Figure 2-3. Chromatogram (HPLC) of the amino acids (mixed standard solution).
38 2.5.5.
エタノール定量と同じ機器・測定方法を用いて、香気成分を定量した。ただし、内部標 準として終濃度100 mg/Lのn-アミルアルコールと終濃度10 mg/Lのカプロン酸メチル を用いた。限外ろ過した各培養液180 µLと、内部標準液 (1000 mg/Lのn-アミルアルコ ール溶液と 100 mg/L のカプロン酸メチル溶液) 20 µL とを混ぜた溶液をサンプルとし た。各香気成分の混合標準液を用いて作成した検量線より、サンプルの香気成分濃度を 計算した。
同定・定量する香気成分として、アルコール・アルデヒド系 (アセトアルデヒド、n-プ ロピルアルコール、イソブチルアルコール、イソアミルアルコール、2-フェニルエチル アルコール) の香気成分と、エステル系 (酢酸エチル、ダイアセチル、酢酸イソアミル、
カプロン酸エチル、酢酸2-フェニルエチル) の香気成分を用いた。
アルコール・アルデヒド系の香気成分各1000 mgとエステル系の香気成分各100 mgと をエタノール100 mLに溶かし、さらに水で10倍希釈し、香気成分混合標準液とした。
検量線の作成には、この混合標準液と、混合標準液を 10% v/v エタノール水溶液で 10 倍、50倍、100倍、200倍に希釈した溶液とを用いた。アルコール・アルデヒド系の内 部標準としてn-アミルアルコールを、エステル系の内部標準としてカプロン酸メチルを 用いた。n-アミルアルコール1000 mgとカプロン酸メチル100 mgとをエタノール 100 mLに溶かし、さらに水で10倍希釈し、内部標準液とした。各希釈倍率の香気成分混合
標準液900 µLと、内部標準液100 µLとを混ぜ、この溶液1 µLをGCに注入した。混
合標準液と内部標準液との濃度比を横軸に、ピーク面積比を縦軸にとって検量線を作成 した。
39
香気成分のクロマトグラムをFigure 2-4に示す。Figure 2-4における、アルコール・アル デヒド系の香気成分の濃度は100 mg/L、エステル系の香気成分の濃度は 10 mg/L であ る。ダイアセチル以外のピークの分離度は1.5以上であった。
AcetA
EtAc
EtOH
DA nPrOH
iBuOH
iAmAc
MeCap iAmOH
EtCap nAmOH
2-PEA 2-PE
-1000 2000 5000 8000 11000 14000 17000
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18
µV
Time (min)
Figure 2-4. Chromatogram (GC-FID) of the volatile aroma compounds (mixed standard solution and internal standard (IS) solution): AcetA, acetaldehyde; EtAc, ethyl acetate; EtOH, ethanol;
DA, diacetyl; nPrOH, n-propyl alcohol (1-propanol); iBuOH, isobutyl alcohol (2-methyl-1-propanol); iAmAc, isoamyl acetate (3-methylbutyl acetate); MeCap (IS), methyl caproate;
iAmOH, isoamyl alcohol (3-methyl-1-butanol); EtCap, ethyl caproate; nAmOH (IS), n-amyl alcohol (1-pentanol); 2-PEA, 2-phenylethyl acetate; 2-PE, 2-phenylethyl alcohol.
40 2.5.6.
抗酸化能の評価には、2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル (DPPH) 法を用いた (Brand-Williams, Cuvelier, & Berset, 1995; Chua, Lu, & Liu, 2018; Jaworska et al., 2011)。濃
度0.2 mMのDPPHをエタノールを用いて調製した。抗酸化能における標準物質として、
トロロックス (Trolox, 6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸) を用 いた。50% v/vエタノール溶液で調製した、0, 100, 200, 300, 400, 500 µMのトロロックス 標準液を用いて検量線を作成した。濃度 0 mM には、トロロックス標準液の代わりに
50% v/vエタノール溶液を用いた。各濃度のトロロックス溶液100 µL、0.1 M Tris-HClバ
ッファー (pH 7.4) 400 µL、0.2 mM DPPH 500 µLを混合し、暗所、室温で30分間反応さ せた。なお、0.1 M Tris-HClバッファーの調製方法は以下である:トリスヒドロキシメ チルアミノメタン (Tris) 2.42 gを水に溶かし、6 M塩酸水溶液でpH 7.4に調整し、200 mLにメスアップした。30分後、分光光度計を用いて波長517 nmにおける吸光度を測 定した。トロロックス濃度0 mMの時の吸光度 (A0 mM) を基準とし、各トロロックス濃 度における吸光度 (Ax mM) の阻害率 (%) を、式 (2-16) を用いて計算した。
阻害率 (%) = ((𝐴0 mM− 𝐴x mM) 𝐴⁄ 0 mM) × 100 (2-16)
トロロックスの濃度を横軸に、吸光度の阻害率を縦軸にとって検量線を作成した。この 検量線より、活性酸素種を阻害するトロロックスの 50%阻害濃度 (IC50T) を計算した。
次に、発酵前後のサンプルをそれぞれ、50% v/v エタノール溶液で総量200 µL となる ように10倍、20倍、30倍、40倍希釈し、上記と同じ条件でDPPHと反応させた。な お、希釈した各サンプル200 µLのうち100 µLをDPPHと混合した。残りの100 µLを DPPH の代わりにエタノールと混合することでブランクとした。式 (2-16) の各トロロ ックス濃度における吸光度 (Ax mM) を、各希釈倍率のサンプルにおける吸光度からブラ ンクを引いた値に置換して阻害率を計算し、得られた検量線から同じように活性酸素種 を阻害するサンプルの IC50Sを計算した。式 (2-17) を用いて、サンプルのIC50Sをトロ ロックス当量 (µmol TE/100 mL) に変換し、サンプルの抗酸化能とした。
抗酸化能 (µmol TE 100 mL⁄ ) = IC50T× (200 IC⁄ 50S) × (100 1000⁄ ) (2-17)
41 2.5.7.
残存タンパク質の確認には、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳 動 (SDS-PAGE) を用いた。
サンプル5 µLと変性剤5 µLとを混合し、5分間煮沸した。変性剤の調製方法は以下で ある:1.0 M Tris-HCl (pH 6.8) 30 mL、SDS 5.0 g、2-メルカプトエタノール10 mL、グリ
セロール20 mL、ブロモフェノールブルー0.15 gを混合し、水で100 mLにメスアップ
した。
分離ゲル (アクリルアミド濃度 13%) の作製方法は以下である:30%アクリルアミド 4300 µL、1.5 M Tris-HCl (pH 8.8) 2500 µL、10% SDS 100 µL、10% 過硫酸アンモニウム
100 µL、テトラメチルエチレンジアミン4 µL、水2900 µLを混合し、ゲルスラブ用ガラ
ス板対に注入した。水飽和n-ブタノールをゲルに重層し、ゲルが固化するまで静置した。
水飽和n-ブタノールを水で洗い流した後、濃縮ゲル (組成:30%アクリルアミド500 µL、
0.5 M Tris-HCl (pH 6.8) 700 µL、10% SDS 30 µL、10% 過硫酸アンモニウム20 µL、テト ラメチルエチレンジアミン3 µL、水1750 µL) を分離ゲルに重層し、コームを差し込み、
同様にゲルが固化するまで静置した。
固化したゲルからコームを抜き、ゲルを水で洗浄した。AE-6530Mラピダス・ミニスラ ブ電気泳動槽 (ATTO Co., Tokyo, Japan) に泳動バッファーを入れ、洗浄したゲルを取り 付けた。泳動バッファーの調製方法は以下である:Tris 30.3 g、グリシン 143.1 g、SDS
10.0 gを水に溶かし、水で1 Lにメスアップしたものを水で10倍希釈した。ゲルが浸る
まで泳動バッファーをさらに加えた。水で 20 倍希釈した分子量マーカー (Protein Molecular Weight Marker (Broad); Takara Bio Inc., Shiga, Japan) 8 µLと、変性させたサンプ
ル5 µLとをそれぞれ、ゲルのウェルに入れた。泳動槽を電気泳動用電源装置AE-8135
マイパワーⅡ 300 (ATTO Co.,) に接続し、電圧300 V、ゲル1枚あたりの電流30 mAで、
ブロモフェノールブルーがゲルの下部に移動するまで約60分間電気泳動した。
42
泳動終了後、ゲルをガラス板から外し、水で十分に洗浄した。洗浄後のゲルをクマシー ブリリアントブルー (CBB) 溶液に浸し、電子レンジで加熱した後、5 分間振とうして 染色した。CBB溶液の調製方法は以下である:CBB G250 200 mgをエタノール100 mL に溶かし、リン酸170 mLを加え、水で2 Lにメスアップした。染色後、ゲルを水で十 分に洗浄して電子レンジで加熱することを繰り返し、脱色した。
43
3.
3.1.
ホエイ (RW) または脱塩ホエイ (DMW) を原料とした発酵飲料の写真を Figure 3-1 に 示す。写真左側に示したRWの発酵産物は濁っていたが、写真右側に示したDMWの発 酵産物は上清が透き通っていた。DMWの発酵中、3日程度でDMW溶液に沈殿が生じ、
上清が透明な黄色になった。一方で、RW溶液中のタンパク質は沈殿せず、溶液は発酵 終了後も濁ったままであった。
DMW溶液においては、エタノール濃度の上昇またはpHの低下にともなって、DMW溶 液中のタンパク質が変性・沈殿したと考えた。RWとDMWの大きな違いはミネラル濃 度であることから、タンパク質の安定性には、エタノール濃度の上昇やpHの低下だけ でなく、ミネラル濃度やその他の要因も関わっていることが示唆された。