークの分離度は1.5 以上であった。 AcetA EtAc EtOH DA nPrOH iBuOH iAmAc MeCap iAmOH EtCap nAmOH 2-PEA 2-PE

-1000

2000

5000

8000

11000

14000

17000

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

µV

Time (min)

Figure 2-4. Chromatogram (GC-FID) of the volatile aroma compounds (mixed standard solution

and internal standard (IS) solution): AcetA, acetaldehyde; EtAc, ethyl acetate; EtOH, ethanol; DA, diacetyl; nPrOH, n-propyl alcohol (1-propanol); iBuOH, isobutyl alcohol (2-methyl-1-propanol); iAmAc, isoamyl acetate (3-methylbutyl acetate); MeCap (IS), methyl caproate; iAmOH, isoamyl alcohol (3-methyl-1-butanol); EtCap, ethyl caproate; nAmOH (IS), n-amyl alcohol (1-pentanol); 2-PEA, 2-phenylethyl acetate; 2-PE, 2-phenylethyl alcohol.

(42)

40

2.5.6.

抗酸化能の評価には、2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル (DPPH) 法を用いた (Brand-Williams, Cuvelier, & Berset, 1995; Chua, Lu, & Liu, 2018; Jaworska et al., 2011)。濃

度0.2 mM の DPPH をエタノールを用いて調製した。抗酸化能における標準物質として、 トロロックス (Trolox, 6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸) を用 いた。50% v/v エタノール溶液で調製した、0, 100, 200, 300, 400, 500 µM のトロロックス 標準液を用いて検量線を作成した。濃度 0 mM には、トロロックス標準液の代わりに 50% v/v エタノール溶液を用いた。各濃度のトロロックス溶液 100 µL、0.1 M Tris-HCl バ ッファー (pH 7.4) 400 µL、0.2 mM DPPH 500 µL を混合し、暗所、室温で 30 分間反応さ せた。なお、0.1 M Tris-HCl バッファーの調製方法は以下である:トリスヒドロキシメ チルアミノメタン (Tris) 2.42 g を水に溶かし、6 M 塩酸水溶液で pH 7.4 に調整し、200 mL にメスアップした。30 分後、分光光度計を用いて波長 517 nm における吸光度を測 定した。トロロックス濃度0 mM の時の吸光度 (A0 mM) を基準とし、各トロロックス濃 度における吸光度 (Ax mM) の阻害率 (%) を、式 (2-16) を用いて計算した。 阻害率 (%) = ((𝐴0 mM− 𝐴x mM) 𝐴⁄ 0 mM) × 100 (2-16) トロロックスの濃度を横軸に、吸光度の阻害率を縦軸にとって検量線を作成した。この 検量線より、活性酸素種を阻害するトロロックスの 50%阻害濃度 (IC50T) を計算した。 次に、発酵前後のサンプルをそれぞれ、50% v/v エタノール溶液で総量 200 µL となる ように10 倍、20 倍、30 倍、40 倍希釈し、上記と同じ条件で DPPH と反応させた。な お、希釈した各サンプル200 µL のうち 100 µL を DPPH と混合した。残りの 100 µL を DPPH の代わりにエタノールと混合することでブランクとした。式 (2-16) の各トロロ ックス濃度における吸光度 (Ax mM) を、各希釈倍率のサンプルにおける吸光度からブラ ンクを引いた値に置換して阻害率を計算し、得られた検量線から同じように活性酸素種 を阻害するサンプルの IC50Sを計算した。式 (2-17) を用いて、サンプルの IC50Sをトロ ロックス当量 (µmol TE/100 mL) に変換し、サンプルの抗酸化能とした。 抗酸化能 (µmol TE 100 mL⁄ ) = IC50T× (200 IC⁄ 50S) × (100 1000⁄ ) (2-17)

(43)

41

2.5.7.

残存タンパク質の確認には、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳 動 (SDS-PAGE) を用いた。 サンプル5 µL と変性剤 5 µL とを混合し、5 分間煮沸した。変性剤の調製方法は以下で ある:1.0 M Tris-HCl (pH 6.8) 30 mL、SDS 5.0 g、2-メルカプトエタノール 10 mL、グリ セロール20 mL、ブロモフェノールブルー0.15 g を混合し、水で 100 mL にメスアップ した。 分離ゲル (アクリルアミド濃度 13%) の作製方法は以下である:30%アクリルアミド 4300 µL、1.5 M Tris-HCl (pH 8.8) 2500 µL、10% SDS 100 µL、10% 過硫酸アンモニウム 100 µL、テトラメチルエチレンジアミン 4 µL、水 2900 µL を混合し、ゲルスラブ用ガラ ス板対に注入した。水飽和n-ブタノールをゲルに重層し、ゲルが固化するまで静置した。 水飽和n-ブタノールを水で洗い流した後、濃縮ゲル (組成:30%アクリルアミド 500 µL、 0.5 M Tris-HCl (pH 6.8) 700 µL、10% SDS 30 µL、10% 過硫酸アンモニウム 20 µL、テト ラメチルエチレンジアミン3 µL、水 1750 µL) を分離ゲルに重層し、コームを差し込み、 同様にゲルが固化するまで静置した。 固化したゲルからコームを抜き、ゲルを水で洗浄した。AE-6530M ラピダス・ミニスラ ブ電気泳動槽 (ATTO Co., Tokyo, Japan) に泳動バッファーを入れ、洗浄したゲルを取り 付けた。泳動バッファーの調製方法は以下である:Tris 30.3 g、グリシン 143.1 g、SDS 10.0 g を水に溶かし、水で 1 L にメスアップしたものを水で 10 倍希釈した。ゲルが浸る

まで泳動バッファーをさらに加えた。水で 20 倍希釈した分子量マーカー (Protein

Molecular Weight Marker (Broad); Takara Bio Inc., Shiga, Japan) 8 µL と、変性させたサンプ

ル5 µL とをそれぞれ、ゲルのウェルに入れた。泳動槽を電気泳動用電源装置 AE-8135

マイパワーⅡ 300 (ATTO Co.,) に接続し、電圧 300 V、ゲル 1 枚あたりの電流 30 mA で、

(44)

42

泳動終了後、ゲルをガラス板から外し、水で十分に洗浄した。洗浄後のゲルをクマシー ブリリアントブルー (CBB) 溶液に浸し、電子レンジで加熱した後、5 分間振とうして 染色した。CBB 溶液の調製方法は以下である:CBB G250 200 mg をエタノール 100 mL に溶かし、リン酸170 mL を加え、水で 2 L にメスアップした。染色後、ゲルを水で十 分に洗浄して電子レンジで加熱することを繰り返し、脱色した。

Figure 1-1. Comparison of component between milk and whey (Smithers, 2008). Ash means the  total amount of minerals present within a food
Figure 1-2. Scheme for the commercial utilizations of whey (Siso, 1996). WPC stands for whey  protein concentrate; SCP stands for single cell protein
Figure  2-1.  An  example  of  a  linked  rank  graph  (Baba,  1986).  This  example  shows  a  case with 8 rankings
Figure 2-3. Chromatogram (HPLC) of the amino acids (mixed standard solution).
+7

参照

関連したドキュメント

Ando, “High-speed atomic force microscopy shows dynamic molecular processes in photoactivated bacteriorhodopsin.,” Nat. Ando, “Structural Changes in Bacteriorhodopsin in Response

[r]

Ando, “High-speed atomic force microscopy shows dynamic molecular processes in photoactivated bacteriorhodopsin.,” Nat. Ando, “Structural Changes in Bacteriorhodopsin in Response

This paper proposes a method of enlarging equivalent loss factor of a damping alloy spring by using a negative spring constant and it is confirmed that the equivalent loss factor of

M…剛曰劉Ⅱ 、=3 2)TBAF 1)Bu3SnH ,鍼:苧 ace トトト 123 mm、 一一一一一一 111 ?99 bdf ●●●●。● nnn コ聿罰

Standard domino tableaux have already been considered by many authors [33], [6], [34], [8], [1], but, to the best of our knowledge, the expression of the

H ernández , Positive and free boundary solutions to singular nonlinear elliptic problems with absorption; An overview and open problems, in: Proceedings of the Variational

Acute effects of static stretching on the hamstrings using shear elastic modulus determined by ultrasound shear wave elastography: Differences in flexibility between