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同僚性が高まる校内研究の実践的研究-学年教師集団によるカンファレンスの連環を中心に-

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Academic year: 2021

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1.はじめに 昨今,社会が急激に変化する時代を迎え,学校教育の 課題は多様化・複雑化している。教員の退職に伴う若手 教員の大量採用が続いており,質の高い教員の育成や確 保といった教育の質を向上させていく上での課題が指摘 されている。そのような状況の中で,学校現場では,子 どもの学びや成長を中軸に置きながら,教職員が教育実 践を行う過程において,自己を磨き,互いに成長してい く環境が求められている。それは,喫緊の課題であると いうだけはでなく,仕事の生きがいを左右する大切なこ ととして実感されるようになっている。 この状況に対して,滋賀県教育委員会(平成 26 年)は, 『滋賀県公立学校教員人材育成基本方針』の中で,「個々 の教員に時間的,精神的な余裕がなくなってきたことか ら,じっくり議論をしたり相談をしたりするといった同 僚性が希薄になっている」と現状を捉え,目指す教師像 の中に,「学校組織の一員として,同僚と連携し力を発 揮できる」という要素を示した。それは,遡れば,中央 教育審議会答申(平成 18 年)『今後の教員養成・免許 更新のあり方について』において,教員をめぐる現状の 一つとして「教員の多忙化と同僚性の希薄化」があげら れていた。同僚との良好な関係を構築し,組織の一員と して対応する教員,ともに学び合い成長する教員集団が 求められつづけてきたといえる。 本研究が対象とする協力校のP中学校も例外ではな く,近年の人事異動で教員の若年齢化が一気に進み,様々 な教育活動が形をなぞるようになり,教師一人ひとりの 実践に向かう自律性の形成と互いに支え合う同僚性の構 築という点において,滋賀県や国が危惧する状態と同じ 課題を有している。生徒指導上,困難な状態であった時 期を乗り越えるときには,熱量のある取り組みが展開し, 困難を共通理解しながら事態に向き合うことができてき た。しかし,そうした時期を経験してきた教師が少なく なり,教職員の連携が薄れてくる中,互いに助け合う気 風が弱まり,子ども理解が進まない状態や若手教師が悩 みを打ち明けにくい状態がうまれている。それは,中学 校においてひとつの教員集団として力を発揮してきた, 「学年教師集団」においてもそうなのである。 そこで,本研究では,学年教師集団が共通理解のもと 授業改善に取り組む新たな形の校内研究を推進すること にどのような意義があるのかを追究することにした。校 内 研 究 体 制 の 中 心 に, 福 井(2009) や 稲 垣(1986, 1988)が提起する,「子ども理解」を深め方策をさぐる 「子ども理解のカンファレンス」や授業力の向上を図る プロセスとなる「授業づくりのカンファレンス」を位置 づけることにした。そして,様々な活動領域において教 師が協働することで同僚性がどのように変容するのか, 「教科の壁」「学年の壁」はどのような取り組みによって くずされていくのか,その中で何を価値として捉えるの かなどを,カンファレンスを進める学年部会と校内研究 に焦点をあてて実践研究していく。 2.同僚性の定義 −カンファレンスの連環の可能性 油布(2009)は,「同僚性とは,実態を示す概念とい うよりは,職場集団が教育活動の効果的な遂行や教師の 力量形成のために重要であり,仕事に起因する問題状況 を緩和する機能をもつといった,集団の意義や機能を最 大限に効果的に発揮している状況を示す概念,あるいは, そうした集団状況を目指す,価値的な判断が入った概念 と捉えるのが妥当であるように思われる。」と述べてい る(p.167)。また,佐藤(2015)は,「教師の専門家と しての学びと成長にとって何よりも重要なことは,教師 は一人では学び成長しないということである。」と述べ, 同僚性という概念を,「授業の創造と研修において教師 が専門家として連帯する関係」とし,教師が専門家とし て学び成長していくために,同僚との関わりの重要性を 示した。同僚性とは,目に見える形ではなく,教育活動 を効果的に進めるために必要な教職員集団の雰囲気や関 係性を表すものであり,同僚との建設的な関わりの中で 構築されていくものである。同じ目標や展望に向かって, 教師一人ひとりが個々に実践を積み重ねる過程で生まれ る協働の中で,同僚性は構築されていくと考える。

−学年教師集団によるカンファレンスの連環を中心に−

Case Study on Lesson Study Growing Collegiality in A Junior Highschool:

Focusing on the Linkages of Conferences by the group of Teachers in the Same Grade

長澤 和馬

Kazuma NAGASAWA

滋賀県米原市立米原中学校

堀江  伸

Shin HORIE

滋賀大学大学院 < キーワード> 子ども理解のカンファレンス 同僚性 校内研究 学年部会 授業づくり

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さらに,福井(2009)は教師を「現場研究者」と位 置付け,「教師は常に子どもの具体的な姿からその意味 を問い,実践を行うことを繰り返し,その経験が教師と しての専門性を高めていく」(p.7)と指摘した。そして, 現場研究者である教師が集まり,固有名を持ったその子 の全体像にせまりながら,協働して実践の構想を立てて いく場を「子ども理解のカンファレンス」と呼んだ。ま た,「子ども理解からの授業づくりが意図的に深められ なければならない」(p190)と,共同や協働を生み出す 場としてカンファレンスの重要性を指摘している。 そこで本研究では,福井が示した「子ども理解のカン ファレンス」の重要な 5 つの要素を,授業づくりにも 図 1 子ども理解のカンファレンスと授業づくりのカンファレンス(長澤・堀江 2019.1 作成) 図 2 目標とする資質・能力の育成と本校の校内研究のつながり 取り入れ,授業の中の子どもの姿をもとに教師が語り合 う場を「授業づくりのカンファレンス」と位置付けるこ とにした。「授業づくり」を語り合う場が,「子ども理解 のカンファレンス」の要素を含めば,教師の同僚性を高 める重要な手立てとなると考える。二つの連関を図式化 したのが,図 1 である。 以上を踏まえて,本研究での同僚性の定義を「現場研 究者である教師が,互いの不十分さを責め合うことなく, 信頼の中で協働し,支え合い高めあえる関係性」とし, 互いの実践について話し合う場や互いに学び合う場(カ ンファレンス)が同僚性を高め,教師と学校に何らかの 価値をもたらせると考えた。そして,学習指導・生活指

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つけさせる。 ②校内研究の構想 ・学年部会による研究 「めざす学習集団像」を描くため,学習集団づくりプ ランを作成する。ビジョンを共有することで,教科を超 えた協働を可能にする。校内研究会では,各学年で検討 された授業を提案する。研究の過程において,子どもの 姿をもとに,同僚と交流を深め,カンファレンスの連環 を生み出す。(図 4) また,校内研究以外に,学年教師によるカンファレン スの機会を増やすために,毎日の放課後の時間を利用し た情報交換を行う。一日の子どもの様子を学年教師が職 員室で気軽に交流し,その中にカンファレンスの要素を 含んでいく。この毎日の積み重ねが,授業だけでなく, 日頃から様々な事象に対して教師が協働できる土台をつ くる。 ・教科部会による研究 校内研究の主題を受け,「教科の研究テーマ」と,教 師一人ひとりが「個人の目標」を設定する。年間を通し て各教師が目標を意識した授業づくりに取り組み,その 成果を図るために年に一度,全教師が指導案を書き授業 を公開する。時間割を調整し,同じ教科の教師と管理職, 研究主任は必ず公開授業を参観し,放課後に教科部会で 事後検討会をもつ。 ・研究推進と研究の日常化に向けた取り組み(表 1)  以下の三点を中心にして,研究の日常化と推進を図る。 ① 教師一人ひとりの授業のない時間を有効に利用し, できるだけ同僚の授業を観る「すきま校内研究」の 意識づけていくことにする。 ② 研究の成果物(学習集団づくりプラン)の掲示や研 究通信『HKT28』(全教員が 28 名であることに ちなんで)の定期的な発行による校内研究の見える 化を取り組む。(図 5) ③ 学期ごとにPDCAサイクルを実施する。特に,一 学期を終えての夏休みの一日に振り返る校内研修を 位置づける。 4.カンファレンスを連環させた校内研究の実践 校内研究の主題である「確かな学力を身につけ,主体 的に学ぶ生徒の育成~わかった・できたを実感できる授 業を通して~」の実現に向け,カンファレンスを中心に, 学年教師が協働して授業づくりを行ってきた。校内研究 表 1 研究の日常化に向けた取り組み ࣭Ꮫᖺ㒊఍࡜ᩍ⛉㒊఍ࡢ㸰ࡘࡢ㍈࡟ࡼࡿ◊✲ ࣭᪂Ꮫ⩦ᣦᑟせ㡿࡜ᰯෆ◊✲ࡢࡘ࡞ࡀࡾ ղᰯෆ◊✲ࡢᵓ᝿ ࣭Ꮫᖺ㒊఍࡟ࡼࡿ◊✲ ࣭ᩍ⛉㒊఍࡟ࡼࡿ◊✲ ࠕࡍࡁࡲᰯෆ◊✲ࠖࡢ ព㆑࡙ࡅ ᤵᴗࡢ࡞࠸᫬㛫ࢆ᭷ຠ࡟฼⏝ࡋࠊྠ൉ࡢᤵᴗࢆほࡿࡇ࡜ࠋ௚ᩍ⛉ࡢᤵᴗ࡛ぢࡏࡿ Ꮚ࡝ࡶࡢጼ࡜⮬ศࡢᤵᴗ࡛ぢࡏࡿᏊ࡝ࡶࡢጼࢆẚ㍑ࡋࠊྠ൉ࡢᤵᴗࢆ㙾࡟⮬ศࡢ ᤵᴗࢆ᣺ࡾ㏉ࡿࠋ ᰯෆ◊✲ࡢぢ࠼ࡿ໬ ◊✲ࡢᡂᯝ≀㸦Ꮫ⩦㞟ᅋ࡙ࡃࡾࣉࣛࣥ㸧ࢆ༳ๅᐊ࡟ᥖ♧ ᰯෆ◊✲㏻ಙࠕ㹆㹉㹒㸰㸶ࠖࡢᐃᮇⓗ࡞Ⓨ⾜ Ꮫ ᮇ ࡈ ࡜ ࡢ 㹎 㹂 㹁 㸿 ࢧ࢖ࢡࣝ Ꮫᖺ㒊఍࡟ࡼࡿ◊✲࡛ࡣࠊẖᏛᮇࡈ࡜࡟Ꮫ⩦㞟ᅋ࡙ࡃࡾࣉࣛࣥࡢ᭦᪂ࢆ⾜࠸ࠊᏛ ᖺᩍᖌࡀ༠ാ࡛㹎㹂㹁㸿ࢧ࢖ࢡࣝࢆࡲࢃࡍࠋᩍ⛉㒊఍࡟ࡼࡿ◊✲࡛ࡣಶேࡢ┠ᶆ ࡟ᑐࡋ࡚ࠊᏛᮇࡈ࡜࡟ᩍᖌ୍ேࡦ࡜ࡾࡀ㹎㹂㹁㸿ࢧ࢖ࢡࣝࢆࡲࢃࡍࠋ ࣭Ꮫᖺ㒊఍࡜ᩍ⛉㒊఍ࡢ㸰ࡘࡢ㍈࡟ࡼࡿ◊✲ ࣭᪂Ꮫ⩦ᣦᑟせ㡿࡜ᰯෆ◊✲ࡢࡘ࡞ࡀࡾ ղᰯෆ◊✲ࡢᵓ᝿ ࣭Ꮫᖺ㒊఍࡟ࡼࡿ◊✲ ࣭ᩍ⛉㒊఍࡟ࡼࡿ◊✲ ࠕࡍࡁࡲᰯෆ◊✲ࠖࡢ ព㆑࡙ࡅ ᰯෆ◊✲ࡢぢ࠼ࡿ໬ Ꮫ ᮇ ࡈ ࡜ ࡢ 㹎 㹂 㹁 㸿 ࢧ࢖ࢡࣝ 図 4 学習集団づくりプランの更新(5 月から 8 月へ)

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会(学年による授業研究)は,7 月,10 月,11 月,2 月の計 4 回実施した。並行して,教科の同僚と専門的 に高めあう一人 1 指導案(教科による授業研究)は, 校内研究会で授業をした教師を除く 18 名全員が実践し た。どちらの研究においても,「授業づくりのカンファ レンス」が意図的に展開される場を設定し,同僚との交 流を通して,授業力の向上をめざした。 ࣭◊✲᥎㐍࡜◊✲ࡢ᪥ᖖ໬࡟ྥࡅࡓྲྀࡾ⤌ࡳ㸦⾲㸯㸧  㸦㸯㸧Ꮫᖺ㒊఍࡟ࡼࡿ◊✲ࡢᐇ㊶㸫࢝ࣥࣇ࢓ࣞࣥࢫࡢ せ⣲ࢆྵࡴ᳨ウ఍ࡢᐇ᪋㸫 ձ஦๓᳨ウ఍㸦࢝ࣥࣇ࢓ࣞࣥࢫ㸿㸧 ղ஦ᚋ᳨ウ఍㸦࢝ࣥࣇ࢓ࣞࣥࢫ㹀㸧 図 5 校内研究通信 NO.10 表 2 校内研究会で用いた授業参観シート ࣭◊✲᥎㐍࡜◊✲ࡢ᪥ᖖ໬࡟ྥࡅࡓྲྀࡾ⤌ࡳ㸦⾲㸯㸧  㸦㸯㸧Ꮫᖺ㒊఍࡟ࡼࡿ◊✲ࡢᐇ㊶㸫࢝ࣥࣇ࢓ࣞࣥࢫࡢ せ⣲ࢆྵࡴ᳨ウ఍ࡢᐇ᪋㸫 ձ஦๓᳨ウ఍㸦࢝ࣥࣇ࢓ࣞࣥࢫ㸿㸧 ղ஦ᚋ᳨ウ఍㸦࢝ࣥࣇ࢓ࣞࣥࢫ㹀㸧 (1)学年部会による研究の実践−カンファレンスの要 素を含む検討会の実施− ①事前検討会(カンファレンスA) 研究授業を行う前に,学年で授業検討会を開いた。授 業者は,事前に教科部会で検討した授業内容を提案し, 学年の同僚から意見を聞きながら授業を組み立てた。 11 月に行われた第 3 学年社会科の研究授業の事前検討 会では,学年教師が生徒役となり模擬授業を行なった。 同じ子どもを共有する学年教師が生徒役になることで, 「○○君がここでこんな発言するのではないか。」や「○ ○さんには少し難しくて,話合いに参加できないかも。」 といった固有名詞や具体的な姿をあげながら交流が展開 された。また,「提示する数字を 40 人から 30 人に変え た方が意見を出しやすいのでは。」,「説明の段階で条件 をしっかりと提示していないと話合いの方向がさだまら ないのでは。」など,授業展開や子どもへの投げかけ方 についても,各々が授業で捉えている事実をもとにアイ デアが出され検討した。他教科の教師と交流したことで, 自分だったらどうするかという視点を持つことができ, 学年教師一人ひとりが,授業中の子どもの様子から授業 を考えることにつながった。 ②事後検討会(カンファレンスB) 研究授業では,参観者は子どもの姿をA 4 サイズの 授業参観シートに記録することにした。(表 2) 授業参観シートを用いた理由は,参観者に討議の柱を 明確にし,子どもの姿をフィルターとして授業を見るた めである。また,観察する生徒をあらかじめ固定し,同 じ班の子どもを観察した教師でグループ協議を行った。 授業参観シートを模造紙一枚に拡大したものを使用し, 参観者が記録した内容をもとに,直接交流できるように した。事前に研究通信を配布し,授業を見る視点や授業 のゴール,事後検討会の持ち方などをあらかじめ職員に 知らせた。校内研究会後の振り返りでは,「生徒がどこ に目が行くのか,何に疑問を感じているのかに注目して 授業を見ることができた。」や「視点や観る生徒が決め られているので,ポイントがわかりやすくて交流しやす い。」という意見が上がった。 協議後は,グループ・クロス・インタビューを行い, 参加者すべてに役割を持たすことで,研究会への参加度 を高めた。交流後は再び元のグループで話し合い,独立 行政法人教職員支援機構資料の「学びのイメージ」と授 業での子どもの姿を結び付けた。子どもの具体的な姿で 授業を捉えることが,教科を超えた教師の交流につな がった。(表 3) (2)教科部会による研究の実践(カンファレンスC) 一人 1 指導案の取り組みを形骸化させないために, 指導案に示された授業のねらいや見どころを研究通信に 掲載し,授業者の意図を全職員に伝えるとともに,授業 参観を促した。放課後には,教科の同僚と事後検討会を 開き,「授業づくりのカンファレンス」を展開した。回 数を重ねていく中で,他教科の教師が参加することが多

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くなった。「授業を考えるのが楽しい」と話す教師が現れ, 同僚との授業づくりに前向きに取り組む姿が見られた。 (3)学期ごとのPDCAサイクル(学習集団づくりプ ランの更新) 学期ごとにPDCAサイクルを回すために,学習集団 づくりプランの更新を行った。まず,めざす学習集団像 に向け,取り組んだ内容を交流した。各自の取り組みを 付箋に書きだし,付箋を貼った教師が順番に話していく という方法で進めた。その後,子どもたちの変容や現状 を学年教師で捉えなおし,次学期に向けた力点やビジョ ンの共有を図った。その上で,個人ができることについ て考えた。子どもの変革的成長をめざすための具体的な 方針を立てる機会となった。(図 4) 5.校内研究を通しての教師の変容−学校評価・インタ ビューの結果と考察− (1)学校評価における結果と考察 校内研究に関わる質問(表 4)では,すべての項目で 改善が見られた。特に①については,1 年間で 0.64 と 最も大きく変化している。②,③,④の質問項目につい ても,1 学期から 2 学期で段階的に数値をあげた。研究 の日常化にむけた取り組みや,カンファレンスを中心と した検討会を進めたことが,校内研究の活性化に結び付 いたと考えられる。同僚性に関わる質問(表 5)におい ても,昨年度に比べ,すべての項目で改善が見られた。 第 3 学年の生徒アンケートでは,「学級は楽しく,居心 地がよい」や「先生は親しみやすく相談しやすい」など, 教師との関係性,学級での居場所,友人との人間関係に 関する質問項目で肯定的な意見をもつ生徒が増加してい た。教師の関係性が高まることは,子どもの安心感へつ ながると考えられる。 (2)インタビューの結果と考察 教師の変容を捉えるため,各学年の校内研究委員(1 年A教諭,2 年B教諭,3 年C教諭)と中堅教師のD教 諭(1 年所属),若手教師のE教諭(3 年所属)の 5 名 を対象にインタビュー調査を行った。 ①校内研究活性化の有効な手立て 1 つ目は,研究ビジョンを明確に示すことである。 「テーマがはっきりしていて,学校としてどのように研 究を進めて行くのがわかりやすかった。(B教諭)」,「今 年は通信に授業の見方や学びのイメージが示され,短い スパンで研究を意識できたことがモチベーションにつな がった。(C教諭)」とあるように,方向性を示すことが 活性化の土台となり,通信での発信は,研究の方向性を 示すことや日常化させることに有効である。 2 つ目は,教科を超えた同僚との授業づくりである。 D教諭は,「学年での研究をきっかけに考えたり,観よ うとしたり,子どもの様子を想像したりして,みんなで できたのが大きかった。」と語った。C教諭は,「他の授 業を観ながら,話すタイミングや教材の使い方など,自 分の教科だったらという視点がうまれ,日々の授業にも 活かすことができた。」と振り返った。学年による授業 研究は,教科を超えての協働を生み出すことができ,自 分の教科や授業だったらという視点で考えるのを促し, 生徒理解や授業力の向上の示唆を得たり,お互いに議論 することの意義をとらえなおすこととなった。 3 つ目は,カンファレンスの要素を含む検討会を展開 表 3 第 4 回校内研究の流れ 〈第 4 回校内研究の流れ〉 授業内容 第 3 学年 社 会科「私の生活と政治」 1 .開会あいさつ・講師紹介(15:10 ~) 2 .授業者,学年より(15:15 ~ 15:25) 3 .協議(15:25 ~ 16:20)   ①付箋を使ったグループ協議(30 分)   ② クロスグループインタビューで意見交流(15 分)   ③ グループごとで,さらに深い話し合い(10 分) 4 .指導助言(16:20 ~ 16:40)    滋賀大学教職大学院 教員 5 .校内研究のふり返り(5 分程度) 6 .閉会あいさつ(16:45) 表 4 校内研究に関わる質問項目 㸦㸰㸧ᩍ⛉㒊఍࡟ࡼࡿ◊✲ࡢᐇ㊶㸦࢝ࣥࣇ࢓ࣞࣥࢫ㹁㸧 㸦㸱㸧Ꮫᮇࡈ࡜ࡢ㹎㹂㹁㸿ࢧ࢖ࢡࣝ㸦Ꮫ⩦㞟ᅋ࡙ࡃࡾ ࣉࣛࣥࡢ᭦᪂㸧 㸦㸰㸧࢖ࣥࢱࣅ࣮ࣗࡢ⤖ᯝ࡜⪃ᐹ ᰯෆ◊✲άᛶ໬ࡢ᭷ຠ࡞ᡭ❧࡚ ձᰯෆ◊✲ࡢࢸ࣮࣐࣭ෆᐜࡣᮏᰯࡢ ㄢ㢟 ࡸ⏕ᚐࡢᐇែ࡟࡜ࡗ࡚㐺ษ࡛࠶ࡿࠋ    ղ ᰯ ෆ ◊ ✲ ࢆ ㏻ ࡋ ࡚ ᩍ ᖌ ࡢ ᣦ ᑟ ຊ ࡀ㧗 ࡲࡗ࡚࠸ࡿࠋ    ճᰯෆ◊✲఍ࡢィ⏬࠾ࡼࡧᅇᩘࡣ㐺 ษ࡛ ࠶ࡾࠊ࿘▱ࡉࢀ࡚࠸ࡿࠋ    մ⫋ဨ◊✲ࡣᅇᩘ࣭ෆᐜ➼ࢆྵࡵ࡚ ඘ᐇ ࡋ࡚࠸ࡿࠋ    ㉁ၥ ᖺ Ꮫᮇ ᖺ Ꮫᮇ ᖺ Ꮫᮇ 表 5 同僚性に関わる質問項目 ྠ൉࡜ࡘ࡞ࡀࡾྜ࠺ᰯෆ◊✲ࡀࡶࡘព⩏ ㉁ၥ ᖺ Ꮫᮇ ᖺ Ꮫᮇ ᖺ Ꮫᮇ ձᑓ㛛⫋࡜ࡋ࡚ᖖ࡟⮬ᕫ◊㛑ࡋࡼ࠺ ࡜ࡍ ࡿ㞺ᅖẼࡀ࠶ࡿࠋ    ղᏛᰯ࣭Ꮫᖺ⤒Ⴀ࡟ពぢࡸ࢔࢖ࢹ࢔ ࢆฟ ࡋࡸࡍ࠸㞺ᅖẼࡀ࠶ࡿࠋ    ճ࠾஫࠸࡟ᡄࡵ࠶ࡗࡓࡾࠊᶍ⠊ࢆ♧ ࡍẼ 㢼ࡀ࠶ࡿࠋ    մ⫋ሙࡢ୰࡟┦஫୙ಙࡶ࡞ࡃࠊ௙஦ ࡀࡸ ࡾࡸࡍ࠸ࠋ    յ௙஦ࡢୖ࡛ᅔࡗࡓࡇ࡜ࡀ࠶ࡗ࡚ࡶ ࠊ┦ ㄯ࡛ࡁࡿయไ࡟࡞ࡗ࡚࠸ࡿࠋ    նᏛᖺෆࠊᏛ⣭㛫ࡢ᝟ሗ஺᥮ࠊ㐃ᦠ ࡀᅗ ࡽࢀ༠ຊ࡛ࡁ࡚࠸ࡿࠋ    滋賀大学教育実践研究論集 第 3 巻 2021 22

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することである。D教諭は,「できなかったから責めら れるとか,悪いと捉えられるような研究会ではなかった」 と語り,子どもがどう変わるかという視点に立って検討 会を行ったことに意味を感じていた。C教諭は「子ども の姿をフィルターにしたことで,教師に対して批判的と いうよりはアドバイス的な思考に変わった。」と表現し, A教諭も「みんなで授業をつくる雰囲気が増し,やらさ れている感覚が減った。自分に全部矢印が向かない。」 と精神的な負担が緩和されたと語った。子どもの変革的 成長をめざすカンファレンスが,建設的な教師の協働を 生み出し,その協働こそが同僚性が高まる大きな要因と なったと考えられる。 ②多忙感を感じさせない校内研究 「気軽に相談でき,楽しんで授業をつくるのを感じた。 (A教諭)」「楽しんで考えられたことが大きい。(D教諭)」 と,二人から楽しむという言葉が出てきた。E教諭は,「自 分のスペックが上がる機会がないとだめだと感じ,校内 研究の必要性に気づいた。」と話し,C教諭は「自分に返っ てくるものが大きく,成長を感じられたことが多忙感を 感じなかった原因。」と話した。多忙感をなくすためには, 教師が成長を感じる校内研究を展開し,同僚と楽しみな がら取り組むことが,主体的な姿勢を生み出すといえよ う。 ③同僚とつながり合う校内研究がもつ意義 D教諭は校内研究を「お助けどころ」「整理する機会」 「安心感」と表現した。C教諭も,「他教科を参観する中 で,自分の教科ではという見方ができるようになった。」 と,同僚とつながり合うことが,自分の広がりを生み出 したと語った。また,A教諭は,「授業の質を高めるこ とが子どもの学ぶ意欲を向上させ,教師の学び合う姿勢 が生徒の学ぶ姿勢につながる。」と実感を込めた。E教 諭も「授業がわかるようになれば,子どもたちも頑張れ る部分が増える。高め合った結果,学校が良くなる。」と, 校内研究が子どもたちの変容につながると意義を強調し た。C教諭は,「わかった・できたと感じることができ れば,授業の場面で認められたり自信をつけられたりで きる。」と,教師の授業力向上が子どもの自己肯定感を 高めると述べた。また,「みんなで子どもを見ることが, 子どもにも伝わるのかなと思う。そういうことができる かできないかは,そこは同僚性が大事。」と,教師が子 どものために協働することが,最終的には子どもに伝わ ると話した。同僚性が高い教師集団の中では,子どもの 現状を捉えた支援がうまれ,教師の協働が子どもの変容 へとつながる。同僚性が高まる校内研究は,教師自身の 可能性を広げ,互いの関係性を築きあげるだけでなく子 どもへの支援の幅を広げ,子どもや学校を変える可能性 がある。 6.まとめ 研究を進めるにあたり,第 3 学年の参与観察を行っ てきた。昨年の状況とは大きく変わり,毎日の放課後の 交流や校内研究を通して,教師一人ひとりが自分の考え を表現できるようになった。また,同僚と相談する中で 見通しをもって子どもと関わることができ,学年間で協 力して教育活動に取り組めるようになった。 課題が多い現状において,生徒指導における問題は緊 急に対応すべきものであり,その課題解決に向けて協働 する土台は,以前からP中学校に継承されている教師文 化でもあった。福井(2009)が提唱している「子ども 理解のカンファレンス」をこれまでも自然と行ってきた。 しかし,教科指導においては互いに干渉しあわずに,「他 教科のことはわからない,口出ししない」と独自に行っ てきた傾向がある。今年度,「授業づくりのカンファレ ンス」を展開する校内研究を通して,授業づくりにおい ても協働を生み出せたことが,教師の変容をもたらした と考える。このように,学年教師を中心に二つのカンファ レンスを展開することが,教科の壁を超えた協働となり, さらにはカンファレンスの 5 つの要素を共通に意識し 合うことで,学年間の壁を超えての協働をも生み出した。 二つのカンファレンスは互いに効果を出しながら,教師 の協働をよりしなやかなものにし,その連環が起こった 時,同僚性は高まるといえるのではないだろうか。 しかし,カンファレンスを連環させるためには,「つ なぎ役」が重要となる。人を巻き込み,つなぐことがで きる教師が存在するかが大きな意味を持つ。一回毎のカ ンファレンスを進めていく「流れ」や「ファシリテーター」 だけでなく,同僚性を築くためには,つなぎ役を担える 教師,もしくはその役目を意識して取り組む教師がいる ことが重要な要素といえる。そのような教師の存在が, 教師間を縦と横でつなぎ合わせていく結び目となるので はないだろうか。今年度(2019),長澤は研究主任とし て,同僚に自ら積極的に声をかけ,自己開示をすること で,同僚が話しやすい雰囲気をつくるように心がけた。 何をめざし,何を考えるのか,ビジョンとミッションを 常に意識し,それらを絶えず発信してきた。これらの振 るまいが,カンファレンスを連環させるためのつなぎ役 として意味をもったと認識している。組織や形を整える だけでは,同僚性は高まらず,人と人をつなぐのはやは り人であることを忘れてはいけない。そして,現在の研 究委員や研究授業の授業者の中に,次年度以降への継承 と展開の「人」が生まれている。 カンファレンスを展開する校内研究は,「教科の壁」 をくずし,「学年の壁」も低くしたといえる。子どもの 姿でつながる協働的実践を進めることで教師集団が形成 され,一人ひとりの自律性と同僚性を高めるのである。 そして,校内研究を土台として築き上げていく同僚性が, 多様性を認め合いながらも一定の共通の価値観を持つこ ととなり,ぶれない指導を学年で学校全体で展開し,さ らに質の高いしなやかで高めあう協働を生み出す可能性 がある。こうした教師の協働こそが学校文化の新たな形 成や子どもの学力向上へとつながるのではないだろう か。

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7.【文献】 秋田喜代美編(2010)『教師の言葉とコミュニケーショ ン』教育開発研究所 稲垣忠彦(1986)『授業を変えるために ―カンファレ ンスのすすめ』小学館 稲垣 忠彦(1988)『授業を変える ―実践者に学んだこ と』小学館 石井英真(2015)『今求められる学力と学びとは』日本 標準 澤井陽介(2017)『授業の見方「主体的・対話的で深い 学び」の授業改善』東洋館出版 佐藤雅彰・佐藤学(2003)『公立中学校の挑戦 ―授業 を変える学校が変わる』ぎょうせい. 佐藤学(2015)『専門家として教師を育てる』岩波書店. 滋賀県教育委員会(平成 26 年)『滋賀県公立学校人材 育成基本方針』. 中央教育審議会答申(平成 18 年)「今後の教員養成・ 免許更新のあり方について」. 福井雅英(2009)『子ども理解のカンファレンス―育ち を支える現場の臨床心理―』かもがわ出版. 村川雅弘(2016)『ワークショップ型教員研修はじめの 一歩』教育開発研究所 山口晃弘(2016)『アクティブ・ラーニングを位置付け た中学校理科の授業プラン』明治図書出版 山田真紀・藤田英雅(2004)「教師間コミュニケーショ ンに関する実証的研究 ―情報ネットワークの構造 と機能に注目して」『椙山女子大学研究論集』第 35 号(社会科学篇) 油布佐和子編(2009)『リーディングス 日本の教育と 社会 教師という仕事』日本図書センター 油布佐和子(2015)「対人専門職としての教師」『京都 教育大学大学院連合教職実践研究科年報』pp.98-104 吉冨芳正編(2017)『「深く学ぶ」子どもを育てる学級 づくり・授業づくり』ぎょうせい

参照

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