• 検索結果がありません。

美術作品に対する固定的イメージを揺さぶる鑑賞授業の開発:―マルセル・デュシャン『泉』を主軸とした対話と解説を通して―

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "美術作品に対する固定的イメージを揺さぶる鑑賞授業の開発:―マルセル・デュシャン『泉』を主軸とした対話と解説を通して―"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1) 美術作品に対する固定的イメージを揺さぶる鑑賞授業の開発  専  攻  教科・領域教育学 一マルセル・デュシャン『泉』を主軸とした対話と解説を通して一  コース  芸術系(美術)                                    学籍番号  M09197A                                    氏  名  土本 周平. 1.研究の動機                  第一節鑑賞作品の選択  近年、美術科において鑑賞教育の研究が注目を集めて     第二節授業案の作成 いる。特に、対話型鑑賞法は、その取り組みやすさや学    第三章 実践と検証 習効果が注目され、多くの実践研究が進んでいる。筆者     第一節 実践内容 も学部卒業論文において対話型鑑賞の実践研究を行った     第二節 実践の成果と課題. 経験がある。そういった中で様々な問題点が指摘され、    終章付録授業実践資料 全72頁 より学校教育に適した鑑賞方法が提案されてきている。    3.研究の内容 さて、対話型鑑賞は鑑賞の方法論である。しかし、美術    第一章では、鑑賞教育の意義と課題について考察し、 科は他教科と違い、教える内容の吟味が必要である。っ   鑑賞授業開発の基礎となる考えを示した。鑑賞教育の研 まり、題材設定も重要な研究対象となる。このことは従   完を行う前提として、普通教育における美術科の役割を、. 来からも表現活動に関して当然のことであるが、鑑賞活   美術を通した人問形成とした。そして、その様な方向を. 動になると、鑑賞する作品とその作品の鑑賞によって得   持つ文献から、鑑賞教育の意義を探り、それを「i人間 られる知識・体験の質は広く議論されず、その方法だけ   形成」、「玉造形性に対する感覚の充実」、「血美術文化の に注目が集まるのは不思議な話ではないだろうか?鑑賞   理解・創造・継承・発展」という三点にまとめた。次に、. の具体的な中身(美術教育において何を教えるぺきなの   鑑賞教育の抱える問題点を全国調査より考察した。これ か)を提案することも鑑賞教育の研究に必要なことである   によると消極的な実践と、教師の鑑賞教育に対する理解. だろう。以上から、本論は鑑賞教育において教えるべき   不足という2点が挙げられる。消極的な実践の原因は、 内容を提案し、その授業案を作成、実践・検証すること   外的条件(十分な授業時間、提示装置、施設等)の不備 で、具体的な一鑑賞授業の開発を目指すこととする。鑑   と、教師の鑑賞教育に対する関心・理解・専門的知識の 賞授業開発に当たって、本論は上述の対話型鑑賞法を鑑   不足にあるとされている。特に、教師の鑑賞教育に関す 賞教育の一モデルケースとし、その課題について考察す   る理解不足は数字に表された以上に高いのではないかと ることで、授業開発の参考にしたい。それは、対話型鑑   推測した。こういった状況の中でアメリア・アレナスが 賞が提起する様々な問題が、筆者の鑑賞教育に対する問   日本に紹介した対話型鑑賞が優れた鑑賞法として話題に 題意識の根本になっているためである。なお、本研究は   なり、その研究が進んだ。対話型鑑賞は、美術作品を身 中学校美術科に限定することとする。これは、精神的に   近に感じさせ、主体的な鑑賞態度を養えるという大きな も知的にも大きく変化するこの時期において、「感性」や   利点がある。一方で様々な問題点①物語性の強調②作品. 『情操」の育成を目指す美術科の果たす役割が、重要な   選択の限定と方法の先行③専門的知識の必要性④鑑賞方 ものになると考えるからである。             法の固定と矢口論・情報の軽視が指摘され、そのままの状. 2.論文の構成                 態で学校教育に適用するのは難しいことが分かった。よ 研究動機                      って、対話型鑑賞という形に拘らず、その利点を活用す  第一章 鑑賞教育の意義と課題             るべきであると考えた。そして、鑑賞教育の意義と、対.   第一節 鑑賞教育の意義              話型鑑賞の研究から見える鑑賞教育の問題点を基に、鑑   第二節 鑑賞教育の課題               賞授業開発における基礎的な考えである授業設計上の要   第三節 授業開発における要点と授業内容及ぴ目標    点を考察した。その結果、鑑賞授業設計上の要点を「作  第二章 鑑賞授業の開発                品研究を深め、狙いを持った作品選択を行い、発間計画. 一374一.

(2) 及び提示資料を吟味すること」とした。また、授業内容. の方法として、鑑賞授業用プレゼンテーションを作成し、. について、美術に対する先入観、固定的なイメージが美. それに沿って授業を進めた。また、《泉》という難解な作. 術作品を見る姿勢を偏狭にしていると考え、これが美術. 品を鑑賞の主軸としているため、考える視点を明確に提. 科における大きな問題の一つであると捉えた。固定的イ. 示し、資料・解説を多く取り入れると共に、主体的な態. メージとは、美術がr対象を写実的に、キレイに、何が. 度を持続できるように、対話と解説の双方が補い合うよ. 描かれているか判別できるように描くもの」であるとい. うな形を目指した。. った狭い認識を指す。これを揺るがすことがよりよい鑑.  第三章は前章で開発した鑑賞授業を中学二年生に実践. 賞教育にとって有意義であると判断した。そのために、. し、その成果と課題についてまとめた。成果・課題共に. r美術について考える」ことも重要であると考えた。美. 様々あるが、概ね本論で決定した目標に沿った授業とし. 術に対する固定的イメージとは、換言すれば、鑑賞者1. て成功したと思われる。. 人1人が無意識に持つ美術の定義と言える。そして、美.  終章は本論のまとめを行った。本論の授業開発の特徴. 術について考えるのは、美術の定義・本質を考えるに等. として①具体的な一実践事例②鑑賞教育の意義・目標の. しい。つまり、「美術について考える」ことは、美術の本. 設定③狙いを持った作品選択④作品にあった方法の考察. 質を考えることになり、結果、偏った固定的イメージを. が挙げられた。また、本開発授業の特徴として①本質の. 揺るがす可能性が期待されるのである。これらを踏まえ、. 探究②デュシャンの《泉》を鑑賞作品として選んだこと. 本開発授業の目標をr主体性を持って、美術について考. が挙げられた。また、本実践を振り返って、その位置づ. え、美術に対する固定的イメージを揺るがし、人聞形成. けについて考えると、本実践は美術作品をじっくり見る. を図る」活動を目指すこととした。. ことはせず、様々な作品を概観する中で美術について考.  第二章では、第一章の考察を基に授業案を作成する。. えを深めたと言う点において、美術鑑賞教育と言うより. その方法としてマルセル・デュシャンの《泉》を授業の. も、美術文化教育といった方が近いのではないかと考え. 中心に設定し、様々な表現方法の参考画像を鑑賞する。. られた。純粋な鑑賞活動ではないが、今後こういった視. 授業の流れは①まず《泉》を提示する。《泉》を見た生徒. 点も美術科にとって必要ではないだろうか。. は、ただの便器が美術作品であることに驚き、興味を示. 4.今後の課題. すと予想できる。そして、《泉》を美術作品として認めら.  今後は本実践の位置づけを明確にし、更なる改良を進. れない自分と、《泉》を美術作品として認めている社会と. めると共に、本実践と違う具体的な鑑賞授業の実践研究. の相違に気付き、自らが持つ美術に対する固定的イメー. を多く実施する中で、実践例を増加させ、それ等を参考. ジについて自覚する。②5つの表現の異なる作品を提示す. に中学校3年間に渡る建設的なカリュキュラムを構成す. ることで、美術の多様な表れを知り、それらを認めるこ. ることが、これからの美術科にとって有益であると考え. とで固定的イメージを揺るがす。③先の5つの作品を見. る。. ながら、作者によって出来る美術作品が何故違うのか考. 5.主要参考文献. えさせ、美術が作者の表したいことを自由に表してもい. 山本正男,『美術教育学への道』,玉川大学出版,1981. いものだと結論付ける。そして、その様な考えが正しい. 上野行一,『まなざしの共有一アメリア・アレナスの鑑賞教育に. とした時、《泉》が美術作品として成り立つかもしれない. 学ぶ』,淡交杜,2001. という可能性を抱かせる。④《泉》に込められた意味(オ. 大橋功.「学校教育における鑑賞学習指導の実態と課題一2003年. ブジェの思想など)、から美術に対する多様な考え方を知. 度鑑賞学習指導についての全国調査の考察を通して」、『美術フォ. る。⑤《泉》の解説より、「モノの意味や価値は見る人に. ーラム21』2005.VOL11,美術フォーラム21千1」行会,pp109・114. よって変わる」という考え方を知り、その考え方が本当. カルヴィン・トムキンズ 木下哲夫 訳,『DUCHAMP』,みす. に正しいならば、美術作品も人によっては物であること. ず書房,2002. を説明。これに対して心から納得できるかどうか考えさ.             主任指導教員 高木 厚子. せ、より美術について考えを深めさせる、となる。鑑賞.             指導教員村上祐介. 一375一.

(3)

参照

関連したドキュメント

1、研究の目的 本研究の目的は、開発教育の主体形成の理論的構造を明らかにし、今日の日本における

 (4)以上の如き現状に鑑み,これらの関係 を明らかにする目的を以て,私は雌雄において

多の宗教美術と同様、ボン教の美術も単に鑑賞や装飾を目的とした芸術作品ではない。それ

ここから、われわれは、かなり重要な教訓を得ることができる。いろいろと細かな議論を

2021] .さらに対応するプログラミング言語も作

しかし何かを不思議だと思うことは勉強をする最も良い動機だと思うので,興味を 持たれた方は以下の文献リストなどを参考に各自理解を深められたい.少しだけ案

共通点が多い 2 。そのようなことを考えあわせ ると、リードの因果論は結局、・ヒュームの因果

実習と共に教材教具論のような実践的分野の重要性は高い。教材開発という実践的な形で、教員養