非行性の認定(Ⅴ)非行性の概念の統一化
その1 非行性尺度の予測機能から
進 藤 眸 *
Studies on Differentiating Delinquency (5th Report)
─ Standardization of the Concepts of the Degree of Delinquency ─
Part 1 Examinations of the Degree of Delinquency from Predictive
Function Provided for the Delinquency Scale
Hitomi SHINDO
Following statistical methods were adapted in this study, in order to standardize the concepts of the Degree of Delinquency (DD), for 107 juvenile delinquent boys.
(1) The Principal Component Analysis (PCA) was administrated among Indices Related to DD (IRDD) composing of 25 sub-categories which had been extracted from 90 sub-categories in 6 dimensions of DD.
(2) The Multiple Regression Analysis (MRA) was administrated by using rating score for DD (criterion variable) and 18 rating scores for each of IRDD (explanatory variables).
(3) MRA was also administrated by using rating score for Prediction of the Occurrence of Crime and Delinquency (POCD) (criterion variable) and 18 rating scores for each of IRDD (explanatory variables). (4) Correlation coefficients between DD scores and rating scores for DD, between DD scores and rating scores for POCD, and between rating scores for DD and rating scores for POCD, were calculated, respectively.
Main findings based on analyses mentioned above, were as follows;
(1) The 1st component consisted of 7 IRDD, and its reliability coefficient was .8762.
(2) Psychological meanings of 1st principal component were assumed to associate with “tendencies to indulge in pleasure, and to float.”
(3) In addition to 7 IRCD, 1 IRDD was extracted on the bases of the results from the MRA.
It might be given as a conclusion that 7 IRDD and 1 additional IRDD would be utilized as items of single delinquency scale, if we could understand the meanings of DD in unified form mentioned above (2).
Key Word: degree of delinquency, delinquency scale, principal component analysis, indices related to the
degree of delinquency, multiple regression analysis
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1. 概
観
この「非行性の認定」に関する一連の研究 は、非行性の進度を測定する尺度を作成する ことを究極の目的とし、当初、5 年計画で開 始されたものである。この第 5 報告は、第三 年次に予定していた実態調査に多くの時間を とられ、2 回にわたって報告したため、5 年目 に入るが、実質、第 4 報告に相当するもので ある。 ところで、さきの第 4 報告では、非行臨床 の実務家は、非行性の認定において、「非行歴」 と「価値態度」の次元を重視するとしている が、実際に利用する下位要因は、「不良徴標」 と「前非行的行動」の次元に所属するものに 限定されていること、また、この実態調査の 結果は、次の三つの理由から、今後の研究の 展開に少なからず寄与すると考えられる、と 指摘した。 (1)最終的に得られた第 1 主成分が、いず れも観察可能な下位要因から構成されて いるので、非行性尺度の作成において条 件とされている認定資料の入手容易性お よび客観性を充足するからである。 (2)第 1 主成分が、非行を予測するのに便 利な下位要因から構成されているので、 非行ないし再非行を予測する非行性尺度 を作成することが、可能であるからであ る。 (3)第 2 主成分以下の四つの主成分は、第 1 主成分と独立した意味を有しているの で、非行ないし非行性を多次元的なもの と理解し、その尺度に「分析機能」をも たせる場合に、利用することができるか らである。 この研究の究極の目的は、客観的な下位要 因を使用して非行性を予測する、ないしは分 析する尺度を構成することであるので、使用 する下位要因がこの目的に沿ったものである か、確認しておく必要がある。 使用する下位要因は、第三年次研究の第 4 報告「非行性を構成する下位要因」において 抽出されたもので、34 個の非行性の進度にか かわる指標(以下、「非行性関連指標」または 「関連指標」と略記する。)である。この非行 性関連指標は、非行性の進度を認定する六つ の次元、すなわち、(1)性格特性、(2)価値 態度、(3)非行歴、(4)不良徴標、(5)前非 行的行動、(6)その他の問題性、を構成する、 6 × 15、すなわち、90 個の設問を、非行臨床 経験 10 年以上の、いわゆるベテランの鑑別担 当者に実施し、各次元ごとに項目間主成分分 析を行い、第 1 主成分として抽出されたもの を集め、さらに、項目間主成分分析を行い、 第 1 ないし第 7 の主成分として抽出されたもの である。 すなわち、非行性関連指標は、次の三つの 条件を具有している。 (1)客観的で、測定可能であること (2)実際的ないし臨床的妥当性を有すること (3)因子的妥当性を有すること ここで、(1)については、収集する非行性 関連指標がテストではなく、調査によって得 られることに関与している。調査による場合 には、だれにでも、容易に収集することがで き、個人的なバイアスが介入しないことが、 要請されるからである。 (2)については、長年、少年鑑別に携わっ てきた鑑別担当者の実務経験を活用すること で、臨床的な裏づけをとることができるから である。部外研究者による研究は、研究のた めの研究に終わってはならず、しっかりと実 務に根を下ろしたものでなければならない。 (3)については、非行性尺度を因子分析の 結果を利用して作成すると、便利であるから である。とりわけ、単一尺度を作成しようと する場合には、主成分分析を実施し、第 1 主 成分の主成分負荷量が高い非行性関連指標を 抽出すれば、尺度を構成することができる。 この研究では、以上の条件を満たす非行性 関連指標を使用して、非行性尺度を作成する ことになるが、その具体的な方法としては、 次の五つが考えられる。第 1 に、第三年次研究において抽出された 34 個の非行性関連指標を、専門性の程度を異 にする鑑別担当者に広く実施し、その因子構 造を分析することである。これは、数理解析 によって作成された尺度を非行臨床の実際に おいて使用するためには、その妥当性と信頼 性を再検討すると同時に、鑑別担当者であれ ば、だれにでも使用できるものにしておく必 要があるからである。 第 2 に、鑑別担当者による非行性の進度と 非行性関連指標との関係を分析することであ る。これは、非行性の進度を関連指標によっ て説明させる方法であり、非行性の進度を従 属変数、関連指標を説明変数とする重回帰分 析を実施することである。 第 3 に、鑑別担当者による再犯・再非行の 予測と非行性関連指標との関係を分析するこ とである。これは、従属変数を再犯・再非行 の予測に代えるだけであり、第 2 の方法とま ったく同じである。 第 4 に、鑑別担当者による非行性の進度と 非行性関連指標との関係を分析することであ る。これは、非行性の進んでいる群と非行性 の進んでいない群の差異をなるべく際立たせ るためには、非行性関連指標にどのようなウ エイトを付与すればよいかを分析することで ある。その方法としては、判別分析を挙げる ことができる。 第 5 に、鑑別担当者による再犯・再非行の 予測と非行性関連指標との関係を分析するこ とである。第 4 の方法と同様に、その方法と しては、判別分析を挙げることができる。 これらのうち、どの方法がこの研究に一番 ふさわしいか、最終的に比較検討してみなけ れば、はっきりしたことは言えないが、この 研究の当面の目的から考え、第 1 ないし第 3 の 方法を採用する。 なお、尺度の構成に成功すれば、その標準 化の作業に進むことになる。
2. 研究の目的
この研究は、第四年次計画として予定され ていた「非行性を認定するに当たって、その 予測機能および分析機能から検討し、可能で あれば、非行性の概念について統一化を試み る(概念の統一化)」ことを目的とする。 なお、この報告では、予測機能からのみ検 討し、分析機能からの検討は、次の報告に譲 るものとする。3. 研究の方法
(1)研究対象者 研究対象者は、2003(平成 15)年 1 月から 3 月までの間に六つの少年鑑別所で鑑別を終了 した男子少年 107 人で、平均年齢は 17.48 歳 (標準偏差 1.72)である。調査を実施した男子 少年は、136 人であったが、29 人(21.3 パー セント)を、鑑別未了のため、研究対象者か ら除外した。 なお、調査を依頼した少年鑑別所を、東北 地方 1、関東地方 1、中部地方 1、近畿地方 1、 中国地方 2 と、ほぼ全国的に分布するように したほか、研究対象者の抽出に当たっても、 入所順に連続して調査してもらうなど、サン プルとしての代表性を確保するよう、留意し た。 (2)調査表の実施 調査表:「非行性の認定に関する第二次調 査」を作成し、研究対象者を鑑別した鑑別担 当者に記入を依頼する。 調査表の内容は、次のとおりである。 (1)調査区分 (2)調査年月 (3)性別 (4)生年月 (5)本件非行名 (6)本件非行年月 (7)非行の方向 (8)最初の警察補導年月 (9)行動傾向 (10)価値態度(11)不良徴標 (12)前回非行年月 (13)前回家庭裁判所処分年月 (14)家庭裁判所処分歴 (15)最後の少年院等収容保護施設出所年月 (16)鑑別判定 (17)審判結果等 (18)再犯・再非行の予測 (19)非行性の進度 なお、「(9)行動傾向」、「(10)価値態度」 および「(11)不良徴標」は、この研究の第 4 報告において、最終的に分析の対象とした項 目間主成分分析の結果、抽出された七つの主 成分のうち、今後、非行性をその予測機能お よび分析機能から検討する際に役立つと考え られる第 1、第 2、第 3、第 6 および第 7 の主成 分を構成する 26 項目のうち、23 項目を三つに 区分して採用したものである。 なお、残りの三つの項目は、いずれも上述 の第 3 主成分を構成するもので、 e- 9 前回処分または少年院退院等から本 件までの期間(3 月未満) e-10 前回処分または少年院退院等から本 件までの期間(3 月以上 6 月未満) c- 6 前回非行から本件までの期間(3 月未 満) である。これらの項目のうち、e-9 および e-10 については、この調査の「(13)前回家庭裁判 所処分年月」から「(6)本件非行年月」、「(15) 最後の少年院等収容保護施設出所年月」から 「(6)本件非行年月」を、それぞれ引き、本件 までの期間が、 3 月未満であれば 4 3 月以上 6 月未満であれば 3 6 月以上であれば 2 本件初発であれば 1 とする。c-6 については、「(12)前回非行年月」 から「(6)本件非行年月」を引き、本件まで の期間が、 6 月未満であれば 4 6 月以上 1 年未満であれば 3 1 年以上であれば 2 本件初発であれば 1 とする。 (3)分析の方法 この研究の目的を達成するため、次の四つ の分析を実施する。 (1)調査表のうち、「(9)行動傾向」、「(10) 価値態度」および「(11)不良徴標」を 構 成 す る 2 3 項 目 に 別 途 算 出 し た 「 2 1 前回処分または少年院退院等から本件ま での期間」と「22 前回非行から本件ま での期間」の 2 項目を加えた、合計 25 項 目の非行性関連指標間で主成分分析を実 施する。 なお、最小固有値を 1 とし、回転法と しては Kaiser の正規化を伴わないバリマ ックス法を採用する。 (2)鑑別担当者が評定した「(19)非行性 の進度」を従属変数、(1)の主成分分析 で第 1 主成分を構成する非行性関連指標 を説明変数とする重回帰分析を実施す る。 (3)鑑別担当者が評定した「(18)再犯・ 再非行の予測」を従属変数、(2)の非行 性関連指標を説明変数とする重回帰分析 を実施する。 (4)(1)の主成分分析による第 1 主成分に 基づき非行性得点を求め、この得点と、 「(19)非行性の進度」および「(18)再 犯・再非行の予測」の各評定点との間で、 ピアソンの相関係数を算出する。
4 結果と考察
(1)非行性関連指標間主成分分析 ア 関連指標の信頼性の検討 主成分分析を実施するに先立ち、非行性関 連指標が使用に耐えるものであるかどうかを 検討する。 分析の対象とする 25 個の非行性関連指標の うち、「(9)行動傾向」、「(10)価値態度」お よび「(11)不良徴標」は、いずれも「ない」を 1,「少し」を 2、「かなり」を 3、「本格的・ 常習的」を 4 として評定されたものである。 また、調査表から算出した「21 前回処分また は少年院退院等から本件までの期間」および 「22 前回非行から本件までの期間」は、いず れも数値で記入された期間を 4 段階に置き換 えたものである。これらの関連指標の分布を 調べると、表 1 のとおりである。 分布の歪度わ い どが絶対値で 0.5 以上の非行性関連 指標は、 5 不要品を所持する(0.909) 7 同 棲ど う せ い(2.235) 13 家の金品を持ち出す(1.428) 15 自 傷(2.431) 16 人を間違いに引き込む(0.947) 17 すぐに間違いに引き込まれる(-0.580) の 6 個である。「17 すぐに間違いに引き込ま れる」のみは、分布が「4 本格的・常習的」 に偏る、負の歪ゆがみを示しているが、残りの五 つの関連指標は、いずれも分布が「1 ない」 に偏る、正の歪みを示している。いずれにせ よ、これら六つの関連指標は、分布が一方に 偏り、その正規性を保証しがたいので、以後 の分析から除外する。また、「21 前回処分ま たは少年院退院等から本件までの期間」も、 48 人(22.2 パーセント)に資料の欠損または 過誤があったため、以後の分析から除外する。 イ 第 1 主成分の抽出 18 個の非行性関連指標間で主成分分析を実 施した結果は、表 2 のとおりである。 第 1 主成分は、説明率 19.942 パーセントで、 主成分負荷量が絶対値で 0.4 以上の非行性関連 指標を取り上げると、 24 享楽的態度 .834 23 刹那 せ つ な 的態度 .802 25 遊興への志向 .756 6 盛り場徘徊はいかい .614 14 自分勝手である .559 20 うそをつく .554 4 夜間に外出する .431 となっている。 主成分分析は、ある特定の尺度を作成しよ うとする場合に、その尺度が測定しようとし ているものを第 1 主成分に集める働きを有し
ている、と言われている。すなわち、第 1 主 成分に高い主成分負荷量をもつ非行性関連指 標を合成すれば、「非行性」の尺度を構成する ことができる、と考えられる。 そこで、この第 1 主成分を構成する非行性 関連指標についてα係数を算出すると、.8762 というかなり高い数値が得られた。しかも、 この数値は、どれか一つの関連指標を除外し て算出されたα係数よりも高いことが判明し た。言い換えれば、抽出された七つの関連指 標をすべて使用して非行性を構成したほうが、 そうでないやり方をとった場合よりも、高い 信頼性が得られた。 ところで、ここで抽出された「非行性」は、 いったい、どのような意味内容を有している か、第三年次研究の結果と比較しつつ、検討 する。 ベテランの鑑別担当者が非行性の進度の評 定において重視した 34 個の項目間で主成分分 析を実施し、得られた第 1 主成分は、次のと おりである。 1 髪を染める .895 2 ずる休みをする .854 3 目立つ服装をする .777 4 夜間に外出する .766* 5 不要品を所持する .751 6 盛り場徘徊 .742* 7 同 棲 .730 8 落ち着きがない .720 9 飲 酒 .693 10 喫 煙 .672 11 性経験 .631
12 不純異性交遊 .589 13 家の金品を持ち出す .584 14 自分勝手である .535* 15 自 傷 .492 この第三年次研究における第 1 主成分につ いては、「過活動的で、自己顕示する傾向」を 意味する、と考えたが、この研究で抽出され た第 1 主成分は、*印を付した「4 夜間に外 出する」、「6 盛り場徘徊」および「14 自分勝 手である」の 3 個の非行性関連指標において、 第三年次研究の第 1 主成分と一致しているだ けである。すなわち、じっとしておれず、放 浪する、すなわち、多動的であるという一面 が、第三年次研究の第 1 主成分の「過活動的」 につながっているが、「24 享楽的態度」、「23 刹那的態度」および「25 遊興への志向」は、 「快楽的傾向」を表し、第三年次研究の「自己 顕示」とはかなり意味内容を異にしている、 と考えられる。 以上から、この研究で抽出された第 1 主成 分は、「快楽を追求し、浮遊する傾向」を意味 し、「過活動(over-activity)」の一部を第三年 次研究の第 1 主成分と共有している、と考え られる。 非行性の予測機能という視点から、非行性 を、単一尺度として仮定し、非行性関連指標 の因子構造からとらえる場合には、非行性 は、 以上のような意味内容のものとして理解する ことができるが、ここで、別の角度から、す なわち、鑑別担当者が評定した非行性の進度 および再犯・再非行の予測と関連指標との関 連を分析することによって、非行性の意味内 容を検討する。 (2)非行性の進度の重回帰分析 「19 非行性の進度」は、「進んでいない」 を 1、「あまり進んでいない」を 2、「どちらで もない(平均的)」を 3、「進んでいる」を 4、 「かなり進んでいる」を 5 として評定されたも のである。この非行性の進度を従属変数、18 個の非行性関連指標を説明変数として重回帰 分析を実施する。重回帰分析の結果は、表 3 のとおりである。非標準化係数が.150 よりも 高い関連指標を高い順に抽出すると、 23 刹那的態度 .325 14 自分勝手である .315 8 落ち着きがない .190 11 性経験 .190 24 享楽的態度 .188 19 人に対する配慮に欠ける .176 2 ずる休みをする .156 となっている。非行性の進度の評定には、「23 刹那的態度」と「14 自分勝手である」が影響 を与えているかに見えるが、いずれも有意確 率が 10 パーセント水準であるので、傾向とし て、そう言える程度である。 なお、分散分析による F 値は、5.461 で、 0.1 パーセント水準で有意であり、求めた重 回帰式は予測に役立つものである。 (3)再犯・再非行の予測の重回帰分析 「18 再犯・再非行の予測(いつ再犯・再非 行するか)」は、「1 月未満」を 1、「3 月未満」 を 2、「6 月未満」を 3、「1 年未満」を 4、「2 年 未満」を 5、「3 年未満」を 6、「3 年以上」を 7、 「再犯・再非行をしない」を 8 として評定され たものである。この再犯・再非行の予測を従 属変数、18 個の非行性関連指標を説明変数と して重回帰分析を実施する。重回帰分析の結 果は、表 3 のとおりである。非標準化係数が -.200 よりも低い関連指標を低い順に拾い出す と、 19 人に対する配慮に欠ける -.534 24 享楽的態度 -.487 22 前回非行から本件までの期間 -.315 20 うそをつく -.277 2 ずる休みをする -.229 1 髪を染める -.210 となっている。再犯・再非行の予測の評定に は、「19 人に対する配慮に欠ける」、「24 享楽 的態度」および「22 前回非行から本件まで の期間」が影響を与えているかに見えるが、 前二者は有意確率がそれぞれ 13.2 パーセント、 23.6 パーセントであるため、影響を与えてい
るとは言えず、5 パーセント水準で有意であ る「22 前回非行から本件までの期間」だけが 影響を与えている、と見ることができる。 なお、分散分析による F 値は、2.825 で、 0.1 パーセント水準で有意であり、求めた重回 帰式は予測に役立つものである。 (4)主成分分析の第 1 主成分に基づく非行 性得点の分析 主成分分析の第 1 主成分に基づく第 1 主成分 得点を算出し、これを非行性得点と見なし、 非行性の意味内容を更に検討する。 この非行性得点の算出の方法としては、 (1)主成分分析に用いた 18 個の非行性関 連指標すべてに第 1 主成分負荷量を掛け て算出する (2)第 1 主成分負荷量が 0.4 以上の 7 個の 非行性関連指標の粗点を加算する の二つが考えられるが、ここでは、これから 先の利用の便利性を考慮し、(2)の方法を採 用する。 算出された非行性得点は、平均 19.589、標
準偏差 6.269、歪度.483、尖度 せ ん ど .202 で、分布に は、若干、正の歪みが認められるが、その正 規性は一応保たれている、と見て差し支えな い。 非行性得点と非行性の進度との間でピアソ ンの相関係数を求めると、r =.649 で、1 パー セント水準で有意である。 非行性得点と再犯・再非行の予測との間で ピアソンの相関係数を求めると、r =-.432 で、 1 パーセント水準で有意である。 なお、非行性の進度と再犯・再非行の予測 との間の相関係数は、r =-.596 で、1 パーセン ト水準で有意である。 以上の結果から、非行性得点は、鑑別担当 者が評定した非行性の進度と正の、再犯・再 非行の予測と負の、それぞれ高い相関を示し、 非行性得点が高ければ、非行性の進度は進ん でいると評定され、また、再犯・再非行の予 測はより短い期間内に出現すると評定される と言うことができ、非行性得点には妥当性が ある、と見てよい。 また、非行性の進度と再犯・再非行の予測 との間に負の高い相関が見られ、非行性の進 度が進んでいると評定されれば、再犯・再非 行はより短い期間内に出現すると評定される ということができ、非行性の進度にも妥当性 がある、と見てよい。 非行性得点とこれらの二つの評定との相関 を比較してみた場合に、非行性の進度との相 関がより高いということは、非行性をとらえ る時点をどこにおくかによって非行性の意味 内容の重点が変わることを示唆している。 最後に、非行性の単一尺度を作成していく 場合に、主成分分析の第 1 主成分を構成する 7 個の非行性関連指標のほかに、追加できる関 連指標がないか、改めて検討する。 再犯・再非行の予測を回帰する非行性関連 指標において、「22 前回非行から本件までの 期間」の関連指標は、非標準化係数が高く、 有意確率が 5 パーセント水準にあったので、 非行性の進度における非標準化係数を調べる と、表 4 のとおりである。再犯・再非行の予 測(表 4 では、「予測」と略す。)は、非行性 の進度(同じく「進度」と略す。)と負の相関 を示しているので、少なくとも非行性の進度 の非標準化係数において正の値を示すことが 期待される。「22 前回非行から本件までの期 間」は、「進度」の係数が正で、期待に沿う結 果を示している。 この結果から、非行性の意味内容を考える 場合に、主成分分析から抽出された 7 項目の 非行性関連指標に、「22 前回非行から本件ま での期間」を追加して、再検討する必要があ る、と言うことができる。特に、「22 前回非 行から本件までの期間」は、非行性の進度の 測度(measure)としては重要と思われる「再 犯期間」を意味し、高い利用価値を有してい る、と考えられる。
5. 総括と今後の課題
(1)総 括 この研究は、非行性の認定に関する 5 年次 計画の一部を成すもので、非行性をその予測 機能および分析機能から検討し、可能であれ ば、非行性の概念について統一化を試みるこ とを目的とする。その 1 では、非行性をその 予測機能から検討し、報告する。 非行性の項目間主成分分析の結果、抽出さ れた七つの主成分のうち、非行性をその予測 機能および分析機能から検討する際に役立つ と考えられる第 1、第 2、第 3、第 6 および第 7 の主成分を構成する 25 項目を「非行性関連指 標」とし、これらに若干の調査項目を加え、調査表を作成した上で、少年鑑別所の鑑別担 当者に記入を依頼する。 研究対象者は、鑑別が終了した男子非行少 年 107 人である。分布に正規性のない非行性 関連指標を削除し、最終的に残った 19 個の 関連指標間で主成分分析を実施し、第 1 主成 分を抽出する。同時に、鑑別担当者に評定し てもらった「非行性の進度」および「再犯・ 再非行の予測」を従属変数、関連指標を説明 変数として、別個に重回帰分析を実施する。 得られた主な結果は、次のとおりである。 (1)第 1 主成分は、七つの非行性関連指標 から構成され、説明率は 19.942 パーセン ト、信頼性(α)係数は.8762 で、かな り高い信頼性を示している。 (2)抽出された第 1 主成分は、「享楽的態 度」、「刹那的態度」および「遊興への志 向」のグループと、「盛り場徘徊」およ び「夜間に外出する」のグループの二つ から成り立ち、「快楽を追求し、浮遊す る傾向」を意味し、「過活動」の一部を 第 4 報告の第 1 主成分と共有している、 と考えられる。 (3)七つの非行性関連指標から成る非行性 得点は、非行性の進度と.649、再犯・再 非行の予測と-.432 の相関係数を、それ ぞれ示し、犯罪・非行の発現の可能性を 意味している。 (4)第 1 主成分から脱落した「前回非行か ら本件非行までの期間」を単一の非行性 尺度の項目として追加して利用すること ができるか、再検討する必要がある。 (5)非行性の意味内容を上述のように統一 的に理解し、必要な非行性関連指標を追 加するなどして統計的に処理すれば、よ り利用価値が高く、かつ、予測機能をも った、単一の非行性尺度を構成すること ができる。 (2)今後の課題 非行性の意味内容をおおむね確認し、単一 の非行性尺度として構成する可能性が示唆さ れたが、その概念の統一化を図る上で、残さ れた課題も少なからずある。以下、それらの 課題のうち、主要なものについて解説する。 一つは、作成される非行性尺度は、統計操 作的なもので、構成する下位要因としてなに を取り上げるかによって出来上がるものが異 なってくるということである。非行理論に立 脚して演繹 えんえき 的に下位要因を選定する場合と、 非行臨床の現場的な発想を優先させ、手近な ところで経験的に下位要因を拾い上げる場合 とでは、取り上げる下位要因が異なるので、 構成される非行性も異なってくる、と考えら れる。この研究では、後者の立場から、下位 要因の選定を行ってきたが、実務優先の考え 方を前面に出し過ぎると、理論的な裏づけを 欠き、その意味づけに苦慮し、また、改善、 社会復帰等をも視野に入れた、非行性につい ての総合的な理解から遠ざかることにもなり かねない。したがって、これまでの結果を再 検討し、理論的な武装を試みる必要がある。 二つは、取り上げる下位要因そのものの形 式的な特性にかかわる課題で、二つある。一 つは、だれにでも容易に客観的に収集するこ とができる下位要因であるかということであ る。データの収集に手間取ったり、判断に主 観が入る下位要因は、除いたつもりであるが、 結果的に、第 1 主成分として抽出された非行 性関連指標の中に、「刹那的態度」、「享楽的態 度」など抽象性の高い関連指標が三つも残存 する。これらの下位要因については、別途、 評定マニュアルを準備する必要がある。もう 一つは、下位要因の分布を考慮に入れること である。この研究では、関連指標の分布に正 規性が認められるかどうかを検討したが、結 果的に、主成分分析から除外した「同棲」、 「自傷」などのように、出現頻度そのものが低 い下位要因、あるいは逆に、ほとんど全員に 出現する下位要因の中には、その分布に偏り があるため、その後の分析に耐えられないも のも含まれるので、留意する必要がある。 三つは、これが最も基本的な課題であるが、 どのような時間的な展望に立って非行性に接
近するかということである。現に、いま持ち 合わせている、過去の総決算としての非行性 に着目するか、これから先、再犯・再非行に どの程度陥りやすいか、未来予測的な非行性 に目を向けるかということである。この研究 では、いま、現在の非行性の進度のみならず、 これから先の再犯・再非行の予測をも取り上 げ、若干の検討を行ったが、両者のもつ意味 内容の違いを再検討し、統合できるものであ れば、これを統合し、さもなければ、これを 分離する必要がある。 参考文献 進藤眸、非行性の認定(Ⅲ) 実態調査 その 1 非行性の理解、人間科学研究、第 23 号、33 − 43 ページ、2001 年。 進藤眸、非行性の認定(Ⅳ) 実態調査 その 2 非行性を構成する下位要因、人間科学研究、第 24 号、97 − 106 ページ、2002 年。