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地域活性化と地域のつながり

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Academic year: 2021

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(1)地域活性化と地域のつながり Regional Activation and Community Ties 1. 2. 杉野 隆 ,中根 雅夫 Takashi SUGINO and Masao NAKANE 1. 国士舘大学情報科学センター Center for Information Sciences, Kokushikan University 2 国士舘大学経営学部 Faculty of Business, Kokushikan University. Abstract We recognize the regional activation from aspects of economical functions and social functions, and we put shopping districts(SDs) and community people into the kernel of these functions. We did the questionnaire concerning 1) community ties and regional activation, 2) the relationship between community ties and applying ICT. We verified that community ties have some relations to social capital (SC). We confirmed to enhance social functions as a result in the region where SC indices were high. We also confirmed that that urban (bridging) type SDs were more positive than "territorial-bond type" SDs. キーワード. 地域活性化, 商店街, コミュニティ, ソーシャル・キャピタル, 地域のつながり. 1.はじめに かつては街の賑わいの中心であった商店街の多くは 人通りもまばらになり,シャッターを閉めたままの店 も多い。「シャッター通り」という表現は,商店街の 苦況の象徴である。経済状況の長期的低迷や国民のラ イフスタイルの変化,車社会の到来など,多くの要因 が中心市街地の衰退を誘発している。商店街は地域社 会の中核的存在であり,商店街の賑わいの喪失は中心 市街地の衰退につながっている。このことは,商店街 が地域社会にあって,地元の商業振興,産業振興とい った経済的機能だけでなく,地元住民の生活利便性向 上や活発な交流を促すなどの社会的機能を担っている ことを意味する。一方,小中学校は,家庭と地域社会 を連携する要であり,PTAは具体的な地域活動(清掃 活動,防犯防災活動,文化祭,バザーなど)の中心と なっている。地域社会における社会的機能は,これら 商店街や地域住民(PTAを含む)などが支えている。 これらが地域において果たしている社会的機能は,本 論文における重要な視点である。 いずれにせよ,従来,地元住民,小規模小売業者, 企業,そして商工会,町会,自治会,NPOなどの各種 機関,さらには自治体等によって形成されるコミュニ ティが弱体化しつつあることは,そのまま「地域のつ ながり」が脆弱化してきていることを意味するのであ る。 本研究では以上の事情を踏まえて商店街と地域住民 の存在に注目し,地域(商店街)の再生が「地域のつ ながり」を強化する「触媒」的な機能を果たすという 基本的認識の下でその現状を改めて分析し,地域活性 化の方途を考察することに主眼を置いている。. 2.問題意識 商店街を中心とする地域の活性化の試みはさまざま になされているが成功例は少ない。商店街の経済的機 能のみを再生しようとするところに限界があるのでは. ないか。商店街のもつ社会的機能にも着目する必要が ある。商店街のステークホルダである,地域住民,行 政などとの関係性の中で社会的機能を捉え,その実態 を実証的にとらえたい。 本研究では,この社会的機能を生み出す関係性を 「地域のつながり Community Ties」と呼ぶ。この「地 域のつながり」を向上(強化)するためのキー概念と して,地域力あるいはソーシャル・キャピタル(SC) を適用するということが本研究の問題意識である。. 3.先行研究 (1)地域活性化に関する先行研究 1970 年代あたりから,いわゆる地域振興政策に代わ って,主に大都市圏以外の地域における新たな発展の 方向として,「地域活性化」が地域社会の政策課題と して示されるようになった。しかし,その対象となる 「地域社会」を厳密に定義することは実は容易ではな い。郊外にショッピングセンターを建設することが商 店街の衰退を招いたという言説も必ずしも正しくはな いかもしれない。商店街の当事者たちによる自助努力 や補助金の有無,土地の利権,車社会への対応の遅れ など,複合的な要因が考えられる。既存の商店街であ っても,それ以前の村社会における流通システムから の転換に対応するために立地集積してきた結果でもあ ろう。地域社会に自然共同体性を求めることも,沖縄 のように血縁性の強い地域を除けば,あまり根拠のあ ることではない。 新川 5)は,地域の活性化を次の四つの次元で性格付 けできると述べている。 ① 経済活動としての活性化水準:経済活動における量 的拡大と質的活動活性化 ② 地域社会の活動としての活性化水準:地域組織化, コミュニティ活動(ボランティア活動や NPO 活動, 教育文化活動)など ③ 人の動きとしての活性化水準:人々がさまざまな活.

(2) 動機会をもち,積極的に参加しているのか ④ 何を活性化として捉えるのかという活性化の目的と 手段の水準:トータルイメージとしての活性化と, 機能的部分的活性化(地域活性化の目的・水準は, すべての地域社会において同じではないし,部分的 あるいは個別的な活性化方策が定義されることもあ る。各地域社会において,地域活性化の目的をどの ように定義し,その実現手段をどこまで具体化して いるか。) この性格付けは,個々の地域活性化施策を計画行政 の立場から分類するためには有用であろうが,地域活 性化の概念,理念,目的などを明確に定義するもので はない。経済的価値の向上を暗黙裏に含むという旧来 の価値観を前提とした活性化から脱皮し,福祉,個人 の幸福の追求といった新しい価値観を反映させること も必要になっている。また,上から提供される活性化 ではなく,地域住民による内発的な活性化を求めてい るといったことが背景にあるのではないか。 地域活性化に関しては,事例紹介した先行研究は多 数あるが,それら事例を横断的に分析し,地域活性化 の概念を明確にした研究は見当たらないと大熊 2)は述 べている。地域活性化には,地域社会全体の活動レベ ルの質的向上と量的拡大の二つの意味が基本にあるが, 実際は再開発,観光機能の強化による集客力の向上と いったハード整備先行型の量的拡大を目指すものが多 く,部分的で個別的な地域活性化方策が各地域でさま ざまに定義され,実施されてきた。例えば,リゾート 開発は,開園当初の短期間の賑わいのあと,多くは経 営に行詰って厳しい状況にあるのが現実である。 地域活性化の具体的な施策の一つとして商店街活性 化を位置付ける。国は商店街の衰退に歯止めをかける ために,まちづくり3法を見直し,空洞化が進む地方 中心部に,共同住宅や商業施設を集める改正中心市街 地活性化法を施行したほか,郊外への大型集客施設の 出店を規制する改正都市計画法も 2007 年 11 月に施行 し,市街地へと出店を促すことをめざした。しかし, ハード先行の活性化手法の限界を背景に,2009 年 6 月 には「商店街の活性化に関する法律」を制定し,ハー ド整備だけではなく,商店街によるソフト面での取り 組みをも支援する体制を整えた。 (2)地域活性化への ICT の活用 通信事業の自由化,通信のディジタル化,マルチメ デ ィ ア 化 な ど と い っ た ICT ( Information and Communication Technologies)の高度化や情報化社会へ の期待を背景として,1990 年代に全国各地で地域情報 化への取り組みが盛んに行われた。例えば,富山県山 田村では,住民の希望者全員(全世帯の約 90%)にパ ソコンを配布し,ISDN(64kbps)を整備してインター ネットと接続し,電子メールなどの利用を可能とした。 しかし,持続的な取り組みに必要な人材が不足してい たため,結局はインフラの整備に終わってしまい,平 成の大合併で山田村は富山市に統合され,このような 試みはなくなってしまった。 商店街の活性化に関しては,例えば,神谷ら 4)は, 商店街活性化を街づくりの 1 つと考え,マルチメディ. アによる商店街活性化を提案している。ここでは,特 にパソコン通信やインターネットを使ったオンライン ショッピング,バーチャルショップに注目している。 インターネットによるオンラインショッピングでは, 店舗施設,商品在庫,販売要員が不要になるため,従 来の店舗販売に比べ,販売コストの大幅な削減が期待 されるとしている。しかし,この主張は,個々の商店 が新規市場を開拓する,あるいは売り上げを拡大する 可能性を主張しているのであり,商店街としての活性 化の方策を主張するものではない。 石橋・藤田 3)は,地域活性化の概念があいまいであ るため,地域 SNS がどのような経済的効果を生み出し ているかを判断しにくいと述べている。 (3)ソーシャル・キャピタル(SC)に関する先行研究 SC は,「信頼」「社会参加(規範,互酬性)」 「ネットワーク」といった,人びとの意識や個人や集 団同士のつながりであり,それが社会の効率性を高め る「資本」としての機能を持つという考え方である。 地域コミュニティには,昔から SC と呼べるものが重 要な基盤として存在してきたと考えられる。Putnam は, 米国各州のマクロ統計データベースをもとに各州の SC を計測し,かつては豊かな SC を有していたアメリ カ社会が,産業形態,社会,価値観などの変化の中で 大きな退潮を見せていることを指摘した 1)。さらに, Putnam は,SC のタイプを分類する基準として,a)つ ながりが強いか弱いか,b)内向きか外向きか,c)結束 (Bonding)型か橋渡し(Bridging)型かという 3 つの軸を挙 げている。Bonding 型とは,組織の内部における人と 人との同質的な結びつきであり,集団の内部に信頼や 協力,結束を生むものとされる。一方,Bridging 型と は,異なる組織間の異質な人や組織を結びつけるネッ トワークとされる。 日本における実証研究としては,北海道知事政策部 による研究,内閣府経済社会総合研究所による実証研 究があり,日本における SC に関する実証研究のひな 形とされている。本研究でも,方法論はこの研究に依 拠している。なお,従来の SC 計測は,国あるいは県 レベルを対象としているが,本研究では,商店街を含 むやや狭い地域(コミュニティ)に SC の考え方を適 用し,さらに,ICT の適用可能性を SC によって計測 するという新しいアプローチを含んでいる。中根・杉 野 6,7) は,商店街の実態を,「地域のつながり」を, SC をキー概念として分析することの可能性について 論じている。. 4.分析のフレームワーク 本研究は,地域活性化は,経済的活性化のみでなく, 社会的活性化も併せて実現しないと達成されないとい う枠組みで進めている。また,地域活性化の担い手, すなわちコミュニティの中核アクタとして商店街と地 域住民を選定した。具体的には,東京の 4 か所の商店 街とその周辺地域を対象にアンケート調査を実施し, 地域のつながりを地域のソーシャルキャピタル(SC)と 関連付け,SC を向上させる方策として ICT の適用可 能性を検証した。.

(3) 21 年度の調査の反省点として,アンケート対象者の 年齢の偏り(高齢者の回答が多い)があった。そこで, 22 年度の研究では,地域コミュニティの一つである PTA に着目して調査した。本研究は,平成 21 年度か ら 2 年間継続して行っている。本論文はその中間報告 であり,2 年間の調査結果をまとめた。次の二つの仮 説を検証する。 H1:商店(街)を含む地域の構成員間のつながり,す なわち「地域のつながり」なくして地域活性化は実 現しない H2:「地域のつながり」は情報通信技術(ICT)によ って強化される 具体的な検証方法としては,「地域のつながり」を 地域のソーシャル・キャピタル(SC)と関連付け, SC を向上させる方策としての ICT の適用可能性を実 証する。ICT として,インターネット,ブログ,地域 SNS(地域 SNS は 22 年度のみ)を取り上げた。 本研究では,地域コミュニティにおいて,商店街は 経済的機能( の次元)を,商店街と地域住民は社会 的機能(②,③の次元)を中核的に果たす存在として 位置づけ,それらを SC と関連付ける。 研究手法としては,いくつかの商店街とその周辺の 地域住民に対してアンケート調査を実施して SC を計 測し,仮説 H1 を実証する。さらに,SC の水準と ICT の利用度の関連を計測し,ICT の活用が SC を醸成し, 地域活性化につながるという仮説 H2 を実証する。21 年度では商店街活性化を目標としたが,22 年度は, PTA 関係者との議論の結果,地域活性化を目標に設定 し直した。研究の枠組みを図式化すると次のようにな る。 (1)アンケート調査 1 年目,2 年目の調査内容は若干異なる。 ・1 年目 調査対象:地域住民(町会経由で住民にア プローチ),商店街個店 ・2 年目 調査対象:地域住民(PTA 経由でアプロー チ),商店街個店 アンケート調査は,商店街振興組合に加入している 個店,周辺の地域住民の 2 層に分けて実施した。各層 へのアンケート項目を分類すると,おおよそ表 1 の通 りである。 回答結果は,各質問項目の選択肢に重みを付けて集 計し,地域ごとの平均値を算出する。各質問項目の平 均値を SC の構成要素であるネットワーク,信頼,社 会的貢献に振り分けて集計する。 SC 値は絶対値として表示できるものではなく,地 域力の相対的な大きさとして表示される。ここでは, 先行研究である北海道での実証研究で実際に調査され た 6 つのモデル地域のうち鹿追町,中標津町,函館市 戸井の 3 地域のデータと対比することによって,SC 値の妥当性を検討する。 (2)ICT の活用による活性化の可能性 商店街の活性化の状況を経済的機能と社会的機能に 分類して評価する。経済的機能は,商店街の事業所当. たり年間売上高によって評価する。また,社会的機能 は,SC 構成要素の合計によって評価する。ICT の利用 による商店街の経済的機能の向上についてはいくつか の実証研究がある。例えば,今回の調査対象とした烏 山駅前通り商店街では,「ちとふなカード」を発行し て CRM システムを運用している。. 5.アンケート調査の詳細 (1)事前ヒアリング(1 年目) 次の関係先にアンケート調査の趣旨説明を行った。 ①世田谷区役所 ②4商店街振興組合理事長(松陰神社前通り商店 街,梅丘商店街,青物横丁商店街,東和銀座商店 街) ③各周辺地域町会長 (2)事前ヒアリング(2 年目) 次の関係先にアンケート調査の趣旨説明を行った。 ①学校校長(世田谷区立船橋小,希望丘小,千歳台 小,船橋中,千歳丘中,板橋区立赤塚小,下赤塚 小) ②5 商店街振興組合理事長(千歳船橋商店会,参商会, 烏山駅前通り商店街,赤塚一番通り商店街,赤塚銀 座会) ③PTA 会長(世田谷区船橋地区委員会,板橋区立下赤 塚小) (3) アンケート調査(1 年目) 松陰神社前通り商店街,梅丘商店街,青物横丁商店 街(品川),東和銀座商店街(足立)の各商店街個店, 周辺地域住民を対象にアンケート調査を実施した。た だし,分析に際しては,松陰神社前通りと梅丘は住民 特性が近いことから同一集団(世田谷)にまとめた。 (4)アンケート調査(2 年目) 世田谷区千歳船橋,千歳烏山(以下,船橋烏山)地 区,板橋区赤塚地区の各商店街個店,地域住民(PTA 会員)を対象にアンケート調査を実施した。 (5)集計と分析 2 年分のデータを合わせて 4 商店街とし,比較対象 の北海道における調査結果をもとに分析した。計測さ れた,SC 構成要素であるネットワーク,信頼,社会 的貢献のそれぞれの値を図 2 に示す。 図 3,4 は,各地域の商店街は果たす経済的機能, 社会的機能と各地域住民の SC 値の関連を示す。特に, 社会的機能において,SC 値の高い地域ほど社会的機 能が充実していると言える。船橋烏山,北海道の戸井 を加えたところ,傾向は同じであり,安定性を確認で きた。 (6)インプリケーション 本研究は,全国規模での研究調査に先立つ予備的な ものであり,確度の高い分析結果を得るためにはさら にサンプル規模を拡大する必要がある。限られた回答 数であったが,得られた示唆的結果からいくつかを以 下に示す。 ・個店及び周辺地域住民ともに,「地縁型(Bonding 型。以下,A 型)」(足立)「都会型(Bridging 型。 以下,B 型)」(世田谷,船橋烏山,品川)に類型.

(4) 化される。 ・A 型は B 型よりも地元志向性が強い(但し,船橋烏 山は A 型よりも地元志向性はさらに強い。これは, 活動特性からは船橋烏山が,「特定型」(目的に応 じたつながり)として位置づけられるからである。 (船橋烏山以外は,活動特性としては「広範型」 (特定な目的を持たないつながり)とした)。 ・A 型は B 型よりも「つながり」志向性が強い。(但 し,上述の理由から,船橋・烏山は A 型よりも地元 志向性はさらに強い)。ここで「つながり」とは, SC でいうネットワークを意味する。 ・つながりについては,近隣という限られた地域では, A 型の方が B 型よりも強いことが確認された。加え て,活動特性からは特定型の方が広範型よりもつな がりは強い。 ・逆に,地域を拡大してみると,B 型の方が A 型より もつながりは強い。加えて,活動特性からは特定型 の方が広範型よりもつながりは強い。 ・B 型は A 型と比べて昼間人口が多いためか,仕事以 外での職場の同僚とのつながりについては,A 型の 方が B 型よりも強い。 ・信頼に関しては,総じて B 型の方が A 型よりも高い。 つながりに関する調査結果にみたとおり,B 型の方 が A 型よりもつながりの機会が多いため,他者に対 する信頼感が自然と醸成されていることが考えられ る。加えて,活動特性からは特定型の方が広範型よ りもつながりは強い。 ・地域活動へのコミットメントについては,自治会等 の地縁的活動では A 型の方が B 型よりも活発だが, それ以外の活動へのコミットメントでは両者間の差 異は判然としない。 ・地域活動に関する住民の回答結果をみると,全体的 傾向として「交通安全・防犯・防災」が比較的目立 つが,地域別にみた場合の半数強が「商店街のイベ ント」をあげており,商店街の社会的機能が働いて いることが改めて確認される。 ・A 型は,B 型と比較して居住年数が長く,近隣にお いては「つながり」形成の潜在的な可能性が高い。 ・地域課題の解決のための活動に関しては,「参加し たことはない」が B 型で高く,A 型よりも上回って おり,B 型は A 型よりもコミュニティ志向性が明ら かに低い。 ・商店街で買い物をする理由としては,全体的に, 「近くにある」ことが誘因となっているが,同時に, 地域別にみた場合のほぼ半数が「昔からの顔なじ み」をあげており,商店街が経済的機能だけでなく, 社会的機能を果たしていることの一端をうかがわせ る。但し,「人との交流や情報が得られる」とする 見解は少なく,現時点では,社会的機能を十分に発 揮するまでには至っていない。 ・商店街が抱える課題に対する住民の見方は地域によ って異なるが,地域別にみた場合のほぼ半数が「魅 力的な店舗が少ない」をあげている。一方で,商店 側でも,経営課題としては「消費者動向の未把握」 が高い回答比率を示している。これらのことから,. 商店側が十分な消費者対応をしていないことが改め て明らかである。 ・インターネットの利用については,その頻度も含め て,B 型の方が A 型よりも活発である。加えて,活 動特性からは特定型の方が広範型よりもつながりは 強い。 ・インターネットの活用によって,地元地域に目を向 けるようになったのは,B 型の方が A 型を上回って いる。 ・インターネットと地域活動の変化については,どの 地域でも,「これまでの地域における活動に変化は ない」があげられており,インターネットの活用が 具体的な地域活動の実践には直接結びついていない。 しかし一方で,インターネットの活用がその意識の 程度には差はあるものの,地元地域に目を向けさせ る契機となっている。表 3 に,本質問に関する各地 域における回答割合を示す。 ・ブログへの取り組みに関しては,いずれの地域も自 己表現等の自己充足を目的とするものが比較的多く, 「コミュニティづくりの手段」とは受け止めていな い。 ・地域 SNS については,回答者が一部の地域に限られ ているが,その認知度自体が低いことが明らかであ る。 以上のファクト・ファイディングズから,次のよう なインプリケーションが得られた。 ・文献サーベイによって得られた既往の調査結果と合 わせると,A 型は B 型よりも SC 指標が高い。 ・仮説 H1 については,サンプル数が限られたため, SC 指標が高いと商店街の社会的機能や経済的機能 が充実することは検証できていない。但し,社会的 機能についてはある程度の傾向は認められる。 ・仮説 H2 についても,調査結果からは十分な検証が 得られなかったが,全体的に ICT 化傾向は低いもの の,B 型は A 型よりも ICT 化性向が高いと認められ る。但し,商店街の中には ICT 化が「触媒」として 機能しているケースもあることが現地ヒアリングに よって確認されている。. 6.今後の展望 2 年度にわたる実証研究では,地域の活性化を商店 街,地域住民といったいわば草の根の組織に期待する といった枠組みを前提にした。しかし,近年の動向を 踏まえると,次のような課題に取り組む必要がある。 ①住民,個店といった緩い組織を対象にしたアンケー ト調査によって,一応の成果は得られた。しかし, 地域の企業のいわゆる社会貢献も地域活性化に関与 しており,今後分析対象にしたい。特に,各地域に あって業歴の長い企業ほど,社会貢献活動に積極的 である。 ②地域活性化の基本には経済の活性化があることは言 うまでもないが,新しい公共,国民の幸福度(例え ば,荒川区の GAA)といった新しい概念に基づく.

(5) 地域活性化の動き,さらには内発的な活性化への関 心が出てきた。社会福祉,環境保全といった直接的 な社会貢献ではなく,地域力(地域の底力)の強化 に結び付いた社会貢献活動という視点から検討を行 っていきたい。. nagement10-55.pdf(Jun 10,2011) 3) 石橋裕基・藤田昌弘(2010):地域活性を目的とした地方自 治体の構築する地域 SNS に関する評価,『地域活性研 究』No.1,pp.249- 256. 4) 神谷長明,小野瀬由一編著(1996):商店街再生のデザイン -変革迫る住民意識とマルチメディア,同友館.. 参考文献. 5) 新川達郎(2002):地域活性化政策に関する市町村計画行政. 1) Putnam, Robert D.(2000):Bowling Alone: The Collapse and. の課題と展望―東北地方の現状から―,同志社政策科学. Revival of American Community, New York: Simon and Schuster. [柴内康文訳(2006):『孤独なボウリング―米国. 6) 中根雅夫・杉野隆(2009):商店街活性化への新たな試み,. 研究,Vol.3,,No.1,pp.1-13. 『国士舘大学政経学会. コミュニティの崩壊と再生』,柏書房].. 政経論叢』No.148,pp.53-80.. 7) 中根雅夫・杉野隆(2010):商店街再生と「地域のつなが. 2) 大熊省三(2010):商業・まちづくり組織の役割に関する実 証研究-活性化事業の形成プロセスと「新しい組織」-,. り」に関する予備的研究,『国士舘大学政経学会. http://kamome.lib.ynu.ac.jp/dspace/bitstream/10131/7444/1/ma. 論叢』No.154,pp.1-31.. 地域. 商店街. 地域住民. SC 商店街個店. 政経. 経済的機能の充実. 地域活性化 社会的機能の充実. アンケート調 査. 地域住民. ICT の活用 図1. 本研究の枠組み. 表1 アンケート調査項目の分類 質問項目の 分類 対象 個店. 経営 状況. 対策・商店街 組合への期待. つきあ い・交流. ○. ○. ○1. ○. ○. ○. ○. ○. ○. ○. 地域住民(PTA). 信頼. 地域活動. 商店街 の利用. ICTの利用2. 回答者プロ フィール ○3. ○. ○3. 表中の数字は,21年度に比べて22年度のアンケート項目の増減を示す。1は個店への質問項目の追加,2は地域SNSに関す る質問項目の追加を,3は,個人情報に関する項目の一部削除示す。. SC値 3.50  3.00  2.50 . 3.13 3.20  2.82 . 2.79 . 2.91 . 2.71 . 2.58 . 2.30  2.37  2.27  2.32 . 2.29  2.23  2.15 . 足立 1.88 . 2.00 . 1.59  1.58  1.54  1.37 1.32 . 1.50 . 1.47 . 品川 世田谷 船橋烏山 函館市戸井. 1.00 . 鹿追町 0.50 . 中標津町. 0.00  SC_ネッ トワーク. 図2. SC_信頼. SC_社会的貢献. 4 商店街地域及び北海道の比較地域における SC の比較.

(6) 経済的機能. 百万円 160.00. 社会的機能. 回答平均 2.00. 中標津町. 140.00. 鹿追町. 足立. 船橋烏山. 1.50. 120.00 100.00 世田谷. 80.00 60.00. 品川. 40.00. 品川. y = 7.6604x + 32.389 R² = 0.021. 中標津町. 函館市戸井. 世田谷 y = 0.2144x + 0.4298 R² = 0.6128. 1.00. 鹿追町. 船橋烏山. 函館市戸井. 足立. 0.50. 20.00 0.00. 0.00 4.00. 4.50. 5.00. 5.50. 6.00. 4.00. 6.50. 4.50. 5.00. 図3. 5.50. 6.00. 6.50. SC値. SC値. 経済的機能と SC の関係. 図4. 社会的機能と SC の関係. 表2 分析対象データの概要 足立. 品川. 世田谷. 船橋烏山. 415. 504. 2,344. 200. 3,463. 住民・アンケート配布数. 合計. 住民・回答数(回収率). 84(20.2%). 97(19.2%). 582(24.8%). 63(31.5%). 826(23.9%). 個店・アンケート配布数. 38. 50. 180. 200. 468. 個店・回答数(回収率). 8(21.1%). 0(0.0%). 50(27.8%). 24(12.0%). 82(17.5%). 表3. インターネットと地域活動の変化 単位:%. 質問項目. 足立. 品川. 世田谷. 船橋烏山. 板橋区. 地域についての知見が増えた. 5.1. 11.0. 9.3. 5.7. 6.7. 地域への関心が増した. 6.1. 2.0. 7.7. 3.8. 13.3. 地域活動についての知見が増えた. 2.0. 0.0. 2.2. 7.0. 0.0. 地域活動への関心が増した. 3.1. 4.0. 3.3. 5.9. 26.7. 地域活動が積極的になった. 0.0. 0.0. 0.9. 1.3. 0.0. 地域の仲間が増えた. 1.0. 1.0. 2.2. 1.6. 0.0. 23.5. 38.0. 33.1. 64.4. 53.3. 8.2. 8.0. 7.2. 4.6. 0.0. これまでの地域における活動に変化はない 地域における活動に関心はない.

(7)

参照

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