第3学年〇組 技術・家庭科(家庭分野)学習指導案 1 題 材 「消費者の権利と責任」 2 指導観 ○ 変化の激しい経済社会や環境の中で,持続可能な社会の構築の気運が高まっている。そのような 状況において,未来を担う生徒たちは,知識や情報を活用し,多様化する市場において合理的かつ 倫理的な消費行動ができるようになることが求められている。 本題材では,消費生活と環境について,課題をもって,基礎的・基本的な知識を身に付け,消費 生活が環境や社会に及ぼす影響について理解を深め,自立した消費者としての責任ある行動を工夫 することができるようになることをねらいとしている。成人年齢が18歳に引き下げられる生徒た ちは,3年後には,保護者の同意なくクレジットカードを作ったりローンなどの契約を結んだりも できるようになる。生徒たちが適切な意思決定に基づいて行動できるようにすることは大切である と考える。また,消費者一人の行動が企業を動かすなど社会に影響を与える力をもつことを学べば, 生徒たちは,消費者としての自覚をもって責任ある行動をとろうとするようになると考える。この ように,賢い消費者として生活を工夫して,現代だけでなく将来にわたって住みよい世界を構築し ていこうとする意欲と態度を育成することは意義深い。 ○ 本学級の生徒は,小学校で,「物や金銭の使い方と買物」,「環境に配慮した生活」について学習 している。中学校では,食生活の学習において,節水やごみの軽減など調理方法を工夫して環境に 配慮した調理実習を行った。衣生活の学習においては,被服製作のエコバッグをじょうぶに作り, 長く使うことが持続可能な社会の構築につながるということを学んだ。しかし,エコクッキングや エコバッグの必要性を感じた生徒は多いものの,その視点を消費生活全体に広げることまではでき ていない。 事前のアンケート調査の結果によると,商品購入の際,参考にする情報として「価格を確認する」 と答えた生徒は93%であった。次いで,「品質や機能性を重視する」と答えた生徒が68%であ った。その一方で,「廃棄のときのことを考える」など環境への配慮をしている生徒は一人もいな かった。また,商品の生産過程のことに考えを及ばせる生徒も皆無であった。このように,生徒た ちは,世界における環境汚染や貧困などの問題は知っているものの,自身の消費行動と結びつけて 考えることはできていない。つまり,商品選択では現在の自分の利益にばかり目を向けがちである 実態がある。 ○ 本題材の指導にあたっては,生徒たちが消費者市民社会の担い手としての自覚をもって,多面 的・多角的に商品の価値を考え,選択できるようにする。そのためにまず,自分の消費行動を振り 返り,商品選択の際の視点を広げるようにする。その際,幼児への贈り物を考える活動を通して, 価格やデザイン性だけでなく安全性や機能性にも目を向ける必要性に気づかせる。次に,返品や後 払いなど購入後を考えた商品の選択の重要性に気づかせる。その際,多様な販売方法と支払方法に ついて特徴を踏まえ,利点や問題点を話し合わせたり,身近に起こる消費者トラブルへの対応を実 演させたりする。さらに,環境や社会に配慮した商品購入について視点を広げる。その際,模擬買 い物体験を通して,商品の表示やマークなどからも情報を読み取ることの重要性に気づかせる。ま た,フェアトレード市場拡大の実態から,商品の背景に目を向けさせ,社会のことを考えた商品選 択の意味を考えさせる。最後に,消費者の権利と責任や消費者を支える法律や制度,機関について 学習し,消費者としての自覚をもって多面的・多角的に商品を選択しようとする実践力を育成する。 3 目 標 ○ 自分の消費行動が環境や社会にも影響を及ぼすことに気づき,消費者として自覚をもって行動し ようとしている。(関心・意欲・態度) ○ 自分や身近な人たちの消費生活について課題を見つけ,情報のもつ価値を判断したり,解決策を 提案したりしている。(思考・判断・表現) ○ 商品のマークや表示から情報を読みとることができる。(技能) ○ 消費者を取り巻く問題を踏まえ,トラブルへの対応や法律,制度,機関,消費者の基本的な権利 と責任について説明することができる。(知識・理解)
4 計 画(7時間) 関:関心・意欲・態度 思:思考・判断・表現 技:技能 知:知識・理解 次 学習活動・内容 手だて 評価規準 一 1 自分の消費行動を振り返り,商品 選択の際に重要な視点は何かを話 し合う。 ・物資とサービス ・価格,品質,機能性,安全性, デザイン性,保証・アフターサー ビス,環境への配慮,社会への配 慮 〇 消費者という自覚が低いこ とに気づかせるために,消費者 庁作成 PR 動画を見せる。 〇 価格やデザイン性だけでな く機能性や安全性にも目を向 けさせるために,幼児への贈り 物を考えさせる活動を設定す る。 (関)消費者としての 自覚をもち,自分や 身近な人のために, 様々な視点から主体 的に商品を選択して いこうとしている。 二 2 商品購入後のトラブルについて 調べ,話し合う。 (1)どこで買い,どのような方法で 支払うかを調べる。 ・店舗販売,無店舗販売 ・前払い,即時払い,後払い ・利便性と注意点 〇 保証・アフターサービスなど の情報を得る必要性に気づか せるために,実際に体験した買 い物の失敗から無店舗販売に おける返品方法を調べさせる。 〇 選択の自由と責任に目を向 けさせるために,キャッシュレ ス化の利便性と注意点につい て話し合わせる。 (知)多様な販売方法 と支払方法の特徴を 踏まえ,利便性と注 意点について説明す ることができる。 (2)身近に起こる消費者トラブルへ の対応を話し合う。 ・契約 ・悪質商法 ・消費者を支える法律や制度,機関 〇 自分にも起こり得ることで あると認識させるために,中学 生の事例を提示し,ロールプレ イングを通して対応策を提案 させる。 (思)契約について正 しく理解し,消費者 トラブルへの対処法 を提案することがで きる。 三 3 環境や社会に配慮した消費につ いて調べ,話し合う。 (1)ジュースを選ぶ活動を通して, 環境に配慮した商品選択につい て調べ,話し合う。 ・マークや表示 ・ジュース以外の身近な商品選択 〇 企業も環境に配慮した取り組 みをしていることに気づかせる ために,共通点のある資料を, タブレットを使い,焦点化して 提示する。 〇 理解を深めるために,社会 科・理科・保健体育科と小学校 での学習を振り返らせる。 ( 思 ) 商 品 選 択 の 際 に,自分や家族が環 境保全のためにでき ることを説明するこ とができる。 (2)自分の消費行動が社会に及ぼす 影響について話し合う。 ・フェアトレード商品 ・児童労働 ・消費者の声から生まれた商品 〇 自分の消費行動と社会との関 係に気づかせるために身近な商 品について,普段目にすること のない消費者に届く前の過程に 目を向けさせる。 〇 日常の生活場面をイメージし て考えたり活用したりしやすく するために,実際に販売されて いる商品を提示する。 (関)消費者市民とし て,エシカル消費 の視点で,商品選 択のポイントを修 正している。 四 4 消費者の基本的な権利と責任に ついて話し合う。 (1)事例を通して消費者の権利と責 任について調べる。 ・消費者の8つの権利 ・消費者の5つの責任 〇 社会全体の課題であること に気づかせ,課題意識を高める ために,東京2020オリンピ ック・パラリンピックにおける 「持続可能な生産・消費」の取 り組みを紹介する。 (知)消費者の基本的 な権利と責任につ いて説明すること ができる。 本 時 5 / 7 【題材の課題】消費者として,商品を選ぶときに大事にすべき視点を説明しなさい。
〇 思考を深めるために,社会 科,理科,保健体育科での学習 と関連付ける。 (2)地球と消費者に優しい商品のパ ンフレットを作成する。 ・日本の食料自給率と廃棄量 ・食品ロスと環境負荷 ・価格,品質,機能性,安全性, デザイン性,保証・アフターサー ビス,環境への配慮,社会への配 慮 〇 多面的・多角的に商品の価値 を判断できるようにするため に,商品のパンフレットを工夫 して作成させる。 (思)エシカル消費の 視 点 で 商 品 の 価 値 を判断し,パンフレ ットを通して PR す ることができる。 (技)表示やマークを 適 切 に 提 示 す る こ とができる。
5 本 時 令和元年〇月〇日(〇) 第〇校時 第3学年〇組教室にて (1) 本時の指導観 これまでに生徒は,賢い消費者として商品を選ぶ際には,価格やデザイン性だけでなく機能性や 安全性,保証・アフターサービスや環境への配慮などの視点をもつことが大切であることを学んで いる。そこで本時では,自分の消費行動を振り返らせ,社会と環境を考慮した倫理的消費(エシカ ル消費)の視点から,課題に気づかせ,価値の転換を図り,自立した消費者として責任ある行動を 考えさせる。そのために,市場規模が拡大しているフェアトレード商品と,売り上げが伸び悩んで いる企業の商品を比べ,その要因を考えさせる。次に,商品の生産や価格設定の背景にある児童労 働の実態を示し,価値観に揺さぶりをかける。さらに,フェアトレード商品の価値について話し合 わせ,情報を読み取る力の必要性と商品購入の責任に気づかせる。最後に,一人ひとりの消費行動 の重みについて考えさせ,自分たちが日常生活で実践できることを話し合わせる。 (2) 主 眼 ○ 2つの商品を比較する活動を通して,よりよい社会を創るための消費者の責任に気づき,多面 的・多角的に商品の価値を見極め,選択しようとすることができる。 (3) 準 備 ① 学習プリント ② フェアトレード商品・資料 ③ タブレット ④ 写真 (4) 過 程 過程 学習活動・内容 準備 手だて(○) 評価(◇) 形態 配時 導 入 1 2つの企業の売り上げを比 較して要因を予測する。 ・フェアトレード ① ② ③ ◯ 商品の背景に目を向けさせるために, 市場規模が拡大しているフェアトレード 商品と,売り上げが伸び悩んでいる企業 の商品を比較させる。 ◯ フェアトレードの情報を考慮していな いことに気づかせるために,普段商品を 選ぶ際に優先する情報を確認する。 一斉 10 展 開 2 フェアトレードについて話 し合う。 (1)A 社と B 社の商品材料の生 産過程の違いを探る。 ・低賃金 ・児童労働 (2)B 社の売り上げが落ちた原 因について話し合う。 ・不買運動と企業の変化 ・消費者が企業に与える影響 (3)大型商業施設のフェアトレ ード商品を通して,商品の選 択について話し合う。 ・主婦の声から始まったフェ アトレード商品の取り扱い ④ ② ◯ 課題意識をもたせるために,B 社の商 品材料のために,生徒と同世代や年下の 子どもたちが働いている実態を写真や動 画で提示する。 ◯ 思考を整理するために,比較資料を黒 板に対置して提示する。 ◯ 商品購入はその企業に一票を投じるこ とであることを確認するために,B 社の 児童労働発覚に伴い,消費者が不買運動 を起こしてB 社を動かした事象を紹介す る。 ◯ 主体的に考えさせるために,一人の主 婦の声から広がった身近なフェアトレー ド商品を取り上げる。 一斉 個人 ↓ 小集団 ↓ 一斉 8 8 14 終 末 3 本時の学習内容を振り返り, 実践につなげる方法を記述す る。 ◯ 次時の学習への意欲をもたせるため に,消費者は商品を選ぶ権利をもつと共 に責任があることにふれる。 ◇ 消費者市民として,エシカル消費の視点 で,商品選択のポイントを修正している (プリント分析)。 一斉 10 めあて 2社の商品を比べて,フェアトレード市場が拡大している理由を探ろう。