与 格 構 文 の 意 味 制 約 に つ い て
0 一般に,与格構文 (dativeconstruction)に 関 しては(1)の よ うな交替 が見 られる。
(1) a.JohnboughtMaryapresent. b.JohnboughtapresentforMary. ところが,与格動詞で もこの よ うな交替の見 られ ない場合があ る。
(2) a.JohngaveMaryakiss. b.'JohngaveakisstoMary. 本稿 の 目的 は, これ らの交替形を意味的側面か ら 検討す ることにある。(I)の
MaT
y とa
p7
1
e
S
e
nt
に 相当す る名詞句の ことを,それぞれ 目標格(goal) 名詞句,対象格(objective)名詞句 と呼ぶ。 また, (la)の よ うな文 を 二 重 目的 語 構 文 (double objectconstruction,DOC)と呼び,(1b)の よ う な文では 目標格名詞句が前置詞を伴 って現れ るの で,前 置 詞 目的 語 構 文 (prepositional object construction,POC)と呼ぶ。 1 本節では,POCとDOCの交替についてすで に指摘 されている意味的 な違 いをい くつか概観 し なが ら, これ らの交替形の違いを探 って見 る。 一 つ に は,DOCの 目標 格 名 詞 句 の 指 示 物 (referent)は,動詞の表す時制 (tense)におい て現 実 世 界 に存 在 す る, と話 者 に よ って 想 定 (assume)されな くてほならない とい うことがあ る。 したが って,(
3
)
-(
6
)
の(a)は非容認的なのであ る。一方,POCに対 してはこの ような制約がない ので, (b)は容認 され るのである (cf.Green,1974, pp.108-9,以下年号略)0(3) a.'IfIam elected,Ipromise any childrenborn in thiswardafterl takeofhceacollegeeducationatthe schooloftheirchoice.
b.IfIam elected,Ipromiseacollege education to any childrenborn in thiswardafterItakeofhce.
高 橋
邦
年
(4) a.'Ileaveanychildrenmywifemay bearmemypokerchipsandallmy debts.
b.Ileavemypokerchipsandallmy debtstoanychildrenmywifemay bearme.
(5) a..'Ibronzedyourposterityyourbaby
shoes.
b.I bronzed your baby shoes for posterity.
(6) a.'She'sgoingtosingherlatelovera
SOng.
b.She'sgoingtosingasongforher latelovers. Green(p.93)によると, 目標格名詞句が不定名 詞句である場合,DOCでは(7a)のよ うにそれが 特定的 (specific)であると解 されなければならな いが,POCでは(7b)の ように特定的であって も 非特定的 (nonspecifiC)であって もよい とい うこ とである。
(7) a.Canyouspareapoorhippieadime? b.Canyouspareadimeforapoor
hippie? よく考 えると, この事実は(3)- (6)と一つに収束 す ることが分か る。DOCの場合,目標格名詞句は 動詞の表す時制 において指示的(referential)でな ければな らないが,ある名詞句が指示的であるに は,その名詞句は特定的でな くてほな らないので ある。 したがって,(7a)の 目標格名詞句は特定的 であると解 きざるをえない.のである。す なわち, 「目標格名詞句の特定性」とい うことは
,
「現実世 界における指示物の存在」 とい うことか ら必然的 に引 き出せ るので,後者が言 えれば前者 は不必要 になるのである。 次に,DOCには,動詞の表す行為1が動詞の表す 時制 において成就 (success)す るとい う含意,すなわも,その行為が動詞の表す時制 において 目標 格名詞句 に及ぶ とい う含意 があ る。けれ ども,
POC
にはそのよ うな含意が特にない。例 えは,(
8
a)の場合には,Fi
d
e(
とい う名前の犬)は骨を見 て しまっているが,(8b)の場合には見なかったか もしれないのである (cf
.Gr
e
e
n
,p.158)02(8)
a.J
o
hns
ho
we
dFi
doabo
n
e
.
b.J
o
h
ns
ho
we
dabo
net
oFi
do
.
この含意を否定す る内容を もつ表現をそれぞれ の構文 に付け加 えてみる と,含意の差が さらには っきりとす る(cf
.Oe
h
r
l
e
,1
9
7
6
,p.1
0
9
,以下年号 略;Ta
l
my,1
9
7
6
,p.1
0
1)0
(9)
a.'
J
o
hns
ho
we
dFi
doabo
n
e
,
bu
ti
tdi
d
no
tno
t
i
c
ei
t
.
b.J
o
hns
ho
we
dabo
net
oFi
do
,bu
ti
t
di
dno
tno
t
i
c
ei
t
.
次の例 も同様である。
(10)
a.
'Iba
ke
dMa
xac
ake
,bu
tno
wt
ha
t
yo
u'
r
ehe
r
e
,
yo
uma
ya
swe
l
lt
akei
t
.
b.Iba
ke
dac
a
kef
o
rMa
x,butno
w
t
ha
tyo
u'
r
ehe
r
e
,yo
uma
ya
swe
l
l
t
a
kei
t
.
(ll)
a.'
J
o
hnt
hr
e
w Ma
r
yt
h
eba
l
l
,bu
ts
he
mi
s
s
e
di
t
.
b.J
o
hnt
h
e
wt
heba
l
lt
oMa
r
y,bu
ts
he
mi
s
s
e
di
t
.
(12)
a.'
It
a
u
g
htt
he
m En
g
li
s
h,bu
tt
he
ydi
d
no
tl
e
a
r
na
ny
t
hi
n
g.
b.It
au
g
htEn
gl
i
s
ht
ot
he
m,bu
tt
he
y
di
dno
tl
e
a
n a
n
y
t
hi
n
g.
ところで,
「行為の成就」が成立す るためには, その行為を受けるものが存在 しな くてはな らない ことは明 らかである。「行為の成就」が成 り立てば, 「現実世界における指示物の存在」 とい うことは 余剰的なことになって しま う。 ここまでの例 は,今見た 「行為 の成就」 とい う 概念で問題な く説明が付 くよ うに思われ るか もし れない。けれ ども, この概念では次のよ うな対比 が説明で きないのである(
Gr
e
e
n
,p.1
0
3
の用例)㌔ (13)a.
'
J
o
hnbr
o
u
g
htt
h
et
a
b
l
es
o
mef
l
o
we
r
s
.
b.J
o
hnbr
o
u
g
hts
o
mef
lo
we
r
st
ot
he
t
a
bl
e
.
(14
) a・J
o
hnb
.
r
o
u
g
htMa
r
ys
o
mef
lo
we
r
s
・
b.J
o
hnbr
o
u
g
hts
o
me凸o
we
r
st
oMa
r
y.
(15)a.'
J
o
h
nt
hr
e
wt
het
hi
r
dba
s
et
heba
l
l
.b.J
o
hnt
hr
e
wt
heba
l
l
t
ot
het
hi
r
dba
s
e
.
(16)a.J
o
hnt
hr
e
wMa
r
yt
heba
l
Lb.J
o
h
nt
hr
e
wt
heba
l
lt
oMa
r
y.
どの対において も, 目標格名詞句が対象格名詞句 に到達す るので,行為が成就す ることにな り, ど の例 も許容 され ると予測 され るが,実際には,(13 a)と(15a)が許容 されないのである。 これは, (13)のt
h
eおb
l
e
と(15)のt
h
et
h
i
r
db
a
s
e
が 無生(
no
na
ni
ma
t
e
)
目標格名詞句 (あるいは,一 種の場所格(
l
o
c
a
t
i
ve
)
名詞句)である?に対 して, (14)のMa
7y と(16)のMar
yが有生(
a
ni
ma
t
e
)
目標格 名詞であることに起因すると思われるか もしれない。 問題の名詞句を代名詞化す ると,着生 と無生の 差がはっき りと浮かび上が って くる。 (17) a.J
o
hnbr
o
u
hts
g
o
mef
lo
we
r
st
ot
he
t
a
bl
e
.
b.J
o
hnbr
o
u
g
hts
o
me凸o
we
r
st
he
r
e
.
(18)a.J
o
hnbr
ou
hts
g
o
mef
lo
we
r
st
oMa
r
y.
b.J
o
hnbr
o
u
g
hts
o
mef
lO
we
r
st
ohe
r
.
以上の ことをまとめ ると,
DOC
は有生 目標格名 詞句に対す る行為が成就す る場合にだけ許 される 構文である, とい うことになる。 けれ ども,実際 の ところ,
「有生 目標格名詞句」とい う概念を用い た説明は,次の よ うな無生 目標格名詞句を含む例 には当てはまらないので棄脚せ ざるをえない。 例 えは,下 の(19)-¢1)で は,そ れ ぞ れs
i
nc
e
r
i
ly
,i
k
eCo
n
s
t
i
t
u
t
i
o
n
,
s
i
nc
e
r
it
y
が無生 目標格名詞句で あるので, (a)が非容認的であるとい う誤 った予測 を して しま うのであ る(
Gr
e
e
n,
p.
1
0
4
の用例)0(19)
a.Gi
ves
i
nc
e
r
i
t
ys
o
mec
o
ns
i
de
r
at
i
o
n.
b.Gi
v
es
o
mec
o
ns
i
de
r
a
t
i
o
nt
os
i
nc
e
r
i
t
y.
伽)a.The
ygi
v
et
heCo
ns
t
i
t
u
t
i
o
nal
i
t
e
r
a
l
r
e
a
di
n
gs
o
me
t
i
me
s
.
b.The
ygi
veal
i
t
e
r
alr
e
a
di
n
gt
ot
he
Co
ns
t
i
t
ut
i
o
ns
o
me
t
i
me
s
.
CZl
) a.J
o
hnas
s
i
gn
e
d
s
i
nc
e
r
i
t
y
t
hef
e
at
ur
e
[+N].
b.J
o
hna
s
s
i
gne
dt
hef
e
a
t
ur
e[
+N]t
o
s
i
nc
e
n
'
t
y.
「有生 目標格名詞句に対す る行為の成就」 とい う言い方で処理で きる例 と,(19)一位1)のような例 と
を ともに考慮 に入れ ると
,DOC
の場合には,目標 格名詞句が動詞の表す行為によってはっき りと影 響を受ける(
s
i
g
ni
f
ic
a
nt
l
yaf
fe
c
t
e
d)
,すなわち, その行為が 目標格名詞句に及び,その名詞句には っきりと影 響を与 える, とい う特徴が見つかる。 一方,P
O
Cの方は,動詞の表す行為が 目標格名詞 句に向いている, とい うことだけが特徴 になって いると思われ る。(
1
3
a)辛 (
1
5
a)
の場合,それぞれihefableや ikethird baseが意味深い影響を被 るとは言い難 いので, どち らも容認されないと考えられ る。 以上の ことか ら本稿では次の仮説を提案す る。 CZ2)与格構文の意味制約(
軸DOC
は.動詞の表す行為が 目標格名詞 句に向け られ るだけでな く,その行為が動 詞の表す時制 においてその名詞句 に有意味 に及ぶ,と主張(
as
s
e
r
t
)
す る。一方,(
B
)POC
は,動詞の表す行為が 目標格名詞句に向け られ るが,その行為が動詞の表す時制 にお いてその名詞句に有意味に及ぶか否かは不 明であ る, と主張す る。 ここで,
「有意味に」 とは,
「有意味な影響 ・変化 を与えて」 とで もい うことを意味す るもの とす る。 また,動詞 の表す行為は,抽象的であった り比喰 的であ った りして もよい。 (22A)に よると, 目標格名詞句は動詞の表す行 為 によって影響を受けるので,広い意味での被動 体(
pat
i
e
nt
)
であることになる。(22B)によると, 動詞の表す行為が 目標格名詞句に有意味に及ぶか 否 かがP
O
Cその ものか らは決 まって こない とい うことであ る。 この ことか ら,動詞の表す行為が 目標格名詞句 に有意味に及ぶ ことが確定 している 意味を もつ動詞 の場合 にはDOC
が用い られ,そ れが確定 していない場合 にはPO
Cが用 い られ る と言える。2
本節では,C
Z2)に示 した与格構文の意味制約が どの よ うに作用す るかを見 ることにす る。 最初 に,前節で交替形の認め られた動詞であ っ て も,対象格名詞句 として異なる種類の名詞句を 選択す ると,PO
Cが得 られな くなる例について考 えてみ よ う。 よく目にす る例 に次の ようなものがある。(
2
) a.J
o
hnga
veMar
yaki
s
s
.
b.'
J
o
hnga
veaki
s
st
oMar
y.
位3
) a.J
o
hnga
veMar
yaha
nd/aba
t
h/a
pi
nc
h/me
a
s
l
e
s/e
t
c
.
b.'
J
o
hn ga
ve a ha
nd/a ba
t
h/a
pi
nc
h/me
as
l
e
s/e
t
c
.t
oMar
y.
C4)a.Jo
hnal
l
o
we
dMar
ya
no
t
he
rdr
i
nk/a
pe
e
k.
b.'
J
o
hn al
l
o
we
d a
not
he
r dr
i
nk/a
pe
e
kt
oMar
y.
このよ うな例か ら,gi
u
eak
i
s
s
のよ うなイデ ィオ ム(
i
di
o
m)
表現の場合にはPO
Cが存在 しない, と主張で きると思 うか もしれないが, この主張は 二つの理 由で通用 しない。 理 由の一つは,次の文のよ うに, イデ ィオム表 現でない もので もPO
Cが得 られない場合があ る ことである(
Gr
e
e
n,
pp.
1
5
9
-
6
0
,
p.
1
6
6,
p.
1
0
4
の用 例)。 ¢5)a.Gr
e
t
at
a
ug
htJ
o
hnr
e
s
po
ns
i
bi
l
i
t
y.
b.*
Gr
e
t
at
aughtr
e
s
po
ns
i
bi
l
i
t
yt
oJo
hn.
位6)a.Gl
a
dyss
ho
we
dSam t
r
uehappi
ne
s
s
.
b.'
Gl
a
dyss
ho
we
d t
r
uehappi
ne
s
st
o
Sa
m.
07
) a.Ea
t
i
ngl
i
ve
rg
ive
syo
ul
ot
sofi
r
o
n.
b.'
Eat
i
ngl
i
ve
rg
ive
sl
o
t
sofi
r
ont
o
yO
u.
朗
) a.Thebl
oods
t
ai
nst
o
l
dusas
t
or
yof
t
e
r
r
o
r
.
b.*
The bl
oo
ds
t
ai
nst
ol
d a s
t
o
r
y of
t
e
r
r
o
rt
ous
.
もう一つの理由は, イデ ィオム表現であって も 両交替形が得 られ る場合があることである。4 09) a.J
o
hnbl
e
w Ma
r
yaki
s
s
.
bAJ
o
.
hnbl
e
w aki
s
st
oMar
y・
(30
) a.J
o
hnt
hr
e
w Ma
r
yadi
s
t
r
us
t
f
u
l l
oo
k.b.J
o
hn t
hr
e
w.
a di
s
t
r
us
t
f
ull
o
ok t
o
Mar
y.
81
) a.Jo
hns
ho
tMa
r
yas
mi
l
e
.
b.Jo
hns
ho
tas
mi
l
et
oMar
y.
¢2)の意味制約 とそれに関 してなされた考察を踏 まえた上で, (2)お よび(細- (31)を検討 してみ よ う. まず,(2)の場合,gi
v
eak
i
s
s
とい う表現は,k
i
s
s
とい う動詞 と同義的であると言 える。このk
i
s
s
とい う行為は,その直接 目的語,す なわ ち,与格構 文で言 えは 目標格名詞句に,必ず有意味に及んで しま う行為であ るので
,(
2
2
A)
か ら(
2
a
)
の容認 性が予測 され,(
2
2
B)
か ら(
2
b)
の非容認性が予 測 され る. 同 じことがC3)に も当てはまることは明 らかであろ う。 また,¢4)は 「ジ ョンは メア リーに も う一杯飲 ま せてあげた /のぞかせてあげた」 とい うよ うな意 味を もつ. ここで も,(
2
)
のgiueakissな どと同様 に,動詞の表す行為が必ず 目標格名詞句に有意味 に及ぶので,DOC
Lか許容 されないのであ る。 次に,位5)-¢6)は ど うであろ うか.「責任」や 「幸 せ」 とい うものは,説 明や指示 によって教 え示す ことがで きる種頬の ものではない。模範を示 した り体験 させ ることによって,初めて教示す ること がで きるのであ る。そ ういった意味で,動詞の表 す抽象的 な行為 が影響力を もって相手 に及ぶ と考 えられ る。したが って,DOC
だけが許容 され るこ とが説 明 され るのであ る。 ついでなが ら,
「責任」や 「幸せ」は,説明や指 示 によって教 えた り示 した りで きるものではない が,それ らの辞書的意味を教示す ることは可能で ある。「責任」や 「幸せ」 と同様 な 「愛」 とい う概 念についての例 を見てみ よ う(
Gr
e
e
n,p.
1
5
8
の用 例)002)
a.Gr
e
t
as
howe
dSam t
heme
a
ni
ngof
t
r
uel
e
ve
.
b.Gr
e
t
as
ho
we
dt
heme
ani
ngoft
r
ue
l
o
vet
oSam.
「愛の意味」とい うものは,
「愛」と異 な り一方的 に教示す ることが可能 である.
S
bm
がGr
e
kZの教 示 に注意を払 っている場合 には(a)が好 ましく,注 意を払 っていない場合 には(b)が好 ま しい。 これは (8)と状況が似ているが, どち らもC
Z2)の予測 どお り であ る。 Cz7)は 「レバ ーを食べ ると多量の鉄分が摂取で き る」 とい うことを述べているが, これは, レバー を食べ れば 目標 格 名詞句 のyouは必ず 鉄 分 を摂 取 で きる とい うことなので, DOC
だけが許 され ることが予測 され る。CZ8)は 「その血痕 を見て何か 恐 ろ しい ことがあ った ことが分 った」 とい うよ う な意味であ るが, 目標格名詞句 のu
sは恐 ろ しい 話 に思 い至 らざるをえなか ったわ けであるか ら,POC
が 許容 されずDOC
だ けが許容 され る こ と に説明が付 く。 次 に掲げ る例 もこれ と同類である(
Gr
e
e
n,
p.
8
4;
Oe
hr
l
e,p.
7
5
)
0
(33)
a.Mar
y'
sbe
ha
vi
o
rga
veJ
ol
m ani
de
a.
b.'
Mar
y'
sbe
havi
o
rga
vea
n i
de
at
o
J
ohn,
04
) a.Li
ps
on'
s t
ext
book t
aug
h t me
Rus
s
i
a
n.
b.
*
Li
ps
on'
st
e
xt
book t
au
ghtRus
s
i
an
t
ome
.
(
3
3
a
)
は 「ジ ョンは, メア リーの行為 を見てあ る ことを思い付いた」とい った意味を もつが,
「あ る ことを思い付 く」 とい うことは,動詞の表す比境 的行為 が 目標格名詞句 に有意味に及ぶ ことが確定 してい るとい うことなので,DOC
Lか許 され ない のであ る。(
3
4
a
)
は 「私 は リブ ソソの教科書で ロ シア語 を学 んだ」 とい うことを意味す るが, この 意味 も,動詞の表す比境的行為が 目標格名詞句 に 有意味 に及 んでいない と成 り立たない意味であ る ので,POC
は許容 され ないのである。この例 は,(
1
2
a
)
の与格構文 の部分が,
「彼 らは英語を学 ん だ」 とい う含意 を持つ こと想起 させ る。 次 に,¢9)-(31)の一群の例を見 ることに しよ う。 これ らの例 の 「投げキ ッスをす る」,
「不信そ うな 目つ きで見 る」,
「ほほ笑みかける」とい う行為 は, 目標格名詞句であ る相手がその行為 に気付 いてい な くて も成 り立つ行為である。相手が気付 いてい る場合 には,行為が相手 に有意味に及んだ とい う ことであるので,DOC
である(a)が選 ばれ,気付 い ていない場合 には,行為が及 んでいるか否 かが確 定 していない とい うこと (の-事例)であるので,POC
であ る(b)が選 ばれ る。 動詞 の表す行為 が有意味に及ぶか否 かが確定 し て い な くて 不 明 で あ る と い う こ と は,文 脈(
c
ont
e
x
t) に よっては行為 が有意味 に及ぶ こ と を排除 しないので,相手が気付いている とい う含 意を もつ文脈,す なわち,行為が相手 に有意味 に 及んで いる とい う含意 を もつ文脈 で も使用で きる はずであ る。果た して,例 えは81)に関 して,次 の よ うな分布が得 られ るのであ る。85
) a.'
Johns
ho
tMa
r
yas
mi
l
e
,
bu
ts
hedi
d
notnot
i
c
ei
t
.
b.J
o
hns
ho
tMa
r
yas
mi
l
e
,
a
ndt
he
ns
he
wav
e
dt
ohi
m i
nr
e
p
l
y.
(36
) a.J
o
hns
ho
tas
mi
l
ea
tMa
r
y,bu
ts
he
di
dno
tno
t
i
c
ei
t
.
b.J
o
hns
ho
tas
mi
l
ea
tMa
r
y,a
ndt
h
e
n
s
hewa
v
e
dt
ohi
m i
nr
e
p
l
y.
さて次に,動詞の表す行為が動詞の表す時制 に おいて 目標格名詞句に有意味には及ばない ことが 確立 している例 を見てみ よ う。 実は,第1
節ですでに見た(
3
)
-(6)はそ ういった 例であるが, ここでは別 な例を引用す る(
Gr
e
e
n
,p.
8
9
の用例)0(37
) a.'
Huxl
e
ywr
o
t
ef
u
t
u
r
eg
e
ne
r
a
t
i
o
nsa
Waml
ng・
b.Huxl
e
ywr
o
t
eawa
r
ni
n
gt
of
ut
u
r
e
ge
ne
r
a
t
i
o
n
s
.
(3
8
) a.'
The Po
pe wr
o
t
e Sa
nt
a Cl
a
us a
l
e
t
t
e
r
.
b.ThePo
p
ewr
o
t
eal
e
t
t
e
rt
oSan
t
a
Cl
a
us
.
(37)の場合にはmLrleyとfutu71egeneTlationsが,(38) の場合にはthePopeとSanhZCkltLSが,それぞれ 同時点で共存 しえないので,HuxleyやthePope
のなす行為 が動詞の表す時制 において,それぞれ futuregene71ationsやSbnhZCh2uSに及ぶ ことは あ りえない。す なわち,動詞の表す行為が動詞の 表す時制において 目標格名詞句に及ばない ことが 確定 しているのである。「及ばない ことが確定 して いる」とい うことは 「及ぶ ことが確定 していない」 とい うことに含 まれるので,¢2)の制約に従 って(b) が容認的 となる。また,
「及ばない ことが確定 して いる」 とい うことは 「及ぶ ことが確定 している」 とい うこととは相反す ることであるので,(a)が非 容認的 となる。 以上本節では,
C2)の意味制約が正 しい予測をす ることを例証 した。3
前の二節で,DOC
とPOC
は,動詞の表す行 為が動詞の表す時制において 目標格名詞句に有意 味に及ぶか否か とい う点 に関 して,一貫 した対比 を示 してい ることを見たが, この ことか ら,両交 替形は意味的に緊密な関係にあるとい うことがで きるであろ う。本節では, これに加 えて,両者が 統語的にも関連があることを見てみ よ う。Gr
e
e
n
は与格交替の統語的証拠をい くつか提示 している。例 えは次のよ うな例がある (p.170)0 (39)a.'
Ma
r
t
ha ga
ve J
o
hn t
r
e
n
c
h-
mo
u
t
h
,
a
n
dhega
veTe
di
t
.
b.Ma
r
t
haga
veJ
o
hnt
r
e
nc
h一
mo
u
t
h,
a
nd
hega
vei
tt
oTe
d.
(40)
a.J
o
hnga
veTe
dt
r
e
nc
h・
mo
u
t
h.
b.'
J
o
hnga
veTe
di
t
.
C.'
J
o
hnga
vet
r
e
nc
h・
mo
u
t
ht
oTe
d.
d.J
o
h
ngavei
tt
oTe
d.
(
4
0
a)
は 「ジ ョンのへん とう腺がテ ッ ドに移 っ た」 とい うくらいの意味を もっているが,動詞の 表す行為が動詞の表す時制において 目標格名詞句 に有意味 に及ぶ内容 を もってい る こ とにな るの で,POC
である(
4
0
C
)
は許容 されないのである。 ところが,対象格名詞句が代名詞であ ると,DOC
が許 され ないので,代用品 としてPOC
が使われ る。ここでDOC
が許 されないのは,次の(b)が許 さ れないの と同 じ理 由によると考 えられ る。5(41
) a.J
o
h
nga
v
eMa
r
yap
r
e
s
e
nt
.
b.'
J
o
h
nga
veMa
r
yi
t
.
(39)に見 られる代用品の使用を説明す るために(42) の法則を提案す る。 ¢2) 構文選択上 の一法則 ある意味内容を表現す る場合には,その内 容をもっとも適切(
o
p
t
i
ma
l
)
に反映す る構 文を使用せ よ。ただ し,やむを得 ない場合 には,代用 となる構文を使用 して もよい。 すなわち,(42)によると,(
3
9
a
)
では(
4
0
b)
の形 が許 されないので,仕方な く関連す る構文 である(
4
0
d)
を(
3
9
b)
に見 られ るように代用に使 って いるとい う説 明が可能である。 代名詞であ って も不定代名詞 の場合 には,(43b)
の よ うにDOC
が もともと許 され るので,等位 接続構造 の場合に も代用品が使われることはない(
Gr
e
e
n,p.
1
71
の用例)0(43))
a.Ri
c
ha
r
dga
v
eLi
zab
l
a
c
ke
ye
.
b.Ri
c
ha
r
dga
veLi
zo
ne
.
C.'
Ri
c
ha
r
dga
v
eabl
a
c
ke
yet
oLi
z
.
d.●
Ri
c
ha
r
dga
veo
net
oLi
z
.
(44)
a.Li
zga
veRi
c
ha
r
dabl
a
c
ke
ye
,
a
ndhe
ga
v
ehe
ro
ne
.
b.'
L
izga
veRi
c
ha
r
dabl
a
c
ke
ye
,an
d
hega
v
eo
net
ohe
r
.
また,09)への説 明は次例 に も当てはまる
(
Gr
e
e
n
, p.1
77の用例)0(45
) a.'
Te
d ga
ve J
o
e
y pe
r
mi
s
s
i
o
n t
o
ma
r
c
h,buthede
ni
e
dKi
m i
t
.
b.Te
dga
veJ
o
e
ype
r
mi
s
s
i
o
nt
oma
r
c
h
,bu
thede
ni
e
di
tt
oKi
m.
次に
,
wh
一疑 問化か らの証拠 も出 されてい る(
c
f
.
Gr
e
e
n,p.1
7
7
) 0(46)
a.'
Wha
tki
n
do
fi
nf
e
c
t
i
o
ndi
dMa
r
t
ha
gi
veJ
o
hn?
b.Whatki
ndofi
n
f
e
c
t
i
o
ndi
dMa
r
t
ha
gi
vet
oJ
o
h
n?
¢7)
a.Ma
r
t
haga
v
eJ
o
hna
ni
nf
e
c
t
i
o
n.
b.'
Mar
t
haga
vea
ni
nf
e
c
t
i
o
nt
oJ
o
hn.
㈹ に対 しては,必ず しもここに示 した文法性判断が 得 られ るとは限 らないのであるけれ ども,一般的 に与格 動詞 は(
4
6
a)
の形のwh
一疑問文 を許 さない ことが 知 られて いる。9(4
8
) a.事
Wha
tdi
dJ
o
hng
iveMar
y?
b.Whatdi
dJ
o
h
ngi
vet
oMa
r
y?
通常POC
を許 さないgi
v
ea
ni
n
f
e
c
t
i
o
n
の よ う なイデ ィオ ム表 現 も,DOC
の ままで はwh-
疑 問 文が作れないので,やむを得ずPOC
を取 るが,こ れ も(42)の予測 どお りにな っている。 関係詞節化(
Re
l
a
t
i
vi
z
a
t
i
o
n)
の場合 もこれ と同 じ状況であ る (cf
.Gr
e
e
n,p.
1
7
7
)0(49)
a.'
Thei
nf
e
c
t
i
o
nwhi
c
hMa
r
t
haga
ve
J
o
hnne
a
r
l
yki
l
l
e
dhi
m.
b.Thei
nf
e
c
t
i
o
nwhi
c
hMa
r
t
haga
vet
o
J
o
hnne
a
r
l
yki
l
l
e
dhi
m.
さらに,一部 の話者 は
(
5
0
b)
を容認す る と報告 されてい る(
c
f
.Gr
e
e
n,p.
1
7
5
)
。(50)
a.'
TheSno
pe
sbr
a
t
sga
v
et
hemu
mp
s
e
ve
r
ys
i
n
gl
eki
dwhol
i
ve
dwi
t
hi
n
t
wobl
o
c
kso
ft
he
m.
b.TheSれo
p
e
sbr
a
t
sga
vet
hemump
st
o
e
ve
r
ys
i
n
gl
eki
dwhol
i
ve
dwi
t
hi
n
t
wobl
o
c
kso
ft
he
m.
(51
) a.J
o
hnga
veMa
r
yt
hemu
mp
s
.
b.'
J
ohnga
vet
hemu
mpst
oMa
r
y.
C.'
J
ohnga
vet
hemu
mpsMa
r
y.
(
5
0
a
)千 (
5l
c
)
には複合名詞句移動(
Co
mp
l
e
x
NPShi
f
t
)
がかか っているが,DOC
は これを許 さ ない。 そ こで,(
5
0
b)
においては,仕方 な く代用 品のPOC
が出動 しているのであ る。 また,a
l
l
o
w
とい う動詞 が含 まれている場合 に も前掲例 と同様 なふ るまいをす ることがある。(52)
a.Hea
l
l
o
we
dahu
nd
r
e
dpo
u
nd
say
e
a
r
t
oe
a
c
ho
fhi
ss
o
n.
b.Tot
hi
sde
c
i
s
i
o
n,ho
we
ve
r
,Ki
r
kha
d
t
oa
l
l
o
wt
woe
xc
e
p
t
i
o
ns
.
ただ し,(
a
)
には過重量名詞句移動(
He
a
v
y NP
Shi
f
t)が,そ して,(b)には話題化(
To
pi
c
a
l
i
z
a
t
i
o
n)
がかか っている。 も う一 つ 証 拠 を 加 え る とす る と,名 詞 化(
No
mi
na
l
i
z
a
t
i
o
n)
が思 い付 く。(53
) a.'
J
o
h
n'
Sg
ivi
n
g(
o
f)Ma
r
yaki
s
s
.
b.J
o
hn'
sgi
vi
n
g(
o
f
)aki
s
st
oMa
r
y.
(53)のgi
u
eak
i
s
s
とい う表 現は,CZ3)で見た よ うに, 通例DOC
Lか取 らない。けれ ども,(
5
4
a
)
に見 る よ うに,
DOC
の名詞化形 は許容 され ないので,(
5
3
b)
の よ うに,やむな く代用品のPOC
が登場 して いるのであ る。(54
) a.'
J
o
hn'
Sg
ivi
n
g(
o
f)Ma
r
yapr
e
s
e
n
t
b.J
o
hn'
sgi
vi
n
g(
of
)ap
r
e
s
e
ntt
oMa
r
y.
以上本節では,(42)の構文選択上 の法則 に基づい て,DOC
とPOC
の交替 にかかわ る統語的証拠 を い くつか検討 したが, これ らの ことか ら両交替形 は,意味的だ けでな く統 語的 にも関連 していると 考 えて もよい であろ う。 4 ここで,以上 の節で検討 した事柄 に関す る若 干の考察を してみたい。 まず,DOC
の 目標格名詞句 は話者 の意識や談話 の中ですでに確立(
e
s
t
a
bl
i
s
h)
している要素で あ る, とい う天野(1981,p.5,以下年号略)の意見 か ら見てみ よ う。 天 野 によると,
「確立 している」 とい う概念は, 「特定性」,「現実世界における指示物 の存在」,「行 為 の成就」,
「内容変更不可能」,
「旧情報」 な どの 要因を総合 した ものであ るとい うことであ る。 こ れ らの要 因の中で,
「特定性」とい う概念 は,(7)の 例 を議論 した ときに述べた よ うに,「現実世界にお ける指示物 の存在」とい う概念か ら系(
C
o
r
o
l
l
a
r
y)
として導 き出せ るものであ る。 また,後者 の概念 が 「行為 の成就」 とい う概念か ら引 き出せ る こと は,(8)-(12)の ところですでに見た。「内容変更不可 能」 とい うことが 「行為 の成就」 とい う要 因か ら の必然の結 果であ ることも, (8)- (9)な どか ら明 ら かである。 この ことか ら
,
「確立 している」とい う 概念 は,
「行為 の成就」とい う概念 と 「旧情報」と い う概念 とを含む と考 え られ る。 直観的 に言 って,
「確立 してい る」とい うこ とに 「行為の成就」 とい うことが含 まれている とは考 え難 い。談 話 の中で話題 として確立 している もの で もその指 示物 が存在 しない場合 には,行為 が成 就 しえない とい うことがあ るし, また,(55)の よ う に 目標格名 詞句が場所 を表す場合 には,その名詞 句が談話 の 中で確立 していて もDOC
が得 られ な い とい うこ ともあ る。したが って,「確立 している」 とい う概念 に 「行為 の成就」 とい う概念を含め る のは好 ま し くない と言 って もよいであろ う。 とす ると,
「確立 してい る」 とい う概念は,せ いぜ
い, 「旧情報」 とい う概念 くらいに しか相当 しない こ とになる。 そ もそ も, ある一つの概念が, 「行為 の成就」 と 「旧情報」 とい う必ず しも相入れ ない 二つの概念 を包含す ることに問題がある。7 次 に,文 法学者の中には,何 らかの理 由で,DOC
とPOC
を規 則 で結 び付 け て考 え な い者 が い る (例 えばOe
hr
l
e
な ど)。天 野 もそ の一 人 で あ る が,第1節 で概観 した事象を中心 とす るい くつか の事 象 に見 られ るDOC
とPOC
の意 味 の相違 に 基づ いて,少 な くともある種 のDOC
はPOC
とは 結 び付ける ことがで きない と述べてい る。 彼の主張 の根拠 には,Oe
hr
l
e(
p.
1
9
)
か らの引 用 がある。(5
6
) Ni
xonga
veMai
l
e
rabook.
この文 は三 とお りにあいまいであ る。す なわち,
め
)「本の所有 権 が ニク ソンか らメイ ラーに移 った」 とい う読 み と,(B)「ニク ソンが メイ ラーに本を手 渡 した」 とい う読みのほかに, (C)「ニクソンが存 在 したおかげで, メイ ラーは本が書 けた」 とい う 読みがある0-万,対応す るPOC
であ る(57)には, 帆)と(B)の読 み しかないO(57
) Ni
xonga
veabookt
oMai
l
e
r
.
この ことか ら,少な くとも(C)の読みの場合 には,
DOC
をPOC
と規則 で結 び付 け る可 能 性 を否 定 している。 しか しなが ら,第2
節で示 した よ うに,(
C
)
の読 みの場合には,動詞の表す比境的行為 が 目標格名 詞句 に有意 味 に及 ぶ こ とが確定 して い るの で,DOC
Lか許 されないのであ る。このために,POC
は(C)の読みを もたないのであ る.C27)-任鋸こ対す る 説明が ここで も当てはまっている.つ ま り, (56)の (C)の読 みは特別扱 いす る必要 がないのであ る。 し たが って,(56)Qi,DOC
とPOC
の規則的 な結 び付 きを否定す る証拠 にはな らない ことにな る。 5 本節では,従来適切 な説明が与 え られなか っ た例や説明に窮 して きた例 な どを検討 しなが ら, ¢2)の意味制約の適用可能性を吟味す る。 まず,o
we
とい う動詞か ら検討 し始 め よ う。(58)
a.J
o
hno
we
sMar
y$1
0
.
b.J
ohno
we
s$1
0t
oMar
y.
(59)
a.
'
John owes Pr
o
f
. Brown hi
s
S
uC
C
e
S
S
.
b.J
o
hn o
we
s hi
s s
uc
c
e
s
s t
o Pr
of
.
Br
own.
(58)は 「借 りがある」 とい う意味であ るが,
「借 り」 とい う事態 に関 しては,相手が 「貸 している」 と い う見解 を持 っている場合 と, この こ とが明 白で なか った り,そ うい う見解 を持 ってい ない場合 と が考 え られ る。前者 の場合 には動詞の表す行為 が 相手 に及んでいる と考 え られ るので,(58a)の よ うにDOC
が選 ばれ,後者 の場合 には及 んで い る か不 明 であ るか,及 ん で い な いか で あ るの で,POC
が選 ばれ る こ とが¢2)K よ り正 し く予測 され る。 しか し,(59)は 「おかげであ る」 とい う意味を も つ。 この場合は,P7
1
0
fBy
1
0
Wn
の見解 にかかわ り な く,
J
o
hn
の一方的 な視点 に立 った ものの言 い方 であ るので,動詞の表す行為 が相手 には及ば ない と考 え られ る。したが って,(22)Fこよって,DOC
は 存在 しない とい うことになる。 次に,c
h
a7
ge
,a
s
k,
カne
の三 つを見 てみ よ う。 (60) a.The
yc
har
ge
dhi
m
$1
0.
b.'
The
yc
ha
r
ge
d$1
0t
ohi
m.
(61) a.The
yas
ke
dhi
m
$1
0
.
b.'
The
yas
ke
d$1
0t
ohi
m.
(62) a.The
yf
ine
dhi
m $1
0
.
b.'
The
yf
ine
d$1
0t
ohi
m.
これ らの例 は,どれ もお金 の請求を表 してい るが,POC
は容認 されない。 これ ら三つ の動 詞 の意 味 は, 目標格名詞句 にあ る金額 の支払 いを直接要求 す る とい うものであ る。 この直接 さゆ えにDOC
Lか許 されない もの と思われ る。次例が矛盾 して いる と感 じられ るのは このためであ ろ う。(63)
?
?The
yc
har
ge
dhi
m $1
0,buthedoe
s
n'
t
know i
t
.
ところで
,c
j
u
Z
r
ge
が 「付 けにす る」 とい う意味 で用 い られ る場合 には,反対 に,POC
Lか許 され ない とい う事実 がある。(64)
a.暮
The
yc
ha
r
ge
dhi
m t
hee
xpe
ns
e
.
b.The
yc
ha
r
ge
dt
hee
xpe
ns
et
ohi
m.
「付 け」 とい うのは,直接 その場で代金 を請求す るとい うものでは決 してない。 いったん書 き付け に しておいて, しか る後 に請求す る とい うもので あ るので,必ず間接的 な手続 きを経 るものである。 よって,C2)はPOC
が許容 され ない ことを正 し く 予測す る。 今度 は,s
au
e
とs
p
ar
e
につ いて考 えてみ よ う。(65
) a.J
ohns
a
ve
dMar
yapi
e
c
eofc
ake
.
b.J
ohns
a
ve
dapi
e
c
eofc
akef
o
rMar
y
(66
) a.J
ohns
par
e
dMar
yt
woho
ur
s
.
b.Johns
par
e
dt
wohour
sf
o
rMar
y.
これ らの動詞 は,それぞれ「取 ってお く」,
「さ く」 とい う意味を もつが,(65)につ いて言 うと,取 って おいた ものを相手が受 け取 る場合 には(a)が用 い ら れ,受 け取 るか ど うか不 明であ る場合には(b)が用 い られ る。 ところが,主語が動作主(
age
nt
)
でな く原因(
cau
s
e
)
であ る場合にはDOC
Lか許 され ないのであ る。(67
) a.Thats
ave
dMar
y
$
1
0.
b.'
Tha
ts
a
ve
d$1
0f
orMar
y.
(68
) a.Thats
par
e
dMa
r
yt
wohour
s
.
b.'
Thats
par
e
dt
wohour
sf
o
rMar
y.
これ らは,それぞれ,
「10ドル節約で きた」,
「2
時 間節約で きた」 とい う意味を もつが,C2
7
)
-
鯛 と同 じで,動詞 の表す比境的行為 が必ず 目標格名詞句 に及ぶので,POC
が許容 されないのであ る。 興味深い ことに, これ らの動詞 は次の構文 も取 る。(69)
a.Thats
a
ve
dMa
r
yal
oto
ft
r
ou
bl
e.
b.Thats
pa
r
e
dMa
r
yt
hebot
he
r
.
これ らの文 は,
「めん ど うが省 けた」とい うよ うな 意味であるが,本稿で言 う与格構文ではな く,伽)な どと同煩の構文であ ると思われ るO
伽)
J
ohne
nvi
e
sMar
yhi
sne
w e
ar
.
その理 由は,両者が同様 のふ るまいをす るか らで ある。例 えば, どち らも二番 目の名詞句 に前置詞 を付け ることがで きる。8
(
7
1
) a.Tha
ts
ave
d Mar
y f
r
o
m a l
otof
t
r
oubl
e
.
b.Thats
par
e
dMar
yf
r
om t
hebot
he
r
.
C.J
ohne
nvi
e
sMar
yf
orhi
sne
w c
ar
.
次 は,
「未来 の非所有」を表すd
e
n
y
とr
e
f
t
L
S
e
の 例であ る(
Gr
e
e
n,p.
1
7
3
の用例)0(72)
a.Te
dde
ni
e
dRi
m t
heoppor
t
uni
t
yt
o
mar
c
h.
b.■
Te
d de
ni
e
d t
he o
ppor
t
uni
t
y t
o
mar
c
ht
oRi
m.
(7識
a.The br
as
s r
ef
us
ed Tony t
he
.pr
omot
i
on.
b.'
Thebr
as
sr
e
f
us
e
dt
hepr
o
mot
i
o
nt
o
Tony.
これ らの文 は,それぞれ 「与 えるのを拒 む」,
「与 えるのを断 る」 とい う意味であ るが,一般的 に, 相手 に直接拒 んだ り断 った りす るとい う含意を も つoそ して,DOC
だけが許容 され る.これは位2)の 予測どお りであ る。 また,対象格名詞句が代名詞であ る場合 には, 89)-(40)と同様 に,(42)に従 って特例 的 にPOC
が現 れ る(
Gr
e
e
n,p.
1
7
4
の用例)0 (74) a.'
Te
d ga
ve Joe
y pe
r
mi
s
s
i
o
n t
o
mar
c
h,buthede
i
ne
dKi
n i
t
.
b.Te
dgaveJoe
ype
r
mi
s
s
i
o
nt
omar
c
h,
buthede
ni
e
di
tt
oKi
n.
(75)
a.'
Thebr
as
swaswi
l
l
i
ngt
opr
o
mot
e
J
oe
y,buther
e
f
us
e
dTonyi
t
.
b.Thebr
as
swaswi
l
l
i
ng t
opr
omot
e
Joe
y,buther
e
f
us
e
di
tt
oTony.
言 うまで もないが,de
n
y
やTl
e
f
u
s
e
を「間接的 な」拒みや断 りも解す話者は,
POC
であ る(
7
2
)
-(
7
3
)
の (b)も容認的であ ると判断す る。かな り特殊 な ものに
c
o
s
t
,t
a
k
e
がある。b.●Thatbookcost
$
10tome.(77) a.Thatworktookmethreehours. b.'Thatworktookthreehourstome.
(a)は,それぞれ 「10ドルかか った」,「3時間か か った」 とい うよ うに,抽象的 な行為が 目標格名 詞句 に有意味 に及 んで しま う以外の読みはない。 したが って
,
位2)の意味制約 はDOC
だけが容認 的 であ る と予測す る。 ここで も,予測は当た ってい る。 今 までの例 は, 目標格名詞句が前置詞 を取 る場 令,toあ るいはforを取 ったが,次 に,別 な前置 詞 を取 る場合 を考 えてみ よ う。9(78) a.JohnplayedMaryatrick/ajoke. b.John played a trick/a joke on
Mary.
耶) a.JohnaskedMaryaquestion. b.JohnaskedaquestionofMary.
即) a.JohnaskedMaryafavor. b.JohnaskedafavorofMary. 問題 の前 置 詞 はそれぞれon,of,ofとな って い る。 (78)は 「人 を だ ます 」 とい う意 味 であ る。(a)の 場合 にはそれが成功 した とい う含みがあるが, (b) の場合 にはその含みがな く, ごまか しに乗 って こ な くて もよいO この事実 は但2)の予測 と一致す るo (79)一郎)の(b)の場合,前置詞句が一義的には 目標 格 を担 っていないか もしれないが,少 な くとも二 義的 には 目標格であると考 えられ る。直接相手 に 質問 した り頬み ご とを した りす る場合 には(a)が適 切であ り,間接的である場合には(b)がふ さわ しい よ うである. ここで も
,
¢2)の予測が成 り立 ってい る。 さらに,表面的 には対象格名詞句を取 らない例 を見てみ よ う。 (81) a.Johnshotabird. b.Johnshotatabird. (82) a.Johnreachedthebook. b.Johnreachedforthebook. これ らの文 で,abirdやthebookが 目標格名詞句 であ ることは明 白であろ う。(a)は,それぞれ,
「鳥 を撃ち当てた」,「手を伸 ば してその本 を取 った」 とい う意味を もつ。すなわち,動詞の表す行為 が 目標格名詞句 に有意味に及んでいるのであ る。 ま た, (b)の場合 には,それぞれ 「鳥をね らって撃 っ た」,「その本を取 ろ うとして手を伸 ば した」 とい う意味を もつ。 これ らの場合,「当た ら」な くて も よい し 「届 か」 な くて もよいのであ る。文脈 を添 えるとこの違いが よく分か る。(83) a.'Johnshotabird,butmissedi
t
.
b.Johnshotatabird,butmissedi
t
.
(84) a.'Johnreachedthebook,butcoul d-n'tgetit.
b.John reached for the book,but couldn'tgetit.
(
8
1
)-(82)の各文の含意の違いは正に¢2)の予測 どお りで あ る。
但2)は対象格名詞句のない文 に も当てはまる のであ る。 10 恐 らく,(81)-(82)の よ うな例 は,本稿 で言 う与格 構文の下位 分類の一つに属す もの と思われ る。 も しそ うであ るな らば, ここで もC22)が当てはまった ことに不思議はない。 下位分類 とみ る分析は,(31)や次の(85)か らも支持 され よ う。(
3
1
) a.JohnshotMaryasmile. b.JohnshotasmileatMary. ㈹ a.JohnreachedMarythebook.b.JohnreachedthebookforMary. (85a)は 「ジ ョンはメ7 1)-のために手 を伸 ば し て本を取 ってあげた」 とい う意味を もつが, (b)の 場合には
,
「取 ろ うとして手を伸 ば した」結果,本 を取 ってあげたか ど うか不明であ る。 典型 的 な与 格構 文 に類似 して い るけれ ども,DOC
の 対 象 格 名 詞 句 にuJithが 付 く例 も あ る (Fraser,197
1,pp.604-5)0
(86) a.The man sprayed the wallwith pain
t
.
b.Themansprayedpaintonthewall.
(87) a.Heloadedthewagonwithgoods. b.Heloadedthegoodsontothewagon.
(a)は,それぞれ 「壁一面 にペ ンキを噴 き付 けた」, 「荷車 い っぱいに品物を積み込 んだ」 とい う意味 である。 ところが, (b)は,それぞれ 「壁 にペ ンキ を噴 き付けた」
,
「荷車に品物 を積み込 んだ」 とい う意味であ り,ペ ンキが壁の どの範 囲に噴 き付 け られたかが分か らない し,荷車の広 さの どの範囲 までが品物 で埋 ま ったかが分か らないのである。(a)の場 合 には, 動 詞 の表 す 行為が 目標格名詞句 に有意味に及ぶために
,
「壁全体」や 「荷車全体」 が影響 を受 け る もの と考 え られ る。そ して, (b) の場合には,有意味に及ぶか香かが不明であるた めに,一部分だけが影響を受けて もよいのである。 これ もC
Z2)によって正 しく予測す ることがで きるの である。11 6 位2)の意味制約か ら判断す る限 りではDOCを 取 るはずの動詞 で も,予測に反 してPOCLか取 らないことがある。本節では,その ような動詞の 特徴を考察 しよ う。 まず思い浮かぶのは,giveriseto,givebirthto, gluewayto,payattentionto,payheedioな どのイデ ィオム表現であろ う。 このよ うな表現はイデ ィオム表現 としての凍結(frozen)の度合いが高い ために,¢2)の予測に反 してPOCLか取 らない も の と思われる
(
c
f.
Fraser,1974)。 したが って, こ れ らの表現は,
¢2)に対す る反例であると考 えるよ りも,
¢2)に対す る例外 として扱 うのが妥当であろ う。 次に,gil)e,send, choose,iellな どの動詞は DOCを取 るが, 同様 な意味を もつ donate,t71anS -fer,select,reportなどの動詞はDOCを許 さないとい うことがあ る。 この ことか ら,音節数の少な い動詞ほど,あ るいは,Anglo-Saxon系の動詞の 方が よ りDOCを許す傾 向にあると言 えるか もし れ な い。けれ ど も,allow, deliver,gua7untee, telephoneな どの音節数の多 い動詞 で もDOCを 許す し
,
peymii
,
P710mise,oHerな どのRomance 系の動詞で もDOCを許すので,音節数や語源は, DOCの可否を決め る決定的(crucial)な要因ではないことが分かる.また,giveがDOCを許容す る のに対 して,giveawayやgiueoutがDOCを許 容 しない ことか ら,何か意味的な要因が絡んでい ると考 えられ る。 giueとgiueawayな どを比較す ると,後者の方 が より限定的な意味,あるいは, よ り特殊(more specific)な意味をもつ と言 える。そ して この後者 がDOCを許 さないのである。 次の例は どうであろ うか(Green,p.94の用例)0 (88) a.Sheplayedushertrombone.
b.Shedancedusafew barsof"The
BlueDanube''.
(89) a一.?Sheblew ushertrombone. b.
?
Shewaltzedusafewbarsof"TheBlueDanube". blou)とpkty,および,waltzとdanceを比べ ると, どちらの対の場合 も前者 の方が後者 よ り特殊 な意 味をもっている。 ここで もまた,意味がよ り特殊 な動詞ほ どDOCを許容 しに くい と言える。 また,Green(p.93)に よると,料理の仕方を表 す動詞の場合には,話者 のあま り口に しない動詞 であった り,動詞の表す料理の仕方が話者 に とっ てはな じみの薄いもので あ るときには,DOCはあ ま り使用 されない とい うこ とであ る。例 えば,一 般的に言 って,710aStの方 がfricaseeに比較 してな じみの深 い料理 の仕方 で あ るので,後者 を含む DOCは容認度が低 くなる。12
伽) a.Ⅰroastedhim achicken.I b.H fricaseedhim achiken. ここで も,よ り特殊 な意味 を もつ動詞の方がDOC と相入れないと言えよ う。 以上の ことか ら,与格動詞は
,
但2)の意味制約に よ りDOCが許 され ると予測 され る場合で も,そ の意味が よ り特殊 になれ ば なるほ どDOCを取 り に くくなる, と言 うことがで きそ うである。 よ り特殊 な言葉 とい うものは,一般的に, よ り な じみが薄 く, よ り使用頻度が低 く, よ り音節数 が多 くなる傾向にあると思われる。であるか ら, よ りな じみが薄 く, より使用頻度が低 く, よ り音 節数が多い動詞は よりDOCを許 さない傾 向にあ ることにも納得がい く。 また,何が特殊であるか とい うことは,各個人 で当然異なっているもの と思われ る。したが って, 多 くの話者 が,例 えは次 例 を許す の に対 して, Allerton(1978,p.21)な どは これを許 さない とい うような ことが起 こって くるもの と考 えられる。(91) UncleJim returnedMargarettheletter. 7 最後に
,C
Z2)が当ては ま らない例を見 ることに しよ う(
c
f.
Green,p.157)0(92) a.IgaveJohnanickel. b.IgaveanickeltoJohn.
CZ2)の意味制約の予測では,(92)は両文 ともに容認 さ れ るとともに,含意の違 いが存在す るはずである。
しか し,次 に見 られ るよ うに,含意 の違 いに関す る予測 は正 し くないので あ る。
(93) a.*IgaveJohnanickel,butIdidn't giveanythingtohim.
b.'IgaveanickeltoJohn,butIdi d-n'tgivehim anything.
ところが,次 の よ うな場 合 には, は っき りと含 意 の差 が現 れて くるので あ る(安井,1982,p.131 の用例)0
(94) a.'Igaveposteritymywealth. b.Igavemywealthtoposterity. 動 詞 の表 す 時制 にお いて
Po
s
t
e
r
ity とI
が共 存 す る ことはないので,動詞 の表 す行為 がその時点 に お いて 目標 格名 詞句 に及ぶ ことはあ りえない。 し た が って, この場合,
¢2)はDOC
を排除す る。 重要 な こ とは,(92)と糾)には,動詞 の表す行為 に かか る時間 に違 いがあ る ことであ る。す なわ ち, (92)は瞬間的 かつ直接的 な行為 であ り,時空間的 な 幅 が ないの に対 して,(94)の方 には幅があ る と考 え られ る。 したが って,行為 に時空間的 な幅が ない 場合 には,但2)が含意 の差 を予測す るに もかかわ ら ず,差が消 えて しま うのであ る。 ス ローモ ーシ ョ ン的 に見れ ば,
gi
l
)
eani
c
k
e
l
の よ うな行為 も時間 の 幅 を もつ こ とになるが,現実場面で は,話者 はそ の よ うな行為 を瞬間的行為 とみ なす のであ る。 よ って,gi
v
e a ni
c
k
e
l
の よ うな行 為 は,語 用 論 (pragmatics)の レベルで,交替形 の もつ含意 の 違 いが最少 にな って しまい,表 面的 には¢2)の予測 が成立 しない もの と考 え る (cf.Green,Appendix I:安井,1982)0 それ に加 えて,POC
が許 され ない場 合 の説 明 もで きないのであ る。不 明 な点 も残 って い るが,位2)の 制 約が多 くを説 明で きるもので あ る こ とは確 かで あ る と言 えよ う。 注*
本稿は,長野英語学 ・英文学談話会第30回例会 (1983年5月28日)における口頭発表の内容を骨子 としている。ただ し,繰 り上げ(raising)構文-の拡 張の部分は,本稿では扱わない。 1 「動詞の表す行為」とい う表現は,「動詞 と対象 格名詞句が表す行為」とで もした方が正確な場合 も あるが,本稿では便宜的に前者を用いる。 2 安井(1982,p.121)は,(8a)の場合犬が骨を もらっていな くてほならないと述べているが,これ は誤解であろ う。 3 第4節で見 るように,天野(1981,p.5)の 「確 立 している」とい う概念による分析 も(13)-(16)を説明 できない。 4 位3)-81)か ら明 らかなように,与格構文の対象格 名詞句は必ず しも具体的で譲渡可能(alienable)な ものでな くて もよい。知覚的なものであっても抽象 的なものであって もよいのである (Green,p.99の 用例)0 8 以上本稿 で は,与格構文 の二つ の交替形 で あ るDOC
とPOC
の もつ 含 意 の違 い をCZ2)の意 味 制 約 の形 で捉 えて, これ ら交替形 の示す さまざまな 現 象 に説 明 を与 えた.
任2)qま,一般的 には与 格構文 とはみ な され ない構文 を も扱 える制約 であ るこ と も見た。 本文 で は取 り扱わ なか った が,例 えば,Green (pp.98f)は,「have関係」があれはDOC
が可能 で あ る と述 べ て いる。13 また,Allerton(1978)は, 譲渡 (giving)が関与 してい る と想定 で きるほ ど,DOC
を取 りやす い と述べ てい る。しか し,これ ら の分析 では,(78)-(80)辛(81)-(82)な どの例 が扱 えない0 5 なぜ(41b)のような文が許容 されないのか とい うことは,ここの議論 とは直接かかわ っていないの で, ここでは触れずにお く。 6 これに関 しては方言差があると思われる。拙稿 (1982),および,そこで参照 している文献参照。7
「旧情報」とい う概念は,但2)の意味制約 とは別 個に必要であると思われる。Halliday(1967)など を参照。 8 (71)のs
a
v
e
,s
b2
r
e
,e
n
Vyが与格動詞ではない こ とを示す証拠には次の よ うな もの もある。s
a
v
e
とspaTleの例は示 さないが,envyと同 じふ るまいをす る。
(i) a.'WhodidJohngiveapresent? b.?WhodidJohnenvyhisnewcamera? C.Who did John envy for his new
camera?
(ii) a
.
'John'Sgiving(of)Maryapresent b.?John'senvying(of)MaryhernewCamera
c.John'senvying(of)Maryforhernew Camera
G
i
D a.
'JohngaveMaryit. b.りohnenviesMaryit. C.JohnenviesMaryforit.(b)の容認度が(C)よ りも低 い ことは,fb)では前置詞が 欠落 しているために,wh一句の出所が必ず しも明白 ではない ことに よるもの と思われ る。重要 なのは, (a)が容認 され ないのに対 して,(b)と(C)が容認 され る ことであ る。 ついでなが ら,electやcallな ども与格動詞では ない。 Gv) a.Whodidtheyelectpresident? b.Whodidtheycallbastard? (Ⅴ) a.theirelecting(of)Johnpresident b.theircalling(of)Johnbastard これ ら両文 では再帰代名 詞が 同 じよ うに生 じて い るが, この ことか ら,(iia)のwiiJlは,(iia)のto と同様 な役割 を果 た して い る と考 え るこ とが可 能 であ る (cf.Jacobson,1975)。す なわち, どち ら も 目標 格 とい う役割 を,少 な くとも二義的 には果 た している と考 え られ るのであ る。 もし(iia)の withが (ib)のwilhと共通点を もつ とす ると,級 者 も目標格 を表 していると言 えるか もしれない。 10安井(1982,p.112)に よると, (ia)はmeが 死 んで しまっている ことを含意す るので,幽霊 の発 話 である と述べているが, これは正 しくない。 (i) a_Johnshotme. b.Johnshotatme. なぜ な らは,特別 な文脈 を設定 しなければ,(ia) は弾 がmeに命 中 した こ としか合意 しないか らで あ る。例 えは,弾が足 に命中 したか らとヽ、って,そ の結果死 んで しま うとは限ち な い. ll(86)-(87)の(a)の読みは,Anderson(1971)が全体 的(holistic)読み と呼んだ もので, (b)の読みは部分 的 (partitive)読み と呼んだ ものであ る。 9 これ らと同様 な例 に(i)がある。
(i) a.JohnplayedMaryagameoftennis. b.Johnplayedagameoftenniswith
Mary. これ らの例の場合,CZ2)が当てはまるか どうか定かで はない。普通 の意味で 「テニスを した」とい う場合 には(a)が使われ
,
「テニスを したが,あ ま りに も相手 が下手で, とて もテニスを した とは言 い難 い」とい う場合 には(b)の方 が好 まれ る とい う違 いが あ るよ うに思われ るOこの限 りではCZ2)が当てはまっている と言 えるか もしれ ないが,明 白な判 断を下 しかね る。 また, (ib)のwiihの付いた名詞句は,一般 に, 目標格を表す とは考 えられていないが,目標格を表 している と考え る可能性があ る。(ii) a.Italkedwithhim abouthimself.■ b.Italkedtohim abouthimself.
12天野(p.7)は,Greenを引用 して
,「
D
O
C
-が 可能であ るためには,これ らの動詞が話者 に とって 使 い慣れない言葉であ り,ふだんあ ま りや らない料 理方法でな くてはな らない」と述べてい るが,本文 の説 明か ら明 らかな よ うに,これは正 しくない。13つ い で な が ら,JackendoffandCulicover (1971,p.400)は,次例 の分布 をhave関係で説明 しよ うとしている。(ただ し,Greenのhave関係 と は内容が異 なってい る。)
(i) a.Marywasboughtanewwardrobeby John.
b.?暮MarywasplayedatunebyJohn.
す なわち, (ia) に関 してはMaTy ju2S a neuJ uJaTdT10be.が成 り.立つのに対 して,(ib)に関 しては
Maryhasatune.が成 り立 たないので, (ib) が許 容 されない と言 っている。
しか しなが ら,(b)に多少の変更を加 えると容認度 が高 まるのであ る。