1.緖 言 韓国における製糸業は,自動繰糸機の開発 による発展を図るため,1962 年から 15 年間 維続された「蚕業増産 5 ヵ年計画」の実施に より,農民所得増大・輸出増大など,国家経 済の発展と歩調を合わせて,革新的に発展し た.それに比べ大量生産と経済概念の体系に 相反する手作業による繰糸器を使う製糸技術 の検討は行われていない.また,現在は産業 の高度成長とともに,蚕糸関連事業は急激に 衰えて,養蚕は糸を作るための本来の目的で はなく,食用・医療用などに使用するために 行われており,韓国で多品種少量の糸が必要
学術論文
韓国の古典製糸法に関する研究Ⅱ
-古典繰糸方法が生糸品質に及ぼす影響について-
崔 貞任
1)*・清水重人
2)・木下晴夫
2) 1) 韓國傳統文化大學校:〒 13151 한국 경기도 성남시 중원구 산성대로 552 번길 15, 112 동 402 호(은행동 , 주공아파트) 2)蚕糸科学研究所:〒 169-0073 東京都新宿区百人町三丁目 25 番 1 号 サンケンビルヂング (令和元年 9 月 30 日受領,令和 2 年 2 月 14 日受理)A study on classic filature method of Korea Ⅱ
–The influence of classical reeling method on raw silk quality–
Jungim Choi1) *, Shigeto Shimizu2), and Haruo Kinoshita2)
When attempting to restore a silk textile antiquity, it is necessary to make a thread suitable for the characteristics of the silk textile. Examined a silk reeling method by various manual works through the ancient literature which described a silk reeling method by the manual work and performed silk reeling of those raw silk. Furthermore, in order to investigate the effect of the reeling method of these ancient literatures on the raw silk, a comparative test was conducted on the tension, lustre and color difference for the current silkworm race. As a result, it was found that the elasticity was affected by the pupa killing method and silkworm race, the tenacity was affected by the reeling tools and silkworm race, and the Young's modulus was influenced by the reeling tools. It was also found that the luster was affected by the reeling tool and the silkworm race, and the color difference was affected by the silkworm race, the reeling tools, cocoon-preserving methods and pupa killing methods. (*: To whom correspondence should be addressed, E mail: eclair68@ hanmail.net)
Key Words: Korea filature, Pupa killing method, Hand reeling method, Cocoon sorting,
な消費者が糸を購入するのは難しくなった. 輸入を通じてある程度は解決することができ るが,世界情勢・原産地の環境の変化など, 様々な問題が伴うため最終的な解決策にはな らない. そこで,本論文では,この問題を解決する ため手作業が盛んに行われていた時代の文献 の製糸技術について検討することとし,韓国 の 14 世紀から 19 世紀までの農業関連文献や 生活百科書などに記録されている各種の繰糸 方法で生糸を繰糸するとともに,それらの生 糸の物性試験を行い生糸品質に及ぼす影響を 調べた. 2.材料及び方法 本実験は,『韓国の古典製糸法に関する研 究Ⅰ』報で報告した韓国の古文献を通じて明 らかになった製糸の方法を基本にして,日本 の近代・現代の製糸関連の文献を参照して実 験計画を立てた.また,古文献で製糸を行う 際に重要に考えている項目を実験条件で立て ようとしたが,実験の実行に時間的限界のあ ることや実験観察の容易性も考慮した.実験 条件は繭の品種・殺蛹及び乾燥法・繰糸温 度・繰糸器具,4 項目に分けて,Table 1 に示 すように因子を設定し,組み合わせによっ て,合計 40 種類の生糸を作って引張・光沢・ 色差を検査を行い比較検討した. 2.1 材料 古文献に記録されている製糸技術は,その 当時の繭に適した技術である可能性も排除で きず,繭の品種による影響を確認するため に,在来品種である小石丸,普及品種である 錦秋×鍾和を供試した. 供試繭の性状は Table 2 に示すようであり, これは供試繭各 10 粒をそれぞれ 1 粒繰りに より繭糸長・繭糸繊度・繭糸量を求めたもの である.この結果に基づいて,繰糸の目標繊 度を約 28d にして,繰糸粒数は小石丸 14 粒, 錦秋×鍾和 10 粒の定粒繰糸ですることとし た. 2.2 方法 2.2.1 殺蛹及び乾燥法 繭を収穫した後,15 日程度が経過すると, 繭の中から蛾が出てくる.これを防ぐために は,繭の中の蛹を殺さなければならない.古 文献では,蛹を殺す方法として天日乾燥・塩 蔵・蒸気・オンドルで乾燥する方法などが記 録されているが,ほとんどの文献に共通に見 られる方法は天日乾燥・塩蔵・蒸気で蛹を殺 す方法である.本実験では秋繭を使用したた め,天日乾燥をするには気候(日照時間・気 温)的に難しかったため,この方法は除い て,塩蔵・蒸気・乾燥機を使って歩乾と本乾 で殺蛹した. 1)塩蔵 韓国の古文献,『農桑輯要』・『穡經』・『增 補山林經濟』・『農政會要』・『農政書』・『林園 經濟志』・『增補蠶桑輯要』に記録されている 塩蔵方法を見ると,殺蛹は,塩による影響よ り,窒息によるものとみられる.その理由
Table 1. Experimental Condition
Item Factor
Silkworm race Kinshu × Showa Koishimaru Pupa killing and
drying method
Fresh cocoon Preserve with salt
Steam Half drying Proper drying Temperature of reeling water 40℃
80℃ Reeling tool Hand reeling
Knee
Table 2. Cocoon quality
Sample name Length of cocoon filament (m) Size of Cocoon filament (d) Quantity of cocoon filament (cg) Koishimaru 464 2.00 10.8 Kinshu × Showa 1331 2.89 42.7
は,古文献で強調しているように壺の蓋をし て,その上に泥で覆った後,泥が割れて隙間 があれば埋めてやれば蛹が出ないとしてお り,密閉による重要性を指摘している.ま た,布目順郎の『養蚕の起源と古代絹』で は,“2 リットルの壺と市販の塩を使用して, 塩蔵して蓋をするのに,泥を使う代わりに梱 包用の紙テープもしくは紙粘土を使った.そ の結果 7 日や 10 日では死なず,1 ヶ月ほど かかっている.その理由について今日の蛹が 昔のものよりも遙かに丈夫であることによる とおもわれる”と記述している.1)もちろん, その理由も関係があると思われるが,蓋の密 閉度にも問題があったことも推定される. 本実験では,時間の経過に伴う壺の中の変 化を見るために,壺の代わりにガラス素材の 4 リットル密閉容器を利用した.そして,塩 は市販されている天日海水塩を使用した.1 つの密閉容器に入った生繭の重量は小石丸 450g,錦秋×鍾和は 500g であり,塩は全体 45g で,5g は繭の全体にまいて,40g は 5g ずつ桐の葉に積んで 8 個入れた.入れ方は Table 3 に示すように容器の一番下に桐の葉 を敷いた後,塩をまいた繭と桐の葉で積んだ 塩 1 個を一緒に入れて,その上に桐の葉を敷 く.このように桐の葉と繭を交互に一重一重 入れて,容器を満たした後,日光の当たらな い涼しい所に保管した.7 日後繭を取り出し て蛹が死んでいるか確認した結果,蛹は死ん でおり,繭にまいた塩が溶けて繭の表面に滴 となっていた.繭を取り出し,竹籠に広げて おいて,一日後,乾燥歩合を確認した結果, 小石丸 87.3%,錦秋×鍾和 87.5%であった. 2)蒸気処理 サイズの異なる竹かご 2 個を使用して繭を 蒸した.繭を入れたかごとそれよりサイズの 少し小さいものを使用して,蓋の役割もでき るようにした(Fig. 1,2).水が沸騰し上の 竹籠から水蒸気が出始めてから 1 時間蒸し た.蒸気で蒸した繭は,大きな竹籠に広げて おいて,水蒸気を無くしながら,時々,かご を振って竹籠と繭がくっつかないようにした 後,涼しい場所に保管して使用した.蒸して から三日後,乾燥歩合を確認した結果,小石 丸は 87.6%,錦秋×鍾和は 84.8%であった. 3)熱風乾燥 熱風乾燥は「大型送風定溫乾燥器」を使 用して本乾と歩乾に分け実施した.本乾は
Fig. 1. Cocoon steaming preparation
Fig. 2. Cocoon steaming after putting a lid on Table 3. Salting of cocoons
Wrap up salt with paulownia
leaves
Put cocoons
and salt in Preserve with salt
50℃で開始し,1 時間かけて 100℃に上げ, 100℃の状態を 4 時間維持した後,3 時間か けて 50℃まで下げた.歩乾の乾燥程度は, 塩蔵と蒸した乾燥歩合と類似の 85~88%にな るように乾燥するために,60℃で 2 時間乾燥 した.乾燥後の乾燥歩合を確認した結果,小 石丸は,本乾 32.0%,歩乾 85.2%,錦秋×鍾 和は,本乾 43.0%,歩乾 87.0%であった. 2.2.2 煮しゃけん繭法 古文献では,お湯に煮ながら繰糸する方法 のみが記録されている.しかし,そのような 方法で煮て繰糸すると,途中で糸が切れるこ とが多く,糸を引くことが難しかった.そこ で高温と低温の温度差によって発生する繭腔 内の圧力差で湯を滲透させることにより繭層 内のセリシンを膨潤軟化させる方法と,2)文 献に記録された方法を組み合わせた方法で繭 を煮た.すなわち繭を繭缶に入れた後,60℃ のお湯に 30 秒,火がついている状態の 90℃ のお湯に 30 秒,再び 60℃のお湯に 30 秒浸 し後,90℃のお湯に繭缶の中の繭を取り出し 入れて蓋をして 5 分間煮た後,火を止めて 10 分間蒸らした(Fig. 3).この方法が繰糸 中の糸切れが最も少なく,糸を引きやすかっ た. 2.2.3 繰糸・揚返し法 1)座繰り器使用 繰糸道具には,繭から糸を引いて枠に巻 き上げる機構と複数の繭糸を集めて水分を 除去するよりかけ機構が必要である.二つ の機構を同時に利用する場合もあり,その いずれか一つを使用して糸を作る場合もあ る.韓国では糸を巻き上げる道具を「ワン チェ(Wang-Chae)」または「ワンチェンイ (Wang-Chaeng-I)」と呼ぶ.そして,よりか け機構の役割をする道具を「ジャセ(Ja-Sae) と呼ぶ.ワンチェを使用した実験では,揚返 し時に,ワンチェの枠角の固着の問題が発生 した.これを解決するには,かせ糸を乾燥し た後,揉む工程が必要である.しかし,この 方法では,糸全体に均一に揉みによる物理的 な力を加えることができず,一定の部分のみ 力が加わるなど引張検査に支障を与えること になる.したがって,本実験では,ワンチェ の周りの 160cm に比べて枠の周りが 53.6cm で小さな日本の座繰り器を使用した.そして よりかけ機構は韓国の「ジャセ」を使用した (Table 4). 小石丸の場合は 14 粒,錦秋×鍾和の場合 は 10 粒の繭の繭糸を集めてジャセの上と下 の竹筒の外側に 1 回巻きより掛けを 2 回行っ た後に,座繰り器の枠に巻き取る.座繰り器 を一度回せば枠が 4.5 回回転するから 241cm の糸が引かれる.実験では座繰り器の回転は 45~47 回 / 分としたので 1 分間当たりの繰糸 長は 108.5~113.3m となる.
Fig. 3. Cocoon cooking method
Table 4. Hand reeling silk tools
Winding and reeling tools Wang-Chae
(Korea)
Hand reeling tool (Japan)
Beam device Ja-Sae (Korea)
2)膝を利用した引出し方法 古文献に膝を用いた繰糸方法は記録されて いないが,19 世紀の画家金俊根の風俗画に 繰糸道具を使用せずに膝を利用して,糸を引 いている姿がある(Fig. 4).3)そして,1930 年代の写真資料も絵と同じ方法で糸を作って いるので,研究の範囲に含ませた.これは, 左手で引出した糸を左の膝の上に導いて収束 させ,左方の器の中へ重ねるようにして糸を 取る方法で本報では「引出し法」と称する (Fig. 5). 3)繰糸温度 セリシンは 40℃で溶け始め,80℃付近で 変曲点があり 90℃以上で急激に溶解する. したがって繰糸湯の温度が高いほど糸が解れ が良くなるが,大中節点や生糸量歩合は低く なるのが通例である.古文献の記録には, 「熱釜」として高温,「冷盆」として低温に分 け繰糸したとの記述があるが,温度は記載さ れてない.そこで本実験では,古文献で述べ た熱釜は 80℃,冷盆 40℃の 2 区を設定し, それぞれの温度を維持しながら繰糸した. 4)揚返し方法 (1)座繰りの場合 製糸工場では,一般的に綛上げする前に, 小枠滲透機の水に薬品を入れて減圧滲透させ た後,揚返しをする.本実験では,滲透機を 使用せずに,常温の水槽に小枠を 2 時間浸漬 した後,揚返機の回転数を 230 回 /min とし て揚返しを行った.揚返し機の枠周は 1.5m であるので揚返し速度は 345m/min となる. (2)引出し法の場合 膝を利用した引き出した糸は水に浸す過程 なしにかごの糸を揚返しをした.揚返しの器 具は韓国のワンチェンを使用して作った.ワ ンチェンがの枠周は 1.6m である. 2.2.4 強伸度・ヤング率測定法 強 伸 度 と ヤ ン グ 率 は, 温 度 20℃,湿度 65%の恒温恒湿室で「RTG-1210 テンシロン 万能試験機」を使用して検査した.それぞれ 25 本の検査料糸を作って検査し,その平均 値を求めた.検査料糸は単糸を使用し,検査 する前日に恒温恒湿室に置いた後検査を行っ た.検査料糸の長さは 10cm,ロードセル定 格 50N,試験速度は 50mm/ min とした. 2.2.5 生糸の光沢・色差測定法 光沢は,「光沢計 GM-286」を使用して検 査した(Fig. 6).試料は糸を黒い厚紙に横 10cm,縦 10cm で隙間なく一列に巻いた.こ のことを 10 回繰り返し,生糸が重畳するよ うにした.そして中央と上下 2 ヶ所ずつ,糸 の縦 60 度方向に 5 回,横 60 度方向に 5 回測 定し,それぞれの平均値を求めた. 色 差 検 査 は,「Spectrophotometer SE6000」 を使用した(Fig. 7).試料を作る方法は白い 厚紙に光沢を測定する時と同じ方法で行っ た.測定は,巻かれた糸の方向(縦)に 5 回,反対方向(横)に 5 回,測定し,W 値 (ハンター白色度)と WB 値(青色反射率に
Fig. 4. Genre paintings by Kim Jungeun
よる白色度)を求めた. 3.結果と考察 3.1 強度 Table 5 に繭品種別の強度と要因別の寄与 率を示す.繰糸器具の寄与率が 61.0%と高い 値を示した.錦秋×鍾和は,座繰り器を使っ て繰糸した時は,繰糸温度 40℃で蒸氣処理 が 4.6gf/d,80℃で生繭が 4.7gf/d で一番高く, 引出し法では,繰糸温度 40℃の蒸気処理・ 歩乾・本乾が同じ 4.0gf/d,80℃で本乾が 4.3gf/ d で一番高かった.小石丸は,座繰り器を使 用して繰糸した時は,繰糸温度 40℃で歩乾 が 4.6gf/d,80℃で蒸氣処理が 4.7gf/d で一番 高く,引出し法は,繰糸温度 40℃で蒸氣処 理が 4.0gf/d,80℃で蒸氣処理・本乾が同じ 3.9gf/d で一番高かった(Fig. 8). 強度に影響を及ぼす要因は,座繰り器を 使って繰糸するのが膝を利用して繰糸するよ り良い結果が表れ,繭品種も影響を及ぼすこ とを確認することができた(Fig. 9). 3.2 伸度 Table 6 に繭品種別の伸度と要因別の寄 与率を示す.殺蛹及び乾燥法の寄与率が最 も高く 29.3%となっている.錦秋×鍾和で は,座繰り器を使って繰糸した時は,繰糸 温度 40℃で本乾の伸度が 21.9%,80℃で歩 乾が 25.8% で一番高く,引出し法は,繰糸 温度 40℃で本乾が 23.6% 及び 80℃で塩蔵 が 23.8% で一番高かった.小石丸の場合は, 座繰り器を使って繰糸した時は,繰糸温度 40℃で歩乾が 23.0%,80℃でも歩乾が 21.6%
Table 5. Tenacity difference by silkworm race variety and contribution ratio by factor
Tenacity (gf/d) 繭品種 錦秋×鍾和 小石丸 殺蛹及び乾燥法 生繭 塩蔵 蒸気 歩乾 本乾 生繭 塩蔵 蒸気 歩乾 本乾 繰糸器具 座繰り 器 繰糸温度 40℃ 4.3 4.5 4.6 4.3 4.3 4.5 4.5 4.4 4.6 4.5 80℃ 4.7 4.1 4.0 4.3 4.3 4.3 4.3 4.7 4.6 4.1 引出し 法 40℃ 3.4 3.6 4.0 4.0 4.0 3.3 3.8 4.0 3.5 3.6 80℃ 4.1 4.2 4.0 4.0 4.3 3.4 3.8 3.9 3.5 3.9 要因 S 二乗和 Φ自由度 V 分散 (分散比)F 値 寄与率(%) 有意差 繰糸器具 3.7 1 3.7 70.6 61.0 危険率 1%で有意 繭品種 0.1 1 0.1 2.7 1.5 危険率 5%で有意 信頼限界値 (β値) 殺蛹及び乾燥法×繭品種 0.2 繭品種×繰糸器具 0.1
で一番高く,引出し法は,繰糸温度 40℃で 本乾が 21.8%,80℃でも本乾が 21.0% と一番 高かった. 伸度に影響を及ぼす要因は,殺蛹及び乾燥 法と繭品種で生繭を繰糸するより,殺蛹法で 処理した後,繰糸した方が高い結果となっ た.また,乾燥機を使って乾燥した歩乾と本 乾が全般的に伸度が高く,錦秋×鍾和が小 石丸より伸度が高かった(Fig. 10).そして, 錦秋×鍾和は座繰り器を使って繰糸したもの より引出し法が伸度が高い反面,小石丸は座 繰り器を使った方が,引出し法より伸度が高 かった(Fig. 11).
Fig. 8. Effect of the killing and drying method of
pupa and the silkworm race on the tenacity 3.6 3.7 3.8 3.94 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 4.6 生繭 塩蔵 蒸気 歩乾 本乾 強度 (g f/d) 殺蛹及び乾燥法 錦秋×鐘和 小石丸
Fig. 9. Effect of the silkworm race and the reeling
tools on the tenacity 3 3.2 3.4 3.6 3.84 4.2 4.4 4.6 4.85 座繰り器 引出し法 強度(gf/d) 繰糸器具 錦秋×鐘和 小石丸
Table 6. Elasticity difference by silkworm race variety and contribution ratio by factor
Elasticity (%GL) 繭品種 錦秋×鍾和 小石丸 殺蛹及び乾燥法 生繭 塩蔵 蒸気 歩乾 本乾 生繭 塩蔵 蒸気 歩乾 本乾 繰糸器具 座繰り 器 繰糸温度 40℃ 16.8 21.8 21.6 21.5 21.9 19.5 19.6 19.1 23.0 19.7 80℃ 19.7 21.2 18.9 25.8 20.8 15.9 19.4 19.0 21.6 20.2 引出し 法 40℃ 16.3 21.5 20.7 21.9 23.6 17.8 18.5 19.1 19.5 21.8 80℃ 23.6 23.8 21.2 22.5 22.2 18.3 20.9 19.4 19.4 21.0 要因 S 二乗和 Φ自由度 V 分散 (分散比)F 値 寄与率(%) 有意差 殺蛹及び乾燥法 58.9 4 14.7 6.5 29.3 危険率 1%で有意 繭品種 30.1 1 30.1 13.2 16.4 危険率 1%で有意 信頼限界値 (β値) 殺蛹及び乾燥法×繰糸器具 1.5 繭品種× 繰糸器具 0.9
Fig. 10. Effect of the killing and drying method of
pupa and the reeling tools on the elasticity
16 16.517 17.518 18.519 19.520 20.521 21.522 22.523 23.524 24.525 生繭 塩蔵 蒸気 歩乾 本乾 伸度(%) 殺蛹及び乾燥法 座繰器 引出し法
3.3 ヤング率 Table 7 に繭品種別のヤング率と要因別の 寄与率を示す.繰糸器具の寄与率が 94.9%と 大きな値を示した.錦秋×鍾和では,座繰 り器を使って繰糸した時は,40℃で歩乾が 1230.4kgf/mm2,80℃で蒸気処理が 1278.3kgf/ mm2で 一 番 低 く, 引 出 し 法 で は,40 ℃ で 塩 蔵 処 理 が 604.5kgf/mm2,80 ℃ で も 塩 蔵 が 679.3kgf/mm2で一番低かった.小石丸の 場合は,座繰り器を使って繰糸した時は, 40℃で歩乾が 1340.6kgf/mm2,80℃で本乾が 1307.4kgf/mm2で一番低く,引出し法では, 40℃と 80℃の歩乾がそれぞれ 479.2kgf/mm2, 635.2kgf/mm2と低い値となった. ヤング率に影響を及ぼす要因は,引出し法 が座繰り器を使って繰糸するより 2 倍以上柔 らかい糸を作ることができることを確認する ことができた.また,繰糸温度の寄与率は小 さい値となっているが,座繰り器を使用する
Table 7. Young’s modulus difference by silkworm race variety and contribution ratio by factor
Young’s modulus (kgf/mm2) 繭品種 錦秋×鍾和 小石丸 殺蛹及び乾燥法 生繭 塩蔵 蒸気 歩乾 本乾 生繭 塩蔵 蒸気 歩乾 本乾 繰糸器具 座繰り 器 繰糸温度 40℃ 1479.5 1435.4 1352.7 1230.4 1426.7 1375.5 1426.2 1364.9 1340.6 1413.8 80℃ 1547.6 1331.9 1278.3 1301.3 1503.1 1382.4 1404.7 1414.4 1390.7 1307.4 引出し 法 40℃ 702.2 604.5 628.1 654.9 668.3 606.0 603.2 737.4 479.2 582.3 80℃ 776.0 679.3 706.1 753.1 765.7 837.6 737.2 677.0 635.2 755.1 要因 S 二乗和 Φ自由度 V 分散 (分散比)F 値 寄与率(%) 有意差 繰糸器具 4914059.1 1 4914059.1 1290.7 94.9 危険率 1%で有意 殺蛹及び乾燥法 70017.2 4 17504.3 4.6 1.1 危険率 5%で有意 繰糸溫度 23574.4 1 23574.4 6.2 0.4 危険率 5%で有意 信頼限界値(β値) 繰糸器具×繰糸温度 39.9
Fig. 12. Effect of the reeling tools and the
temperature of reeling water on the Young’s modulus
500 550 600 650 700 750 800 850 900 950 1000 1050 1100 1150 1200 1250 1300 1350 1400 1450 1500 40℃ 80℃ ヤング率(kgf/ ㎟) 繰糸温度 座繰り器 引出し法
Fig. 11. Effect of the silkworm race and the reeling
tools on the elasticity
16 16.517 17.518 18.519 19.520 20.521 21.522 22.523 座繰り器 引出し法 伸度(%) 繰糸器具 鍾和×鍾和 小石丸
場合は 40℃の平均値と 80℃の平均値の差は 小さく,引出し法では,80℃より 40℃で繰 糸したのが柔らかい糸となった(Fig. 12). 3.4 生糸の光沢 Table 8 に繭品種別の光沢と要因別の寄与 率を示す.繰糸器具と繭品種の寄与率が高 い値を示した.錦秋×鍾和は,座繰り器を 使って繰糸した時の光沢(横,60 度)値は, 繰糸温度 40℃と 80℃で生繭が 11.1,9.8 で 一番高く,光沢(縦,60 度)値は,繰糸温 度 40℃で本乾が 5.5,80℃で生繭が 5.4 で一 番高かった.そして引出し法での糸の光沢 (横,60 度)値は,繰糸温度 40℃で本乾が 7.8, 80℃で塩蔵が 8.2,光沢(縦,60 度)値は, 繰糸温度 40℃で蒸氣処理・本乾が 4.3,80℃ で塩蔵が 4.7 で一番高かった.小石丸の場合 は座繰り器を使って繰糸した時の光沢(横, 60 度)値は,繰糸温度 40℃で生繭が 14.5, 80℃でも生繭が 13.8 で一番高かった.そし て引出し法の光沢(横,60 度)値は,繰糸 温度 40℃で蒸気処理が 8.8,80℃で本乾が 9.1,光沢(縦,60 度)値は,繰糸温度 40℃ と 80℃で本乾が 5.0 で一番高かった.
Table 8. Lustre difference by silkworm race variety and contribution ratio by factor
Lustre (width, 60 degree)
繭品種 錦秋×鍾和 小石丸 殺蛹及び乾燥法 生繭 塩蔵 蒸気 歩乾 本乾 生繭 塩蔵 蒸気 歩乾 本乾 繰糸器具 座繰り 器 繰糸温度 40℃ 11.1 9.6 9.3 9.6 10.6 14.5 11.7 12.3 11.7 12.3 80℃ 9.8 8.6 8.9 8.3 9.6 13.8 11.7 11.7 11.6 11.3 引出し 法 40℃ 7.3 6.8 7.6 7.2 7.8 8.0 8.5 8.8 8.4 8.7 80℃ 7.8 8.2 7.8 7.7 7.4 8.7 8.0 8.4 8.3 9.1 要因 S 二乗和 Φ自由度 V 分散 (分散比)F 値 寄与率(%) 有意差 繰糸器具 79.6 1 79.6 148.1 55.3 危険率 1%で有意 繭品種 35.2 1 35.2 65.4 24.2 危険率 1%で有意 信頼限界値(β値) 繭品種×繰糸器具 0.5
Lustre (length, 60 degree)
繭品種 錦秋×鍾和 小石丸 殺蛹及び乾燥法 生繭 塩蔵 蒸気 歩乾 本乾 生繭 塩蔵 蒸気 歩乾 本乾 繰糸器具 座繰り 器 繰糸温度 40℃ 5.4 5.2 5.1 5.0 5.5 6.3 5.9 5.9 6.0 6.2 80℃ 5.4 5.0 5.1 4.8 5.1 6.0 6.0 6.0 5.9 5.8 引出し 法 40℃ 4.2 3.9 4.3 4.1 4.3 4.5 4.8 4.8 4.7 5.0 80℃ 4.2 4.7 4.3 4.2 4.3 4.8 4.5 4.7 4.7 5.0 要因 S 二乗和 Φ自由度 V 分散 (分散比)F 値 寄与率(%) 有意差 繰糸器具 11.6 1 11.6 374.7 65.9 危険率 1%で有意 繭品種 4.3 1 4.3 139.3 24.4 危険率 1%で有意 信頼限界値(β値) 繭品種×繰糸器具 0.1
Table 9. Color difference by silkworm race variety and contribution ratio by factor
Color difference (W) Hunter whiteness level
繭品種 錦秋×鍾和 小石丸 殺蛹及び乾燥法 生繭 塩蔵 蒸気 歩乾 本乾 生繭 塩蔵 蒸気 歩乾 本乾 繰糸器具 座繰り 器 繰糸温度 40℃ 67.8 66.7 64.9 64.4 65.5 64.6 62.7 58.8 59.7 61.2 80℃ 67.2 65.3 64.8 62.9 59.3 65.6 59.7 57.8 60.7 63.8 引出し 法 40℃ 67.9 67.1 66.7 68.0 65.0 64.0 64.7 63.9 65.8 64.8 80℃ 67.6 64.2 66.6 61.5 66.2 64.4 61.6 62.4 64.8 63.9 要因 S 二乗和 Φ自由度 V 分散 (分散比)F 値 寄与率(%) 有意差 繭品種 74.6 1 74.6 21.5 25.5 危険率 1%で有意 繰糸器具 36.3 1 36.3 10.4 11.7 危険率 1%で有意 殺蛹及び乾燥法 43.1 4 10.8 3.1 10.4 危険率 5%で有意 信頼限界値(β値) 殺蛹及び乾燥法 1.4
Fig. 13. Effect of the silkworm race and the reeling
tools on the lustre (width, 60 degree) Fig. 14. Effect of the silkworm race and the reeling tools on the lustre (length, 60 degree) 6 7 8 9 10 11 12 13 14 座繰り器 引出し法 光沢(横,60度) 繰糸器具 錦秋×鐘和 小石丸 4 4.5 5 5.5 6 6.5 座繰り器 引出し法 光沢(縦,60度) 繰糸器具 錦秋×鐘和 小石丸 光沢に影響を及ぼす要因は,繰糸器具で座 繰り器で繰糸するのが膝を利用して繰糸した より良い結果となった(Fig. 13,14).そし て,繭品種では小石丸が錦秋×鍾和よりも光 沢値が高かった(Fig. 13,14),これは繭の 品種の固有した特徴と考えられる. 3.5 生糸の色差 Table 9 は繭品種別の色差と要因別の寄与 率を示した.錦秋×鍾和は,座繰り器を使っ て繰糸した時の W 値(ハンター白色度)と WB 値(青色反射率による白色度)は,繰糸 温度 40℃で生繭が 67.8,67.4,80℃でも生繭 が 67.2,66.8 で高く,引出し法時の W 値と WB 値は繰糸温度 40℃の歩乾が 68.0,67.8, 80℃では生繭が 67.6,67.3 で一番高い値を示 した. 小石丸は,座繰り器を使って繰糸した時 の W 値と WB 値は,繰糸温度 40℃で生繭 が 64.6,64.0,繰糸温度 80℃の生繭が 65.6, 65.1 で一番高く,引出し法時の W 値と WB 値は,繰糸温度 40℃の歩乾 65.8,65.2,繰糸
Color difference (WB) Whiteness level by blue color reflexibility 繭品種 錦秋×鍾和 小石丸 殺蛹及び乾燥法 生繭 塩蔵 蒸気 歩乾 本乾 生繭 塩蔵 蒸気 歩乾 本乾 繰糸器具 座繰り 器 繰糸温度 40℃ 67.4 66.2 64.4 64.0 65.0 64.0 61.7 57.9 59.0 60.6 80℃ 66.8 64.8 64.4 62.5 58.8 65.1 59.0 56.9 60.0 63.3 引出し 法 40℃ 67.5 66.7 66.3 67.8 64.6 63.5 64.1 63.3 65.2 64.4 80℃ 67.3 63.7 66.1 61.0 65.8 64.0 61.0 61.8 64.2 63.5 要因 S 二乗和 Φ自由度 V 分散 (分散比)F 値 寄与率(%) 有意差 繭品種 85.6 1 85.6 23.2 26.8 危険率 1%で有意 繰糸器具 40.5 1 40.5 11.0 12.0 危険率 1%で有意 殺蛹及び乾燥法 47.3 4 11.8 3.2 10.6 危険率 5%で有意 信頼限界値(β値) 殺蛹及び乾燥法 1.4
Fig. 15. Effect of the killing and drying method of
pupa on the color difference (W) Hunter whiteness level
Fig. 16. Effect of the pupa killing and drying
method of pupa on the color difference (WB) Whiteness level by blue color reflexibility
60 62 64 66 68 70 生繭 塩蔵 蒸気 歩乾 本乾 W ( ハンター白色度 ) 殺蛹及び乾燥法 60 62 64 66 68 70 生繭 塩蔵 蒸気 歩乾 本乾 W B ( 青色反射率による白色度 ) 殺蛹及び乾燥法 温度 80℃でも歩乾が 64.8,64.2 で高い値を 示した. 色差に影響を及ぼす要因は繭品種,繰糸器 具,殺踊及び乾燥法が関係があることを分 かった.特に生繭状態で繰糸した糸の白色度 が高かった(Fig. 15, 16). 4.結 論 古文献に繰糸条件として殺蛹,繭乾燥, 繰 糸器具,繰糸湯温度がある.ここではそれら の条件が糸質に及ぼす影響を対照区として錦 秋×鍾和,試験区として小石丸を用いて調べ た.得られた結果は以下の通りある. 1)伸度は,殺蛹及び乾燥法と繭品種に影響 され,特に,小石丸は座繰り器を使って繰 糸する時,殺蛹法のうち歩乾による伸度が 高く,引出し法では,本乾による伸度が高 かった. 2)強度は,繰糸器具と繭品種に影響を受け るが,座繰り器を使った時が引出し法より 強度が高いことが分かった. 3)ヤング率は繰糸器具に影響を受けるが, 引出し法で繰糸する時,座繰り器を使うよ り 2 倍以上に低くなることが分かった. 4)光沢は,繰糸器具と繭品種に影響される
が,特に,小石丸は座繰り器を使って繰糸 する時は生繭を用いた生糸の光沢が良く, 引出し法で繰糸する時は殺蛹法のうち本乾 による生糸の光沢が良かった. 5)色差は,繭品種,繰糸器具,殺蛹及び乾 燥法に影響を受け,生繭を用いた生糸の白 色度が高いことが分かった. 以上の結果から,古代法に基づき考案した 引出し法よる糸は,柔らかい糸になる特徴を もつことが確認された.今後,この生糸によ る織物の作製及び風合い試験等により古代絹 の特性についても検討が必要と考える. 摘 要 絹織物の遺物を復元しようとする場合,そ の絹織物の特性に適する糸を作る必要があ る.手作業で繰糸する方法が記述されている 古文献を通して各種の手作業による繰糸方法 を検討して,それらの生糸を繰糸した.さら に,これらの古文献の繰糸方法が糸に及ぼす 影響を調べるため,糸の物性について現在の 普及繭品種を対象区として比較試験を行っ た.その結果,伸度は殺蛹法と繭品種に,強 度は繰糸器具と繭品種に,ヤング率は繰糸器 具に影響を受けることが分かった.また光沢 は繰糸器具と繭品種に影響を受け,色差は繭 品種・繰糸器具・繭保官法及び殺蛹法に影響 を受けることが分かった. 謝 辞 一般財団法人大日本蚕糸会並びに蚕糸科学 研究所と蚕業技術研究所の皆様に感謝しま す. 文 献 1)布目順郞(1997):養蚕の起源と古代絹, 雄山閣出版,305 2)製糸技術検討会編集 (2012): 煮繭技術 −よい糸 づくりのために−,大日本蚕 糸会蚕糸科学研究所,104-106 3)숭실대학교 한국기독교박물관(2008): 기산 김준근 조선풍속도- 스왈른 수집 본,대덕인쇄,42