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新興ドナーの台頭 (特集 ミレニアム開発目標を超えて -- MDGsからSDGsへ -- 第1部 -- 15年間の新機軸)

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Academic year: 2021

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(1)

新興ドナーの台頭 (特集 ミレニアム開発目標を超

えて -- MDGsからSDGsへ -- 第1部 -- 15年間の新

機軸)

著者

小林 誉明

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

232

ページ

4-7

発行年

2015-01

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00003296

(2)

sの文脈における新興 ドナー BRICS や G 20に象徴される 新興国の登場が、国際援助の構造 の地殻変動をもたらしていること は今や周知の事実である。いわゆ る﹁新興︵国︶ドナー﹂の台頭で ある。すなわち、これまで先進国 の ﹁伝統ドナー﹂ による援助の ﹁受 け手﹂であった国々が中所得国化 するなかで援助からの﹁卒業﹂を 迎えるとともに、 新たな﹁出し手﹂ に転換するという現象が進行中で ある。伝統ドナーの立場からみれ ば、こうした現象自体が伝統ドナ ーによる協力が成果を上げた証左 であるとともに、開発協力資金の 総量が増えることを意味するため、 歓迎すべき事態といえる。一方で、 これまで OECD ︵経済協力開発 機構︶ の D A C ︵開発援助委員会︶ の加盟国によって実践されてきた ﹁ O D A 政府開発援助﹂ の 規 範 を 共 有 し な い 新 参 者 へ の 対 応 を 迫 ら れ る と い う 歓 迎 す べ か ら ざる側面もある。 実は、 中所得国化を待 た ず し て 途 上 国 が 他 の 途 上 国 に 協 力 を 行 う 現 象は ﹁南南協力﹂ として 以 前 か ら 広 く 確 認 さ れ てきた。 しかし二〇〇〇 年 代 以 降 の ボ リ ュ ー ム の急増は、 それまでとは 別次元といえる。 その増 分 の 大 宗 を 占 め る の は 東アジアの新興ドナー 、 特 に 中 国 に よ る 援 助 で ある ︵図 1 ︶。二〇〇〇 年以降の一五年は、 MD Gs と い う 国 際 社 会 共 通 の 目 標 が 設 定 さ れ た 時期と合致する。 MDG s という新たな国際アジェンダの なかで、新興ドナーはどのような 役割を担っているのであろうか? 本稿は中国に着目して、その MD G s へのインパクトついて考察す る。 sへ のアンチテーゼと しての中国の存在 実は MDG s の達成率のかなり の部分は中国に負っている。 MD G s が目標としている全世界での 貧困削減が進展しているのは、世 界最大の人口を擁する中国の所得 水準が向上したことに他ならない からである 。この意味で中国は 、 MDG s 指標改善の立役者といっ ても過言ではない。 ところがそのことは同時に、皮 肉にも MDG s を推進するロジッ クの正統性を脅かしてもいる。な ぜならば中国の貧困削減は、 MD G s の推進者達が想定したメカニ ズムを通じて達成されたとは必ず しもいえないからである 。﹁貧困 削減﹂は誰もが否定しようがない 崇高な目標であるが、削減される べき貧困の種類や、またその目標 に到達するための手段については 多様な可能性がありうるであろう。 しかし現行の MDG s では、削減

新興ドナーの台頭

︻第

15

年間の新機軸︼

20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 中国輸銀による優遇借款供与額 中国政府による対外援助支出額(グラント+無利子借款+優遇借款への利子補填分) 参考値:日本によるODA供与総額(二国間のみ) (億ドル) 0 1953 1956 1959 1962 1965 1968 1971 1974 1977 1980 1983 1986 1989 1992 1995 1998 2001 2004 2007 2010 図 1 中国の援助額の推移推計(1953-2012) (出所) 中国商務年鑑各年版、参考文献①などを基に筆者作成。

(3)

新興ドナーの台頭 するべき貧困の対象を教育や医療、 衛生といった生存分野・社会分野 に限定したうえで、こういった分 野における貧困削減を導くメカニ ズムとして、デモクラシーを前提 とした﹁グットガバナンス﹂を措 定しているのである ︵参考文献③︶ 。 いうまでもなく、貧困が根源的 に解決するためには経済成長は不 可欠である。にも拘わらず、こう した現行 MDG s が想定する貧困 削減へのシナリオにおいては、経 済成長ひいてはそれを促進するた めのインフラといった生産分野 ・ 経済分野については明示的に言及 されていないのである。石川滋が MDG s には﹁それを達成するこ とを保証する開発モデルの裏付け がない﹂と喝破したとおり︵参考 文献④︶ 、そこには成長や発展と いう要素が欠如しているといわざ るを得ない。 MDG s が予定して いる貧困削減に至るメカニズムは、 極めて理念的なものであり、現実 の成功経験に裏打ちされたモデル ではない。 他方、現実に貧困削減に邁進し ている中国をみれば、そのパスが 生存分野・社会分野への分配を通 じたものでも、ましてそれがデモ クラティック・ガバナンスに基づ 図 2 中国の自立発展のメカニズム (出所) 参考文献⑥を基に筆者作成。

(4)

MDG s の進捗に MDG s MDG s の議論の説得力 。 しかし 、 翻 っ MDG MDG MDG s ︵石炭︶を元手に 、 ︵発電所︶ 、素 材︵鉄鋼︶精製のプラント︵製鉄 所︶ 、そして電力による素材の加 工を可能とする輸出基地の開発を 基盤とした工業製造業の発展、輸 出による外貨獲得というプロセス を経た、産業の高度化である︵図 2 ︶。これは 、もてる埋蔵資源を 最大限開発することを通じた自立 的な経済発展のモデルといえよう。 中国が身をもって示しているの は、貧困削減が否定のしようのな い究極目標だとしても、そこへ至 る道は多様であること、むしろ現 行の MDG s には入れられていな いインフラ開発や資源開発といっ た手段を通じて自立した経済をつ くりあげることこそが貧困削減を 着実に成し遂げる有効なルートで あることではないだろうか。この 事実は、これから発展を目指す各 途上国にとって絶大なデモンスト レーション効果をもつであろう。 ●投資型援助による 自立型発展のモデルは、中国に よって単にモデルとして提示され るだけに留まらない。他の途上国 の自立的な経済発展を現実に可能 とするためのリソースを提供して いるのが、中国の対外援助である。 その原資は自国の工業化によって 獲得した外貨であり、その援助の モデルは、自らが被援助国として 一九八〇年代近辺に受けた日本か らの援助であるといわれている ︵図 2 ︶。 その具体的特徴は、埋蔵されて いる地下資源を掘り出し運搬する ための大規模インフラおよび資金 や技術を、多様なスキームを用い てフルセットで提供するというも のである。カンボジアのケースに 象徴されるように ︵図 3 ︶、こう した経済インフラを提供してくれ るドナーは日本等の例外を除いて 限られているため、中国の援助は 援助の受け手の途上国から極めて 重宝されているというのが現実で ある︵参考文献⑦︶ 。 巨大インフラをファイナンスす るための資金を捻出する必要性か ら、ローン︵貸付︶のスキームが 頻用されるが、これは MDG s を 推進する伝統ドナー、特に欧州の ドナーでは推奨されてこなかった 手法である。このように、資源開 発やインフラ整備といった将来的 に収益が見込まれる事業に対して ローンの形で長期の融資を行うス タイルの支援は、東アジアのドナ ーに共通の特徴であり、贈与に価 値を置く欧州の援助と好対照を示 す。実際、 ローンを担当する組織 ・ 部局をもたない欧州のドナーとの 対比において、東アジアのドナー の特徴は鮮明に確認できる ︵表 1 ︶。 東アジアのドナーのなかでも 、 特に中国の援助の特徴として挙げ 0 200 400 600 800 1,000 インフラ分野への支援 0 0 4 200 0 600 800 1,000 オーストラリア スウェーデン 中国 日本 韓国 フランス ドイツ EC イギリス アメリカ グラント ローン 社会分野への支援 グラント ローン 図 3 対カンボジア二国間ドナーによるセクター配分(2005-2012年累計)の偏り(単位:100 万ドル)

(5)

新興ドナーの台頭 られるのは、事業コストが安いこ と 、採択のスピードが速いこと 、 柔軟性が高いこと、の三点である が ︵参考文献②︶ 、これも伝統ド ナーにおいては重視されてこなか った価値である。欧米を中心とし た先進国の伝統ドナーがこれまで 提供し損なってきた経済インフラ を、中国がローンを用いて早く安 く使い勝手良く提供し、途上国の 自立的な経済発展の道を後押しす るのだとしたら、それは途上国に とって貴重な機会であることは間 違いないであろう。中国が新興ド ナーとして登場したことは、途上 国が貧困削減の道を探る際に MD G s 型﹁以外﹂のルートを採るこ とも可能とする、 より現実的な ﹁選 択肢﹂が提供されたということを 意味する。 ●結語 途上国の自立的な開発モデルと 同時にそれをファイナンスする援 助のモデルを提示している中国は、 MDG s が自立的な発展をともな わないモデルであり、援助の流入 を前提としていたのと対照的であ る 。中国型の開発︱援助体制は 、 開発モデルなき MDG s の貧困削 減シナリオが今後取り入れるべき ヒントを提示しているとも捉えら れよう。 新興ドナーとしての中国が放つ 開発︱援助のモデルは、既存の M DG s のモデルのオールタナティ ブとして、今後も並行して存在し 続けるであろう。これまでは日本 を先頭に東アジア域内で再生産さ れてきた成長のモデルと、欧米が 貧困削減支援と同時に民主化支援 も提供してきたアフリカ地域とで 分断して並立してきたのが実情で ある。しかし近年、これまで欧米 の独断場であったアフリカに、中 国が本格的に参入してきているこ とから、この地域における貧困削 減や開発のあり方がどのように取 捨選択されていくのか、大いに注 目に値する。 ︵こばやし   たかあき/横浜国立大 学国際社会科学研究院準教授︶ ︽参考文献︾ ①小林誉明﹁対外援助の規模、活 動内容、担い手と仕組み﹂下村 恭民・大橋英夫・日本国際問題 研究所編﹃中国の対外援助﹄日 本経済評論社、二〇一三年。 ②︱︱︱﹁アフリカにおける新興 国の開発協力中国モデルは理 想の協力か?﹂ SRID ジャー ナル第六号、二〇一四年。 ③︱︱︱ 「 ガバナンスを通じた貧 困削減 」 の現実的妥当性 : MD G s に内在するトレードオフ 」 ﹃国際開発研究﹄第二三巻第一 号、二〇一四年、五九︱七二ペ ージ。 ④石川滋﹃国際開発政策研究﹄東 洋経済新報社、二〇〇六年。 ⑤ Council for the Development of Cambodia. Development Coopera tion Trends in Cambodia and Proposals for Future Monitor ing of the Development Partnership Royal Govern ment of Cambodia. 2012. ⑥ Kobayashi, Takaaki. China: From an Aid Recipient to an Emerging Major Donor. In Machiko Nissanke and Yasutami Shimomura eds. Aid as Handmaiden for the Development of Institutions: A New Comparative Perspective . Palgrave Macmillan. 2013. ⑦ Sato Jin, Hiroaki Shiga, Takaaki Kobayashi, and Hisahiro Kondoh. Emerging Donors from a Recipient Perspective: An Institutional Analysis of Foreign Aid in Cambodia. World Deve-lopment . 39 (12). 2011. 表1 ローンの枠組をもつ東アジアドナーの特殊性 タイ インド 台湾 韓国 中国 日本 スウェーデン 政策立案 国家経済社会 開発委員会 : NESDB 外務省 外務省 財務省 外交部 企画財政部 外交部 商務部 外務省 外務省 有償資金協力 (貸付) 周辺諸国経済 開発協力機構 : NEDA (2005) インド輸出入 銀行 国際合作発展 基金会 : ICDF (1996) 韓国輸出入銀 行・対外経済 協力基金 : EDCF (1987) 中国輸出入 銀行 (1994)  新JICA(2) (2008) 無償資金協力 (贈与) 外務省 韓国国際力団 : KOICA (1991) 商務部 (2003) スウェーデン 国際開発協力 庁 : SIDA 技術協力 タイ国際開発 機構 : TICA (2004) インド技術 経済協力制度 : ITEC (1964) (注) (1)( ) 内は設立年。 (2)無償資金協力の一部は外務省による。 (出所)筆者作成。

参照

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