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『源氏物語』係結小考 : 第二十八巻「野分」巻

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(1)

﹁源氏物語﹄

││第二十八巻﹁野分﹂巻

l

l

雄 輔 本稿は、いわゆる﹁係り結び﹂の研究であるが、狭義の﹁

i

ぞ・なん・ゃ・か

1

連体形﹂の場合と、﹁ーこそ

i

巳然形﹂の場合に範囲を限り、﹁ーは・も

1

終止形﹂については取り上げていない。又、係助詞の用法として、 断止法(文末に終助詞的に用いる用法)があるが、こちらの方は取り上げている。従って、厳密には、係助詞 ﹁ぞ・なん・ゃ・か・こそ﹂の係り用法と断止法の研究と言うべきものであるが、簡潔を期して、表題のように し た も の で あ る 。 今回﹁野分﹂巻を選んだのは、私の主催する﹃源氏物語ゼミ﹄という自主ゼミで、たまたま本年度この巻を扱っ ているからという単純な理由による。﹃源氏物語﹄五十四帖全巻をまとめたものを刊行できる日を夢みつつ、そ の一里塚としてここに発表させていただく。 -356-﹁野分﹂の全文(和歌も含む)における係助詞﹁ぞ﹂ ﹁なむ﹂﹁や﹂﹁か﹂﹁こそ﹂の総数は八三例で、各係助 詞の比率は、次の表 1 のとおりである。﹁や﹂は疑問・ 反語の場合に限り、いわゆる間投助詞の﹁や﹂は除外 した。百分率の数値は小数点以下第二位を四捨五入し

(2)

てあるので、計の一OOパーセントの値に多少の誤差 が生じることがある。全文の表から、言語場面により、 和歌と散文、散文を吏に地の文と話の文、地の文を又 更に、会話文と心話文という具合に、次第に詳しい表 を作って見て行くことにする。 表

1

野分(全文) 山口雄輔 「文学部紀要」文教大学文学部第11-2号 ぞ な む や 24 11 15 用例数 28.9 % 13.3 % 18.1 % 百分率 カ 五 こ そ 計 23 83 10 12.0 % 27.7 % 100 % 韻文である和歌ほ別に扱うことにして、表ーから和 歌を引いて、次の表 2 を 作 る 。 ( ﹁ な む ﹂ ﹁ な ん ﹂ は 区 別せず、﹁なむ﹂として扱った) 表 2 野分(散文) ぞ な む や 用例数 24 11 15 百分率 29.3 % 13.4 % 18.3 % カ= こ そ 10 12.2 % L I - - コ ロ 26.81 22 % 82 100 % ここで係助詞を出現率順に並びかえ、数字を一切な くして、至極単純な表

3

を作ってみよう。そうするこ とによって、どの係助詞がよく使われているかが一目 瞭然になるはずである。そして、

ω

上位二位と、日最 上位および最下位に着目した型の名を付しておく。 表

3

野分(散文における係助詞出現順位) 位 位 位 位 五 位 四 係 助 詞 ぞ む か や な ' L-そ

ω

ぞーこそ 倒ぞ l か 上位型 遠隔型 表

2

3

によれば、﹁野分﹂の、和歌を除く散文中 において、係助詞﹁ぞ﹂﹁なむ﹂﹁や﹂(紛らわしいが 間投助詞﹁や﹂は除外した)﹁か﹂﹁こそ﹂の総数は八 二例であり、そのうち﹁ぞ﹂の使用率二九・三%(二 四例)が最も高く、﹁こそ﹂が二六・八%(二二例) でそれに次ぎ、この﹁ぞ﹂と﹁こそ﹂の二種の係助詞 だけで既に五O%を上回っている。このような分布の 型 を

ω

ぞーこそ上位型と呼んでおく。更に、﹁や﹂が ぐっと引き離された一八・三%(一五例)で中位を保

(3)

『源氏物語』係結小考 ち、﹁なむ﹂が一三・四%(一一例)、﹁か﹂が一二・ 二 % ( 一

O

例)とつづいている。最上位の﹁ぞ﹂とは かなり隔たっているという意味で、仮に、倒ぞ

i

か遠 隔型と呼んでおく。 ここで、係助詞の出現する場面を、いわゆる言語場面 に分けて、それぞれの場面の出現率を見ることにする。こ こ で 一 一 一 一 口 う 言 語 場 面 と は 、 地 の 文 と 会 話 文 と 心 話 文 ( 心 中思惟)の三場面である。消息又は話の文に含める。 表 4 野分(散文言語場面別) 百 分 率 計 ぷ文嘉益、 '話文、し 地の 文 29.3 24 13.2 5123.5 4155.6 15 ぞ % % % % 1% 3.4 11 28.9 (3) 1 ¥ 0

0 な (3) % % % む 18.3 15 18.4 7123.5 4114.8 4や % % % % 12.2 10 7.9 31% 7.6 3114.8 4か % % % 26.8 22 31.6 12 3% 5.3 6I% 4.8 41~ % % そ 100 (832) 100 38 100 17 100 27 言十 % % (3) % % 」ーーーーー け内は消息文の数 表

4

は、用例数と百分率の数値が交互に並んでいる ためにかえって読み取りにくいこともあるので、表 2 から表

3

を作ったように、数字ぬきの単純な表 5 を作 る 。 表 5 野分(言語場面別出現順位)

会 話

ι

地の 文 L 甲, L甲,

ぞ そ そ 位 な か や

や ぞ む そ 位 '1 --'-や 位 四 ぞ ョカ 位 五 か 位

4

拓 , ・ ー ・ 、 〆 このように言語場面別の表を作って比べて見ると、 当然のことながら、各係助詞の出現順位が、言語場面 によって大きく変動する。 地の文には客観的に指示する性質を持つと言われる ﹁ぞ﹂が最上位に進出している。そのうち一例を掲げ て お く 。 0 唯はひ渡り給ふ程ぞ、ふと見えたる。国六二⑫ 心話文では、指示する力の程度が最も強いと言われ

(4)

る、強調の﹁こそ﹂が最上位に進出している。 コ 汁 4/¥

一 例 を 山口雄輔 0 ﹁さにこそはあらめ﹂と思ふに回五五③ハ話主! タ霧中将) 会話文では、﹁こそ﹂に次いで、語りかける性質を 持つと言われる﹁なむ﹂が上位二位を占めている。そ の﹁なむ﹂の例を一つ。 0 ﹁まだ、あなたになむ、おはします。園六

O

⑫ ( 話 主

i

御乳母) 例によって、上位二位に注目した型の名称を

ω

、最 上位と最下位に注目した名称を倒として次に示す。 ﹁ や 一

ω

ぞ ー か 上 位 型 地 の 文 { 一 ア ﹂ Z L { 倒 ( 上 位 集 中 ) ; : 一

ω

こ そ

11

上位型 心 語 文 A キ { 倒 ( 上 位 集 中 )

ω

こそ!なむ上位型 倒こそ

l

か 遠 隔 型 「文学部紀要」文教大学文学部第11-2号 会話文 これによって、表 5 でも読み取れたことが一層歴然 となったわけである。 表 5 によって、どの言語場面にはどんな出現順位で 各係助詞が並ぶかを見たわけだが、今度は逆に、それ ぞれの係助詞がどの言語場面によく出現するかしない かを見るために、表 6 を作る。これまでのように縦に 比率を見るのではなく、横に比率を見るようにした。 表 6 野分(散文係助詞出現順位) 百 分 率 計

100 24 2% 0.8 5116.7 4162.5 15ぞ % % % 100 11100 11

。。

。 。

% % % % む 100 15 46.7 7126.7 4126.7 4や % % % % 100 10 3% 0.0 3130.0 3140.0 4 か % % % 100 22 54.5 12 27.3 6118.2 41';" % % % % そ 100 82 46.3 38 20.7 17 32.9 27 目十 % % % %

υ

内は消息文の数 表 6 によって、﹁ぞ﹂なら﹁ぞ﹂が地の文に多いと

(5)

『源氏物語

J

係結小考 いうのも、百分率の数値で知ることができる。すなわ ち、﹁ぞ﹂は地の文だけで他の言語場面を圧して六二・ 五%も占めていることがわかる。﹁なむ﹂は会話文に しか見られない。﹁や﹂は会話文に多いと言っても半 分以下の四六・七%でしかない。﹁か﹂は地の文にや や多く四O%である。﹁こそ﹂が会話文の半数を上回 る五四・五%を占めている。例によって、数字を除い た単純化の作業を行い表

7

を得る。係助詞別の言語場 面の出現順位である。 表

7

野分(係助詞別) 全 L甲e な か や ぞ? 体 そ む ~ メ~ミ 地 ヱbメミ、 ~ミ

言 古 話 の 言吉 話 の 文 文 文 文 文 文 位 地 J、乙 三,、三 Jl、J、心 地 ~

の 話 話 話 話 の

5

古 文 文 文 文 文 文 文 位 JL ' 、 地 JL、 言 言 の 話 文 文 文 位 表

7

ですぐ気付くことは、全体で会話文が最上位で あるにもかかわらず、最上位のすべてが会話文である とは限らないということである。語りかける性質の ﹁なむ﹂で、会話文が一位にくるのは当然にしても、 ﹁こそ﹂の場合も会話文が一位にきている。﹁ぞ﹂の一 位は地の文である。﹁こそ﹂は主観的、﹁ぞ﹂は客観的 という性質で一応の説明はっきそうである。 次に係助詞の文法的用法、つまり、各係助詞に対応 する結びがどのようになっているかについて調べた結 果を示す。文末にくる係助詞の、終助詞的用法を認め る立場に立って、通常の係り用法に対して特に断止法 として扱う。係り用法を、結びの活用語の品詞によっ て、動詞、補助動詞(待遇表現に限定)、形容詞、形 容動詞、助動詞、名詞、副詞に分け、更に結びの省略 用法と消去用法(いわゆる結びの流れ)の項を設ける こ と に す る 。

(6)

表 8 野分(散文 全用法) 山口雄輔 百 分 率 総 L甲4 な カ 〉 や ぞ 数 そ む 13.4% 11 5 1 4 動 詞 9.8% 8 2 1 1 4 補助動詞 係 2.4% 2 2 形 容 詞 形容動詞 43.9% 36(1)13 7 4 4(1) 8 助 動 詞 名

5

司用 高 リ 詞 法 15.9% 13(2) 1 6 15(2) I 省略用法 1.2% 1 1 消去用法 13.4% 11 2 3 6 断 止 法 100% 82(3) 22 10 15 11(3) 24 メEL1 「文学部紀要

J

文教大学文学部第11-2号 係 り 用 法 の う ち 、 結 び に 用 一 一 一 一 口 を と る も の は 動 詞 に 一 一二・四%が見られる他は形容詞に二・四%、形容動詞 では皆無と、あまり多くない。助動詞を結びとするも のは四三・九%で全体の半分近い。結びの省略用法は 助動詞に次ぐ高率と言っても一五・四%でしかなく、 そのほとんどが﹁なむ﹂と﹁ゃいである。結びの消去 用法、いわゆる﹁結びの流れる﹂用法は一・二%とか なり少なく、﹁ぞ﹂に一例が見られるのみである。断 止法は一三・四%で、動詞と並ぶ使用率である。補助 動詞の九・八%は待遇表現なので、係り結びと敬語の 聞に相関関係があるかどうかという重要な問題をはら んでいるので後に改めて述べる。 それではこれから、各係助詞の用法の展開を、実例 に 即 し て 見 て 行 く こ と に す る 。 ﹁ ぞ ﹂ ﹁ な む ﹂ ﹁ や ﹂ ﹁ か ﹂ ﹁こそ﹂の順に、三つの言語場面別の表を作り、係助 詞の用法をまず大きく、 I 係り用法 E 断止法 の二つに分け、ーの係り用法を、付結びの語が用言の 場合、三つの品詞からそれぞれ代表的な用例を掲げる が、皆無の場合もその旨を断って進める。名詞・副詞 などの特殊な例は﹁野分﹂には見当たらず、従ってそ れらの項は成立しない。ただし、他の巻や他作品との 比較を考慮して表には空欄を設ける。助動詞は数も多 いので、改めて口として、助動詞の種類別に例を掲げ る。結びの省略用法を日、消去用法を倒とする。回一と

(7)

して結びに敬語の補助動詞がくる場合、 H の断止法で は、いわゆる終助詞的な用法について述べる。 表

9

野分(散文) 『源氏物語』係結小考 百 分 率 三J:J

会 心話文 地の ぞ 言十 文 100% 4 125.0% 1 125.0% l 50% 2動 言司 100% 4 100% 4 補助動詞 係 形 容 詞 形容動調 100% 8 112.5% 87.5% 7助 動 詞 名 調 用 冨 リ 詞 法 100% l 100% 100% 100% 消去用法 100% 6 33.3% 2 150.0% 3 16.7% 断 止 法 100% 24 20.8% 5 116.7% 4 62.5% 15 合 計 係り用法 付結びが用言の場合 ﹁ぞ﹂の係り用法を表 9 で見ると、地の文に集中し ていて、助動詞がほぼ半数を占め、用言では動詞に二 例、形容詞・形容動詞は見当たらない。動詞・助動詞 か ら 一 例 ず つ 引 く 。 O 御乳母ぞ、きこゆる。国六

O

⑭ O 唯はひ渡り給ふ程ぞ、ふと見えたる。固六二⑫ 表 叩 野 分 ( 散 文 ) I 率 百 分 {i!; 会

ι

話文

地の なむ 計 文 100% 1 1100% 1 動 詞 100% 1町 100% l 補助動詞 係 形 容 詞 形容動詞り 100%4(1)100%4(1) 助 動 調 名 詞 用 MIJ 言司 100% 5(1)100% 5(2) 省略用法法 消去用法 断 止 法 100% 11(3) 100% 11(2)

%

O 0%10 合 計 -350 ( )内は消息文の数

(8)

山口雄輔 表叩によって﹁なむ﹂の係り用法を見る。 地の文・心話文には一例も見当たらず、会話文におい て、動詞が一例、助動詞が四例、省略用法が五例出現 している。動詞の一例を引く。 0 ﹁ ま だ 、 あ な た に な む 、 ( 話 主 l 御乳母) 表竹野分(散文) おはしますよ国六

O

⑫ 「文学部紀要」文教大学文学部第11-2号 率百分 メJ::I泊、

地 の や 計 文 100% 1 1100% 1 動 詞 100% 1 1100% l 補 助 動 調 係 形 容 調 形 容 動 詞 100% 41 50% 2 50% 2 助 動 調 名 言司 用 高 リ 詞 法 100% 6116.7% 1 150.0% 3 33.3% 2 省略用法 消去用法 100% 3166.7% 2 33.3% l 断 止 法 100% 15 46.7% 7 26.7% 4 26.7% 4 メEコ』 言十 表口によって﹁や﹂の係り用法を見る。 心話文における結びの省略用法が三例目立つだけで、 あとはどれも一例か二例散見するくらいである。省略 用 法 の 一 例 を 引 く 。 ﹁何事ぞや回五一②(話主 l 夕霧中将) O 表 12 野分(散文) 百 分 率 s- メ話文

~

J話文L

計 文 動 言司 補助動調 係 形 容 詞 形容動詞 100% 7128.6% 2 28.6% 2 42.8% 3 助 動 詞 名 言司 用 高

4

詞 法 100% 100% 省略用法 消去用法 100% 2150.0% 1 50.0% 1 断 止 法 100% 10 30.0% 3 30.0% 3 40.0% 4 コ-s 言十

(9)

表 口 を 見 れ ば わ か る よ う に 、 ﹁ か ﹂ の 係 り 用 法 に お け る 用言の項は全く空欄であり、助動詞に計七例、心話文に 省 略 用 法 が 一 例 見 ら れ る の み で あ る 。 そ の 一 例 を 引 く 。 0 ﹁あやしのわざや。親子ときこえながら、かく、 ふところはなれず、物ちか h るべきほどかは﹂と、目 とまりぬ。囚五八⑦(話主 l 夕霧中将) 表 日 野 分 ( 散 文 ) 『源氏物語』係結小考 百 分 率 メEL3

地 ι 甲ー の 計 文 そ 100% 5160.0% 3120.0% 1120.0% 1 動 言司 100% 2150.0% 1 50.0% l 補助動詞 係 100% 2 100% 2 形 容 詞 形容動詞 100% 13 61.5% 8123.1%3 15.4%2 助 動 詞 用 名 言司 面q 言司 法 省略用法 消去用法 断 止 法 100% 22 54.5% 12 27.3% 6 18.2% 4 メEL3 ーーーームーーーーー一一ー 表日によって﹁こそ﹂の係り用法を見る。助動詞の多 用ぶりが目立つ他は、会話文における動詞が三例、心話 文の形容詞が二例、他は一例ずつ散見されるのみである。 O あらはにもこそあれ﹂園四七⑦(話主│おとど ﹁ 源 氏 ﹂ ) 野分(結びの助動調一覧) 百 メELコ こ そ ョカ や な む ぞ 分 心 話 文地

メ~

地 文話心地

文ぷ3、心話文 地 文心話 地 の の の の の 率

3

十 文 文 文 文 文 2.8%11 lらる 自発 5.6% 212 つ 2.8%11 1 ぬ 完了 2.8%11 111:こり 5.6% 212 き 過去 33.3% 12 31111 2 5けり 2.8%11 1 なり 断定 5.6%12 1 l け む 33.3% 12 112 212 311 1 む 推量 5.6%12 1 めり 100% 36 813 212 21312 214 1 7 合計 -348-表14

(10)

山口雄輔 表

M

は、圧倒的に優勢である結びの助動詞の場合を、 助動詞の種類別に三つの言語場面も考慮して表にした も の で あ る 。 ﹁野分﹂(散文)における結びの助動詞の総数は、 既に表

8

にも記されたとおり三六例である。﹁らる﹂ ﹁ つ ﹂ ﹁ ぬ ﹂ ﹁ た り ﹂ ﹁ き ﹂ ﹁ け り ﹂ ﹁ な り ﹂ ﹁ け む ﹂ ﹁ む L ﹁ め り ﹂ の 一

O

種の助動詞が、係り用法の結びとして 用いられている。その中でも﹁けり﹂と﹁む﹂が優勢 で、共に三六例中一二例、三三・三%を占めている。 それも﹁けり﹂は﹁ぞ﹂の地の文に、﹁む﹂は﹁か﹂ の地の文に比較的多く出現している。それでは、それ らの用例を各助動詞について一例ずつ掲げておく。

o

露のか h れる夕映ぞ、ふと、思ひでらる﹀。圃五 九②

U

O ﹁ こ 、 ご り の 齢 に 、 ま だ 、 か ︿ 騒 が し き 野 分 に こ そ 、 あはざりつれ﹂園四九⑪(話主!大宮)

U

O いまなむ、なぐさみ侍りぬる﹂園消息五四⑭(話 「文学部紀要」文教大学文学部第11-2号 主 l 夕霧中将)

O 唯はひ渡り給ふ程ぞ、ふと見えたる。園六二⑫

o

﹁ほと/¥しくこそ、吹きみだり侍りしか﹂園六 一 ④ ( 話 主

l

女房達)

0 ﹁紙の色にこそ、と﹀のへ侍りけれ﹂国六二② ( 話 主 i 女房達)

0 中将の聾づくるにぞあなる。箇五一⑬(話主!お と ど ﹁ 源 氏 ﹂ )

O ひが耳にゃありけん。園五九⑬

O いかなることにかあらむ。回五八⑫(話主 l 夕霧 中 将 )

o

衰へにてなむ侍める。園六三⑮(話主 l 内 の 大 臣 )

(11)

同結びの省略用法 次に、係り用法の中のいわゆる﹁結びなし﹂の場合 について述べる。﹁結びなし﹂には結びの省略用法と 消去用法とがあるが、先ず、結びの省略用法の表日を 掲 げ る 。 表 向 野分(省略用法) 『源氏物語』係結小考

1

3

甲、M・ な カ ョ や ぞ そ む メコ=』= J

地ムヱミ、JL

地ムヨミ、JL

地ムコミ

J

地ムヱミJL

地 計

5

舌言古 の

5

古言古の言古 言古の話言吉の舌言3百の 文 文 文 文 文 文 文 文 文 文 文 文 文 文 文 1 いふ系 10 1 1 13 1 13 1 あり系 2 2 その他 13 1 1 13 215 1 計 一 」 ー 結びの省略用法は、省略された語の性質によって三 つの場合に大別することができる。第一が引用の格助 詞 ﹁ と ﹂ に つ い て 、 ﹁ と ぞ ﹂ ﹁ と な む ﹂ ﹁ と や ﹂ ﹁ と こ そ ﹂ な ど の 形 で 、 ﹁ 言 ふ ﹂ を 省 略 す る 場 合 で あ る 。 ﹁ コ コ 言 一 に 限 , ら り ず 、 ﹁ ( 歌 を ) 読 む ・ 詠 む ﹂ 、 あ る い は そ う い う ものに助動詞のついた﹁よみける﹂なども一括して ﹁いふ系﹂と呼ぶことにする。この﹁いふ系﹂に対し て、﹁あり﹂を主とするラ変系の動詞(敬体の﹁侍り﹂ も含む)を省略する場合を﹁あり系﹂、それ以外の一 般の動詞を省略する場合を﹁す系﹂としておく。表で は単に﹁その他﹂としてある。 表日によれば、あり系は、﹁こそ﹂を除く四種の係 助詞に出現し、いふ系は﹁や﹂の地の文にのみ、す系 は﹁なむ﹂の会話文にのみ出現している。一二つの系の それぞれの係助詞から一例ずつ引いておく。

O きこえ給ふとや。回六四⑧

。﹁いかにぞ。昨夜、宮は、まろ喜びたまひきや﹂ 園五二⑦(話主!おと Y)

(12)

山口雄輔 ﹁それなん。園六四⑦(話主 i 内の大臣) ﹁﹃もし、か、ることもや﹄と思すなりけり﹂と 思ふに、けはひおそろしうて、回四七③(話主! 源氏) 0 ﹁あやしのわざや。親子ときこえながら、かく、 ふところはなれず、物ちか﹀るべきほどかは﹂と、 目とまりぬ。回五八⑦(話主

l

タ霧中将)

。宮の、いとも、心苦しう思いたりしかばなむ。国

O

⑬(話主

l

タ霧中将) O O 「文学部紀要」文教大学文学部第11-2号 表 16 野分(消去用法) lE3L tョ な か や ぞ そ む メ ヱbミ、J、し地メ~ JL、地ヱEメミh JL、地メヱミミJ、し地ムZ三、J、し地 計

5

5

吉の言吉3吉の言古 言吉のE古言苦の言吉 言吉 の 文 文 文 文 文 文 文 文 文 文 文 文 文 文 文 l接続助詞! 体 言 中止法 係 助 調 修 百字 1 計 L ﹁結びなし﹂のもう一つの用法、結びの消去法は、 ﹁野分﹂では、表日に見られるようにわずか一例が、 地の文の﹁ぞ﹂で接続助詞で流れている例が見られる。 そ の 一 例 を 引 く 。 0 内裏の御物忌などに、えさらず籍り給ふべき日よ

(13)

りほかは、いそがしきおほやけごと・節舎などの、 暇いるべく、ことしげきにあはせても、まづ、こ の院にまゐり、宮よりぞいで給ひければ、まして、 今日、かかる空の気色により、風のさまにあくが れ歩き給ふも、あはれに見ゆ。園四九⑧ 表

η

野分(補助動詞敬語) 表口は、結びに敬意を表す補助動調が来ている例だ けを集めて作成したものである。係り結びと待遇表現 に相関関係があるかどうか知りたいところであるが、 何分にも数がさして多くないので、表作 m と同様空欄が 多いが、他の巻との比較を考慮して項目は減らさなかっ た 。 『源氏物語』係結小考 メEL3 L甲, な か や ぞ そ む メヱミh J、し地βヱミ、』乙、地ムヱミJ、し地~ J、し地ムヱミJ、し地 計

5

吉話 の言吉 言舌の 話百言の 話

5

吉の言吉 言吉 の 文 文 文 文 文 文 文 文 文 文 文 文 文 文 文 5 1 4尊敬語 '謙譲語 311 1 丁寧語 811 1 1 1 4 計 ' 」 L -表口によれば、全部で八例しかなく、そのうちの四 例は﹁ぞ﹂の地の文における尊敬語で占められ、あと は一例ずつ散見するのみである。例を引く。

O これよりぞ、わたり給ふ。圃五九⑭ O 檎き口つきこそ、ものし給へ圏六一⑭

O 見苦しきことになんはベる。園六回⑦(話主

l

内の大臣) O こと︽¥しからぬ紙や侍る。国六一⑦(話主

l

霧中将) O はかなきことにつけても、涙もろにものし給へば、 いと、ふびんにこそ侍れ﹂園五二⑨(話主

l

夕霧 中将)

(14)

山口雄輔 断止法 表

8

によれば断止法は一一例で、全用法の一三・四 %である。﹁ぞ﹂に六例、﹁や﹂に三例﹁か﹂に二例 あって﹁なむ﹂と﹁こそ﹂の断止法は見あたらない。 それぞれの係助詞から一例ずつ引く。 O き﹀よくもあらずぞ。園五九⑬ O 昨夜、宮はまち喜びたまひきや﹂国立二⑦(話主│ おとど) 0 中将の下襲か。国六

O

②(話主

l

おとど) E 「文学部紀要」文教大学文学部第11-2号 三 ここから和歌の場合に入る。 表 叩 野 分 ( 和 歌 ) 百 分 率 用例数 ぞ な む や カE l... 100 1 % そ 100 l 計 % 」 ー

﹁野分﹂には四首の和歌が見えるが、係助詞を含む ものは﹁こそ﹂に一首が見られるのみである。その例 を 引 く 。 O 吹きみだる風のけしきに女郎花しをれしぬべき心 ちこそすれ間五九⑦ 玉 霊 の 詠 。 何分にも数が少なく一例のみでは出現順位のつけよ うもないが、他の巻との比較を考慮して出現順位の表

5

を次のように掲げておく。 表初野分(和歌における係助詞出現順位) 位 位 五 位 位 四 位 係 助 詞 ー , l... そ 次に、和歌における係助詞の使用数を散文のそれと 対比させた出現率を見ておく。 表引野分(散文との対比における出現率) ① 散 文 に お け る 係 助 調 82 ② 和 歌 に お け る 係 助 詞 ②の①に対する百分率 1.2 % 次に、和歌における係助認の使用数と総歌数との割

(15)

合を見ることにする。その際、参考までに、﹁伊勢物 語﹄における同様の数値を併記しておく。 表

2

2

野分(総歌数に対する比率) 『源氏物語』係結小考 ②

歌 ① 総 の お tj 歌 使 用 数る 数 45.6 94 206

% 野 25.0 1 4 % ﹁野分﹂の和歌における使用数の

1

と い う 数 値 は 、 僅かな数ではあっても、比率として見れば、歌物語と 呼ばれる﹃伊勢物語﹄の四五・六%という数値に対し て、﹃源氏物語﹄﹁野分﹂の二五・O%は、さほど低い 値 で は な い 。 ここで、他の巻や、他作品との比較を考慮して、い わゆる確定の係助詞﹁ぞ﹂﹁こそ﹂の場合と、疑問の 係助詞﹁や﹂﹁か﹂(ただし﹁野分﹂に出現するのは ﹁こそ﹂のみであるのだが)の場合に合けて、それぞ れ表お・表

M

を作成しておく。ここでも﹃伊勢物語﹄ における同様の数値を併記しておこう。 表

2

3

野分(和歌における確定の係助詞) ②

定 ① 総 の ① 対す の 係 助 詞 使

歌 百 分 率る 数 26.7 55 206

物 % 野 25.0 1 4 %

2

4

野分(和歌における疑問の係助詞) ②

の 、 の 係

使数 歌 数 18.9 39 206

% 野

。。

4 % ワ u

s 且τ q u 表 明 ω は、﹃伊勢物語﹄と﹁野分﹂の和歌に現れた確 定の係助詞の数の、総歌数に対する割合を示したもの である。﹃伊勢﹄の確定の係助詞使用数は五五例であ り、総歌数二O六首に対する割合は二六・七%である。 ﹁野分﹂では総歌数四首に対して、確定の係助詞は一 例であるから、割合としては、﹃伊勢﹄に近い二五・ 0%という数値になる。 表

M

は、疑問の係助詞の場合である。﹃伊勢﹄の疑

(16)

聞の係助詞使用数は三九例であり、総歌数に対する割 合は一八・九%である。一方、﹁野分﹂における疑問 の係助詞は零であるから、総歌数に対する割合もO% で あ る 。 山口雄輔 「文学部紀要」文教大学文学部第11--'-2号

表 8  野分(散文 全用法)山口雄輔百分率総L甲4 なカ〉やぞ数そむ13.4% 11 5 1  4 動詞9.8%  8  2 1  1  4 補助動詞係2.4% 2  2 形 容 詞形容動詞 り 4 3
表 口 を 見 れ ば わ か る よ う に ︑ ﹁ か ﹂ の 係 り 用 法 に お け る用言の項は全く空欄であり︑助動詞に計七例︑心話文に省略用法が一例見られるのみである︒その一例を引く︒0﹁あやしのわざや︒親子ときこえながら︑かく︑ふところはなれず︑物ちかhるべきほどかは﹂と︑目とまりぬ︒囚五八⑦(話主l夕霧中将)表日野分(散文)『源氏物語』係結小考百分率メEL3 要地ι甲ーの計文そ100%  5160.0%  3120.0%  1120.0%  1動言司100%  2150.0%  1 50.

参照

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例えば「今昔物語集』本朝部・巻二十四は、各種技術讃を扱う中に、〈文学説話〉を収めている。1段~笏段は各種技術説

   ︵大阪讐學會雑誌第十五巻第七號︶

Block copolymers containing cate- chol moieties have also been synthesized reversible addition-fragmentation transfer (RAFT) polymer- ization of 3,4-dihydroxy styrene and

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