特別支援教育における指導計画と記録等のデータベ
ース化とその校内共有に関する研究
著者
菅原 弘
学位授与機関
Tohoku University
学位授与番号
11301甲第15965号
URL
http://hdl.handle.net/10097/57687
平成25 年度 博士論文
特別支援教育における指導計画と記録等のデータベース化と
その校内共有に関する研究
Creation of a database of Teaching Plans/Records for Special Needs Education that can be shared within a school
東北大学大学院教育情報学教育部
1 本研究では、特別支援教育への転換の背景と一貫した支援体制の構築に向け た取組を踏まえ、指導計画と記録等をデータベース化し,校内で共有するシス テム(以下、データベース・システム)に対する導入意欲と導入基盤を確認し、 データベース・システムの有用性を検証した。有用性の検証には、特別支援教 育データベース(以下、TDB)を用いた。そして、結果をもとに、データベー ス・システムの運用上の留意点とTDB の改良点を整理した。 第 1 章では、特別支援教育への転換により、一貫した支援体制の構築が求め られ、個別の指導計画等の作成と活用が進められてきた過程を整理した。また、 学校のICT 環境の整備に伴って、校務支援システムの導入を含めた校務の情報 化が進められてきたことを確認した。また、一貫した支援体制の構築を目指す 特別支援教育においても、指導計画や指導記録等のデータベース化を含んだ Web を介した地域連携システム等が先導的に開発され、限られた地域で実用化 されていることを確認した。 児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた適切な指導と必要な支援および一 貫した支援体制の構築を目指す特別支援教育においては、個別の指導計画をは じめとする多様な指導計画と記録等を蓄積し、必要に応じて適正に分析して、 指導と支援、保護者や関係機関との連携に役立てる必要がある。そのためには、 現在の校内共有システムで導入可能な汎用性のあるデータベースを開発し、そ れを用いた校内共有システムを構築することが現実的な手立ての一つとなる。 以上を踏まえ、データベース・システムの運用上の留意点とTDB の改良点を 整理することを本研究の目的とすることを述べた。 第 2 章では、郵送法による全国の特別支援学校を対象とした質問紙調査の結 果をもとに、データベース・システムの導入意欲を確認し、データベース・シ ステムの導入基盤および運用上の留意点を検討する際の観点を整理した。 調査の結果、導入意欲が確認され、データベース・システムに対する期待と 不安に関する自由記述から、運用上の留意点を検討する際の観点が「セキュリ ティ対策の現状」「校内サーバでの情報の管理・共有化の状況」「職員の操作ス キル」「効率化が期待される作業」「有効な活用例」の5 点に整理された。 第3 章では、TDB に実装する内容と期待される活用法および改良点を把握す るため、幅広い種類の指導計画と記録等が作成されていると考えられる特別支
2 援学校を対象とした郵送法による質問紙調査をもとに、指導計画と記録等の種 類と活用目的を確認し、活用に際しての配慮について検討した。 調査の結果、指導要録、出席簿、学級経営案、週案、単元計画、教材・ワー クシート、指導案、日案、通信表、個別の指導計画、個別の教育支援計画、個 別の移行支援計画、日々の記録、保護者との連絡帳、相談記録、児童生徒の映 像・写真記録、「気になる子」対応記録、引継資料の18 項目の指導計画と指導 記録等が作成されていた。そして、それらは、実態把握(児童生徒理解)、評価 (評価および支援手がかりの検討)、保護者との共通理解(保護者との相談・ 共通理解)、支援者との共通理解(担任間・関係機関との情報共有)、授業計 画(計画立案・授業構想)資料作成(引継・研究等の資料作成)の 6 つの活用 目的で活用されていた。また、複数の項目が相互に参照されていることが示唆 された。以上から、TDB の実装内容として、上記の 18 項目が想定された。ま た、各項目の相互参照および目的に応じた情報の検索と抽出を効率化する実装 形態を工夫することが必要となる。 第4 章では、データベース・システムの導入基盤を確認し、TDB への各項目 の実装形態を検討し、現在の校内共有システムでのTDB の共有化に影響を及ぼ す条件を探るため、ICT 環境と電子化・共有化の現状等を調査し、その結果を 分析した。 第5章では、データベース・システムの有用性を検証し、運用上の留意点とTDB の改良点を整理することを目的として、指導と支援の振り返りと連携資料の作 成に関するユーザビリティ・テストの結果をまとめた。そして、記録分析と連 携資料作成に関する実践事例を併せて、データベース・システムに関する運用 上の留意点を整理した。 実践事例の選定にあたっては、TDBと併用することで記録分析が効率化する と考えられる表計算ソフトとテキストマイニング・ソフトを用いた事例を選定 した。また、データベース・システムが共同での吟味を想定していることから、 保護者との共通理解のための資料作成と校内での共通理解のための資料作成と いう観点でも事例を選定した。 ユーザビリティ・テストの結果、TDB は、従来の手法同様に正確な記入と参 照および一覧作成が可能であること、記入、参照、一覧作成に関して高い使用
3 性を有していることが示された。また、データベース・システムの主な活用目 的に関する主観評価も高い手法であることが確かめられた。そして実践事例に より、表計算ソフトやテキストマイニング・ソフトを併用することで、より客 観的な記録の要約や可視化が可能となることも示された。 以上から、データベース・システムが、指導や支援の振り返りと校内共有に 有用性が高いシステムであることが示された。そして、運用上の留意点として、 操作方法や活用方法についての周知と活用目的に応じた共有範囲の設定と誤使 用対策が考えられた。そして、記入法や活用例を示すなどの操作方法の理解を 促す改良をTDB に加え、データベース・システムの運用を通した有用性の検証 を複数の校種で実施することが今後の課題とされた。