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御堂関白記における音の通用について

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Academic year: 2021

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(1)

御堂関白記における音の通用について

著者

安田 博重

雑誌名

日本文藝研究

66

2

ページ

125-147

発行年

2015-03-10

URL

http://hdl.handle.net/10236/14516

(2)

ヨ ミ

こ れ ま で 、 藤 原 道 長 自 筆 の 御 堂 関 白 記 に は 誤 字 脱 字 が 多 く 、 そ し て そ の 修 正 跡 も ま た 多 い 、 と い う ふ う に 言 わ れ て き た ⑴ 。 御 堂 関 白 記 の 自 筆 本 に お い て 、 現 代 日 本 社 会 に お け る 規 範 的 表 記 ⑵ と は 異 な る 変 則 的 表 記 が 目 に つ き や す い こ と は 、 調 べ て み る と 確 か に そ の よ う な 印 象 を 受 け た 。 ま た 、 塗 抹 に よ る 抹 消 や 、 重 ね 書 き に よ る 訂 正 等 は 特 に 印 象 に 残 り や す い と 考 え ら れ 、 誤 り や 修 正 跡 が 多 い 、 と い う ふ う に 言 わ れ て し ま う の も 致 し 方 無 い こ と な の か も し れ な い と も 感 じ た 。 し か し な が ら 、 そ れ ら は 決 し て 道 長 個 人 の 性 格 や 表 記 の 能 力 の 実 態 を 表 す も の で は な い し 、 ま た 御 堂 関 白 記 に の み 当 て は ま る も の で も な い 。 現 代 の 我 々 の 表 記 活 動 を 観 察 し て み る と 、 同 じ よ う な 点 は 多 く 見 つ か る の で あ る 。 例 え ば 文 章 を 書 こ う と す る 時 、 特 に 、 そ の 草 稿 段 階 に お い て は 、 書 こ う と す る 内 容 を 頭 に 思 い 描 き な が ら 、 そ れ を 次 か ら 次 へ と ﹁ こ と ば ﹂ 化 し 、 記 し て い く 。 そ の 際 に 、 語 順 や 文 字 な ど を 全 く 間 違 え る こ と な く 、 脇 道 に も 逸 れ ず に 筋 の 通 っ た 文 章 を 作 る こ と が で き る 人 が 果 た し て ど れ ほ ど い る で あ ろ う か 。 極 め て 短 い 文 章 な ら ば と も か く 、 普 通 は 推 敲 を 重 ね 、 修 正 を 加 え て ゆ く 。 そ の よ う な 作 業 は 誰 も が 行 う こ と で あ ろ う と 想 像 さ れ る 。 況 や 道 長 の 場 合 は 漢 文 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 二 五

(3)

︵ 正 格 の 漢 文 で は な い 、 所 謂 変 体 漢 文 と 呼 ば れ る も の で あ る ︶ で 記 し て お り 、 誤 謬 と そ の 訂 正 を 繰 り 返 し た で あ ろ う こ と は 容 易 に 想 像 が つ く 。 ま た 、 変 則 的 表 記 の う ち 、 特 に 略 記 を 生 み だ す 要 因 の 一 つ と し て 考 え ら れ る の は 、 具 注 暦 の 限 ら れ た ス ペ ー ス に 日 記 を 記 し て い る こ と で あ る 。 こ れ は 我 々 が 手 帳 に ス ケ ジ ュ ー ル を 書 き 込 む の に 似 て い る 。 初 め は 丁 寧 に 一 つ ず つ 書 い て い た と し て も 、 何 度 も 繰 り 返 し 使 用 さ れ る 言 葉 な ど は 、 あ る 時 点 か ら 往 々 に し て 略 記 さ れ た り 記 号 化 さ れ た り す る も の で あ る 。 そ の 略 記 さ れ た り 記 号 化 さ れ た り し た ﹁ こ と ば ﹂ は 、 文 章 を 書 く た め の 、 所 謂 一 般 的 な 表 記 と い う も の か ら す れ ば 、 当 然 特 殊 な 表 記 と い う こ と に な る で あ ろ う 。 こ の よ う に 考 え て み る と 、 御 堂 関 白 記 も 他 の 男 性 貴 族 の 日 記 も 、 ひ い て は 現 代 の 我 々 の ノ ー ト や メ モ で す ら も ﹁ こ と ば の 表 記 の 方 法 ﹂ と い う 面 に お い て は 、 そ れ ほ ど 大 差 無 い も の と 考 え ら れ る 。 も し 、 御 堂 関 白 記 が 他 の 日 記 と 異 な る 大 き な 特 徴 が あ る と す れ ば 、 誤 字 脱 字 や 修 正 跡 も 生 々 し い 草 稿 の ま ま の 自 筆 本 が 遺 さ れ 、 伝 え ら れ て き た と い う 点 に あ ろ う 。 そ れ は お そ ら く 、 書 き 手 が 藤 原 道 長 と い う 人 物 で あ る こ と と は 無 縁 で は な か ろ う 。 と は い う も の の 、 御 堂 関 白 記 を 資 料 と し て 取 り 上 げ 、 文 字 ・ 表 記 の 視 点 か ら 論 じ て い く と な る と 、 そ こ に 現 れ る 変 則 的 表 記 を ど う 解 釈 す る の か 、 と い う 問 題 を 避 け て 通 る こ と は で き な い 。 ま た 、 変 則 的 表 記 と 呼 ば れ る も の 自 体 も 、 約 千 年 前 に 書 か れ た も の を 、 現 代 の 我 々 が 、 現 代 日 本 社 会 に お け る 規 範 的 表 記 の 意 識 に 照 ら し あ わ せ た 結 果 、 変 則 的 表 記 で あ る 、 と 判 断 し て い る だ け で あ り 、 も し か す る と 平 安 時 代 中 期 の 貴 族 社 会 の 認 識 で は 、 変 則 的 な も の で も 特 殊 な も の で も な く 、 許 容 範 囲 の う ち の 一 つ で あ っ た の で は な い か 、 と 考 え る こ と も で き る 。 現 代 の 規 範 的 表 記 と 異 な っ て い る か ら 変 則 的 表 記 で あ る 、 と し て 全 て を 等 し 並 み に 扱 っ て し ま う と 、 本 質 を 見 誤 っ て し ま う こ と に な り か ね な ヨ ミ い 。 本 稿 で は 、 御 堂 関 白 記 自 筆 本 に お け る 変 則 的 表 記 と 考 え ら れ る も の の う ち 、 音 の 通 用 ⑶ に よ る 表 記 に つ い て の 用 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 二 六

(4)

例 を 掲 載 し 考 察 す る 。 た だ し 、 紙 幅 の 都 合 に よ り 、 特 徴 的 な 用 例 の み を と り あ げ 、 少 数 例 の も の は 、 こ れ を 除 い た 。

御 堂 関 白 記 に つ い て の 論 文 は 多 数 見 ら れ る が 、 し か し 、 文 字 ・ 表 記 に 限 っ て み る な ら ば 、 管 見 で は 高 松 政 雄 ︵ 一 九 六 二 ︶ を 嚆 矢 と し て 、 小 山 登 久 ︵ 一 九 七 二 ︶ 、 佐 藤 稔 ︵ 一 九 八 〇 ︶ 、 峰 岸 明 ︵ 一 九 九 六 ︶ 、 同 ︵ 二 〇 〇 三 ︶ 、 高 橋 久 子 ︵ 二 〇 〇 四 ︶ と 多 く な い 。 こ の 中 で 、 字 音 の 通 用 の 各 事 象 を 詳 細 検 討 し て い る も の が 佐 藤 稔 ︵ 一 九 八 〇 ︶ で あ る 。 佐 藤 ︵ 一 九 八 〇 ︶ は 、 御 堂 関 白 記 に お け る 漢 字 の 変 則 的 用 法 の 、 中 で も 字 音 の 通 用 に 関 し て 、 ま ず 、 諧 声 符 を 同 じ く す る か ど う か 、 字 形 の 類 似 が 認 め ら れ る か ど う か 、 と い う 漢 字 の ﹁ 形 ﹂ の 点 か ら 分 類 し 、 そ れ ぞ れ の 用 例 を 挙 げ 、 道 長 の 通 用 の 傾 向 を 見 出 そ う と す る も の で あ り 、 そ の 論 旨 に は 首 肯 す る べ き 点 が 多 い 。 し か し な が ら 、 各 用 例 の 用 例 数 ︵ 変 則 的 表 記 で 表 記 さ れ た も の だ け で な く 、 規 範 的 表 記 に 従 っ て 正 し く 書 か れ た も の も 含 め て の 用 例 数 ︶ が 一 切 示 さ れ て お ら ず 、 意 識 的 な 変 則 的 表 記 を と っ た 用 例 で あ る の か 、 そ れ と も 無 意 識 に 表 記 し て し ま っ た 、 誤 記 誤 用 、 も し く は 極 め て 誤 記 誤 用 に 近 い 用 例 で あ る の か 、 と い う 判 断 を 下 す こ と が で き な い ⑷ 。 よ っ て 本 稿 で は 、 字 音 の 通 用 に つ い て の 用 例 数 を 全 て 表 示 す る こ と で 佐 藤 の 論 を 補 強 し 、 ま た 佐 藤 が 表 面 的 に 触 れ る に と ど ま っ た 和 訓 に よ る 通 用 に も 触 れ る こ と で 、 道 長 が 実 際 に ど の よ う に 文 字 を 通 用 さ せ た の か を 明 ら か に し た い 。 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 二 七

(5)

ヨ ミ 御 堂 関 白 記 自 筆 本 内 に 見 ら れ る 字 音 ・ 和 訓 を 含 め た 音 に よ る 通 用 と 思 わ れ る も の は 全 て あ わ せ る と 580 例 ほ ど に な る が 、 そ の 中 で も 特 徴 的 な 用 例 を 以 下 、 見 て い く こ と と す る 。 な お 、 該 当 箇 所 に は 右 に ● 印 を 付 し た 。 右 に ▲ 印 の あ る も の は 通 用 等 に よ り ﹁ 本 来 書 か れ る べ き 、 規 範 的 表 記 に 則 っ た 表 記 ﹂ 以 下 、 佐 藤 ︵ 一 九 八 〇 ︶ の 用 語 に 従 い 、 こ れ を ﹁ 正 書 ﹂ と 呼 ぶ こ と と す る ⑸ ︶ と は 異 な る 表 記 と な っ て い る 箇 所 で あ り 、 直 後 の 亀 甲 括 弧 内 に ﹁ 正 書 ﹂ に あ た る 文 字 を 書 き 入 れ た 。 数 字 は 用 例 数 。 丸 括 弧 内 は 変 則 的 表 記 が 認 め ら れ た も の で あ り 、 ﹁ 正 書 ﹂ 、 変 則 的 表 記 の 順 に 用 例 数 を 示 し た 。 な お 、 ﹁ 正 書 ﹂ の 用 例 は 挙 げ て い な い 。 1 ﹁ 太 ﹂ 字 を ﹁ 大 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 太 上 天 皇 1 ︵ 太 上 天 皇 0 ・ 大 上 天 皇 1 ︶ ● 1. 長 保 元 年 八 月 十 九 日 依 大 上 天 皇 御 幸 例 ◆ 太 后 5 ︵ 太 后 3 ・ 大 后 2 ︶ ● 2. 寛 仁 二 年 正 月 三 日 此 間 大 后 参 上 給 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 ◆ 皇 太 后 ・ 皇 太 后 1 ︵ 皇 太 后 0 ・ 皇 大 后 1 ︶ ・ 皇 太 后 宮 48 ︵ 皇 太 后 宮 40 ・ 皇 大 后 宮 7 ・ 太 后 宮 1 ︶ ・ 皇 太 后 宮 大 夫 16 ︵ 皇 太 后 宮 大 夫 11 ・ 皇 大 后 宮 大 夫 4 ・ 皇 太 后 大 夫 1 ︶ ● ▲ 3. 寛 仁 二 年 正 月 七 日 皇 大 后 為 大 ︹ 太 ︺ 皇 太 后 有 文 ︵ 皇 太 后 ︶ 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 二 八

(6)

● 4. 寛 弘 四 年 十 二 月 二 日 皇 大 后 宮 明 理 ︵ 皇 太 后 宮 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 6 例 ● 5. 寛 弘 六 年 十 二 月 廿 六 日 皇 大 后 宮 大 夫 ︵ 皇 太 后 宮 大 夫 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 3 例 ◆ 太 皇 太 后 ・ 太 皇 太 后 2 ︵ 太 皇 太 后 0 ・ 大 皇 太 后 2 ︶ ・ 太 皇 太 后 宮 9 ︵ 太 皇 太 后 宮 3 ・ 大 皇 太 后 宮 2 ・ 太 皇 大 后 宮 2 ・ 大 皇 大 后 宮 1 ・ 皇 太 后 宮 1 ︶ ・ 太 皇 太 后 宮 大 夫 5 ︵ 太 皇 太 后 宮 大 夫 2 ・ 大 皇 太 后 宮 大 夫 1 ・ 太 皇 大 后 宮 大 夫 1 ・ 大 皇 大 后 大 夫 1 ︶ ▲ ● 6. 寛 仁 二 年 正 月 七 日 皇 大 ︹ 太 ︺ 后 為 大 皇 太 后 有 文 ︵ 太 皇 太 后 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 ● 7. 寛 仁 二 年 五 月 廿 五 日 従 大 皇 太 后 宮 褂 廿 重 給 ︵ 太 皇 太 后 宮 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 ● 8. 寛 仁 二 年 四 月 八 日 太 皇 大 后 宮 御 御 手 水 間 ︵ 太 皇 太 后 宮 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 ● ● 9. 長 保 二 年 正 月 十 九 日 大 皇 大 后 宮 御 法 事 ︵ 太 皇 太 后 宮 ︶ ● 10. 寛 仁 二 年 三 月 廿 五 日 大 皇 太 后 宮 大 夫 ︵ 太 皇 太 后 宮 大 夫 ︶ ● 11. 長 保 元 年 十 月 十 九 日 此 間 太 皇 大 后 宮 大 夫 来 ︵ 太 皇 太 后 宮 大 夫 ︶ ● ● 12. 長 保 元 年 十 一 月 七 日 大 皇 大 后 ︵ 宮 ︶ 大 夫 ︵ 太 皇 太 后 宮 大 夫 ︶ ◆ 太 政 大 臣 ・ 太 政 大 臣 1 ︵ 太 政 大 臣 0 ・ 大 政 大 臣 1 ︶ ・ 一 条 後 太 政 大 臣 1 ︵ 一 条 後 太 政 大 臣 0 ・ 一 条 後 大 政 大 臣 1 ︶ ・ 小 野 太 政 大 臣 1 ︵ 小 野 太 政 大 臣 0 ・ 小 野 大 政 大 臣 1 ︶ ● 13. 長 和 元 年 正 月 廿 七 日 彼 大 政 大 臣 任 右 大 臣 事 ︵ 太 政 大 臣 ︶ ● 14. 長 和 元 年 正 月 廿 七 日 一 條 後 大 ︵ 政 ︶ ※ ﹁ 政 ﹂ 字 虫 損 ︶ 大 臣 為 右 大 臣 時 ︵ 一 条 後 太 政 大 臣 ︶ ● 15. 長 和 元 年 五 月 一 日 前 年 小 野 大 政 大 臣 夢 相 同 之 ︵ 小 野 太 政 大 臣 ︶ ◆ 泰 伯 篇 1 ︵ 泰 ︵ 太 ︶ 伯 篇 0 ・ 大 伯 篇 1 ︶ ● 16. 寛 弘 六 年 十 二 月 一 日 論 語 大 伯 篇 そ れ ぞ れ 、 ﹁ 太 上 天 皇 ︵ ダ イ ジ ヤ ウ テ ン ワ ウ ︶ ﹂ ︵ ﹁ ダ ジ ヤ ウ テ ン ワ ウ ﹂ ︶ 、 ﹁ 大 后 ・ 太 后 ︵ お ほ き さ き ︶ ﹂ ・ ﹁ 太 后 ︵ タ イ コ ウ ︶ ﹂ 、 ﹁ 皇 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 二 九

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太 后 ︵ ク ワ ウ タ イ ゴ ウ ︶ ﹂ ︵ ﹁ ク ワ ウ ダ イ コ ウ ﹂ ︶ 、 ﹁ 太 皇 太 后 ︵ タ イ ク ワ ウ タ イ ゴ ウ ︶ ﹂ 、 ﹁ 太 政 大 臣 ︵ ダ イ ジ ヤ ウ ダ イ ジ ン ︶ ﹂ 、 ﹁ 泰 ︵ 太 ︶ 伯 篇 ⑹ ︵ タ イ ハ ク ヘ ン ︶ ﹂ と 読 む も の ⑺ と 考 え ら れ る 。 た だ し 、 和 訓 で 読 む 可 能 性 も 否 定 す る こ と は で き な い 。 ﹁ 皇 太 后 ﹂ と い う 語 に 関 し て 、 用 例 を 見 る 限 り 比 較 的 ﹁ 正 書 ﹂ で 書 か れ る こ と が 多 い 。 そ の 一 方 ﹁ 太 皇 太 后 ﹂ に な る と 、 用 例 数 が 少 な い の で 不 明 確 な 部 分 は 多 い け れ ど も 、 表 記 に 揺 れ が 多 く 、 不 安 定 で あ る と 言 え よ う 。 ﹁ 太 上 天 皇 ﹂ 、 ﹁ 太 政 大 臣 ﹂ は す べ て ﹁ 大 ﹂ 字 で 表 記 さ れ て い る 。 ﹁ 泰 伯 ﹂ は ﹁ 太 伯 ﹂ と も 書 く よ う で あ り 、 こ こ で の ﹁ 大 ﹂ 字 は 、 ﹁ 泰 ﹂ 字 と の 通 用 と も 考 え ら れ る し 、 ﹁ 太 ﹂ 字 と の 通 用 と も 考 え ら れ る が 、 ﹁ タ イ ﹂ と い う 字 音 に よ り 通 用 し て い る 。 2 ﹁ 大 ﹂ 字 を ﹁ 太 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 大 殿 1 ︵ 大 殿 0 ・ 太 戸 1 ︶ ● ▲ 17. 長 保 元 年 七 月 廿 九 日 依 故 一 條 太 戸 ︹ 殿 ︺ 御 忌 日 女 方 渡 仁 和 寺 ◆ 大 内 184 ︵ 大 内 12 ・ 太 内 170 ・ 太 内 の 上 か ら 抹 消 1 ・ 太 内 の 繰 返 記 号 ︹ 太 内 ! ! ︺ ・ 1 ︶ ● 18. 長 保 二 年 正 月 四 日 従 太 内 参 院 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 169 例 ◆ 大 内 裏 1 ︵ 大 内 裏 0 ・ 太 内 裏 1 ︶ ● 19. 長 和 元 年 四 月 廿 三 日 参 太 内 裏 ※ ﹁ 大 ﹂ ﹁ 内 ﹂ 含 む そ の 他 の 語 ・ 大 内 記 1 ◆ 大 僧 正 ・ 大 僧 正 3 ︵ 大 僧 正 2 ・ 太 僧 正 1 ︶ ・ 前 大 僧 正 5 ● ▲ 20. 長 和 元 年 五 月 七 日 太 僧 正 目 代 威 儀 師 覺 譽 法 師 解 ︹ 懈 ︺ 怠 等 催 行 ※ ﹁ 大 ﹂ ﹁ 僧 ﹂ 含 む そ の 他 の 語 ・ 大 僧 都 12 ︵ 大 僧 都 8 ・ 大 僧 3 ・ 大 都 僧 1 ︶ 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 三 〇

(8)

・ 権 大 僧 都 2 こ こ で 注 目 す べ き は や は り ﹁ 大 内 ﹂ を ﹁ 太 内 ﹂ と 表 記 し た 例 の 多 さ で あ ろ う 。 抹 消 、 繰 返 記 号 の も の も 含 め て ﹁ 太 内 ﹂ は 172 例 、 道 長 は ﹁ お ほ う ち ﹂ と い う 語 を ﹁ 太 内 ﹂ と 書 く も の だ と 認 識 し て い た の で は な い か と 思 わ れ る ほ ど で 、 ﹁ 大 内 ﹂ の 用 例 は 寧 ろ 、 点 の 打 ち 忘 れ の よ う に も 思 え て く る ほ ど で あ る 。 ﹁ 大 内 裏 ﹂ の 語 は ﹁ タ イ ダ イ リ ﹂ と も 読 む そ う で あ る か ら 、 そ れ な ら ば ﹁ 太 内 裏 ﹂ と 書 く こ と が あ っ て も 不 思 議 で は な い 。 ま た 、 ﹁ 大 内 裏 ﹂ と 前 述 の ﹁ お ほ う ち ︵ 大 内 ︶ ﹂ と は 類 義 語 で あ る が 、 そ の ﹁ 大 内 ﹂ を ﹁ 太 内 ﹂ と 多 数 表 記 し て い る こ と も 深 く 関 係 し て い る と 考 え て よ い で あ ろ う 。 ﹁ 大 僧 正 ﹂ を ﹁ 太 僧 正 ﹂ と し た 例 は こ の 一 例 の み で あ り 、 他 の ﹁ 大 僧 正 ﹂ や ﹁ 大 僧 都 ﹂ な ど は 全 て ﹁ 大 ﹂ 字 で あ る の で 、 こ れ は 筆 の 勢 い で 誤 っ て ﹁ 大 ﹂ 字 に 点 を 付 加 し て し ま っ た と 考 え ら れ る 。 3 ﹁ 内 ﹂ 字 を ﹁ 大 ﹂ ・ ﹁ 太 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 内 裏 12 ︵ 内 裏 3 ・ 大 裏 2 ・ 太 裏 7 ︶ ● 21. 寛 弘 七 年 二 月 廿 九 日 大 裏 并 所 ! ︵ 内 裏 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 ● 22. 寛 弘 五 年 八 月 六 日 参 太 裏 ︵ 内 裏 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 6 例 ﹁ 内 ﹂ 字 を ﹁ 大 ﹂ 字 、 ﹁ 太 ﹂ 字 で 通 用 さ せ て い る 語 は ﹁ 内 裏 ︵ ダ イ リ ︶ ﹂ の み で あ り 、 他 の ﹁ 内 ﹂ を 含 む 語 で ﹁ 内 ﹂ 字 は 通 用 さ せ る こ と が な い 。 4 ﹁ 絹 ﹂ 字 を ﹁ 見 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 疋 絹 30 ︵ 疋 絹 3 ・ 疋 見 27 ︶ ● 23. 長 保 元 年 八 月 廿 日 官 人 疋 見 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 26 例 ※ ﹁ 絹 ﹂ 字 を 含 む そ の 他 の 語 ・ 絹 51 ・ 平 絹 1 ・ 生 絹 4 ︵ 生 絹 2 ・ 生 2 ︶ ・ 絹 蓋 1 ・ 絹 布 1 ・ 長 絹 1 ﹁ 疋 絹 ︵ ヒ ケ ン ︶ ﹂ を ﹁ 疋 見 ﹂ と 通 用 さ せ た 例 が 際 立 っ て い る が 、 そ れ 以 外 は 全 て ﹁ 絹 ﹂ 字 で あ る 。 ﹁ 疋 絹 ﹂ と い う 言 葉 に 限 っ て 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 三 一

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は よ く 使 用 さ れ る た め 、 よ り 画 数 の 少 な い ﹁ 見 ﹂ 字 を 用 い て 表 記 し た 、 と 考 え て よ い で あ ろ う 。 5 ﹁ 捧 ﹂ 字 を ﹁ 俸 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 捧 物 ・ 捧 物 14 ︵ 捧 物 2 ・ 俸 物 11 ・ 捧 1 ︶ ・ 御 捧 物 1 ︵ 御 捧 物 0 ・ 御 俸 物 1 ︶ ● 24. 長 保 元 年 七 月 廿 九 日 殿 上 人 多 来 俸 物 有 所 ! ︵ 捧 物 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 10 例 ● 25. 長 和 元 年 五 月 十 七 日 御 俸 物 金 百 両 丁 子 両 各 入 瑠 璃 壷 ︵ 御 捧 物 ︶ ﹁ 捧 ﹂ 字 を ﹁ 俸 ﹂ 字 で 通 用 さ せ た 例 が 多 い が 、 ﹁ 捧 ﹂ 字 で き ち ん と 表 記 さ れ た も の も そ れ な り に 存 在 す る の で 、 ど の よ う な 意 図 で の 通 用 で あ る の か 、 は っ き り し た こ と は 言 え な い 。 6 ﹁ 仗 ﹂ 字 を ﹁ 丈 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 仗 座 22 ︵ 仗 座 3 ・ 丈 座 18 ︶ ● 26. 長 保 元 年 九 月 十 四 日 著 左 丈 座 定 季 御 讀 経 事 ︵ 仗 座 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 17 例 ◆ 左 仗 ・ 右 仗 ・ 左 仗 9 ︵ 左 仗 3 ・ 左 丈 5 ︶ ・ 右 仗 1 ● 27. 寛 弘 元 年 四 月 十 四 日 参 内 著 左 丈 ︵ 左 仗 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 4 例 ﹁ 仗 ﹂ 字 、 ﹁ 杖 ﹂ 字 を ﹁ 丈 ﹂ 字 で 通 用 さ せ た も の は 省 画 と も 考 え ら れ る 。 そ の 中 で も ﹁ 仗 座 ﹂ を ﹁ 丈 座 ﹂ と し た 例 が 多 く 見 ら れ る 。 7 ﹁ 陪 ﹂ 字 を ﹁ 倍 ﹂ ・ ﹁ ! ﹂ 字 で 通 用 ◆ 陪 従 11 ︵ 陪 従 6 ・ 倍 従 5 ︶ 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 三 二

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● 28. 寛 弘 元 年 二 月 五 日 次 倍 従 諸 大 夫 若 小 男 共 等 布 衣 渡 庭 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 4 例 ◆ 陪 膳 ・ 陪 膳 11 ︵ 陪 膳 9 ・ 倍 膳 1 ・ ! 膳 1 ︶ ・ 御 陪 膳 1 ● 29. 寛 仁 二 年 正 月 五 日 倍 膳 采 女 進 御 盞 采 女 受 之 置 御 臺 盤 候 ︵ 陪 膳 ︶ ● 30. 寛 仁 二 年 四 月 廿 八 日 乳 母 藤 子 ! 膳 ︵ 陪 膳 ︶ ※ 空 白 マ マ ﹁ 陪 従 ﹂ が ﹁ 正 書 ﹂ だ が 、 ﹁ 倍 従 ﹂ も ほ ぼ 同 数 登 場 す る 。 一 方 ﹁ 陪 膳 ﹂ の 場 合 は 圧 倒 的 に ﹁ 陪 ﹂ 字 で あ る 。 ﹁ 陪 従 ﹂ の 場 合 は 、 ﹁ 従 ﹂ 字 の 彳 偏 に 牽 引 さ れ て 、 形 が 近 い 亻 偏 の ﹁ 倍 ﹂ 字 が 表 記 さ れ や す か っ た の で は な い だ ろ う か 。 た だ し 、 そ れ な ら ば ﹁ 陪 膳 ﹂ の 時 に は 、 ﹁ 膳 ﹂ 字 の 月 偏 に 牽 引 さ れ た と 考 え ら れ る ﹁ ! 膳 ﹂ が 半 数 近 く 登 場 し て も 不 思 議 で は な い は ず で あ る が 、 実 際 は 1 例 で あ る 。 こ れ は お そ ら く 、 ﹁ ! ﹂ 字 が 常 用 さ れ る こ と の な い 漢 字 だ か ら で あ ろ う 。 8 ﹁ 供 ﹂ 字 を ﹁ 共 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 供 49 ︵ 供 46 ・ 共 3 ︶ ● 31. 寛 弘 六 年 十 一 月 廿 五 日 酉 時 共 御 湯 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 2 例 ◆ 供 奉 17 ︵ 供 奉 8 ・ 共 奉 9 ︶ ● ▲ ▲ 32. 寛 弘 元 年 六 月 十 一 日 共 奉 幸 行 ︹ 行 幸 ︺ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 8 例 ◆ 供 養 ・ 供 養 26 ︵ 供 養 22 ・ 共 養 2 ・ 供 巻 1 ・ 供 奏 1 ︶ ・ 供 養 法 1 ・ 塔 供 養 1 ● 33. 寛 弘 二 年 五 月 四 日 共 養 仁 王 経 千 部 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 省 画 と も 考 え ら れ る 例 で あ る 。 ﹁ 供 奉 ﹂ の 例 に 少 し 多 く ﹁ 共 奉 ﹂ の 形 が 見 ら れ る ほ か は 、 ﹁ 正 書 ﹂ が 殆 ど で あ り 、 ﹁ 供 奉 ﹂ と い う 語 に お い て の み ﹁ 共 ﹂ 字 で 通 用 さ せ る 傾 向 が あ る 、 と い う 程 度 で あ る 。 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 三 三

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9 ﹁ 義 ﹂ 字 を ﹁ 儀 ﹂ ・ ﹁ 議 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 論 義 ・ 論 義 7 ︵ 論 義 2 ・ 論 儀 3 ︵ 中 、 儀 論 1 ︶ ・ 論 議 2 ︶ ・ 御 論 義 3 ︵ 御 論 義 2 ・ 御 論 議 1 ︶ ● 34. 寛 弘 元 年 正 月 十 四 日 但 講 師 論 儀 了 立 座 ︵ 論 義 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 ● 35. 寛 弘 元 年 正 月 十 四 日 儀 論 間 瀧 口 者 発 音 為 闘 乱 ︵ 論 義 ? ︶ ● 36. 寛 弘 元 年 五 月 一 日 依 例 以 請 僧 可 然 令 論 議 ︵ 論 義 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 ● 37. 長 和 元 年 正 月 十 四 日 御 論 議 禄 等 如 常 ︵ 御 論 義 ︶ ◆ 証 義 3 ︵ 証 義 1 ・ 証 議 2 ︶ ● 38. 寛 弘 元 年 五 月 十 九 日 證 議 二 者 二 人 加 四 位 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 10 ﹁ 儀 ﹂ 字 を ﹁ 義 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 儀 19 ︵ 儀 18 ・ 義 1 ︶ ● 39. 寛 弘 六 年 七 月 廿 七 日 其 義 如 常 ◆ 儀 式 2 ︵ 儀 式 1 ・ 義 式 1 ︶ ▲ ▲ ● 40. 寛 弘 二 年 五 月 廿 四 日 南 京 住 ︹ 注 ︺ 記 妙 玄 山 住 ︹ 注 ︺ 記 懐 命 義 式 各 相 分 ◆ 威 儀 師 6 ︵ 威 儀 師 3 ・ 威 儀 2 ・ 盛 義 1 ︶ ▲ ● 41. 寛 弘 六 年 十 二 月 四 日 御 前 物 盛 ︹ 威 ︺ 義 物 也 11 ﹁ 議 ﹂ 字 を ﹁ 儀 ﹂ 字 で 通 用 ◆ ︵ ﹁ 叙 位 議 ﹂ に 関 す る ︶ 議 9 ︵ 議 2 ・ 儀 7 ︶ ● 42. 寛 弘 二 年 正 月 四 日 非 可 参 叙 位 儀 由 令 奏 聞 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 6 例 ◆ 議 所 5 ︵ 議 所 3 ・ 儀 所 2 ︶ 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 三 四

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● 43. 寛 弘 八 年 正 月 五 日 儀 所 儲 依 無 其 所 儲 宜 陽 殿 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 ◆ 議 定 1 ︵ 議 定 0 ・ 儀 定 1 ︶ ● 44. 寛 弘 元 年 六 月 十 七 日 儀 定 後 所 ! 別 當 定 ◆ 参 議 ・ 参 議 8 ・ 非 参 議 1 ︵ 非 参 議 0 ・ 非 参 儀 1 ︶ ● 45. 寛 弘 六 年 十 二 月 廿 九 日 非 参 儀 大 弁 説 孝 著 横 座 申 ヽ 文 ﹁ 義 ﹂ 、 ﹁ 儀 ﹂ 、 ﹁ 議 ﹂ 三 字 の そ れ ぞ れ の 通 用 で あ る 。 ﹁ 論 義 ﹂ は ﹁ 論 議 ﹂ と も 表 記 す る ⑻ よ う で 、 そ う で あ る な ら ば 変 則 的 表 記 か ら 外 し て 考 え て も よ い の か も し れ な い 。 ま た 、 ﹁ 証 義 ﹂ も ﹁ 論 義 ﹂ と 関 係 の 深 い 語 で あ る の で 、 ﹁ 論 議 ﹂ と い う 表 記 が 変 則 的 表 記 か ら 外 れ る の で あ れ ば 、 ﹁ 証 議 ﹂ と い う 表 記 も 同 様 に 考 え ら れ る 可 能 性 は あ る 。 そ う す る と ﹁ 義 ﹂ 字 を ﹁ 儀 ﹂ 字 で 通 用 さ せ た も の が 、 通 用 と し て 考 え ら れ る 例 と な る 。 こ れ は 増 画 と も 考 え ら れ る ⑼ で あ ろ う 。 ま た 一 方 の ﹁ 儀 ﹂ 字 で あ る が 、 ﹁ 義 ﹂ 字 と し か 通 用 し な い 。 こ れ は 省 画 と も 考 え ら れ る 。 ま た 通 用 す る と は い う も の の 、 そ も そ も ﹁ 正 書 ﹂ で 書 か れ る こ と の 方 が 圧 倒 的 に 多 い 。 ﹁ 議 ﹂ 字 は ﹁ 儀 ﹂ 字 と の み 通 用 し 、 ﹁ 義 ﹂ 字 と の 通 用 例 は 見 当 た ら な い 。 ま た ﹁ 儀 ﹂ 字 に な る も の も 、 ﹁ 叙 位 議 ﹂ に 関 す る 語 の み が ﹁ 儀 ﹂ 字 で 通 用 さ れ ⑽ 、 ﹁ 叙 位 議 ﹂ が ﹁ 儀 式 化 ﹂ 、 つ ま り 形 骸 化 し て い た の で は な い か と 思 わ せ ら れ る よ う な 通 用 の 仕 方 と な っ て い る 。 そ う 考 え る と 前 述 の ﹁ 論 義 ﹂ に し て も ﹁ 論 儀 ﹂ と す る 例 が 存 在 す る と い う の は 、 行 事 の 形 骸 化 を 臭 わ せ る よ う で い て 、 興 味 深 い 。 12 ﹁ 脚 ﹂ 字 を ﹁ 却 ﹂ 字 で 通 用 ◆ ○ 脚 ︵ ○ は 数 字 ︶ ・ 一 脚 2 ︵ 一 脚 0 ・ 一 却 2 ︶ ・ 二 脚 5 ︵ 二 脚 0 ・ 二 却 5 ︶ ・ 三 脚 1 ︵ 三 脚 0 ・ 三 却 1 ︶ 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 三 五

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・ 六 脚 1 ︵ 六 脚 0 ・ 六 却 1 ︶ ● ● ● 46. 寛 仁 二 年 正 月 三 日 八 足 白 木 机 三 却 ︹ 脚 ︺ 一 却 三 尺 二 却 ︹ 脚 ︺ 二 尺 五 寸 ︵ 一 脚 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 6 例 ﹁ 脚 ﹂ 字 は 全 て 例 外 な く ﹁ 却 ﹂ 字 で 通 用 さ せ て い る 。 全 て 単 位 の ﹁ 脚 ﹂ で あ り 、 ﹁ あ し ﹂ の 意 味 で の ﹁ 脚 ﹂ 字 の 使 用 例 は 無 い 。 ﹁ あ し ﹂ の 意 味 で ﹁ 脚 ﹂ 字 を 書 く こ と と な っ た 場 合 に 、 道 長 は 通 用 さ せ た で あ ろ う か 、 興 味 深 い と こ ろ で あ る 。 13 ﹁ 浄 ﹂ 字 を ﹁ 静 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 不 浄 4 ︵ 不 浄 0 ・ 不 静 4 ︶ ● 47. 寛 弘 元 年 六 月 十 八 日 不 静 依 有 恐 召 晴 明 光 榮 等 令 占 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 3 例 ﹁ 不 浄 ﹂ と い う 言 葉 の 場 合 の み ﹁ 静 ﹂ 字 と 例 外 な く 通 用 さ せ て い る 。 ﹁ 不 浄 ﹂ と い う 概 念 よ り も 、 そ の ﹁ 不 浄 ﹂ に よ り ﹁ 心 が 穏 や か で な い ﹂ と い う 意 味 で ﹁ 不 静 ﹂ と 表 記 し て い る の で あ ろ う か 。 14 ﹁ 授 ﹂ 字 を ﹁ 受 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 授 24 ︵ 授 10 ・ 受 14 ︶ ● 48. 寛 弘 元 年 二 月 七 日 春 宮 大 夫 少 童 見 物 来 少 将 用 野 釼 受 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 13 例 ◆ 勅 授 1 ︵ 勅 授 0 ・ 勅 受 1 ︶ ● 49. 寛 弘 八 年 六 月 十 三 日 勅 受 余 加 随 身 等 宣 旨 下 ◆ 教 授 1 ︵ 教 授 0 ・ 教 受 1 ︶ ● 50. 長 和 元 年 五 月 廿 三 日 教 受 二 人 三 綱 修 理 別 當 各 三 疋 授 受 の 別 は 文 全 体 を 見 な け れ ば 意 味 が わ か ら な い の で 、 文 字 だ け を 見 て 通 用 か ど う か を 判 断 す る の は 無 理 で あ る 。 ま た 、 文 全 体 を 見 て も 判 断 で き な い 場 合 も 時 に 存 在 し 、 解 釈 次 第 で ﹁ 授 ﹂ 字 と も ﹁ 受 ﹂ 字 と も な り う る 場 合 が あ る 。 授 受 の 問 題 に 関 し て は 今 後 の 課 題 と し て 後 日 の 機 会 に 譲 り た い 。 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 三 六

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15 ﹁ 旧 ﹂ 字 を ﹁ 久 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 旧 年 1 ︵ 旧 年 0 ・ 久 年 1 ︶ ● 51. 長 保 二 年 正 月 一 日 是 久 年 依 申 諸 卿 定 也 ◆ 旧 主 3 ︵ 旧 主 0 ・ 久 主 3 ︶ ● ● 52. 寛 弘 八 年 六 月 十 三 日 但 久 主 不 御 南 殿 又 御 表 間 久 主 無 御 出 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 16 ﹁ 救 ﹂ 字 を ﹁ 久 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 経 救 5 ︵ 経 救 1 ・ 経 久 3 ・ 経 久 の 繰 返 記 号 ︹ 経 久 ! ! ︺ 1 ︶ ︿ 僧 名 ﹀ ● ● 53. 寛 弘 元 年 三 月 廿 九 日 又 不 入 経 久 依 出 憐 因 件 入 経 久 ! ! 觀 印 尤 美 也 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 ﹁ 旧 ﹂ 字 と ﹁ 救 ﹂ 字 を ﹁ 久 ﹂ 字 で 通 用 し た 例 。 ﹁ 旧 主 ﹂ と は 一 条 天 皇 の こ と を 指 す 。 寛 弘 八 年 六 月 十 三 日 に 一 条 天 皇 は 三 条 天 皇 に 譲 位 す る が 、 用 例 52. は そ の 日 の 記 事 で あ る 。 一 条 天 皇 を ﹁ 久 ︵ 旧 ︶ 主 ﹂ 、 三 条 天 皇 を ﹁ 新 帝 ﹂ と 道 長 は 表 記 し て お り 、 ﹁ 旧 ﹂ 字 を 存 命 中 の 天 皇 に 使 う こ と を 避 け た と 考 え ら れ な く も な い が 、 し か し ﹁ 旧 ﹂ 字 が 、 忌 避 せ ね ば な ら な い ほ ど の 悪 い 意 味 を 持 つ 字 で あ る の か ど う か 、 疑 問 で あ る 。 そ れ よ り も 、 ﹁ 旧 年 ﹂ や 僧 侶 の 名 で あ る ﹁ 経 救 ﹂ に も ﹁ 久 ﹂ 字 を 通 用 さ せ て い る こ と を 考 え る と 、 ヨ ミ ﹁ 久 ﹂ 字 は ﹁ キ ウ ﹂ と い う 音 を 代 表 す る 漢 字 と し て 使 用 さ れ た と 考 え ら れ る の で は な か ろ う か 。 17 ﹁ 孝 ﹂ 字 を ﹁ 教 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 孝 経 ・ 御 注 孝 経 1 ・ 孝 経 1 ︵ 孝 経 0 ・ 教 経 1 ︶ ● 54. 寛 弘 五 年 九 月 十 一 日 酉 時 右 少 弁 廣 業 讀 書 教 経 朝 夕 同 ◆ 説 孝 8 ︵ 説 孝 7 ・ 説 教 1 ︶ ︿ 人 名 ﹀ ● 55. 寛 弘 五 年 十 月 四 日 還 著 後 大 弁 遅 著 説 教 間 史 博 愛 早 出 進 文 ◆ 孝 養 1 ︵ 孝 養 0 ・ 教 養 1 ︶ 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 三 七

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● 56. 長 和 元 年 正 月 廿 七 日 子 譲 父 依 教 養 免 給 ﹁ 孝 ﹂ 字 を ﹁ 教 ﹂ 字 で 通 用 し て い る 。 ﹁ 孝 経 ﹂ ︵ カ ウ キ ヤ ウ ︶ の 例 は 字 音 ﹁ カ ウ ﹂ で 通 用 。 ﹁ 孝 養 ﹂ ︵ ケ ウ ヤ ウ ︶ の 例 は 字 音 ﹁ ケ ウ ﹂ で 通 用 。 ﹁ 説 孝 ﹂ は 人 名 で 、 和 訓 ﹁ と き た か ﹂ と 読 ん だ か 。 し か し 有 職 読 み の よ う に 字 音 で 読 ん だ 可 能 性 も 否 定 で き な い 。 18 ﹁ 簿 ﹂ 字 を ﹁ 薄 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 名 簿 3 ︵ 名 簿 0 ・ 名 薄 3 ︶ ● 57. 寛 弘 元 年 正 月 六 日 令 奏 中 宮 御 給 名 薄 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 2 例 ヨ ミ ﹁ 簿 ﹂ 字 と ﹁ 薄 ﹂ 字 は 字 音 が 異 な る た め 、 音 の 通 用 で は な い と 考 え る こ と も 可 能 で あ る が 、 一 応 採 録 す る こ と と し た 。 な お 、 佐 藤 ︵ 一 九 八 〇 ︶ に は こ の 例 は 採 録 さ れ て い な い 。 ﹁ 薄 ﹂ 字 を ﹁ 簿 ﹂ 字 で 通 用 さ せ た 例 は 存 在 し な か っ た 。 ﹁ 薄 ﹂ 字 を 含 む そ の 他 の 語 は 、 ﹁ 薄 物 ﹂ 2 例 、 ﹁ 薄 色 ﹂ 1 例 で あ っ た 。 道 長 は 日 記 中 で ﹁ 薄 ﹂ ・ ﹁ 簿 ﹂ 両 字 を 、 全 て ﹁ 薄 ﹂ 字 で 表 記 し て い る 。 19 ﹁ 惟 ﹂ 字 を ﹁ 宣 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 惟 規 4 ︵ 惟 規 3 ・ 宣 規 1 ︶ ︿ 人 名 ﹀ ● 58. 寛 弘 元 年 正 月 十 一 日 女 御 尊 子 仰 可 作 位 記 由 少 内 記 宣 規 ヨ ミ こ の 日 の 記 事 に 書 か れ た 人 物 は 藤 原 惟 規 ︵ の ぶ の り ︶ と い う 名 で あ る が 、 名 前 に 使 用 さ れ る ﹁ 惟 ﹂ 字 は 普 通 ﹁ こ れ ﹂ と い う 音 に ヨ ミ な る こ と が 多 い 。 実 際 、 日 記 中 に 現 れ る 惟 規 以 外 の ﹁ 惟 ﹂ 字 を 持 つ 人 名 は 、 全 て ﹁ こ れ ﹂ と い う 音 で あ り 、 ﹁ 惟 ﹂ 字 を ﹁ の ぶ ﹂ と 読 ま せ る 名 は 惟 規 だ け で あ る 。 そ の 惟 規 の 名 が 道 長 に よ っ て 、 初 め て 日 記 に 書 か れ た の が 右 の 日 の 記 事 で あ り 、 道 長 は ﹁ の ぶ の ヨ ミ り ﹂ と い う 音 か ら ﹁ 宣 規 ﹂ と 表 記 し た 。 し か し そ の 後 、 道 長 は こ の ﹁ 宣 ﹂ 字 が 誤 り で あ る こ と を 知 っ た か 、 誤 り で あ る と 気 づ い た よ う で 、 こ れ 以 降 ﹁ の ぶ の り ﹂ の 名 は す べ て ﹁ 正 書 ﹂ の ﹁ 惟 規 ﹂ で 表 記 し て い る 。 ヨ ミ 右 の 例 は 人 名 の 音 に 対 し て 、 そ れ を 代 表 す る 漢 字 ︵ 高 い 確 率 で 使 用 さ れ る 漢 字 ︶ を 充 て た も の で あ る 。 こ れ は 現 代 の 我 々 も 、 特 に 人 名 を 漢 字 表 記 す る 必 要 が あ る 場 合 、 仮 の 措 置 と し て は よ く 行 う こ と で あ る と 考 え ら れ る 。 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 三 八

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20 ﹁ 宣 ﹂ 字 を ﹁ 信 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 頼 宣 2 ︵ 頼 宣 0 ・ 頼 信 2 ︶ ︿ 人 名 ﹀ ● 59. 寛 弘 八 年 四 月 廿 一 日 使 文 章 生 頼 信 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 21 ﹁ 業 ﹂ 字 を ﹁ 成 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 親 業 2 ︵ 親 業 0 ・ 親 成 2 ︶ ︿ 人 名 ﹀ ● 60. 寛 弘 八 年 四 月 十 三 日 右 近 将 監 親 成 令 奉 仕 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 22 ﹁ 成 ﹂ 字 を ﹁ 重 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 頼 成 2 ︵ 頼 成 0 ・ 頼 重 2 ︶ ︿ 人 名 ﹀ ● 61. 寛 弘 八 年 四 月 十 五 日 所 者 頼 重 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 ヨ ミ 20 か ら 22 ま で 、 19 と 同 じ く 、 あ る 音 に 対 し て 、 代 表 的 と 思 わ れ る 字 で 通 用 さ せ た 例 で あ る 。 な お 、 全 て 人 名 で あ る 。 以 下 、 順 に ヨ ミ ヨ ミ 見 て い く と 、 20 は ﹁ の ぶ ﹂ と い う 音 に 対 し て 、 最 も 代 表 的 と 言 え る で あ ろ う ﹁ 信 ﹂ 字 、 21 は ﹁ な り ﹂ と い う 音 に 対 し て 、 ﹁ 成 ﹂ 字 、 ヨ ミ 22 は ﹁ し げ ﹂ と い う 音 に 対 し て 、 ﹁ 重 ﹂ 字 で も っ て そ れ ぞ れ 通 用 さ せ て い る 。 23 ﹁ 妻 ﹂ 字 を ﹁ 妾 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 妻 7 ︵ 妻 0 ・ 妾 7 ︶ ● 62. 寛 弘 四 年 七 月 十 四 日 出 居 座 在 東 妾 云 ! ⋮ ⋮ 同 様 に 他 3 例 ﹁ つ ま ﹂ と い う 語 に は ﹁ 配 偶 者 ﹂ と い う 意 味 と ﹁ 建 物 や モ ノ の 側 面 ﹂ と い う 意 味 が あ る が 、 道 長 は 意 味 の 区 別 な く 全 て ﹁ 妾 ﹂ 字 で 表 記 し て い る 。 因 み に 、 日 記 中 に 出 現 す る ﹁ つ ま ﹂ は 全 部 で 7 例 で あ り 、 そ の 中 、 ﹁ 配 偶 者 ﹂ の 意 味 で 使 用 さ れ た も の が 3 例 、 ﹁ 建 物 の 側 面 ﹂ の 意 味 で の 使 用 が 2 例 、 ﹁ 机 の 側 面 ﹂ の 意 味 で の 使 用 が 2 例 と い う 結 果 で あ っ た 。 右 の 用 例 62. と そ の 他 同 様 の 例 3 例 は 、 ﹁ 配 偶 者 ﹂ の 意 味 で 使 用 さ れ た ﹁ つ ま ﹂ を 除 い た ﹁ つ ま ﹂ で あ る 。 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 三 九

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24 ﹁ 仮 ﹂ 字 を ﹁ 借 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 仮 10 ︵ 仮 9 ・ 借 1 ︶ ● 63. 長 和 元 年 五 月 廿 七 日 借 除 皇 太 后 宮 御 服 給 ◆ 仮 屋 2 ︵ 仮 屋 0 ・ 借 屋 2 ︶ ● 64. 寛 弘 四 年 八 月 十 三 日 借 屋 数 屋 立 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 ﹁ 仮 に ﹂ と い う 副 詞 で あ る が 、 そ れ を ﹁ 借 ﹂ 字 で 通 用 さ せ て い る 。 ﹁ 仮 ﹂ 字 に ﹁ 借 り る ﹂ と い う 意 味 が あ り 、 ﹁ 借 ﹂ 字 に も ﹁ 仮 に ﹂ の 意 味 が あ り 、 通 用 が 起 こ り う る 関 係 で は あ る が 、 し か し 、 ﹁ 正 書 ﹂ の 例 が 多 く 、 こ の 通 用 は あ く ま で も 例 外 的 な も の と 考 え ら れ る 。 一 方 で ﹁ 仮 屋 ﹂ は ﹁ 仮 に ﹂ と は 事 情 が 異 な っ て い る 。 用 例 数 は 2 例 と 少 な い も の の 、 全 て ﹁ 借 屋 ﹂ で 表 記 さ れ て い る 。 ﹃ 日 本 国 語 大 辞 典 ﹄ を 調 べ て み る と 、 ﹁ 仮 に 作 っ た 家 。 ま に あ わ せ の 家 。 借 家 ⑾ 。 ﹂ と あ り 、 ま た ﹁ 借 屋 ﹂ の 項 目 も 存 在 し 、 ﹁ ﹃ か り や ︵ 仮 屋 ︶ ﹄ に 同 じ ⑿ 。 ﹂ と あ る 。 峰 岸 の 注 に 従 い ﹁ 仮 ﹂ 字 を ﹁ 借 ﹂ 字 で 通 用 し た 例 と し た が 、 も し か す る と こ れ は 通 用 で は な く 、 ﹁ 正 書 ﹂ の 許 容 範 囲 内 の 表 記 だ っ た の で は あ る ま い か 。 25 ﹁ 襲 ﹂ 字 を ﹁ 重 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 下 襲 ・ 下 襲 8 ︵ 下 襲 2 ・ 下 重 6 ︶ ・ 御 下 襲 4 ︵ 御 下 襲 0 ・ 御 下 重 4 ︶ ● 65. 寛 弘 六 年 十 一 月 八 日 祭 使 忠 経 許 舞 人 下 重 送 ︵ 下 襲 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 5 例 ● 66. 寛 仁 二 年 正 月 三 日 改 表 衣 御 下 重 ︵ 御 下 襲 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 3 例 ﹁ し た が さ ね ﹂ を ﹁ 下 重 ﹂ と 書 い た 例 で あ る が 、 ﹃ 日 本 国 語 大 辞 典 ﹄ を 見 る と ﹁ し た が さ ね ﹂ の 項 に ﹁ 下 襲 ﹂ 、 ﹁ 下 重 ﹂ の 両 表 記 が あ り ⒀ 、 24 の 例 と 同 じ く 、 通 用 で は な く 、 ﹁ 正 書 ﹂ の 許 容 範 囲 内 の 表 記 だ っ た の で は あ る ま い か 。 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 四 〇

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26 ﹁ 沈 ﹂ 字 を ﹁ 深 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 沈 ・ 沈 2 ︵ 沈 0 ・ 深 2 ︶ ・ 沈 香 2 ︵ 沈 香 1 ・ 深 香 1 ︶ ● 67. 寛 弘 二 年 五 月 廿 四 日 両 相 府 献 念 数 右 府 深 内 府 紫 檀 ︵ 沈 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 ● 68. 寛 弘 元 年 正 月 十 一 日 以 深 香 念 数 為 志 ︵ 沈 香 ︶ ﹁ 沈 香 ︵ ヂ ム カ ウ ︶ ﹂ を ﹁ 深 香 ︵ ジ ム カ ウ ︶ ﹂ と 表 記 し た 例 。 漢 字 の 持 つ 意 味 に お い て 、 ﹁ 沈 ﹂ と ﹁ 深 ﹂ が 指 し 示 す 方 向 │ │ 両 字 と も に ﹁ 下 向 き の ベ ク ト ル ﹂ を 持 つ │ │ が 良 く 似 て い る と い え る 。 ま た 字 形 で は 、 ﹁ 沈 ﹂ 字 の 異 体 字 ﹁ " ﹂ 字 に ﹁ 木 ﹂ 字 を 加 え る と ﹁ 深 ﹂ の よ う な 字 と な る 。 も し 、 ﹁ 沈 む ︵ 香 ︶ 木 ﹂ を 合 字 に し て ﹁ 深 ﹂ 字 と 表 記 す る よ う な 一 種 の 文 字 遊 び が 、 平 安 中 期 に 行 わ れ て い た の だ と し た ら 、 非 常 に 興 味 深 い こ と で あ る が 、 し か し 極 め て 危 う い 、 妄 想 と も 言 え る 憶 測 で あ る 。 表 面 上 は 四 つ 仮 名 の 混 淆 例 の よ う に な っ て し ま っ て は い る が 、 ﹁ 沈 ﹂ と ﹁ 深 ﹂ の 、 そ れ ぞ れ の 漢 字 の 持 つ 意 味 が 相 互 に 影 響 を 与 え た 結 果 生 じ た 表 記 で あ る と 考 え ら れ る の で は な か ろ う か 。 27 ﹁ 臈 ﹂ 字 を ﹁ 労 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 上 臈 3 ︵ 上 臈 1 ・ 上 労 2 ︶ ● 69. 寛 弘 元 年 正 月 十 四 日 上 勞 不 被 召 問 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 ◆ 一 臈 1 ︵ 一 臈 0 ・ 一 労 1 ︶ ● 70. 長 和 元 年 正 月 廿 七 日 抜 出 近 衛 次 将 至 年 勞 并 所 ! 一 勞 者 如 常 臈 は ﹁ ラ フ ﹂ 、 ﹁ 労 ﹂ は ﹁ ラ ウ ﹂ で あ る が 、 p 入 声 の 区 別 は 消 滅 し て い た の で あ ろ う か 。 判 断 す る す べ を 持 た な い の で 、 こ こ で は こ れ 以 上 言 及 し な い 。 字 音 の 近 さ よ り も 、 年 功 に よ る ﹁ 臈 ﹂ と ﹁ 年 労 ﹂ と の 意 味 の 近 さ ゆ え に 生 じ た 表 記 と 考 え る 方 が 穏 当 で あ ろ う 。 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 四 一

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28 ﹁ 簀 ﹂ 字 を ﹁ 責 ﹂ ・ ﹁ ! ﹂ 字 で 通 用 ◆ 簀 子 ・ 簀 子 7 ︵ 簀 子 2 ・ " 子 1 ・ 責 子 2 ・ ! 子 2 ︶ ・ 簀 子 敷 7 ︵ 簀 子 敷 2 ・ 責 子 敦 1 ・ ! 子 敷 3 ・ ! 子 敦 1 ︶ ▲ ● 71. 寛 弘 四 年 七 月 十 四 日 敦 ︹ 敷 ︺ 王 卿 座 以 責 子 ︵ 簀 子 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 ● ▲ 72. 寛 弘 五 年 十 月 十 六 日 中 央 間 " 子 敦 ︹ 敷 ︺ 円 座 ︵ 簀 子 ︶ ● ▲ 73. 寛 弘 元 年 五 月 廿 七 日 此 間 候 王 卿 責 子 敦 ︹ 敷 ︺ 有 数 盃 ︵ 簀 子 敷 ︶ ※ ﹁ 簀 ﹂ 字 を 含 む そ の 他 の 語 ・ 簀 薦 4 ︵ 簀 薦 1 ・ ! 薦 3 ︶ ヨ ミ ﹁ " 子 ﹂ の 例 は 増 画 と 言 え る で あ ろ う 。 ﹁ す の こ ﹂ と 読 む も の で あ る か ら 、 ﹁ 責 子 ﹂ に 関 し て は 、 音 に よ る 通 用 で は な く 、 省 画 で あ る 。 29 ﹁ 渡 ﹂ 字 を ﹁ 度 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 渡 95 ︵ 渡 92 ・ 度 5 ︶ ● 74. 寛 弘 四 年 十 二 月 廿 二 日 各 論 月 度 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 4 例 ◆ 渡 殿 16 ︵ 渡 殿 14 ・ 度 殿 1 ・ 度 1 ︶ ● 75. 寛 仁 二 年 正 月 三 日 即 従 南 殿 与 東 對 度 殿 作 打 橋 ︵ 渡 殿 ︶ ● 76. 寛 仁 二 年 三 月 七 日 東 南 度 ︵ 殿 ︶ 上 達 部 殿 上 人 儲 座 ︵ 渡 殿 ︶ 30 ﹁ 度 ﹂ 字 を ﹁ 渡 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 度 者 8 ︵ 度 者 6 ・ 渡 者 2 ︶ ● 77. 寛 弘 四 年 十 二 月 二 日 渡 者 給 使 右 近 中 将 公 信 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 四 二

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31 ﹁ 絃 ﹂ 字 を ﹁ ! ﹂ 字 で 通 用 ◆ 管 絃 3 ︵ 管 絃 1 ・ 管 ! 2 ︶ ● 78. 寛 仁 二 年 閏 四 月 六 日 通 夜 有 管 ! 事 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 ﹁ 管 ﹂ 字 に 引 き ず ら れ て 糸 偏 か ら 竹 冠 に な っ た も の 。 冠 揃 。 32 ﹁ 掌 ﹂ 字 を ﹁ 常 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 掌 侍 ・ 掌 侍 3 ︵ 掌 侍 0 ・ 常 侍 3 ︶ ・ 前 掌 侍 1 ︵ 前 掌 侍 0 ・ 前 常 侍 1 ︶ ● ▲ 79. 寛 弘 七 年 閏 二 月 六 日 常 侍 綾 卦 ︹ 褂 ︺ 袴 ︵ 掌 侍 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 2 例 ● 80. 寛 弘 二 年 五 月 二 日 入 量 能 宿 所 盗 人 籠 前 常 侍 ︵ 右 ︶ 近 家 ︵ 前 掌 侍 ︶ ﹁ 掌 侍 ﹂ と い う 語 は ﹁ 正 書 ﹂ が 全 く 出 て こ ず 、 全 て ﹁ 常 侍 ﹂ と 表 記 さ れ て い る 。 他 の ﹁ 掌 ﹂ 字 を 含 む 語 は ﹁ 官 掌 ﹂ 2 例 、 ﹁ 省 掌 ﹂ 2 例 で あ る が 、 そ れ ら は 全 て ﹁ 正 書 ﹂ で 書 か れ て い る 。 ﹁ 掌 侍 ﹂ は ﹁ な い し の じ ょ う ﹂ や ﹁ シ ヤ ウ ジ ﹂ と 読 む が 、 ﹁ シ ヤ ウ ジ ﹂ は ヨ ミ ヨ ミ ﹁ 尚 侍 ﹂ ︵ な い し の か み ・ シ ヤ ウ ジ ・ シ ヤ ウ シ ︶ と 音 が 衝 突 す る 可 能 性 が あ る た め 、 ﹁ な い し の じ ょ う ﹂ の ﹁ じ ょ う ﹂ と い う 音 も 手 伝 っ て ﹁ 常 侍 ﹂ と 表 記 さ れ る よ う に な っ た の で は な か ろ う か 。 ま た 、 そ こ に は ﹁ 常 侍 ﹂ す る と い う 意 味 も 手 伝 っ て い る よ う に も 考 え ら れ る 。 33 ﹁ 桟 ﹂ 字 を ﹁ 散 ﹂ ・ ﹁ 狭 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 桟 敷 6 ︵ 桟 敷 0 ・ 散 敷 2 ・ 狭 敷 1 ・ 狭 食 3 ︶ ● 81. 寛 弘 八 年 四 月 十 八 日 御 一 条 家 散 敷 室 ︵ 桟 敷 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 1 例 ● 82. 長 和 元 年 四 月 廿 四 日 渡 狭 敷 室 ︵ 桟 敷 ︶ ● ▲ 83. 寛 仁 二 年 四 月 十 九 日 渡 狭 食 ︹ 敷 ︺ 見 物 ︵ 桟 敷 ︶ ⋮ ⋮ 同 様 に 他 2 例 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 四 三

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34 ﹁ 敷 ﹂ 字 を ﹁ 食 ﹂ 字 で 通 用 ◆ 桟 敷 6 ︵ 桟 敷 0 ・ 散 敷 2 ・ 狭 敷 1 ・ 狭 食 3 ︶ ● 84. 寛 仁 二 年 四 月 十 九 日 渡 狭 食 見 物 ⋮ ⋮ 同 様 に 他 2 例 ﹁ さ じ き ﹂ の ﹁ じ き ﹂ を 字 音 ﹁ ジ キ ﹂ で 通 用 さ せ た 例 で あ る 。

ヨ ミ ヨ ミ 音 の 通 用 に 関 し て 特 徴 的 な も の に 限 り 用 例 を 挙 げ た が 、 全 て の 用 例 の 詳 細 な 検 討 は 未 だ で き て い な い 。 し か し 、 音 の 通 用 と 思 わ れ る も の 、 中 で も 特 徴 的 な も の を 見 た と き に 幾 つ か の 興 味 深 い 点 が 見 え て き た 。 ヨ ミ ま ず 、 道 長 は 漢 字 使 用 の 際 に 、 字 音 ・ 和 訓 の 別 を 問 わ ず 、 特 定 の 音 に 対 し て 強 く 結 び 付 い て い る 漢 字 を 持 っ て い る ヨ ミ こ と が あ る 。 そ れ は 特 に 人 名 を 表 記 す る 場 合 に 顕 著 で あ る 。 ﹁ 音 の 代 表 漢 字 ﹂ と 呼 ん で も よ い か も し れ な い 。 こ れ は ヨ ミ 現 代 の 我 々 も 人 名 を 表 記 す る 場 合 に は 、 同 様 に あ て は ま る こ と で あ り 、 あ る 音 に 対 し て 強 く 結 び 付 い て い る 漢 字 が あ ヨ ミ る で あ ろ う と 思 わ れ る 。 た だ し 、 そ れ は 全 て の 人 が あ る 音 に 対 し て 同 じ 字 を 想 起 す る と い う こ と で は な い 。 道 長 の 場 合 で あ れ ば 、 和 訓 ﹁ な り ﹂ に 対 し て 強 く 結 び 付 い て い た の が ﹁ 成 ﹂ 字 で あ り 、 和 訓 ﹁ し げ ﹂ に 対 し て は ﹁ 重 ﹂ 字 だ っ た の で あ ろ う 。 字 音 の 場 合 だ と 、 字 音 ﹁ キ ウ ﹂ に 対 し て の ﹁ 久 ﹂ 字 が 例 と し て 挙 げ ら れ よ う 。 通 用 が 起 こ る 際 に は 、 通 用 を 起 こ さ せ る 要 因 と な る も の が 存 在 し て い る こ と が 多 い 。 何 が 要 因 に な る か は そ の 時 に よ り 状 況 に よ り 様 々 で あ る が 、 最 も 理 解 し や す い も の の 一 例 を 挙 げ る な ら ば 、 通 用 を 起 こ し て い る 文 字 の 前 後 に 登 場 す る 文 字 の 影 響 で あ る 。 前 後 の 文 字 の 字 形 に 牽 引 さ れ て 、 本 来 書 か れ る べ き 字 形 で は な く な っ て し ま っ た も の が い く つ か 見 ら れ た 。 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 四 四

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ま た 、 文 字 の 意 味 や 語 の イ メ ー ジ と い う も の も 通 用 に 大 き く 関 わ っ て い る こ と が わ か っ た 。 例 え ば ﹁ 沈 ﹂ 字 を ﹁ 深 ﹂ と 表 記 し た 例 な ど が そ う で あ る 。 さ ら に 、 心 理 的 な も の が 要 因 と な る も の も あ る よ う に 思 わ れ る 。 ﹁ 不 静 ﹂ な ど は 書 か れ た 当 時 の 心 の 動 き が 見 え て く る よ う で 非 常 に 興 味 深 い 。 通 用 の 際 に 選 ば れ る 漢 字 と い う も の は 、 ﹁ 形 ﹂ 、 ﹁ 音 ﹂ 、 ﹁ 義 ﹂ が 近 似 し て い れ ば 何 で も 使 え る 、 と い う わ け で は な い こ と も 分 っ て き た 。 お そ ら く は 当 時 の 貴 族 社 会 内 で 許 容 さ れ て い る ﹁ 通 用 の 範 囲 ﹂ と い う も の が あ っ た と 考 え ら れ 、 そ の 範 囲 外 の 漢 字 は 、 御 堂 関 白 記 が 極 め て 私 的 な 性 格 を 持 つ も の で あ っ た と し て も 、 殆 ど 選 ば れ る こ と は な い と 考 え ら れ る 。 そ し て 、 道 長 は 決 し て 誤 っ た 表 記 ば か り し て い る わ け で は な い と い う こ と が 、 調 査 を 進 め る ご と に 理 解 さ れ て き た 。 何 か 要 因 が あ っ て そ れ に 牽 引 さ れ た 結 果 が 誤 記 誤 用 の よ う に ﹁ 表 面 上 ﹂ 見 え て し ま う の で あ る 。 道 長 は 決 し て ず っ と 書 き 間 違 い を 犯 し て い る わ け で は な い 。 誤 り が 多 い の は 確 か に 多 い の か も し れ な い が 、 し か し そ う 判 断 す る 前 に 、 そ れ 以 外 の 大 量 の ﹁ 正 書 ﹂ が あ る 、 と い う こ と を き ち ん と 押 さ え て お か な け れ ば 、 冒 頭 に も 述 べ た よ う に 、 御 堂 関 白 記 に は 誤 字 脱 字 が 多 く 、 そ し て そ の 修 正 跡 も ま た 多 い 、 と い う 、 極 め て 限 定 的 な 、 且 つ 、 表 面 的 な 判 断 を 下 し て し ま う こ と に な る の で あ る 。 御 堂 関 白 記 自 筆 本 は 現 存 す る 多 く の 男 性 貴 族 の 日 記 と 異 な り 清 書 さ れ て い な い 。 つ ま り 草 稿 と い え る よ う な 状 態 で あ り 、 我 々 の 手 控 え と し て の 手 帳 や ノ ー ト と 変 わ ら な い 。 そ の こ と に 対 す る 配 慮 な し に 表 面 的 な 事 象 だ け で 道 長 の 文 字 遣 い に つ い て 評 価 す る こ と は 、 や は り 適 切 と は 言 え な い で あ ろ う 。 ヨ ミ 本 稿 は 、 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に 関 し て 、 で き る だ け 正 確 な 用 例 の 採 録 と 、 そ の 用 例 数 の 調 査 を 第 一 義 と し た た め 、 こ れ だ け で は 単 な る デ ー タ 集 に す ぎ な い 。 今 後 は 、 こ れ を 基 に 各 用 例 の 詳 細 検 討 、 考 察 に 入 っ て い か な け れ 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 四 五

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ば な ら な い 。 そ の 際 、 御 堂 関 白 記 自 筆 本 だ け で は 当 然 の こ と な が ら 、 道 長 の 表 記 行 為 や 、 表 記 に 際 し て の 思 考 等 に 関 し て 、 核 心 に 近 づ く よ う な 考 察 を す る こ と が で き な い 。 御 堂 関 白 記 古 写 本 の 調 査 、 そ し て 、 同 時 期 の 日 記 で あ る 小 右 記 、 権 記 の 調 査 、 さ ら に 辞 書 類 の 調 査 な ど を ひ と つ ず つ 精 確 に 行 い つ つ 、 そ れ ら 別 の 資 料 を 通 し て 、 再 び 御 堂 関 白 記 を 眺 め て み る と い う よ う な 多 面 的 な 調 査 、 考 察 を し て い か な け れ ば な ら な い 。 す べ て 今 後 の 課 題 と し た い 。 注 ⑴ た と え ば 、 高 松 政 雄 ︵ 一 九 六 二 ︶ な ど 。 ⑵ 本 稿 で は 、 我 々 が 正 し い と 思 っ て い る と こ ろ の 表 記 を ﹁ 規 範 的 表 記 ﹂ と 呼 び 、 そ こ か ら 外 れ る も の を ﹁ 変 則 的 表 記 ﹂ と 呼 ぶ こ と と す る 。 ヨ ミ ⑶ こ こ で い う ﹁ 音 ﹂ と は 漢 字 の 所 謂 字 音 の み を 指 す の で は な く 、 字 音 ・ 和 訓 を 合 わ せ た 、 漢 字 の ﹁ 読 み ﹂ の 事 を 指 す 。 ⑷ 勿 論 、 用 例 数 の み で 変 則 的 表 記 で あ る の か 、 ま た は 誤 記 誤 用 で あ る か ど う か を 判 断 す る の は 無 理 で あ る が 、 用 例 数 の 多 少 が 、 誤 記 誤 用 か ど う か を 判 断 す る 上 で の 、 あ る 程 度 の 指 標 に は な り う る と 筆 者 は 考 え る 。 ⑸ 佐 藤 ︵ 一 九 八 〇 ︶ に よ る と ﹁ 本 来 書 か れ て あ る 筈 の 文 字 ﹂ と い う こ と だ が 、 規 範 的 表 記 と い う 言 葉 を 加 え る こ と と し た 。 ⑹ ﹃ 日 本 国 語 大 辞 典 ﹄ に ﹁ 泰 伯 ﹂ の 項 無 し 。 ﹃ 国 史 大 辞 典 ﹄ の ﹁ 泰 伯 説 ﹂ 項 参 照 ︵ 八 巻 p.857 ︶ ⑺ 以 下 、 読 み の 表 記 は 全 て ﹃ 日 本 国 語 大 辞 典 ﹄ に よ る 。 道 長 が そ う 読 ん だ か ど う か ま で は わ か ら な い 。 ⑻ ﹃ 国 史 大 辞 典 ﹄ ﹁ 論 義 ﹂ の 項 参 照 ︵ 十 四 巻 p.828 ︶ ⑼ 増 画 は 、 増 画 の 結 果 、 譌 字 と な る 例 が 多 い が 、 ﹁ 列 ﹂ 字 が ﹁ 例 ﹂ 字 と 表 記 さ れ る よ う な 例 も あ り 、 ﹁ 義 ﹂ 字 を ﹁ 儀 ﹂ 字 と 表 記 し た も の も 一 応 増 画 と し て 良 い と 思 わ れ る 。 ⑽ ﹁ 議 所 ﹂ の 例 も ﹁ 叙 位 議 ﹂ に 関 す る 文 中 に 登 場 す る も の は ﹁ 儀 所 ﹂ で あ り 、 ﹁ 除 目 ﹂ に 関 す る も の は ﹁ 正 書 ﹂ の ﹁ 議 所 ﹂ で あ り 、 文 脈 に よ り 明 確 に 分 か れ て い た 。 ⑾ ﹃ 日 本 国 語 大 辞 典 ﹄ ﹁ 仮 屋 ﹂ の 項 参 照 ︵ 三 巻 p.1127 ︶ ⑿ ﹃ 日 本 国 語 大 辞 典 ﹄ ﹁ 借 家 ・ 借 屋 ﹂ の 項 参 照 ︵ 三 巻 p.1128 ︶ ⒀ ﹃ 日 本 国 語 大 辞 典 ﹄ ﹁ 下 襲 ・ 下 重 ﹂ の 項 参 照 ︵ 六 巻 p.753 ︶ 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 四 六

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参 考 文 献 ・ ﹃ 日 本 国 語 大 辞 典 第 二 版 ﹄ ︵ 小 学 館 二 〇 〇 〇 年 ∼ 二 〇 〇 二 年 ︶ ・ ﹃ 国 史 大 辞 典 ﹄ ︵ 吉 川 弘 文 館 一 九 七 九 年 ∼ 一 九 九 七 年 ︶ ・ 沖 森 卓 也 ・ 三 省 堂 編 修 所 ︵ 編 ︶ ﹃ 三 省 堂 五 十 音 引 き 漢 和 辞 典 ﹄ ︵ 三 省 堂 二 〇 〇 八 年 ︶ ・ 陽 明 文 庫 ︵ 編 ︶ ﹃ 記 録 文 書 篇 第 一 輯 御 堂 関 白 記 一 ・ 二 ﹄ ︵ 思 文 閣 出 版 一 九 八 三 年 ︶ ・ 峰 岸 明 ︵ 編 ︶ ﹃ 陽 明 文 庫 蔵 本 御 堂 関 白 記 自 筆 本 総 索 引 ︵ 一 ・ 二 ︶ 古 典 籍 索 引 叢 書 第 十 四 ・ 第 十 五 巻 ﹄ ︵ 汲 古 書 院 一 九 九 六 年 ︶ ・ 山 中 裕 ︵ 編 ︶ ﹃ 御 堂 関 白 記 全 注 釈 ﹄ ︵ 二 〇 〇 三 年 ∼ 二 〇 一 二 年 ︶ ・ 倉 本 一 宏 ﹃ 藤 原 道 長 ﹁ 御 堂 関 白 記 ﹂ ︵ 上 ・ 中 ・ 下 ︶ ﹄ ︵ 講 談 社 二 〇 〇 九 年 ︶ ・ 高 松 政 雄 ︵ 一 九 六 二 ︶ ﹁ 御 堂 関 白 記 の 実 態 │ │ 主 に 表 記 の 面 か ら 見 た │ │ ﹂ ﹃ 国 語 国 文 三 十 一 ・ 九 ﹄ ・ 小 山 登 久 ︵ 一 九 七 二 ︶ ﹁ 御 堂 関 白 記 自 筆 本 の 用 字 に つ い て │ │ 和 語 の 記 し 方 を 中 心 に ﹂ ﹃ ノ ー ト ル ダ ム 清 心 女 子 大 学 国 文 学 科 紀 要 ︵ 5 ︶ ﹄ ・ 佐 藤 稔 ︵ 一 九 八 〇 ︶ ﹁ ﹃ 御 堂 関 白 記 ﹄ に お け る 変 則 的 用 字 │ │ そ の 実 態 を 述 べ 字 音 資 料 と し て の 吟 味 に 及 ぶ │ │ ﹂ ﹃ 秋 田 大 学 教 育 学 部 研 究 紀 要 第 三 〇 号 ﹄ ・ 峰 岸 明 ︵ 一 九 九 六 ︶ ﹁ ﹃ 御 堂 関 白 記 ﹄ 自 筆 本 の 漢 字 字 体 記 述 に 関 す る 一 試 論 ﹂ ﹃ 横 浜 国 大 国 語 研 究 十 四 ﹄ ・ 峰 岸 明 ︵ 二 〇 〇 三 ︶ ﹁ ﹃ 御 堂 関 白 記 ﹄ 自 筆 本 の 漢 字 表 記 ﹂ ﹃ 東 京 成 徳 国 文 二 十 六 ﹄ ・ 高 橋 久 子 ︵ 二 〇 〇 四 ︶ ﹁ 平 安 時 代 の 文 献 に 見 ら れ る 漢 字 の 通 用 現 象 に 就 い て 其 二 ﹂ ﹃ 東 京 学 芸 大 学 紀 要 第 2 部 門 人 文 科 学 五 十 五 ﹄ ︵ や す だ ひ ろ し げ ・ 関 西 学 院 大 学 大 学 院 文 学 研 究 科 博 士 課 程 後 期 課 程 ︶ 御 堂 関 白 記 に お け る 音 の 通 用 に つ い て 一 四 七

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