∼用語『元素』・『単体』・『化合物』・『混合物』を中心にして∼
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松 森 靖 夫
入 山 裕
田 中 啓 太
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1.はじめに 化学教育における重要な内容の一つとして物質概念の理解を挙げることができる.また,物質概念 の下位概念の一つとして,原子や分子等を内包する粒子概念を位置づけることができ,物質を微視的 に理解する上で不可欠な概念である.しかし,原子・分子などの粒子は実際に肉眼で観察することが できないため,生徒にとっては極めて理解しづらい概念である.また新学習指導要領では,小・中学 校において系統性を重視した粒子に関する内容配列がなされており,粒子表現は,中学校や高等学校 の理科教科書の表現例として多用されている. ところが,多用される粒子表現とは裏腹に,粒子概念に関する中学生・高校生の非常に低い認識状 態が指摘されている.例えば,宮城ら(1990)は,中学生の化学的な知識の理解度(特に理解度の学 年による変化)について調査している.本調査では,学年が上がるにつれて水が水素分子と酸素分子 の混合物ではないと認識できる生徒が増える傾向があるが,3年末になっても多くの生徒が水を水素 分子と酸素分子の混合物として認識していることを明らかにしている.また,喜多ら(2006)は,物 質を粒で表現したイメージ図を高校生に提示し,物質と原子・分子との関係性の理解について調査し ている.本調査では,単体,化合物,及び混合物のイメージ図から純物質を表している図を選択する際, 多くの高校生が単体のイメージ図だけを選ぶことを指摘している. そこで,本稿では,物質や粒子等を表現する用語の意味内容に対する生徒の低い認識状態を払拭す るための方策を探る目的で,我が国の文部科学省検定済理科教科書の分析を行う.具体的には,中学 校理科,化学Ⅰ,理科総合A,及び理科基礎の全教科書(以下,理科教科書と総称)に掲載されてい る物質の分類に関する用語(単体・化合物・混合物),及び物質を構成する基本的な成分を意味する 用語(元素)の概念規定について把握して分析を加える.さらに,理科教科書における各用語の概念 規定に対する妥当性や問題点等についても検討する. 2.本研究の目的 本研究の目的は,以下の2点である. (1)理科教科書にみる各用語(元素・単体・化合物・混合物)の概念規定を概観し,いくつかの記 述パターンに整理する. (2)上記(1)で明らかになった各用語(元素・単体・化合物・混合物)の概念規定の記述パター ンを比較・照合しながら,その妥当性や問題点等を指摘する. 山梨県北杜市立甲陵高等学校非常勤講師3.理科教科書を概観するための手続き 3.1.対象となる理科教科書 現行の計5社から発行されている文部科学省検定済中学校理科教科書(日高ほか,2005D,2005E; 細矢ほか,2002D,2002E;三浦ほか,2005D,2005E;竹内ほか,2005D,2005E;戸田ほか,2005D, 2005E),計7社から発行されている文部科学省検定済化学Ⅰ教科書(細矢ほか,2002;井口ほか, 2006D,2006E;野村ほか,2006;齋藤ほか,2006D,2006E,2006F;佐野ほか,2006D,2006E;竹内 ほか,2006D,2006E;梅澤ほか,2006D,2006E;渡辺ほか,2006),計7社から発行されている文部 科学省検定済理科総合A教科書(細矢ほか,2002;小宮山ほか,2005D,2005E;松井ほか,2005D, 2005E;太田ほか,2005D,2005E;佐野ほか,2006D,2006E;佐藤ほか,2005D,2005E;高木ほか, 2005),及び計4社から発行されている文部科学省検定済理科基礎教科書(小川ほか,2002;杉山ほか, 2002;高橋ほか,2002;上田ほか,2002)である. 3.2.概念規定の記述パターン化の方法 研究者3名の合意に基づきながら,理科教科書に掲載されている各用語(元素・単体・化合物・混 合物)の概念規定を抽出し,類似したもの同士を一つの記述パターンとして整理し,最終的にはいく つかの記述パターンにまとめていく. 4.理科教科書中にみる概念規定 4.1.元素に関する概念規定 中学校理科では,元素が取り扱われておらず, 高等学校理科の化学Ⅰ・理科総合A・理科基礎に おいて元素が取り扱われている.現行の化学Ⅰ・ 理科総合A・理科基礎の教科書計31冊において元 素の概念規定を列記したものを本論文末の付表1 ∼3に示したので参照されたい.なお,理科基礎 における元素の記述は,かつての化学史上におい て垣間みられる捉え方(たとえば,ラボアジェの説)であった.したがって,理科基礎を除く化学Ⅰ・ 理科総合Aの教科書計27冊における概念規定に関する記述について類似するものをまとめると,表1 のような8パターンに分けることができる. 4.2.単体・化合物に関する概念規定 中学校理科第1分野(下)の全教科書計5冊において単体と化合物が取り扱われている.また,高 等学校では,化学Ⅰ,理科総合A,及び一部の理 科基礎の教科書計28冊において両用語が取り扱わ れている.計33冊における単体の概念規定を示し たものが本論文末に示した付表4∼7であり,化 合物の概念規定を示したものが付表8∼11である. 各表の記述について類似するものをまとめると, 単体は12パターンの記述(表2)に分けることが でき,化合物については16パターンの記述(表3) に分けることができる. 4.3.混合物に関する概念規定 現行の理科教科書計32冊において,混合物に関 する概念規定が掲載されている(付表12∼15参 種類 記述パターン (冊) Ⅰ 物質を構成する基本的な成分 11 Ⅱ 単体や化合物を構成する基本的な成分 8 Ⅲ 純物質を構成する基本的な成分 1 Ⅳ 物質をつくる基本的な成分 3 Ⅴ 物質を構成する基礎的な成分 1 Ⅵ 物質を構成する基本的な要素 2 Ⅶ 物質の基本的な成分 4 Ⅷ 単体や化合物を構成する成分 1 表1 元素の概念規定の記述パターン 種類 記述パターン (冊) Ⅰ 1種類の元素からできている物質 16 Ⅱ 1種類の元素からできている純物質 12 Ⅲ 1種類の成分からなる物質 1 Ⅳ 1種類の成分でできている純物質 5 Ⅴ 1種類の原子からできている物質 5 Ⅵ それ以上別の成分に分けることのできない純物質 2 Ⅶ それ以上ほかの物質に分けることのできない物質 1 Ⅷ それ以上分けることができない純物質 1 Ⅸ それ以上別の物質に分解することのできない純物質 2 Ⅹ それ以上別の純物質に分解できないもの 3 Ⅺ それ以上別の純物質に分解できない物質 1 Ⅻ 化合物を分解したもの 1 表2 単体の概念規定の記述パターン
照)具体的には,中学校理科第1分野(上)の教 科書計4冊,高等学校理科教科書計28冊(化学Ⅰ, 理科総合A,及び一部の理科基礎教科書)である. 類似するものをまとめると,表4のような13パター ンに分けることができる. 5.各用語に関する概念規定の分析と問題点 5. 1.元素について 本章では,表1の概念規定の記述パターンに分析を加え,問題点の有無についても検討する.記述 パターンⅠの『物質を構成する基本的な成分』は,理科教科書計11冊に掲載されており最も多く用い られている.記述パターンⅡの『単体や化合物を構成する基本的な成分』やⅢの『純物質を構成する 基本的な成分』は,Ⅰと比べると『…構成する基本的な成分…』という部分は同じであるが,『物質』 を『単体や化合物』または『純物質』に限定している.したがって,『単体や化合物』もしくは『純物 質』という用語による記述パターンⅡやⅢにおいて,物質よりも意味内容に具体性を持たせているた め,元素の適応範囲から混合物を除外してしまうことになる.換言すれば,ⅡやⅢの記述パターンでは, Ⅰより元素の適用範囲が狭くなるために,元素の概念規定としては不十分であると結論づけることが できる. 一方,記述パターンⅣの『物質をつくる基本的な成分』は,記述パターンⅠと比べると,『構成する』 するという表現が『つくる』という表現に置換されている.『構成する』という語の原義は, かまえつ くること.いくつかの要素を組み立てて一つのものをこしらえること,または組み立て.構造. で ある(新村出,2008).一方,『つくる』の原義は,材料にあれこれ手を加えて目的の物をこしらえ出す ことであるため(新村出,2008),『つくる』という表現では,合成するという意味に捉えられてしま う危険性を孕んでいる. また,上記以外にも各記述パターンの間に,言語表現の違いが散見される.例えば,記述パターン Ⅰと比べると,記述パターンⅤの『物質を構成する基礎的な成分』やⅥの『物質を構成する基本的な 要素』では,『基本的な成分』という表現の一部が『基礎的』または『要素』という表現に置換されて いる.記述パターンⅦの『物質の基本的な成分』やⅧの『単体や化合物を構成する成分』においても, 種類 記述パターン (冊) Ⅰ 2種類以上の元素からできている物質 14 Ⅱ 2種類以上の元素からできている純物質 10 Ⅲ 2種類以上の成分でできている物質 1 Ⅳ 2種類以上の成分でできている純物質 4 Ⅴ 2種類以上の原子からできている物質 5 Ⅵ 複数の元素からできた物質 1 Ⅶ 2種類以上の原子が一定の割合で結び ついてできている物質 1 Ⅷ 2種類以上の成分が一定の割合で結び ついてできている純物質 1 Ⅸ 2種類以上の成分が、ある決まった割 合で結びついてできている物質 1 Ⅹ 2種類以上の元素が一定の割合で結び ついてできている物質 1 Ⅺ 2種類以上の元素の原子が一定の割合 で結びついてできている物質 1 Ⅻ 化合によってできた物質 3 単体が一定の割合で化合したもの 1 2種類以上の物質に分解することのできる純物質 3 2種類以上の純物質に分解できる物質 1 ;9, 2種類以上の純物質に分解できるもの 3 表3 化合物の概念規定の記述パターン 種類 記述パターン (冊) Ⅰ 2種類以上の純物質が混じり合ったもの 5 Ⅱ 純粋な物質が2種類以上混ざった物質 1 Ⅲ 複数の純粋な物質が混ざり合ったもの 1 Ⅳ 2種類以上の純物質が不特定な割合で 混じり合っているもの 1 Ⅴ 純物質が混ざり合った物質 2 Ⅵ 2種類以上の物質が混じり合ったもの 9 Ⅶ いくつかの物質が混じりあったもの 2 Ⅷ 何種類かの物質が混合したもの 1 Ⅸ いろいろな物質が混ざってできているもの 1 Ⅹ 2種類以上の物質が混じり合ってできた物質 7 Ⅺ いくつかの物質がまじりあった物質 1 Ⅻ 何種類かの物質がいろいろな割合で混 じり合った物質 1 ろ過や蒸留などの方法により、2種類以 上の物質に分離することができるもの 2 表4 混合物の概念規定の記述パターン
ⅠやⅡと比べると,『構成』もしくは『基本的な』という表現が消えて簡略化されている.このような 多様な文章表記による概念規定は,少なからず生徒に混乱を生じさせるものと考えられる. 5. 2.単体について 表2の記述パターンを分析し,問題点を検討する.記述パターンⅠの『1種類の元素からできてい る物質』は,理科教科書計16冊に掲載されており,最も多く用いられている.しかしながら,Ⅰの表 現は『物質』という用語が充当されているため,科学的に誤りを含む記述パターンとして位置づける ことができる.たとえば,1種類の元素でできている物質である酸素とオゾンの混合物なども,単体 に含まれることになってしまうためである.この問題点は,Ⅰだけではなく,記述パターンⅢの『1 種類の成分からなる物質』やⅤの『1種類の原子からできている物質』にも同様にあてはまる.一方, 記述パターンⅡの『1種類の元素からできている純物質』やⅣの『1種類の成分でできている純物質』 のように,『純物質』という用語によって『物質』より意味内容に具体性を持たせ,1種類の元素でで きている混合物が単体であるといった科学的な誤りを排除している表現も存在する. 記述パターンⅤの『1種類の原子』という表現では,原子の種類は同じであるが質量数の異なる同 位体の存在によって,混乱が生じる可能性があるものと推察される.例えば,塩素分子は単体であるが, 塩素原子には質量数35の塩素原子35&Oと質量数37の塩素原子37&Oが存在していることから,この質量 数の異なる塩素原子の組み合わせによって構成されている塩素を単体ではないと誤った判断をしてし まう危険性を孕んでいる. 記述パターンⅥ∼Ⅷにおいては,『分ける』という用語が用いられている.『分ける』という表現では, 『分解』を表しているのか,それとも『分離』を表しているのかが判然としないために,生徒達に認 知的混乱を生じさせる可能性があるものと推察される.しかし,記述パターンⅨ,Ⅹ,及びⅪでは,『分 解』という用語を用いて『分ける』より意味内容に具体性を持たせており,『分解』と『分離』との混 乱を排除した科学的な概念規定となっている. 同じく,『分解』を用いている記述パターンⅫ『化合物を分解したもの』であるが,化合物を分解し たときに生じる可能性がある化合物の存在(例えば,炭酸水素ナトリウムの熱分解(21D+&23→1D2&23 ++22+&22)など)を無視したものであり,科学的な誤りを含む概念規定であると言える. 5. 3.化合物について 表3の記述パターンⅠの『2種類以上の元素からできている物質』が最も多く,計14冊に掲載され ている.この表現では,『物質』という用語を用いているため,2種類以上の元素からできている純物質, 及び2種類以上の元素からできている混合物(例えば,塩化ナトリウム水溶液(1D&Oと+22の混合物) など)の両者を含み合わせて化合物だと規定していることになる.周知の通り,2種類以上の元素か らできている混合物は化合物ではないため,科学的に誤りを含んだ記述パターンだと言える.同様に, このような『物質』の誤用によって生じる科学的に誤った記述パターンとして,記述パターンⅢ,Ⅴ, 及びⅥを挙げることができる. 一方,記述パターンⅡやⅣは,『物質』ではなく『純物質』という用語を用いることで,物質より具 体性を持たせ,化合物の適用範囲から混合物を除外している.このように『純物質』を用いて化合物 の適用範囲を限定することで,『2種類以上の元素からできている混合物が化合物である』といった科 学的な誤りを排除している概念規定も存在している. 記述パターンⅤの『2種類以上の原子』という表現には,原子の種類は同じであるが質量数の異な る同位体による単体を,化合物と誤って判断してしまう危険性が潜んでいる.記述パターンⅦにもあ てはまる問題点である. 高等学校の一部の理科教科書で用いられている記述パターンⅦ∼Ⅺには,共通して『結びついてい る』という表現が用いられている.この表現は暗黙のうちに化学的な結合を指し示すものであるが,
高等学校の理科教科書において化合物を学習する段階では,まだ化学的な結合について学習していな い.そのため,生徒達にとっては,化学的な結合であるのか(それとも物理的な結合を指し示すもの であるのか)が判然としないために,認知的混乱を生じさせる可能性があるものと推察される.『結び ついている』に類似した表現として『化合』という用語が用いられている記述パターンⅫや も認め られる.『化合』という用語については,中学校理科において既習であるため,生徒達は化学的な結合 であると容易に判断できるものと考えられる.ところが,記述パターン のように『単体』を用いた 場合,化合物が一定の割合で化合した化合物(例えば,+22&22→+2&23など)を除外してしまう ため,化合物の概念規定としての科学的正当性を欠くものとなっている. 残りの記述パターン である『2種類以上の物質に分解することのできる純物質』, の『2種類 以上の純物質に分解できる物質』,及び;9,の『2種類以上の純物質に分解できるもの』では,いずれも『分 解』という用語を用いて化合物を説明している点では共通しているが,下線部を付したように化合物 の捉え方(『純物質』,『物質』,『もの』)が異なっている.このような異なる物質の階層による概念規定は, 生徒達に混乱を生じさせる可能性があるものと推察される. 5. 4.混合物について 表4に示した計13の記述パターンでは,8パターンが『もの』という表記を用いており,残りの5 パターンは『物質』という表記を用いている.「もの」の原意は, 形ある物体をはじめとして,存在の 感知できる対象 であり(新村出,2008),混合物を「物質」より広い意味内容で捉えている.この ような異なる物質の階層による概念規定を用いることは,生徒達の科学的認識を阻害する一要因にな るものと考えられる. 記述パターンⅠ∼Ⅴは,異種の純物質が混合していることに着目している.しかしながら,Ⅰ∼Ⅴは, 純物質が混合していることに着目しているために, 異種の混合物と混合物が混合した混合物(例えば, 塩化マグネシウム水溶液と牛乳の混合物など)や, 混合物と純物質が混合した混合物(例えば,塩化 ナトリウム水溶液とブドウ糖の混合物など)を含 め合わせない不完全な概念規定だと言える.一方, 記述パターンⅥ∼Ⅻのように,異種の物質が混合 していることに着目することで,異種の混合物と 混合物が混合した混合物や,混合物と純物質が混 合した混合物を含んだ科学的な概念規定の表現も 存在する. その他,分離できることに着目した記述パター ン を挙げることができる.ところが,現行の高 等学校の理科教科書において『分離』は,混合物 の後(もしくは同時)に学習する順序になってい るため,混合物の学習段階で未学習の『分離』を 持出すと,生徒達の認識達成を妨げることになる. 5. 5.各用語の概念規定の統一性の欠如 以上,我が国の理科教科書における四つの用語 (元素・単体・化合物・混合物)の概念規定を概観 してきた.その結果,各教科書を通した統一的な 概念規定が存在しないことや,中には非科学的な 図1 教科書Oにみる単体と化合物の記述 図2 教科書Kにみる元素、単体、及び化合物の記述
概念規定等も散見されることが明らかになった. ところで,単一の理科教科書の中でも,各用語について複数の異なる記述が存在するものがある. 例えば,教科書Oでは,図1で示すように,単体と化合物自体の記述部分と,元素にかかわる文脈中 にみる単体と化合物の記述部分では,単体と化合物について異なる概念規定がなされている. また,図2に示すように,教科書Kでは,元素,単体,及び化合物について意味内容の異なった概 念規定が存在している.元素の概念規定は,構成する基本的な成分という部分は同じであるが,『単体 や化合物』という用語を用いていたものが,後の元素についての記述部分では『物質』という用語に 置換され,元素の適用範囲が広くなっている.単体や化合物の概念規定に関しても,概念規定の一部 分は同じであるが,『純物質』という用語が用いられていたものが,後の両用語についての記述部分で は,『物質』という用語に置換され,単体や化合物の適用範囲が広くなっている. このように,複数の記述が存在する教科書の中には,必ずしも記述に統一性がみられるわけではな い.記述に統一性がみられない理科教科書は,計37冊中15冊(41)も存在した. 既に述べてきたように,概念規定が統一されていない理科教科書の存在は,生徒の学習に大きな混 乱を生じさせるものと懸念される.今後は,粒子概念などに関する各用語に対する統一のとれた整合 性ある概念規定を掲載した理科教科書の作成が急務である. 文献 日高敏隆ら(2005D):『中学校科学1分野上物質とエネルギー』学校図書,S61. 日高敏隆ら(2005E):『中学校科学1分野下物質とエネルギー』学校図書,SS132161 細矢治夫ら(2002):『高等学校化学Ⅰ』三省堂,SS182021. 細矢治夫ら(2002):『理科総合A』三省堂,SS68. 細矢治夫ら(2002D):『理科1分野上∼実験から自然のしくみを見つける∼』三省堂 細矢治夫ら(2002E):『理科1分野下∼実験から自然のしくみを見つける∼』三省堂,SS1635. 井口洋夫ら(2006D):『化学Ⅰ新訂版』実教出版,SS121620. 井口洋夫ら(2006E):『高等化学Ⅰ新訂版』実教出版,SS141632. 小宮山宏ら(2005D):『改訂版理科総合A物質とエネルギーのサイエンス』数研出版,SS1011 小宮山宏ら(2005E):『高等学校理科総合A』数研出版,SS1012 喜多雅一,渡邊敏夫,ギルバート・オウン(2006):『高校化学における粒子概念の理解度に関する調査研究』 岡山大学教育実践センター紀要,9RO6SS3338. 松井孝典ら(2005D):『理科総合Aシステムとしてみる自然』東京書籍,SS1823. 松井孝典ら(2005E):『新編理科総合A』東京書籍,SS182223. 三浦登ら(2005D):『新編新しい科学1分野上』東京書籍,S71. 三浦登ら(2005E):『新編新しい科学1分野下』東京書籍,SS1420. 宮城陽,伊佐公男(1991):『水は化合物か混合物か―中学生の理解度調査―』化学と教育,9RO391R2, SS9697. 野村祐次郎ら(2006):『改訂版高等学校化学Ⅰ』数研出版,SS131419. 小川正賢ら(2002):『理科基礎』大日本図書,S35. 太田次郎ら(2005D):『高等学校理科総合A改訂版』啓林館,SS1618202146. 太田次郎ら(2005E):『高等学校新編理科総合A改訂版』啓林館,SS1618. 齋藤烈ら(2006D):『0DVWHU化学Ⅰ』啓林館,SS10141617. 齋藤烈ら(2006E):『高等学校化学Ⅰ改訂版』啓林館,SS101516. 齋藤烈ら(2006F):『高等学校新編化学Ⅰ』啓林館,SS91314. 佐野博敏ら(2006D):『高等学校改訂化学Ⅰ』第一学習社,SS10121516.
佐野博敏ら(2006E):『高等学校改訂新化学Ⅰ』第一学習社,SS81016. 佐野博敏ら(2006D):『高等学校改訂理科総合A』第一学習社,SS14181940. 佐野博敏ら(2006E):『高等学校改訂新理科総合A』第一学習社,SS121628. 佐藤文隆ら(2005D):『理科総合A新訂版』実教出版,SS1415. 佐藤文隆ら(2005E):『新版理科総合A』実教出版,SS202458. 新村出(2008):『広辞苑第六版』岩波書店,SS94818682794 杉山滋郎ら(2002):『理科基礎私たちにとって科学とは』数研出版,SS1718 高木隆司ら(2005):『改訂理科総合A』大日本図書,SS161819. 高橋哲郎ら(2002):『理科基礎』実教出版,S20. 竹内敬人ら(2006D):『化学Ⅰ』東京書籍,SS182227. 竹内敬人ら(2006D):『未来へひろがるサイエンス第1分野上』東京書籍,S64. 竹内敬人ら(2006E):『未来へひろがるサイエンス第1分野下』東京書籍,SS1839. 竹内敬人ら(2006E):『新編化学Ⅰ』東京書籍,SS1013. 戸田盛和ら(2005D):『新版中学校理科1分野上』大日本図書,S69. 戸田盛和ら(2005E):『新版中学校理科1分野下』大日本図書,SS233044. 上田誠也ら(2002):『理科基礎自然のすがた・科学の見かた』東京書籍,S37. 梅澤喜夫ら(2006D):『精解化学Ⅰ』数研出版,SS14181940. 梅澤喜夫ら(2006E):『改訂版新編化学Ⅰ―物質の世界へ―』数研出版,SS1021. 渡辺正ら(2006):『新版化学Ⅰ』大日本図書,SS10121315. 付表:我が国の理科教科書における『元素』・『単体』・『化合物』・『混合物』の概念規定の記述 教科書 概 念 規 定 $ 純物質を構成する基本的な成分を元素といい,…. % 単体や化合物を構成する基本成分を元素という. & 物質をつくる基本的な成分を元素という. ' 物質を構成している基本的な成分を元素という. ( 元素とは物質を構成する基礎的な成分であり,…. 物質を構成する基本的な成分. ) 物質を構成している基本的な成分を元素という. * 物質を構成している基本的な成分を元素という. + 物質をつくっている基本成分を元素という. , 物質をつくっている基本成分を元素という. - 化合物や単体を構成する基本成分を元素という. . 単体や化合物を構成する基本的な成分を元素という. 物質を構成する基本的な成分. / 物質を構成する基本的な成分を元素という. 0 単体や化合物を構成している基本的な成分を元素という. 1 物質を構成する基本的成分を元素という. 2 物質を構成する基本的な要素を元素という. 付表1 化学Ⅰ教科書における『元素』の概念規定の記述 付表2 理科総合A教科書における『元素』の概念規定の記述 付表4 化学Ⅰ教科書における『単体』の概念規定の記述 教科書 概 念 規 定 3 物質を構成する基本的な成分を元素といい,…. 物質の基本的成分で,…. 4 単体や化合物を構成する基本的な成分を元素という. 5 物質の基本的な成分を元素という. 6 物質の基本的な成分を元素という. 7 物質を構成する基本成分を元素という. 8 単体や化合物を構成する基本的な成分を元素という.物質を構成する基本的な要素. 教科書 概 念 規 定 $ 純物質のうち,…<中略>…,1種類の元素のみでで きているものを単体という. % それ以上別の成分に分けることのできない純物質を単 体という. 単体は1種類の元素でできた純物質,…. & 1種類の元素からできている物質を単体という. ' 1種類の元素だけでできている物質を単体という.化合物を分解したものが単体である. 9 物質の基本成分を元素とよぶ. : 単体や化合物を構成する基本的な成分を元素という.物質を構成する基本的な成分. ; 単体や化合物を構成する成分を元素という. < 物質を構成する基本的な成分を元素と呼ぶ. = 単体を構成する基本的な成分を元素という. D 単体や化合物を構成する基本的な成分を元素という. 付表3 理科基礎教科書における『元素』の概念規定の記述 教科書 概 念 規 定 E もうそれ以上分けられない成分のことを元素とよぶようになった. F 元素とは,それ以上化学的に分解できない基本的な構成成分である. G ラボアジェが考えた元素とは,それ以上ほかの物質に 分けることのできない究極の物質. I 元素とは実験によって,もはや分解することのできな い物質.
( 1種類の元素だけでできている物質を単体という. ) …,1種類の元素だけでできている物質を単体という. * ただ1種類の元素でできている純物質を単体という. + 1種類の元素からできた純物質を単体といい….1種類の元素からなる物質.) , 1種類の元素からできた純物質を単体といい,…. - ただ1種類の成分だけからなる純物質を単体という. …,単体は1種類の元素からなる物質であり,…. . ただ1種類の成分だけからできている純物質を単体と いう. 1種類の成分からなる物質 / それ以上別の物質に分解できない.このような純物質 を単体という. 『元素』という言葉を用いると,『単体は一種類の元素 だけからできている物質であり….』 0 それ以上分けることができない純物質を単体という. 単体は『ただ1種類の元素からできている物質』とい うことができる. 1 それ以上別の純物質に分解できないものを単体という.単体は1種類の元素からできている純物質. 2 それ以上別の純物質に分解できない物質を単体という.単体は1種類の元素からなる物質,…. 付表5 理科総合A教科書における『単体』の概念規定の記述 教科書 概 念 規 定 3 純物質のうち,1種類の元素のみからできているもの を単体という. 4 1つの成分からできている純物質を単体という.単体は1種類の元素からできている物質で,…. 5 1種類の元素のみからなる物質を単体という. 6 1種類の元素のみからなる物質を単体という. 7 ただ1種類の元素からできている純物質を単体という. 8 それ以上別の純物質に分解することができないものを 単体という. 単体は1種類の元素からできている純物質. 1種類の元素からなる物質. 9 …,同じ元素だけでできている.こうした物質を単体という. : その成分が1種類であり,それ以上ほかの成分に分け られない純物質を単体という. 単体は,1種類の元素だけからなる純物質であり,…. 成分が1種類の純物質. ; 1種類の成分からできている純物質を単体という. < それ以上別の物質に分解することのできない純物質を 単体という. 単体は1種類の元素からなる物質であり,…. = それ以上ほかの物質に分けることのできない物質を単体といい,…. D それ以上別の純物質に分解することができないものを 単体という. 1種類の元素からなる純物質. 付表6 理科基礎教科書における『単体』の概念規定の記述 教科書 概 念 規 定 E 記述なし F 記述なし G 記述なし I 1種類の元素だけからできた物質 教科書 概 念 規 定 J 1種類の原子だけからできている物質を単体,…. K 1種類の原子だけからできている物質を単体という. L 1種類の原子だけでできている物質を単体といい,…. M 1種類の原子からできている物質を単体といい,…. N 1種類の原子からなる物質を単体という. 付表7 中学校理科教科書における『単体』の概念規定の記述 付表8 化学Ⅰ教科書における『化合物』の概念規定の記述 教科書 概 念 規 定 $ 2種類以上の元素でできている純物質を化合物という. % 2種類以上の成分が,ある決まった割合で結びついて できている物質を化合物という. 化合物は2種類以上の元素でできた純物質である. & 2種類以上の元素の原子が一定に割合で結びついてできる物質を化合物という. ' 2種類以上の元素が一定の割合で結びついてできてい る物質を化合物という. 単体が一定の割合で化合したものが化合物である. ( 2種類以上の元素でできている物質を化合物という. ) 2種類以上の元素でできている物質を化合物という. * 2種類以上の元素からできている純物質を化合物という. + 2種類以上の元素からできた純物質を化合物という.2種類以上の元素からなる物質. , 2種類以上の元素からできた純物質を化合物という. -2種類以上の成分が一定の割合で結びついてできてい る純物質を化合物という. 化合物は2種類以上の元素から,…<中略>…からな る物質であり,…. . 2種類以上の成分からできている純物質を化合物という.2種類以上の成分からなる物質. / 純物質は,化合物と単体に分類される.化合物は化学 的な方法によって,2種類以上の物質に分解すること ができる. 元素という言葉を用いると,…<中略>…化合物は2種 類以上の元素からできている物質である…. 0 2種類以上の物質に分けることができる純物質を化合 物という. 化合物は『2種類以上の元素からできている物質』となる. 1 2種類以上の純物質に分解できるものを化合物という.化合物は2種類以上の元素からできている純物質. 2 2種類以上の純物質に分解できる物質を化合物という. 化合物は2種類以上の元素からなる物質である. 付表9 理科総合A教科書における『化合物』の概念規定の記述 教科書 概 念 規 定 3 2種類以上の元素からできている純物質を化合物という. 4 2種類以上の成分からできている純物質を化合物という. …,化合物は2種類以上の元素からできている物質で ある. 5 2種類以上の元素からなる物質を化合物という. 6 2種類以上の元素からなる物質を化合物という. 7 2種類以上の元素からできている純物質を化合物という. 8 2種類以上の純物質に分解できるものを化合物という. 化合物は2種類以上の元素からできている純物質. 2種類以上の元素からなる物質. 9 複数の元素からできた物質を化合物という. : 2種類以上の成分からなる純物質を化合物という. 化合物は,2種類以上の元素からなる物質である.
付表10 理科基礎教科書における『化合物』の概念規定の記述 付表13 理科総合A教科書における『混合物』の概念規定の記述 付表14 理科基礎教科書における『混合物』の概念規定の記述 付表15 中学校理科教科書における『混合物』の概念規定の記述 付表11 中学校理科教科書における『化合物』の概念規定の記述 付表12 化学Ⅰ教科書における『混合物』の概念規定の記述 ; 2種類以上の成分からできている純物質を化合物という. < 2種類以上の物質に分解することのできる純物質を化 合物という. 化合物は2種類以上の元素からなる物質である. = …,2種類以上の元素からなる物質を化合物という. D 2種類以上の純物質に分解できるものを化合物という. 2種類以上の元素からなる純物質. 教科書 概 念 規 定 E 記述なし F 記述なし G 記述なし I 2種類以上の元素が結びついてできた物質. 教科書 概 念 規 定 3 ろ過や蒸留などの方法により,2種類以上の物質に分 離することができるものを混合物という. 4 ろ過や蒸留などの方法により,2種類以上の物質に分けることができるものを混合物という. 5 2種類以上の物質が混じり合っているものを混合物という. 6 2種類以上の物質が混じり合っているものを混合物と いう. 7 物質には,…<中略>…2種類以上の物質が混ざり 合った混合物とがある. 8 2種類以上の物質が混ざりあったものを混合物という.複数の物質が混じりあったもの. 9 純物質が混ざり合った物質を混合物という. : …,2種類以上の純物質が混じりあった混合物である. ; 2種類以上の物質が混じりあってできている物質を, 混合物という. 2種類以上の純物質が混合しているもの. < …<中略>…物質は,2種類以上の物質が混じり合っ ている.このような物質を混合物という. = 自然界や私たちの身のまわりには…<中略>…,2種 類以上の物質が混じり合っており,このような物質を 混合物という. D 2種類以上の物質が混じりあったものを混合物という. 教科書 概 念 規 定 E 記述なし F 概念ラベルのみ表記,記述なし G 記述なし I 2種類以上の純物質が混ざり合ったものは混合物と呼ばれ,…. 教科書 概 念 規 定 J 複数の純粋な物質が混ざり合ったものを混合物という. K いろいろな物質が混ざってできているものを混合物と いう. L いくつかの物質が混じり合ったものを混合物という. M 純粋な物質が2種類以上混ざった物質を混合物という. N 記述なし 教科書 概 念 規 定 J …,2種類以上の原子からできている物質を化合物という. K 2種類以上の原子からできている物質を化合物という.化合してできた物質は化合物である. L …,2種類以上の原子でできている物質を化合物という.化合によってできた物質は,化合物である. M 2種類以上の原子が結びついてできている物質を化合 物という. 化合によってできた物質は化合物であり,…. N 2種類以上の原子が結びついてできている物質のこと を化合物という. 教科書 概 念 規 定 $ 何種類かの物質が混合したものを混合物という. % 2種類以上の物質が混じり合ったものを混合物という. & 2種類以上の純物質が混じり合ったものが混合物である. ' 2種類以上の純物質が混じり合ったものが混合物である. 純物質を任意の割合で混合したものが混合物である. ( …,2種類以上の純物質が不特定な割合で混じり合っ ている場合が多い.これを混合物といい,…. 2種類以上の純物質が混じり合ったもの. ) 2種類以上の物質が混ざり合ったものを混合物とい う. * 2種類以上の物質が混じり合ったものを混合物という. + 物質には,…<中略>…いくつかの物質が混じった混 合物がある. , 物質には,…<中略>…,いくつかの物質が混じった混合物がある. - 2種類以上の物質が混じり合ってできた物質を混合物という. . 自然界の物質の多くは,2種類以上の物質が混じり 合ってできている混合物である. / 自然界の物質の多くは,何種類かの物質がいろいろな 割合で混じり合った混合物である. 0 2種類以上の物質が混じり合ったものを混合物という. 1 私たちの身のまわりにある物質の多くは,2種類以上の物質が混じりあった混合物である. 2 いくつかの物質が混じりあったものを混合物という.