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『グリム童話集』注釈の試み(1)(KHM1)

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(1)

『グリム童話集』注釈の試み(1) (KHM 1)

Untersuchungen der Anmerkungen der Kinder-und

Hausmarchen der Bruder Grimm (1) (Nr.1)

まえがき

1970年代に入 り、 グ リム研究は、 『子供 と家庭 の メル ヒェン集

』(

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(以下、『グ リム童話集

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だけでな く、 グ リム兄 弟

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の他 の著作 も含めて新 たな段階 に入 った。 それ は L.ブル ー ムの言葉を借 りる と、 「神話的 ・文化史 的な もの か ら文献学的 ・社会史的な ものへのパ ラデ ィグマ の変換』 と言われ1)、その始 ま りとして、 L.デー ネ ッケの 『ヤー コプ ・グ リム と弟 ヴ ィル-ル ム』 の資料研究が挙げ られ る2)0 特 に グ リム ・メル ヒェンの研究 においてほ、 こ の新 たな段階は1975年 のH.レレケ に よる 『グ リ ム兄弟の最初 の メル ヒェソ』 に始 まる一連 の 『グ リム童話集』 の校訂版 に よって切 り開 か れ て き た

8

)

レレケに よる研究は文 献学的手法 に よる厳密 な テキス ト校訂 のみな らず、語 り手 「若 きマ リー」 の発見にみ られ るよ うに提供者に関す る 文 学 史 的、社会史的研究において も画期的な成果を上 げ てい る。なかで もグ リム兄弟の メル ヒェン 出 所

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につ いての成果は、1980年 の レクラム 版 の 『グ リム童話集

(1857年決定版、全3巻) に添え られた付録では

、KHM

各話 の出所 と、最 初 の メル ヒェンお よび初版か ら最終版 にいた る、 その後 の各版 の変遷 について系統 だてて ま とめ ら れ てい る。 グ リム兄弟は1812年 に 『グ リム童話集』 の初版 の第一巻 (86話) と1815年に第二巻 (70話)を出 版 した時、それぞれ の話 (すべ てにではないが)

Yasumasa KOTAKA

に彼 ら自身 に よる注釈をつけていた。 この こ とは 『グ リム童話集』 が本来は子 ども向けの読み物 と い うよ り、学問的な メル ヒェン集 として意図 され ていた ことを示 してい る。その後、1819年 に再版 (第二版)を出す際 に子 どもの読 み物 と し て の 「教育的意図」 も考慮 され ることにな ったのを き っかけに して、注釈部分が切 り離 され ることにな った。それ に関 して弟 ヴ ィル-ル ムは第二版 の序 文 で次 の よ うに述べてい る。 「従来、注釈 にはわずかなスペ ース しかあ りま せ んで したが、 この本 の規模が大 き く な った の で、第三巻 として、独立 の注釈書をつ くることに な りました。 これ に よって、従来 の版 で心 な らず も発表で きなか った ものを書 き くわ え られ る よ う にな ったばか りでな く、そ こに必要 な事項を新 し く書 き くあ え ることが可能にな りま した。 この注 釈が これ らの伝承 の学問的価値 をい っそ う明確 に す るであろ うことを、わた したちはねが ってい ま す。」4) そ して1822年 にな って第三巻 日としては じめて 独立 に注釈集が 出版 された。 この 注 釈 集 (第 二 版)は初版 の本文 につけ られた ものに比べ、すべ ての話 に注釈が加 え られ、彼 らが話を集めた地域 名や、他 の類話 (話 の合成、捜人 な ど)や関連す る神話的 モチーフを指摘 した りして、記述 も詳 し くな り、分量 も大幅に増や された。その中には、 各話 についての注釈 のみな らず、 「様 々な時代や 民族 におけ るメル ヒェソの存在を確証」 させ て く れ る 「証言

」(

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と彼 らが参考 に し た 文 献の章 も設け られ てい る。 この注釈集はそ の後 も 「童話集」 と平行 して、 - 63

(2)

184 長野大学紀要 第17巻第2号 1995 各話 の類語や新たな情報が加 え ら れ、1857年 の 『グ リム童話集』 (第七版)が出 され る前年 の1856 年 に第三版が出版 された。 この 『グ リム童話集』 ・注釈版』 は、 グ リム兄弟の死後、長い間出版 さ れ なか ったが、1980年になって-インツ ・レレケ に よって、先 の レクラム3巻本 に注釈集 の フ ァク シ ミリ版 に よって復刻 され、わた した ち も読む こ とがで きるよ うになった。 その後、 ヨ-ネス ・ボル テ とゲオル ク ・ポ リー フカの二人が、 ヤー コプ ・グ リムの息子である-ルマ ン ・グ リムの依頼を受けて、1913年か ら32年 にかけて浩潮 な

5

巻本 の 『グ リム童話注釈集』 を 編纂 した5)0 このボル テ/ ポ 1)-フカの 『注釈集』 は1856年 の 『グ リム童話集 ・注釈版』 を土 台 として、 グ リ ム兄弟 の集めた話の出所 について詳 しく調べ られ ていた。 また グ リム兄弟の集めた類話 に つ い て も、その延長上 に増補的に ヨー ロッパを中心 とす る世界 中の類話を取 り上 げてい る。その広範 さ と 系統性はそれ までに類が ないほ どであ り、今 なお グ リム ・メル ヒェン研究 のみな らず広 くメル ヒェ ソ研究 に とって頼 りになる基本的な著作 とな って い る。 ところが個 々の話 の出所 (提供 した語 り手) や グ リム兄弟 の文献 の加工 については、その後 の 研究 に よる新 たな検証 を必要 としていた。 グ リム兄弟の注釈研究 に よって始 ま り、 ボル テ / ポ リー フカの 『注釈集』 へ とつなが る、 メル ヒ ェソの系統的研究は、 ドイ ツにおいてほその後、 大 き く二つ の流れを形成 してい った。ひ とつはマ ッケ ンゼ

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に よる 『ドイ ツ ・ メル ヒェン事典』 6)にお け る よ うに、『グ リム童 話集』 を中心 に ドイ ツ語圏におけ るメル ヒェンを 考察 しよ うとす る方 向であ り、 も う一つは メル ヒ ェンの国際比較 の視点か ら研究 しよ うとす るもの であ る。前者は戦争に よって

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の項 目までで 中断 された ままであ る。後者は、 ランケに よって 創刊 された 「フ ァブラ」誌 と平行 に編纂 の始め ら れた 『メル ヒェン百科事典』7)にその成果が 蓄 積 され てい る。現在は ゲ ッチ ンゲン大学 の民俗学研 究室 において

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を中心に続け られ てい るが、今世紀 中に全巻完成 す るのは無理だ と言われ てい る。 グ リム兄弟に よる注釈は ドイ ツにおけ るだけで な く国際的な メル ヒェソ研究の噂矢 とされ るわ り には、い まだ ドイ ツ語以外に翻訳はな く、 これ ま で グ リム童話の成立史 をあつか った個 々の話の中 では触 られ ることはあ って も、 ま とまった形でそ の内容が取 り上 げ られ ることはなか った。 『グ リ ム童話集』が世界 中に訳 され、 日本で も翻訳が何 種類 もあ ることを考 え る とき、 同 じ 『グ リム童話 集』 の中の一巻 (注釈版)が取 り残 され ているこ とは、全体像 を捉え る うえでは大 きな欠落である と思われ る。 この研究 ノー トでは、以上 の よ うな グ リム兄弟 に よるメル ヒェソ収集 と研究か ら、現在 に至 るメ ル ヒェソ研究 の流れ をふ まえなが ら、以下、1857 年 の第7版 (決定版) の番号順に

、KHM

番号 と タイ トル (ドイ ツ語、 日本語) をつけて、 アール ネ/ トム ソンに よる話型 (AT 番号)8)、 グ リム兄 弟の最初の手稿(1810年)(エー レンベル ク稿)9)杏 示 した後、 グ リム兄弟に よる注釈 (1812-1856)10) を中心に、 ボルテ/ ポ リーフカ (1912-1932)ll)辛 〟.レレケ に よる 出所 (原典) の解 明 と検証12)を 参考に しなが ら各話を見てい きたい と思 う。 - 6

(3)

4-KHMI DerFroschk6nigoderder eiserne Hei n-rich 「蛙 の王様、 または鉄 の- イン リヒ」 AT44018) アールネ/ トム ソン (A.Aarne /S.Thomp-son)の分類 では、<蛙 の王様> の話は、人 間 と 動物 との結婚を主 モチーフとす る、<異 類 婚 姻 讃> の 中 の<動物聾> (Tierbrautigam)に 属 し、AT440タ イプにあげ られ てい る。 こ の タイ プの話の展開は次 の よ うにな ってい る。

蛙 との結婚 の約束 (a)池の蛙 が三姉妹 の末娘 に きれいな水 (あ るい は、水 の中に落 とした ボール) を与え る(b)引 き換 えに蛙 と結婚す るよ う娘 に約束 を させ る

蛙 の訪問 (a)娘は蛙 との約束を忘れ るが、蛙が玄関に現わ れ、入れ て くれ るよ う頼む(b)それか ら蛙は玄関、 テーブルの上、最後 にはベ ッ ドの中で眠 る Ⅲ 魔法が解 け る (a)娘 のベ ッ ドで眠 ることを許 され ることに よっ て(b)口づげに よって(C)首を切 られ ることに よって (d)壁 にぶつけ られ ることに よってあ るいは(e)蛙皮 を焼 くことに よって、蛙 の魔法が解け、王子 にな る

鉄 の- ソ リー 王子 の忠実 な家来は、胸が張 り裂け な い よ う に、三本 の鉄 の輪 を付けてい る。彼 の主人が助け 出 され る と、そ の輪が一本ずつは じけ る 第25番 「王女 と魔法 にかけ られた王子。蛙 の王 墜 」14) 王様 の一番下 のお姫様 は森 に出かけ、涼 しい泉 に腰を下 ろ しました。そ うしてお姫様は金 のま り を取 りだ し、遊 び ましたが、突然 ま りは泉 の中に 転が りました。お姫様は ま りが深 く落 ちてい くの をながめ、泉 のそばに立 って悲 しい気持 ちにな り ました。す る と突然、蛙が水 の中か ら顔 を出 し、 「なぜそんなに悲 しんでい るの」 と尋ね ま した。 「あ ら、失礼 な蛙 さん、 あなたにわた しを助け る ことなんかで きないわ。わた しの金の ま りが 泉 の中に落 ちたの よ」 とお姫様 は答え ま した。す る と蛙 は言い ま した。 「もしお まえが僕を一緒 に家 につれ て帰 るな ら、お まえの金の ま りを取 って き てや ろ う」。お姫様がそれを約束す る と、蛙 は潜 り、す ぐにま りを 口に くわ えて上 が って き ま し た。そ して ま りを外 に放 り投げ ま した。お姫様 は 急 いで ま りを取 り戻す と、急 いで立 ち去 り、蛙 が 約束 どお り一緒 に連れ てい って くれ るよ うに叫ん で も、 聞 こ うとしませ んで した。お姫様 は家 に帰 り、王様 と食卓にすわ って、食べ よ うとす る と、 扉 を叩 く音が して、 「一番末 のお姫様、扉 をあけ て くだ さい。」 とい う声が聞 こえ ま し た。お姫様 は急いで行 き、そ こで見た ものは、 あの醜 い蛙 で した。彼女は急いで また扉 を閉 め ま し た。 しか し、父親の王様 は誰がいたのか尋ね ま した。そ し てお姫様 はすべての ことを話 しま した。す る と再 び、叫ぶ声が しました。 一番末 のお姫様 扉 を開けて くだ さい 忘れたのですか きの う あなたがわた しに言 った ことを あの涼 しい泉 のそばで 一番末 のお姫様 扉 を開けて くだ さい それ で王様 はお姫様 に蛙 のために扉 を開け るよ うに言いつけ ました。す る と蛙 はぴ ょん と跳 んで 入 って きました。それか ら蛙 は彼女 に 言 い ま し た。僕をお皿 のそば において下 さい、 あなた と一 緒 に食べたいのだか ら。彼女はそ うした くあ りま せ んで したが、王様 がやは りそ うす るよ うに言 い つけ ま した。それで蛙 はお姫様 の横 に座 り、一緒 に食べ ま した。それか らお腹がい っぱ い に な る と、お姫様 のベ ッ ドに運 んでほ しい、 あなたのそ ばで寝たいか らと言い ました。 しか しお姫様 はそ んな ことは絶対 に した くあ りませ んで した。 とい うのは彼女は冷 たい蛙が とて も怖か っ た か ら で す。 しか し王様 は今度 もそ うす るよ うに言いつけ ました。彼女は蛙 を もって、部屋 に連 れ て い く と、怒 りでい っぱいにな り、蛙 をつかむ とお もい っき りベ ッ ドの壁 に向けて投げつけ ま した。 しか し蛙 は壁 にあた るや否やベ ッ ドに落ち る と若 くて

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186 長野大学紀要 第17巻第2号 1995 美 しい王子 となって、横たわ っていました。それ でお姫様は彼の ところに横にな りました。 朝になると、王子の忠実な家来がひ くすぼ らし い馬車がや ってきました。彼は王子が姿を変えた のを痛 く悲 しんで、胸 の回 りに三本の鉄の輪を巻 き付けねはな りませんで した。それか ら王子 とお 姫様が馬車に乗 り込む と、忠実な家来は(馬車の) 後ろに立 ち、王子の国に向か って出かけ ようとし ました。す ると少 し進 んだか と思 うと、王子は後 ろで何かは じけ る音を聞きました。それで大声で 言いました。 -イン リヒ、馬車が こわれたぞ ! いいえ、 ご主人様、馬車ではあ りませ ん あなたが蛙になって 泉 のそばで座 っていた とき 大 きな苦痛のために巻いていた わた しの胸 の輪です 口伝え H.レレケによると、 この手稿(1810年)の25番 目は グィル-ルムの手に よって、 カッセルのヴィ ル ト家か らの 口承を記録 した もの とされている。 この話は初版 (第一巻、1812年)以来ず っと第-番におかれ、 『グ リム童話集』 の巻頭を飾 ってい る。 グ リム兄弟に よる初版の注釈では、 まだ話の出 所を示す地名は書かれていなか ったが、1822年 の 第二版か らは 「- ッセ ンか ら」 とのみ記 され るよ うになった01856年 の注釈15)(以下、年 号 の記載 を しない場合は1856年 の第三版 の注釈を指す) に 入れ られた第二巻13番の 「蛙 の王子」は次の よう な話である。 13 蛙 の王子 三人 の娘を持つ王がいました。彼は病気で彼の 中庭 にある泉 の水を欲 しが りました。一番上 の娘 が降 りてい き、 コップ一杯の水を汲 もうとしまし た。 しか しそれをお 目様 にか ざして見ると、濁 っ ていました。奇妙に思い、 もう一度泉 の水を汲 も うとしました。す る と泉 の中で蛙が動 き、頭を水 面に出 し、ついには泉 の縁に跳 び上が ってきて、 話 しかけてきました。 『もし僕 の恋人になって くれ るなら 澄んで、 きれいな水をあげ るよ しか し、 もし恋人にな らないな ら ピチ ャ、 ピチ ャ水を濁 らせ るよ』 『あ ら、誰がいや らしい蛙 の恋人になるもので すか』 と言 って、そのお姫様は立ち去 りました。 上 にあが って くると、妹 に泉 に座 って、水を濁す 不思議な蛙 のことを話 しました。そ こで二番 目の お姫様が降 りていき、 コップ一杯の水を汲み まし たが、それで も濁 っていたので飲め るものではあ りませんで した。そ こで蛙は再び泉の縁に座 って 言いました。 『もし僕 の恋人 になって くれ るな ら 澄んで、 きれいな水をあげるよ』 『それが私 の好都合な らね !』 と言 ってそのお 姫様は立 ち去 りました。最後 に三番 目のお姫様 も 水を汲みに来 ましたが、 うま く行 きま せ ん で し た。す る と蛙が彼女にも言い ました、 『もし僕 の恋人 になって くれ るなら 澄んで、 きれいな水をあげ るよ』 『ええ、いいわ恋人 になってあげるわ』 と彼女 はにっこ りして答えました。 『だか ら私に人 の飲 めるきれいな水をち ょうだい』 しか し彼女は こ う 考えました。 『どうってことないわ、彼の気に入 るようにそ う言 うなんて簡単 よ。だ って馬鹿な蛙 が私の恋人 にはなれ ないわ』 蛙は しか し再び水の中に飛び込み ました.彼女 が二度 目に汲む と、水は澄 んでいて、その中でお 日さまがほん とうに喜んで光 っている ほ ど で し た。彼女はた っぷ り飲む と、姉たちにも持 ってい きました

「お姉 さんたちはなんて単純 なんで し ょう、蛙を怖がるなんて。」 そのあ とお姫様はその ことをそれ 以上 考 え ず に、 日が暮れ ると満足 して横 にな りました。 しば らく横 にな りましたが、眠 られずにいると、突然 戸の ところを何かが這 う音が して、そのあ と歌 う 声が聞 こえました。 戸を開けてお くれ、戸を開けてお くれ 一番末のお姫様 - 6

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6-泉 に座 っていた とき、 僕が きれ いな水をあげ る と、 恋人 にな って くれ る と言 ったのを 覚 えていないのですか ? 「ああ、そ こにい るのはわた しの恋人 の蛙 さん」 と、 お姫様は言い ました

「わた しは彼 に約束 を したのだか ら、開けてあげ ま し ょう。」彼女は立 ち 上が り、戸を少 し開け る と、再び横 にな った。蛙 は彼女 の後 について ピ ョンと跳ね、ベ ッ ドの彼女 の足元 までや って くると、そ こに じっと し ま し た。夜が明け る と、蛙 は再 び跳び降 りて、戸 の方 へ行 き去 ってい きま した。次 の 日の晩、お姫様が また寝 よ うとす る と、 また何かが這 ってきて、戸 の ところで歌 い ま した。お姫様が戸を 開 け て や り、蛙は夜 が 明け始め るまで、彼女 の足元 に うず くま りました。三 日目の晩 も前 日の よ うにや って きた

「あなたに戸を開けてあげ るのは これが最 後 よ

「これか らは も うだめ よ」 とお姫様 は言 い ました。す る と蛙 は彼女 の枕元に跳 び上が り、お 姫様 は眠 りました。朝、 目が覚め、蛙は出てい っ たか しらと思 ってい る と、美 しくて若 い王子が 目 の前 に立 ってお り、 自分は魔法 にかけ られた王子 で、お姫様が彼 の恋人 にな る約束を して くれたの で魔法が解けた と言い ま した。そ こで二人 は王様 の ところ-行 くと、王は二人 を祝福 し、それか ら 結婚式があげ られ ました。二人 の姉たちは 自分た ちが蛙 を恋人 に しなか った ことに腹を 立 て ま し た。」 この話は、1813年3月18日に カ ッセルで、 マ リ ー ・- ッセ ソプル ー ク(MarieHassenpaug)に よって 口頭 で伝 え られ ていた。

さらに、 グ リム兄弟が三番 目の話 として紹介 し てい る、バ ーダーボル ンの話は次 の よ うな もので あ る。 これ は カ ッセルか ら少 し離れたべ -ケン ド ル フ (B8kendorf) の- クス ト- ウゼ ソ家 ( Fa-milievonHaxthausen)の寄与 に よる。 「蛙 の姿か ら魔法を解かれた王子は彼 の妻 と の別れ に際 して、一枚 の布を渡す.そ こには彼 の名前が赤 く書かれてお り、 もし彼 が 死 ん だ り、心変わ りが した ときには黒 くな る とい うも のであ った。あ る とき花嫁は残念 な こ とに、そ の名前がほん と うに黒 くな ったのを見た。そ こ で花嫁 は二人 の姉妹 とともに騎士 に変装 して王 子を探 しに出かけ、王子 の ところで雇われ る。 ところが彼女たちは疑惑 を持たれ、 エ ソ ドゥ足 を まかれ る、 とい うのは もし彼 らが豆 の上で滑 り、女であれば驚 くだろ し、 もし男であれば、 罵 るだ ろ うとい うわけであ る。 しか し彼女たち はそのた くらみを聞いていたので、豆 の上 で滑 った とき、彼女たちは罵 りの声をあげた。そ の 後王子は偽物 の花嫁 と一緒 に旅立つ と、彼女た ち三人 も王子 の馬革 の後を追 った。途 中で王子 は何か大 きなは じけ る音を聞 き、 「止 まれ、事 が こわれたぞ」 と叫んだ。す る と本物 の花嫁が 馬串 の後 ろか ら 「いいえ、 ちがい ます、それは 私 の胸 の輪が一本外れたのです。 と答えたo さ らに二度、三度王子は同 じ答えを聞 く。それで 王子は本物 の花嫁 の ことに気づ き、騎士 の姿を した花嫁 を見分けて、結婚式をあげ る。」 これ らの類話 を紹介 した後で、 グ リム兄弟は、 この話が 「ドイ ツで最 も古い話 の一つ」であ り、 悲 しみに満 ちた胸 に鉄 の輪を巻いた忠実 な家来 に ちなんで、 「鉄 の-イ ン リヒ」 とい う名前で呼ば れ てい る、 と書いてい る。そ して ゲオル ク ・ロレ ン- -ゲソの 「ドイ ツの古い家庭 の メル ヒェン」 とい う証言を挙げてい る。 これはH.レ レ ケに よ れば、 ロレン- -ゲソが

1

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5

年 に出 した 『鼠 の鳴 き声 をす る蛙』 (FroschmetJSeler (hrsg.von K.Goedeke,Leipzig 1876,S.XXVl)に書 かれ ていた 「不思議 な、家庭 の メル ヒェンで、書 かれた ものではな く、 いつ も口頭で子孫 に伝 え ら れた」 な どとして、 「鉄 の-イソ リヒ」 の物語 と 呼 んでお り、 ロレン- -ゲンはある章 のタイ トル に 「蛙 の王様」 (Ⅰ、1.2)の名前 も挙げてい るの であ る16)0 この注釈 の記述か ら、 グ リム兄弟が な ぜ こ の 「蛙 の王様」 の話を彼 らの メル ヒェソ集 の巻頭 に おいたのか。 またなぜ この話 には 「蛙 の王様」 と 「鉄 の- イソ リヒ」 とい うよ うに、 タイ トルが二 つにな ってい るのかの理 由が推測 され よ う17)。 グ リム兄弟は特 に 「胸 に巻いた鉄 の輪」 に注 目 して、いた。そ して 「ミソネの詩人」や-イ ソ リヒ ・フォン ・ザ ックス、-イ ソ リヒ獅子王 な どの歌 - 67

(6)

188 長野大学紀要 第17巻第2号 1995 を指摘 してい る。 この話が ドイ ツだけで な く、 ヨー ロッパ におい て も古 い こ とを グ リム兄弟は指摘 してい る。そ の 例 として、 ス コ ッ トラン ドで1548年 に 書 か れ た 「ス コ ッ トラン ドの不平」 の中の 『世界 の果 ての 井戸』 の話 を紹介 してい る。 「一般 に知 られ てい る話 に よれ ば、 あ る娘が継 母 に この世 の果 てにあ る井戸 か ら水 を汲 んで来 る よ うに遣わ され る。多 くの危険 な 目にあいな が ら、 そ の井戸 に着 く。 しか しす ぐに彼女は ま だ 冒険が終わ っていない こ とに気づ く。蛙 が井 戸 か ら姿 を現わ し、 水を汲 む のを許 す前 に、彼 女 に結婚 を迫 る。約束 を破れ ば、 ば らば らに引 き裂 くと脅かす。娘は無事 に家 に戻 るが、真夜 中、蛙 が玄 関 に現われ、結婚 の約束 のため、 中 に入れ る よ う求 め て、娘 と乳母 を非 常 に驚 ろか せた。 戸 を開けてお くれ、愛 しいひ とよ 戸 を開け てお くれ、愛 しいひ とよ そ して泉 のそば の草地 に座 って わ た しとあなたが話 した言葉 を思 い出 してお くれ か らは この記述 は省かれ た。 この話を提供 した ヴ ィル ト家 (FamilteW ild) は カ ッセルで 「太 陽軒」 とい う薬局 を経営 してい た。薬剤師 のル ドル フ ・ヴ ィル ト (RudolfW ild)

とそ の 妻 ドロテ-ア (Dorothea Catharina) と の間 には6人 の娘がお り、1805年以来、 グ リム兄 弟 らの隣人 であ った。 2番 「猫 とねず み の とも暮 ら し」 と3番 「マ リアの子 ども」 を提供 した のは 次女 の グ レー トヒェソ (Gretchen)であ ったが、 この一番 の話 は ヴ ィル ト家 の誰 に よる ものかほ特 定 され ていない。 謝 辞 この研究 ノー トの連載 は、1994年 度長野大学在 外研究員制度に よって、1994年 10月 よ り1995年3 月 まで ドイツ、 グ ッ/ベー タール大学

H.

レレケ教 授 の指導 の もとで行 なわれた研究成果 の一部 であ る ことを記 し、お世話 にな ったすべ ての方 々に心 か ら感謝 いた します。 (こたか やす まさ 教授) (1995.7.6 受理) 注 蛙 は 中に入れ て もら うと、彼女 に申 し出た。 あなたの膝 の上 に乗 せ てお くれ、愛 しいひ とよ あなた の膝 の上 に乗せ てお くれ、愛 しいひ とよ そ して泉 のそば の草地 に座 って わ た しとあなたが話 した言葉 を思 い出 して お くれ 最後 に、蛙 の魔 法が解 け、王子は も との姿 に戻 る。」 そ の他、初版 で の注釈 では フランスの ド-ノ ワ 夫人 の 「有益 な (良い)蛙」 に言及 し、 「よ くな い話 であ る。わ た した ちの話 とはぜ んぜ ん似 た と ころが ない」 と批判 していたが、 この ド-ノ ワ夫 人 の話 は 『妖精文 庫』 (Cabinetdesfees,Paris 1785) に再掲 され た ものであ った。 1822年 の注釈

… 68

1)LotharBluhm,"Neuer Streit um die>Alte Marie<?,in:WirkcndesWori39(1989),H.2. S.181.

2)LudwigDenecke,JacobGrimmundseinBruder Wilhelm.Stuttgart1971.

3)Die d'lteste Marchensammlung der Briider Grimm.S_vno♪sederHandschrifilichenUrfassung vow1810undderEystdrucke yon1812.Hrsg. vonHeinzR611eke.Cologny・Geneve1975.)(以 下、R611eke,AltesteSlg.と略す)

Kinder-und Hausmarchen.' Ausgabe letzter HandmitdenOriginalanmerkungenderBriider Grimm.hrsgリVOnlieinzR611eke.3Bde.Stut -tgart(Philipp Reclam)1980."Nachweis``,Bd. 3,S.4411543.(以上、ROlleke, "Nachweis" と 略す。)

4)IbidりBd.1,S.21.(訳、小沢俊夫 『完訳 グリ ム童話Ⅰ』(479-480ページ)

5)Bolte,Johannes/Polivka,Georg:Anmeykungen zu den Kinder-und Hausmarchen der Briider Grimm.Bd.ト5.Leipzlg 1913-32. Neudr. Hildesheim1963).(以下、BPI・Ⅴ と略す) 6)Handw6rierbuchdesdeutschenMarchens,Hrsg.

(7)

-33.Bd.2.Berlin 1934-40.

7)Enzyklo♪adiedosMarchens.Handwb-rterbuch zur historischen und vergleichenden Erzahl -forschung.Hrsg. von Kurt Ranke lu・a・]・ Berlin/New York 1975ff.

8)AntiAarne/StithThompson:TheTypes of theFolk・Tale.Helsinki31961.(FFC 184.)(以 下、AaThと略す。)

9)注3)

10)初版 につけ られた注釈 :HeinzR611eke,Kinder・ undHausmarchen.GesammeltdurchdieBrtider Grimm.VergrOsserterNachdruckderzweiban・ dingenErstausgabeγon1812und 1815.G6tti -ngen1986.)(以下、Grimm (1812/1815)と略す。) 注釈集第二版 :K‡iM.Vollst急ndigeAusgabeauf Grundlage der dritten Auflage (1837),hrsg. von Heinz R611eke,Frankfurt a.M.1985 (Ersatzweise aus 1856) S.863-1147.(以下、 Grimm (1822)と略す)。注釈集第三版 :Komme

n-tierte Neuausgabezusamtden Faksimiledes Anmerkungsbandesvon 1856,hrsg.vonHeinz R611eke,Stuttgart1980.(以下、Grimm (1856)

と略す)0 ll)BPI・Ⅴ.

12)注3)お よび、,,Einzelkommentar",in: ヤoll standige Ausgabe aufGrundlage derdritten Auflage (1837), hrsg.von Heinz R61leke. Frankfurta.M.1985,S.1190-1285."Erlauter・

ung",in:R611eke,AltesteSlg.,S.34ト398. を参照。 13)AaTh,S.149f. 14)R611eke,AltesteSlg.,S.144-153. 15)Grimm (1856),S.3-7. 16)R611eke,Nachweis.,S.442. 17)拙稿 「グリムの 『蛙の王様』におけ る-イソリヒ のエ ピソー ド」 (関西大学 「独逸文学」第36号 (平 成4年6月)22-41ページ)参照。

参照

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