コミュニケーションに与える孤独感の影響に関する研究
13
0
0
全文
(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第59巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.59,No.1. 平成20年8月 August,2008. コミュニケーションに与える孤独感の影響に関する研究. 林 美穂・戸田須恵子・奥山 例 北海道教育大学釧路枚教育心理学研究室. TheStudyoftheInfluenceofLonelinessontheStudents’Communications HAYASHIMiho,TODASuekoandOKUYAMAKiyoshi DepartmentofEducation,KushiroCampus,HokkaidoUniversityofEducation. 概 要 本研究は,友人及び家族のコミュニケーションに与える孤独感の影響について研究することを目的とした。. 対象者は,高校生226名(男子106名,女子120名,大学生191名(男子78名,女子113名))であった。コミュ ニケーションについては,友人と家族とのコミュニケーションに関する質問紙で,孤独感に関しては,孤独 感類型4タイプに分類できる質問紙であった。結果は,コミュニケーションについては,友人に関しては4 因子,家族については3因子が抽出され,分散分析の結果,有意な発達差が認められた。又,孤独感類型・ 友人に関しては,高校生ではA型,大学生ではD型が多く,孤独感類型・家族においては,高校生はB型+ C型,大学生はD型が多かった。又家族と友人との関わり合いについても発達差が認められ,心理的離乳の 観点から説明される結果となった。コミュニケーションに影響を与える孤独感については,2軸の理解・共 感と個別性が友人や家族のコミュニケーションに影響していることが明らかとなった∩. 人間関係の希薄化. 社会・経済・教育などあらゆる場面で,個性化. 社会的な個の尊重ムードと重なって,それぞれが 自分だけの世界を楽しむことの方に価値を見出す. が言匝われている中で,個々人がそれぞれの価値観. ようになった。それに伴って,当然個々人の生活. を持ち,それぞれの目標達成のために行動するこ. 範囲は広がり,所属する集団をいくつも持つよう. とが当然の世の中になった。そして,この個性尊. になった。行動が自由になった分,特定の集団に. 重の精神は,いつしか「自分は自分,人は人,だ. おけるコミュニケーションの密度も当然希薄化. からお互い干渉しない方が良い」というポリシー. し,お互いが何を考えているのかわからない状態. に形を変えて私たちの心の中に浸透してきたよう. になってしまう。「きっとあいつはこんなことを. に思う。. 考えているのだろう。いや,少しも考えていない. 人間関係の希薄化について,一体何が原因とし. に違いない。」などと,虚像を作って相手を見て. てあげられるのだろうか。これについて,山本. しまうことにもつながる。相手の実像を見ること. (1991)は,「私生活の優先意識」をあげている。. なく,虚像を通してでしか相手を見ることができ. 287.
(3) 林 美穂・戸田須恵子・奥山 酬. ないので,腹を割って問題を共有することが難し. 「気づかい」をすること,それがやさしい関係で. く,本音をぶつけ合うこともできなくなっている. あるという。これは現代の若者が傷つくことをお. のである。お互いが表面的に葛藤を回避しながら. それ,ぶつかり合うことをせず,互いに相手の気. 付き合う。そのような中からは,友情も粁も生ま. 持ちに立ち入らないということを表している。つ. れてくるはずもない。山本の研究は,今から15年. まり,自分が傷つかないこと・相手を傷つけない. 以上も前のものだが,この状況が現在の私たちに. ことを考え,本音を伝え合わない表面的な関係に. 色濃く反映されているのではないだろうか。それ. なっていることを示している。さらに,藤井(2001). ゆえに相手を理解した上での共感関係の成立が困. も,現代の青年においては,かつては関係の発展. 難になってきているのではなかろうか。このよう. のために生じる人格同士のぶつかり合いであった. な関係になった経過をM・ブーバーは「我と汝」. 葛藤が,互いにとって“快適な’’関係を構築(維. の中で次のように説明している。「現代人の獲得. 持)するための葛藤に移り変わってきているとし,. した合理性のため,人々は物のみならず,人間さ. 人間関係,特に二者関係における適度な距離のと. えも「客体」として経験し,それを利用する能力. り方を模索する“近づきたい一離れたい”. を高めた。その結果,人間の出会いの能力(「我一. 葛藤に閲し,「山アラシ・ジレンマ(porcupine. 汝」の関係を結ぶ力)を衰弱させることとなった。. dilemma)」というキーワードを用いて述べてい. そこからは,人格と人格の出会いが生まれず,相. る。これは,「近づきたいけれども近づきすぎた. 手は自己の欲求充足の「手段」とみなす形でしか. くない」「離れたいけれども離れすぎたくない」. 成立し得ないのである。いうなれば,ここで人間. といった,関係の適度さを示すものであり,相手. のモノ化が起きるのである。このような人間は,. と親密になるほど生じやすいとしている。. 人間や事物の前にたたずんでも,交互作用の中で. これらの研究から,本来,自己への気づきや成. それらと向かい合う(出会う)ことができなくなっ. 長に重要な役割をもたらすだろう関係において,. てきている。」のだという。つまり,コミュニケー. 現代ではその意味を大きく変えつつあることが示. ション能力が低下しているのである。これが,私. 唆され,またさらに「人間関係の希薄化」が深まっ. たちの友人関係ひいては人間関係と関連している. ていくと考えられる。希薄化とは,互いに傷つか. のではないだろうか。. ないよう深入りしないことを鉄則とし,相手に気 をつかったり表面的な同調を共有したり,あるい. コミュニケーションについて. は逆に親密な関係になることを回避しようとする. 友人関係は,生涯のどの時期においても重要な. という傾向である。量的にはかなりの数の友人を. 対人関係であるが,青年期において特にその重要. 持っていても,質的には浅く表面的なつながりに. 性が指摘され,友人関係についての研究が多くな. 終始していると言えるのではないだろうか。その. されている。かつて青年期の友人関係は,「親友. ような背景の中で,来島(2006)は,大学生にお. =心友」とされ,人格的な影響を及ぼしあうもの. ける友人関係の現状について,自己開示や関係性. であるとされてきた。親密な関係には,葛藤や対. に関して実態調査を行い,最も親しい友人との関. 立もつきまとう。しかし現代では,それらを回避. 係において,ある程度の関係が持てていることを. しようという「人間関係の希薄化」の指摘が多く. 報告している。しかし,今後,友人関係について. なされるようになってきている。. 調査する際には,関わりの「量」と「質」の実態. 大平(1995)は現代の若者について,「やさしさ」. についての視点を含める必要があることを示唆し. という言葉をキーワードに,若者の人間関係の持. ている。また,山田(2000)は,コミュニケーショ. ち方の変化を示している。現代の若者のやさしさ. ン,特に会話に着目し,学生生活での充実感との. の説明として,お互いに相手を傷つけないように. 関連性を研究している。その中で,「深いコミご. 288. という.
(4) コミュニケーションに与える孤独感の影響に関する研究. ニケーション」,「基本的コミュニケーション」,「自. しようとする状態で感じる自分はひとりだ. 己主張」の3因子を抽出し,コミュニケーション. という感じ。. の経験が多いほど充実感が持てているという関係. 落合(1989)は,この孤独感類型判別尺度(LSO). があることを報告している。これらの研究から,. を用いて,中学生から大学生までを対象にして孤. 友人や他者との関係性において,その「質」につ. 独感について研究し,孤独感の発達的変化を4つ. いてさらに検討する必要があると考える。. の類型にまとめている。その特徴は,A型が年齢 とともに減少する傾向があり,中学生(13歳)で. 青年期における孤独感. 落合(1982)は,孤独感を「自分はひとりであ. は50%を占めているが,年齢が上がるにつれて減 少し,大学4年生(22歳)では9.1%となっている。. ると感じること」と定義し,孤独感の規定因に関. B型の孤独感は,年齢による変化はあまり見られ. する研究を行っている。その結果,人生のいろい. ないが,大学4年生になると他の年齢よりも少な. ろな時期に感じられるすべての孤独感は,対他的. くなっている。人間不信を持つC型は他の年齢に. 次元,対自的次元,時間的展望の次元の3次元に. 比べると,高校生(19歳)に多く見られ,D型は. よって構成され,その構造内に位置づけられるこ. 年齢とともに増加している。又,林(2004)は大. とを述べている。なかでも青年期の孤独感は,対. 学生を対象としてLSOを用い,孤独感類型を見. 他的次元と対自的次元の2次元でほぼ解明できる. たところ,落合とは異なる結果が得られている。. ことを明らかにしている。さらに,落合は,この. 大学生を対象としたため,年齢間における比較は. 2次元を組み合わせ,孤独感を類型化するために,. できないが,特徴として,A型・D型,つまり,. 孤独感の類型判別尺度(LonelinessScaleby. 人間同士の理解・共感ができると考えている被験. Ochiai;以下LSOと略す)を作成し,4つに類. 者が90%と圧倒的に多く,B型・C型は少数と. 型化している。LSOはLSO−U,LSO−Eと名付. なった。この結果から,大学生ではD型と同様に. けられた2つの下位尺度から構成されており,. A型の孤独感をも感じる割合が多いことがわか. LSO−Uは,人間同士が理解・共感できると感じ. る。. ているかどうか,またLSO−Eは,自己(人間). 人間関係の希薄化が謳われる中,人は深いコ. の個別性に気づいているかどうかの2軸の組み合. ミュニケーションや,それに伴った深い孤独感を. わせで4類型(A型,B型,C型,D型)を測定. 味わう経験が減少していると予想される。しかし. している。4類型ぞれぞれの特徴をまとめると次. ながら,林(2004)の研究において,理解・共感. のようになる。. 得点が高いという結果があらわれた。本来ならば,. A型:情緒的融合状態での,漠然とした,自分は. さまざまな経験を踏んで得られるであろう理解・. ひとりだという感じ。. B型:理想的理解者の追求を特徴とし,その理解. 共感が,楽天的結果として出ているのである。落. 合の作成した尺度にはあてはまらない,なんらか. 者の欠如した状態での自分はひとりだとい. の変化が現れていると考えられる。社会のめまぐ. う感じ。. るしい変化に伴って青年の孤独感の質的変化が起. C型:人間不信と深くかかわり,物理的にも精神. こっている可能性があるだろう。もしそうである. 的にも孤立している状態で感じる自分はひ. ならば孤独感の類型判別尺度を再検討していく必. とりだという感じ。. 要がある。より質の高いコミュニケーションをた. D型:自分に代わってくれるものはいない。この. ずねる尺度を加えることにより,理解・共感に関. ことは,同時に誰にでもあてはまることで. するなんらかの結果が示唆されると考える。又,. あるということに気づきなおかつ自分が. 落合の孤独感類型判別尺度は,一般的な回答が得. 今,現実にかかわっている人と理解し共感. られるもので,対象の抽象度が高い。そのため,. 289.
(5) 林 美穂・戸田須恵子・奥山 酬. 具体的な人物を想定して回答するというよりは,. 間紙を配布し,留め置き法を用い,二週間後に回. 誰かがあてはまるだろうと対象を曖昧なまま回答. 収した。実施時期は11月上旬であった。. を進めてしまうと予想される。より具体的な人物. 質問紙:質問紙は2種類からなっている。一つは,. を当てはめることにより,回答に変化がみられる. コミュニケーションに関する質問紙である。23項. のではないだろうか。そのため,「家族」,「親し. 目から構成されており,親しい友人,家族それぞ. い友人」と断定した上で回答を求めることにより,. れに対して回答してもらった。回答方法は4件法. その差を検討したい。さらに,青年期においては,. で,4.よく経験している,3.少し経験してい. 心理的離乳の時期であり,家族とのコミュニケー. る,2.あまり経験していない,1.全く経験し. ションよりも,友人とのコミュニケーションをよ. ていないで評定を求めた。孤独感に関する質問紙. り多くとっていくといわれている。しかしながら,. は,落合(1985)が作成した孤独感の類型判別尺. 現代においては,その実態さえも変化してきてい. 度(LSO)16項目を参考に作成した。この尺度は. ることが考えられる。「家族」「友人」両方につい. 2つの下位尺度から構成されており,各尺度の内. て回答を求めることにより,その状況も明らかに. 容はLSO−U(人間同士の理解・共感の可能性に. なるのではないかと考える。. ついて)9項目とLSO−E(人間の個別性の自覚. そこで,本研究は,高校生と大学生を対象に以. について)7項目となっている。各項目で親しい. 下の3点について検討し,その発達的変化を見る. 友人・家族と対象を限定し,それに合わせ文脈を. ことを目的とする。. 変更し作成した。回答方法は,5.はい,4.ど. 1.コミュニケーション尺度を作成し,尺度に ついて検討する。 2.具体的場面として「親しい友人」「家族」. を設定し,孤独感類型判別尺度を改変し測定. ちらかというとはい,3.どちらともいえない,. 2.どちらかというといいえ,1.いいえの5件 法で評定を求めた。なお,項目1,7,10,12, 14に関しては逆転項目である。. し,その差を検討する。 3.孤独感とコミュニケーションに関して高校. 生と大学生による発達的変化を明らかにす る。. 結果と考察 コミュニケーションについて コミュニケーション尺度については,高校生,. 方 法. 大学生を合わせ,友人・家族それぞれについて因 子分析を行なった(主因子分析,バリマックス回. 対象者:0市内の高校へ本研究への参加協力を依. 転)。その結果,友人とのコミュニケーションに. 頼したところ,高校生321名の協力が得られた。. ついては4因子(表1),家族とのコミュニケー. 欠損値の多いものなど95名分を分析の対象から除. ションについては3因子が抽出された(表2)。. き,対象は226名となった(男子106名,女子120名)。. 友人とのコミュニケーションの経験において,第. さらにK市内の大学生から199名の協力が得られ. 1因子は16項目から構成され,「納得のいくまで. たが欠損値の多いものなど8名分を分析の対象か. 話し合い,物事を決める」や「お互いにとってつ. ら除いたため,対象は191名となった(男子78名,. らいような話であっても,本音で話し合う」など. 女子113名)。. 深いコミュニケーションを表す項目が含まれてい. 手続き:高校生への質問紙は,教師を通して配布. るため,『深い交流』(友人1)と命名した。第2. し,学級単位で担任の指示のもと調査が行なわれ. 因子は3項目から構成され,「相手が年上や目上. た。実施時期は8月中旬で,質問紙は二週間後に. の人であっても自己主張をする」や,「たとえ浮. 回収した。大学生には,学生を通じ各研究室に質. いてしまっても自分の視点を大切に意見を言う_・. 290.
(6) コミュニケーションに与える孤独感の影響に関する研究. という項目が含まれているため,『自己主張』(友. 分の良いところを照れずに話す」や,「自分の失. 人2)と命名した。第3因子は2項目から構成さ. 敗談を打ち明ける」など,自分をさらけ出す項目. れ,「相手がどうしてもこまっている時は,お金. が含まれているため,『自己開示』(家族2)と命. の相談にのる」や,自分が「どうしてもこまった. 名した。第3因子は3項目から構成され,「自分. 時は,お金の相談もする」という項目のため,『金. の予定を無理にさいても,相手の都合に合わせる」. 銭的関係』(友人3)と命名した。第4因子は2. や,自分が「どうしてもこまったときにはお金の. 項目から構成され,社会について話し合う項目が. 相談もする」など相互の支援がある項目が含まれ. 含まれていることから,「社会問題」(友人4)と. ていることから,『相互支援』(家族3)と命名し. 命名した。さらに,家族とのコミュニケーション. た。表3には各因子得点が示されている。全体的. の経験については,第1因子は15項目から構成さ. に中の上あたりである。最も高い因子は深い交流. れ,友人と同様に深いコミュニケーションを表す. 因子となっている。又,項目間の整合性について. 項目が含まれているため,『深い交流』(家族1). は,金銭関係因子と相互支援因子が低めだか,他. と命名した。第2因子は5項目から構成され,「自. の因子では整合性に問題はない∩. 表1 友人とのコミュニケーションの経験 因子//項目. 平均(標準偏差). 2.82(.936). 5. 19.お互いにとってつらいような話であっても,本音で話し合う. 1 仁U 仁U. 3.36(.899). 7. 14.共に心の底から笑い合うことができる. 8 8 6 仁じ 仁U. 3.06(.930). 0. 20.相手の良いところをためらわずに言う. 7. 3.08(.929). 3. 13.励ましあいながら,一緒に何かをやり遂げる. 9 7. 1 深い交流. 負荷量. 3 5. 6 9. 2.71(.954). 4.たとえ自分と合わない意見でも,避けずに聞こうとする. 3.04(.817). 6.わからないことを恥ずかしがらずにわからないと言える. 3.03(.906). 22.将来の生き方を飾らずに話す. 2.71(.932). 2.思わず涙がでてしまったような感動体験を話す. 2.54(1.072). 11.顔が赤くなるほど恥ずかしい自分の失敗談を打ち明ける. 2.62(1.049). 21.自分の予定を無理にさいても,相手の都合に合わせる. 2.44(.932). 4 7 5. 9.考え方の違いでケンカになっても,それを乗り越えて物事を決める. 仁U 8 4. 2.73(.988). 5. 17.自分の進路について,迷っている時に相談する. 5. 2.78(.891). 6 6. 1.納得のいくまで話し合い,物事を決める. 3. 3.11(.945). 2. 8.いま自分が興味を持って取り組んでいることを話す. 2. 2.88(1.004). 8. 2.79(.895). 5.つらいことや不安なこと,話しにくい悩み事を話す. 1. 15.相手が因っている時には,どんなに忙しくてもかけつける. 5. 3. 7. 5. 7. 1. 3. 4. 0. 2. 5. 8. 0. 3. 6. 2. 仁じ 仁U 4 4 3. 2 3 3 0 4 4 8 2 4 2 3 4 3 3 2. 6. .398. 5. 1. 0. 9 5. 2.56(1.010). 4. l. 2. ︵XU. 7.世の中の不条理なこと,納得のいかないことについて話し合う. 仁U 仁U 3. 40 5. .680. 7. 3. 2.12(.970). 7. 5. 3.日本や世界の政治,社会問題などについて話し合う. 3. 4. 4 社会問題. 5 4 4. 5. 2.00(1.005). 1 7 4. 7. 23.どうしてもこまった時は,お金の相談もする. 5 5 4. 5. 5U 0 仁 4 5 5. 2.15(.986). 3 4 4. 7 5. 18.相手がこまっている時は,お金の相談にものる. 6 5 4. 8 5. 3 金銭的関係. 0 0 5. 8 5. 2.03(.949). 9 6. 10.自分の良いところを照れずに話す. 2. 2.53(.961). 5. 16.たとえ浮いてしまっても,自分の視点を大切にして意見を言う. 3 6. 2.39(.991). 7. 2 自己主張 12.相手が年上や目上の人であっても自己主張をする. 291.
(7) 林 美穂・戸田須恵子・奥山 別 表2 家族とのコミュニケーションの経験 負荷量. 平均(標準偏差). 因子//項目. 2.63(.986). 14.共に心の底から笑い合うことができる. 3.07(.997). 13.励ましあいながら,一緒に何かをやり遂げる. 2.46(.989). 8.いま自分が興味を持って取り組んでいることを話す. 2.83(1.004). 17.自分の進路について,迷っている時に相談する. 2.90(1.006). 4.たとえ自分と合わない意見でも,避けずに聞こうとする. 2.77(.957). 19.お互いにとってつらいような話であっても,本音で話し合う. 2.60(.997). 15.相手が因っている時には,どんなに忙しくてもかけつける. 2.61(.960). 22.将来の生き方を飾らずに話す. 2.64(.985). 2.思わず涙がでてしまったような感動体験を話す. 2.15(1.054). 7.世の中の不条理なこと,納得のいかないことについて話し合う. 2.49(1.036). 5 仁U 5. 20.相手の良いところをためらわずに言う. 2.52(1.009). 1. 6.わからないことを恥ずかしがらずにわからないと言える. 3.15(.919). 5. 6 6. 9.考え方の違いでケンカになっても,それを乗り越えて物事を決める. 5. 2.72(.973). 5. 1.納得のいくまで話し合い,物事を決める. 4 仁U. 2.44(1.039). 9 8 仁U. 1 深い交流 5.つらいことや不安なこと,話しにくい悩み事を話す. 5. 0. 6. 4. 6. 5 5 3 4 5 3. 8 3 7 9 9 2 9. 5. 4 5 3. ︵XU. 3. 7 5. 9仁U 97 8 3 5. 2. 3. 2. 1. 2. 3. 3. 1. 1. 5. 3. 5. 33 2. 3 4. 9. 92 仁U仁U. 7. 表4 コミュニケーションの因子間相関 友人. 平均(標準偏差)アルファ係数寄与率. 深い交流(友人1) 2.86(0.623) .906 26.1. 因子. 自己主張(友人2) 2.32(0.741) .697. 8.2. 深い交流(友人1). 金銭的関係(友人3)2.08(0.872) .533. 6.0. 自己主張(友人2). 社会問題(友人4) 2.34(0.832) .727. 4.8. 金銭的関係(友人3). 深い交流(家族1) 2.67(0.714) .933 23.9. 社会問題(友人4). 自己開示(家族2) 2.40(0.745) .767 12.9. 深い交流(家族1). 相互支援(家族3) 2.38(0.744) .549. 8. 因子. 0. 表3 コミュニケーションの因子得点. 3. 2. 2.22(.911). 4. 5. 21.自分の予定を無理にさいても,相手の都合に合わせる. 4. 11. 2.69(1.089). 0. 2. 23.どうしてもこまった時は,お金の相談もする. 5. 3. 2.22(1.075). 0 仁U 2 3 1 1. 07 仁0 U O 3U O 2 4 仁 3 9 9 8 8 仁 5U 45 4 5 4 4 44. 3 相互支援 18.相手がこまっている時は,お金の相談にものる. 1. 5. 2.34(1.040). 7. 7 9. 3.日本や世界の政治,社会問題などについて話し合う. 5. 6. 2.30(1.069). 5. 5 1. 2.12(1.014). 11.顔が赤くなるほど恥ずかしい自分の失敗談を打ち明ける. 5. 6. 10.自分の良いところを照れずに話す. 0. 7 1. 2.63(.979). 4. 6. 16.たとえ浮いてしまっても,自分の視点を大切にして意見を言う. 3. 8 1. 2.64(1.085). 4. 6. 12.相手が年上や目上の人であっても自己主張をする. 6. 5 2. 2 自己開示. 9.5. 家族. 2 3 4 1 2 3 .527**.292*.512**.582**.491**.441** .281*.427**.364**.554**.280** .242**.068+.124**.456** .406**.462**.300** .754**.557** .485**. 自己開示(家族2). 相互支援(家族3). +p<.10,*p<.05 **p<.01***p<.001. コミュニケーションの因子間相関. これらの因子間の相関を見たところ,有意な関 係が認められ,全ての項目において正の相関が見. 292. られた(表4)。表を見ると,友人,家族すべて の因子間でコミュニケーションは相互に関係して いることが明らかとなった。.
(8) コミュニケーションに与える孤独感の影響に関する研究. コミュニケーションの因子について一高校生・大 学生間,男女間の比較一. 友人に関するコミュニケーション因子につい て,高校生・大学生間,ならびに男女間の差を見. るために2(年齢)×2(性別)の2要因分散分 析を行った。さらに,「深い交流」因子については,. 交互作用に有意差が認められた(F(1,409)= 8.44,p<.01)。又,単純主効果を見たところ, 男子では高校生・大学生間の差が有意だったが (F(1,409)=33.19,p<.01),女子では有意ではな. 図1 深い交流(友人1). かった。また高校生では性に有意差が認められたが. (F(1.409)=27.61,p<.01),大学生では有意差 は認められなかった。すなわち男子では高校生より 大学生の平均得点は高かったが,女子では有意差は. 認められなかった。さらに,高校生では男子より女 子の平均得点は高かったが,大学生では有意差は認 められなかった(図1)。また,得点を見ると,女子 では平均3点前後(わりとよく経験している)になっ. ており,経験が持てていることが示された。「自己 主張」因子については,年齢で主効果が認められた. 図2 日已主張(友人2). (F(1,408)=8.62,p<.01)。又,性別では有意 傾向が認められた(F(1,408)=3.02,p<.10)。 すなわち高校生より大学生の方が平均得点は高く, 女子より男子の方が得点は高かった(図2)。交互. 作用は認められなかった。これにより,高校生より 大学生,また,女子より男子の方が自己主張をして いるようであるが,得点を見ると,「わりと経験し ている」と「あまり経験していない」の中間である ことから,経験としてはあまり持てていないことが 明らかとなった。「金銭的関係」因子については,. 図3 金銭的関係(友人3). 性別において主効果が認められた(F(1,410)= 5.02,p<.05)。男子の得点の方が女子の得点より 高かった。年齢による有意差は認められなかった(図 3)。得点を見ると,男女差はあるものの,2.1点前 後と「あまり経験していない」という結果が得られ. た。「社会問題」因子を従属変数として2要因分散 分析を行った結果,年齢の主効果が認められた (F(1,410)=79.64,p<.01)。しかし,性別では 有意差は認められなかった。すなわち高校生より大 学生の方が得点は高かった(図4)。これらの結果. 高校生. 大学生. 図4 社会問題(友人4). 293.
(9) 林 美穂・戸田須恵子・奥山 酬. から,社会に対しての意識が発達差としてあらわれ. 差が見られたことを示している。「相互支援」因. たと言える。得点も,「あまり経験していない」から,. 子を従属変数として2要因分散分析を行った結. 「わりと経験している」へと高くなっている。 薫別こ関するコミュニケーション因子についても. 果,年齢において主効果が認められ(F(1,410). =15.08,p<.01),高校生より大学生の方が得. 2(年齢)×2(性別)の2要因分散分析を行っ. 点が高かった。又,性別では有意差は認められな. た。「深い交流」因子については,年齢において. かった(図7)。. 主効果が認められた(F(1,408)=45.83,p< .01)。又,性別においても有意差が認められた. (F(1,408)=10.95,p<.01)。すなわち高校生. 孤独感について. 孤独感類型に関して,高校生一友人,大学生一. より大学生の方が得点が高かった。また男子より. 友人,高校生一家族,大学生一家族,男一友人,. 女子の方が得点は高かった(図5)。これにより,. 女一友人,男一家族,女一家族別に孤独感の類型. 心理的離乳の観点(西平:1999)から発達差が見. を検討するためにカイニ乗検定を行なった。分類. られた。また,得点も「あまり経験していない」. 方法として,LSO−Uの合計点が27点(3点×9. から「わりと経験している」へ高くなっている。「自. 項目),LSO−Eの合計点が21点(3点×7項目). 己開示」因子については,年齢による主効果が認. を基準にしてどの類型に属するかを決定した。さ. められた(F(1,406)=54.74,p<.01)。高校生. らに,LSO−Uについては27点以上の得点を持っ. より大学生の方が得点が高かった。又,性別でも. ている者を高群,未満の得点者を低群とし,. 主効果が認められた(F(1,406)=6.63,p<.05)。. LSO−Eについては,21点以上の得点を持ってい. 男子より女子の方が得点は高かった(図6)。高. る者を高群,未満の得点者を低群として孤独感に. 校生・大学生間に有意差が認められたことは発達. つい検討した。合計得点の結果が「どちらともい えない」となっている場合は,(U>27),(E>21) とし分類に加えることとした。 カイニ乗検定の結果,高校生一友人において,. 有意な関係が見られた(ズ2(1)=11.1,p<.01)。 又,大学生一友人(ズ2(1)=4.18,p<.05),高 校生一家族(ズ2(1)=19.6,p<.01),大学生一 家族(ズ2(1)=5.43,p<.05),男子一友人(ズ2(1) =3.53,p<.10),女子一友人(ズ2(1)=11.1, 高校生. 大学生. 図5 深い交流(家族1). 高校生. 図6 自己開示(家族2). 294. p<.01),男子一家族(ズ2(1)=9.26,p<.01), 女子一家族(ズ2(1)=15.3,p<.01)において. 大学生. 高校生. 図7 相互支援(家族3). 大学生.
(10) コミュニケーションに与える孤独感の影響に関する研究. も有意な関係が見られた。残差分析によれば,全. おいては,A型の孤独感を感じている人は高校生. ての項目において,Aが有意に大,Dが有意に小,. に多く,大学生になるにつれて減少している。反. Bが有意に大,Cが有意に小であった。. 対に,D型の孤独感を感じている人は大学生に多 く,高校生には少ないという結果が得られた。一方, 孤独感類型一家族においては,D型の孤独感を感じ. 孤独感類型一高校生・大学生間比較一. 孤独感類型の友人・家族それぞれについて,高. ている人は,孤独感類型一友人と同様に大学生に多. 校生と大学生間で比較するために,カイニ乗検定. く,高校生に少なかった。また,B+C型の孤独. を行なった。その結果,孤独感類型一友人(表5−. 感を感じている人は,高校生に多く,大学生にな. 1)において,B,Cの度数が小さいため合併し. るにつれて減少するという結果が得られた。これ. て検定したところ有意であった(ズ2(2)=16.9,p. らは,高校生においてD型よりもA型の孤独感を. <.01)。そこで残差分析を行ったところ,高校生. 感じ,大学生においてはA型よりもD型の孤独感. のAが有意に大,大学生のAが有意に小,高校生. を感じるという結果,また,C型の孤独感を高校. のDが有意に小,大学生のDが有意に大であった(p. 生が感じやすいという落合(1989)の研究と一敦. <.01)。孤独感類型一家族(表5−2)においては,. する結果となった。しかし,孤独感類型一家族に. B,Cの度数が小さいので合併してカイニ乗検定. ついてのA型の孤独感に関しては有意差は認めら. を行ったところ有意であった(ズ2(2)=10.1,p<. れなかった。孤独感類型の友人・家族それぞれに. .01)。残差分析を行った結果,高校生のB+Cが. ついて,男女間でカイニ乗検定を行った。その結. 有意に大,大学生のB+Cが有意に小(p<.01),. 果,孤独感類型一友人(表5−3),家族(表5−. 高校生のDが小,大学生のDが大であった(p<. 4)において,B,Cの度数が小さいので合併し. .10)。これにより,高校生・大学生間において,. て検定したが,有意な関係は認められなかった。. 発達差があることが示された。孤独感類型一友人に. よって,孤独感類型において男女の差はなかった. 表5−1 孤独感類型(友人)の高校生・大学生間 比較. 表5−3 孤独感類型(友人)の男女間比較. 類型\高・大 高校生 大学生. 人数(%). 計. 人数(%) 類型\男・女. 男. 女. 計. A(27≦U,E<21)104(46.0)53(27.7)157(37.6). A(27≦U,E<21)65(35.3)92(39.5)157(37.6). B(U<27,E<21) 3(1.3)1(0.5) 4(1.0). B(U<27,E<21) 3(1.6)1(0.4) 4(1.0). C(U<27,21≦E)19(8.4)15(7.9)34(8.2). C(U<27,21≦E)15(8.2)19(8.2)34(8.2). D(27≦U,21≦E)100(44.2)122(63.9)222(53.2). D(27≦U,21≦E)101(54.9)121(51.9)222(53.2). 言1. 226(100.0)191(100.0)417(100.0). 言1. 184(100.0)233(100.0)417(100.0) 検定結果:ns。. 表5−2 孤独感類型(家族)の高校生・大学生間 比較 類型\高・大 高校生 大学生. 人数(%). 人数(%). 計. A(27≦U,E<21)84(37.2)74(38.7)158(37.9) B(U<27,E<21) 4(1.8) 2(1.0) 6(1.4) C(U<27,21≦E)39(17.3)14(7.3)53(12.7) D(27≦U,21≦E)99(43.8)101(52.9)200(48.0) 計. 表5−4 孤独感類型(家族)の男女間比較. 226(100.0)191(100.0)417(100.0). 類型\\男・女. 男. 女. 計. A(27≦U,E<21)70(38.0)88(37.8)158(37.9) B(U<27,E<21) 3(1.6) 3(1.3) 6(1.4) C(U<27,21≦E)22(12.0)31(13.3)53(12.7) D(27≦U,21≦E)89(48.4)111(47.6)200(48.0) 計. 184(100.0)233(100.0)417(100.0) 検定結果:ns。. 295.
(11) 林 美穂・戸田須恵子・奥山 酬. といえる。. た。また,深い交流においては,A型の人の方が より経験しているという結果が明らかとなった。. コミュニケーション因子と友人の孤独感類型との. それ以外の項目において,A型・D型の差は見ら. 関係について. れなかった。. 7個のコミュニケーション因子について友人場 面での孤独感類型の比較をした。その際B類型と. コミュニケーション因子と家族の孤独感類型との. C類型の人数がいちじるしく少ないので,これら. 関係について. をあわせてB+C類型とした。これらについて3. 同様の手続きで7個のコミュニケーション因子. 水準の1元配置分散分析を行った。有意差が認め. について家族場面での孤独感類型の比較をし,有. られた場合には多重比較を行った(LSD法)。ま. 意差が認められた因子についてはLSD法による. ず,友人について見ると,深い交流(友人1)分. 多重比較を行った。深い交流(友人1)における. 散分析の結果は有意であった(F(2,410)=40.59,. 分散分析の結果は有意であり(F(2,410)=11.00,. p<.001)。多重比較の結果はA>B+C,A>D,. p<.001),多重比較の結果はA>B+C,A>D,. D>B+Cであった(MSe=0.330,p<.05)。. D>B+Cであった(MSe=0.375,p<.05)。. 自己主張(友人2)については分散分析の結果,. 自己主張(友人2)においては有意差は認められ. 有意差が認められた(F(2,409)=5.82,p<.01)。. なかった。金銭的関係(友人3)においても分散. 多重比較の結果,A>B+C,D>B+Cであっ. 分析の結果は有意ではなかった。社会問題(友人. た(MSe=0.539,p<.05)。金銭的関係(友人. 4)については分散分析の結果,有意差が認めら. 3)についても分散分析を行い有意差が認められ. れ(F(2,411)=3.32,p<.05),多重比較の結. た(F(2,411)=5.20,p<.01)。多重比較の結果,. 果はA>B+C,D>B+Cであった(MSe=. A>B+C,D>B+Cであった(MSe=0.743,. 0.696,p<.05)。深い交流(家族1)について. p<.05)。社会問題(友人4)についても有意差. も分散分析の結果は有意であり(F(2,409)=. が認められた(F(2,411)=4.48,p<.05)。多. 76.飢,p<.001),多重比較の結果はA>B+C,. 重比較の結果,A>B+C,D>B+Cであった. A>D,D>B+Cであった(MSe=0.373,p. (MSe=0.692,p<.05)。家族についても同様. <.05)。自己開示(家族2)についても有意差が. に分散分析を行ったところ,深い交流(家族1). 認められ(F(2,407)=27.79,p<.001),多重. で有意差が認められた(F(2,409)=9.03,p<. 比較の結果はA>B+C,D>B+Cであった. .001)。多重比較の結果,A>B+C,D>B+ Cであった(MSe=0.491,p<.05)。自己開示 (家族2)についても有意差が認められ(F(2,407). (MSe=0.493,p<.05)。相互支援(家族3) についても分散分析の結果は有意であり (F(2,411)=16.10,p<.001),多重比較の結. =5.32,p<.01),多重比較の結果,A>B+C,. 果はA>B+C,D>B+Cであった(MSe=. D>B+Cであった(MSe=0.546,p<.05)。. 0.519,p<.05)。以上の結果をまとめると2個. 相互支援(家族3)についても有意差が認められ. の因子が有意ではなかったが,これらはいずれも. (F(2,411)=3.20,p<.05),多重比較の結果,. 友人場面で抽出した因子である。有意差が認めら. A>B+C,D>B+Cであった(MSe=O.551,. れた因子はいずれもB+Cで極小となった。これ. p<.05)。以上の結果をまとめると,7個の因子. らのうち深い交流(友人1)および深い交流(家. はすべてB+Cで極小となった。これらのうち深. 族1)はB+Cで極小となり,かつA>Dであっ. い交流(友人1)はB+Cで極小となり,かつA. た。このことから,孤独感類型(友人)と同様に. >Dだった。このことから,A・D型とB+C型. A・D型とB+C型においてコミュニケーション. においてコミュニケーションの経験の差が示され. の経験の差が示された。また,深い交流において. 296.
(12) コミュニケーションに与える孤独感の影響に関する研究. は,A型の人の方がより経験しているという結果. いて見ると,深い交流(家族1)に影響を与えて. が明らかとなった。それ以外の項目において,こ. いる孤独感は,理解・共感(家族)と理解・共感. ちらもA型・D型の差は見られなかった。. (友人),個別性(友人)で,どれもプラスの影. 響が見られた。自己開示(家族2)に影響を与え コミュニケーション7因子に影響を与える孤独感. ている孤独感は,理解・共感(家族)と理解・共. について. 感(友人),個別性(友人)で,どれもプラスの. 孤独感とコミュニケーションの関係性につい. 影響が見られた。相互支援(家族3)に影響を与. て,コミュニケーションの7因子を従属変数とし,. えている孤独感は,理解・共感(家族)で,プラ. 理解・共感(友人・家族),個別性(友人・家族). スの影響が見られた。. を予測変数として重回帰分析を行ったところ有意 な関係が認められた(表6)。表を見ると,深い 交流(友人1)に影響を与えている孤独感は,理 解・共感(友人)と個別性(友人)で,共にプラ. 全体的考察 今回,高校生・大学生を対象に,人間関係の現. スの影響が見られた。又,自己主張(友人2)に. 状について,コミュニケーションと孤独感をキー. 影響を与えている孤独感は,理解・共感(友人). ワードに調査した。その結果,コミュニケーショ. と個別性(家族),理解・共感(家族)で,どれ. ン因子と孤独感ともに,高校生・大学生間におい. もプラスの影響が見られた。金銭的関係(友人3). て発達差が見られた。高校生よりも大学生におい. に影響を与えている孤独感は,理解・共感(友人). て,関係性,経験が増え,より充実した人間関係. と理解・共感(家族)で,理解・共感(友人)は. を築いているといえる。しかしながら,コミュニ. プラスの影響,理解・共感(家族)はマイナスの. ケーション因子において,「深い交流」に関しては,. 影響が見られ,社会問題(友人4)に影響を与え. 「わりとよく経験している」得点が高いものの,. ている孤独感は,理解・共感(友人)と個別性(友. 全体的に得点が低いことが示された。これにより,. 人)で,共にプラスの影響が見られた。家族につ. 高校生よりは大学生の方が発達的観点から経験の 頻度は増加しているが,得点は低く,深いコミュ. 表6 コミュニケーション因子に与える孤独感の影響 変. 数. R RZ β F p. 従属変数 深い交流(友人1) 予測変数理解共感(友人) .649.421.649299.15.000 個別性(友人) .655.430.101154.43.000 従属変数 自己主張(友人2) 予測変数理解共感(友人) 個別性(家族) 理解共感(家族) 従属変数 金銭的関係(友人3) 予測変数理解共感(友人) 理解共感(家族). 305 .093 .305 41.94.000 332 .110 .140 25.40.000 363 .132 .172 20.62.000. ニケーションをあまり取っていない可能性が示唆 された。. 孤独感類型においては,具体的な人物をあては めることによって,林(2004)の結果とは異なり,. 落合(1989)と同様の結果が得られ,高校生・大 学生間に発達差が見られた。これにより,対象を. 具体化することで現代の青年の孤独感が描ける可 .223 .050 .223 21.59.000 .245 .060 −.109 13.13.000. 能性が示唆された。また,孤独感類型を見る限り,. 従属変数 社会問題(友人4) 予測変数理解共感(友人) .288.083.288 37.21.000. ある程度の人間関係が築けていることが示され. 個別性(友人) .330.109.177 25.03.000 従属変数 深い交流(家族1). た。. 予測変数理解共感(家族). 702 .492 .702 397.28.000. 理解共感(友人). 712 .507 .130 210.08.000. 個別件(友人). 718 .516 .104144.71.000. 従属変数 自己開示(家族2) 予測変数理解共感(家族). コミュニケーションと孤独感の関連性について は,人間関係において,親しい友人・家族のどち らかに重点を置いて接しているであろう結果が得. 523 .274 .523153.75.000. 理解共感(友人). 562 .315 .146 62.34.000. 個別性(友人) 従属変数 相互支援(家族3). 569 .324 .221 64.90.000. 予測変数 理解共感(家族) .369.136.369 65.05.000. られた。家族との関係で,自立していく反面,家 族とのつながりが多くなり,さらに,家族を安全 基地として行動する可能性が示された。また,孤. 297.
(13) 林 美穂・戸田須恵子・奥山 酬. 独感類型におけるD型の人は,相手と別個の人間 であると理解しながらも,充実した人間関係を持 つとされているが,そうとはいえない可能性が示. 育心理学分野修士論文(未公開). 松尾和美 2000 青年期における「ひとりでいられる能 力」について一俵存性との比較から一 筑波大学心理 学研究,22,207−214. された。A型とD型において,深いコミュニケー. マルティン・ブーバー著 植田重雄訳1979 我と汝・. ションがA型の方が得点が高く,その他の項目に. 対話 岩波文庫 西平直喜1990 成人になること一生青史心理学から一. おいて,有意な関連性が見られなかった。このこ. とから,A型・D型双方の人間関係において,そ れほどの差が見られず,D型に属している人にお いても,いわゆる“思い込み’’の充実した人間関. 係を築いている可能性が示唆されたといえるので はないか。これにより,孤独感類型判別尺度では,. 現代の人間関係を鋭い視点で見ることが難しく なっていると考えられる。青年は,自分の中では. 充実した関係を築けていると認識していること が,実際の経験をあまり伴っていない,空虚な関. 係であることに気づいていない可能性が示された といえる。即ち,友人とのシビアな関係を持って. 束京大学出版会 落合良行1978 青年期における孤独感の4類型の特徴 静岡大学教育学部研究報告(人文・社会科学篇),28, 141−156. 落合良行1980 大学生における孤独感の構造 静岡大 学教育学部研究報告(人文・社会科学篇),30,143−155. 落合良行1982 孤独感の内包的構造に関する仮説 教 育心理学研究,30,3,69−74 落合良行1983 孤独感の類型判別尺度(LSO)の作成 教育心理学研究,31,4,60−64 落合良行1989 青年期における孤独感の構造 風間書 房 落合良行1993 大学生における生活感情の分析 筑波 大学心理学研究,151,77−183. 落合良行・伊藤裕子・斎藤誠一1997 ベーシック現代. いないのである。. 今後の研究としては,本来LSOで言われてい たD型の人間関係を築いている人はどのような人 でどのような経験をしているのか,またそこに所 属する人は,現代の青年においてどのくらいいる のかを調査する必要が示された。コミュニケー. 心理学第4巻 青年の心理学 有斐閣 落合良行1994 青年期における生活感情リストの作成 筑波大学心理学研究,16,119−127. 落合良行・佐藤有耕1996 青年期における友達とのつ きあい方の発達的変化 教育心理学研究,44,55−65. 大平 健1995 やさしさの精神病理 岩波新書 山田健太郎 2000 大学生括の充実感に関する一考察一. ション尺度を改変し,更なるシビアな関係を見る. 充実感・コミュニケーション・生活実態の相互関係一. 尺度の作成が必要となってくるだろう。その際に,. 北海道教育大学釧路校教育心理学研究室学士論文(未. 今回の尺度には用いられなかった人間関係の「回. 公開). 避」というキーワードも取り入れることで,より 具体的な人物像が描けると考える。それも含め,. 山本秀人1991青年の精神的孤立化についての一考察 一学生寮における実践的アプローチー 北海道教育人 学釧路校教育心理学研究室学士論文(未公開). 更なる検討が必要となってくるだろう。 (林 美穂 釧路校大学院生) 引用・参考文献. (戸田須恵子 釧路校教授) (奥山 例 釧路校教授). 榎本淳子1999 青年期における友人との活動と友人に 対する感情の発達的変化 教育心理学研究,47,180−190. 藤井恭子 2001青年期の友人関係における山アラシ・ ジレンマの分析 教育心理学研究 49,146−155. 林 美穂 2004 青年期における相互理解の意識につい て 北海道教育大学釧路校教育心理学研究室学士論文 (未公開). 来島章悟 2006 大学生における友人関係の現状と志向 性についての一考察 北海道教育大学大学院釧路校数. 298.
(14)
関連したドキュメント
検索対象は、 「論文名」 「著者名」 「著者所属」 「刊行物名」 「ISSN」 「巻」 「号」 「ページ」
[r]
1 単元について 【単元観】 本単元では,積極的に「好きなもの」につ
在籍者 101 名の内 89 名が回答し、回収 率は 88%となりました。各事業所の内訳 は、生駒事業所では在籍者 24 名の内 18 名 が回答し、高の原事業所では在籍者
物質工学課程 ⚕名 電気電子応用工学課程 ⚓名 情報工学課程 ⚕名 知能・機械工学課程
目名 科名 種名 学名.. 目名 科名
② 入力にあたっては、氏名カナ(半角、姓と名の間も半角で1マス空け) 、氏名漢 字(全角、姓と名の間も全角で1マス空け)、生年月日(大正は
−参加者51名(NPO法人 32名、税理士 16名、その他 3名).