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情報拡散モデルにおける生活パタン導入による拡散再現性向上の検討

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(1)

情報拡散モデルにおける生活パタン導入による拡散再現性向上の

検討

English Title

池田 圭佑

1

榊 剛史

2

鳥海 不二夫

2

栗原 聡

1

Keisuke IKEDA

1

, Takeshi SAKAKI 2

2

, Fujio TORIUMI

2

, and Satoshi KURIHARA

2

1

電気通信大学

1

The University of Electro-Communications

2

東京大学

2

The University of Tokyo

Abstract: 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災時,Twitter を通して避難情報や被災地の情報

が発信され,Twitter が重要な情報源として認識されるようになった.しかし,Twitter には,誤った 情報が発信されると急速に不特定多数の人に広まってしまうというデメリットも存在している.そのた め,デマ情報を早期に収束させる手法が必要とされている.我々はこれまで Twitter における情報拡散 メカニズムを探るため,一人ひとりのユーザーに着目した情報拡散モデルである AIDM(Agent-based Information Diffusion Model) を提案した.AIDM では,Twitter ユーザを趣味嗜好の概念を持つ エージェントとして定義しており,同一ユーザーが複数回つぶやくこととや情報経路の多重性を考慮 している.しかし,現状の AIDM では一部のデマ拡散しか再現できておらず,課題が存在する.本 稿では,AIDM のもつ課題を整理し,その課題の一つである「人間の生活パタン」を考慮すること により AIDM の改善を行う.

1

はじめに

本稿では,これまで我々が提案してきた Twitter 上 での情報拡散を表現する Agent-based Information Dif-fusion Model(AIDM) に人間の生活パタンを導入する ことを検討する.AIDM は,Twitter ユーザーを趣味 嗜好の概念を持つエージェントとして定義し,複数の エージェントが相互作用することで情報拡散現象を再 現するモデルである.しかし,現状の AIDM ではデマ 情報の拡散ピークが 1 度だけのシングルバースト型デ マ拡散を再現可能であるが,拡散が複数回にわたるマ ルチバースト型デマ拡散の再現には至っていない.そ こで,AIDM が持つ課題を整理し,その課題を解決す る方法について述べる. Twitter は人気のあるマイクロブログサービスの一種 であり,普段から多くのユーザーが使用している.ま た,日常に限らず震災などの非常時にも積極的に使用 されている.2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震 災では混乱した状況の中,Twitter を通して避難や救 援要請などの情報がやり取りされた.また,一般ユー ザーだけでなく自治体やテレビ局などの公共機関も積 連絡先:電気通信大学       〒 182-8585  東京都調布市調布ケ丘 1-5-1        E-mail: [email protected] 極的に Twitter を通して情報を提供したことが報告さ れている [1, 2].これらのことから,人々は Twitter を 災害時にも有用な情報源として認識した.しかし,デ マ情報のような有害な情報も Twitter を通して拡散し たことも報告されており,利用には注意が必要である. Twitter のデメリットは,一度デマ情報が拡散されて しまうと,その情報が瞬く間に広まってしまうことで ある.東日本大震災の際にも複数のデマ情報が Twitter 上で拡散したことがわかっている.デマ情報の定義は 様々であるが,本稿では文献 [3] の定義より,デマ情報 を「根拠が無く,後に誤りを指摘する内容の情報が発 表された情報」とする.大規模な災害時,被災者らは 情報の真偽を確かめることが難しく,デマ情報によっ て深刻な被害が出てしまう恐れがある.Twitter 等の ソーシャルメディア上での情報拡散メカニズムを理解 することは,それらデマ情報による被害を抑制するた めに重要である.我々は,実際のデマ拡散現象を再現 可能なモデルの提案を行い,そのモデルを元に情報拡 散メカニズムの推定を目指している.詳細な拡散メカ ニズム推定のためには,複数のデマ拡散を再現できる 普遍的な情報拡散モデルが必要である.そこで,本稿 では AIDM を改良し,実際に東日本大震災時に拡散さ れたデマ情報及びデマ訂正情報の再現を行う.

(2)

本稿の構成を述べる.2節では,関連する研究を紹 介する.3節では,これまで我々が提案してきた情報 拡散モデルの問題点を整理し,4節でその問題点を解 決するするための手法を紹介する.5 節では,提案モデ ルの妥当性を評価するための実験について述べる.そ して,最後に 6 節でまとめを述べる.

2

関連研究

情報拡散に関連する研究は多数行われている.いく つかを紹介し,本稿の位置づけを明らかにする. 我々[3] はこれまで感染モデルとして有名な SIR モデ ル [4] を拡張した拡張 SIR モデルを提案している.本 モデルは,デマ情報及びデマ訂正情報をウィルスとみ なし,Twitter 上での情報拡散をモデル化している.し かし,単純にデマ情報とウィルスを同一のものとして 考えることはできないため,情報拡散の特徴を踏まえ モデルを構築している.本モデルにおけるユーザーの 状態遷移は,遷移確率を用いて表現されている.拡張 SIR モデルを用いることで,シングルバースト型デマ 拡散を再現可能である.しかし,各ユーザーに着目し たモデル化を行っていない,マルチバースト型デマ拡 散に関しては取り組んでいないなどの課題がある. SIR モデルをベースとした最近の研究としては,Ser-rano ら [5] の研究も挙げられる.この研究では,デマ情 報をつぶやいたユーザー,デマ情報であると知ってい るユーザー,デマ情報を否定する情報を拡散したユー ザーを設定している.それらのユーザーの状態遷移を, 遷移確率を用いて遷移させることにより情報拡散現象 を表現している.本稿で提案するモデルとの相違点と しては,以下の 2 点が挙げられる.Serrano らのモデ ルでは Twitter 以外の外部からの情報の流入を考慮し, 情報拡散現象を表現している.また,一度デマ情報をつ ぶやいた人はデマ情報を否定するツイートをしないと してモデル化をしている.しかし,AIDM の特徴であ る各ユーザーに着目したモデル作りは行われていない. 提案モデルは,後述するように各ユーザーに着目し てモデルの構築を行っているが,その理由について説 明する.三浦 [6] によって,今回対象としている東日本 大震災時に Twitter 上でデマ情報の拡散が増えた理由 についての分析が行われた.この結果,以下の様なこと がわかった.震災時にツイート数が増加した理由は,ス トレスに対処するための行動の結果である.また,ネガ ティブ表現の増加が,流言の増加要因であると述べてい る.さらに,Twitter ではユーザー毎にフォローしてい る人物が異なるためにタイムラインに表示される内容 が異なる.したがって,ユーザー毎にコミュニケーショ ンが行われる場が異なると報告している.よって,マ クロ的な情報拡散のモデル化より一人一人のユーザー に着目したミクロな視点から情報拡散モデルをつくる 必要があるということがこの研究から明らかになった. 一人一人の人間に着目して情報拡散をモデル化し た研究として,Takeuchi ら [7] の研究が挙げられる. Takeuchi らは,コンピューターネットワーク上におい て,人が情報をフィルタリングしているということを 考慮した情報拡散モデルを提案している.このモデル は,情報を拡散させるかさせないかの判断は,ユーザー の持つ情報に対する価値によって決まるとされている. また,どのようなルートで情報を得たかということも 考慮する必要があるとしている. 小松ら [7] の研究では,人間の生活パタンを考慮した 情報拡散モデルの提案を行った.このモデルでは,人間 の生活時間として睡眠時間を考慮し,情報を取得する 時間に偏りを持たせていた.しかし,状態遷移に関し ては一人ひとりのユーザーに着目したものではなかっ た.また,実際の情報拡散現象との比較,検討なども 行われていない. 情報拡散の詳細なメカニズムを推定するためには,三 浦や Takeuchi らが指摘しているように,ユーザー毎の 価値観や情報を受け取ったルートを考慮するミクロな 視点から研究を行う必要がある.本研究では,これま で我々が提案したミクロな視点で構築した AIDM に人 間の生活パタンを考慮させることでより精緻なモデル 化を目指す.

3

従来の

AIDM

の課題

我々は,これまで Twitter ユーザーや Twitter ネット ワークの特徴に着目し,情報拡散現象を再現するため のモデルである AIDM を提案している.しかし,これ までの AIDM では一部のデマ拡散の再現性は確認した が,一部のデマ拡散の再現性は確認できていない.そ こで,本節ではこれまで我々が提案した情報拡散モデ ルの特徴を述べ,その後 AIDM の持つ課題を整理する.

3.1

AIDM の特徴

AIDM は,以下 3 つの要素を考慮することにより,現 実のユーザーの情報拡散行動を模したモデルである. a. エージェント毎に異なる趣味嗜好を考慮し,多様性 を表現 b. エージェントが複数回つぶやくことを考慮 c. Twitter ネットワークが持つ情報経路の多重性を表現

(3)

3.1.1 エージェントの多様性の表現 口コミ伝播の研究知見 [10] からユーザーが情報を伝 播させる際の重要な要素が判った.この知見によると 情報を拡散させる際,ユーザーがその情報にどのよう な価値を見出すかや,情報源の信頼性が重要な要素で あるとされている.ここで「情報の価値」とは,情報の 鮮度とその情報に対するユーザーの興味関心の度合い である.ユーザーが興味をもつ情報はユーザー毎に異 なっており,拡散させる情報も異なると考えられる.そ こで,我々はエージェント毎に異なる興味関心を持たせ たり,情報源の信頼性を表現したりすることで上記の ことを表現した.具体的には,エージェントのツイート したいという欲求を表す指標である MoT(Motivation of Tweet)を導入し,その MoT がしきい値を超えると エージェントがつぶやき,情報が拡散する.MoT の計 算式は以下の式の通りである. M oTkβt= M oTkβt−1e−λ(t−F G)+ ikβsβn an (1) なお,β は情報を受取りつぶやくかどうか迷ってい るユーザ,t は現在の時刻,anは時刻 t においてユー ザ β の情報元となるユーザの集合,λ は忘却率,k は受 取った情報のトピック,F G は最初にデマ情報を受取っ た時刻を表すものとする. 3.1.2 複数回つぶやくことの表現 Twitter では同一のユーザーが複数回つぶやくことが 可能なシステムとなっている.また,人間は同じトピッ クに対してもその情報が重要であったり,以前つぶや いたことを忘れていたりした場合は再度つぶやくこと も考えられる.そこで,同一のデマ情報であっても複数 回つぶやくことができる新たなエージェントの状態遷 移モデルである ORS モデル (Outsider-Reciver-Sender モデル) を提案・導入した.ORS モデルの各状態につい て説明する.まず,Outsider はまだデマ情報もデマ訂 正情報も知らない状態である.次に Receiver はデマ情 報・デマ訂正情報のどちらかあるいは両方を受取った 状態である.最後に,Sender はデマ情報やデマ訂正情 報を拡散させた状態である.一度状態が Sender となっ ても,再度 Receiver に遷移することにより,新たに情 報を受取ることで再度つぶやくことが可能となる. 3.1.3 情報経路の多重性の表現 実際の Twitter では,ユーザーは様々な人をフォロー したり,フォローされたりしている.そのため,ユー ザー毎にタイムラインに表示される情報は異なってい る.フォローしているユーザーが一斉に同じ内容をつ ぶやくことは考えにくく,その時々で様々な情報が表 示される.そのため,フォローしている人物によって各 ユーザーが受け取る情報は様々であり,同じ内容でも受 け取るタイミングが異なると考えられる.このように, Twitter には様々な情報経路が存在するため,AIDM で はそれらを考慮している.これにより情報を一度受取っ ただけではつぶやかなくても,複数回情報を受け取る ことで,関心の無かった情報や信頼していなかった情 報に関してもつぶやくことを再現可能である.

3.2

AIDM が持つ課題の整理

我々は,3.1 節で説明した特徴を持つ AIDM を用いて 東日本大震災で拡散した実際のデマ拡散の再現を行っ た.シングルバースト型デマ拡散として,コスモ石油 に関するデマ拡散1の再現を行った.また,マルチバー スト型デマ拡散として,節電に関するデマ拡散2の再 現を行った. しかし,現状のモデルではシングルバースト型デマ 拡散の再現性しか確認できず,マルチバースト型デマ 拡散の再現には至っていない.そこで,AIDM が持つ 課題を検討したところ,以下 3 つの課題が考えられる. 1. 人間の生活パタンの考慮 2. 外部メディアの影響を考慮 3. 拡散ネットワークの検討 1 について,人間は 1 日中 Twitter だけを利用して いるわけではなく,時間帯やその日の予定などに応じ て様々な活動を行う.例えば,あるサラリーマンの一 日の活動を考えてみる.朝起きて,朝食を食べ,出社 の準備をする.会社に出社すると,日中は仕事をする. 仕事が終われば自宅に帰宅し,夕食を食べる.時には, 終業後に友人と遊びに行ったりもする.そして,夜は 睡眠をとる.このように,様々な活動を行っているが, 現状の AIDM ではこのような人間の生活パタンを考慮 できていない. 2 について,普段人間は様々なメディアから情報を得 ており,それらの影響を受けている.例として,テレビ や新聞,インターネットなどのメディアが挙げられる. 人間はそれらのメディアから得た情報を基に Twitter に 投稿することもしばしばある.しかし,現状の AIDM では情報の流れは Twitter だけに限定されているため, 1東日本大震災直後に発生した千葉県市原市のコスモ石油の千葉 製油所での火災によって有害物質の含まれた雨が降るというデマ情 報 2東日本大震災時に流れた関西地方でも関東圏の電力を補うため に節電をするほうが良いというデマ情報

(4)

図 1: 各時間における平均投稿数と投稿数の割合 図 2: コスモ石油に関するデマ拡散とツイート投稿の 関係 外部メデイアから新たな情報を投入することは表現で きていない. 3 について,これまで我々が AIDM の妥当性を評価 するために行った実験は,我々が作成した単純なスケー ルフリーネットワーク上で行っていた.しかし,実際 のネットワーク構造との比較などは行っておらず,ネッ トワーク構造に関しては特に考慮していなかった. 以上のように現状の AIDM には複数の課題が存在す るため,それらの改善を行う必要がある.そこで,本 稿ではそれらの課題の 1 つである「人間の生活パタン」 を考慮し,これまでの AIDM の改良方法を検討する.

4

人間の生活パタン導入

本節では,AIDM への人間の生活パタンの導入につ いて述べる.

4.1

生活パタン

Shahzad ら [9] の研究により,Twitter がよく利用さ れている時間帯には偏りがあることがわかっている.こ の研究は日常生活におけるツイッターの利用について 研究したものである.しかし,今回我々が対象として いるのは震災という非常時のツイッター利用について である.そこで,我々は,震災時の Twitter の利用状 況について調査を行った.図 1 は,2011 年 3 月 11 日か ら 3 月 17 日までの 7 日間の各時間における平均ツイー ト数と投稿割合を示している.この図 1 より,日中で は 12 時頃や 15 時頃に投稿数が多くなっていることが 分かる.これは,昼食や休憩の時間にあたり,投稿数 が増えたと考えられる.また,17 時頃から再びツイー ト数が増えはじめ,22 時頃に 1 日の最大投稿数を数え ている.これは,この時間帯が終業後からの余暇の時 間帯であるためだと考えられる.23 時頃からは投稿数 が減少しはじめ,早朝 5 時頃には投稿数が 1 日の最小 投稿数となっている.これは,23 時から 5 時というの は多くのユーザーが睡眠をとるための時間帯であると 考えられる.このように,震災時であっても Twitter の投稿数はユーザーの生活パタンにより時間帯毎に異 なっていることが明らかになった. デマ情報の拡散も時間帯によって変化がみられるか 調査を行った.図 2,3 は実際のデマ拡散と全ツイート の投稿の関係を表したものである.図 2 は,シングル バースト型デマ拡散の例である.この図から,デマ情 報の投稿件数が増える時間帯は全体のツイートの投稿 数が増えるタイミングと一致している.また,全体の ツイートの投稿が落ち込む深夜帯にはデマ情報の投稿 数も減少していることが分かる.図 3 は,マルチバー スト型デマ拡散の例である.これもシングルバースト 型デマ拡散同様にデマ情報の投稿数の変化が全ツイー トの投稿数に応じて変化していることが分かる.以上 のことより,デマ拡散においても人間の生活パタンが 影響していることが明らかになった. そこで,本研究では,時間帯別の Twitter 投稿割合 をもとにエージェントが情報を確認するか否かを決定 する.つまり,時間帯毎に Twitter を利用するエージェ ント数を変化させることで,これまでの AIDM で人間 の生活パタンを考慮できるようにする.

4.2

AIDM の改良

本稿では,これまで我々が提案していた AIDM を前述 した人間の生活パタンを考慮できるよう改良する.従来 の AIDM では,エージェントが情報を受け取ると MoT が計算され,MoT がしきい値が超えるとそのエージェ ントがつぶやき情報が拡散するというモデルであった.

(5)

図 3: 節電に関するデマ拡散とツイート投稿の関係 表 1: Twitter 利用割合の設定

時刻

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

Tweet を読む確率 (%)

6.15

4.26

2.67

1.72

1.62

1.34

1.56

2.29

2.78

2.96

3.31

3.55

時刻

12

13

14

15

16

17

18

19

20

21

22

23

Tweet を読む確率 (%)

4.18

4.00

4.06

5.32

4.87

4.89

5.20

5.53

6.01

6.71

7.78

7.28

Algorithm 1 エージェントの振舞い 1: if 現在時刻における表 1 の割合に応じてエージェ ントがデマ情報を受取る かつ 同じデマを拡散していない場合 then 2: 式 1 に従い,MoT を計算 3: if MoT > しきい値 then 4: 状態を S に遷移し,そのユーザのフォロワー にデマ情報を拡散 5: else 6: 状態を R に遷移 7: end if 8: end if 9: if 状態が S then 10: 状態を R に遷移 11: end if 新たにデマ情報が流れてきたら、同様に繰り返す 改良型 AIDM では,情報を受け取る際,時刻に応じ て情報を受け取るかどうかを決定することとする.こ れにより,実世界のように Twitter を利用する時間と 利用しない時間を表現できる.ここで,具体的にエー ジェントの振るまいを擬似コード (Algorithm1) として 示す.この擬似コードを,ユーザー β がデマ情報を受 取った場合を用いて説明する.まず,ユーザー β は現 在の時刻における表 1 の割合に応じてデマ情報を受取 るかが決定される.なお,この表は実データ (図 1) か ら取得した各時間帯ごとのツイートの投稿割合を基に 作成した.ユーザー β がデマ情報を受け取った場合は, 式 (1) に従い MoT を計算する.もし,MoT がしきい 値を超えていれば,ユーザー β はデマ情報をリツイー トし,デマ情報をユーザー β のフォロワーへと情報が 伝播する.もし,MoT がしきい値を超えていなければ, ユーザー β はそのデマ情報をリツイートしない.その 後,ユーザー β が新たなデマ情報を受取ると再度 MoT を計算し,しきい値以上であればその情報がリツイー トされ,情報が伝播する.なお,ユーザー β が一度デ マ情報を拡散していたとしても,異なるデマ情報を受 取った場合であれば同様に振舞う.また,デマ訂正情 報を受取った場合も,同様に振る舞う.

5

実験

本節では,改良型 AIDM の妥当性をはかるために行 う実験について述べる.デマ拡散のメカニズム推定の ためには,普遍的な情報拡散モデルを基に推定する必 要がある.そのため,同一のモデルを用いてシングル バースト型デマ拡散とマルチバースト型デマ拡散両方 の再現性を確認しなければならない.そこで,本稿で はこれまで我々の研究で再現性が確認できていたシン グルバースト型デマ拡散が再現性を確認する.また,改 良型 AIDM と生活パタンを考慮していなかったモデル との比較も行う.なお,生活パタンを考慮していない モデルでの実験設定やモデルの詳細については,文献 [11] を参照されたい. 今回,再現を行うシングルバースト型デマ拡散は,東 日本大震災直後に発生した千葉県市原市のコスモ石油

(6)

表 2: ネットワークの設定 ノード数 100,000 リンク数(次数) 最大値  =3000 の期待値 下限  =10 パレート指数 =0.5 リンクされやすさ 上限 =15.0 下限 =0.05 パレート指数 =0.5 表 3: 各パラメータの設定

興味度 i

0∼1 の範囲のランダム値

感度 s

0∼1 の範囲のランダム値

影響度 a

ノード毎の PageRank 値

忘却率 λ

1/8

しきい値

5

× 10

−7 の千葉製油所での火災によって有害物質の含まれた雨 が降るというデマ情報である.

5.1

実験及び評価手法

今回行う実験は,提案モデルを搭載したシミュレー タを使用して行う.本シミュレーションでは,人間の 生活パタンを考慮するため,シミュレーション 1 ステッ プを実時間の 1 時間として実験を行う.今回対象とす るコスモ石油に関するデマ拡散は,実データより 2011 年 3 月 11 日 18 時頃から拡散しはじめたと考えられる. また,デマ訂正情報の拡散は,デマ拡散の 16 時間後 の 3 月 12 日 10 時頃であるとする.そして,3 月 13 日 18 時には拡散はほぼ収まったと考え,48 ステップのシ ミュレーションを行う.以下に,実験時の各設定を記 す.表 2 にはシミュレーションで用いるネットワーク の設定を,表 3 にモデル内で用いているパラメータの 設定を示している.全ユーザーのうち各時刻において 情報に接触することのできるユーザー割合は表 1 の通 りとする. 実験手順は,表 4 に示す.また,今回は再現シミュ レーションを 5000 回ずつ行い,その中から最も類似し ていたものを結果とした.これは,我々がデマ情報の 投稿は日常的に行われており,大規模な拡散は偶然で あるという考えからである. 次に,AIDM により現実のデマ情報拡散を再現可能 か確かめるため,以下の指標を用いて実験結果の評価 を行う. • 類似度:本実験でシミュレータから得られる結果 表 4: シングルバースト型デマ拡散の実験手順 ステップ 1:表 2 のネットワークを読み込む. ステップ 2:シミュレーション実行ステップ t = 1 のとき,無作為に 1 つのノードを選択し, 感染状態を I に変更する. ステップ 3:t = 16 のとき,無作為に 1 つの ノードを選択し,感染状態を R に変更する. ステップ 4:t = 48 のとき,シミュレーションを 終了する. は,各シミュレーションステップにおける各状態 の人数である. 各ステップの対応する点間のユー クリッド距離から計算する類似度により評価す る.ユークリッド距離は,以下のように計算され る.まず,シミュレーション時のある状態の人数 比をX = {x1, x2, . . . , xn} とし,実データのある 状態の人数比をY = {y1, y2, . . . , yn} と表す場合, ユークリッド距離 d は, d = √(x1− y1)2+ (x2− y2)2+ . . . + (xn− yn)2 = v u u t∑n i=1 (xi− yi)2 (2) となる • 感染率:実データから,そのデマ情報がどれ程の 確率で広まったかという感染率を求めることが可 能である.実データの感染率と我々の実験での感 染率を比較し,評価する.

5.2

実験結果

実験手法に基づいて得られた結果を以下に記す. 今回行ったコスモ石油に関するデマ拡散の再現シミュ レーションによって得られた結果を図 4 に示す. この図より,提案手法ではデマ情報を拡散したエー ジェントの増加の様子は実データよりも早く,デマ訂 正情報を拡散したエージェントの増加の様子は実デー タより遅い事が分かるが,全体的な変化の様子は概ね 実データに則している.しかし,生活パタンを考慮し ていなかったモデルと比べると,提案手法よりも従来 モデルの方がより類似していることが分かる.この際 のユークリッド距離を表 5 に示す.ユークリッド距離 に関してもやはり従来手法である生活パタンを考慮し ていない AIDM の方がより小さい値となっている.

(7)

表 5: ユークリッド距離 Outsider デマ情報発信者 デマ訂正情報発信者 平均 提案手法 1.613 0.408 1.585 1.202 生活パタン未考慮 0.327 0.229 0.242 0.266 表 6: 感染率 実データ 提案手法 生活パタン未考慮 デマ情報 0.05 0.031 0.00090 デマ訂正情報 0.347 0.076 0.0011 図 4: シミュレーション結果と実データの比較 次に,感染率を表 6 に示す.この表から,提案手法 ではデマ情報への感染率は実データと近い値であった ことがわかる.デマ訂正情報の感染率は,実データよ りも低い値となった.生活パタンを考慮していないモ デルでは,どちらの値も著しく低くなっており,提案 手法の方がよく再現できていることが分かる. これらの結果より,類似性に関しては従来の手法の 方がよいことが分かった.しかし,感染率をみてみる と提案手法の方がより近い値である.ただし,シミュ レーションの拡散規模をみてみると,従来手法では投 稿数が約 700 件であるが,提案手法では約 18000 件で あった.このことから,従来手法では拡散規模が実デー タよりも大幅に小さかったが,ユークリッド距離の比 較ではツイート数の比で実データと比較したため,こ のような結果となったと考えられる.このように従来 手法との比較では,一長一短があるものの提案手法を 用いて実データの再現はできていると考えられる.今 後の課題としては,東日本大震災時に確認されたその 他のデマ拡散に対しても提案手法を適応できるかを検 証する.

6

おわりに

東日本大震災時,デマ情報の拡散が大きな問題となっ た.そのため,デマ情報などの有害情報の拡散を抑制 するための手法が必要とされており,情報拡散のメカ ニズムを解明しなければならない. これまで我々は,「ユーザーの多様性」,「情報経路の 多重性」,「複数回のつぶやき」を考慮した情報拡散モ デルである AIDM を提案していた.しかし,AIDM に はいくつか課題が存在している.本稿では,その課題 の一つである「人間の生活パタンを考慮できていない」 という課題を解決する方法について検討を行った.我々 は,課題解決のため各時刻における実際のツイート割 合を基に人間の生活パタンに応じ,情報拡散を表現で きるように AIDM の改良を行った.提案手法を用い, 従来モデルでも再現できていたシングルバーストデマ 拡散の再現を行い,提案モデルがデマ拡散を再現でき るかの検証を行った.これは,情報拡散メカニズムの 推定のためには,普遍性を持った情報拡散モデルであ る必要があるためである.その結果,従来手法の方が シングルバースト型デマ拡散再現をよりよく行えてい るがことが分かった.しかし,提案モデルを用いてシ ングルバースト型デマ拡散の再現が可能であることは 確認できた. 今後の課題としては,今回取り上げたデマ拡散以外 のシングルバースト型デマ拡散にも本モデルが適応可 能かを検証する.さらに,従来手法では再現できなかっ たマルチバースト型デマ拡散の再現を行い,提案手法 の妥当性を確かめる.そして,最終的には拡散制御手 法の提案を行う.

参考文献

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[11] 池田圭佑,岡田佳之,榊剛史,鳥海不二夫,風間一洋,野 田五十樹,栗原聡. (2015). “AIDMを用いたデマ情報拡

散再現への試みと検討.”研究報告知能システム(ICS),

図 1: 各時間における平均投稿数と投稿数の割合 図 2: コスモ石油に関するデマ拡散とツイート投稿の 関係 外部メデイアから新たな情報を投入することは表現で きていない. 3 について,これまで我々が AIDM の妥当性を評価 するために行った実験は,我々が作成した単純なスケー ルフリーネットワーク上で行っていた.しかし,実際 のネットワーク構造との比較などは行っておらず,ネッ トワーク構造に関しては特に考慮していなかった. 以上のように現状の AIDM には複数の課題が存在す るため,それらの改善を行う
図 3: 節電に関するデマ拡散とツイート投稿の関係 表 1: Twitter 利用割合の設定 時刻 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 Tweet を読む確率 (%) 6.15 4.26 2.67 1.72 1.62 1.34 1.56 2.29 2.78 2.96 3.31 3.55 時刻 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 Tweet を読む確率 (%) 4.18 4.00 4.06 5.32 4.87 4.89 5.20 5.53 6.01 6.71

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