社会
系教科教育学会
『社会系教科教育学研究』第
7号 1995
(pp.49-54)
中学校社会科
一教
材
構
公民的分野における教材構成の方法
成の
類型
化
と
「分
離
独
立
型
」教
材
の構
成
方法−
A Study on the Organization of Teaching Materials for the Field of Civic in the Social Studies of
Junior High schools
:Classifying Material Organization and Organizing Materials of Sep
a
Γ
α
だon-Independence Type
多久島
文 樹
(佐
賀
県
多久
市立
中央
中
学校)
I
は
じめ
に
中
学校
社
会
科の
公
民
的分
野
では
,現
代の
社
会
と世界
に
関
す
る社
会
事
象
を取
り上
げ
,政
治
・経済
・社
会
に
関
す
る
し
くみ
,働
き
,
問題
点
な
ど
を学
習
す
る
O公
民的分
野の
学
習
対象
と
な
る社
会
事
象は
,家庭
生
活か
ら世界
情
勢
ま
で
と
いっ
た範
囲
や
政
治
・経
済
・社
会
と
いっ
た領
域
が
広
いた
め
,学
習
内容
が
多岐
にわ
た
り,専
門用
語
,抽
象
的
な理
論
や概
念
,複
雑
な要
素
を含
む
もの
が
多い
。
こ
れ
らの
こ
とか
ら
,教
科
書
に
記述
され
た
内容
を網羅
的に
扱
う授
業や
,用
語
や
理
論
・概
念の
解
説
的な
授
業
と
なる
傾
向か
お
る
。
この
よ
う
な授
業に
は
,学習
者
が教
師
か
ら
多
くの
事
項
を
一方
的
に教
え
こまれ
る
立場
に
おか
れ
る
と
い
う問
題
点か
お
る
。これ
らの
問
題
点の
解
決
には
,学
習
者
を
受動
的
な立
場
か
ら
主体
的
な
立
場に
変
えて
い
く必
要
が
ある
。
その
た
め
には
,授
業過
程
に
お
いて
,学習
内容
と学
習者
を
媒介
し
,
学習
活
動の
対象
とな
る教
材
を
どの
よ
うに構
成
して
い
くか
と
い
うこ
とが
課
題
に
なる
。
これ
ま
での
社
会科
に
お
ける教
材
に
関
す
る研
究
と
して
は
,一般
的な社
会科
教
材の
規
定
,条
件
・性
格
に
つい
て
の
研
究1
)
と中
学校
社
会
科の
各分
野
に
お
け
る教
材構
成の
研
究2
)
が
あげ
られ
る
。前
者
では
,社会
科
授
業に
お
け
る
教材
の
規
定
や教
材
化の
も
と
と
なる
素材
・事
実
・現
象に
つ
い
ての
条
件
・性
格
に
つ
い
ての
示
唆は
得
られ
るが
,具
体
的
な授
業
で
学
習内
容
との
か
かわ
りに
お
いて
教材
を
ど
の
よ
うに構
成す
るの
か
と
い
った
方法
的
なて
が
か
りを示
す
も
の
では
な
い
点が
問題
と
して
指摘
でき
る
。
後者
では
,学
習
内
容
と教
材
を同
義
とみ
な
した
り,教
材
を学
習
内
容の
補
助
的
な資
料
と
と
ら
える
内
容
重視
の
立
場
で
あ
り
,
学習
内
容
と教
材
を
自覚
的に
区
別
して
いな
い
の
で
,教
材
構
成
は
学
習
内容構
成
と
同
じとみ
な
され
る
。
した
が
っ
て
,学
習
指
導要
領
に
学習
内容
が規
定
され
,学
習
内
容の
発
展
的
な構
成
を図
る
もの
でな
い
点
と
自立
的
な
教
材構
成の
位置
づ
け及
び
その
構
成
方
法
を示す
もの
で
な
い点
が
問題
と
して指
摘
で
き
る
。
この
よ
うな
従
来の
研
究
に
対
して
,近
年社
会
科
関係
の
雑誌や
民間教育団体発行の授
業事例
集3)
に
おいて
,教
材づ
くりや教材
開発
とい
う視
点か
らの授
業実践が紹介
され
ている
。これ
らの授
業実践は
,学習者の
主体
的学
習参加や授業のわか
りやす
さをめ
ざして
,具体性や
身
近さを重視
した教材づ
くり
・教材開発
を行
うことによ
り
,授
業の
活性
化を図ろうとするもので
ある
。そ
して
,
授
業に
おいて学習活動の直接的な対象で
ある教材が重
視
され
,学習者の主体
的な学習活動を図るという点で
授
業改善の
方法
を示すものである
。また
,教授過程と
学習過程
を媒介する教材の改善が中心となる点で有効
な方法
といえる
。しか
し,これ
らの授
業実践に
ついて
は
,次の
ような課題が指摘できる。
第
一に,独立的に教材が構成され
ていてもその
目的
が曖昧であった
りす
ること
。第
二に
,導入段階
という
ような部分
的な授
業段階における教材の
紹介が
多く
,
1時間全体の学習内容
との
かかわ
りが
明確
で
ない
こと
。
第三に
,個別的な教材づ
くり
・教材開発の
事例
で
あ
り,
学習内容
と区別される
自立的な教材構
成の方法と
して
は明確に
示
され
ていないことである
O
この
ような考察か
ら教材構成に関する研究の視
点と
して以下の
点をあげることができる
。第一に,学習の
ね
らいとのかかわ
りか
らみ
た教材構成の
目的に
ついて
の考察
。第
二に
,
1時間の学習内容とのかかわ
りから
み
た教材の構成方法に
ついての考察
。第三に
,学習内
容
と区別され
る
自立的教材の構成方法についての
考察
で
ある。
本研
究ではこれ
らの
三点
をふま
えて
,具体的な授
業
事例
をてがか
りに
して
,学習のね
らいか
らみ
た教材構
成の
目的及び学習内容
とのかかわ
りか
らみ
た教材に関
す
る方法的な観
点か
ら教材構成の
方法に
ついての分析
を行
う
。そ
して,学習内容の発展的な構成
を図ること
の
できる
自立的な教材構
成の方法についての示唆を得
ることを目的とする
。そのために
,最近発行
された
中
学校社会科公民的分野の授
業事例集から115
事例4)
を
対象と
して教材の構成
を類型化
し,それぞれの
類型に
― 49
―
おける教材構
成に
ついて考察する。
Ⅱ
中学校社会科公民的分野の教材構成の類型
教材構成の分
類にあた
っては
,授
業のね
らいと教
材
・
資料
とのかかわ
りから教材構成の
目的を類型化
し
,学
習
内容と教材
・資料とのかかわ
りか
ら教材構成の方法
を類型化する。
1.公
民的分野教材の構成
目的の
類型5
)
構成
目的の類型化では
,授
業事例に明示された授
業
のね
らい及び授
業における中心的な問いをてがか
りに
して次の
ように分類する
。
授
業のね
らいとのかかわ
りからみた教材の構成
目的
は
,
「∼を理解させる
」
「 ̄
∼を知る」などと記述され
る
社会事象についての
理解
を目的とす
る教材と匚
∼は
ど
うすれ
ばいいか
を考
えさせる
」
「∼のあり方を考
えさ
せる
」などと記述
され
る社会事象についての
判断を目
的とする教材
とに大別する
ことができる
。
(1)社会事象に
ついての理解
を目的とする教材
社会事象についての理解
を目的とする教材は
,理解
対象で
ある社会事象の何
を理
解
させ
よ
うとす
るかに
よっ
て以下のように類型化する
ことができる
。
①社会事象の関連についての理解
を目的とする教材
この類型の教材は
,公民的分野に関する社会事象が
他の社会事象とどの
ように関連するのか
という社会事
象の関連についての
理解
を目的とするものである
。
②社会事象の構造についての
理解
を目的とする教材
この
類型の教材は
,公
民的分野に
関する社
会事象が
どのような構造になっているかという社会事象の構造
に
ついての理解
を目的とするもの
である
。
③社会事象の機能についての
理解
を目的とする教材
この
類型の教材は
,公
民的分野に
関する社
会事象が
どのような機能
(働
き
・役割)をもっているか
という
社会事象の機能についての理解を目的とするものであ
る
。
④
社会事
象の意味
についての
理解
を目的とする教材
この
類型の教材は
,公
民的分野に
関する社会事象が
どのような意味なのか
という社
会事
象の意味に
ついて
の理解
を目的とするものである。
⑤社会事
象の意義についての
理解
を目的とする教材
この
類型の教材は
,公
民的分野に
関する社会事象が
現代社会に
おいてどの
ような意義が
あるかという社会
事象の
意義についての理解
を目的とするもの
である
。
(2)社会事
象についての判断
を目的とする教材
社会事象についての
判断を目的とする教材は
,社会
事象の
判断方法の特性に
よって以下のよ
うに類型化す
る
ことが
できる
。
①社会事象に関する合法的判断を目的
とす
る教材
この類型の教材は
,公民的分野に
関する社会事象に
ついて
,法解釈
を手がか
りに
してどの
ように判断でき
るか
を考えさせることを目的とするものである
。
②社会事象に関する合目的的判断を目的とす
る教材
この類型の教材は
,公民的分野に
関する社会事象に
ついて
,人間の合
目的行為
を手がか
りに
してどの
よう
に判断できるか
を考えさせることを目的
とするもので
ある
。
③
社会事象に関する問題解決的判断を目的とする教
材
この類型の教材は
,公民的分野に
関する社会事象に
ついて
,現実の社会問題
を手がか
りに
してどの
ような
解決方法かお
るか
を考
えさせることを目的とす
るもの
である
。
以上の
類型結果
をまとめると図
1−
1の
よ
うに
なる
。
公
民
的分
野
教
材
の
構
成
目的
ド
﹂
社
会
事
象
の
関連
社
会
事
象
の
構
造
社
会
事
象
の
機
能
社
会
事
象
の
意
味
社
会
事
象
の
意
義
合
法
的
判
断
社
会
事
象
に
関す
る
十
合
目的
的
判
断
判
断
問
題
解
決
的
判
断
図
1−
1
公
民的分
野
教
材の
構
成
目的
2。公民的分野教材の構成方法の類
型
教材構
成の
方法の
類型化では
学習
内容と教材が区別
され
ているか
どうかを基本的な視
点として分類する
。
そ
して
,区別
され
ていない教材
については,授
業過程
に
おいて提示され
る資料の関連性
を具体
的な視曵
と
し
,
区別
され
ている教材に
ついては
,その教材
自体の特性
を具体的な視
点とする。
基本的視
点である学習内容と教材
・資料とのかかわ
りからみた教材の構
成方法は
,学習
内容と教材が区別
され
ていない
「 ̄
未
分離
型
」教材
と学習内容と教材が区
別
され
ている厂
分離型
」教材に大別す
るこ
とがで
きる
。
(1
)社会
事象に関する学習内容と未分離型の教材構
成
の
方法
「未分離型
」教材は
,学習内容
と教材が区別されて
いない教材
である
。そのため
,教材構成は
,学習内容
の構成と同義とみ
なす
ことができる
。そ
して,学習内
容
と学習者を媒介
し
,学習活動の
対象となるもの
とし
ては
,学習内容にかかわる社会事象
を示す資料が位置
づけられ
ては
,授
る
業過程において提示
。したがって
,その櫛戉
され
る資料がどの
方法の
考察に
ように
あた
っ
−50
−
構 成 さ れ て い る か に よ って 次 のよ う に類 型 化 し た。 第一 に 資 料 相 互 の関 連 か ら み て , 授 業 過 程 にお い て 提 示 さ れる 資 料 に 相 互 関 連 性 が み ら れ ず, 授 業 過 程 の 中 で学 習 内 容 に対 応 し て 資 料 が 単 独 的 に 提 示 さ れ る 「 ̄未 分 離 単 独 型 」 構 成 。 第 二 に 学 習 内 容 の 構 成 に対 応 し て 資 料 が 相 互 関 連 的 に提 示 さ れ て い る 厂未 分 離 関 連 型 」 構 成 で あ る。 ① 「 未 分 離 単 独 型 」 教 材 の 構 成 方 法 こ の類 型 の 構 成 方 法 は, 一 つ の 資 料 が 授 業 過 程 に お け る 特 定 の学 習 内 容 に対 応 す る資 料 と し て 構 成 さ れて い る 「 単 一 的 」 構 成 と 複 数 の資 料 が そ れぞ れ の 学 習 内 容 に 対 応 し て 構 成 さ れ て い る 厂列 挙 的 」 構 成 に 区 分 で き る 。( 図n- i) 学習内容 a 仟 ふ 学習内容b 仟 ふ 学習内容 c 仟 資 料a 教 資 料b 材 資 料c 図 皿−1 「未分離 単独型」 構成の モデル図 ② 厂未 分 離 関 連 型 」 教 材 の構 成 方 法6) 「 未 分 離 関 連 型 」 教 材 の 構 成 方 法 は , 学 習 内 容 と 資 料 内 容 と の 関 連 及 び資 料 相 互 の関 連 に よ っ て ,「 付 加 的」 構 成 ,「 経 過 的 」 構 成 ,「 因 果 的 」 構 成 ,「 類 比 的 」 構成 , 厂対 比 的 」 構 成,「 範 例 的 」 構 成 に区 別 で き るO ( 図n- 2) 厂付加 的 」 構 成 は, 学 習 内 容 に 関 係 す る 資 料 が 学 習 の 流 れ に そ っ て に付 け 加 え ら れ て い る 構成 方 法で あ る。 「 経 過 的 」 構 成 は, 関 係 年 表 や 推 移 を 示 す 統 計 資 料 な ど を 中 心 に 関 連 す る 資 料 が 時 系 列 的 に 構 成 さ れ る方 法 で あ る。 「 因果 的 」 構 成 は, 問 題 事 象 と そ の 原 因 ・ 結 果 及 び 背 景 ・ 現 状 の 関 係 を 示 す 資 料 が 構 成 さ れる方 法で あ る。 「類 比 的 」 構 成 は, 学 習 内 容 に 関 係 す る 同 種 の 内 容 の 資 料 が 比 較 で き る よ う に 構 成 さ れ る 方 法 で あ る。 匚対 比 的 」 構 成 は, 学 習 内 容 に 関 係 す る 相 反 す る 内 容 の資 料 が比 較 で き る よ う に 構 成 さ れ る方 法 で あ る。 学習内容 a 仟 ↓ 学習内容b 仟 ↓ 学習内容 c 仟 資 料1 教
匹
資 料2 材冂
資 料 χ 図 n − 2 「 未 分 離 関 連型 」 構 成 の モ デ ル図 「 範 例 的 」 構 成 は, 学 習 内 容 に 関 す る 典 型 的 な 具 体 的 事 例 の学 習 を 中 心 が構 成 さ れ る方 法 で あ る。 (2) 社 会 事 象 に 関 す る学 習 内 容 と 分 離 型 の教 材 構 成 の 方 法 匚分 離 型 」 教 材 は, 学 習 内容 と区 別 し て 教 材 が 設 定 さ れて い る 教 材 で あ る。 そ の た め, 教 材 の 構 成 は, 学 習 内 容 の 構 成 と は区 別 さ れ る。 し た が って , そ の構 成 方 法 の 考察 に あ た っ て は, 学 習 内 容 と学 習 者を 媒 介 し, 学 習 活 動 の 対 象 と な る 教 材 と し て, 何 か ど の よ う に構 成 さ れ て い る か に よ っ て 類 型 化 す る 。 「 分 離 型 」 教 材 の構 成 方 法 は, 学 習 内 容 と 区 別 し て 教 材 が設 定 さ れ て い な が ら も 学 習 内 容 や 提 示 さ れ る 資 料 へ の 従 属 性 が み ら れる 匚従 属型 」 構 成 と学 習 内 容 か ら も資 料 か ら も 独立 的 に 教 材 が 構 成 さ れ て い る 厂独立 型 」 構 成 に 大 別 で き る。 ① 厂分 離 従 属 型 」 教 材 の 構 成 方 法 「 分 離 従 属 型 」 教 材 の構 成 方 法 は, 学 習 内 容 へ の 従 属 性 が 強 い 「 内 容 従 属 的 」 構 成 と 資 料 へ の 従 属 性 が強 い 「 資 料 従 属 的 」 構 成 に 区 分 で き る 。 「 分 離 従 属型 内 容 従 属 的 」 構 成 の 教 材 は , 学 習 内 容 に か か わ る 社 会 事象 か ら教 材 が 選 択 さ れ, 学 習 者 の 直 接 の学 習対 象 と し て 教 材 に関 す る 資 料 が 構成 さ れ る方 法 で あ る。( 図n- 3) 学 習 内 容 上 a 学 習 内 容 b ↓ 学 習 内容 n 学 習 内 容 a ↓ 学 習 内 容 b ↓ 学 習 内 容 n 51 − 教 材 [ 蚕  ̄ 萪 T  ̄] 二 「 百 天 ¬ 匹 [ 百 二 蘚] 図n −3「分 離型内容従 属的構成」 の教材 モデル図 匚分離従属型 資料従属的」 構成 は, さ まざ ま な社 会 事象 の中 か ら学習内容を 内包 する社会事象 が教材 とし て選択 され, 学習者 の学 習活動 の対 象と して その事象 が資料化 される ことによって学習 者の学習対象 として 構成さ れてい る方 法であ る。(図n- 4) 教 材 「F 匹 冂 賺  ̄ 蘚  ̄ ̄1 冂 「( 苓  ̄羂 図 n − 4 厂分 離 型 資 料 従 属 的 構 成 」 の 教 材 モ デ ル図(3)「 分 離 独立 型 」 教 材 の 構 成 方 法 「 ̄分 離 独 立 型 」 教 材 は, 教 材 が 学 習 内 容 か ら も資 料 か ら も 独立 的 に構 成 さ れ る 方 法 で あ る 。 し た が っ て , こ の類 型 の 教 材 は学 習 内 容 そ の も の で はな く, ま た , 資 料 そ の も の で も ない 。 そ し て , 学 習 内 容 と資 料 を 統 括 す る よ う な 教 材 が 構 成 さ れ る。( 図n- 5) 学 習 内 容 a ↓ 学 習 内 容 b ↓ 学 習 内 容 n の構成方 法 につ いて考察す る。「分 離独 立 型」 教 材を 取り上 げる理由 は,「 未分 離型」構 成 の教 材 に次 の よ うな問 題点 が指摘 できる からである。 第一 に, 匚未分離型」教 材は,学 習 内容 と教 材 が同 義 とみられるた め, 教材 の構成 と学習内容 の構成 との 区別が 明確でな く,学 習者 の学 習対象 とな る教材自体 の構成を 独自に考察 する ことができにく くなるこ とで ある。 第二 に, 授業 過程にお いて提示 さ れる資料が学 習内容を習 得させ るための補助 的手段と して 位置づけ られ,単独 的に提示 されたり, たとえ資料 が相互 に関 連づけ られていて も学 習内容 の構成に規定さ れてし ま うことであ る。 した がって, 冒頭 で述べた教科 書内容網羅型 の授業 や用語・理論 ・概念 の解説型 の授業 を改善を 図る ため に, 教師 が主 体的 に学 習内容を再 構成し たり, 学習活 動を活性化 してい く教材構成 の方 法的な示唆 を得 るこ と はむず かしい と考 える。 以 上 のような「未 分離型」構成 の教材 の問 題点 を解 決し,課 題とな る教 材構成 の改善 や学習活動 の活性化 のため の示 唆を得 るため には,「分離 独 立型 」 構 成 の 教材 につ いて, 学習 内容 とのかかわりや学習 活動 との かか わりを 考察・検討 し,構成方 法上 の特 性を明 らか にす る必 要かお る。 次に 匚分離 独立型」教 材の構成方 法 につ いて検討す る。 1 。「 分 離 独立 型 」 教 材 の 検 討 匚分 離 独 立 型 」 教 材 は, 表 1 にあ る よ う に,「 活 動 的 構 成 」 2 事 例,「 具 体 物 構 成 」 9事 例 の11 事 例 で あ る 。 こ れ ら の 事 例 の評 価 で き る点 を 考 察 す る。 厂分 離 独 立 型 活 動 的 構 成 」 の教 材 に お け る 活 動 内 容 は, 次 頁 表 2 の通 り で あ る。 こ の 構 成 方 法 の評 価 で き る点 は, 学 習 活 動 が 教 材 と ( 注 : 数 字 は 事 例 数 を 示 す 。 空 欄 は該 当 事 例 な し で あ る。) ― 52 ― 教 材 濱 子 冂 T T r 頁  ̄ 鯔  ̄ ̄ ̄I T T r F 回 図 n − 5 匚分 離 型 独立 的 構 成 」 の 教 材 モ デ ル 図 こ のよ う な 「 分 離 独 立 型 」 の教 材 は, 教 材 自 体 の 特 性 か ら み る と, 匚活 動」 を 通 し て, 学 習 内 容 お よ び 資 料を 統 括 す る 「 活 動 的 」 構 成 と 具 体 的 な 「 も の」 を 通 し て 学 習 内容 及 び 資 料 を 統 括 す る 匚具 体 物 」 構 成 と に 区 分 で き る。 「 ̄分 離 独 立 型 活 動 的 」 構 成 は, 学 習 活 動 そ の も の が 教 材 とし て設 定 さ れ る方 法 で あ る。 こ の構 成 方 法 は, 活 動 を 通 し て 学 習 対 象 と な る 社 会 事 象 に 関 す る学 習 内 容 を 学 習 し て い く と い う 学 習 方 法 と学 習 内 容 が 一 体 と な っ た教 材 で あ る と い え る 。 匚分 離 独 立 型 具 体 物 」 構 成 は, 具 体 的 な も の が 教 材 と し て 設 定 さ れる 方 法 で あ る 。 以 上 の 類 型 化 の 結果 を 示 し た も の が 表 1 で あ る 。 Ⅲ 「 分 離 独 立 型 」 教 材 の 構 成 方 法 こ こ で は, 前 述 の類 型 の中 か ら 匚分 離 独 立 型 」 教 材 表1 教 材 構 成 の 目 的 と 方 法 ご 構成の方法匸 未 分 離 分 離 単 独型 関 連 型 従 属 型 独 立 型 目的別 事例数 単 一 列挙 付加 経過 因 果 類 比 対 比 範例 内容従属 資料 従属 活 動 具体物 理 解 関 連 1 1 3 2 3 1 1 12 構 造 6 6 4 1 1 5 ’ 8 1 1 33 機 能 1 5 1 1 2 2 1 3 16 意 味 1 2 2 2 1 8 意 義 1 4 2 1 1 5 1 15 判 断 合法的判 断 4 3 1 8 合目的 的判断 2 1 1 2 6 問題 解決判断 2 2 1 3 4 2 2 1 17 方 法別事例数 1 12 18 n 5 5 9 10 18 15 2 9 n5
し て 構 成 さ れ る こ と に よ り , 学 習 者 の主 体 的 な 活 動 や 体 験 を 通 し て 学 習 内 容 が 習 得 さ れ る と い う点 で あ る。 表 2 匚活 動 的 構 成 」 教 材 の活 動 内 容 主 題 名 活 動 内 容 賢 い 消 費 者 に な ろ う 広 告づ く り ミニ 政 党 を 作 ろ う ミ ニ政 党 作 り ・ 模 擬 選 挙 ま た, 教 材 ご と に学 習 内 容 と の か か わ り か ら 評 価 で き る点 は, 次 の点 で あ る 。 厂賢 い 消 費 者 に な ろ う」 で は, 厂賢 い 消 費 者 」 と な る た め に必 要 な 見 方 ・ 考 え 方 を 単 に 見 る側 か ら で な く, 広 告 を 作 る 側 か ら の 体 験を ふ ま え て 考 察 で き る 点 で あ る 。 厂ミ ニ政 党 を つ くろ う」 で は, 政 党 に 関 す る 知 識 , 選 挙 に関 す る 知 識 が そ れぞ れ 個 別 的 に 学 習 さ れ る の で はな く, 政 策 作 り ・政策 決 定 ・選 挙準 備 ・政 策討 論 会 ・ 選 挙 とい っ た 一 連 の 模 擬 活 動 の 中 で 関 連 づ け ら れて 学 習 さ れ る点 で あ る 。 匚分 離 独 立 型 具 体 物 構 成 」 教 材 に お い て 教 材 と し て 構 成 さ れ て い る具 体物 は下 表 3 の 通 り で あ る。 こ の構 成 方 法 の評 価 で き る点 は, 教 材 と し て 取 り 上 げ ら れて い る 具 体 物 が 身 近 な も の で あ る こ と か ら, 学 習 者 の興 味 や 関 心 を 引 き や す い 点 , 生 活 経 験 を ふ ま え て 学 習 活 動 が 展 開 がで き る 点 で あ る 。 ま た , 具 体 物 と い う 特 性 か ら, 観 察 , 調 査 , 操 作 と い っ た 主 体 的 な 学 習 活 動 を 構 成 す る こ と が 可 能 で あ る点 で あ る。 表 3 「 具 体 物 構 成 」 教 材 の 具 体 物 主 題 名 具 体 物 も う− っ の 生 き方 を 探 そ う バ ナ ナ 食物 ど ん な ア イ ス ク リ ー ムを 買 い ま す か アイスクリーム // カ レ ー の 中 に も文 化 か お る カ レ ー 〃 コ ン ビ ニ 流 通 作 戦 バ ー コ ー ド 記 号 バ ー コ ー ド か ら の ぞ く世 界 〃 〃 問 屋 と小 売 店 〃 // J A S マ ー ク は だ れ がっ け る か JASマーク 〃 ス パ イ ク タ イ ヤ は な く せ る か ス パイクタイヤ 用 具 プ リ ペ イ ド カ ー ド は お 金 か プリペイFカー F 〃 また,教材 ごと に学 習内容 とのかか わり から評 価で きる点 は, 次の点 であ る。 「 もうー つ の生 き方 を探そ う」 で は, ネ グロ ス バ ナ ナと普通 のバナナのち がいをて がかりとして,学 習内 容 が発展的 に構成 さ れている点 であ る。「 ど んな ア イ スクリー ムを買 います か」 では, 嗜好 品であ るアイ ス クリー ムと有害 な添 加物 という意外 性のある学習内容 が関連 づけ られ, さら に消費 行動のあり 方へと内容 が 発展的 に構成さ れている点 である。「 カ レ ー の中 に も 文化 がある」で は,「文 化」 とい う抽 象 的 な内 容 を と らえ さ せ る視 点 と し て 身 近 な 食 べ 物 で あ る カ レ ー が取 り上 げ られ て い る点 で あ る。厂コ ンビニ 流通 作 戦」「 バ ー コ ー ド か ら の ぞ く 世 界 」「 問 屋 と小 売 店 」「 JA S マ ー ク は だ れ が つ け る か 」 で は, バ ー コ ー ド と JA S マ ー ク と い った 身 近 に 見 ら れ る記 号 を て が か り と し て , 商 業 の し く み, 世 界 経 済 , 流 通 のし く み な ど へ と発 展 的 に学 習 内 容 が 構 成 さ れて い る点 で あ る 。「 ス パ イ ク タ イ ヤ は な く せ る か」 で は, ス パ イ ク タ イ ヤ 公 害 の原 因 につ い て , 実 際 に ス パ イ ク タ イ ヤや ス パ イ クピ ン を 観 察 す る こと に よ り実 感 的 に と ら え さ せ て い る点 と, 被 害 の 状 況 を ス パ イ ク タ イ ヤ に よ る道 路 摩 耗 量 ・ 降下 煤 塵量 ・ 道 路 補 修 費 の実 際 の数 量 的 デ ー タ に よ り客 観 的 な認 識 を さ せ て い る 点 で あ る 。「 プ リ ペ イ ド カ ー ド は お 金 か 」 で は, プ リペ イド カ ードを 使 った買 物 のシ ミュ レ ー シ ョ ンを し て, 模 擬 的 に 店員 を 体 験 さ せ た上 で, お 金 (貨 幣 ) の条 件 と い う概 念 的 な内 容 を 考 え さ せ て い る点 で あ る。 2。匚分離 独立型」教 材による授業 改善 への示 唆 前 節で検討 したよう に「 分離独立型」 の教材 から, 以下 のような授業 改善 への示 唆を得 ることがで きるO 「分離独立型 活動 的構成」 は,学 習 活 動 が教 材 と し て構成 される ことにより,第一 に,学 習者の主体 的な 活動 や体験を通 して学 習内容 が習得さ れること。 第二 に,活動 の中で学習 内容 に関 する知識 が関 連づけ られ て学習さ れるこ と。 第三 に, 複数 の異な る立場を体験 する ことにより多様 な判 断が できるこ とで ある。 厂分離独立型 具体物構 成」 の教材 は, 教材 とし て取 り上 げられてい る具体物が身近 な もので あること によ り, 第一 に, 学習者 の興味や関心 を引 きや すく,生活 経 験を ふまえて学習 でき ること。 第二 に, 概念的・抽 象的な学 習内容を とらえさせ る視点を提供 するこ と。 第三 に,身 近で具体 的な内容 から発展的 に学 習内容 が 構成で きることであ る。 Ⅳ お わりに 本研究 にお いて,学習 内容 と教 材を区別 しなが ら, 教材を構 成目的 と構成 方法 の視点 か ら位 置づける こと により, 教材構成を方 法的側面 か ら体系化 するてが か りが得 られた。 また, その枠組 みの中 から 厂分離独立 型」 教材 の構成方法を 考察し て教 材構成 の改善 を図 る ため の示 唆を 得 ることがで きた。 こ のよ うな教材構成 に関す る方 法的側面 からの研究 は, 所与 の学 習内容 に規定 さ れることなく,教 師が自 らの教材 に関 する研究 に基づいて, 自主 的 に学 習内容 や 教材を構成 していく ための方策を示 すも ので ある。 また,「 分離独立型」 教材 の構成 方法 は, 広 く共 有 化 ― 53 ―