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「動的防衛力」構想の含意と課題

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Academic year: 2021

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動 的 防衛 力 」 構 想 の含 意 と課 題

キ ー ワ ー ド:動 的 防 衛 力,基 盤 的 防 衛 力 構 想,防 衛 大 網,中 期 防 衛 力 整 備 計 画 帝 国 国 防 方 針 平 成22年12月,防 衛 省 は 昭和51年 以 来 三 度 策 定 され て き た 「防 衛 計 画 の 大 綱 」(以 下,「 防 衛 大 綱 」)に お い て 一 貫 して 中 核 的概 念 で あ っ た 「基 盤 的 防 衛 力 構想 」 と決 別 し,新 た に 「動 的 防 衛 力 」 な る 概 念 を採 用 して,新 「防衛 大 綱 」 及 び そ の 具 体 化 に 向 け た新 た な 「中 期 防 衛 力 整 備 計 画 」(以 下, 「中期 防 」)を 発 表 した 。 さ らに,そ れ に先 立 つ 平 成22年8月 に は,23年 度 ロ   版 『日本 の 防 衛 』(以 下,『 防衛 白書 』)を 発 行 し,そ の 中 で 「動 的 防衛 力 」 を概 括 的 に説 明 す る 一 方,「 防 衛 力 の 実 効 性 向 上 の た め の構造 改 革 推 進 に 向 け た ロ ー ドマ ップ 動 的 防衛 力 の構築 に 向 け た全 省 的 取 組 」(以 下, 「ロ ー ドマ ップ」)を 発 表 した 。 と こ ろ が,こ れ らの 文 書 の 中 で は,「 動 的 防衛 力 」 が い か な る戦 略 に基 づ い て い る の か 明示 され て い な い し,当 然 そ う した 戦 略 と密 接 に関 連 させ る形 で 自衛 隊 全 体 の装 備,編 成,態 勢 を具体 的 に どの よ う に変 化 させ る か も必 ず し も明 確 で な い 。 こ れ は,わ が 国 政 府 の 戦 略 文 書 が 米 国 の もの と比 し て,大 枠 の 方 針 か ら具 体 的 な 政 策 指 針 へ と整 合 的 に策 定 す る シス テ ム と く ラ は な っ て お らず,体 系 性 と一 貫 性 に欠 け て い るか らで あ る 。 実 際,「 動 的 防 衛 力 」 の 必 要 性 は も っ ぱ ら中 華 人 民 共 和 国 の 軍 事 的 擾 頭,と りわ け南 西 諸 島方 面 にお け る 中 国 人 民 解 放 軍 の 活 動 の 著 しい量 的 増 大 ・質 的 強 化 へ の 状 況 対 応 的 な対 抗 策 と して説 明 され て お り,概 括 的 に 「動 的 防衛 力 」 の 内

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容 及 び方 向 性 を示 して も,資 源 配 分 に お け る優 先 順 位 の 点 で既 存 の どの 防 衛 力 を 断念 す る の か,そ れ に よ って どの部 分 を強 化 す るの か が 明 確 に され て い な い憾 み が あ る 。 防 衛 省 が 「ロ ー ドマ ッ プ」 を 策 定 し た こ と 自 体, 「動 的 防衛 力 」 が ま だ発 想 と して提 示 さ れ た ば か りの 初 期 段 階 に あ り,自 衛 隊 の変 革 が 新 「大 綱 」 及 び新 「中期 防」 に よ っ て 緒 に就 い た ば か りで あ る こ とを物 語 っ て い る。 そ こ で本 稿 で は先 ず 戦 略 論,と りわ け 明 治 以 来 わ が 国 が 策 定 して きた幾 つ か の代 表 的 な 防衛 ・軍 事 戦 略 と比 較 対 照 す る形 で,「 基 盤 的 防 衛 力 構 想 」 と 「動 的 防 衛 力 」 構想 を分 析 し,そ の発 想 や 基 本 的 考 え方 を 浮 き彫 りに す る。 次 に そ う した 分 析 を 踏 ま え て,「 動 的 防 衛 力 」 構 想 が 必 然 的 に 求 め る べ き資 源 配 分 の 優 先 順 位,と りわ け断 念 され るべ き装 備,編 成,態 勢 を新 た に取 得 され るべ き或 い は強 化 され るべ き装 備,編 成,態 勢 と対 比 す る形 で 明 示 す る 。 な お,本 稿 の 意 図 は 「『動 的 防 衛 力 』 構想 の 含 意 と課 題 」 を考 察 す る こ と に あ り,こ の 構 想 の 妥 当 性 を 論 じる こ とに は な い 。 つ ま り,「 動 的 防 衛 力 」 に如 何 な る 問題 が あ る にせ よ,一 旦 この 分 野 で 唯 一 の 政 府 公 式 文 書 と し て採 択 され た以 上,こ の概 念 を何 らか の 理 由 で再 度 修 正 な い し廃 止 す る まで は,そ れ を前 提 と して わ が 国 の 防 衛 ・軍 事 戦 略 を議 論 せ ざる を得 な い との 立 場 を取 っ て い る。 1.軍 事 リス ク へ の 対 処 を考 え る 国 家 が体 系 性 と一 貫 性 を有 した 戦 略 を策 定 す る に は,最 も体 系 化 が 進 ん で い る 米 国 の 用 語 を用 い れ ば,「 国 家 安 全 保 障 戦 略 」 文 書(国 益 を 見 極 め た 上 で,地 政 学 ・地 経 学 的 な次 元 にお け る,国 際 政 治 や 国 際 経 済 の 観 点 を 含 め た総 合 的 な戦 略)→ 「国家 防 衛 戦 略 」 文 書(政 治 ・軍 事 レベ ル で の 軍 事 活 動 や 軍 事 力 整 備 の 方 針)→ 「国 家 軍 事 戦 略 」 文 書(作 戦 レベ ル で の 軍 事 活 動 や 軍 事 力 整 備 の 方 針)→ 作 戦 構 想 文 書,の 順 に策 定 す る こ とが 必 要 で あ る。

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「動的防衛力」構想の含意 と課題53 現 在 の わ が 国 の 場 合,「 国 家 防 衛 戦 略 」 に当 た る 「防 衛 大 綱 」 と 「中期 防 」 が あ る だ け で,「 国 家 安 全 保 障 戦 略 」 と 「国 家 軍 事 戦 略 」 が 存 在 しな い 。(作 戦 構 想 に関 す る文 書 は 当然 あ る と思 わ れ る。)こ れ ま で,国 家 安 全 保 障 戦 略 は 政 府 公 式 文 書 と して存 在 せ ず と も実 質 的 に は 日米 同 盟 を基 軸 と して存 在 す る一 方,国 家 軍 事 戦 略 は形 式 的 に も実 質 的 に も存 在 して い な か っ の ラ た 。 こ の 点 は 「基 盤 的 防 衛 力 構 想 」 が 「防衛 力 の存 在 に よ る抑 止 効 果 に重 く   点 を置 い て い る」 こ と,つ ま り根 本 的 に存 在 す る 防衛 力 の 運 用 をあ ま り考 え る必 要 が な か っ た こ と を踏 ま え る と不 思 議 で は な い 。 他 方,「 動 的 防 衛 力 」 は即 応 性 や 統 合 性 を重 視 した 「防 衛 力 の 運 用 」 に力 点 を置 い て い る こ とか ら,こ の 概 念 は これ ま で 欠 落 して きた 国 家 軍 事 戦 略 を補 う こ と を志 向 して い る とい え る 。 一 般 に,国 家 安 全 保 障 戦 略 に よ り大 枠 が 設 定 さ れ た 後,政 治 指 導 者 ・政 策 担 当者 は 国 家 防衛 ・軍 事 戦 略 を策 定 す る にあ た っ て,当 該 国 家 が 直 面 す る財 政 リス ク と軍 事 リス ク との 間 にバ ラ ンス を取 らね ば ら な い 。 直 面 す る 脅 威 や不 確 実 性 に対 して 万 全 を期 して質 量 の 両 面 で 軍 備 を強 化 す る と コス トが か か りす ぎる が,か とい っ て 軽 武 装 を選 択 す れ ば そ う した 脅 威 や 不 確 実 性 が 顕 在 化 した場 合,う ま く対 処 で きる か 大 きな リス ク を抱 え る こ と と な る。 こ の 選 択 は短 期 的 な考 慮 と 中長 期 的 な考 慮 を い か にバ ラ ンス させ る か の 問題 で もあ る 。 国 家 の軍 事 力 の 基 盤 が そ の 経 済 力 にあ る以 上,現 存 す る脅 威 や不 確 実 性 に対 処 す る た め に過 大 に軍 事 費 を 支 出 す れ ば 国 民 経 済 の 負 担(少 な く と も,成 長 へ の機 会 コス ト)を 高 め,中 長 期 的 に 軍 事 力 の基 盤 で あ る経 済 力 の充 実 を 阻害 す る。 逆 に,軽 武 装 は コス トが 安 く,経 済 力 の 充 実 を 阻 害 しな い が,軍 事 的 リス ク を抱 え る こ と と な る。 さ ら に,軍 事 費 を一 定 に して 財 政 リス ク を所 与 とす る場 合 で も,直 面 す る脅 威 や 不 確 実 性 の 増 大 に対 処 す る た め に既 存 の 装 備 や 兵 姑 を充 実 させ る か,そ れ と もそ う した必 要 は な い と判 断 して将 来 に備 え て 新 兵 器 ・新 技 術 の 開発 に投 資 す るか も選 択 せ ね ば な ら ない 。 した が っ て,軍 事 費 の水 準 を ど うす るか,軍 事 費 の支 出 配 分 を ど うす る か は極 め て重 要 だ が 厄 介 な 決 定 とな る 。 と は い え,現 在 の わ が 国 の場 合 は,も っ ぱ ら軍 事 リス ク を考 え て 防 衛 ・

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軍 事 戦 略 を策 定 す れ ば よ い と思 わ れ る 。 とい うの は,防 衛 費 はGDPの1 %以 下 で 近 年 漸 減 傾 向 が 続 い て お り,衆 目の 一 致 す る と こ ろ大 幅 な防 衛 費 増 加 の見 込 み は 当面 見 込 めず,そ れ に と も な う財 政 リス ク を考 え る必 要 は ない 。 ま た,防 衛 費 に 占 め る 軍 事 技 術 開発 費 は極 め て 限 定 的 で あ り,従 来 わ が 国 の 防 衛 装 備 の 開発 ・生 産 ・調 達 が 防衛 産 業 の保 有,開 発 す る両 用 技 術 に多 分 に依 存 して きた こ とに 鑑 み る と,あ ま り投 資 リス ク を考 慮 す る必 要 も な い 。 一 般 に,軍 事 リス ク を捉 え る に は,主 と して地 理 的 条 件(と りわ け,海 洋 と大 陸 の 関 係)と 列 強 の軍 事 バ ラ ンス を分 析 す れ ば よい が,わ が 国 の地 理 的 条 件 も近 現 代 の わ が 国 を取 り巻 く列 強(中 国,ソ 連/ロ シ ア,米 国) も変 化 して い な い 。確 か に,列 強 の 軍 事 バ ラ ン ス は,単 純 化 して い え ば, 日清 戦 争 前 の 中 国 の優 勢,日 露 戦 争 前 の ロ シ ア の優 勢,大 東 亜 戦 争/太 平 洋 戦 争 前 の 米 国 の優 勢,冷 戦 時代 の 米 ソニ極 構 造 に お け る米 国 の 優 勢,冷 戦 後 の米 国 に よ る単 極 構 造,現 在 の 相 対 的 に凋 落 す る 米 国 の優 勢 と急 速 な 中 国 の擾 頭,と い う風 に変 動 して きたが,わ が 国 は そ う した変 動 に対 処 す る た め に 防 衛 ・軍 事 戦 略 の 内容 を変 化 させ て きた わ け で あ る か ら,そ の変 化 を観 れ ば,わ が 国 の 防 衛 ・軍 事 戦 略 に お け る選 択 の 幅 と選 択 肢,そ の発 想 や 基 本 的 考 え方 の 変 遷,延 い て は変 化 の パ タ ー ン を捉 え る こ とが で き よ う。 こ う した ア プ ロー チ の方 が 直 近 の 「基 盤 的 防衛 力 構 想 」 か ら 「動 的 防 衛 力 」 構 想 へ の 変 化 を観 る だ け よ り も,深 い 理 解 が 可 能 と な ろ う。 くらラ そ こ で,本 稿 で は,「(大 日本)帝 国 国 防 方 針 」(明 治40年 策 定,大 正7 く   年 改 定,大 正12年 改 定,昭 和ll年 改 定),「 帝 国 陸 海 軍 作 戦 計 画 大 綱 」(昭 和20年 制 定),「 防 衛 大 綱 」(昭 和51年,平 成7年,平 成16年,平 成22年 策 定)を 取 り上 げ る 。 た だ し,本 稿 の 目的 か らす れ ば,「 防 衛 大 綱 」 に 関 し て は,前 者 三 大 綱 の 基 本 と な っ て い る 「基 盤 的 防 衛 力 構 想 」 と新 大 綱 の 「動 的 防 衛 力 」 構 想 を観 れ ば 十 分 で あ る。

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「動 的 防 衛力 」 構 想 の含 意 と課題55 2.戦 争 及 び 作 戦 形 態 の 分 類 防 衛 ・軍 事 戦 略 の次 元 で は,戦 争 の規 模 を想 定 し,政 治 レベ ル と作 戦 レ ベ ル で どの よ う な戦 い 方 をす る か の 方 針,そ して そ の た め に どの よ う な軍 事 力 を 整 備 す る か を考 えれ ば よい 。 本 稿 で は,① 制 限 戦 争vs.全 面 戦 争 ② 決 戦VS.持 久 戦 ③ 外 線 作 戦VS.内 線 作 戦 ④ 攻 勢 作 戦VS.防 勢 作 戦 ⑤ 着 上 陸 作 戦vs.対 着 上 陸 作 戦 に着 目 して,こ れ ま で の わ が 国 の 防 衛 ・軍 事 戦 略 を 分 析 して み る。 第 一 に,全 面 戦 争 と は 「大 国 間 で 生 起 す る武 力 紛 争 で あ り,交 戦 諸 国 の 全 資 源 が投 入 さ れ,主 要 交 戦 国 の 国 家 と して の 存 続 が 賭 け られ る 戦 争 」 の くの こ と で あ り,制 限戦 争 と は全 面 戦 争 に至 ら ない 戦 争 の こ と で あ る 。 第 二 に,決 戦 は敵 戦 闘 能 力 を 撃 滅 す る た め に,「 彼 我 共 に(そ の)意 志 を持 ち,加 動 的 で あ る場 合 は もち ろ ん,一 方 が 決 戦 を回 避 し よ う と して も, 他 方 が 加 動 的 に強 制 し う る場 合 は 成 り立 つ 。」 持 久 戦 は 自 己 戦 闘力 を保 持 す る た め に,「 決 戦 を 回 避 し,延 期 し よ う と す る … 劣 勢 軍 の優 勢 軍 に 対 す る作 戦 で あ る 。」 ま た,持 久 戦 は 「一 般 的 に は決 戦 に従 属 す る作 戦 で あ る こ とか ら,主 作 戦 に従 属 した 支 作 戦 正 面 の 作 戦(地 域 的 関係)と,主 く ラ 作 戦 に お い て 決 戦 に転 移 す る まで の 作 戦(時 間 的 関係)等 が あ る 。」 第 三 に,外 線 作 戦 と は 「敵 に 対 して後 方 連 絡 線 を外 側 に保 持 して 数 方 向 か ら求 心 的 に行 う作 戦 」 で あ り,「 態 勢 的 に み れ ば敵 に対 し当 初 か ら包 囲 も し くは挟 撃 的 な 関 係 位 置 にあ っ て作 戦 す る」 こ と で あ る 。 外 線 作 戦 は 「敵 を受 動 に 陥 れ 主 導 の地 位 を獲 得 で き る」 が,「 戦 闘 力 の 分 離 を生 じ敵 に 乗 ぜ られ る 」 虞 が あ る。 外 線 作 戦 の 典 型 は 戦 力 の前 方 展 開 で あ り,そ の た め に海 外 派 兵 や 海 洋 出 撃 を行 う。 他 方,内 線 作 戦 は外 線 作 戦 を と る敵 に対 して,「 わ が 後 方 連 絡 線 を 内 方 に保 持 して 戦 う作 戦 」 で あ り,戦 力 を集 中 し て 「横 広 ま た は縦 長 に分 離 した 敵 に対 す る各 個 撃 破 」 の 作 戦 で あ る。 し か し,「 各 個 撃 破 の成 果 が 不 十 分 な 場 合 は 受 動 に陥 り,不 利 な決 戦 を強 要 リ ラ され る危 険 性 が あ る 。」

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第 四 に,攻 勢 作 戦 と は 「敵 を求 め て これ を撃 破 し よ う とす る積 極 可 動 的 な作 戦 で」 あ り,「 一 も し くは数 次 の 攻 撃 を主 体 とす る作 戦 で あ る 。」 攻 勢 作 戦 の 目的 は 「主 動 の 地 位 を保 持 して能 動 的 に敵 に 決 戦 を強 要 し,敵 部 隊 の 撃 破 ま た は地 域 の獲 得 を 図 る 」 こ とに あ り,そ の 結 果,相 対 的 戦 闘 力 の 優 勢 を確 立 す る こ と に あ る 。 した が っ て,攻 勢 作 戦 は成 功 す れ ば,「 わ が 意 を敵 に 強 要 し,主 動 性 を保 持 して 敵 に徹 底 的 打 撃 を与 え て 自主 的 に作 戦 目 的 を 達 成 で き る 。」 しか し,失 敗 す れ ば,「 戦 闘 力 を急 激 に消 耗 す る 。」 他 方,防 勢 作 戦 は 「敵 の 攻 勢 を待 ち受 け て,そ の企 図 を破 砕 し よ う とす る 作 戦 で,一 も し くは 数 次 に よる 防 御 に よる か,あ る い は こ れ に 攻 撃 そ の他 の 戦 術 行 動 を混 用 す る作 戦 で あ(り)」,「 敵 の 攻 勢 を破 砕 し,ま た は将 来 の 攻 勢 転 移 あ る い は 他 正 面 に お け る作 戦 を容 易 に す る。」 防 勢 作 戦 は 「勢 力 の 劣 勢 を補 い つ つ 時 間 の余 裕 を獲 得 し,敵 の 攻 勢 を破 砕 す る こ とが で き るが,敵 に決 定 的打 撃 を与 え る こ とは 困 難 で あ り,ま た 受 動 的 に陥 り行 動 ロの の 自 由 を 失 い や す い 。」 第 五 に,着 上 陸侵 攻作 戦 は 「陸 上 に お け る作 戦 目的 を達 成 す る た め,海 洋 を越 え て 行 う作 戦 行 動 で,地 域 的 範 囲 は 一 般 的 に は 根 拠 地 設 定 まで で あ り,内 陸 に 向 か う作 戦 は 一 般 作 戦 と して 扱 わ れ … 」,そ の 目 的 は 「所 要 の 地 域 の 攻 略 で あ り,方 式 と して は海 上 か ら の機 動 攻 撃,空 中 か らの機 動 攻 撃,両 者 の併 用 が あ(る)。 」 この作 戦 は 「本 質 的 に攻 勢作 戦 で あ り …, 渡 洋 作 戦 で あ る た め に,航 空 優 勢 ・海 上 優 勢 の 確 保,統 合 作 戦,機 動 性, 膨 大 な輸 送 力 と資 材 が 必 要 」 で あ る。 他 方,対 着 上 陸 侵 攻 作 戦 は 「着 上 陸 侵 攻 す る敵 に対 し,そ の 企 図 を破 砕 す る こ と を 目 的 とす る作 戦 」 で あ り, そ の 焦 点 は 「敵 の根 拠 地(海 岸 墨,空 挺 墨)設 定 をめ ぐる着 上 陸 防 御 の諸 作 戦 」 に あ る 。 この 作 戦 は本 質 的 に 防 勢 作 戦 で あ り,「 受 動 性,対 上 陸 ・ 対 空 挺 同 時 対 処 の可 能 性,敵 着 上 陸 部 隊 の 弱 点 の短 期 性,初 期 作 戦 の 成 果 の 重 大 性,初 期 段 階 の 戦 力 の分 離,航 空 ・海 上 劣 勢 下 の 作 戦 とな る可 能 性 く つ が 高 い 。」 因 み に,大 日本 帝 国 海 軍 に は海 軍 陸 戦 隊 は存 在 した が,米 海 兵 隊 の よ う に独 立 した 兵 種 で は な く,ほ とん ど本 格 的 に大 規 模 な 着 上 陸 侵 攻 作 戦 を行 う こ とは な か っ た。

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「動的防衛力」構想の含意 と課題57 上 記 の う ち,① は 戦 争 一 般 の 分 類 で あ り,② ③ ④ ⑤ は元 来,陸 上 作 戦 の 基 本 的形 態 で あ る 。他 方,海 上作 戦 の基 本 形 態 に は⑥ 空 母 航 空打 撃 戦 ⑦ 対 空 戦 闘⑧ 対 潜 戦 闘⑨ 対 水 上 戦 闘⑩ 機 雷 戦 ⑪ 強 襲 両 用 作 戦(着 上 陸 作 戦 と表 裏 一 体)⑫ 護 衛 作 戦 が,航 空作 戦 の 基 本 形 態 に は⑬ 戦 略 的航 空作 戦(空 爆) ⑭ 戦術 的 航 空 作 戦(さ らに,〈1>対 航 空 作 戦,〈2>航 空 阻止 作 戦,〈3> 近 接 航 空 支 援 作 戦,〈4>海 上 航 空 支 援 作 戦[こ れ は,空 母 航 空 打 撃 戦 と 表 裏 一 体],〈5>航 空 偵 察,〈6>航 空 輸 送),⑮ 防 空 作 戦 が あ る が,こ れ ら は全 て特 定 の 機 能 を ど う組 み 合 わ せ,ど う使 うか に焦 点 を絞 っ た 分 類 で あ る。 海 空 の 作 戦 は① ∼ ⑤ の構 想 に よ っ て 多 分 に左 右 され る 一 方,海 空 の 戦 力 の多 寡 ・有 無 は① ∼⑤ の 点 で ど の よ う な特 徴 を持 っ た 国家 防 衛 ・軍 事 戦 略 を採 る か を大 き く制 約 す る 。 例 え ば,短 期 決 戦 ・外 線 作 戦 ・攻 勢 作 戦 な ら制 空 権 ・制 海 権 を確 保 した 上 で 強 襲 上 陸 作 戦 ・着 上 陸 侵 攻 作 戦,さ ら に は本 格 的 な陸 上 戦 力 の 投 入 とな るで あ ろ う し,逆 に海 空 の戦 力 が 減 退 し た 状 況 で は,も っ ぱ ら陸 上 戦 力 に よ る持 久 戦 ・内線 作 戦 ・防勢 作 戦 ・対 着 上 陸 侵 攻 作 戦 を行 わ ざ る を得 な い 。 した が っ て,近 現代 の わ が 国 の 国 家 防 衛 ・軍 事 戦 略 を特 徴 付 け る とい う限 定 的 な 分 析 目 的 の た め で あ れ ば,主 と し て 陸上 作 戦 の 基 本 的 形 態(② ③ ④ ⑤)を 分 類 と して 使 え ば よ く,海 上 作 戦 と航 空 作 戦 の 基 本 的 形 態 を考 え る必 要 は ない 。 3.わ が 国 の 国 家 防 衛 ・軍 事 戦 略 の 評 価 類 似 点 と相 違 点 1)日 露 戦 争 後 か ら大 東 亜 戦 争 終 結 ま で わが 国 は 明 治 維 新 以 後,朝 鮮 半 島 へ の 関 与 ・介 入,そ して 日清 戦 争 を経 て,当 初 の 国 内 警 備 型 の 戦 力 か ら次 第 に外 征 型 の 戦 力 を保 有 す る よ う に な り,日 露 戦 争 で は満 洲 にお け る 大 規 模 な 陸 戦 と 日本 海 海 戦 な ど を経 験 した 。 この 間,東 ア ジ ア の安 全 保 障環 境 の 変 容 に応 じて わ が 国 の 政 策 も変 化 した 一 方 ,時 折 軍 部 指 導 者 が 天 皇 に 意 見 書 を建 議 す る こ と は あ っ た が,「 国家 く の 防 衛 ・軍 事 戦 略 」 に相 当 す る体 系 的 な政 策 文 書 は終 ぞ 策 定 さ れ な か っ た 。 こ う した状 況 は 日露 戦 争 を経 て,よ うや く 「帝 国 国 防 方 針 」 が 策 定 さ れ る

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こ と で克 服 され た 。 初 度(明 治40年)制 定 の 「帝 国 国 防 方 針 」 は 「帝 国 国 防 の本 義(を)自 衛 と し」,「国 防 の方 針 は,国 力 にか んが み,努 め て作 戦 初 動 の 威 力 を強 大 に して 速 戦 即 決 を主 義 」 と した 。 ま た,「 国 防 は,露,米,仏 の 三 国 を 目 標 と し,東 亜 にお い て は攻 勢 を採 り うる 兵備 を整 え る 」 と した が,実 際 に は,明 治38年 に 日本 が 辛 う じて 日露 戦 争 に勝 利 した 後 も,ロ シ ア を陸 海 軍 唯 一 の敵 国 と想 定 して い た。 米 国 は わが 国 の 所 要 の 海 軍 力 を構築 す る際 の 基 準 とす る た め の仮 想 敵 国 で あ り,フ ラ ンス は露 仏 同 盟 の た め に仮 想 敵 国 く ヨ  と さ れ た 。 第 一 次(大 正7年)改 定 で は,初 度 版 の 基 本 方 針 を踏 襲 す る 一 方,第 一 次 世 界 大 戦 が 長 期 化 して い た た め,「 長 期 戦 に堪 え うる 覚 悟 と準 備(が) く    必 要 」 と され た。 これ は,第 一 次 世 界 大 戦 が 「戦 争 の 従 来 の性 格 を戦 争 即 戦 闘,す な わ ち武 力 戦 とい う概 念 か ら,『 総 力 戦,長 期 持 久 戦 』 とい う概 念 に変 え,同 時 に,戦 争 規 模 の 拡 大(が),戦 争 を 一 国 単 独 の 戦 争 形 態 か ら 同盟 戦 争 や 多 国 間 戦 争 とい う複 数 国 間 の 戦 争 形 態 に発 展 させ た 」 か らで く  あ っ た 。 実 際,第 一 次 改 定 で は,露,米,支 の 順 で 想 定 敵 国 を 捉 え,三 国 く    連 合 や 露 支 連 合 の 可 能 性 を想 定 す る一 方,「 対 米 戦 に 際 して は ル ソ ン 島 を く フラ 攻 略 す る」 こ とが 加 え ら れ た 。 したが っ て,初 度 版 にあ る短 期 決 戦 ・攻 勢 作 戦 の ア プ ロ ー チ で は 長 期 持 久 戦 に は対 応 で き な い こ と は 明 らか で あ っ た が,戦 争 の 危 機 に直 面 して い な い な か,具 体 性 を欠 く形 で や や 情 緒 的 に 「長 期 戦 に堪 え う る覚 悟 と準 備 の必 要 」 と の字 句 を挿 入 した と思 わ れ る。 第 二 次(大 正12年)改 定 は,第 一 次 世 界 大 戦 が 終 結 し,ベ ル サ イユ 講 和 条 約 が 締 結 され た結 果,ワ シ ン トン軍 縮 会議(大 正11年 ∼ 同12年)な ど に 特 徴 付 け られ る 国 際 協 調 の 環 境 の 下 で な さ れ た 。 第 二 次 改 定 版 で は,「 凡 そ 国 防 の安 固 を期 せ ん に は 内 国礎 を輩 固 に して 国力 の 充 実 を は か り,外 列 国 と の厚 誼 を敦 厚 に して 海 外 の発 展 を策 し,武 備 を厳 に して … 列 国 と 協 調 して紛 争 の 禍 因 を除 き,以 って 戦 争 を未 発 に 防 遇 す る に努 め る と と も に,一 朝 有 事 に際 して は,国 家 の 全 力 を挙 げ て敵 に 当 た り,速 や か に戦 争 く   の 目 的 を 達 す る」,「一 旦 緩 急 あ ら ば攻 勢 を以 て敵 を 帝 国 の 領 土 外 に撃 破 し,

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「動 的 防 衛力 」 構 想 の含 意 と課題59 くゆ 速 や か に 戦 争 の 局 を結 ぶ 」 と し,基 本 的 に第 一 次 改 定 版 を踏 襲 した 。 つ ま り,全 面 戦 争 と長 期 持 久 戦 に 強 い 懸 念 を持 ち なが ら も,国 家 防衛 ・軍 事 戦 略 と して は帝 国領 土 周 辺 部 及 び 海外 にお け る短 期 決 戦 ・攻 勢 作 戦 の ア プ ロー チ を堅 持 した 。 と は い え,第 二 次 改 訂 版 で は,「 想 定 敵 国 を従 来 の露,米,支 の 順 序 を 米,露,支 に順 に 改 め,対 米 作 戦 に お い て は グ ア ム 島 攻 略(を)加 え」, さ ら に 「海 軍 の 作 戦 は 主 と して 米 国 一 国 を 目標 と した が,陸 軍 は 対 数 ヵ国 く    作 戦 を基 礎 とす る作 戦 を計 画 し,戦 争 が 長期 化 す る こ と を考 慮 した 」 た め, ます ま す基 本 戦 略 と して 短 期 決 戦 ・攻 勢 作 戦 の ア プ ロー チ との 大 き な矛 盾 を抱 え る こ と とな っ た 。 こ う した 矛 盾 か ら を逃 れ る に は,緒 戦 にお い て敵 を繊 滅 させ る攻 撃 作 戦 を行 う必 要 が あ っ た が,失 敗 す れ ば,戦 力 を失 い, 守 勢 に追 い 込 ま れ,持 久 戦 と もな れ ば,完 敗 は必 至 と な る非 常 に高 い リス ク を抱 え た 。 第 三 次(昭 和11年)改 定 は,第 一 次 大 戦 後 の 国 際協 調 の 時 代 が 終 わ り, ソ連 が 軍 事 大 国 とな る一 方,米 国 との対 立 を含 め急 速 に わが 国 の 国 際 的孤 立 が 深 ま る なか で な され た。 第 三 次 改 定 版 は 「名 実 共 に東 亜 の 安 定 勢 力 と な る 国力,こ とに武 備 を整 え … 一 朝 有 事 の 際 は機 先 を制 して す み や か に戦 争 目的 を達 成 す る」 た め に,「 国 情 にか ん が み,作 戦 初 動 の威 力 を大 に(す る)」 と し た 。 ま た,米 ソ との 戦 争 は必 至,英 支 との 戦 争 も可 能 性 あ り と捉 え,「 東 亜 大 陸及 び 西 太 平 洋 を制(す る)」 こ とが で きる よ う,引 く の き続 き 「長 期 戦 に堪 え る覚 悟 と準 備 が 必 要」 と した 。 第 三 次 改 定 版 もま た 基 本 的 に従 来 の 基 本 方 針 を踏 襲 し,緒 戦 で の 早 期 決 戦 を よ り強 調 す る一 方, 想 定 敵 国 の 増 加 と国 際 的 孤 立 の 深 刻 化 の情 勢 認 識 を明 示 し,全 面 戦 争 ・持 久 戦へ の懸 念 を一 層 強 調 したが,ど う対 処 す る か具 体 的 な方 針 は示 さな か っ た 。 さ ら に,第 三 次 改 訂 版 で は,攻 勢 の 終 結 点 を何 処 に求 め何 処 で 講 和 す るか,つ ま り戦 勝 をい か に達 成 す るか 全 く不 明 で あ り,第 二 次 改 訂 版 の矛 盾 を さ ら に深 刻 に す る こ と とな っ た。 こ れ ら四 度 の 「帝 国 国 防 方 針 」 制 定 ・改 定 で は,若 干 の 変 動 は あ る もの の,基 本 的 に は制 限 戦 争 ・(短期)決 戦 作 戦 ・外 線 作 戦 ・攻 勢 作 戦 ・海 外

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派 兵 を共 通 の 特 徴 と して い る 。 この 組 み合 わ せ は,国 内 で の戦 闘 を 回避 す る一 方,海 外 にお い て 前 方 展 開 した 戦 力 に よ っ て 限 定 戦 争 を短 期 決 戦 で勝 利 す る攻 勢 防 御 の ア プ ロ ー チ で あ る。 日本 の 地 政 学 的 な特 徴(ユ ー ラ シ ア 大 陸 の大 国 で あ る 中 国 及 び ロ シ ア に近 接 す る一 方,太 平 洋 を挟 ん で 米 国 と 対 峙 して い る 島 国 で あ る),国 土 の 特 徴(南 北 に細 長 く東 西 に は縦 深 性 を 欠 い て い る),そ して 脆 弱 な 国 力(人 口,天 然 資 源,経 済 力)を 考 え る と, 日本 が 本 土 を主 戦 場 とす る全 面 戦 争 ・持 久 戦 ・内線 作 戦 ・防勢 作 戦 を行 う の は無 理 で あ り,こ う した 「帝 国 国 防 方 針 」 の 特 徴 は 必 然 的 か つ 妥 当 な も の で あ っ た とい え る 。 したが って,大 東 亜 戦 争 ・太 平 洋 戦 争 に お け る わが 国の 完 敗 は制 限 戦争 ・ (短 期)決 戦 作 戦 ・外 線 作 戦 ・攻 勢 作 戦 ・海 外 派 兵 の ア プ ロ ー チ で 全 面 戦 争 ・持 久 戦 ・内 線 作 戦 ・防 勢 作 戦 を戦 わ ざ る を え な か っ た と ころ にあ り, そ の 根 本 的 な原 因 は こ う した 国 家 防 衛 ・軍 事 戦 略 の 矛 盾 を克 服 す る国 家 安 全 保 障 戦 略 を策 定,実 施 で きな か っ た こ と に あ る 。 つ ま り,わ が 国 に は米 国 や 英 国 を相 手 に全 面 戦 争 や 長 期 持 久 戦 を行 う 国力 は な く,勝 利 す る に は 「装 備 を 近 代 化 し,先 制 や 攻 勢 の 連 続 に よ る戦 争 初 期 段 階 で の 短 期 決 戦 … あ る い は,戦 争 初 期 に有 利 な態 勢 を作 り上 げ,米 英 の戦 力 輸 送 が 制 限 さ れ る極 東 地 域 で の 地 の 利 を 生 か した 各 個 撃 破 」 に よっ て,「 局 地 的 な 戦 果 の 累積 に よ っ て(全 面 戦 争)を 戦 い抜 く」 短 期 決 戦 作 戦 の 連 続 に求 め く    る しか な か っ た。 一 旦,こ う した ア プ ロ ー チ が破 綻 す れ ば,後 は全 面 戦争 ・ 持 久 戦 ・内 線 作 戦 ・防 勢 作 戦 に 追 い 込 まれ て ジ リ貧 と な ら ざ る を得 な か っ た 。 実 際,マ リ ア ナ 海 戦(1944年6月),レ イ テ 沖 海 戦(1944年10月)に 敗 北 し対 米 戦 の 中核 で あ る海 軍 の 戦 力 が 衰 耗 し きっ て し ま う と,対 米 戦 争 は 陸 軍 主 体 と な らざ る を得 な か っ た 。 昭 和20年1月,こ う した状 況 で 策 定 さ れ た の が 「帝 国 陸 海 軍 作 戦 計 画 大 綱 」(以 下,「 計 画 大 綱 」)で あ る 。 「計 画 大 綱 」 は 「皇 土 及 之 力防 衛 二 緊 切 ナ ル大 陸 要 域 二於 イ テ 不 抜 ノ 趣 撃 態 勢 ヲ 確 立 」 す る 一 方,「 陸 海 軍 ハ 侵 攻 ス ル 米 軍 主 力 二 対 シ 陸 海 特 二 航 空 戦 力 ヲ 綜 合 発 揮 シ敵 戦 力 ヲ撃 破 シ」,さ ら に 「優 勢 ナ ル 敵 空 海 戦 力 ノ来 攻 ヲ予 想

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「動的防衛力」構想の含意 と課題61 シ ツ ツ主 トシ テ 陸上 部 隊 ヲ以 テ作 戦 ヲ遂 行 ス ル」 と した 。 特 に 「皇 土 要 域 二 於 ケ ル作 戦 ノ 目的 ハ 侵 攻 ヲ破 擢 シ皇 土 特 二 帝 国本 土 ヲ確 保 ス ル 」 と した こ とに 如 実 に示 さ れ て い る が,「 計 画 大 綱 」 は 全 面 戦 争 ・持 久 戦 ・内 線 作 戦 ・防 勢 作 戦 ・対 着 上 陸 侵 攻 作 戦 の 典 型 で あ っ た。 しか し,「 計 画 大 綱 」 は暗 に敵 が 講 和 を受 け 入 れ る よ う 「敵 戦 意 ノ挫 折 シ 以 テ 戦 争 目的 ノ達 成 ヲ く ヨラ 図 ル」 と して お り,と う て い勝 利 の た め の作 戦 計 画 で は な か っ た 。 こ れ ら 「帝 国 国 防 方 針 」 と 「計 画 大 綱 」 は戦 後 の 「防 衛 計 画 の 大 綱 」 の 特 徴 を基 本 的 な発 想 と捉 え方 の 次 元 に お い て 分 析 す る 上 で 比 較 対 照 の 材 料 と な る 。 2)冷 戦 デ タ ン ト期 か ら今 日 まで 戦 後,わ が 国 が 「国 家 防 衛 ・軍 事 戦 略 」 に相 当 す る 文 書 を初 め て 策 定 し た の は 昭和51年 度 「防 衛 大 綱 」 で あ り,そ の 後,冷 戦 後 の 国 際 情 勢 の 変 化 と 自衛 隊 の 国 際 活 動 に対 応 す る た め に平 成7年 度 版 「防 衛 大 綱 」,国 際 テ ロ,大 量 破 壊 兵 器,弾 道 ミサ イ ル 防 衛 に対 処 す る た め に平 成16年 度 版 「防 衛 大 綱 」 が 策 定 さ れ た。 こ の 間,「 基 盤 的 防 衛 力 構想 」 が 防 衛 力 の 水 準 や 整 備 を左 右 す る 中核 的 な分 析 概 念 で あ っ た こ と は よ く知 ら れ て い る。 「基 盤 的 防 衛 力 構 想 」 は冷 戦期 の 緊 張 緩 和(デ タ ン ト)を 背 景 に 「限定 的 か つ小 規 模 な侵 略 まで の 事 態 に有 効 」 に対 処 す る こ とが で き(れ ば)」 よ し と捉 え,制 限侵 略 戦 争 に対 処 す る こ と を前 提 と して い た 。 また,侵 略 さ れ た 場 合 に は,「 これ に即 応 して 行 動 し … 極 力 早 期 に こ れ を 排 除 す る」 と して い る こ とか ら短 期 決 戦 作 戦 へ の 強 い 志 向 が 分 か る 。 また,侵 略 に対 して 「独 力 で の排 除 が 困 難 な 場 合 に も,あ らゆ る 方 法 に よる 強 じん な く    抵 抗 を継 続 し,米 国 か ら の協 力 を ま っ て これ を排 除 す る」 と して い る一 方, 強 力 な在 日米 軍 が 存 在 し,自 衛 隊 に殆 ど予 備 役 の兵 力 が な く,弾 薬 等 の兵 く の 靖 も十 分 で ない 状 態 が 常 態 化 して きた こ と を考 え合 わ せ る と,全 く持 久 戦 を想 定 して い な か っ た こ とは 明 らか で あ る 。 ま た,「 基 盤 的 防 衛 力 構 想 」 が 策 定 さ れ る以 前 か ら今 日 ま で 一 貫 して, 戦 後 の わ が 国 は専 守 防 衛 を基 本 政 策 と して きた 。 つ ま り,「 防 衛 上 の 必 要

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か ら相 手 の 基 地 を攻 撃 す る こ とな く,も っ ぱ ら わ が 国 土 及 び そ の 周 辺 に お い て 防 衛 を行 う」 こ とで あ り,「 相 手 か ら武 力 攻 撃 を受 け た と きに 初 め て 防 衛 力 を行 使 し,そ の 防 衛 力 行 使 の 態 様 も 自衛 の た め の 必 要 最 低 限 に ど ど く    め(る)」 こ と と して い た の で あ る か ら,極 め て 強 く内 線 作 戦 ・防 勢 作 戦 を志 向 して い た。 さ ら に,「 基 盤 的 防衛 力 構 想 」 の 下 で 書 か れ た 『防衛 白書 』 に は,ほ と ん ど常 に 「本 格 的 な侵 略 事 態 へ の 備 え」 と して 陸 海 空 の 作 戦 ドク ト リ ン を 示 す 図 表 と説 明 が 載 せ られ て き た 。 即 ち,「 防 空 の た め の 作 戦 の 一 例 」, 「周 辺 海 域 の 防衛 の た め の作 戦 の一 例 」,「着 上 陸侵 攻 の た め の 作 戦 の 一 例 」 で あ る 。 基 本 政 策 と して の専 守 防 衛 を踏 ま え る と,海 空 の 作 戦 ドク トリ ン が 国 土 へ の 侵 略 を未 然 に防 ぐた め で あ る の に対 して,対 着 上 陸侵 攻 作 戦 が 国 土 へ の 直 接 侵 略 を排 除 す る最 も根 本 的 な 防 勢 作 戦 で あ る。 した が っ て, 「基 盤 的 防 衛 力 構想 」 は 対 着 上 陸侵 攻 作 戦 に よ って 特 徴 付 け る こ とが で き る。 実 際,こ の 構 想 の 下 で は,陸 上 自衛 隊 に海 外 展 開 す る能 力 を持 たせ ず, そ の 装 備 や 運 用 は主 に侵 略 側 が 国 内 に上 陸 して きた 場 合 を想 定 す れ ば よ し と して い た 。 こ れ に対 して,「 動 的 防 衛 力 」 構 想(平 成22年)は 「主 要 国 間 の 大 規 模 戦 争 の蓋 然 性 は低 下 」 し 「大 規 模 着 上 陸侵 攻 等 の我 が 国 の 存 立 を脅 か す よ う な 本 格 的 な侵 略 事 態 が 生 起 す る 可 能 性 は 低 い 」 と見 倣 す 一 方,従 来 の 「防 衛 大 綱 」 と異 な り 「実 効 的 な抑 止 及 び 対 処 」,と りわ け,「 島 喚 部 に対 す る攻 撃 へ の 対 応 」 を強 調 して い る こ とか ら,本 稿 の 分 類 に従 え ば,こ の 構想 が 制 限 戦 争 を想 定 して い る こ とが 分 か る。 ま た,新 た に 「島 懊 部 へ の 攻 撃 に対 して は,機 動 運 用 可 能 な 部 隊 を迅 速 に展 開 し,平 素 か ら配 置 して い る部 隊 と協 力 して侵 略 を 阻止 ・排 除 す る 」,「そ の 際,巡 航 ミサ イ ル対 処 を含 め 島 喚 周 辺 に お け る防 空 態 勢 を確 立 す る と と も に,周 辺 海 空 域 に お け く フラ る航 空 優 勢 及 び海 上 輸 送 路 の安 全 を確 保 す る」 と して い る こ とか ら,短 期 決 戦 に備 え て い る こ とが 分 か る 。 さ らに,23年 度 『防 衛 白書 』 の 第 皿部 第 1章 「自衛 隊 の 運 用 」 で,従 来 の 作 戦 ドク トリ ンを 示 す 図 と説 明 に先 立 っ て,新 た に 「統 合 運 用 体 制 に お け る事 態 対 処(イ メ ー ジ)〔 島 喚 部 に対 す

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「動的防衛力」構想の含意 と課題63 る攻 撃 へ の対 応 を例 と した 場 合 の イ メ ー ジ〕」 を載 せ て い る こ と か ら,外 線 作 戦 ・攻 勢 作 戦 ・着 上 陸 侵 攻 作 戦 を強 く志 向 して い る こ とは 明 白で あ る 。 「基 盤 的 防 衛 力 構 想 」 か ら 「動 的 防 衛 力 」 構 想 へ 基 本 方 針 を 切 り替 え た 背 後 に は,従 来 の 日米 共 同作 戦 を想 定 した 本 格 的 な わ が 国 本 土 に対 す る侵 攻 と は異 な り,島 喚 部 へ の侵 攻 に対 して は,自 衛 隊 は 独 力 で対 処 せ ね ば な ら な い,つ ま り米 軍 の 来 援 が期 待 で きな い との 見 通 し若 し くは 少 な く と も 非 常 に遅 れ る可 能 性 を踏 ま え て い る こ とが 窺 え る 。 こ う した分 析 は,22年 度 「防衛 大 綱 」 が 「中 国 ・イ ン ド ・ロ シ ア 等 の 国力 の 増 大 と もあ い ま っ て, 米 国 の影 響 力 が 相 対 的 に変 化 しつ つ あ り,グ ロ ーバ ル なパ ワ ー バ ラ ン ス に 変 化 が 生 じて い る」 との 情 勢 認 識 を明 示 して い る こ とか ら,ほ ぼ 確 実 だ と い え る だ ろ う。 3)歴 史 的 観 点 か らの 「動 的 防 衛 力 」 構 想 の 評 価 以 上 の 近 現 代 の わ が 国 の 国家 防 衛 ・軍 事 戦 略 を五 つ の 戦 争 ・作 戦 形 態 に 着 目 して比 較 対 照 した のが 表1で あ る。戦 前 の定 石 は制 限 戦 争 ・短期 決 戦 ・ 外 線 作 戦 ・攻 勢 作 戦 の 組 み 合 わ せ の 国家 防衛 ・軍 事 戦 略 で あ り,こ れ が わ が 国 の存 在 条 件(地 政 学 的 特 徴 と国 力)に と っ て の必 然 で あ っ た 。 とこ ろ が,高 次 の 国 家 安 全 保 障 戦 略 で 失 敗 し国 際 的 孤 立 を 深 め る と,全 面 戦 争 ・ 持 久 戦 に対 して 短 期 決 戦 ア プ ロ ー チ の延 長 線 上 で準 備 せ ざ る を え なか っ た 。 実 際,一 旦 戦 争 が 始 ま る と,緒 戦 こ そ攻 勢 作 戦 で成 功 裏 に戦 っ た もの の, 戦 線 が 拡 大 し,戦 争 が 長 期 化 す る と,よ りリス ク の 高 い 攻 勢 作 戦 の 危 険 を 冒 した 。 さ ら に,そ れ に失 敗 して 戦 力 の衰 耗 に直 面 す る と,じ り貧 とな り 内 線 作 戦 ・防 勢 作 戦 へ と移 行 せ ざ る を得 ず,結 局,典 型 的 な対 着 上 陸 侵 攻 作 戦 で あ る 「本 土 決 戦 」 の準 備 へ と追 い詰 め ら れ た 。 冷 戦 デ タ ン ト期 に 策 定 さ れ た 「基 盤 的 防 衛 力 構想 」 は全 面 戦 争 ・持 久 戦 こそ 想 定 して い な い(つ ま り,本 稿 で の分 類 に従 え ば,制 限戦 争 ・短 期 決 戦 を想 定 して い る)も の の,多 分 に 「帝 国 陸 海 軍 作 戦 計 画 大 綱 」(昭 和20 年)の 本 土 にお け る 内 線 作 戦 ・防 勢 作 戦 ・対 着 上 陸侵 攻 作 戦 の発 想 を引 き 摺 っ て い る とい え る 。 しか も,も し米 軍 が 来 援 しな け れ ば,短 期 決 戦 の継

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表1° わ が 国 の 国 家 防 衛 ・軍 事 戦 略 作戦形態 戦略 制 限 戦争vs. 全 面 戦 争 決 戦vs.持 久 戦 外 線 作 戦vs. 内線 作 戦 攻勢 作 戦vs. 防 勢作 戦 着 上 陸侵 攻 作 戦vs. 対 着 上 陸 侵攻 作 戦 帝 国 国防 方 針 初度 版(明 治40年) 制限戦争 短期決戦 外 線 作 戦(海 外) 攻勢作戦 一次 改 定 版(大 正7年) 制 限 戦 争+α 短期決戦 → 持 久戦準備 外 線 作 戦(海 外) 攻勢作戦 二次 改 定 版(大 正12年) 制 限 戦 争+α 短期決戦 外 線 作 戦(海 外) 攻勢作戦 三次 改 定 版(昭 和ll年) 制限戦争 → 全面戦争準備 短期決戦 → 持 久戦準備 外 線 作 戦(海 外) 攻勢作戦+ 防勢作戦準備 帝 国陸 海 軍 作戦 計 画大 綱(昭 和20年) 全面戦争 持久戦 内線 作 戦 (国内 ・本 土) 防勢作戦 対着上陸侵攻作戦 基盤的防衛力構想 制限戦争 短期決戦 → 米軍依存 内線 作 戦 (国内 ・本 土) 防勢作戦 対着上陸侵攻作戦 動 的防衛力構想 制限戦争 短期決戦 外 線 作 戦 (国内 ・島懊) 攻勢作戦 着上陸侵攻作戦 (筆者作 成) 斜 (書 E 鉾 患 遷 お 畑 、茜

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「動的防衛力」構想の含意 と課題65 戦 能 力 で持 久 戦 を戦 う こ と とな り,潜 在 的 に大 きな 矛 盾 を抱 え て い た。 と りわ け,専 守 防衛 の 基 本 政 策 の 下,航 空 自衛 隊 は 本 土 防衛 ・制 空 権 確 保 の た め の 要 撃 が,海 上 自衛 隊 は 海 上 交 通 路 防 衛 と対 潜 水 艦 作 戦 が 各 々主 た る任 務 で あ っ た こ と に鑑 み る と,陸 上 自衛 隊 の態 勢 に注 目 すべ きで あ る 。 そ の 戦 力 は 決 して 強力 だ とは 言 え なか っ た が,そ の 部 隊 配 置(北 部 方 面 隊, 東 北 方 面 隊,東 部 方 面 隊,中 部 方 面 隊,九 州 方 面 隊)の 担 当 区 域 は,「 帝 国 陸 海 軍 作 戦 計 画 大 綱 」 で 示 され た 第5方 面 軍 ・北 部 軍 管 区(北 海 道 地 方), 第ll軍 ・東 北 軍 管 区(東 北 地 方),第12軍 ・東 部 軍 管 区(関 東 ・甲 信 越 地 方),第13軍 ・東 海 軍管 区(東 海 ・北 陸 地 方),第15軍 ・中部 軍 管 区(関 西 ・ く  ラ 中 国 ・四 国 地 方),第16軍 ・西 部 軍 管 区(九 州)と,東 海 軍 管 区 と中 部 軍 管 区 の地 域 が 統 合 され て い る 以外 は ほ ぼ 一 致 す る 。 軍 管 区 司 令 部 が 作 戦 指 揮 系 統 で の 中 枢 で あ り,方 面 総 監 部 が 部 隊 指 揮 管 理 で の 中枢 で あ る こ とか ら,単 純 に両 者 を比 較 す る の は 妥 当 で は な い が,海 上 自衛 隊 と異 な り,陸 上 自衛 隊 が 従 来 か ら旧 軍 との継 続 性 を否 定 して きた こ と に鑑 み る と,メ ン タ リ テ ィー の 次 元 で の 相 似 点 に 刮 目す べ きだ ろ う。 他 方,「 動 的 防 衛 力 」 構 想 は本 土 か ら遠 く離 れ た 島 喚 部 とは い え,わ が 国 領 土(つ ま り,国 内)へ の部 隊 の 緊 急 展 開 や 実 力 行 使 を想 定 して い る と い う意 味 で 専 守 防衛 の 範 囲 に と ど ま るが,外 線 作 戦 ・攻 勢 作 戦 ・着 上 陸侵 攻 作 戦 ア プ ロー チ を明 確 に志 向 して お り,「 基 盤 的 防衛 力 構 想 」 か ら決 別 し て い る。 この よ う に捉 え る と,「 動 的 防 衛 力 」 構 想 へ の移 行 は戦 後65年 余 を経 過 し漸 く 「本 土 決 戦 」 の メ ン タ リテ ィ ー を 克服 し,わ が 国 の 地 政 学 的 特 徴 と国 力 に見 合 った 国家 防 衛 ・軍 事 戦 略 へ と回 帰 す る重 要 な 第 一 歩 を 踏 み 出 した こ とを示 唆 して い る 。 4.「 動 的 防 衛 力 」 構 想 に必 要 な変 革

装備,部 隊編成及び態勢

「動 的 防 衛 力 」 構 想 の 実 現 は30年 以 上 に亘 っ て定 着 し て きた 「基 盤 的 防 衛 力 構 想 」 に よ る 防衛 力 整 備,部 隊 編 成,態 勢 の構造 改 革 を必 然 的 に伴 う た め,容 易 で は な い 。 旧 「構 想 」 は 「(自衛 隊 の)防 衛 力 の 存 在 自体 に よ

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く の る抑 止 効 果 を重 視 」 して,「 防 衛 上 必 要 な 各 種 の 機 能 を備 え,後 方 支 援 体 制 を含 め て そ の 組 織 及 び配 備 に お い て均 衡 の と れ た 態 勢 を保 有 す る こ と」 く    を求 め て い た 。 しか し,こ れ で は 「標 準 的 な装 備 の 部 隊 を ま んべ ん な く配 くヨ   置 す れ ば よ い と い う発 想 」 に 陥 り易 く,新 構 想 そ して そ の 実 現 の た め の 「ロ ー ドマ ッ プ」 が 求 め る 「所 要 の 地 域 へ(の)各 自衛 隊 の 部 隊 や 統 合 部 隊(の)迅 速(な)展 開 」 及 び 「効 果 的 な 事 態 の抑 止 ・対 処 に あ た る機 動 く    展 開」 を 可 能 とす る 能 力 は容 易 に は実 現 で き な い 。 現 在 の厳 しい 国家 財 政 の下 で は,防 衛 費 の 増 加 は 望 め ず(実 際 に は,過 去10年 程,継 続 的 に微 減 して お り),現 有 の 装 備 と部 隊 編 成 に追 加 す る形 で 新 た に機 動 展 開 や着 上 陸 侵 攻 作 戦 に必 要 な能 力 を保 有 す る こ と は不 可 能 で あ る 。 そ こで,新 「防衛 大 綱 」(平 成22年)は 「本 格 的 な 侵 略 事 態 へ の 備 え と して保 持 して きた装 備 ・要 員 を始 め と して 自衛 隊 全 体 にわ た る装 備 ・ 人 員 ・編 成 ・配 置 等 の 抜 本 的 見 直 しに よる思 い切 っ た効 率 化 ・合 理化 を行 っ た 上 で,真 に必 要 な機 能 に資 源 を選 択 的 に集 中 して 防 衛 力 の構造 的 な変 革 を図 り,限 られ た資 源 で よ り多 くの 成 果 を達 成 す る」 と して い る 。 確 か に,新 「防衛 大 綱 」 で は 新 た に必 要 な能 力 が何 で あ る か は 比 較 的 明 瞭 で あ り,「 ロ ー ドマ ッ プ」 で は 冒 頭 に 「1.統 合 に よ る機 能 の 強 化 ・部 隊 等 の在 り方 の 検 討 」 を載 せ,7つ の分 野 を列 挙 して い る。 しか し,こ う し た強 化 の 実 現 に必 要 な財 源 や 人 員 を捻 り出 す た め,何 が 断 念 され るべ き 能 力 か,何 れ の 能 力 が 重 複 して お り削 減 され るべ き能 力 で あ る の か は判 然 と しな い 。 実 際,「 ロ ー ドマ ッ プ」 は機 能 強 化 の イ メ ー ジ や 検 討 の 手 順 を 示 して も,具 体 的 に廃 止 な い し削 減 さ れ る べ き装 備,部 隊,態 勢 を挙 げ て い な い 。 新 構想 に よ っ て 陸 海 空 の 三 自衛 隊 は各 々 変 革 に迫 られ て い る が,最 も大 幅 に変 革 され るべ き対 象 が 陸上 自衛 隊 で あ るの は,既 に本 稿 で論 じた新 構 想 の 史 的 評 価 を踏 ま えれ ば 当然 で あ る。 海 空 自衛 隊 は 従 来 か ら既 に機 動 展 開 能 力 を有 し,統 合 運 用 に必 要 な 情 報 通 信 シス テ ム 能 力 を か な りの 程 度 整 備 して きた の で あ る か ら,必 要 な 変 化 は既 存 の 路 線 で の 漸 進 的 な 質 的 改 善 と適 度 な 量 的 拡 大 で あ る。 他 方,新 「防衛 大 綱 」 も明 記 す る よ う に,陸 上

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「動的防衛力」構想の含意 と課題67 自衛 隊 は 旧 「構想 」 にお け る 内 線 作 戦 ・防 勢 作 戦 ・対 着 上 陸侵 攻 作 戦 に必 要 な重 武 装 で あ る が機 動 性 の低 い 能 力 を必 要 最 低 限 に削 減 す る 一 方,新 た に外 線 作 戦 ・攻 勢 作 戦 ・着 上 陸侵 攻 作 戦 を遂 行 で きる 能 力 を保 有 す る画 期 的 な変 革 を遂 げ な け れ ば な らな い 。 と は い え,新 「防衛 大 綱 」 は 「グ ロ ー バ ル な安 全 保 障 環 境 の す う勢 は, 相 互 依 存 関係 の一 層 の進 展 に よ り,主 要 国 間 の大 規 模 戦 争 の 蓋 然 性 は低 下 」 し,「 大 規 模 着 上 陸 侵 攻 等 の 我 が 国 の 存 立 を脅 か す よ う な本 格 的 な侵 略 事 くヨヨ  態 が 生 起 す る 可 能 性 は低 い 」 と捉 え て お り,「 動 的 防衛 力 」 構 想 が 求 め て い る の は,「 基 盤 的 防衛 力 構 想 」 が 想 定 した 「限 定 的 か つ 小 規 模 」 以 下 の 規 模 の 島 喚 部 へ の侵 攻 を 阻止,撃 退 す る機 動 展 開 能 力 で あ る 。 この 能 力 は せ い ぜ い 米 海 兵 隊 の 海 兵 隊 遠 征 隊(MEU:MarineExpeditionaryUnit,総 兵 員 約2200人)規 模 の 強 襲 上 陸作 戦 ・着 上 陸 侵 攻 作 戦 を遂 行 す る 能 力 で あ る 。 こ の 単 位 は,さ ら に大 きな 戦 闘 を想 定 し た 海 兵 隊 遠 征 旅 団(MEB: MarineExpeditionaryBrigade,総 兵 員 約3000∼20,000人)や 海 兵 隊 遠 征 軍 (MEF:MarineExpeditionaryForce,1個 海 兵 師 団+1個 海 兵 航 空 団)に は遠 く及 ば ず,既 存 の 陸 自部 隊 の 典 型 的 な 分 類 を使 え ば,2∼3個 連 隊 を 継 続 的 に投 入 す る 能 力 で あ る(つ ま り,出 動,整 備 ・補 給,待 機 の3セ ッ トで6∼9個 連 隊 が 必 要 で あ る 。)こ の規 模 を超 え る侵 攻 に は,本 土 か ら 師 団 規 模 の 部 隊 の展 開 が 必 要 とな り,お そ ら く海 自 ・空 自 の輸 送 能 力 だ け で な く,民 間 の 船 舶 や 航 空 機 を用 い た兵 員,部 隊,物 資 の 輸 送 が 不 可 欠 と な る。 さ ら に,米 軍 と りわ け 米 海 兵 隊 の 支援 も必 要 と な ろ う 。 した が っ て,「 動 的 防 衛 力 」 を構 築 す る に は,陸 上 自衛 隊 か ら既 存 の部 隊 を再 編 制 して6∼9個 連 隊 を海 兵 隊 化 す る と と も に,そ の機 動 展 開 の た く  ラ め の 海 上 及 び 航 空 輸 送 力 を確 保 す れ ば よい 。 ま た,制 空 権 及 び 制 海 権 を確 保 した上 で,島 喚 部 へ の 侵 攻 部 隊 を 阻止,撃 退 す る た め に近 接 航 空 支 援 や 艦 対 地 攻 撃 能 力 を 整 備 せ ね ば な ら な い 。(他 方,新 旧 の 『防 衛 大 綱 』 に お い て ミサ イ ル 防 衛 に対 す る扱 い は 大 き く変 わ っ て お らず,ミ サ イ ル 防 衛 政 策 が 新 「防 衛 大 綱 」 が 求 め る 変 革 に大 きな 影 響 は与 え ない と捉 え,本 稿 で の 分 析 の対 象 とは し なか っ た 。)

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こ う した 「動 的 防衛 力 」 構 想 を実 現 す る た め に必 要 な変 革 を 以 下,陸 海 空,三 自衛 隊 につ い て 各 々具 体 的 に提 示 す る。 1)海 上 自衛 隊 ① 遠 征 打 撃 群 海 上 自衛 隊 は米 海 軍 の タ ワ ラ級(4万 トン)や ワ ス プ級(4万 トン)の 大 型 強 襲 揚 陸 艦 を保 有 し て い な い が,実 質 的 に は ヘ リ 空 母 で あ るDDH 「ひ ゅ うが 」 及 び 「い せ 」 の2隻,次 級19500t型DDHの1隻+α,LST 「お お す み」 型 輸 送 艦3隻 を組 み 合 わ せ て,小 規 模 な遠 征 打 撃 群(Expedi-tionaryStrikeGroup)を 構 築 す る こ と が 考 え られ る 。 「お お す み 」 型 輸 送 艦 は船 体 内 に航 空 機 格 納 庫 を持 た ず,ヘ リの 離 着 陸 に しか 使 え な い が,格 納 庫 を有 す る 「ひ ゅ うが 」 級 及 び次 級DDHと 併 用 す る こ とで 大 型 強 襲 揚 陸 艦 に 匹 敵 す る ヘ リ運 用 能 力 を持 て る 。 ま た,「 ひ ゅ う が 」 級 及 び 次 級 DDHは エ ア ー ・ク ッ シ ョ ン型 揚 陸 艇(L-CAC:LandingCraft,AirCush-ioned)を 搭 載 して い ない が,「 お お す み」 型 輸 送 艦 は2艇 を搭 載 して い る 。 さ ら に,「 ひ ゅ うが 」 級 及 び次 級DDHに ス キ ー ジ ャ ン プ勾 配 を増 設 す れ ば垂 直/短 距 離 離 着 陸 機(VISTOL機)を 搭 載 す る こ とが で き よ う。 現 在 の と こ ろ,世 界 的 に見 て 実 戦 配 備 さ れ て い る代 表 的 なVISTOL機 は対 地 ・対 艦 攻 撃 機(つ ま り,制 空 ・要 撃 に は不 向 き)の 亜 音 速 の バ リ ア ー で あ る が,将 来 的 にF-35ラ イ トニ ン グ の 空 母 搭 載 型 が 実 用 化 さ れ れ ば,限 定 的 な航 空 優 勢 の 能 力 も期 待 で き る。 と は い え,(DDH1隻+「 お お す み 」 型1隻)×3で は 十 分 な強 襲 揚 陸 能 力 を提 供 で き な い 。 時 間 的,財 政 的 制 約 を克 服 す る に は,こ れ まで ブ ラ ジ ル や イ ン ドが 行 っ て きた よ うに,中 古 空 母 を購 入 し,大 型 ヘ リ空 母 とす る 方 法 も検 討 す べ きだ ろ う。(た だ し,莫 大 な コ ス トを要 す る た め,F-18な ど の 戦 闘 機 を搭 載 す る通 常 空 母 と して の 運 用 は断 念 す べ きだ ろ う。)例 え ば,通 常 推 進 型 の米 退 役 空 母(キ テ イー ・フ ォ ー ク,コ ン ス テ レー シ ョ ン, J.F.ケ ネ デ ィ ー)を 購 入 な い し リー ス す る とい う手 法 も あ る だ ろ う。 ま た,英 オ ー シ ャ ン級 ヘ リ揚 陸艦 や 仏 ミス トラ ル級 強 襲 揚 陸 艦 の よ う に,脆

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「動的防衛力」構想の含意 と課題69 弱 性 の リス ク を 冒 して も建 造 費 を抑 え る た め に商 船 構造 の もの を補 助 的 な 全 通 甲板 型 揚 陸 艦 と して 追 加 的 に保 有 す る 選 択 肢 も考 え ら れ る 。 た だ し, この 追 加 策 は人 的増 員 が 大 き くな り過 ぎて,現 状 の 防 衛 費 で は賄 い きれ ず, 実 現 不 可 能 で あ る 。 防 衛 費 の純 増 を見 込 め ない 現 状 で は,陸 自の 大 リス ト ラ に よ っ て 予 算 枠 や 人 員 枠 を確 保 す る しか ない で あ ろ う。 万 一 そ れ が で き た と して も,人 員 の 養 成 に必 要 な 期 間 を考 えれ ば,中 期 的 な検 討 課 題 で あ る。 ② 護 衛艦 護 衛 艦 は イ ー ジス 艦,DDH,新 型 汎 用 護 衛 艦(「 あ きづ き」 型)な ど, 大 型 化 が 進 む 一 方,そ の 総 数 は 昭 和51年 度 「防 衛 大 綱 」 で は約60隻,平 成 7年 「大 綱 」 で は約50隻,平 成16年 度 「大 綱 」 で は47隻,平 成23年 度 「大 綱 」 で は48隻 とか な り減 少 して き た 。2010年 で は,兵 員 数 が 約7.5倍 の 米 海 軍 の 主 要 水 上 戦 闘 艦 が 約114隻,兵 員 数8割 弱 の 英 海 軍 が25隻 で あ る こ くヨの と を考 え る と,海 自の 護 衛艦 保 有 数 が35∼40隻 ま で 削 減 さ れ て も決 して不 く  思 議 で は な い 。 さ ら に,わ が 国 周 辺 海 域 の 防 衛 に 限 定 し,情 報 通 信 シ ス テ ム と の高 度 デ ー タ リ ン クや 航 空 機 に よ る対 艦 攻 撃 能 力 と組 み合 わ せ れ ば, 護 衛艦 よ りもか な り小 型 の コ ル ベ ッ ト艦 や 高 速 ミサ イ ル 艇 で もか な りの代 替 が 可 能 で あ ろ う。 ③ 哨戒機 くヨフ  P3-C(2011年 現 在,91機 保 有)は も と も と対 潜 哨 戒 機 で あ っ た が,不 審 船対 策,東 シ ナ海 ガス 田監 視,尖 閣列 島監 視 な ど,1998年 か ら水 上艦 船 ・ 艦 艇 に対 す る監 視 強化 を担 う よ う に な っ た 。 こ の た め,対 潜 水 艦 魚 雷 と対 潜 爆 雷 だ け で な く対 艦 ミサ イ ル を装 備 す る よ う に な っ た 。 海 自は 老 朽 化 す るP3-Cに 替 え て,潜 水 艦 探 知 能 力,航 続 距 離 ・進 出速 度,捜 索 ・認 識 能 くヨ ラ くヨ   力 を 向 上 し た新 型 哨 戒 機P-1を65機 調 達 す る こ と を決 め た 。 しか し,防 衛 調 達 費 の 制 約 が さ ら に厳 し くな れ ば,こ の 機 数 は 削 減 さ れ る 可 能 性 が あ ろ う。

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そ の場 合,イ ン フ ラ部 分 も含 め て 総 合 的 な コ ス トが 低 け れ ば,攻 撃 能 力 も持 た な い 純 粋 な偵 察 機 で あ るRQ-4グ ロ ーバ ル ・フ ォー ク,偵 察 だ け で な く対 地 ・対 艦 攻 撃 もで きるRQ-1プ レデ タ ー の よ う な無 人 航 空機 を調 達 ・ 配 備 す る 方 法 で 補 完 す る こ と も考 え うる 。 無 人 機 は 長 時 間 に 亘 っ て 作 戦 行 動 を継 続 で き,人 員,運 用 コ ス ト面 で 優 れ て い る 。 ④ 潜 水 艦 財 政 的 制 約 と大 型 化 の た め,次 第 に護 衛 艦 の 数 が 少 な くな る な か,潜 水 艦 の 重 要性 は ます ます 高 くな っ て きた。 実 際,新 「防 衛 大 綱 」 は 潜 水 艦 の 保 有 総 数 を従 来 の16隻(+練 習 用2隻)か ら22隻(+練 習 用2隻)へ 増 強 す る方 針 を示 した 。計24隻 を作 戦 行 動,整 備 ・補 給,待 機 の3セ ッ トとす る と,常 時8隻 が 警 戒 ・監 視 に あ た る こ と を意 味 して い る。 宗 谷,津 軽, 対 馬 の 三 海 峡 に各 々一 隻 あ て る とす る と,南 西 諸 島 方 面 を含 め そ の 他 の 海 域 に五 隻,三 海 峡 の 各 々二 隻 あ て る とす る と,そ の他 海 域 に二 隻 が 展 開 で ゆ   き る。 しか し,高 速 移 動 で きる 攻 撃 型 原 子 力 潜 水 艦 と違 っ て,海 自が 保 有 す る の は全 て 通 常 型 潜 水 艦 で あ るか ら,そ の 運 用 は 基 本 的 に は待 ち伏 せ に よ ら ざ る を えず,常 時12∼14隻(3海 峡 で6隻,そ の 他,東 シ ナ 海,日 本 海,日 本 近 海 の 西 太 平 洋 で6∼8隻)を 展 開 す る た め に は,で きれ ば総 数 く の で40隻 程 度 は欲 しい と こ ろ で あ る。 ます ま す 厳 し くな る防 衛 費 や 人 員 の制 約 に鑑 み れ ば,潜 水 艦 の 隻 数 を増 や す に は 少 な く と も艦 艇 の一 部 を現 在,総 基 準 排 水 量3000ト ン弱 か ら半 分 程 度 の大 き さの 潜 水 艦 にす る の が 有 効 な 方 法 で あ る 。 一 般 的 に,大 型 の潜 水 艦 に は有 利 な点 も多 い が,条 件 が 同 じな ら ば,小 型 の もの よ りも見 つ か り易 い 。他 方,東 シ ナ 海(水 深2000メ ー トル の 沖 縄 トラ フ を 除 け ば,大 部 分 の水 深 が200メ ー トル 以 下)や 日本 本 土 周 辺 海 域 で の 作 戦 で あ れ ば,世 界 の 通 常 型 潜 水 艦 の典 型 で あ る1500ト ン弱 で 十 分 で あ ろ う。 した が っ て, 今 後 は 「防 衛 大 綱 」 別 表 の潜 水 艦 に 関 して は,隻 数 で は な く総 基 準 排 水 ト ンで 示 し,か な りの新 造 潜 水 艦 を 中型 に す る こ とを検 討 す べ きだ ろ う。 実 際,現 在 の 海 自潜 水 艦 よ り若 干 大 型 の豪 州 海 軍 の コ リ ンズ 級 通 常 推 進 型 潜

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「動的防衛力」構想の含意 と課題71 水 艦 は40名 弱 で 作 戦 遂 行 で きる シス テ ム化 に よ り,人 員 を増 や さず に保 有 ゆ ラ 隻 数 と継 戦 能 力 を 向 上 して い る 。 中型 潜 水 艦 で あ れ ば,一 隻 当 た りの 要 員 数 を さ ら に削 減 で き,こ こ で の提 言 は極 め て 実 現 性 が 高 い 。 2)航 空 自衛 隊 ① 次 期 戦 闘 機 F-4フ ァ ン トム の後 継 機 だ け で な く,老 朽 化 して い る 未 改 修F-15イ ー グル の後 継 機 も大 きな 問 題 で あ るが,ど の 機 種 を採 用 す る か は 「動 的 防衛 力 」 構想 に求 め られ る 自衛 隊 の 構 造 変 革 に直 接 に は 関 係 な い 。従 来 と同様, 航 空 優 勢 を維 持 す る た め の要 撃 能 力 は維 持 ・強 化 せ ね ば な らず,焦 点 は本 稿 で 論 じた 構造 変 革 に障 害 とな ら ない よ う調 達 費 を 制御 す る こ と にあ る 。 ま た,要 撃 機 能 だ け で な く攻 撃 ・近 接 支 援 機 能 も有 す るマ ル チ ・ロ ー ル機 で あ れ ば な お さ ら よい 。 つ ま り,航 空 自衛 隊 が 攻 勢 的 防 御 能 力 を強 化 し よ う とす る場 合 の 政 策 上 の 焦 点 は 機 種 の選 定 に帰 着 す る 。 こ こ で は 紙 幅 の制 く ヨラ 約 の た め,詳 細 は 論 じ な い 。 ② 無 人機 す で に述 べ た よ う に,RQ-4グ ロ ーバ ル ・フ ォ ー クやRQ-1プ レデ タ ー の よ う な無 人 航 空 機 は既 存 の 偵 察 機RF-4E/EJを 不 要 と し,戦 闘 機F-2 を補 完 す る こ とが で き る。 戦 闘 機 パ イ ロ ッ トの 志 望 者 の 確 保 や 育 成 が ま す ます 困難 と な っ て い る なか,優 れ た 代 替 手 段 で あ る 。 こ う した 大 型 無 人 機 の 運 用 に 関 して は,統 合 司 令 部 に よ る運 用 を行 う必 要 が あ ろ う。 ③ 近 接 支 援 従 来,専 守 防 衛 の 理 念 か ら,空 自 は要 撃 を重 視 し,陸 自 の作 戦 に対 す る 近 接 支 援 に は高 い優 先 順 位 は 置 い て こ な か っ た。 そ こで,現 在,純 粋 な練 習 機 と して使 わ れ て い る亜 音 速 の ジ ェ ッ ト機T-4(2011年 現 在,199機 保 く  ラ 有)の 一 部 を対 地 攻 撃 へ 転 用 す る こ とが 考 え ら れ る 。 この 種 の 練 習 機 は発 展 途 上 国 で は 軽 攻 撃 機 に転 用 され て い る 。 ま た,「T-4に よ く似 た イ ギ リ

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ス の ホ ー ク や,フ ラ ン ス ・ ドイ ツ の ア ル フ ァ ジ ェ ッ ト な ど も,数 発 の 爆 弾 と 自 衛 用 の 短 射 程 空 対 空 ミサ イ ル を 装 備 で き る 。」T-4改 の 「搭 載 可 能 兵 装 は 最 大2発 のMk82・Mll7通 常 爆 弾 … で あ り,さ ら に 自 衛 用 と し て 短 射 程AAM-390式 対 空 誘 導 弾 を2発 」 を 装 備 可 能 で あ る 。 さ ら に,各 種 の 対 空,対 地 ・対 艦 ミ サ イ ル(対 戦 車 ミ サ イ ル を 含 む),ロ ケ ッ ト弾, (45) 機 関 砲 ポ ッ ド,偵 察 ポ ッ ド,電 子 戦 ポ ッ ドの 搭 載 も考 え ら れ る 。 した が っ て,わ が 国 本 土 及 び そ の 周 辺 で のT-4改 の 運 用 は 陸 自 の 戦 闘 ヘ リ を か な り代 替 す る こ とが 可 能 で あ ろ う。 ま た,航 続 距 離 が1300km程 度 と短 い が,南 西 諸 島 に散 在 す る空 港 を利 用 す れ ば 島 喚 防 衛 に も有 用 で あ る。 例 え ば,先 島諸 島 に空 港 ・補 給 拠 点 さ え確 保 で きれ ば,尖 閣 諸 島 も十 分 に カバ ー で きる 。 た だ し,兵 器 を搭 載 した 場 合,重 量 の 増 加 の た め,航 続 距 離 は 数 百km程 度 とな り,尖 閣 諸 島 で の 滞 空 時 間 は20∼30分 程 度 に 限 定 さ れ る か も しれ な い 。 ④ 輸 送 機 従 来 か ら,航 空 自衛 隊 の空 輸 能 力 は慢 性 的 に不 足 して きお り,こ の 状 況 は しば しば 海 外 に部 隊 展 開す る 際 に露 呈 して き た 。 また,海 外 か らの 邦 人 救 出 ・輸 送 に も全 く十 分 で は な い 。 しか し,現 在 の厳 しい 財 政 的 制 約 の 下 で は,当 面,現 在 計 画 され て い る次 期 輸 送 機(C-X)の 調 達 ・配備 計 画 を 粛 々 と行 う しか な い だ ろ う。 3)陸 上 自衛 隊 ① 部 隊 編 成 ・態 勢 既 に,分 析 した よ う に陸 上 自衛 隊 の態 勢 は1945年 の 「帝 国 陸 海 軍 作 戦 計 画 大 綱 」 の 影 を引 き摺 っ て お り大 胆 な リス トラが 必 要 で あ る 。 海 上 自衛 隊 は 自衛艦 隊 司 令 部,航 空 自衛 隊 は 航 空 総 隊 司 令 部 に よ り一 元 的 に指 揮 ・統 制 さ れ て い る一 方,陸 上 自衛 隊 は 方 面 隊(北 海 道,東 北,東 部,中 部,西 部)の 方 面 総 監 部 に よ りバ ラ バ ラ に指 揮 ・統 制 さ れ て い る。 これ で は,統 合 幕 僚 監 部 が 五 方 面 総 監 部 を調 整 せ ね ば な らず 極 め て 非 効 率 的 で あ り,場

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「動的防衛力」構想の含意 と課題73 合 に よ っ て は,効 果 的 に機 能 しな い 。 平 成21年 の 「防 衛 大 綱 」 策 定 準 備 の 段 階 で検 討 され 見 送 られ た,五 方 面 総 監 部 の 完 全 廃 止 及 び 陸上 総 隊 司 令 部      創 設 を 断行 し,支 出枠,人 員 枠 を捻 出す べ きで あ ろ う。 ゆ   さ ら に,全 国 に あ る150を 超 え る 駐 屯 地 等 を大 幅 に削 減 ・再 編 成 し(例 え ば,当 面2割 減),組 織 の 簡 素 化,基 地 管 理 経 費 の 削 減 を 断 行 す べ きで あ る。 こ う した例 は,ポ ス ト冷 戦 期,大 幅 な基 地 数 の 削 減 に繋 が っ た米 国 防 総 省 の 「米 軍 基 地 再 編 ・閉 鎖 案 」(BRAC:BaseRealignmentand Closure),と りわ け米 国 内 にお け る米 軍 基 地 削 減 に対 す る 地 元 の 強 い 抵 抗 く  ラ を政 治 的 に押 し切 っ て 断 行 した 手 法 を参 考 にす べ きで あ る。 ② 戦 車 陸 上 自衛 隊 が 保 有 す る 主 力 戦 車(MBT:MajorBattleTank)は 平 成8年 「防 衛 大 綱 」 で は約900両,平 成16年 「大 綱 」 で は 約600両,平 成22年 新 「大 綱 」 で は約400両 と削 減 さ れ て きた。 こ う した削 減 は 「動 的 防 衛 力 」 構 想 が 出 され る前,依 然 と して 「基 盤 的 防衛 力 構 想 」 が 有 効 だ と され て い た 段 階 に,も っ ぱ ら冷 戦 型 脅 威 の 減 退 と防衛 費 の 漸 進 的 削 減 の 条件 の 下 で な され た 。今 や 新 「大 綱 」 に お い て,わ が 国 本 土 に対 す る着 上 陸侵 攻 は殆 ど 考 え られ な い(文 言 上 は,「 可 能 性 は 低 い 」)と い う状 況 判 断 を 下 した の で あ る か ら,戦 車 の 保 有 は さ らに300両 程 度 ま で 削 減 して も問 題 は な い だ ろ う。(よ り楽 観 的 な見 通 しを持 て ば,200両 程 度 ま で 削 減 し う る 。)こ う し た 観 点 か ら,わ が 国 と同 じ よ う に着 上 陸侵 攻 の 可 能性 が 殆 ど想 定 で きな い ゆ   英 国 の例(2011年 現 在,325両)が 参 考 に な る だ ろ う。 た だ し,英 陸 軍 の 場 合,国 土 の か な りの 部 分(ス コ ッ トラ ン ドや ウ ェ ー ル ズ の 山 岳 地 帯 を 除 く)が 平 坦 で 戦 車 の 移 動 ・展 開 に適 して い る こ と,海 外 派 兵 で 戦 車 を用 い る場 合 を想 定 して い る こ とか ら,そ の分,割 り引 い て 考 え る必 要 が あ る 。 実 際,わ が 国 の周 辺 諸 国 に は 着 上 陸 侵 攻 の 意 図 と能 力(と りわ け,大 規 模 な強 襲 上 陸 能 力)の 双 方 を合 わ せ 持 つ 国 は存 在 しな い 。 ま た,仮 に ロ シ アが 仏 ミス トラ ル級 強 襲 揚 陸艦 を調 達 し,極 東 に 配備 した と ころ で こ う し た 大 勢 に 大 き な影 響 は な い。 とい う の は,定 石 で あ る 「攻 撃 三倍 の 法 則 」

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(戦 闘 に お い て有 効 な 攻 撃 を行 う た め に は 相 手 の 三 倍 の 兵 力 が 必 要)を 踏 ま え れ ば,例 え ば,わ が 国 が 北 海 道 に100両 の 戦 車 を 配 備 して い れ ば,敵 は300両 の 戦 車(同 程 度 の 能 力 を持 つ と仮 定)を 揚 陸 させ ね ば 勝 利 で きな い か らで あ る。 さ らに,現 実 の対 着 上 陸 侵 攻 作 戦 は 陸 上 部 隊 だ け で 戦 う もの で は な く, 航 空 戦 力 に よ る近 接 支援 や 海 上 艦 艇 か らの 艦 砲 射 撃 と も組 み合 わ せ る こ と が で きる の で あ る か ら,陸 上 自衛 隊 が 保 有 せ ね ば な ら ない 戦 車 数 は敵 戦 車 の 三 分 の 一 以 下 で よい 。 大 量 の 戦 車 が 必 要 と な る場 合 は,冷 戦 型 の 大 規 模 な着 上 陸侵 攻 に対 して 制 海 権,制 空 権 を失 っ た状 況 で 継 戦 せ ざ る を得 な い 場 合 で あ る が,新 「大 綱 」 は こ う した状 況 は ほ とん ど ない と捉 え て い る 。 ま た,対 ゲ リ ラ戦 で も戦 車 は非 常 に有 効 で あ るが,大 口径 の砲 を搭 載 す る 戦 闘 装 甲 車 両 で か な りの 程 度 代 替 で きる 。確 か に,戦 車 と比 して 脆 弱 な装 甲車 両 に は 軍 事 リス クが 伴 うが,こ れ は新 「防 衛 大 綱 」 の 下 で は 甘 受 す べ き リ ス ク で あ る。 ③ 装 甲 車 両 及 び輸 送 トラ ック の フ ァ ミ リー 化 陸 上 自衛 隊 は多 種 の 装 甲車 両(73式 装 甲 車,96式 装 輪 装 甲車,82式 指 揮 通 信 車,87式 偵 察 警 戒 車,203自 走 榴 弾 砲,75式 自走155mm榴 弾 砲,99式 自走155mm榴 弾 砲,多 連 装 ロ ケ ッ トシス テ ムMLRS,新 規 調 達 予 定 の 機 動 戦 闘車 両 な ど)を 各 々比 較 的 少 量 保 有 して い る 。個 別 に軍 事 仕 様 を指 定 し た多 様 な 装 甲車 両 を生 産 す る こ とは軍 事 リス ク を低 減 で きて も,少 量 生 産 だ と割 高 と な り,高 い 財 政 リス ク を抱 え て しま う こ と に な る 。 最 近 の 国 際 的 な潮 流 で は,米 軍 の ス トラ イ カ ー装 甲 車 に代 表 され る よ う に,車 体 な どの 共 通 部 分 の 共 有 化(フ ァ ミ リ ー化)を 進 め る こ とで,財 政 リス ク の制 御 に よ り重 点 を置 い た ア プ ロ ー チ が 採 られ る よ うに な っ て い る 。 この 種 の フ ァ ミ リー 化 さ れ た装 甲車 は 戦 車 と比 べ て 火 力 や装 甲 が 弱 く,無 限 軌 道 型 の 車 両 と比 べ て 安 定 性 が 低 い な どの 欠 点 が あ るが,空 輸 性,路 上 機 動 性等 の 優 れ た機 動 力 を有 して お り,島 峡 防 衛 や 本 格 的 な 対 着 上 陸侵 攻 作 戦 に満 た な い烈 度 の 作 戦 な ら比 較 優 位 を有 して い る。

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「動的防衛力」構想の含意 と課題75 防 衛 省 は 「将 来 装 輪 戦 闘 車 両 の 研 究 」(平 成17年 ∼19年)の 結 果 を踏 ま るの え て,キ ャ ビ ン タ イ プ車 両 とハ ッチ タ イ プ車 両 の双 方 で フ ァ ミ リー 化 の方 向 性 を打 ち 出 し,平 成20年3月 に は 「統 合 運 用 の視 点 に立 っ た 装 備 品 取 得 く    につ い て」 を発 表 した が,依 然 と して平 成24年 度 予 算 概 算 要 求 で も従 来 の る    機 種 の調 達 が 提 案 され 続 け られ て お り,迅 速 に進 捗 して い る とは い え な い 。 これ ま で の と こ ろ,フ ァ ミ リー 化 の 基 本 と な る車 両 の デ ザ イ ンは 特 定 され て い な い よ うで あ る 。 こ う した なか,2011年3月 に は 東 日本 大 震 災 が 勃 発 し,そ の 後 の 大 津 波 に よ る被 害 で 陸 自部 隊 の 機 動 力 の 欠 如 が 露 呈 した 。水 没 した地 域 にお け る 移 動 や 陸 上 交 通 路 が 遮 断 さ れ た 場 合 に は,米 海 兵 隊 が 運 用 して い る水 陸両 用 装 甲車 が 非 常 に有 用 で あ る こ とが 分 か った 。 フ ァ ミ リ ー化 の 検 討 にお い て は,米 海 兵 隊 の 水 陸 両 用 装 甲 兵 員 輸 送 車 (LVTP-5)や 中 国 人 民 解 放 軍 の63式 水 陸 両 用 戦 車(WZ-211)な ど を参 考 さヨ  に,水 陸 両 用 車 の導 入 も検 討 す べ きだ ろ う。 も し,国 産 が 割 高 に な り,調 達 数 が 限 定 され る な ら,完 成 品 の 直 輸 入 で 十 分 で あ ろ う。 ま た性 能 面 で は, 例 え ば,イ ラ ク侵 攻 にお け る米 海 兵 隊 の水 陸 両 用 車 を考 え る と,走 行 距 離 や 移 動 速 度 に全 く問題 は な い とい え る。 た だ し,水 陸 両 用 車 の 調 達 は強 襲 揚 陸 艦 の調 達 と十 分 連 動 させ て行 う必 要 が あ り,真 の 意 味 で統 合 調 達 が 実 現 さ れ ね ば な らな い 。 同様 に,ト ラ ック につ い て も異 な る メ ー カ に小 型 トラ ック,1ト ン半 ト ラ ック,3ト ン半 トラ ッ ク,7ト ン ・ トラ ッ ク を 製 造 させ て お り,極 め て 非 効 率 的 で あ る。 米 国 の イ ラ ク で 軍 事 作 戦 を見 る と,低 い 脅 威 度 の 環 境 で は,商 業 用 トラ ッ ク を用 い,中 程 度 の脅 威 度 の 環 境 で は,商 業 用 トラ ッ ク に外 付 け の 装 甲 を被 せ る な どの 工 夫 が な され,経 費 が 削 減 さ れ た 。 確 か に, 地 雷 やIED(即 席 爆 発 装 置)に 対 して は,商 業 用 トラ ッ ク で は あ ま りに も 脆 弱 で あ る が,対 抗 措 置 と して は 既 存 の 陸 自保 有 の トラ ック で さ え必 ず し も有 効 で な く,南 ア フ リ カ製 の バ ッ フ ェ ル(Buffel)装 甲兵 員 輸 送 車 の よ う な特 別 な 仕 様 が 必 要 と な る 。 さ ら に,陸 自の 人 員 増 が 大 き く抑 制 さ れ て い る こ とか ら,運 転 手 の 確 保 も ます ます 困 難 に な っ て お り,大 幅 に トラ ッ

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