マイクロ波によるエネルギー伝送技術の研究開発
齊藤
孝
†三原荘一郎
†中村
修治
†伊地智幸一
†本間
幸洋
††佐々木拓郎
††小澤雄一郎
†††藤原
暉雄
†††Status of Development of Microwave Power Transmission System for SSPS
Takashi SAITO
†, Shoichiro MIHARA
†, Shuji NAKAMURA
†, Koichi IJICHI
†,
Yukihiro HOMMA
††, Takuro SASAKI
††, Yuichiro OZAWA
†††, and Teruo FUJIWARA
†††あらまし 財団法人宇宙システム開発利用推進機構では,平成21 年度(2009 年度)より経済産業省から委託 を受けて「太陽光発電無線送受電技術研究開発(マイクロ波による精密ビーム制御技術の研究開発)」事業を推進 している.本研究開発は,将来の宇宙太陽光発電システムへの応用を念頭に,マイクロ波によるエネルギー伝送 技術の実証を目的とする.そのためにマイクロ波電力伝送試験モデルを試作し,地上(屋内及び屋外)において 電力伝送試験を行う計画である.現在取り組んでいる研究開発の概要について紹介する. キーワード マイクロ波エネルギー伝送,無線送電,地上実証,宇宙太陽光発電システム
1.
ま え が き
1. 1 従来技術との比較 財 団 法 人 宇 宙 シ ス テ ム 開 発 利 用 推 進 機 構( 以 下 J-spacesystems)〈旧,無人宇宙実験システム研究開 発機構(USEF)〉では平成12年度から平成19年度 まで経済産業省及び財団法人機械システム振興協会か らの委託を受けて,宇宙太陽光発電システム(Space Solar Power System,以下SSPS)に関する調査研究 を行ってきた.その中でSSPSの中核技術であるマイ クロ波による無線送受電技術に関し,種々の要素技術 検討を実施してきた.また,平成21年度から平成24 年度までは「太陽光発電無線送受電技術の研究開発 (マイクロ波による精密ビーム制御技術の研究開発)」 の基本設計を行った.ここでは基本設計の成果概要と, これまで行われてきたマイクロ波による無線送受電 試験[1], [2]と本研究開発が目指す目標との違いを述 べる. †財団法人宇宙システム開発利用推進機構,東京都Japan Space Systems, Space Systems Division, 3–5–8 Shibakoen, Minato-ku, Tokyo, 105–0011 Japan
††三菱電機株式会社,尼崎市
Mitsubishi Electric Corporation, 8–1–1 Tsukaguchi-Honmachi, Amagasaki-shi, 661–8661 Japan
†††(株)IHIエアロスペース,富岡市
IHI Aerospace Co., Ltd., 900 Fujiki, Tomioka-shi, 370–2398 Japan 本研究開発の目標設定は,以下のようである. • 技術的に新しい一歩(世界で初めて) • 宇宙での軌道上実証実験につながる試作 従来試験との比較では,これまでの大出力の試験は, • パラボラ型送電アンテナ • 電子管(マグネトロン)方式増幅器 • 電力伝送周波数2.45 GHz の組合せが主体であった.また,マイクロ波ビーム方 向制御についても屋外での定量的検証は行われていな い.本研究開発では将来の発展性をも考慮して以下の 技術を組み合わせた地上実証を行う(表1). すなわち, • 5.8 GHz帯で, • 複数のフェイズドアレーアンテナモジュールを 使用してマイクロ波ビームを精密に制御し, • キロワット級の出力 で試験をすることは,世界的にも例がない試みである. 1. 2 これまでの主な活動 フェイズドアレーアンテナによるマイクロ波送受電 技術に関してJ-spacesystems(USEF)では種々の要 素試作試験やシステム検討を行ってきた. (1)アクティブ集積アンテナの試作試験 平成14∼15年度には,それぞれAIA#1,AIA#2 と名付けられた積層型の高効率アクティブ集積アンテ
表 1 本研究開発に屋外試験(地上)の特徴 Table 1 Characteristics of the MPT system/test.
図 1 発送電一体型パネル(断面) Fig. 1 Sandwich panel section.
ナ(AIA: Active Integrated Antenna)の試作試験を 行った.パイロット信号を受信し,パイロット信号方 向へマイクロ波を放射するレトロディレクティブ機能 を実現するために,AIA#1はソフトウェア的に(パ イロット信号方向を計算機で計算・検出),AIA#2は ハードウェア的に(各アンテナ素子の位相共役回路で) 実現している.[3] (2)移動体への無線送電実験 平成17∼18年度に,移動体への無線送受電適用例 として,電動移動台(ローバー)に対する無線送電を 行った.使用した周波数は5.8 GHzである.走行は, 前後往復運動と送電パネルから等距離に動く円弧往復 運動とし,バッテリへの充電状況をモニタすることで 電力収支を確認した.送電部はレトロディレクティブ 機能はもたないが,将来の宇宙での応用に向けて軽量 化を考慮した送電パネルとした.[3], [4] (3)宇宙太陽光発電システム(SSPS)の検討 平成16∼19年度に経済産業省より受託した「太陽 光発電利用促進技術調査」の中で,システム専門委員 会(佐々木進主査)及び発送電技術専門委員会(篠原 真毅主査)からマルチバス型のSSPS案が提唱された. SSPSを構成するユニットは発送電一体型パネル(両 面の太陽電池で発電し下面のアンテナから送電,図1) をテザーでつった発送電システムである.1ユニット は100 m× 95 mのパネルからなり,SSPSは625ユ ニット(2.5 km× 2.375 km)で構成される(図2). ユニットは,折り畳まれて(5 m× 10 m × 3.8 m, 図 2 マルチバス型 SSPS の階層構造 Fig. 2 Hierarchical structure of power transmitting
panels. 40 ton)輸送機の貨物室に搭載され,低軌道まで運ば れる.発電コストに大きく関係する宇宙への輸送効率 を上げるためには,送電部は薄型・軽量であることが 要求される[4].
2.
太陽光発電無線送受電技術研究開発
2. 1 研究開発目的及び実施体制 経済産業省では,平成21年度(2009年度)より 「太陽光発電無線送受電技術研究開発」を開始した.こ の事業の目的は,宇宙太陽光発電システムの中核的技 術であるマイクロ波による無線送受電技術の確立に向 け,安全性や効率性等の確保に不可欠な精密ビーム制 御技術の研究開発を行うことにより,当該システムの 実現を目指すことである.J-spacesystemsではこの うち「マイクロ波による精密ビーム制御技術の研究開 発」を受託した. これは,複数のフェイズドアレーアンテナ間の位相 同期を行い,レトロディレクティブ技術を活用し,マ イクロ波ビームを受電アンテナに向けて指向制御する 精密ビーム制御技術の確立を目指すものである. J-spacesystemsはマイクロ波電力伝送試験モデルを 開発し(送電部は三菱電機株式会社,受電部は株式会 社IHIエアロスペースが担当),ビーム方向制御部を 担当する独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA) と連携・協力して研究開発を実施している[3]∼[5]. 2. 2 研究開発目標 マイクロ波電力伝送試験を屋内・屋外で実施し,そ れぞれの目標は次のようである. (1)伝送距離10 m以上において角度精度0.5度rms (二乗平均平方根)のビーム制御技術の確立. (2)精密ビーム制御技術による屋外でのマイクロ波 電力伝送試験(伝送距離:50 m程度,出力:キロワット級)の実施. 本研究開発成果が将来のSSPSに適用されるまでに は,いくつかの段階的改善を経てからのことになろうが, 精密ビーム制御技術の有効性は確認できよう(表10).
3.
マイクロ波電力伝送試験モデル
3. 1 全体システム マイクロ波電力伝送試験モデルの概念図を図3に 示す. 本試験モデルは,送電部,受電部,ビーム方向制御 部から構成され,これらを組み合わせた状態で,屋外 でのマイクロ波電力伝送試験を実施する.各部への主 な要求は以下のとおりである[3]∼[5]. (1)送電部は,将来の軌道上実証への技術的なつな がりも考慮し,小形・軽量・高効率化が望める半導体 を使用したフェイズドアレーアンテナを使用すること とし,複数の送電モジュールでアレーアンテナを構成 し,マイクロ波の位相同期を図りつつ,キロワット級 のエネルギーを送電可能なものとする. (2)受電部は,マイクロ波の電気エネルギーへの効 率的な変換を考慮し,ショットキーバリアダイオード を使用したレクテナアレーとする.レクテナアレーは, 複数の受電モジュールから構成され,試験等における 取扱いが容易なものとする. (3)ビーム方向制御部は,高精度のビーム制御方式 として,ソフトウェアレトロディレクティブ方式(振 幅モノパルス方式)を採用する.また,本試験モデル は受電電力が最大となるよう,受電部でのマイクロ波 受電強度測定結果をもとに,送電部からのマイクロ波 の位相を制御する素子電界ベクトル回転法(REV法) を採用する. 各サブシステムについての説明を以下に記す. 3. 2 送 電 部 3. 2. 1 送電部の機能,要求性能 地上での電力伝送試験を行うために,送電部に必要 とされている機能を表2に示す.表中のNo.1∼4は SSPSの送電部を模擬した機能であり,No.5∼7は地 上での試験を安全・円滑に進めるための機能である. また,送電部の主要性能の仕様値を表3に示す.送 電モジュール内で生成したマイクロ波を増幅・放射す るサブアレー部は,電気性能(高出力・高効率)と薄 型・軽量化を両立することが重要な仕様となっている. 3. 2. 2 開発コンセプト 図4に送電部の構想図を示す.送電パネルは4枚の 図 3 マイクロ波電力伝送試験モデル Fig. 3 Outline of ground test model.表 2 送電部の主要機能
Table 2 Function of power transmitting section.
表 3 送電部の主要性能(仕様値)
Table 3 Specifications of power transmitting section.
図 4 送電部の構想図
図 5 サブアレー部の構想図 Fig. 5 Conception picture of sub-array.
送電モジュールで構成され,1枚の送電モジュールは, 76サブアレーで構成される.各送電モジュールは,送 電モジュール調整治具と送電パネル支持構造に取り付 けられ,自立して設置が可能である.また,ビーム方 向制御精度の検証試験のために,各送電モジュールは, 独立して仰角やビーム照射方向に駆動できるように なっている. また,図5に,サブアレー部の断面の構造図を示 す[6].サブアレー部は,マイクロ波と電源・制御信号を 各HPAモジュールに分配する給電回路(BFN:Beam Forming Network),マイクロ波を増幅するHPAモ ジュール,及び放射するサブアレーANTで構成され る.このサブアレー部が将来のSSPSの送電部を模擬 したものであり,その他の排熱治具や支持治具は地上 での試験に必要な治具である. 次に高出力・高効率化と薄型・軽量化を両立するサ ブアレー部を実現するための開発コンセプトを示す. (1) サブアレーANTとHPAモジュールをBFN の上に並べた構造とし,サブアレーANT・BFNは薄 型化と将来の量産性(製造性・コスト)を考慮し,誘 電体基板で実現する. (2) 素子アンテナ4素子に対して,一つのHPAモ ジュールが対応する構成とし,HPAモジュールは平面 回路部と垂直給電部を組み合わせて薄型化を図る.こ の構成は,ビーム走査時にグレーティングローブが発 生するが,主ビームに対して−10 dB程度であり,サ イドローブレベルとして許容できる[6]. (3) BFNはHPAモジュールの入力側にあり,低 損失化よりも薄型化設計が要求される.そこで,RF 分配回路と制御信号部を同一の多層基板で配線するこ とで薄型化を図る. 3. 2. 3 設 計 目 標 上述のコンセプトを考慮して,サブアレー部の厚さ 表 4 サブアレー部厚さ・質量の配分表(設計目標) Table 4 Sub-array thickness and weight budgets.
表 5 サブアレー部の電気性能(設計目標) Table 5 Target electric performances of power
transmitting section. と質量の配分を行った(表4参照).厚さについては, これまでの要素試作の結果を反映して,表3の仕様値 よりも高い目標値(34 mm)を設定して配分している. また,サブアレー部の電気性能(マイクロ波出力・ DC-RF変換効率)について性能配分した結果を表5 に示す.ここでも,要素試作の結果を反映して,マイ クロ波出力411 W/モジュール,総合効率35%という, 仕様値よりも高い目標値を設定して性能配分した. 3. 2. 4 要 素 試 作 (1) HPAモジュール HPAモジュールは入力されたマイクロ波を増幅し, 位相制御信号に基づいてマイクロ波の位相を設定する. これまでに,キーパーツであるHPAについて,窒化ガ リウム(GaN)半導体を用いたF級増幅器を開発し, 70.5%の電力付加効率(マイクロ波出力:7.3 W)を達 成した[7], [8].更に,HPAや移相器などをモジュール 化する試作を行った.移相器はビーム方向制御の観点 から,移相量精度3度rms以下を設計目標とし,5 bit ディジタル移相器を使用している.モジュール化に際 し,カバーの軽量化設計を行い,可能な限り薄肉化し ている. 図6にHPAモジュール試作品の外観写真を,表6 に評価結果を示す.同表に示すとおり,設計目標を満 足する良好な結果が得られている[9]. (2)サブアレーANT サブアレーANTは,HPAモジュールから出力さ
図 6 HPAモジュール試作品の外観写真 Fig. 6 Prototype HPA module.
表 6 HPAモジュールの試作結果(5 台分の平均値) Table 6 Measurement results of HPA modules.
図 7 76サブアレー ANT(左)とサブアレー ANT(右) の試作品外観
Fig. 7 Picture of 76-Sub-array antennas and a Sub-array antenna. れるマイクロ波を4分配する分配器と,四つのアンテ ナ素子から構成される.これまでに,図7に示すサブ アレーANT単体での試作評価[6],及びそれらを76 個並べた76サブアレーANTの試作評価を実施した. 76サブアレーANTの評価では,マイクロ波ビーム の指向方向が正面方向の場合で2.6 dB,10度ビーム 走査した場合で3.5 dBの軸比であった.これは,受電 部側の軸比を仮に1 dBとすると,正面方向で0.18 dB (4.1%),10度ビーム走査時で0.28 dB(6.3%)の伝 送効率劣化に相当する.上記の原因として,アンテナ 素子の近くに基板固定用ねじが配置されていることな どが挙げられる.今後は伝送効率向上のため,サブア レーANT単体の構造見直しも含めて,更に良好な軸 比特性(目標:ビーム走査範囲内で3 dB以下)を得 図 8 受電部ブロックダイアグラム
Fig. 8 Block diagram of the power receiving section.
るための検討を行っていく. (3) BFN BFNはマイクロ波と電源・制御信号を分配して各 HPAモジュールに供給する.一般には製造・試験の容 易性から,RF系統と制御系統を別基板とするが,本 開発では薄型化を目指して多層基板で実現する方針と した.ただし,一般的な製造設備で製造できるように, 送電モジュールを4分割した,4種類の19分配器で BFNを構成することとした.また,BFNはHPAモ ジュールの発熱を排熱するための伝熱ブロックが貫通 する穴が必要となる.RF/制御系統ともに,これらの 貫通穴を避けるように,かつ互いに電気的に干渉しな いように多層基板内の線路レイアウトを行った. 現在までの試作では,BFN(19分配器)試作品の 厚さ・質量共に表4の設計目標を満足しており,RF 信号と制御信号の干渉などの問題もなく,良好な結果 が得られている. 3. 3 受 電 部 受電部は受電アンテナ,整流回路,レクテナ制御装 置等から構成される.受電部のブロックダイアグラム を図8に,主要諸元を表7に示す. 受電部の基本設計において,受電モジュール1枚及 びレクテナ制御ユニット1台を組み合わせたサブシ ステムの動作確認及びRF-DC変換効率の取得を実施 した.実験は京都大学生存圏研究所高度マイクロ波エ ネルギー伝送実験装置(A-METLAB)にて実施した. 図9に動作実験写真を示す.14.5 [m]離れた位置から マイクロ波を放射し,受電モジュールにて受電した. 受電モジュールはマイクロ波入射面にアンテナを64 素子(2素子サブアレー× 32)配置し,アンテナ背面
表 7 受電部主要諸元
Table 7 Specifications of power receiving section.
図 9 動作実験写真 Fig. 9 System test.
には整流回路を配置した表裏一体型である.受電アン テナの配置は,受電アンテナを受電面に効率良く敷き 詰められる三角形配置(アンテナ間隔は0.9波長)と した.整流回路は15並列× 2直列としてレクテナ制 御ユニットに接続した.レクテナ制御ユニットは整流 回路を高効率動作させるとともに,電力を電力分配ユ ニットに伝達する. 試験では,あらかじめ受電モジュール設置位置にお けるマイクロ波の電力束密度を測定し,別途測定した アンテナ利得から求めた実効開口面積を用いて,アン テナが受電する電力を求めた.次に受電モジュールを 設置してマイクロ波を入射させ,レクテナ制御ユニッ トの出力を測定した.表8に実験結果を示す. ・受電モジュール整流回路RF-DC変換効率:63[%] 表 8 実 験 結 果 Table 8 Test result.
・レクテナ制御ユニット電力伝達効率:93[%] から,RF-DC変換効率は59[%]となり,仕様値の 50[%]以上を満足できる見込みを得た. 受電部効率への寄与が大きいレクテナ及びレクテナ 制御ユニットの設計の目処を得たことから,今後は他 の構成要素である受電パネル架台,電力分配ユニット, 受電部制御監視ユニット等の検討に移る.
4.
将来
SSPS
へのつながり
4. 1 送電部の薄型軽量化 前述のようにSSPSのコスト低減に向けては,送電 部の軽量化・薄型化も重要な指標となってくる. 1. 2でふれた過去の実施例(AIA#2)と本研究開 発目標及び将来目標の比較を表9に示す.同表のよう に改善は進んでいるが,今後もステップを踏みつつ, 将来目標に向けて努力していく所存である. 4. 2 ビーム制御精度 SSPSのビーム制御目標としては,受電面における ビーム幅(ヌル点間距離とする)の1/10の距離に相当 する角度以下としている(図10).地上試験とSSPS でこの角度を比較すると表10のようになる. 将来のSSPSの角度精度要求を満たすためには10000 分の1度オーダの精度が必要である.その達成のため には,各素子の位相誤差低減を図る必要があることは もちろんであるが,決して達成困難な目標ではない. なぜなら, σ2 θ= 12σ 2 N3 (1) のように,素子数Nの増加に助けられてビーム方向 誤差σθ の減少が期待できるからである[10].ここに, σθ:ビーム方向誤差(rad), σ:各素子の位相誤差(rad), N:素子数(一次元方向の制御単位数)5.
む す び
平成21年度から平成24年度まで,経済産業省より表 9 送電モジュールの軽量・薄型化目標 Table 9 Target weight and thickness of the power
transmitting module.
図 10 許容ずれ範囲の定義
Fig. 10 Definition of beam steering control target. 表 10 許容ずれ範囲
Table 10 Target precision of beam steering control.
受託した「太陽光発電無線送受電技術の研究開発(マ イクロ波による精密ビーム制御技術の研究開発)」を 実施した.基本設計が終了し,今後は詳細設計及び製 作・試験に移行する予定である. 送電部については,要求に基づいて,電気性能と機 械性能の性能配分値を検討し,HPAモジュール,サ ブアレーANT,BFNの要素試作を行った.これらの 試作の結果,それぞれの配分値を達成できる見通しを 得た.今後は,HPAモジュールとサブアレーANT, BFNが一体となったサブアレー部の試作を行い,電 気的性能及び機械的な性能を最終確認し,その結果を もとに最終的な送電部の製作を行う予定である. 受電部については,受電モジュール及びレクテナ制 御ユニットの基本設計を実施した.屋外試験に使用さ れる受電モジュールには,コスト効率の観点から既存 (市販品)の整流ダイオードが使用されるが,実績の あるダイオードでも,多数集積時の故障に対する信頼 性向上及び損失の低減が技術課題である.なお,変換 効率に関する将来的な要求の増大に備えて高効率の GaNダイオードも並行して検討した. ビーム方向制御部については,JAXA主体に開発が 行われており,屋内試験で電力伝送試験モデルの一部 と組み合わせて所期の性能確認が行われたのち,屋外 試験に供される. 本研究開発は,将来的には宇宙太陽光発電システム に適用されることを念頭に,まず地上での技術実証を 行うものである.ここで得られた知見を踏まえて,宇 宙での実証につなげることが期待されている. 文 献 [1] 下倉尚義,賀谷信幸,篠原真毅,松本 紘,“定点間マイク ロ波送電実験,”電学論(B),vol.116, no.6, pp.648–653, 1996. [2] 藤野義之,藤田正晴,賀谷信幸,恩田昌彦,富田一正,“高 効率レクテナの開発と無人飛行船,”通信総合研究所季報, vol.44, no.3, pp.139–160, 1998. [3] 布施嘉春,斉藤 孝,三原荘一郎,伊地智幸一,苗村康次, 本間幸洋,佐々木拓郎,小澤雄一郎,藤原栄一郎,藤原暉雄, “マイクロ波地上エネルギー伝送実験の概要と進捗,”信学 技報,WPT2010-30, 2011. [4] 斉藤 孝,三原荘一郎,中村修治,伊地智幸一,“マイク ロ波地上エネルギー伝送実験の概要と進捗,”信学技報, WPT2012-06, 2012.
[5] T. Saito, Y. Fuse, S. Mihara, S. Nakamura, K. Ijichi, Y. Homma, T. Sasaki, E. Fujiwara, Y. Ozawa, and T. Fujiwara, “Microwave WPT technology devel-opments for SSPS application,” Proc. ICTRS2012, pp.35–43, Aug. 2012. [6] 佐々木拓郎,本間幸洋,布施嘉春,斉藤 隆,三原荘一郎, “マイクロ波無線電力伝送試験用送電部の開発,”第 55 回宇 宙科学技術連合講演会講演集,JSASS-2011-4129, 2011. [7] 山中宏治,津山祥紀,鮫島文典,本間幸洋,佐々木拓郎,苗村 康次,茶木 伸,“5.8 GHz 高調波整合型内部整合 GaN 高効率増幅器,”第 13 回宇宙太陽光発電システムシンポジ ウム講演要旨集,2010.
[8] Y. Tsuyama, K. Yamanaka, K. Namura, S. Chaki, and N. Shinohara, “Internally-matched GaN HEMT high efficiency power amplifier for SPS,” IEEE IMWS-IWPT2011 Proc., pp.41–44, 2011.
[9] 津山祥紀,鮫島文典,本間幸洋,佐々木拓郎,藤井利浩, “薄型化送電モジュールの開発,”第 15 回宇宙太陽光発電 システムシンポジウム講演要旨集,pp.8–11, 2012. [10] R. Mailloux, Phased Array Antenna Handbook, 2nd
ed., Artech House, 2005.
(平成 24 年 12 月 4 日受付,25 年 3 月 27 日再受付, 8月 9 日公開)
齊藤 孝 昭 53 横浜国立大学大学院工学研究科修 士課程了.同年川崎重工業(株)入社,航 空機設計等に従事.平 13 無人宇宙実験シ ステム研究開発機構(現,宇宙システム開 発利用推進機構)に出向.主に,宇宙太陽 光発電システムの研究に従事. 三原荘一郎 昭 54 東京大学大学院工学系研究科航空 学専攻修士課程了,同年三菱電機(株)入 社,平 16 無人宇宙実験システム研究開発 機構出向,平 24(財)宇宙システム開発 利用研究機構に移籍(先進宇宙担当 GM), 国際宇宙航行アカデミー(IAA)正会員. 中村 修治 昭 51 金沢工大・電子卒.同年,日本電 子開発(株)入社.平 11(財)無人宇宙実 験システム研究開発機構に出向.衛星運用 システム業務等を担当.平 24(財)宇宙シ ステム開発利用推進機構に移籍.SSPS 事 業を担当. 伊地智幸一 (正員) 昭 51 東京大学大学院工学研究科博士課 程了.博士(電子工学).同年三菱電機鎌 倉製作所入社.平 5 より財団法人無人宇宙 実験システム研究開発機構.合併により平 24(財)宇宙システム開発利用推進機構第 一技術本部長.IEEE,AIAA,日本航空宇 宙学会,日本ロケット協会各会員,IAA 正会員. 本間 幸洋 平 12 法政大学大学院工学研究科システ ム工学専攻博士後期課程了.工博.同年三 菱電機(株)入社.以来,電波・光学の観 測システム,及び宇宙太陽光発電等のマイ クロ波応用工学の製品開発に従事.現在, 同社通信機製作所に勤務. 佐々木拓郎 平 11 東京工業大学大学院理工学研究科 修士課程了.同年三菱電機(株)入社.以 来,アンテナ放射・給電系回路と無線電力 伝送システムの開発設計に従事.現在,同 社通信機製作所勤務. 小澤雄一郎 平 15 石川島播磨重工業(株)(現(株) IHI)入社.同年(株)IHI エアロスペー ス出向.以来,電装設計,飛しょう体通信 システムの開発,マイクロ波送受電システ ムの開発等に従事. 藤原 暉雄 (株)IHI エアロスペース