ピアノ教材論(V) : アルノルト・シェーンベルク「ピアノのための6つの断章」Op.19(1911)
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(2) . 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第45巻 第2号. 平成7年3月. Se i I i fEduca i i i t t lo f Hokka do Un )VO t on( c onIC 1ourna ve r s yo .45 .2 ,No. March , 1995. ピ アノ 教材 論V ) ア ルノ ル ト・ シ ェ ー ン ベ ル ク 「ピ ア ノ の た め の 6 つ の 断 章」 op.19 (1911 大. 塚. 夏. 生. ien Uber di e K1avierunterdchtsmatehal ”S h ine K1a前i ec s K1 erstack e. V. 1911)Arno l d Sch6nbergs 〇p.19(. Natsuo OTSUKA. はじめに A‐ シ ェ ー ン ベ ル ク の 「ピ アノ の た め の 6 つ の 断 章一 op‐ 19 “Sechs K1eine K1avierstackご op‐ 19の よ. . ピアノ 教育の概念を大学・大学院のレヴ うな無調作品を教材として用いることには多くの異論もあろうが, ェルにまで拡大してゆくとき, このような歴史的にみて完く新しい境位にたつ作品の分析と演奏によって精 神史としての文化史的現実に直接ふれることの意義の深さには真に測りしれないものがあると確信せざるを えないのである. 我々にとって音楽の専門的理解は作品構造史とその精神的背景の把握によってのみ可能な の であ り, 暗好 ・感 情 ・感 覚 な ど による エ ン ジ ョ イメ ン トのよう な通 有 の体 験 か らは 決 して生 ずる もの でな い‐ この意 味 にお い て ピ アノ 教材 を 論ずる にあ たり, 今 回は シ ェ ー ン ベ ルク の起用 に敢て踏 み き っ たの であ る.. 1911年 にかか れた この 作 品 は6 曲か らな っ ている が, 各 曲共 に極め て 短 か. 俳句的に凝縮されたもので. あるため, 内容は偉大であるが規模において大曲とはいえないばかりか, むしろ小品という印象がつよい‐ 第1曲は僅か17小節, 第2曲以降をみると各々 9小 節, 9小 節, 13小 節, 15小 節, 9小 節 か らなり, 全て が 奇数という ぐあいである‐ 無調書法をとっ ているためト音記号, ヘ音記号, の右横に#またはbによる調子 記 号 はみあ たら ない‐ 拍 子 を みる と第 1 曲6/8 , 3/8 , 2/4 , 6/8 , 第2 曲4/4 , 第3 曲4/4 , 第4 曲2/4 , 第5 曲3/8 i t第 2 曲 Lang cht sam 第3曲 sehr langsan 第 , 第6 曲4/4の指 示 がある‐ テ ム ポ は 第1 曲 Le ,zar 4 曲 Rasch i e cht 第 5 曲 Etwas rasch 第 6 曲 Sehrl angsam であ り, 使用 さ れて いる 音の 数 が極度 に少 , aber l. 「 い た め 書 法 の 希 薄 さ が目 立 っ て いる‐ こ の よう な 傾 向 は 既 に彼 自信 のop . 16 5 つ の 管 弦 楽 曲」 に みう け ら れる もの でも ある‐ 1874~1951 ) は 5 曲 の ピ アノ 作 品 を の こ して お り, op ) にお い て 既 に調 性 1908 ソ エ ー ンベ ル ク ( ‐ 11 (. 回避の試みをおこなっ ているが, 書法全体をみると猶もロマン派的 ビアニズムが顕著であり, 無調作品に特 有 の 素 材 音 の 厳 格 な 選 択 か ら は遠 い の で ある‐ しか し, そ の 3 年 後 に発 表 した op . 19にお い て は無 調 的イ. ディオムをかなり前進させ, 音の選択を厳正にし, フレーズの組成と楽段の構造を厳密化して余剰音を排し, 時間的構成においても伝統的様相を一新してあらたなる音楽時間の概念を確立し, 更に音量とテムポの微細 な変化, 音形の多様化, 音構成によるひびきの個性化, 動機反復の排止などによって作品形成の姿勢を一変 した の であ る‐ こ れ ら は Fr ‐ リ ス トの無 調 書 法 と は 異 っ た も の であ っ て, そ の 歴 史 的 意 義 はす こぶる 大 き. いものといえる. 全6曲のあいだには顕著な有機的関連はみられないが若干の類似がみられる‐ 曲頭がロ音 199.
(3) . 大 塚 夏 生. で 始ま っ て いる の は第1, u, W 曲, へ音 で始ま っ ている の は第 W, V曲 である. 第1 曲 と第 V曲の 結尾 は. 拍節が単純化されており, かつ短2度による反進行を各々の和絃的終結においておこなっている‐ 第ロ曲と W 曲 に共通 する の はオス ティ ナー ト書法 であ り, 両 曲の そ れは 形態 こそ 異 っ ているも のの ひとつ の骨 髄の如 き 役割 をは た している の である‐ しか し, こ れら は循 環性 を示 す ほ どのも の では な い‐. ともあれ全体に流れている特質といえば何よりも静謹, 内向, 深遠, 神秘, 繊細, 無調の6点であり, 第 2義的には小規模, 級密, 非展開などである‐. 1. 第. Le i cht. 曲. 、. ●. ー. l i nch t tの指示が将にこの曲の楽想をよくあらわしており, またf r a g (標 織 と して) の 指示 がT.. 3, 8, 10と3回も用いられることにより, 作曲者の意図が更にはっきりとしてくるのである‐ 全体は大き ) 2/4~6 ) 3/8~2/4 13~17 く 4 部 分 に わか れA (1 ~ 3) 6/8 , B (4 ~ 6) 6/8 , D ( , C (7 ~12 /8の フ レー ズ 組織 がみ ら れる. A フ レー ズ 1 1 1 冒頭 の ppp , h の右 手 針「 に対 して, 左 手 の a-c 一g一際s 区営 は, 静謹 に して 微妙 な が らも衝 撃 的であ lは そ れ に対 して 3 度 関係 と いう 柔 か い ひ びき を な lに対 して a と ご は 不協 音程 で ある が 続く g と g り, h i s 2は前 の g して いる‐ T‐ 1の d i iぎ と完 全5 度, 更 に左 手 Di s の重 複 によ っ て ひ びき が鮮明さ と 重さ をもつ. s. ここでは和絃として同時的にDi sとeが打たれ, その直後にrが現れることによって不協矛廿性は増すが, 続 1と動くことにより増4度と長7度の合成がおこなわ 1との間に4度堆積が生じ 次に右手がr~f くgとC i s , 1と いう ロ調 的 性 格を も っ て はいる が 他 の声 部 と の 関り か ら み l-d 2-f 1-f れて いる. ソ プ ラノ 旋律 は h i i s s ,. て無調性が明らかである‐ 和絃的にみれば冒頭は第5音省署のa:19 , そして次に 函ぎが現れることによっ lの 4 分音 符ま でを 考慮 に入 れる と a:1・ て 第5 音省 署 の a:1, 3となる‐ ,の和 絃, 更 に右 手f 2-f 2の 1-d 1の 減 5 度 第 3 の場 合 は h i 冒頭 旋 律 の 開始音 と 終 止 音 との 関係 は完 全4 度, 第 2 の そ れは a s , 2の 減 5 度 (T 4 ~ 5) で あ る 第 2 の 旋 律 に は ぎ-f態 - 増 4 度 (T, 3 ~ 4), 第 4 の 場 合 は geゞーc . - , 1 1は T 1 の 第5 iという 減3和 音 の 関係 が潜 伏 している が無調 的 配慮 は周到 であり 第4拍 の g C f d i s s ‐ 、 , , i ,. ~6拍と同じという特徴をもつ. この小節においては左右の関係が微視的にみれば協音程をなしている箇処 1とd もあるが, 流れにおいて無調性は明瞭である‐ 垂直的関係をみると先ず ぴ と fの完全4度, a eゞの増 1と b の長 9度 1と e lの 減 5度 a 1と d の増 9度 があ り 斜 関係 にお い て は b 5 度, f i ig と ご の増 4 度, d s , , ,. i g とc i f ig と 鴎 の増3和音, d sの長9度が不協和関係 をなしている. 右手の旋律は変ロ調和声的短音階の なかの4音をた どっ た場合と同じであるが上述の如き理由から無調 といえる‐ この小節には etwas zogemd (poco rallentand. の指示があり, 音量がp となり, 中位部にはくく >>もあっ て前小節よりはゆっ たり. と した ふく ら み のある 表情 を もつ が 次の T‐ 3 に上 っ てす ぐに pp > と な っ て 締 めく く ら れる‐ 第1 フ レ rと な てい l~f ー ズ の 開始 と締 めく く り の 関係 が h ig と いう 1 - V であ り, 第2 フ レー ズ は 窪んぜ の1 ~W っ. る. しかしこれは上述のようにあくまでも旋律音だけの範囲の関係である. ここまでをA部分とみることが できる. 1と タイ で結 ばれ左 手 の和 音 素 材 とな る こ 続くB部分はT‐ 3 の a ig か ら で あ り, こ れ は異名 同 音 の b ‐ l-eg 及 び ピー餐一ご の凹 型の 半音 的反進 行 形であ り 第6 曲 にお いても の素 材 は げーげーけ の 凸型 と eg-d , ig >> の指示 があり 更にT‐ 4 の lucht 重 要 素 材 と な る 型 で あ る. 右 手 の ppp に よ る フ レ ー ズ に は f ,. i t c spr e s vo e s ‐ の 記 号 も頻 繁 に用 い ら れ, 独 特 の 繊細 さ をう み だ してい る‐ T‐ 3 ~ ,p , < >, くく>>e l~a 1 l~b 2で 締 め ら れ ア ル ト が 直 ち に h 2よ り の 下 降・ 上 昇 ・ 下 降 と な り T 5 の c 5 の右手の流 れはh , ‐ , 200.
(4) . ピアノ教材論V. 、 を も つ. そ れ に対 しT‐ 4 乍5の左手が反進行をた とう けつ ぐ‐ 即 ち T‐ ‐ 3 ~ 5 は 正 か ら ざ へ の 下 降傾 向 どり, T‐ 4の第5拍からT‐ 6の第6拍までは左右共に上昇性をもち, B部分を了える‐ T‐ 5左手の第 2が伸 びて いる 1 (右) の4和 音 とな る が 上 声 の a 5拍 c s i s-f-h の 4 度 堆 積 はす ぐにく ず れて d-f-h-a , 1-e 2は 短9 度 下 降・ 長 7度 上 昇 と い 2-f 2の 関係 と 重 合 して いる T 4 の ソ プラノ g た め に d一f-h-a e s s . ‐. う鋭い刺戟性をもち, また巨視的に把えれ ばこ‐れはT‐ 4 ~ 5 の ges2 か ら T‐ 5のぼに到る半音々階的脈 ‐ ‐ ● ・′ rr ‐; ・二 ご 、 」・ ‐. 、W - : 紘 E rw をき きと るこ とも でき る が, からは 磯 : Tご . る二 7 c s 絡の始ま り な の であ‐ ‐3 の第4拍 下 声 、 7 ‐ 、 , , -, ‐ ハ J r 士 {”1 ・- - 爪 日8 ば - も. . . ー ・ ロロ隙・帽‐十 サ ザ・射‐細 論-. m. ′ I 謡 -) し-J ー 、爪 チ÷工 L . 」‐2 = プド← ≠ 爪. ) 2/4拍子は書体が一変して音形の様相も伝統的といえるが, 組成は無調である‐ C部分 (T. 7~12 前楽節最後の左手eゞ と右手fの間の ・音位にあるのがT. 7最初の けであり, これら 3 つ を 合 わ せ る と 3の 5 度 堆 積 と な る/ T 8 の 後 半 か ら T 12ま で は ト レモノ の伴 奏 形 が 珍 しく現 れる‐ 右 手 は l-f eぎ-b . . 2-g i iゞ- 静まT‐ 11のf i f i s-e s-d sLc挫 き-bLdもぎと いう 4 度 下 降, 3 度 上 昇, 5 度 上昇, そ して 最 後 の a. に) rとc[濃ぎの連続的合音は減5度 と共にT‐ 6の上述の素材音型と同じ関係にある. T‐ 8の後半右手のh 1以 外 2一手 という 音列 は b と増 4 度 であ っ て, こ の小 節 の右 手 を 全 体 的 にみ れ ば上 記 のf iざーcぎーぎー ⑰-d. をみてたどれば4度下降・5度上昇の連携なのであり, それが上記の2つの合音によってひきつがれている まと h lの 合成 即 ち es-g-h-d と い う 4和音の転回形であり T 9 に の であ る‐ 左 手 ト レモロ は ぜと g, e s , ‐ お い て は a が加 え ら れる た め, 11の和 音 ( a s ,e ,g ,h , d の 第3 音省 署 形) に変 化す る. 右 手 T‐ 10に ,c 2 は desLザーfigeゞ- c i s sもf の如 く に5 度, 4度 関係 が含ま れ, 更 に2 回 現 れるf音 が注 ェ手 と の 合成に より, e 一g-h-d↓f と い う 9 の和 音 の ひ びき をう む‐ T‐ 11の右 手も ま たg i i s-f s の堆 積性 の分 散 形であ り, T‐. l i i i lの 旋律 的 短音 階 の 一 部 と 符 合 す 12の e 音 に救 徹 す る 線 はT‐ 11の gーf s-d s-e の 2つ 即 ち mo s-e と c. る‐ しかしこの場合も左手との総合において無調的である‐ C部分のおどろくべき変幻 に続いてD部分もまた全く予期せぬ書体を現す. これらは伝統的コントラスト の概念とは全く姿を異にするものであり, 他の5曲からみても突出した存在といえるのである. 外見上はま i及 び上拍 の l-き さ に伝 統 的 容 姿 をそ な え て いる が組 織 はや はり 無調 である‐ T‐ 13の 第1拍 の 内声 ge s-d s. zは5度堆積和絃であり その外側にAとfの枠を付けたかの如き配置である‐ 第2拍は左手にBとfと e s , l-des 1と い う 4度堆積であり 横のう ごきをみればソプラノが全音程 それ以外 」 手 は いう 5 度, 右 に es a , , l-eゞ は で は ag-ざ, d i s-h-d-f , ges-f , 凡-Bと い う 半 音 程 が 4 箇 重 な っ て い る‐ T. 14の 前 半 c-e-g. 即 ち11の和 音, 後半 は H-deざ-f-a s-ceぎ と いう 9の和音であり, 前小節と同じく ソ プラノと和音伴奏と いう 書 体を と っ て いる‐ T. 15~17に は ぎ-giゞ-bl-dぜ と い う 7の和音が長く伸延しており, 最後の小節 3-e 3-di 3一 3ー i 3 2 2 テノ ー ル が に お い て ソ プ ラ ノ が di i s s s3 g gs, ア ル ト が e -di -e , メ ツォ・ ソ プラノ がg ,. 1-h 1-b 1と いう 半音 変 化 形 が重 宣 してお り こ れ はT 3 の 第4~ 6拍 の 左 手 と類 似 し 第 6 曲 の T 3 b ‐ ‐ , ,. にみられる特徴的素材とも近似している‐ 以上のようにこの曲は短い中に多種多様な書法が詰め込まれてお り, 無調的な不協和性の音配置がよく計 算され, 更に表情記号による曲想の繊細化が徹底的になされている. また想念の深さを充分におもわせる点 においても音楽史上注目に価するものといえる‐. 201.
(5) . 大. i慨 鮒 Q ト 譜綴り, 4 k L. P i ano. 1 .. 辱. . 塚. 夏. 卿d紬o 9 n‐ぬ1. 生. 篇」山陵で … … ‐ 曜 』 ・. F. γ. 脚′ i 卿 . . 功夢. 》. . 後略. ロ. 第. 曲. iの合音) がT この曲は使用音の数が極端に少なく, また形態がモノトナスである. 左手は保続音 ( g とh . 1~5 は 右 手 T 7 ~ 9, 即 ち全9小節のうちの大半をオス ティ ナー トが占め, しかも そ の molto . , ) 及 び他の声部の淡泊な色彩感と動きによって何かしら寂真感をつよく印象付けるところに特 t t s a c c a o( pp 徴がある‐ Lang sam 4/4拍 子. 休符 がき わめ て多 いため, 一 般 的な拍 節 構造 をもつ こ と がなく, 音 と無音 がか ら み 合う ユ ニー ク な音 楽 時 間 をつ く り だ して いる‐ 上 述 の如 き 保 続 音 の 故 にT‐1 ~ 2 は ト長調 内 の音 の み であ 1と a 1は e 1と 同 じであ り 次 り, T‐3 に は d i i s s がある も の の前 小 節 と の 素 性 上 の 類 似 性 がある. 即 ち d s s ,. 4~5にも現れる. これらはト長調第6音の半音変化 (下降) したものであって調性外のものとはい えな い. 更 にT. 7~ 9 にもこの調性が連続している‐ それにもかかわらず一般的意味における調性とはや ま” - E n 小 魂 ” や異なる点については後述したい‐ 上述の保続音は次の如くである‐ ギデ打 か ゆ1 ▲ G 小“擬 声 ” 鵜 飼t打± ’” 中 小± ” 街 娼1に こには伝統的形態をこえた時 間の刻みがあり, 独特 の T‐. な時空的存在感が極めて新鮮に映るのである. --d 1 1 -c は 右 手 の 馨 -f篤-は G : m, f i i s s. :w,であり, 共に左手の[昌とは調的に密接であるが,. i f 1 a c を た どる と将 に e: V9である 然 し つ づ く フ レ ー ズ 開 始 音 中 声 の 伴, di s s s は 調 性 外の 音 で a , i , , ‐ ,. あり, これは開始音上声の ずとは増4度関係にあるため, 旋律自体は調性があいまいである‐ このよう にg -h-d を軸音としつつも常に調的暖昧さを含み 細部の彫琢において調的固執と調性回避が共存 している . , 更 に T. 2 ~ 3 の 音 素 材 に は g-h-di i s-f s-a-c s , 即 ち e: 皿】と いう 関 係 が成 立 し, T. 3 ~ 4 に は a -c-es一g-h と い う 9 の和 音 関係 がみ ら れ T‐ 5 に は 冒頭和 絃 c-e s-g es-b-( )-f es と いう des: ,. 孤, i i ,か ら直 ち に g-hー( )-f s-a s と いう h: W に移り, 一見して突発的ではあるが, 左手の素材音がT‐ 2-b 2 f 4 と 同 じで あ る ため に 一 貫 性 がある. ま たこ の小 節 には g i i e s s-a s と いう 異名 同音 があ り, 後 者 f s , i -ai i s に 始ま り g-h s s と いう 並 行 3 度 による 順 次的 上行 が続く が, こ れら に , T. 6 の as-c , a-c , c-e. は調 性 的 関係 がみ ら れな い. こ の 3 度並 行 上 昇 に対 時す る の がT. 7 ~ 9 の並 行 3 度 下 降線 即 ち gーh f , , -a s一g s-f ,e , de , c-e の 断続 的流 れである‐ こ の 2つ の 対比 的流 れの 中位 に現 れる の がT. 6 の 後 半 の 和 絃 であ る‐ こ れを異名 同音 的 によ み かえる と h i i i s はc s はe s s とな り, 構成 は h-d-fー( ) sはg e ,d ,f ーc-es-ges 詰 ま り c: 皿3と な る.. 上述のよう にこの曲には一貫して3度音程が同時的および継時的に用いられて調性と非調性とのいずれと も つ か な い 関係 をつ く っ て お り, そ れ は さ ら にT. 9 の 最 後 の和 絃 ( )-( )-( ) にお い て i b-d e s-f s g-h 最 終的 に用 い られている. こ れもま た3 度音 程 の 合成 であり, T. 5 の 第1拍, T. 6 の 第3 ~4拍 と共通 202.
(6) . ピアノ教材論V. する堆積であり, これを異名同音的にみれば g-h-[品善三総]\b-dとなる‐ 即ちe: m とe s:. の合成な. の であ り, しかも こ の小 節 の 第1拍 c-e をも加 え て考 える と3 度 堆 積関係 は更 に拡大さ れ, c-eーg-h (G : W7) と 上 記 の e s: 17の 合成 と な る. T. 7 の 終拍 か ら T‐ 8 を 経 て T‐ 9 に到る過程は明らかにG-. r-1というカデンツ が成立した直後に調性を打ちけす役目をもつ和絃 durの性格をもち, 最後にG:エーW が上声部に用いられてこの曲が締めくくられる. 斯様にこの曲には構造において終始アイ ロ ニイ が充満して お り, 表 情 にお い ても 保 続 的 素材 の mo l i t t t os a c ca vo と が同 時 に要 求さ れる T. 2 o と旋 律 的 素材 の espr e s s. ~3, 突発的右手和絃のT‐ 5, 前 楽節 と は対 照 的 なス ラー と e tそ してゆ っ たり と して豊潤 あ twa s gedehn る い は多 元 性 をも っ た長 い和 絃 e t c ‐ の 意 外 性 が独特 の ポエ ジー をう みだ している.. この曲は全体として音の数が少なく, 単純なオスティ ナート素材を一貫して用いており, 小節数が極端に すくないため, 俳句的な短かさをおもわせると同時に独特なリズムと数多い休符が無限感をよびおこす理由 ともなっ ている. 単純と複綜, 静議, 深化, 内観, 濃密などの特質が譜面全体にみなぎっ た傑作といえよう‐. 譜例虹. . ,碑. 第. m. 曲. Sehrl ang sam‐ わ ず か9小 節 か らなり, 4つ の フ レー ズ をも つ. 全6 曲の な かで最 も ポリ フォ ニイ 的 充 実. 度がたかく, 特に前半の緊張感が極めてユニークである. 第 1, 第2 フ レーズはp ・ pによる左手のオクターヴ進行の旋律が重要な役割を果たしており , それ自体が デュナーミクにおいてゆたかな変化をもちつつ右手との充実した対位法的緊張関係を成立させている. 第3 フ レーズにも幾分ポリフォニィ的配慮はみうけられるが, ここでは概ね無調的な和声書法がとられてる‐ 左 手 の 旋 律 は B-Es-F- As-B-c-des-es-f-( )-es-B- As-(B)-cーB (こ れ ら 全 て が 1 オ ク タ ー ヴ e. 下 の音 を伴 っ ている) という 教 会旋 法 に 立脚 し, B 音 を フィ ナーリス, f 音 をコ ン・ フィ ナーリ ス とする 正 格 第1 旋 法 に近 似 している の である‐ T. 1 右 手前 半 の 組成 音 はf i i i s s s ,g ,h ,c ,d ,f , 後 半 の そ れは c ,e ,g ,b と いう F: の V,, T‐ 2 の第 1 拍 は C: の V9, 第2 ~ 3拍 はf i s: の12, 第4拍 は g es-c-fの 4度 堆 積 に a s を付加 したも の であり, 直前. 瓦瓦7 の和絃を全て半音変化させてつくっ た和絃でもある・ T‐ 3の右手第3拍もa瓦三】 gとa gという 4度 堆積, T. 4 の 第 1拍 は de s ,f ,a の増 3和 音, T‐ 5 の 第2拍 と T‐ 6の第1拍も4度堆積和絃といえる‐ 上述 の F: V7-C: V9は左 手 の e s-f-a s と重 合する ため に調 性 を感 じさせ ず, その他 の全 て と同 じく 周 到. な無調的計算がなされているのである. この前半のデュナーミクについていえば右手がフォルテに終始し, そのなかで くく, > , ≧等が多いの に反して左手はppのなかで上記の記号が頻繁であり, 両手共にスラーが多い. そのため極めてユニークな ポリ フォニィ 的対比が生れかつ右の >> と左の > と の 位 置 も 巧 み に ず れ て い て, デ ュ ナ ー ミ ク に お い て 203.
(7) . 大 塚 夏 生. も対位法がいかされている‐ 書法においては右手が和絃を多用 し, 左手はオクターヴ単旋律という対比を主 とするが, 右手にも線的な流れが存在するため, 曲想は独特のファンタジアにみちている‐ 音符のきざみを ^ みる と前 半・ 後 半 をとお してメ ロ ディ ー に Ur (T. 2, 3, 6) 及 びそ の 変 形 と しての U r(T. 4),. g‐「(T. 7) が目につく. 旋律形態は極めてなめらかであり, 跳躍進行が少ない‐ 左手のう ごきをみる と 第1動機の開始音がB, 第2動機と第3動機のそれもB, 第3動機の終止音もB, そして曲の最後のバスも またB音という統一的構造をもっている‐ また右手の各動機の開始音と終止音をみると第1動機はc i s→f , 第 2動 機 は a→f , 第3動 機 は h→d , 第4 動 機 は c→a と いう よう にこ れらの 全 て が3度 関係 にあ っ て, こ の 曲の 柔 軟さ の 理 由をな している のである‐ 第 3 フ レー ズ (T‐ 5~6) は幾分対位法的であると同時に近代和声法的コンテクストをも持ち合わせて. いる‐ 組成においては不協音程の多様な重宣と進行が圧倒的ではあるが, レガート奏法, 弱奏, リ ズムの通 常性のゆえにきわめて柔和な楽想を表している. T‐ 5は4分休符ひとつをおいて始まり, 右手の長3度(第 1とh l 2拍のg ) の協矛止性を即座にうち消すかのように左手が半拍おくれてf態 とg i sの7度音程を用いる‐ 1. ここには右手のgとの2つの短2度関係が生まれ, 左手の動きは更にbc と進 むこ と によ っ て 短7度 の平 行 1≧diゞという 4度堆積和絃があり これに左手のb が重なっ ているために 進行が現れる. 第3拍右手にはe , 増4度を同時に2箇含む堆積のひびきをもつ. 4度堆積は既にT‐ 2とT‐ 3にも見られ, また次の小節(T‐ 、. .・ 、. .. く. .. ′. ‐・. ・′. . 、 ・. ・ 、 ・ ‐. { .. 6) にも用 い ら れる も の な の で ある‐ T. 5 ~ 6 の左 手 は テ ノ ー ル の b-a-a i s-d と いう s と バス の c-c 短 2 度 の 反 進 行 を な す‐ 上 述 の増 4 度 2箇 の 次 に 第 4拍 後 半 の 減5 度 h-r , T. 6 の 左 1拍 の 減 5 度 d~ 1~a 等 の 重 音 が 緊密 に結 合 じてお り ま た T 6 の 第 1拍 に は右 手 h-e 1-a i s a s 及 び右 手 同拍 の増 4 度 e s ‐ , か れ, ま たユニー ク な不協 和 音 とな っ ている‐ この フ レー ズ にもま の4度 堆 積和 絃 が波 s と 同時 にお ェ手 d-a ー ・ ー ′ 、 ‘ } ′. . ・′ . 、 、 ′、 二 ・. ”、 ・′ ▲. ・ 、Y .Y. ′ ′・. ・ ′ {・ ●- ′. た く と 〉〉 が佐 生右それぞれに種々用いられ,、 弱奏のうちにもデリケートな味わいをうみだしている. , .. 、 ▲. .L-. -▲ -- -. ‐. ▲ ▲. - -. ‐ ‐▲ -. ‐. --. -- ー. i及びAsとg) からなり 第3フレーズの音程関係よりも鋭いが音量の の拍の和絃は2箇の長7度 (ご とh , 弱さの故に右手の長7度跳躍ですら微細な表現をたたえている‐ つづく単旋律は長7度, 増5度, 短2度そ 1はT 8 ~ 9 に es-g-b-d-f-a-cis と い う13の して 異名 同音 ( d腰~eぎ) と いう 進 行 であ る‐ こ の e s ‐. 和絃の素材音のみによって曲の最後をしめくくるための工夫である とみなしうる. 即ちこの曲は斯様な不協 和音の分散 0順不同) によっ て無調性を主張しつつpppという音量でもっ てデリカシイの極限をゆき, 消 - は T. 1 ~ 2 の 右 手 第 」 :”「 える が如 く, 死 に絶 える が如 く に 終る の であ る‐ ま た T. 7 の ソ プ ラ ノ の 「[. 2拍以後の「じ 1Ufのき ざみとほぼ同形であり, 更にT‐ 3 の 口 汀 打1。 と T. 5 ~ 6 の i □ □1月Jも同 種といえる. このように前半と後半は書体の違いこそあれ, かくれたところに両者が共通の条件を包含して い る.. ‐. 以上のようにこの曲は前半 (1~4) と後半 (5~9) の組織が大きく異なっており, 前半が嘘 ェ右のユニ ークな対位法的デュナーミクと共に濃淡のコントラストと微細なう つろいのうちに深厳にして絶妙の奥行き をも っ て いる′の にた い して, 後半 はホ モ フォ ニ イ 組成 のう ち に級密 な無調 的 配慮 がなさ れ, 軽や か さ と若干 のあ かる さ をた たえ た主 旋 律 にたい して半 音 階的進 行 の 伴奏 b-a-a i s-d 及 び ビーh が配置 さ れ, s とc-c こ れ ら が不 協和 音 の 鋭 い連 続 を 幾 分や わ ら げて いる‐ T. 5 ~6 の ソ プラノ ④ -f-a一国 -e s- ④ は変 格第. 2旋法に似ており, 前半の左手の正格第1旋法 (疑似) と同じく西欧中世を想起させるものといえる‐ 書法 はT. 7~9に入って急激に希薄と静説の度を加え, 益々単旋律的となって寂しく息をひきとるが如くにお わ っ ている‐. 204.
(8) . ピアノ教材論V. ′. 』. b 「. キ. p. 卿. 提. ≠. ,≠. 卿 ,. 第. W. . ‐ ,. 曲. こ の 曲 は前 曲の 最 終フ レー ズ をう けつ ぎ, モノ フォニイ の 手法 によ っ て 一 貫 した僅 か13小 節 の小 さ なも の 2-a であ る‐●全 体 は 3 つ の フ レー ズ か ら な り, 第 1 フ レー ズ は 開 始音 と 終結 音 がf i s と い う 減6 度 の 関係, l-e と いう 完 全 5 度 第 3 フ レー ズ の そ れ は f 1-h と いう 減5 度 の 関係 にあ る 詰 第2 フ レー ズ の そ れ は h ‐ ,. まり冒頭音fと最終音h とが減5度関係をなし無調性の骨格をつくっ ている. 以上の音は全て右手による 旋律音 なの である‐ デュ ナーミク につ い て み れ ば第 1 曲, 第2 曲共弱 奏 に始まり 弱 奏 にお わり, 第3 曲が右. 手強奏に始まり弱奏p仰む こ終るが, 第4曲はpで始まり 坊 ゲで終る‐ 強奏による終止は全6 曲 中 唯一 のも の で も あ る. ま た 伴 奏 素 材 の 使 用 が ごく わ ず か で あ る 点 に お い て も ユ ニ ー ク で あ る と い え よう‐ Rasch aber l i t と 記 さ れ てお り, e ch ,. 曲頭 に は. 単 旋 律 を 主 体 と したテク ス チ ュ ア は軽 や か な が ら も 多 様 に 変幻 し, 最. 後 の フ レー ズ にお い て強 烈 な爆発 を みせ ている‐. 第1フレーズの前半はしずかにささやくょうな 〆 征罪罰百じ罰 のリ ズムをもつが, 後半は. 1月月亘夏-. 月」 .i」と いう16分 音 符 の 連 続 のう ち にス ラ ー とス タ ッ カ ー ト が交 互 す る. 前 半 は b:1 の分散的旋律b- de s-f-a-c であ る が, T‐ 2 にお い て こ の調 性 を打ち けす かのよう な が が強奏 影のみ によ っ て な らさ れる‐. これは将に単発的というようりも瞬間的強打であるため, 次に直ぐ元の静的単旋律へともどる‐ しかし, こ こ で は ピーF-h 2と いう 4度堆積がうまれ, 次に長9度・短7度の関係がつ づくために 一種異様なひびき , が突如として現れては消えてしまう鋭い印象がけしがたいのである. つ づく後半は3つの群からなりα群 2ーメーdiぎーぎ ーf 1-f 2(hiゞ)-hig-f 1ー ザ ー ピ γ 群 c l-a i ig - g, β 群 g ig-gi ig は ホ 短 調 ~ ハ 長 調 ~ 嬰 c s s ,. ハ長調を極めて速いう ごきのうちに変転するために調性的安定はない. 更にこの音列の後部5箇の音d ,c , iに相 対する 左 手 の D ~ F ~ G~ C はβ 群 の 素材 であ り T f i i i s I s s は全 音々 階で も あ る‐ 最 後 の a s ,g ,a , ‐ l l 4 の右 手f はお れて れる 左 ~ く 絃 中の を iぎ~g i i g 現 の和 ( んで える とも と h~d 含 考 こ わり, 可 能 ) の 関 s a g 1を 考慮 に 入 れる 場 合 h: 的 な 性 格 を も み て と れる が い ず れ にせ よ こ こ で は 短い 時 間 に い 及 びT‐ 5 の h ,. くつかの調的素材を小間切れに並列しているため全体としては特定の調性をも ・たないのである. 第2フレTズは上述のそれとは対照的 ‐で大らかな音価と滑らかな流れをみせている一 導入のソ プラノ及び 主旋律のアルトはト長調の素材によっ て始まり (T. 5~6) , イ短調の流れに変化 (T‐ 7~ 9) する が, 伴 奏 の和 音 が主 旋律 と の 間 に複雑 な 関係 を つく り だ している. T. 6 の 第1 ~2拍 は ソ プラノ とア ル トが ト . 、 { ‐ ′ . ・ - - 、 「 Y - - 、 、 ′ 、 ′ 長調 に在る とは いえ, ア ル ト及 び左 手の和 絃 をみる と f i s-a 1 s-c sーご と いう ロ調 のV,が形成 さ れ, 第2 の I 和 絃 を みる と 樗s-h-d-f i s という イ 長調 の 孤7 (前 者‐ 後者 共 第2 転 回形, 即 ち V3とWS), そ して T‐ 8 ~ 9 にお い て は ご 以 外 の 数箇 が g-h-d-f i i s-a-c s-e と いう D: N, の和音の素材なのである. ‐ これら は全て弱奏によっているため, 柔らかな表情のうちに調性的流れとそれを打ち消すごくわずかな和絃とによ 2と c っ て微 妙 な ひ びき の 綾 がう ま れてく る. ひ びき につ い て 細 かく みる な ら ばT. 6 の 第 1拍 に は ず-c i s 205.
(9) . 大 塚 夏 生. 2 i という 2 度 関係, f i i i s とa s と ど の 減5 度 及 び4箇 の6 度 関係 c s s と f鰐, f曙 と が が存 在 し, こ , e と c, a れらの 混 合 が pp によ っ て ひか れる ため に極め てユニ ーク な彩 り をも た ら して いる. 次の和 音A : 孤43は メ ‐ iと いう 増 4 度 と減5 度 d ロ ディ ー がf i s-fと なる ため に a: Wまとなり, ここ に は d一 癖, h-f , h-ぎ, , 一h 1の 6 度 g 1の 減 8 度 が 混 在 し色 彩 ゆ た か な 空 間 的広 が り を みせ て いる こ の よう にい く つ )-f i s( a s s~g g . , i か の 不協 音 程 を 含 みな が らもl i i tpp の 指 示 に加 え て pocor t が現 れる た め に この フ レー ズ は軽 妙多 彩 の e ch. うちにもデリケートな雰囲気の流れをうんでいるのである‐ 第3フレーズは前の二楽節のいずれとも大きく異って音量が急激に変化し,音長も突発的に変貌して 花当 ‘となり, 更に音質におぃても^の記号が各音に着くことにょっ て強烈にして刺戟的なものとな 学髪 墨 -≦ っ て いる‐ 然 し, T. 10の 最 初 の 5 音f s はT. 1 の そ れの 1 オク タ ー ヴ下 に位 置 する ため, ,a ,f ,b , de こ の フ レー ズ は全く 突 拍 子 も ない 素材 とはい えない.更 にこ の5音 につ づ く 5 音 をも加 え て全10音 をみる と, 第 6 音 のc i i e s 以 外は 変 ロ 短調 内 の も の で ある. こ れは 第 8・ 9 音f s-d s を異名 同音 g e s-e s と みな しう る. からである‐ もっ とも表情層 における変転という点からみればやはりこの曲は多様性に富んでいるものとい える‐ この小節には1オクターヴ中の12の音のうちのg音を除く1 1箇があり (rとげ が2箇ずつ) 3箇 , 計1 の音による音列のみが単旋律の形状で存在する‐ これもまた前楽節の4小節に亘る長々とした A-mo l l的 主旋律とは対照的条件のひとつといえよう. 即ちここには1 2音技法への接近が如実にみられるのである. ま 1 1. 1. 1 ー. 1. た こ の 旋 律 全 体 を み る と f-a-f-b-des-ces-b-f i i i i ( )-d ( )-c-d-e-g s-f-f s の 3 群 か ら な っ て お り, s es s ges. 第 1 群 は B一mon s-dur , 第 3群 は a-mon と いう よう に, 短い 間 に調 性を ほのめ か しつ つ 素 , 第2群 は Ge. 早く他へと転じてゆく点において第1フレーズと共通するものがある. 1-c c l T. 11~ 2の 上声 ざーピーb は長6 度 の連 続 下方 跳躍 であ り, T‐ 11の 諸音 の 関係 を みる と g , ~f(& 1)-h l-e 2 と い う 4度 構成 があ り こ の関係 は更 にT 1 f i s . 2~13の b-f-H 及 び h に分散使用 さ れる. この ,. )-h は ローmo 2小 節 の上 声部 g-b-( i lの i l lの 終止 形をお も わせ, 低 声部 の和 絃 AI-Gi a s s-H-fは a-mo. 素材音であるために両手を総合すると無調性が明らかである‐ このフレーズでは音量記号によって強烈さが 1と いう 上 昇 傾 向の 骨 格 と上 述 の長 6 度 連 続跳 1-(和 絃)-g l-(淳s l-f 1-d」e )-f 増 加 する の み な らず, c i s 躍 お よ び 不 協 和 音 な どによ っ て 緊張 が増 大 する の で ある. 音 量 記 号 の指 示 は ヂ l l t a o くく /〉 ガ sf , mane l l l l t t t t e a e o (絶 えず 槌 打つ) の 変 化 形 で あ っ て s empr ef or za o と 同義 で ある た め, 房 ゲであ り, mar o と は mar. 冒頭からT. 9までの静議はT‐ 10に入って突如 として稲妻および雷鳴のとどろきに変わってしまうともい える.. 総じてこの曲には調性という伝統的概念と隔絶して了うことなく, それと非調性との絡み合いのうちに無 調音楽の技法体系を模索するという近代音楽の作曲姿勢が如実にみうけられるのである‐ 譜例4 . l 曲tの i c 取幽もめc r .. “云. ‘ ‐-ー ’ ” *“ . 206.
(10) . ピアノ教材論V. 第. V. 曲. こ の 曲 は 全 6 曲 中唯 一 の 3 拍 子系 であ り, 曲頭 にzar tの 指 示 は あ る が, 最 終フ レー ズ 以 外 は一 般 のロ マ ン派 ビ ア ,ノ 曲に用 い ら れている 音 形 がみう けら れという 点 にお い てもま た唯 一 のも のである‐ わ ず か15小節. のこの曲は短いフレーズ が5箇あり, 音量はT. 12の ′以外は全て弱奏のなかで < と. >. が求められて. ) 第5 ( ) であ り, いる. フ レー ズ 構成 は第1 (1 ~3) 第2 (3 ~ 6) 第3 (6 ~8) 第4 (8~11 12~15. 開始音のFと最後の和絃のバスHが減5度 関係にあるという点において, 第W曲と同じである‐ 各楽節間 1~f 1と第 4 楽節 の そ れ の a l~a の 関係 を み る と 第 2 楽 節 主 旋律 の 開始 e iゞ の そ れは 共 に短 2度 上 行 であ り, 1~d と第 4 楽節 の そ れと は同 音 であり 更 に第 5 楽節 の 左 手 の 声部 の そ れの Ce 第3 楽節 の 終止 es s~H, (A ,. -G ) そのほか到る処に半音下行と半音上行の短い進行素材があっ て, この曲に統一感を与えてい i s , F~E るのである‐ この曲の楽想もまた他の5曲と同じく静謹にして極めて繊細であり, 内面空間をよぎる流れが 名状しがたい意識の深奥を暗示しているかのようにおもえるのである. 第工フレー ズにおいても前曲と同じく調性的音程関係が小規模な各素材にみられる. T. 1~2の右手f -c-a-ge i i s-b-a は変 ロ短調, T. 2 ~3 の a-g s-d s-e は 嬰ハ 短調 と みる こ とも できる‐ ま た左 手T‐ 1 ~ 2 の d-f一g a s-b は変 ホ 長調 に属 する が, ひとつ 前 か らh-d-f-g-a s の 流 れと して 捉 える と そこ. にはハ短調のVもの展開的分散の形状が潜在していると捉えること -も可能である‐ このことから冒頭2小節 l dーざ 即 ち は 複調 的性 格 を勾 わせ な が らも 左 右 の 同時 的 (縦) 音 程 関係 をみる と De s-c s , d-ge , , Hーa ,. 長7度, 短7度, 減4度, 長9度であり, 更に右手第2小節の ざに対位する左のa s-bは不協音程の連続 と いえる‐ 以 上 のよう な 音構 成 か らみ て この フ レー ズ の調 性 は確 定 しえな い の である‐ l-f 1-eg-fぎーピーf lの 第工 フ レー ズ の 右手 が下 降傾 向 を示 した の に反 して 第2 フ レー ズ のそ れは e iぎ-a 上 昇 傾 向 を示 し, ま た デ ュ ナーミ ク の点 にお い ても前 楽節 が平 坦 であ っ たの に反 して ここ では く<->> が多. く, 最後の3音においては くく による高場が音程の上昇と結合している. 書法についてみると前楽節が左 右 の 対位 法 である の に対 して こ こ で は和 声 法 的 形状 が は っ きり して いる. T. 4 ~ 6 の ソ プラノ は将 に g- mon で あ り, ア ル トも ま た そ の 範 囲 内 に ある が, T. 4 左 手 の As と g e s s が調 性 外 の 音 と し , T‐ 5 の de. て要所を占めているため調性は確定していない‐ しいていえば内声を含む伴奏部ではB-mo l lの素材が大半 を 占め て いる の である‐ 複調 性 とい える 程 の 縦横 関係 はない が, しか し前 述 の T‐ 1~ 2 右手 にみ ら れた よ う な 変ロ 短調 の ひ びきを濃く している こ と は否 めな い‐ 第 3 フ レー ズ T‐ 7 の 第1拍 は G:19の 転 回形 であり, ア ル トはハ 短調, 左 手 声部 は ト長調 の流 れ をも つ. が, 全体としてはト長調の素材 (c i s以外は) とみなしてもよい. 即ち不協音程のぶつかりが全体を占めて いるものの調性感はかなりはっきりしている. この曲はひとフレーズ毎に書法が大きく変っており, 第3楽 節 は ソ プ ラノ と バ ス, テ ナー が 全 保 続 ぎ, g, F i s であ り, ア ル トと バ リ ト ンの声 部 同 志 が反 進 行 関係 を な している ため, 静的 性 格 がつ よ い‐ 第4 フ レー ズ は2つ の動 機 と 伴 奏 形か らなり 第 1動 機 は短 2 短2 , , , l l l 1 1 l 1 」 増 4 (a -a i f iゞ-c -c i s -h - の, 第 2 動 機 は増 4, 短 2 (四 回)( s d -e s -d), と いう ソ プ ラノ 旋 律. がなめらかにひかれるのに対して, 左手は平行3度のスタッカートによる短2度進行が両動機に対して各1 回あらわれる‐ この書法もまた前楽節のそれとは全く異質なものであり, 極めてユニークな変容といえるの である‐ T‐ 9と1 0に現われる和絃は全てが2度音程のぶつかりをもち, 前諸楽節のような調性暗示的組成 l) にあ は縦横いずれにもみられない‐ 両動機の頭音と末音が長3度 (下降) の関係 (即ち 迂 とr f g とd ,i り, こ の フ レー ズ が類 似 した2つ の モ ティ ー フ と伴 奏 か らなり た っ ている こ とがよ く わ かる. 第 1 ~ 4 楽 節 が き わ め て デリ ケ ー トな 弱 奏 を 要 求 さ れて い る の に 反 して, 第 5 楽 節 は 鋭 い フ ォ ル テ 及 び Ue t c , か ら は じま っ て 次 第 にpp へ と 向 か い, 消 える が如 く にお わ る. つ ま り, こ の 曲 を 構 成 する 5 つ の 207.
(11) . 大 塚 夏 生. フ レー ズ は そ れ ぞれが 全く 異 な っ た 書法 に よ っ ており, 各々 が短 いフ レー ズ である がため の変幻 のは げ しさ. が顕著なのである. ただし全体を通して云える共通点は左手と右手の反進行的関係と半音進行のみである‐ 右手のう ごきは第1フレーズと同じく下降性をもつが書体は全く異なって重音および跳躍進行がいちじるし 2 lの半 音 下 降であ る の に た い して 第5 フ レー ズ の そ れ は半 音 上 行 (c い. 第3・ 4 フ レー ズ の結 びが eぎ-d -cぜ) である‐ 因み に第 1 フ レー ズ の結 びは短 3度 上 昇, 第2 フ レー ズ のそ れは短 3度 下 降である か ら, この最 終 フ レー ズ のそ れは他 のい ず れとも異 な っ てる の である‐. ヂの流れがあり i-ぎ-&-』-ぷ 琶-≧も i 2第2拍右手以降の? 平行3度素材の上昇線をた どるとT‐ 1 ・-善 ,-c , 2一As-Des-Ce l-c 2ーc l-h 2ーd 下 降 線を た どる と 最 初 は 同拍 の F-e i s s-HIがあ り こ れら両 者 が 絡 み 合 っ s. 1一品1r合一筆sであり i g l 3の‐ て反進行的に最後まで伸びている‐ 更に平行3度による下降素材をみるとT‐ 1 , 最後の2つの和音は右手の半音上行和音に対する半音下行形をなしてこの曲をおえている‐ 以上の如くこの 5つの楽節の基調をなす書体は無調反進行の連鎖といえるものなのである‐ 斯様な緊張関係を保ちつつも各 フレーズが極めて個性ゆたかにかかれ, この短い曲もまた息絶えるが如くに暗闇の彼方に消えてゆくのであ ・. る‐. .. 譜例5 . ’. . 第W. 曲. . ・. “ . . . γ. ,. ,. . ・. γ. ▼-〆. ムー - -・ - - - - ” u戸 錆 ’ 〆 胃′’ 〆 》【 - - . ‐ . 【 r 、. . . Fina le. わず か に9小節 の 短いこ の 曲 は極 め て少 数の 音符 か らなる 静謹 なな か にSehr langsam, in sehr zart ee , wi. pp” ppp, ppppp,. h等の指示が くく, >> と共 にあっ て音楽的表情をデリケートなもの に仕 上げ Ha uc. ている. こ の 希薄な 書態 によ っ て シ ェ ー ンベ ルク はこ の曲 をフ ィ ナー レら しく な にか しら超 越 的な境 位 へ と たかめ ている かのよう にお も える の である.. この曲の特徴はタイによって長く保持された左右のオスティナート和絃である. 右手は冒頭からT‐ 5 の . 小. 1-f 2が 影 地 駆 群 湖 ± 鴎 の よう に 保 続さ れ 更 にT 9 の1si 1と な っ て 現 れる‐ そ の 前半までa iゞ-h . , . l-r和 絃 が 1- 匙邑-1 …±, そ して T. 9 に14… ±隆 ←I 1 1 とな っ て用 い ら れて いる‐ 間 に左手 の T‐ 1~ 5 に g-c B. ppで弾かれ変化することなく伸びてゆくこれら2つの和絃は交互に反復の入りをもつ‐ 音楽的通念を超え, 2が加 え ら れ 同 時 に i 無 限の 彼 方 を 示 唆 す る か の 如 き こ の ひ びき を骨 格 と して T. 3 ~ 4 に は p に よ るd s , 3が かす か に天 上 を よ ぎっ てま も な く き えて ゆく こ れは 極 め て 微 妙 に して 灰 か な iヂーぎーd i s pppp に よ る d ‐. ものである. 保続和音は上記の如く右手の場合長さ がそれぞれ異なり7拍-8拍-3拍-4拍 小, この間 にT. 5~6と8に別の和絃も挿入されている. 左手は右手よりもやや数が少なく4拍-5拍-3拍-3拍 であ り, T‐ 5~6と8にはほかの和音も挿入されている‐ 左右の主たる和絃は各々拍数が変化しており,. 右と左が同時にならないように交互にややずれて現れ, T‐ 5の左とT. 9 の右以外は第工拍以外の拍で始 まっている ため, この曲には伝統的リズムがみとめられない. 左右両和絃入りのずれをみると第1回目と第 208.
(12) . ピアノ教材論V. 2回目が3拍ずれ, 第3回目と第4回目は1拍ずれ, 即ち後2者は前2者よりも2分音符1箇分ずつ縮めら れている. いずれにせよ右の和絃からずれて左の和絃がきこえてくることにより, 高音域のひびきから中音 域の そ れへ と響 きの 下 降性 がみとめ ら れる. 即 ち ここ (T‐ 9) ではT. 4~ 5 と同 値の 右 ・左 関係 に 加 え 1と いう 長 9 度 P帽 の 低音 域 にお ける 沈 降が作 品 の最 終のう ごき を示 して いる の である‐ て最 終拍 に B→AS. この素材は別に新規なものではなく, 既にT‐ 5のなかに用いられており, 前出の第3回の和絃呈示につ づ 1と 第4拍 後半 のテノ ー ル g ) が現 れてく る‐ 即 ち 第W 曲 全 体を 貫く オス ティ i い て 第3拍 右 手和 絃 の b s( a s. ナート和絃に加えて, T. 5とT. 9にもまた素材上の統 ー性が存在するのである‐ 斯様な統一と共存する の が多 様 性 であ り, T‐ 3 ~ 4, T‐ 5 ~ 6, T‐ 7~8などには心の微細なゆれう ごきを表はすかの如き 各々形体の異なった動機的素材が次々と現れて無調における 「多様と統一」 の美を実現している. 以上は楽想形成の大まかな考察であるが, 更に音程的組成の検討によっ てこれを細かく把えてゆきたい. 第・和絃 ‘羅 空 は長9度, 長6度, 完全4度からなるやや柔かい不協和音であり, 第2和絃 (左) のg 1一円ま4度堆積 即ち両者が重なる長い部分には4度関係が3箇重なり, 更に前者の4度音程が後者の -c , それ (2つの4度音程) と短2度のぶつかりをもっという見事な計算が弱奏のなかに秘かなる緊張をつくっ i i て いる‐ こ れ ら 2 つ の 和 絃 の 間 に は a と g, g と f s s とf , h と a と い う 2度音程関係が含まれ, 6つの ,f. 音によって効率的に不協和音がつくられる‐ これらはずれて用いられているために対位的であると同時に重 積 時 間の 長 さ の故 に和 声 的 にも な っ ている‐ 上 述の如く この和 絃 重 積 は はT. 1 ~5 とT‐ 9 を 占める の で あ る‐ T‐ 3 ~ 4 の 高 音部 に お い て d態 と d iゞ が 重 複・ 強調 さ れて いる た め に E: V2の 関係 がう ま れ, ま た T. 5~ 6 の 左 手も E-g i i s-d~f s , 即 ち A: の V9, (第5 音省 略) とお な じ和 絃 が現 れる‐ こ れ らはも. う片方の和絃と総合するときに全く別の不協和関係をうむのであるが, ともかくこのような2箇の和音が素 材 と して用 い ら れて いる の は事実 で ある. 1-f 1-b 1という 4度堆積和絃は直前の右手a l-fぜ-が とは上2音が長9 T‐ 5 の 第3拍 ~ T. 6 の右 手 c i-f 1とは共通 音 c 1-f 1を2箇 も つ ため 合 一 する と -c 1 度 下 降という 平 行 関係 にあ り, 更 に左 手 の g-c g 1-f , 1 と い う 4 度 堆 積和 絃 となる ま た 左 手 後 半 の と 合 わせ る と d-鎮s-c l-f 1-b 1という 4度堆積 -b ‐. , 更に低. l-f 1-b 1と いう 関係 か ら み て4 度 音 程 へ の偏 愛 は 明 ら かな の であ る こ の 音部 か らの E-( i s-c a 欠)-d-g ‐ 傾 向 はT‐ 8 にも 現 れ, この 曲 が4 度 関係 で 統 一 さ れてい る こ と がわ かる の で ある‐ 即 ち 左 手 に c i i s-f s- ig一ご と いう 計2箇 の 4度 堆 積和 絃 が 同一拍 に用 い ら れ, 両 者 は短2度 ま たは長 2度 ずつ ず h , 右 手 に 洋一g れている が, 両 者 がオ ク ター ブはな れて いる ため に鋭い, ま た は極度 に濁 っ た ひ びき はき か れない. この拍 l(-eゞ) を 合わせ た4 度 関係 の 団魂 をも み とめ にもう 少 しう が っ た 見 方 を加 える と左 の c i i s-f s-h と右 の e う る の である.. 拍節的形状の点においてはT・ 7~8の 功 罪 副’ お か → が先述した和絃連鎖のそれ (即ちT 一 ~ 6, T‐ 9) と は全く 異 な っ た 意 味 にお い てユニ ーク な挿 入部 である‐ T. 7 は ず-c i i s-d-f s-e s であ り, 2ーc d i s と い う 2オクターヴと短2度の幅のひろすぎる跳躍. (短1 6度) もまた現代的大胆さを表わしている.. 3ーd こ の 音 列 の 前 半 の 3 音 は T. 3 ~4 の d iゞ-e iゞ と いう 山 型 モ チ ー フ の 反進 行 (転 回) 型 で あ り, 後 半. は長3度上昇~増2度下降という, 前半の谷型に対応し, 拡大されたものである. このようにT. 7の単旋 律 素 材 は こ の 曲 にお い て は 突 如 と して 出 現 し, p の な か にも÷く. >÷を 2 回も っ と いう, 衝 撃 的 なも の で. ある‐ ここ には遠隔跳躍による独特の空間性およびユニークな音価による時間性が存在し, 個性ゆたかな様 態 と ア フ ェ ク トを みせ ている‐ 1ーc 2と いう 4 度 堆積 に e l→eg とい う 素 T‐ 8 の第1和 絃 は左 が c i i i s-f s-h という 4 度堆 積, 右 は d」g s 3→d 3という 素 材 と して使用 さ れた音 程 で あ り 材 の流 れ が加 わ っ て いる‐ こ れ は既 にT‐ 3 ~ 4 の d iゞ→e i s , 209.
(13) . 大 塚 夏 生. 2-け T 7 の ザーc i こ の 短2 度 下 降は T‐ 5 の h s な どとも 共通 して いる. さ て この小 節 の左 右 の和 絃 は , .. 相互に2度 (短および長) 音程のずれをもち不協矛廿性がよく計算され, ppであるとはいえ, この曲中最も l→eざ 素 材 は左 手 の 4度 堆積和絃 の 中の 高音 h と のあ い だ に4度 音程 をつく っ て おり 重厚 である. 上 述 の e , 1( i i そ の ため 低音 か ら数 える と c s-f s-h-e eぎ) という 4度堆積の四和音の存在がみとめられるのである‐ 3の 短2 度上行 と類似 してお り この小 節 はメ トリ ッ ク 3→e i 左手 のf i s s→g もま た先 に取りあ げた T. 3 の d , ,. 重積書法の点においては意外性をもっているが, 音程処理においては統一性を担っているといえる‐ これら 2→c は ま たT‐ 7 の d i s→d の 進 行 と も 関係 が 深 い か ら であ り, こ の 4 度堆 積 の 集 約 と も い える 和 絃 重 合 の. 故でもある‐. 1. 2 T 9のh 2→c 2には d→c→h という 順 次 下 降傾 向 にある‐ T‐ 8 とT. 9の T‐ 7 の d i s と T. 8 の c , ‐. 右手和絃には共通音がなく, 双方の左手には共通音がgのみであり, あいだに’▲ を はさ んで はいる が, ひ l( 2→b Iの 9 度 下 降はT 5 の h ) i ig)→g - びきの変化による緊張は大きい. T‐ 9最 後の B→AS a s( as . , T‐ 7 2→c のd i s と の 共 通 点 を もつ. 最 後 の小 節 が ppp の和 絃 で は じま り, 最 終拍 の 2 音 が pppp の 指 示 の も と に. 低音域で9度下降, 沈潜してゆくさまは真に言語に絶する内観の深まりを示しているのである‐ この曲のも つよく計算された静誼の極致ともいえるような無調書法は後年の12音書法への前提である と同時に, 微分化 と内面化の極致ともいいうる. 即ち伝統を脱却するに際して極めて慎重に思考し, 作曲が単なる技法追求に おわることなく, 常に冷静なる内省の姿勢を貫いたところにA. シェーンベルクの類稀な偉大さがあると言 えよう.. 譜例6 . “. i E〈. }. ; 一三」 ; ; t. -- :[. 1 彊. r tr「- h ′老 r ぬ鳩. q 謬. 逓. おわりに 最後にとりあげるべき点はこの6つの断章の全てに関りあっている作曲上の問題点およびそれが最後の断 章に及ぼしたと考えられる想念との関係などである. 窓意的な無調書法は19世紀のフランツ・リス ト以後ヨ ーロッパの作曲家達の意識に底流し, 調性回避と調性崩壊による新しい語法が各人によって個性的に追求さ れ, ドビ ュ ッ シー, バ ル トー ク, ス トラ ヴィ ンス キ ナe t c ‐ がそ れ ぞれ傑 れた 作 品 を かい た近代 的 状況 の な かでア ルノ ル ト・ シ ェ. ンベルクもまたユニークな思念のもとに無調的秩序体系を追求すると同時に新しい. 時 間 と空 間の形成 を目 ざして い っ た の である‐ その プロ セス の な か で シ ェ ー ン ベ ルク は諸 音の装飾 的愉悦 に. 溺れることなく, 厳しい素材選択をするなかで音符と休符の存在理由を確認しようと努めた‐ そこでは音高, t 音 長, 音 強, 音 色 そ して 無 音, フ レー ズ, モ ティ ー フ, 音 配 置, 音程 的変 化 e c . が作 品 の存 立 条 件 と して. その極限にまで微に入り, 細に亘って考えぬかれており, 更に無駄をはぶき純化の方向へと鋭い眼を向ける 210.
(14) . ピアノ教材論V. なかで各作品 (楽章) が凝縮され, 各々独自の様態と形式もつこととなったのである‐ と 伝統 を Fr . リ ス トの 場 合 は フ レー ズ 素 材 の 直 接 的 な, ま た は 移 置 的 な 反復 によ っ‐て 楽 段 形成 する いう. 的語法が非調性的組成と結びついている例が少くない‐ そのため曲の規模と表情相が歴史的にみて極端な意 外性 をもつ 例 は形態 の点 にか んする 限り みう けら れな い‐ しか しA. シ ェ ー ンベ ルク は20世紀 に入 っ てか ら. 無調音楽の内的, 本質的な可能性を追求し, 音構造, 素材形相, 音楽時間の形成な どにおいて極めてユニー ク な 境位 に到 達 した の である. も っ とも リ ス トの生年 がシ ェ ー ンベ ルク 生年 より も63年程 昔である こ とを か えり みる とき, リ ス トこそ真 にエ ポ ッ ク・ メ ー キ ン グな 存在 な ので あり, シ ェ÷ ンベ ルク は現代 的な 人 間の. 深層心理への省慮 という新しい姿勢を保ちつつ無調形態を極限にまで探究したという意味において, やはり 歴史的エポックを画する存在といえるであろう. 「 彼 が12音 技 法 を 完 成 した と み ら れる の は op .25 ピ ア ノ 組 曲」 1924であ る か ら, 拙 文 で と り あ げて き た ) の 約13年 後 の こ と で ある が, こ の 「ピ アノ の ため の 6つ の 断章」 にお い て 既 にそ れへ の 接 近 1911 op .19 (. の姿勢がみられ, 各小節に各々異っ た数箇のみの音が完く無調的に配置されることがごく当然のようになっ ている の であ る‐ 形状 にお い て は フ レー ズ の反復 やリ ズ ム の パ ター ン化 がなく, ま た ビ アニ ズ ム の 誇示も 全 く みら れず, 間の とり かた も独 特 であ っ て, 各々 短 かい な か に多く を暗示 している かのよう におも える. 以 上 のよう な多角 的問 題を は ら ん だ作 品 は ヨー ロ ッ パ精神 史の 一 ペー ジを 占め る も の でも あ り, こ の 故 に. こそ全ての ピアノ学習者も一度は必ずや正面からとりくんで, その作品への理解と演奏による表現を深める べく 努め て ほ しい‐ 従来 の 教材 には全く みる こ との な か っ た微細 な音色, デリ ケ ー トな 変化, 沈黙, 緊張,. 深厳などの体験をより多く踏むことによっ て音楽的想念をたかめることにこそ ピアノ 学習の意義があるもの とお もう か らであ る‐. あとがき 過年筆者は北教大紀要第43巻第2号第1部C p. 143~60に 「F‐ リ ス ト にお ける 調 性 回避 の 諸相」 及 び 同 学札 .岩 両 校音 楽 科発行 の 研 究 誌 に 「F‐ リス トの ピ アノ 曲 Uns t ern にお ける 後期 的特 質」 という 計2篇 の 論文 を発 表さ せ て い だい た が, こ れら は継 続 的なあゆ みのな か で上 記 の 順 に とり あつ か っ たもの であり, 1811 即 ち 2篇 で ひとつ の研 究 論文 と いう べ きも の な の である‐ こ れらを かきつ つ お も っ たの は Fr . リス ト (. 6 ) の音構造が19世紀の全ての音楽からみて将におどろくほど前衛的なあゆみをなしており, その無調音 ~8 楽への姿勢が年を追う ごとに厳しく, かつ純粋なものに変節していった, その創造性のもつ文化史的意義の ) が創 大き さ な の であ る‐ そ して そ れ がリ ス トよ り も63年 程 後 に 生ま れた A‐ シ ェ ー ンベ ルク ( 1874~1951 始者 で ある とみな さ れて き た 「12音 書法」 にき わめ て近 い着 想 であ っ て, リ ス トが万 人 に先 が け, 永 い 間を か けて序々 にそ れを試 み か ら 論理 と して た かめ てい っ た とこ ろ に真 に西 欧的な 「思考する音楽家」 の姿勢を. みいだしたときの衝撃は余りにも強烈であった. Fr ‐ リ ス トの 斯 様 な 一 面 を しる こ と によ っ て 得 た 感 動 は 必 然 的 に A. シ ェ ー ンベ ルク へ の お も い を 再 び. 喚起させることになった. それは今から40年近くも昔のこと, 当時20才代のなかば頃の筆者が札幌の 「ノイ エ・ム ジーク」 と いう 現代 音 楽 運動 の グルー プ に所属 して 幾度 か ピ アノ 独 奏 にシ ェ ー ンベ ルク, ヴ ェ ー ベ ル ン, バ ル トーク, メ シア ン等々 をと りあ げた こ と がいま 再 びなつ か しく 想 い ださ れる か らでも ある. こ の運. 動によっ てえた体験の深さと広さは後の筆者の文明観に大きな影響を及ぼし, 美学思想と生活意識を深めか ったかめたのである. 拙文においとりあげた作品もまた当時ステー ジで演奏し, 激しいショックをうけたも ズ の の ひとつ である. こ の op ‐11がも つ ビ ア ニ ム を 脱 し, 将 に俳 句 的凝 縮 のう ち に奥 深 い境 地 を か .19は op 「 い ま み せ た傑 作 で あ り, 数 年 後 に な っ て 弟 子 の ア ン ト ン・ ヴ ェ ー ベ ル ン が 「6 つ の 断章」 op . 6, 管 弦 楽 211.
(15) . 大 塚. 夏 生. の た め の5 つ の 断章」 op .10等々 にお い てう けつ い だ小 規模 に して密 度 の極 め て 濃 い, 即 ち必 要 に して充 分. な最小限の素材によるデリケートな表現,音楽のアフォリ ズムというべきひとつの極限的純粋さを実現した, あ の 歴 史 的 一 大 事 象 へ の 出 発 点 と な っ た 問 題 作 な の であ る‐ シ ェ ー ンベ ルク の ピ アノ 曲 に は 更 に op .23 , op ‐33b な どがあ り, こ れらもま た 内容 に傑 れ, 書 法 にお いて20世 紀前 半 の芸 術 思想を代表 .25 ‐33a , op , op. するもののひとつといえるのである‐ ピアノ学習者及 び若いピアニスト達が是非とも取り組むべき文化史上 の逸品であるとおもう‐ 上 記 の 諸々 の 理 由 に よ り 意義 深 い 「ノイ エ・ム ジーク」 の音 楽運動 を共 にお こな っ た 谷 本一之, 中村 毅 の. 両氏には今も猶敬愛と感謝の念を禁じ得ないのである.. 212.
(16)
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