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[総説]絨毛組織の免疫的特性 : とくにMHC抗原の発現について: 沖縄地域学リポジトリ

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Academic year: 2021

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Title

[総説]絨毛組織の免疫的特性 : とくにMHC抗原の発現に

ついて

Author(s)

金澤, 浩二

Citation

琉球医学会誌 = Ryukyu Medical Journal, 13(1): 13-15

Issue Date

1993

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/3129

(2)

RyukyuMed.J., 13 (1) 13-15.1993

繊毛組織の免疫的特性

とくにMHC抗原の発現について

.1?潤 浩  二 産科婦人科学講座 (第75回琉球医学会講演要旨)

妊率の免疫的理解

"妊学"は生理的現象であるが、 「受精卵・ 胎芽・胎児」とその「母体」とが同種の allogeneic関係にあるため、同種移植の自然成 立とみなすことができる。受精卵には夫の染色 体がhaploidで入っており、母体となる妻にとっ て、いわば半同種移植片semi-allograftとなる。 米国ではすでに代理母surrogate motherという ことが現実となっており、そのような場合には、 完全な同種移植片allograftとなる。 受精卵は分裂・増殖・分化して一個の個体と なるが、最終的に胎芽・胎児を形成していく細 胞群、また形成された胎芽・胎児そのものが、 直接母体組織と接触することはない。すなわち、 受精後、着床までは透明帯Zona pellucidaに被 覆され、 hatchingを経て着床に至ると、繊毛組 織に被覆されることになる。したがって、母体 組織としての子宮内膜・脱落膜と直接接触する 胎児側の組織は、胎児を包む繊毛組織である。 さて、母体は、胎児に対して、自分には無い 抗原を認識して抗体を産生する。たとえば、 Rh(一 妊婦のRh抗原に対する抗体産生、ある いは、夫から引き継がれたMHC抗原、 HLAに 対する抗体産生は周知のとうりである。このよ うな母体の免疫応答にも拘らず、移植片として の胎児が母体によって最終的に拒絶rejectされ ないためには、胎児・母体間の免疫的interac-tionを合目的にregu】ateする機序が作動してい 13 るはずである。その可能性として想定されてい るものを簡単にあげると、 i)胎児の移植抗原 が未熟である可能性、 ii)繊毛組織が免疫的バ リアーとなっている可能性、一方では、 in;母 体免疫系が調節・制御されている可能性、 iv) 子宮が免疫的に特殊な臓器である可能性、など、 それぞれに多くの議論がある。

繊毛組織におけるMHC

抗原の発現

繊毛組織の免疫的バ7)ア-という可能性の中 で、もっとも注目されるものは、繊毛組織にお ける移植抗原、 MHC抗原の発現という問題で ある。 繊毛組織は胎芽・胎児を包み、その一部が増 殖・分化して胎盤繊毛を形成している。最外層 の繊毛細胞が母体の血流・血液と直接接触す る。 1.繊毛細胞・リンパ球混合培養l・2' まず、ごく単純に、実体顕微鏡下に妊娠初期 の繊毛組織を採取し、酵素処理にて繊毛細胞を 得て、母体のリンパ球と混合培養すると、その 夫婦間リンパ球混合培養よりは低いが、対照群 のリンパ球単独培養に比較して有意に高い幼弱 化率を観察することができる。また、その培養 上浦によってマクロファージの有意に高い遁走 阻止率を観察することができる。このことは、 繊毛細胞が母体リンパ球によって非自己

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14 繊毛組織の免疫的特性 non-selfと認識されうることを示している。す なわち、繊毛細胞には、母体には無いMHC抗 原が弱いながら発現されていると推測される。 しかしながら、このような解析のおいては、採 取した絨毛細胞に、繊毛の間質細胞や胎児の血 球細胞がコンタミしていないかという疑問を否 定しえないという欠点がある。 2.繊毛細胞HLAの免疫姐酎勺解析= 繊毛細胞には、繊毛の表層を覆う細胞である villous trophoblastと、付着繊毛のcell columnを 形成する細胞、 shellを形成する細胞、脱落膜 やその脈管、さらには筋層に侵入する細胞など のextra-villous trophoblastとがある。脱落膜と 直接接触し、これに侵入しているextra-villous trophoblastには、 HE染色標本では識別困難な ものが多く存在している。また、 villous trophoblastには、内層のcytotrophoblastと外層 のsyncytiotropho-blastと があ り、一方、 extra-villoustrophoblastは、形態的に、これら の中間的な、いわゆるintermediate trophoblast とされる。 これらの繊毛細胞、とくに母体側組織に侵入 している繊毛細胞を正確に識別し、そのMHC 抗原、 HLAの発現の有無を検索するためには、 繊毛細胞と特異的に反応する抗体が必要であ る。繊毛細胞を免疫染色するための単クローン 抗体には、私達のグループで作製したものを含 め、約10種が報告されている。

MHC抗原、 HLAの検索には、 HLA Class I抗 原に共通なdeterminantを認識する抗体、 HLA Class IIのDR、 DP、 DQそれぞれに特異的なde・ ternunantを認識する抗体を使用した。 妊娠8 -10週の着床部凍結組織の連続切片標 本にて検討すると、まず、 HLAClass工抗体で 免疫染色すると、 villous trophob】astは全く染 色されなかった。しかし、詳細に観察すると、 ce】I columnの部分の繊毛細胞、脱落膜へ侵入し た繊毛細胞が染色されていることが判明した。 次に、 HLA-DR抗体ないしDQ抗体で免疫染色 する と、今度は、 viHous trophob】ast も extra-villous trophoblastも 染色されなかった。 残されたもう一つのHLA-DP抗体による検討で は、 villous trophoblastのうち、いわゆるcell

is-】andを形成するcytotrophoblastに、また、 extra-villous trophoblastに、弱いながら陽性所 見が観察された。

以上のことから、繊毛の表層を穫うvillous trophoblastにおいては、 HLA Class I抗原は表 現されておらず、また、 HLA-DR、 -DQも同様 であり、 DPのみが部分的に表現されているに すぎないと判断された。一方、 extra-villous trophoblastにおいては、 HLAClass 抗原が表 現されており、また、 HLA-DR、 DQは表現さ れていないが、 DPが部分的に表現されている ものと判断された。

なお、 HLA Class I抗原のpolymorphic de-terminantについては、表現されていないとい

うデータを、別に得ている。

このように、免疫組織的解析では、繊毛細胞 のHLA表現の様相は、他の体細胞のそれとは おおいに異なっているようにみえる。

3.繊毛細胞HLA Class I mRNAの解析5・6' 繊毛細胞におけるHLAClassIのA、 B、 C各 IocusのmRNA transcriptについて検討した。す なわち、 HLA-A、 B、 Cそれぞれのtrans-mem-brane domainの塩基配列は、 A、 B、 C各Iocus の相互間でかなりの違いがある。しかし、一方 では、それぞれのIocusの中の対立遺伝子allele の間ではほぼ一致して保たれており、 HLA-A、 B、 C各Iocusのそれぞれに特異的なcDNA probe

の作製に有用であることが報告されている。こ れらに対するcDNAを、 DNA synthesizerにて化 学的に合成 し、まず、その特異性を、

HLA-10, -B7, -4のPlasmid Pst I digestとの間 のSouthern blot hybridizationによって確認し

rzc 実体顕微鏡下に、妊娠初期の掻個物から繊毛 組織と胎児組織とを分離・採取し、酵素処理に て繊毛細胞と胎児細胞を得た。これらからtotal RNAを、さらにpoly-adenylated RNAとして mRNAを抽出し、それらと、先に合成した CDNA probeとの間でNorthern b一ot hybridiza-tionを行った。その結果、繊毛細胞からのRNA にも、胎児細胞からのRNAにもhybridが観察さ れた.しかし、両者の強さに明かな差が認めら れた actinのcDNAprobeによるhybridizationを

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金 滞 浩 参考にして判定すると、繊毛細胞ではRNAの 量にして1 /5- 1/20までのsupressionがあ ると判断された。

すなわち、 HLA Class I geneのmRNA trans-criptの解析からみると、繊毛細胞における HLA-A, B, C各Iocusの分子レベルの表現過程に は、他の体細胞に比較し、不完全性があると推 察された。 結 語 以上のように、胎芽・胎児を被覆し、これを 母体組織から解剖的に隔離している繊毛組織、 繊毛細胞には、移植抗原の発現が不十分、ある いは弱いようにみる。このようなことから、繊 毛組織は、胎児移植抗原の母体免疫系への暴露 を防御・制御していると推察される。 繊毛組織からは、多種多様な免疫的抑制ない し調節因子が抽出されている。また、母体が産 生したいろいろな抗体を吸着し、胎児への移行 を防止する作用も重要視されている。繊毛組織 は、胎芽・胎児が健常に生育するためにのみ必 要な、きわめて特異な組織である。免疫的にも きわめて神秘的な組織である。 現在まで、妊畢現象の免疫的維持機構として、 多方面からのアプローチがなされてきている。 このことは、単に学問的興味にのみとどまらず、 臓器移植や痛の免疫に関する研究の場にも、有 意義な情報をもたらしうると考えられる。

参考文献

1 ) Kanazawa, K. : Preliminary studies on

anti-15

genicity of human trophoblast by mixed-leucocyte - trophoblast - culture in vitro. Acta. Obstet. Gynecol. Jap. 20 : 79-85, 1973. 2) Kanazawa, K. : Studies on autochthonous antigenic nature of human trophoblast bymixed-leucocyte-trophoblast-culture in vitro. Acta. Obstet. Gynecol. Jap. 21 44-48, 1974. 3)本間 滋、金津浩二、竹内正七: Non-villous trophoblast表面のMHC抗原に ついての解析 一特にHLA-A,B,Cのpoly-morphic determinantの表現に関して一 日 産婦誌. 38 :1777-1778, 1986.

4) Sasagawa. M., Kanazawa. K. and Takeuchi,

S∴ Immunological localization of HLA anti一 gens and placental proteins in villous and extravillous trophoblast in normal pregnan-cy : A distinctive pathway of differentia-tion of extravillous trophoblast. Placenta. 8 : 515-528, 1987.

5) Davidson, W. F., Kress, M., Khoury.G. and Jay, G∴ Comparison of HLA Class I gene sequences. J. Biol. Chem. 260 : 13414-13423, 1985.

6) Yahata, G., Tanaka, K. and Kanazawa, K. : Differential expression of human leucocyte antigen-A, -B, C locus specific genes in

trophoblast and embryonic cells. Cel一

参照

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