93 自由論題
資源配分構想の起点と資源配分類型
The starting point of resource allocation concept and resource allocation types
有馬
賢治
立教大学 Kenji Arima Rikkyo University [email protected] 抄録:本報告は,企業が販売活動で使用する手段とその組合せに関する所謂「マーケティング・ミックス(marketing mix)」 研究の深耕を意図して進められる。分析を進めるにあたり,マーケティング・ミックスに関わる既存研究の成果,なかで もMcCarthy(1960)の“4Ps”を踏まえ,資源配分に関わる構想の起点に関する仮説を設定し分析する。さらに,資源配分に関 わる構想の起点と資源配分の関連性を分析し,資源配分パターンの類型化の可能性を検討する。そのうえで,4Ps の現代 的意義,発展的使用方法の可能性を分析し,経営診断における着眼点に対する若干の含意の提示を試みたい。 Key Words:マーケティング・ミックス,資源配分,製品ライフ・サイクル,4Ps 1.緒言 本報告は,所謂「マーケティング・ミックス」と称され て活用されている販売に関わる手段を組合せる行為とそ こで選定された手段に対する資源配分方法に着目して議 論を進める。ここではマーケティング・ミックスに関わる 既存研究の議論を参考に,基本的概念枠組みはMcCarthy[1] による“4Ps(Product, Price, Place, Promotion)”に準拠する。また,本報告では既存研究で明示的に指摘されなかった 資源配分実施時の起点や優先順位などを意識して論理を 展開する。なお,想定する主体はB to C 企業に限定する。 2.資源配分構想に関わる仮説の設定 2.1 資源配分構想における起点の必要性 マーケティング研究で一般的にマーケティング・ミック スが議論される場合に,資源配分の対象として採用された 手段は,並列的・空間的に整理された形で提示される。こ こで注意すべき点は、既存研究の資源配分に関する分析で は,構想の起点や採用した手段の利用順序といった実施手 順に関わる検討が充分に議論されていない部分である。 経営診断を必要とする企業のマーケティングが行われ る現場を想定した場合に,資源配分構想の起点となる理念 や方針は重要であると考えられる。これらの提示がなされ ない場合,担当者が具体的に手段を選出したり配分割合を 検討したりする作業は困難になる。また,担当者に複数の 手段のみが提示されても,作業手順が示されなければ職務 遂行の意思決定は極めて漠然としたものになるであろう。 したがって,資源配分構想の起点の明確化は,マーケティ ングに関わる経営診断においても重要な着眼点であると 考えられる。そこで本報告では,企業がマーケティングを 計画する場合には,資源配分の構想には起点となる理念や 方針が存在することを仮定して議論を進める。 2.2 仮説の設定 本報告では,資源配分構想の起点は,企業が顧客の問題 解決のために想起した企業経営の基本的理念や方針であ ると想定する。理由は,以下のものである。 企業から顧客に提供される現代の商品やサービスには 複合的な機能が備わる。しかしながら,提供される機能が 複合的であっても,顧客は自身の抱える問題の解決策とな る本質的な機能を期待して商品やサービスを選択する。つ まり,製品やサービスに備わる顧客が期待する本質的な機 能が顧客の選択に際しての必要条件なのである。これは企 業が提供可能な顧客に対する解決策であり,この解決策の 構想に影響する指針は,自社の基本的な考え方や理念・方 針などマーケティングに先立つ企業経営の基本的な姿勢 を示した指針であると考えられる。 したがって,当該企業のマーケティングは,企業理念や 事業領域に則して,自社で提供可能な方法により顧客への 解決策を総合的に提供する活動となる。これらはマーケテ ィングの上位に位置する経営理念や経営組織の要因との 関連性が深いと考えられる。この点は,Aaker[2], Achrol[3], Cespedes[4], Hise[5]などによるマーケティング組織に関わる研究で 指摘されている。こうした企業活動の方向を規定する理念 により,企業の資源配分に関わる活動は起点が定められて いると仮定し,本報告では仮説を設定する。 起点となる理念・方針は,企業の置かれた環境,業種や 規模により多岐に渡ることが想定されるが,ここまでの議 論をもとに基本仮説を表現すると次のようになる。 (仮説1)企業は資源配分のために起点となる理念を持つ。 また,提起される理念は業種や企業規模により異なる可 能性が想定できる。したがって,次のような作業仮説が設 定できる。 (仮説1.1)企業の資源配分構想のための起点となる理念
94 は,業種により異なる。 (仮説1.2)企業の資源配分構想のための起点となる理念 は,企業規模により異なる。 上記の仮説をインターネット調査により検証する。 3.仮説の検証 3.1 調査方法と回答企業の属性 仮説検証のための調査は,同内容の質問項目でインタ ーネットによるモニター調査で3回(①2008年6月18日~7 月2日,②2011年6月28日~7月25日,③2017年4月21日~5 月16日)実施した。サンプルは,調査会社(NTTコムオ ンライン・マーケティング・ソリューション株式会社) の登録モニターから抽出した。本調査のモニターは,同 社に自主的に登録した5万人超の「ビジネスモニター」と 称されるカテゴリーの登録者である。回答者は,国内で B to Cを主たる業務とする製造業・小売業・サービス業 に従事する人物で,当該企業のマーケティングに関わる 意思決定に関与する役職者を抽出した。 同一企業からの重複回答を極力回避するために,回答 者が登録した時点での情報に基づき,同一企業に回答者 が重ならない形で配信を選別した。モニター登録者の登 録時点と①~③の調査時点での業種,職位などの変更の 可能性を考慮し,アンケート回答画面でも本調査で必要 となる基本的属性の回答も求めた。結果として,モニタ ー登録時の属性と本調査での属性が異なり,条件に合致 しない回答者は有効回答から除外した。回収率は,2008 年26.0%,2011年21.0%,2017年25.5%であった。回答者 の所属企業の属性をまとめると表1.になる。 なお,企業規模は,中小企業法で定める従業員数による 区分に従い,製造業は300 人以上の企業を「大企業」,299 人以下の企業を「中小企業」,小売業は50 人以上を「大企 業」,49 人以下を「中小企業」サービス業は 100 人以上を 「大企業」,99 人以下を「中小企業」と設定した。 3.2 質問項目と業種・規模による差異の確認 質問項目は,前述の条件に沿う回答者に対して,「御社 が利用されているマーケティング手段についてご質問い たします。御社の製品・サービスのマーケティングを企画・ 立案するときに起点となるものは何ですか。次の項目の中 で比較的近いものを1つお選びください。」という設問に 対して,「経営方針・企業理念」「事業部の方針」「マーケ ティング予算」「製品・ブランドの基本コンセプト」「他社 製品の特徴」「発案者のアイデア」「その他」のなかから1 つを選択してもらう方式で回答を得た。 「その他」に関しては自由記述の欄を設定した。「その 他」で得られた内容は「顧客」,「消費者のニーズ」などの 市場に関わるものと,「特に起点を設定していない」とい うものが主であった。起点を設定しないという回答も見ら れたが,少数のため大きな影響はないと判断して分析を進 めた。年別,業種別の度数,調整済み残差,χ2検定の結 果は表2.にまとめられる。 業種別にみた最頻値上位 3 位は,製造業では各調査年 ともに「製品・ブランドの基本コンセプト」,「経営方針・ 企業理念」,「事業部の方針」(2011 年,2017 年は 2,3 位 が同数)の順であった。小売業では,各調査年ともに「経 営方針・企業理念」,「製品・ブランドの基本コンセプト」, 「事業部の方針」の順であった。サービス業では「経営方 針・企業理念」,「事業部の方針」,「製品・ブランドの基本 コンセプト」(2008 年のみ 2,3 位が逆転)の順であった。 各調査年での業種と起点となる項目のχ2検定の結果に は有意な差が認められた。 次に,上位3 項目の調整済み残差に着目すると,「経営 方針・企業理念」は,製造業では3 調査年とも有意に低く, 小売業では2017 年に,サービス業では 2011 年と 2017 年 に有意に高かった。「事業部の方針」は,製造業では2008 年と2011 年に有意に高く,小売業では 2008 年と 2017 年 に,サービス業では2008 年と 2011 年に有意に低かった。 「製品・ブランドの基本コンセプト」は,2011 年と 2017 年に有意に高く,サービス業では2011 年と 2017 年に有 意に低かった。小売業の項目からは有意な差は認められな かった。 次に,規模による差異を確認するためにまとめた調査年 別,業種別での規模別の度数,調整済み残差およびχ2検 定の結果は,表3.,表 4.,表 5.である。なお,本報告では 業種ごとに規模区分が異なるため,規模区分と業種区分を 同時に比較する分析は実施していない。 業種内での規模別にみた最頻値上位2 位は,製造業の 中小企業では各調査年ともに「経営方針・企業理念」,「製 品・ブランドの基本コンセプト」の順であり,大企業では 「製品・ブランドの基本コンセプト」「事業部の方針」(2008 年,2011 年),「事業部の方針」「製品・ブランドの基本コ ンセプト」(2017 年)の順であった。小売業では,各調査 年の中小企業,大企業ともに「経営方針・企業理念」が1 位であり,2 位は「製品・ブランドの基本コンセプト」(2008 中小 大 合計 中小 大 合計 中小 大 合計 製造業 158 243 401 181 234 415 195 334 529 小売業 110 50 160 141 99 240 136 47 183 サービス業 168 82 250 272 170 442 180 107 287 合計 436 375 811 594 503 1097 511 488 999 ※規模の区分は中小企業法に基づく各業種の区分に準拠 表1.回答者所属企業の属性 2008年 2011年 2017年 製造業 小売業 サービス業 製造業 小売業 サービス業 製造業 小売業 サービス業 経営方針・企業理念 度数 110 61 87 114 78 198 142 90 130 調整済み残差 -2.6 1.9 1.2 -4.4 -1.1 5.3 -6.6 4 3.8 事業部の方針 度数 106 19 37 114 47 84 142 32 71 調整済み残差 4.5 -2.9 -2.5 3.2 -1.2 -2.2 1.8 -2.4 0.1 マーケティング予算 度数 14 17 27 15 22 28 24 12 21 調整済み残差 -4 1.9 2.7 -2.5 2.4 0.5 -1.7 0.5 1.4 製品・ブランドの基本コンセプト 度数 134 47 68 131 63 69 146 32 33 調整済み残差 1.7 -0.4 -1.4 4.6 0.9 -5.3 5.3 -1.3 -4.7 他社製品の特徴 度数 18 4 4 12 6 16 33 7 8 調整済み残差 2.1 -0.6 -1.7 -0.3 -0.6 0.8 2.2 -0.7 -1.9 発案者のアイデア 度数 14 11 26 14 21 39 37 9 21 調整済み残差 -3.2 0.3 3.2 -3.5 1.4 2.3 0.4 -1.1 0.5 その他 度数 5 1 1 15 3 8 5 1 3 調整済み残差 1.2 -0.4 -1 2.1 -1.3 -1 0.2 -0.6 0.3 合計 度数 401 160 250 415 240 442 529 183 287 業種間比較 : 2008年χ2=56.55, df=12, p <.000, 2011年 χ2=74.84, df=12, p <.000, 2017年 χ2=66.24, df=12, p <.000, 表2.業種別資源配分構想の起点(度数、調整済み残差、χ2 検定結果) 2008年 2011年 2017年
95 年中小,大,2011 年中小,2017 年大),「事業部の方針」 (2011 年大,2017 年中小)という順であった。サービ ス業では2008 年の大企業以外は「経営方針・企業理念」 が1 位であり(2017 年大企業のみ「事業部の方針」が同 数1 位),2008 年の「製品・ブランドの基本コンセプト」 は度数の差は1 であることから,ほぼすべてが同じ傾向 であることが読み取れる。2 位は「事業部の方針」(2011 年中小,大,2017 年中小),「製品・ブランドの基本コンセ プト」(2008 年中小)であった。 各調査年,業種別での規模と起点となる項目のχ2検定 の結果は,製造業では全ての調査年で有意な差が認められ たが,小売業の2008 年と 2017 年,サービス業 2008 年で は有意な差は認められなかった。また,調整済み残差に着 目した場合も,製造業では 5 項目で有意差を認めること ができたが,小売業とサービス業では各々2 項目にとどま った。したがって,製造業では企業規模による資源配分構 想の起点に差異が発生しやすいが,小売業とサービス業で は必ずしも企業規模による影響は大きくないことを読み 取ることができた。統計的に比較可能な差異は,業種では 明確に認められるが企業規模ではすべての業種で明確な 差異は発生していないことが確認できた。 4.資源配分構想の起点と資源配分の関連性 資源配分構想の起点の項目には業種間に有意な差異が 存在することが確認できたので,これ以降は業種別区分の みに焦点を当てて資源配分の推移との関連性を分析する。 各業種の代表的な起点となる項目と資源配分の推移と の関係性を分析するために,各年の業種別に手段4 水準, 製品ライフ・サイクルの期間3 水準を独立変数,資源配分 構想の起点を被験者間因子,配分割合の回答を従属変数と する反復測定による2 要因分散分析を実施した。 結果は表6.のようにまとめられ,全ての年と業種で手 段の主効果の有意が認められた。期間の主効果は2011 年 のサービス業と2017 年製造業以外では有意な差は認めら れなかった。起点の要素による被験者間効果は,2008 年 の製造業,2011 年の 3 業種,2017 年のサービス業では有 意な差が認められた。 2 要因分散分析の結果と業種別の度数,調整済み残差, およびχ2検定結果を参考に,業種別の顕著な特徴のある 資源配分構想の起点となる項目と,製品ライフ・サイクル の推移に伴う資源配分割合の変化との関連性を分析した。 項目の選出は①2 要因分散分析で手段の被験者内効果 と資源配分構想の起点の被験者間効果がともに有意な差 中小 大 中小 大 中小 大 度数 56 54 56 58 67 75 調整済み残差 2.9 -2.9 1.4 -1.4 3 -3 度数 29 77 42 72 35 107 調整済み残差 -3 3 -1.7 1.7 -3.5 3.5 度数 9 5 11 4 10 14 調整済み残差 1.9 -1.9 2.4 -2.4 0.5 -0.5 度数 42 92 49 82 46 100 調整済み残差 -2.3 2.3 -1.7 1.7 -1.6 1.6 度数 11 7 5 7 19 14 調整済み残差 1.9 -1.9 -0.1 0.1 2.5 -2.5 度数 9 5 11 3 16 21 調整済み残差 1.9 -1.9 2.7 -2.7 0.8 -0.8 度数 2 3 7 8 2 3 調整済み残差 0 0 0.2 -0.2 0.1 -0.1 合計 度数 158 243 181 234 195 334 業種間比較 : 2008年χ2=27.00, df=6, p<.000, 2011年 χ2=18.01, df=6, p<.01, 2017年 χ2=24.39, df=6, p<.000 経営方針・企業理念 事業部の方針 マーケティング予算 製品・ブランドの基本コンセプト 他社製品の特徴 2017年 表3.製造業規模別資源配分構想の起点(度数、調整済み残差、χ2検定結果) 発案者のアイデア その他 2008年 2011年 中小 大 中小 大 中小 大 度数 63 24 123 75 92 38 調整済み残差 1.3 -1.3 0.2 -0.2 2.6 -2.6 度数 19 18 42 42 33 38 調整済み残差 -2.2 2.2 -2.4 2.4 -3.3 3.3 度数 20 7 17 11 12 9 調整済み残差 0.8 -0.8 -0.1 0.1 -0.5 0.5 度数 43 25 41 28 19 14 調整済み残差 -0.8 0.8 -0.4 0.4 -0.6 0.6 度数 2 2 12 4 4 4 調整済み残差 -0.7 0.7 1.1 -1.1 -0.8 0.8 度数 20 6 33 6 17 4 調整済み残差 1.1 -1.1 3.1 -3.1 1.8 -1.8 度数 1 0 4 4 3 0 調整済み残差 0.7 -0.7 -0.7 0.7 1.3 -1.3 合計 度数 168 82 272 170 180 107 業種間比較 : 2008年χ2=8.49, df=6, p< n.s., 2011年 χ2=15.34, df=6, p<.05, 2017年 χ2=17.86, df=6, p<.01 経営方針・企業理念 事業部の方針 マーケティング予算 製品・ブランドの基本コンセプト 他社製品の特徴 発案者のアイデア その他 2017年 2008年 2011年 表5.サービス業規模別資源配分構想の起点(度数、調整済み残差、χ2検定結果) 被験者内(間)効果 平方和 自由度 平均平方 F値 手段 93213.96 2.49 37392.90 42.42 *** 2008年 N =811 期間 5.01 1.25 4.00 0.45 製造業 手段 x 期間 12074.48 4.41 2738.77 13.44 *** n=401 手段 x 期間 x 起点 7672.09 26.45 290.03 1.42 被験者間効果(起点) 6389.22 6.00 1064.87 21.35 *** 手段 9790.97 2.80 3499.87 4.51 ** 期間 0.36 1.04 0.35 0.19 小売業 手段 x 期間 5397.59 4.42 1220.05 6.32 *** n=160 手段 x 期間 x 起点 4926.37 26.54 185.59 0.96 被験者間効果(起点) 9.66 6.00 1.61 0.57 手段 20474.96 2.82 7272.82 5.74 ** 期間 0.34 1.59 0.21 0.07 サービス業 手段 x 期間 3176.92 5.33 595.78 4.25 ** n=250 手段 x 期間 x 起点 5478.17 31.99 171.22 1.22 被験者間効果(起点) 10.13 6.00 1.69 0.17 手段 147697.77 2.54 58242.78 51.02 *** 2011年 N=1097 期間 7.73 1.62 4.78 2.98 製造業 手段 x 期間 7559.60 4.53 1670.56 8.25 *** n=415 手段 x 期間 x 起点 9645.97 27.15 355.27 1.76 * 被験者間効果(起点) 755.69 6.00 125.95 3.36 ** 手段 36940.26 2.54 14560.58 14.28 *** 期間 0.14 1.17 0.12 0.05 小売業 手段 x 期間 2347.23 4.91 478.54 2.77 * n=240 手段 x 期間 x 起点 4371.19 29.43 148.53 0.86 被験者間効果(起点) 9988.53 6.00 1664.76 14.10 *** 手段 60368.60 2.74 22075.83 15.39 *** 期間 79.20 1.49 53.34 12.85 *** サービス業 手段 x 期間 1062.97 4.97 213.77 1.45 n=442 手段 x 期間 x 起点 4644.76 29.84 155.68 1.06 被験者間効果(起点) 12155.84 6.00 2025.97 24.23 *** 手段 129174.03 2.09 61908.41 50.02 *** 2017年 N=999 期間 216.74 1.36 159.45 21.08 *** 製造業 手段 x 期間 2530.60 4.66 543.27 3.86 ** n=529 手段 x 期間 x 起点 3796.87 27.95 135.85 0.97 被験者間効果(起点) 572.51 6.00 95.42 1.74 手段 37295.62 2.79 13373.65 11.20 *** 期間 0.49 1.05 0.46 0.05 小売業 手段 x 期間 114.02 4.65 24.50 0.11 n=183 手段 x 期間 x 起点 5204.59 27.93 186.38 0.83 被験者間効果(起点) 160.50 6.00 26.75 0.58 手段 22384.94 2.67 8387.01 5.14 ** 期間 1.29 1.64 0.79 0.10 サービス業 手段 x 期間 1864.47 4.76 392.05 2.04 n=287 手段 x 期間 x 起点 7128.49 28.53 249.82 1.30 被験者間効果(起点) 21974.89 6.00 3662.48 86.73 *** * p<.05, **p<.01, ***p<.001 表6.各調査年の業種別反復測定2要因分散分析の結果 中小 大 中小 大 中小 大 度数 40 21 44 34 68 22 調整済み残差 -0.7 0.7 -0.5 0.5 0.4 -0.4 度数 11 8 18 29 24 8 調整済み残差 -1.1 1.1 -3.2 3.2 0.1 -0.1 度数 12 5 18 4 8 4 調整済み残差 0.2 -0.2 2.3 -2.3 -0.6 0.6 度数 33 14 39 24 21 11 調整済み残差 0.3 -0.3 0.6 -0.6 -1.2 1.2 度数 4 0 3 3 7 0 調整済み残差 1.4 -1.4 -0.4 0.4 1.6 -1.6 度数 9 4 16 5 8 1 調整済み残差 1.0 -1.0 1.7 -1.7 1.0 -1.0 度数 1 0 3 0 0 1 調整済み残差 0.7 -0.7 1.5 -1.5 -1.7 1.7 合計 度数 110 50 141 99 136 47 業種間比較 : 2008年χ2=4.55, df =6, p < n.s., 2011年 χ2=18.31, df =6, p <.01, 2017年 χ2=8.03, df =6, p < n.s. 他社製品の特徴 発案者のアイデア その他 経営方針・企業理念 事業部の方針 マーケティング予算 製品・ブランドの基本コンセプト 表4.小売業規模別資源配分構想の起点(度数、調整済み残差、χ2検定結果) 2008年 2011年 2017年
96 が認められているもの,②業種別のχ2検定結果に有意な 差が認められ且つ項目間の調整済み残差に正の有意な差 が認められるもの,から選出した。①②双方の条件を満た す項目は,製造業では2008 年 2 項目,2011 年 3 項目, 2017 年 2 項目,小売業では 2011 年 1 項目,2017 年 1 項 目,サービス業では2008 年 2 項目,2011 年 2 項目,2017 年1 項目であった。 更に選出された項目の中から業種間の調整済み残差に 他業種で負の有意な差が認められる点に着目し,業種別に 代表的な資源配分構想の起点項目を1 つ選出した。結果 として,製造業は2008 年の「事業部の方針」を,小売業 は2011 年の「マーケティング予算」を,サービス業は 2017 年の「経営方針・企業理念」を選出した。選出した項目を 資源配分構想の起点とした企業の製品ライフ・サイクル推 移に伴う資源配分割合をグラフで表示すると図1.になる。 グラフ内の数値は,配分割合の手段別%を表している。 なお,紙面の都合上省略するが,年別,業種別,起点項目 別にすべての項目のグラフを作成し比較,分析を実施した。 多様な資源配分割合の推移が確認できたが,業種別にみた 項目ごとの資源配分の推移には類似の傾向がどの調査年 の結果からも読みとれていたことを付記しておく。 選出した起点の項目にみられる資源配分割合の推移か ら読み取れる特徴は,「事業部の方針」を起点として捉え た製造業では,Product に対する配分割合を 40%以上から 開始され徐々に減少させている。一方で,Price の割合に は顕著な上昇傾向がある。Place と Promotion は,15%~ 20%前後で推移している。「マーケティング予算」を起点 とした小売業では,導入期から撤退期に至るまでPrice を 主要な手段として活用し,他の3 手段は 20%前後で推移 させている。「経営方針・企業理念」を起点として捉えて いるサービス業では,Product と Price に緩やかな上昇傾向 が見られ,Promotion には緩やかな下降傾向が見られる。 以上のように,資源配分構想の起点として考える理念・方 針の違いにより,資源配分割合の推移の傾向が異なること, またこうした差異は業種別に有意な差が認められることが確 認できた。 5.まとめ 本報告での調査・分析により,マーケティング管理 者には資源配分に際して起点となる理念や方針が想起さ れており,それによって資源配分の割合にも変化が表れ てくることが確認できた。多くの企業で採用されている 理念・方針は,「製品・ブランドの基本コンセプト」,「経 営方針・企業理念」,「事業部の方針」であり,主たる企 業活動を規定する理念から資源配分の方針が企画される 場合の多いことが理解できた。また,起点に関してみら れる差異は,業種では統計的に有意な差異が明確に認め られるが,企業規模による差異は製造業では明確に認め られるものの小売業とサービス業では明確には認められ なかった。 図1. 各年の業種別代表的資源配分平均値の推移 したがって,本報告で設定した仮説は,業種では支持 されるが企業規模では十分には支持できるものではない ことが確認された。 ここでの検証結果が参考になると仮定するのであれば, 企業の現場では資源配分の実施に際しては構想の起点と なる理念・方針が存在し,それに従って資源を配分する計 画が立案されている可能性が高いと考えることができる。 したがって,経営診断に際しては,企業がどのような経営 方針や企業理念に基づいてマーケティングを実施してい るのかを確認したうえで,実務的な資源配分のための助言 を行う必要があることが示唆できる。 分析結果に残された課題は,提示した資源配分類型以外 にも考えられる有意な類型の可能性の探索,調査方法の厳 密化などである。多面的な分析を更に追及してみたい。 6.参考文献
[1] McCarthy, E. J. (1960), Basic Marketing: A Managerial Approach, Richard D. Irwin.
[2] Aaker, David A. (2008), Spanning Silos, Harvard Business School Press.
[3) Achrol, Ravi S. (1991), “Evolution of the Marketing Organization: New Forms for Turbulent Environments,” Journal of Marketing, October, 55, 77-93.
[4] Cespedes, (1995), Concurrent Marketing, Harvard Business School Press.
[5] Hise, Richard T. (1965), “Have Manufacturing Firms Adopted the Marketing Concept?” Journal of Marketing, 29, 9-12.