美術作品に対する固定的イメージを揺さぶる鑑賞授業の開発:―マルセル・デュシャン『泉』を主軸とした対話と解説を通して―
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(2) 及び提示資料を吟味すること」とした。また、授業内容. の方法として、鑑賞授業用プレゼンテーションを作成し、. について、美術に対する先入観、固定的なイメージが美. それに沿って授業を進めた。また、《泉》という難解な作. 術作品を見る姿勢を偏狭にしていると考え、これが美術. 品を鑑賞の主軸としているため、考える視点を明確に提. 科における大きな問題の一つであると捉えた。固定的イ. 示し、資料・解説を多く取り入れると共に、主体的な態. メージとは、美術がr対象を写実的に、キレイに、何が. 度を持続できるように、対話と解説の双方が補い合うよ. 描かれているか判別できるように描くもの」であるとい. うな形を目指した。. った狭い認識を指す。これを揺るがすことがよりよい鑑. 第三章は前章で開発した鑑賞授業を中学二年生に実践. 賞教育にとって有意義であると判断した。そのために、. し、その成果と課題についてまとめた。成果・課題共に. r美術について考える」ことも重要であると考えた。美. 様々あるが、概ね本論で決定した目標に沿った授業とし. 術に対する固定的イメージとは、換言すれば、鑑賞者1. て成功したと思われる。. 人1人が無意識に持つ美術の定義と言える。そして、美. 終章は本論のまとめを行った。本論の授業開発の特徴. 術について考えるのは、美術の定義・本質を考えるに等. として①具体的な一実践事例②鑑賞教育の意義・目標の. しい。つまり、「美術について考える」ことは、美術の本. 設定③狙いを持った作品選択④作品にあった方法の考察. 質を考えることになり、結果、偏った固定的イメージを. が挙げられた。また、本開発授業の特徴として①本質の. 揺るがす可能性が期待されるのである。これらを踏まえ、. 探究②デュシャンの《泉》を鑑賞作品として選んだこと. 本開発授業の目標をr主体性を持って、美術について考. が挙げられた。また、本実践を振り返って、その位置づ. え、美術に対する固定的イメージを揺るがし、人聞形成. けについて考えると、本実践は美術作品をじっくり見る. を図る」活動を目指すこととした。. ことはせず、様々な作品を概観する中で美術について考. 第二章では、第一章の考察を基に授業案を作成する。. えを深めたと言う点において、美術鑑賞教育と言うより. その方法としてマルセル・デュシャンの《泉》を授業の. も、美術文化教育といった方が近いのではないかと考え. 中心に設定し、様々な表現方法の参考画像を鑑賞する。. られた。純粋な鑑賞活動ではないが、今後こういった視. 授業の流れは①まず《泉》を提示する。《泉》を見た生徒. 点も美術科にとって必要ではないだろうか。. は、ただの便器が美術作品であることに驚き、興味を示. 4.今後の課題. すと予想できる。そして、《泉》を美術作品として認めら. 今後は本実践の位置づけを明確にし、更なる改良を進. れない自分と、《泉》を美術作品として認めている社会と. めると共に、本実践と違う具体的な鑑賞授業の実践研究. の相違に気付き、自らが持つ美術に対する固定的イメー. を多く実施する中で、実践例を増加させ、それ等を参考. ジについて自覚する。②5つの表現の異なる作品を提示す. に中学校3年間に渡る建設的なカリュキュラムを構成す. ることで、美術の多様な表れを知り、それらを認めるこ. ることが、これからの美術科にとって有益であると考え. とで固定的イメージを揺るがす。③先の5つの作品を見. る。. ながら、作者によって出来る美術作品が何故違うのか考. 5.主要参考文献. えさせ、美術が作者の表したいことを自由に表してもい. 山本正男,『美術教育学への道』,玉川大学出版,1981. いものだと結論付ける。そして、その様な考えが正しい. 上野行一,『まなざしの共有一アメリア・アレナスの鑑賞教育に. とした時、《泉》が美術作品として成り立つかもしれない. 学ぶ』,淡交杜,2001. という可能性を抱かせる。④《泉》に込められた意味(オ. 大橋功.「学校教育における鑑賞学習指導の実態と課題一2003年. ブジェの思想など)、から美術に対する多様な考え方を知. 度鑑賞学習指導についての全国調査の考察を通して」、『美術フォ. る。⑤《泉》の解説より、「モノの意味や価値は見る人に. ーラム21』2005.VOL11,美術フォーラム21千1」行会,pp109・114. よって変わる」という考え方を知り、その考え方が本当. カルヴィン・トムキンズ 木下哲夫 訳,『DUCHAMP』,みす. に正しいならば、美術作品も人によっては物であること. ず書房,2002. を説明。これに対して心から納得できるかどうか考えさ. 主任指導教員 高木 厚子. せ、より美術について考えを深めさせる、となる。鑑賞. 指導教員村上祐介. 一375一.
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