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運動・スポーツ実施の開始希望者と再開始希望者の 条件要因に関する比較研究

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Abstract

The purpose of this study was to clarify the difference in condition factors between applicants to adoption and to resumption in adults. This study was conducted as a secondary analysis of the survey data on resident awareness conducted by the secretariat of the board of education of A city of H prefecture. The survey was conducted with a random sampling of 3000 men and women over 20 years of age in A city, H prefecture, between about two weeks in February 2014. The number of valid responses was 754 (25.1%). Of the 754 subjects, the analysis group consisted of 97 adoption groups and 128 resumption groups. As the explanatory variables were set as basic attributes and conditions for sports participation, the response variables were applicants to adoption and to resumption on sports participation were analyzed through Hayashi's quantification theoryⅡ. As a result, it became clear that "eras", " physical fitness", "exercise / sports events", "convenience of sports facilities" and "specialized guidance on sports and health" influence the hope of adoption and resumption of sports participation. In particular, it was found that " convenience of sports facilities " has strong characteristics on the hope to adoption, and " specialized guidance on sports and health " has strong characteristics on the hope to resumption.

《keywords》SportsParticipation,Adoption,Resumption,Applicant,ConditionFactor

1) 神戸大学大学院人間発達環境学研究科博士課程後期課程 〒657-8501 兵庫県神戸市灘区鶴甲3-11

Graduate School of Human Development and Environment, Kobe University, 3-11 Tsurukabuto, Nada-ku, Kobe, Hyogo, 657-8501 JAPAN

2) 神戸大学大学院人間発達環境学研究科 〒657-8501 兵庫県神戸市灘区鶴甲3-11

Graduate School of Human Development and Environment, Kobe University 3-11 Tsurukabuto, Nada-ku, Kobe, Hyogo, 657-8501 JAPAN

3) 和歌山大学教育学部 〒640-8510 和歌山県和歌山市栄谷930

Graduate School of Education, Wakayama University, 930 Sakaedani, Wakayama city, Wakayama, 640-8510 JAPAN

4) 湊川短期大学幼児教育保育学科 〒669-1342 兵庫県三田市四ツ辻1430

Department of Early Childhood Care and Education, Minatogawa Junior College, 1430 Yotsutsuji, Sanda, Hyogo, 669-1342 JAPAN

5) 大阪電気通信大学医療健康科学部 〒575-0063 大阪府四條畷市清滝1130-70

Faculty of Medical Science and Health-Promotion, Osaka Electro-Communication University, 1130-70 Kiyotaki, Shijonawate-shi, Osaka, 575-0063 JAPAN

<原著論文>

運動・スポーツ実施の開始希望者と再開始希望者の

条件要因に関する比較研究

松村雄樹

1)

,長ヶ原 誠

2)

,彦次 佳

3)

,谷 めぐみ

4)

,薗田大地

5)

Comparative study on condition factors of applicants to adoption and to resumption on sports participation Yuki Matsumura1), Makoto Chogahara2), Kei Hikoji3), Megumi Tani4), Daichi Sonoda5)

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1.緒言

わが国では,2011年のスポーツ基本法の施行,2012 年のスポーツ基本計画の策定など,ライフステージに 応じたスポーツ活動を推進するため,明確な指針や目 標を設け,その目標に則って運動・スポーツ活動の実 施を促すプロモーション活動が活発になりつつある. その中でもスポーツ基本計画は第二期を迎え,2017 年度からの5年計画の中で達成すべきゴールとして, 『する,みる,ささえるスポーツ参画人口の拡大』や 『人々がスポーツの力で人生を楽しく健康で生き生き としたものに』,『活力ある社会と絆の強い世界を創る 「一億総スポーツ社会」の実現』を挙げており,国民全 体の運動・スポーツ実施率の週1回以上の実施の割合 を現状の42%から65%まで引き上げるなど,具体的か つ明確な指針が示されている(スポーツ庁, 2018a). さらに,東京2020オリンピック・パラリンピックの開 催や概ね30歳以上のスポーツ愛好者であれば誰もが参 加できる「世界最大の生涯スポーツイベント」である ワールドマスターズゲームズ2021関西がアジアでの初 開催が予定されており,成人・中高年における運動・ スポーツ実施人口増加の契機となることが予想される. 成人における運動・スポーツ実施の現状について, スポーツ実施状況等に関する世論調査(スポーツ庁 , 2018b)では,現在実施されているスポーツ種目につ いて,成人・中高年の多くは健康志向の強いヘルスス ポーツ(ウォーキング,階段昇降,体操など)の実 施率が高い傾向にあることが分かる.その一方で, チームスポーツやアウトドアスポーツなどの実施率は 減少している.しかしながら,現在運動・スポーツを 実施していないものの中で72.8%は機会や条件が合え ば運動・スポーツの実施希望の可能性を有しており, 成人・中高年者の間に運動・スポーツ実施の開始もし くは再開始に対する潜在的な需要や多様なニーズが多 数存在することが確認できる.健康・体力づくり事 業財団(2011)によると諸外国の政策事業では,既に 運動・スポーツを実施しているものの頻度を増加させ る運動・スポーツの継続についての指標だけではな く,非活動的な人口(sedentary population, inactive population)を実施に促すことを目標とした運動・ス ポーツの開始についての計画も散見できる.このよう な現状からも潜在的な需要をどうすれば実現させるこ とができるのか,運動・スポーツ実施に意欲や希望の ないものに対してどうようにすれば意欲や希望をもた せることができるのかをその実施キャリアごとに明ら かにすることが課題であるといえる. 実施キャリアについてこれまでの研究を概観すると 加齢に伴うレジャー活動や運動・スポーツ活動は開 始,継続,中止,再開始のキャリアが存在し(Jackson & Dunn,1988;Sallis & Hovell, 1990;Searle & Brayley,

1993;山口, 1988),Sallis and Hovell(1990)は運動・ スポーツ活動の促進にはそれぞれのキャリアにおいて 異なった規定要因が存在することを提言している.成 人・中高年者の運動・スポーツ活動の実現を規定する 要因については個人的属性(年齢,性別,過去のス ポーツ経験など),主体者に関連する要因(運動・ス ポーツ活動に対する意識や態度など),環境や施設に 関連する要因(施設や場所の利便性など),機会に関連 する要因(プログラムや教室の存在など),人や組織に 関連する要因(家族,指導者,クラブの存在など)とこ れまで多くの知見が蓄積されており(長ヶ原, 2003; 健康・体力づくり事業財団, 2010;Van Stralen et al., 2009),それらが身体活動や運動・スポーツ活動の重 要な予測要因であるということが明らかにされている (Burton, Shapiro, & German, 1999;Dishman et al.,

1985;Jenkin, Eime, Westerbeek, O’Sullivan, & Van Uffelen, 2017;Trost, Owen, Bauman, Sallis, & Brown, 2002).さらに,それぞれのキャリアを規定する要因研 究はスポーツ社会化論として,これまで多くの研究が なされ(束原ら, 2011),そのなかでも,「どのように 運動・スポーツ実施を継続するのか」というような運 動・スポーツ活動の継続(adherence, maintenance) についての研究(Jennifer et al., 2017;Michael et al, 2019;Picorelli et al.,2014)や,「どのように運動・ス ポーツ実施を開始するのか」というような運動・ス ポーツ活動の開始(adoption, initiation)についての研 究(Dunn,1996;Michelle et al., 2007;Reness & David, 1997)が多く蓄積されている(Trost et al., 2003;Van Stralen et al., 2009).

その一方で,再開始については過去 1990 年代頃に 再社会化というキーワードで研究が実施されている (Chogahara & Yamaguchi,1998;長ヶ原・山口・池 田, 1992;原田・長積, 1989;久保ら, 1999).再社会化 という概念は矯正施設からの社会復帰(Kostrzewska, 2018),学生から社会人への移行(尾形,2007),中 途採用者の組織再適応(Ashforth et al., 2007;米井 , 2015),移民や難民の新しい環境への再適応(Zweig et al., 2006),帰国者の再順応(Suutari & Brewster, 2003)など様々な分野において,個人や組織において 環境の変化からの基本的な行動および認知の変化また は移行を説明するために使用されている.運動・ス ポーツに関する分野においては,アスリートの怪我か らの復帰(寺本,2019),引退後のセカンドキャリア への移行(石森・丸山 , 2003;髙橋編 , 2010;Kwon, 2017) や 他 の 集 団 へ の 再 統 合(Dean & Reynolds, 2017),身体障害における中途障害者の再起(藤田 , 1998;吉田, 2016)などが行われてきた.しかしなが ら,上記のようにアスリートや障害者アスリートなど を対象に行われたものがほとんどである.一般的な成 人・中高年者の運動・スポーツ実施への再開始ついて 原著論文:開始・再開始希望者における条件要因の比較 2

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きる. こうした現状を踏まえて,運動・スポーツ活動の潜 在的な需要,そして無関心者を運動・スポーツの開始 に促すには,前述した従来の規定要因研究ではあまり 検討されていない,実施希望者の「開始もしくは再開 始するための条件」について着目する必要があるとい える.つまり,実施の前段階にあたる実施希望者がど のような条件を満たせば実施可能かという具体的な要 因であり,個人が実施の希望を想定した上で,実施の 条件として挙げる条件要因は因果関係が内在し,実施 に向けより具体的で実践的な要因として位置づけられ ると考える.そこで本研究は,運動・スポーツ実施の 開始希望群と再開始希望群との間にどのような条件要 因の特徴の違いがあるのかについて明らかにすること を目的とした.

2.研究方法

2.1 調査方法 本研究は市民の運動・スポーツ活動に関する意識お よび現状を把握する目的で A 市教育委員会事務局が 実施した住民意識調査データの二次分析として実施し た.調査はH県A市に住民票を有する20歳以上の男女 とし,住民基本台帳から行政区ごとの年代別男女比率 に基づき層化二段無作為抽出法により抽出した 3,000 名を対象として実施された.調査を実施したA市はH 県の南東部に位置する人口約45万人,面積50.27㎢の中 核市であり,人口密度は約8,900人/㎢とH県内で最も 高い.65歳以上人口の割合は2017年では27.1%と全国 平均およびH県平均と比べても高い値を示している. 調査は郵送法による無記名式の質問紙調査を行い, 2014 年 2 月の約 2 週間で配布,回収され,有効回答数 および有効回答率は754部(25.1%)であった. 調査票の作成については,2012年10月にA市にてプ レ調査を実施し,その結果に基づき,教育委員会事務 局のスポーツ振興課職員およびスポーツ推進審議会の 委員の協同で質問項目が選定された.調査内容は,個 人的属性(年齢,性別),健康・体力感に対する意識 (主観的健康感,主観的体力感など),運動・スポーツ 実施状況(現在の実施状況や実施希望運動・スポーツ 種目など),希望する運動・スポーツ実施のための条 件(家事や育児・介護の軽減,運動・スポーツ施設の 利便性,一緒にスポーツをする身近な人の存在など) などであった. 2.2 分析対象の抽出について 本研究の分析対象である開始希望群と再開始希 望 群 の 抽 出 方 法 に つ い て は,「開 始(adoption)・ 継 続(maintenance)・ 中 止(drop-out)・ 再 開 始 (resumption)」の社会化プロセス(Sallis & Hovell, は開始と区別することなくスポーツ実施・参与とし

てまとめられ研究が行われている傾向が高く(King, 2001;Martin & Sinden, 2001;束原ら , 2011),再開 始だけに着目し,その規定要因について検討を行われ たものは数少ない(関西広域連合,2019;健康・体力 づくり事業財団, 2010;大勝・來田, 2016).さらに, 再開始という現象は,過去に運動・スポーツ活動を実 施し,中止後,再び活動を実施するものであるため, 近年,スポーツ実施・参与としてまとめられ研究が実 施されてきた開始に影響を及ぼす要因よりも,何か強 いあるいは違う要因の特徴があるのではないかと予測 できる.また,昨今の急激な高齢化とともに中高年者 における運動・スポーツ活動に対する需要や志向は 多様化(薗田ら,2017)しており,従来のスポーツへ の社会化理論で検討されてきた個人的属性(personal attributes),重要な他者(socializing agents),社会 的状況(socializing situations)という 3 つの枠組み (Kenyon & McPherson, 1973)では説明できない要 因が存在する可能性が考えられる.そのため,これま での先行研究を基にした演繹的な手法よりも,新卒者 の適応と中途採用者の再適応の比較を行った研究(鴻 巣,2011)や中途障害者の競技スポーツ実施への再開 始に着目した研究(吉田,2014)などのように帰納法 的に具体的でかつ実現可能性の高い条件に着目し,そ の条件要因について解明していくことが有効であると 考える. また,これまでの要因研究は身体活動や運動・ス ポーツの中でも健康増進や生活習慣の改善,運動実施 頻度の増加を目的とした散歩やウォーキング,軽い体 操などを中心としたヘルススポーツを対象に行なわれ たものがほとんどである.そのため,いかに非実施者 を実施群にするか,もしくは低頻度実施者を高頻度実 施者について解明するために実施回数,期間や頻度な ど量的な変数を用いて運動実施を促すということに重 きが置かれてきた(Lee, 1992).しかしながら,運動・ スポーツの関わり方という点で,実施回数や頻度など も重要な変数であるが,薗田ら(2017)が指摘する様 に,個人がどのような種目をどのような条件で実施し たいのかなど,スポーツキャリアやスポーツへの関わ り方,周りのサポートなど質的でより具体的な変数で の研究が求められるといえる. さらに,前述したデータや報告書で見られるように 成人・中高年における運動・スポーツ活動に対する ニーズは多様化しており,様々な競技・種目において 実施希望をうかがうことができる.このため,松村・ 長ヶ原(2013)が述べているように,従来のヘルスス ポーツだけではなく,他の球技・チームスポーツやア ウトドアスポーツなどの様々な運動・スポーツ種目に ついて検討することにより,結果としてそれに見合っ たプロモーションを展開できやすくなることが示唆で 原著論文:開始・再開始希望者における条件要因の比較 3

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数として設定し,判別を試みた.林の数量化理論Ⅱ類 については成人以降の運動・スポーツ活動を対象にし た研究として高齢者のスポーツ活動への再社会化の特 性を継続群と比較して明らかにした研究(Chogahara & Yamaguchi, 1998)や運動・スポーツ推進事業が成 人期以降の市民の運動・スポーツの実施頻度,継続期 間,組織所属に関連する要因の特徴を明らかにした研 究(谷ら,2015)などにおいても採用され本研究のよ うに質的なデータを扱う上で有効な分析方法であると いえる.統計解析には,SPSS20.0およびSPSSのオプ ショナルソフトであるSPSS数量化理論GUI版を使用 した.

3.結果

3.1 単純集計および開始・再開始希望群と関連項目 の有意差判定 3.1.1 単純集計結果 本調査への回答者からの集計結果は表 1 の通りと なった.性別について女性が 57.4%,男性が 42.6% と 女性のほうが多く,年代は20歳代が11.0%,30歳代が 17.6%,40 歳代が 17.5%,50 歳代が 13.0%,60 歳代が 19.0%,70歳代以上が21.9%と70歳代以上が最も多く, 平均年齢は52.5歳であった. 3.1.2 開始・再開始希望群と関連項目の有意差判定 本研究の分析対象者225名(開始希望群;97名,再 開始希望群;128 名)の内訳については,性別は女性 が65.8%,男性が34.2%であった. 開始希望群と再開始希望群の差異を確認するために 個人的属性2項目,健康・体力感に対する意識10項目, 1990;山口, 1988)をもとに以下の通り抽出を実施し た.抽出方法については図1に示す.詳細としては,現 在の運動・スポーツの実施状況に関する調査項目「こ の1年間の間に何かスポーツをしましたか」という質 問に対し,その回答から「1. 1年以上前からずっとし ている」を選択したものは継続群,「2. この1年の間に するようになった」は開始群,「3. 1年以上前はしてい たが今はしていない」は中止群,「4. 今までしたこと がない」は非実施群とした.次に,この「中止群」お よび「非実施群」が,「今後運動やスポーツをしたいと 思いますか」という質問に対し,「運動やスポーツがで きる状況になればしたいと思う」を選択した場合,現 在「中止群」だが実施の希望がある群を「再開始希望 群」,現在「非実施群」だが実施の希望がある群を「開 始希望群」と定義した. 2.3 分析枠組みについて 本研究における分析の枠組みは以下のとおりである. まず調査対象者全体の傾向を把握するために単純集 計を実施し,開始・再開始希望群における個人的属 性,健康・体力感に対する意識,実施希望運動・ス ポーツ種目,希望する運動・スポーツ実施のための条 件のクロス集計ならびχ2検定による有意差検定を行 なった.次いで,運動・スポーツ実施に対する開始希 望および再開始希望の条件要因について特徴の違いを 推定するために質的変数を数量化した上で量的・質的 変数を説明変数として質的な外的基準(目的変数)を 予測・判別することが可能な手法である林の数量化 理論Ⅱ類を実施した.本研究においては前述した有意 差検定において有意水準 5% 未満の有意差が認められ た項目を説明変数として,開始・再開始希望を目的変 図1 分析対象の抽出方法

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図表

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1. 分析対象の抽出方法

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4 原著論文:開始・再開始希望者における条件要因の比較

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る有意差判定により有意差が認められた個人的属性2 項目,健康・体力感に対する意識に関する4項目,希望 する運動・スポーツ実施のための条件6項目と有意差 を認めることはできなかったが本研究目的において重 要な項目であると判断し実施希望運動・スポーツ種目 を説明変数に設定して林の数量化Ⅱ類を実施し,各項 目の判別力を算出した.その結果を図2に示す.外的基 準変数に対する説明変数による全体の判別力を示す相 関比は0.25とやや低いが同分析方法を用いた先行研究 (深澤,1996;谷ら,2015)より許容範囲内といえ, 判別的中率は70.29%であった.図中における横棒グラ フは各項目におけるカテゴリースコアの大きさを示し ており,マイナス方向に大きければ「開始希望群」, プラス方向に大きければ「再開始希望群」への判別を 意味し,カテゴリースコアより両群のプロフィールを 類推することができる.レンジは,カテゴリー内にお ける最大スコアと最小スコアの範囲を示しており,レ ンジの大きい要因ほど外的基準に及ぼす判別力が強い 実施希望運動・スポーツ種目1項目,希望する運動・ スポーツ実施のための条件16項目のクロス集計ならび χ2検定による有意差検定を行なった.その結果,5% 水準で有意差が認められた項目は個人的属性に関する 「年代」,「性別」の2項目,健康・体力感に対する意識 に関する「主観的健康感」,「主観的体力感」,「食生活 への心掛け」,「定期的な身体活動」の4項目(表2),希 望する運動・スポーツ実施のための条件に関する「経 済的余裕」,「運動・スポーツ施設の利便性」,「気軽に 参加できるスポーツ教室の存在」,「スポーツクラブや 同好会の近接性」,「会費の安価性」,「スポーツや健康 に関する専門指導」の6項目(表3)であった. 3.2 林の数量化Ⅱ類を用いた開始・再開始希望群に おける関連項目の判別力分析 開始・再開始希望群の条件要因の相違性について推 定するために,開始希望群と再開始希望群を外的基準 変数に設定し,上記のクロス集計ならびχ2検定によ 表1 調査回答者内訳

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表2 分析対象者の個人的属性および健康・体力感に対する意識項目における有意差判定

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2. 分析対象者の個人的属性および健康・体力感に対する意識項目における有意差判定

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4.考察

本研究では住民意識調査データの二次分析によって 今までまったく運動・スポーツを実施してこなかった が,現在実施を希望している開始希望群と過去に運 動・スポーツの実施経験があり,中止後しばらく実施 から遠ざかっていたが再び運動・スポーツ実施を希望 している再開始希望群の「運動・スポーツを実施する ための条件」に着目し,林の数量化Ⅱ類を用いた判別 分析を行い,条件要因の相違性について比較検討をお こなうことを目的とした. はじめに分析対象者は運動・スポーツの実施経歴と 希望の有無に基づき標本抽出された開始希望群97名, 再開始希望群 128 名であった.調査回答者のうち約 30%が今後のスポーツの開始もしくは再開始への希望 を持つことが明らかになり,内訳として性別は女性が 65.8%,男性が34.2%とH県A市においては女性のほう が運動・スポーツ実施に対する希望を持つものが多い ことがうかがえる.A市のスポーツ推進計画(2015) ことを意味し,本研究においてはそれぞれの実施希望 に対して特徴的な項目であるといえる(長澤・出村 , 2011).結果について,カテゴリースコアのレンジサ イズが1.0を超える変数及び偏相関係数の大きさから, 外的基準に対する関連の強さを推定した結果,レンジ サイズが大きい項目は,「実施希望運動・スポーツ系 統」,「主観的体力感」,「年代」,「スポーツ施設の利便 性」,「スポーツや健康に関する専門指導」であった. また,「開始希望」の方向に大きなスコアは「スポー ツ施設の利便性“あてはまる”」,「主観的体力感“普 通”」,「年代“20代”」,「実施希望運動・スポーツ系統 “歩行・走行・サイクリング系統”」で,「再開始希望」 の方向に大きなスコアは「実施希望運動・スポーツ系 統“マリン・ウォータースポーツ系統”」,「実施希望運 動・スポーツ系統“ウインタースポーツ系統”」,「ス ポーツや健康に関する専門指導“あてはまる”」,「主観 的体力感“劣っている”」,「年代“70代以上”」,「年代 “60代”」とそれぞれ条件要因の違いを確認できた. 表3 分析対象者の実施希望運動・スポーツ種目および希望する運動・スポーツ実施のための 条件項目における有意差判定

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3. 分析対象者の実施希望運動・スポーツ種目および希望する運動・スポーツ実施のた

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めの条件項目における有意差判定

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本研究結果の考察を進める. レンジサイズの結果より,開始希望・再開始希望の 条件要因では個人的属性においては「年代」が,健 康・体力感に対する意識においては「主観的体力感」, 希望する運動・スポーツ実施のための条件「スポーツ 施設の利便性」,「スポーツや健康に関する専門知識」 そしてχ2検定による有意差判定では有意差は確認で きなかったが実施希望運動・スポーツ種目において, 条件要因の特徴の違いを確認することができた.これ までの研究(長ヶ原, 2003;健康・体力づくり事業財 団, 2010;Van Stralen et al., 2009)と比較すると個人 的属性(年代),主体者に関連する要因(主観的体力 感),環境や施設に関連する要因(スポーツ施設の利便 性),機会に関連する要因(スポーツや健康に関する 専門知識)での相違性を確認することができたが,人 や組織に関連する要因については相違性が確認できな かった.「年代」については,20歳代であれば開始希望 を,50歳代・60歳代・70歳代以上であれば再開始希望 をもつ傾向があり,年代における特徴の違いが明らか になった.この結果はBerger et al.(2008)の若い世 によると女性は20~50歳代のスポーツ実施率が低いと 報告されており,本研究結果を合わせると実施率が低 いにもかかわらず,実施希望が高いことが明らかにな り運動・スポーツ実施に対する潜在需要人口の存在が うかがえる.A市も振興計画の中でスポーツ実施の阻 害要因(介護,育児等)に応じた取り組みを行うと記 しており,希望の実現に期待が持てるといえる. 林の数量化Ⅱ類の結果の解釈において相関比 0.5 以 上であればモデルの精度が良いとされているが,前述 したように本研究における分析の結果で示された外的 基準変数と説明変数との相関比については0.25と,そ の精度はやや低い.しかしながら,深澤(1996)や長 澤・出村(2011)によると社会学や健康・スポーツ科学 の分野においては,相関比は絶対的な基準ではなく, 研究目的や仮説等を考慮して抽出された変数が重要で あり,カテゴリースコアより判断することも重要であ ると示されていること,さらに判別的中率が70%であ ることを加味し,分析によって算出されたカテゴリー スコアのレンジサイズが1.0以上の変数について,外的 基準変数に対して判別力が確認されたものと判断し, 図2 運動・スポーツ実施の開始希望・再開始希望に影響を及ぼす要因

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2. 運動・スポーツ実施の開始希望・再開始希望に影響を及ぼす要因

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の開始について実施希望を促すためには,20 歳代の 若い世代を対象に個人でもすぐに実施できるウォーキ ングやランニングなどのキーワードを用いてプロモー ションを実施すれば効果的であると推察できる.ま た,再開始について希望を促すためには,体力の低下 を感じている 50 歳代以上に対してスクーバダイビン グやスキーなどのシーズンスポーツの情報の発信やそ れぞれにおける専門指導を受けられるような機会の提 供が効果的であるということが推察できる.これまで 運動・スポーツ実施の開始および再開始については開 始と継続のように,それらの要因の相違性について検 討がほとんど実施されてこなかった.しかしながら本 研究の結果が示すように,運動・スポーツ実施の開始 を希望しているものと,過去に運動・スポーツの実施 経験があり,中止後しばらく実施から遠ざかっていた が運動・スポーツ実施の再開始を希望しているものと ではその活動を実施しようとする条件は異なり,それ ぞれにおいて特徴があることが明らかになった.つま り,Chogahara and Yamaguchi(1998)やVan Stralen et al.(2009)の研究成果と統合すると運動・スポーツ 実施キャリアにおける開始・継続・再開始それぞれに おいて規定要因の相違性が示唆されたことになる. 本研究では運動・スポーツ実施に対しての開始希望 と再開始希望における条件要因の特徴についてその違 いを明らかにし,理解を深めることができたといえ る.これらの結果を今後の研究に結び付けていくこと が重要であり,本研究の結果および研究過程において 明らかになった課題についてさらに深く検討を行うこ とにより今後の運動・スポーツ実施の実現に寄与する ことも可能になるのではないかと考える. まず,研究の限界として前述したように林の数量化 Ⅱ類による分析の結果で示された相関比は0.25とその 精度は許容範囲ではあるが基準となる 0.5 に比べると やや低い値であった.この値を改善するためには,こ れまでの先行研究をもとに運動・スポーツ実施の開始 および再開始に影響を及ぼす要因を検討し項目の再設 定が求められる.さらに,本結果は調査対象を H 県 A市と限定したため本研究の成果を一般化するには妥 当性が低いといえる.本成果を一般化していくために は,A市のバイアスを考慮したうえで,他の自治体に おける研究と比較し,その交差妥当性について検証の 蓄積が求められる. また,本研究では条件要因と題して,運動・スポー ツ実施実現のために「~があれば実施できると思う」 という促進条件に着目し分析を実施したが,阻害条件 については検討が実施されていない.Arnautovska, O’Callaghan, and Hamilton(2017)らが運動・スポー ツ実施を促すには体力や体型,健康状況や時間および 社会的支援の欠如など様々な阻害条件の存在を抑制す る必要がある報告しているように,「~がなければ実 代は中高年よりも運動・スポーツ実施に対して活発 になる傾向があり,年齢が上がるにつれて運動・ス ポーツ実施への開始が減少するという報告や山本ら (2006)の年代によって開始・継続・中止・再開始の 割合に特定の結果があるという結果を支持するもので あった.「主観的体力感」については,体力感が普通 と感じてるものは開始希望を,劣っていると感じるも のは再開始希望を持つ傾向があることが明らかになっ た.Van Stralen et al.(2009)のレビュー論文でも体 力が運動・スポーツの開始および継続への規定要因に なるということは明らかにされているが,再開始につ いて検討されたものはなく,本結果より主観的体力感 の違いが開始希望と再開始希望の特徴であることが確 認できた.これより,体力やそれに近しい体型,体調 などについても開始・継続・再開始とそれぞれの実施 キャリアの実現の特徴について検討を行う必要がある と示唆できる.「運動・スポーツ施設の利便性」につ いては,それを求めるもののほうが開始希望を持つ傾 向があるということが明らかになった.これは Li et al.(2005)や Morris et al.(2008)らの運動・スポー ツ施設の利便性が運動・スポーツ実施の開始に促進的 な規定要因であるという報告を支持するものであり, 施設の利用について交通,予約,使用などいかに使用 者に利用してもらいやすい工夫をすることで運動・ス ポーツ実施の開始を促進することができると推察でき る.「スポーツや健康に対する専門知識」については, それを求めるもののほうが再開始希望を持つ傾向があ るということが明らかになった.健康・体力づくり事 業財団(2010)によると専門知識などの情報を含む機 会的条件は運動・スポーツを再開始する要因であると いう報告や,Hopman-Rock et al.(2005)が運動・ス ポーツに関連する知識を持つことは運動・スポーツ実 施を規定する要因であると報告しているように,再 開始の希望を持つにあたり,以前の経験があるが故 により深い知識や興味を満たす情報を得ることが,そ のきっかけや条件となりうると推察できる.「実施希 望運動・スポーツ系統」については,マリン・ウォー タースポーツ系統やウインタースポーツ系統への希望 が再開始希望の特徴であることが明らかになった.こ れは過去の自然環境(海,山,雪山,川等)にて実施 されるアウトドアスポーツの実施経験は他のアウトド アスポーツ実施の実現に影響を及ぼすという先行研究 (松村・長ヶ原, 2013;大橋ら, 2004)を支持するもの といえよう,また歩行・走行・サイクリング系統への 希望が開始希望の特徴であることが明らかになった. Breuer et al.(2011)は系統別の運動・スポーツ活動 への参加をさまざまな変数から予測しており,本結果 においても運動・スポーツ系統によって開始や再開始 希望が判別されることが確認できた. これらを踏まえ,考察を統合すると運動・スポーツ 原著論文:開始・再開始希望者における条件要因の比較 8

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