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アクティブラーニングにおける教師のアクティブ化のためのキットビルド概念マップの利用

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アクティブラーニングにおける教師のアクティブ化のため

のキットビルド概念マップの利用

Making Teachers Active in Active Learning with Kit-Build Concept Map

野村

敏弘

1

雄介

1

鈴木

拓磨

2

平嶋

1

Toshihiro Nomura

1

, Yusuke Hayashi

1

, Takuma Suzuki

2

and Tsukasa Hirashima

1

1

広島大学大学院工学研究科

1

Graduate School of Engineering Hiroshima University

2

墨田区立両国中学校

2

Ryogoku Junior High School

Abstract: One of the goals of the active learning is encouraging students’ initiative. If the objectives of

class are to learn some knowledge and acquire some skills, teachers are needed to grasp the difference between the goal and actual state and guide students to the goal actively. This study considers using Kit-Build Concept Map to make teachers active in active learning.

1.

はじめに

近年,アクティブラーニング型の授業が注目され ている.これは,「学生自らの思考を促す能動的な学 習」[2]と定義されており,実際の学習活動として, 学生参加型授業や協調学習,課題解決学習,PBL 等 が学校授業に取り入れられている.アクティブラー ニングを行う上で重要なことは,学生個々の学習を 促進させる働きであると言われている.そこで,こ のような形態の授業を実現するためのガイドとして, 山地は米国高等教育学会による「7 つの原則」を挙 げている[20].これは「1.教員と学生のコンタクト」 「2.学生間の協働」「3.能動的な学習」「4.迅速なフィ ードバック」「5.学習時間の確保」「6.学生への高い期 待」「7.多様な才能と学習方法の尊重」の 7 つから構 成されている.山地はこれとアクティブラーニング の対応付けを,直接的な関係があるのは,「2.学生間 の協働」と「3.能動的な学習」であり,それを補完 するものとして「1.教員と学生のコンタクト」「4.迅 速なフィードバック」「5.学習時間の確保」を位置付 けている.本稿では,アクティブラーニングとして 上記の 2,3 を成立させるために,その前提として 1,4,5 が必要であるとして,これら三つを実現するた めに情報技術に求められることについて教師の役割 と学習活動の2 つの観点から議論する. 学習者の能動性に注目した教育において,教師の 役割は,知識を与える者から学習を補助する者(フ ァシリテータ)へとシフトしてきている[3][7].その 中で教師に求められる活動は,情報を提供し,正し い答えに直接的に導くことではなく,学習者が知識 を活用する過程をモニタし,質問を投げかけるとい った間接的な働きかけをすることである.協調学習 支 援 (CSCL: Computer-Supported Collaborative Learning)の分野においては,この方向性に則し,さ らに教師の主体性を高めたものとして,クラスルー ムオーケストレーションという概念が定義されてい る[4].この概念では,教師の役割を音楽の世界にお ける編曲と指揮に例え,授業を計画し,自ら実行し ていく中で状況に合わせて調整していくものとして いる.つまり,教師に求められることは,授業を即 興的に行うことでも,予め設定した目標や活動のみ を行うよう管理することでもなく,学習者が実際に 行う活動と元の計画を照らし合わせながら,目標の 達成に向けて活動をその場で動的に調整していくこ とと言える.そして,それを実現するための手段と して,ICT の活用が提唱されている. 本研究でクラスルームオーケストレーションに注 目しているのは,この概念がファシリテータとして の教師の役割について一つの定義と評価指標を示し ていると考えられるからである.一般的に,ファシ リテーションの良し悪しは,活動の活発度で評価さ れる場合が多い.しかし,[4]でも指摘されているよ うに,例え学習者が活発に活動していたとしても, 成果がそれに伴っていない場合も少なくないことを 考えると,教育・学習におけるファシリテーション の良し悪しは,学習・教育目標に向かっての活動の 人工知能学会研究会資料 SIG-ALST-B501-05

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方向性や達成度合いにおいて評価されるべきである. 一方,アクティブラーニングを実現するための学 習活動としては,上述のように様々な活動が挙げら れる.本稿では,その中の一つである協調学習を題 材として議論を進める.協調学習を導入した授業の 典型的なパターンは,個人活動,少人数グループ活 動,全体活動という流れである[16].個人活動では, グループで議論するための基礎知識や個人の意見を 形成し,グループ活動では,それらを基に議論しグ ループとしての意見形成をし,新たな知識の発見を 行う.最後の全体活動では,各グループの意見を収 集し,それを整理し,議論を通してまとめるという 様に,それぞれの学習活動がその次の学習活動の基 礎になっている.しかし,教師が授業内での学習者 の活動を動的に調整していく際の問題点は,多くの 場合教師が把握可能なものはグループの最終成果の みであり,全グループの結果に至るまでのプロセス の把握は難しいという点である[7].つまり,クラス ルームオーケストレーションの指標に合わせると, 教師が調整をするための情報を得る時点で困難さが 発生していると言え,教師が授業を動的に調整可能 なものにするためには,個人やグループ,そしてク ラス全体といった複数のレベルで行われる学習者の 活動をモニタし,意思決定に利用できるようにする ことが求められる.学習者の活動の能動性を高める ことによって,その活動に対して教師が認識できる 範囲は制限されてしまうことがあるが,それを ICT で拡張することが目標となる.ただし,クラスルー ムオーケストレーションでは,それをどこまで行う べきかについて,精密な学習者モデリングとそれに 基 づ く 診 断 や 処 置 の 自 動 化 に よ っ て で は な く , CSCW におけるアウェアネスの概念のレベルでの情 報提供のように,教師が情報を解釈して意思決定す るのに十分な情報にするとしている[5]. 学習者の状態を把握するための技術として,既に 様々な技術が開発されている.詳細な分析手法とし ては,学習者の発話についての会話分析や認知プロ セス分析といったものが古くから行われている[14]. これらは,詳細な分析が可能であるが,会話内容を 全て記録した上で特徴点を見つけるものであり,コ ス ト が か か っ て し ま う . コ ス ト と い う 面 で は KBDeX[11]などの分析ツールが開発されており,減 少させることは可能であるが,全てを記録した上で 行うために授業中にリアルタイムで分析することが できないという点は変わらない. 授業内でリアルタイムに学習者の理解状況や意見 を把握するための手段として,レスポンスアナライ ザやクリッカーと呼ばれるツールも活用されており [1],これらを使って簡単な質問に回答させることで 授業の中で学習者の理解状況や意見を把握すること もできる.しかし,これは学習内容の一部に関わる 簡単な質問しか扱えず,学習内容全体に対する理解 を測定・分析することは難しい.また,画面の共有 や一覧表示[18]を用いた情報収集では,教師が学習 者のディスプレイを参照することによる活動状況の 収集や,学習者の回答の一覧表示は可能であるが, 学習者による表現の違い等からそれぞれの学習者の 詳細な学習状況を比べることは難しい. 一方,活動状況の把握支援としては,マルチタッ チテーブルトップを用いた協調学習ツールの研究 [10]等が挙げられる.この研究では,グループ活動 における学習者の発話量やツール上の操作回数など を捉え,どれだけインタラクションが活性化してい るか,そしてメンバ間のインタラクションにどのよ うな繋がりがあるかを測定できる一方,そこで扱わ れる内容については把握することができない. 本研究では,教師が学習者の状況を学習内容と活 動の両面から授業中にリアルタイムで把握し,授業 を調整していくための基盤として,概念マップ[13] の構築方法の一つであるキットビルド概念マップ [19][9]の活用を提案する.会話分析等から得られる レベルほど深くはないが,リアルタイムで取得でき る他の手法よりも,内容と活動の両面をある程度の バランスで把握することを目指している.

2.

キットビルド概念マップ

本研究で扱う概念マップとは,2 つの概念(ノード) とそれらの関係(リンク)から構成される命題を基本 的な構造と定義し,それらの集まりによって意味構 造を表した図的表現である[19].この構造の作成は, 知識理解の外化・整理活動として有用であり,学習 者の知識理解を共有・診断可能にするうえでも大き な意義をもつとされている[8]. 本研究では,キットビルド概念マップという概念 マップ作成手法の一つを用いる.この手法では,教 師の作成した概念マップや学習目標となる概念マッ プ(ゴールマップ)をノードやリンクレベル(キット) に分解し,学習者に配布.学習者はそのキットを組 み立てることによって概念マップ(学習者マップ)を 構築するという手法である.キットビルド概念マッ プの特徴は,多くの研究で用いられるような学習者 による自由な概念マップの記述という形式ではなく, 上述のように教師が事前に用意した理想的な概念マ ップの構成要素を学習者が再構築するところにある. 概念マップを作成する活動は「分節化」と「構造 化」の二つのプロセスに分けることができる[6].分 節化は整理したい内容から,ノードとリンクとして 概念マップの構成要素を抽出する作業であり,構造

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化はそれらを組み立て,概念構造を作る作業である. キットビルド概念マップにおいては,あらかじめ分 節化されたものを再構成する活動であるため,学習 者に構造化のプロセスに集中させることになる.ま た,学習者が分節化をせずに構造化のみを行い,提 供された概念やノードを再構成するだけでも学習効 果があることが関連研究において示されている[6]. キットビルド概念マップでは,上述の通りゴール マップと学習者マップで同一の構成要素を扱うため, システムでの診断が可能となり,それらの差分の抽 出や,複数の学習者マップを重ね合わせた重畳マッ プの作成から,学習者の理解状況を把握することが できる.学習者マップとゴールマップの一致率を理 解度のスコアとして算出でき,重畳マップでは学習 者の知識や理解の一致や相違を重畳度として抽出で きる.また,学習者同士におけるそれぞれのマップ を用いた議論の際にも,構成要素を統一することは, 互いのマップを比較する活動において,理解や意見 の一致や相違を把握しやすくなり,共同でのマップ 作成においても自分の考えとの違いが明確になる. キットビルド概念マップを用いた,教師と学習者 間のインタラクションを実現するシステムとしては, KB マップシステムが提案されている[17].このシス テムは,キットビルド概念マップ作成ツール「KB マップエディタ」とマップの評価・支援ツール「KB マップアナライザ」から成る.学習者マップ作成に 用いられるKB マップエディタはタブレット端末で 動作し,個人の理解・意見を表現したマップをグル ープで持ち寄って議論を行うことも可能となる.重 畳マップはKB マップアナライザによって即時的に 作成でき,教師はそのシステムの診断から学習者全 体の理解状況の確認が可能となる. これまでにも,KB マップシステムを使って,キ ットビルド概念マップを用いた授業実践が多く行わ れている.吉田らは,授業内容に関する学習者の理 解の形成的評価及び総括的評価の研究を報告してい る[21].この研究では,授業中に学習内容について のキットビルド概念マップを学習者に作成させ,教 師はその結果に応じて授業の展開を制御した.その 結果として,学習者の理解度が向上すると共に,教 授者がクラス毎の理解に応じて授業展開や学習者へ の働きかけを授業中に変更できた.また,他のクラ スの実施結果を踏まえた授業内容の変更も可能にし ている.仁野らは,キットビルド概念マップを利用 した話し合い活動の研究を行った[12][17].この研究 では,学習者が正解を知らない状態で互いにマップ を見せ合うことによって,マップスコアの平均が上 昇したことを報告している. 本研究では,授業内での個人活動・グループ活動 でキットビルド概念マップを利用し,学習者間の交 流を促進すると共に,概念マップの分析を授業内で リアルタイムに行い,その情報を用いた学習目標の 達成に向け,教授者が授業をコントロールできるか を考察する.

3. キットビルド概念マップを用いた

グループ学習授業

3.1. 授業デザイン

本研究では,協調学習を組み込んだ授業を対象に, 授業における協調的な知識整理を望む中学社会科教 員と共同で,キットビルド概念マップを用いた授業 を設計・実践した.対象は中学校1 年生 3 クラス合 計105 名である. 図1 授業フロー 授業のフローは図1 のようになっており,個人で のマップ作成から,グループでのマップ作成,さら にクラス全体での議論を通したゴールマップの教授 活動が行われる.これは上述の通り,協調学習の一 般的な授業形式である.今回の授業は1 つの単元の まとめとして,南アメリカ州のアマゾンの産業が, 経済発展や森林伐採,そして日本に影響を及ぼしあ って成り立っているという構造を学習者が理解し, その影響がどの程度なのかを学習者個人の価値観を 基に形成することである.また,この授業の後には, 南アメリカの産業が抱える課題について議論する活 動が想定されており,この授業で獲得した知識や形 成した意見を基に議論する活動に繋げることも目標 となっている.そのなかで,まず授業の導入として 南アメリカのアマゾンに関する説明を 15 分程度行 い,その後学習者がタブレットを用いて5 分程度個 人でキットビルド概念マップを作成,決められた 2 人から4 人の少人数グループで,個人で作成したマ ップを持ち寄り相談しながら 10 分程度でグループ として一つのマップを作成し,その後また5 分程度 個人でマップを作成する.授業の最後には,グルー プで作成したマップを基にクラス全体で議論し,教 授者は議論のコントロールとそのゴールマップに関 する教授活動を行う. グループでのマップ作成は,図2 に示すように, 各学習者が個人で作成した概念マップをグループで

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持ち寄り,それを各自参照しながら議論を行い,グ ループ用のタブレットでグループとして一つのキッ トビルド概念マップを作成した. 図2 実際の授業の様子(グループマップ作成)

3.2. 個人とグループでのマップ作成

個人,グループ,全体というこれら3 つの活動に おいて,図3 に示す概念マップをキット化したキッ トビルド概念マップを用いた.学習者に配布したキ ットは図4 のものを用いた.図 4 において既に構造 化された部分は既習事項であり,南アメリカの一部 であるアマゾンの産業として「交通・その他」,「農 林畜産業」,「鉱工業」という概念の構造が示されて いる.ここでのメインテーマは,南アメリカのアマ ゾンにおいてこのような産業が活発に行われるうえ で,それらが経済発展と森林伐採,さらに日本とい かに関連しているかを学習者自身が整理することで ある.このような学習を,概念マップを用いて行う ことの利点は,これまで学習したアマゾンの産業と 経済発展,森林伐採,さらに日本を関連付けること で,それらの関係を構造的に理解できることであり, さらにゴールマップで示されるように全ての産業が 経済発展と森林伐採,日本に関連していることを 1 つのイメージとして認識できるところにある.今回 の授業で用いたキットには,複数のリンクセットが 用意されている.「影響:大」,「影響:小」,「影響: 無」リンクがそれぞれ9 個ずつ用意されており,学 習者はそれぞれのノード間にそれら3 つから 1 つを 選択し,左側の産業と右側の概念を繋いでいく.影 響が大きいと思えば,「影響:大」リンク,小さいと 思えば「影響:小」リンク,影響がないと思えば「影 響:無」リンクを用いるように説明する.ゴールマ ップにおいては全てが「影響:大」リンクで繋がれ ているが,今回の授業では「影響:大」と「影響: 小」は正解において区別をしていない.つまり大と 小どちらであっても正解とした.それは,学習者そ れぞれの解釈や価値観によってそれらの度合いは変 わり,それを一意に定義することはできないためで ある.ゴールマップとしては正解が用意されている が,学習者によって,その理由付けは多様であると 考えられ,今回の授業でも学習者に意識してもらい たい部分はその理由付けをそれぞれの学習者が考え ることである.本研究でデザインした授業では,こ れら3 つの活動を通して,これまで学習してきた単 元を個人で整理し,それをグループで比較,最終的 にクラス全体で比較・議論することによって学習目 標に向けて理解を深化させていく.個人としての活 動から,グループ,全体での活動と移る中で新たな 認識が生まれることが考えられ,これはマルチヴォ ーカルな学習環境[15]になっていると考えられる. 図3 ゴールマップ(南アメリカ州) 図4 キット(南アメリカ州)

3.3. 全体議論のコーディネート

個人,グループでのマップ作成後,教師が主導し て全体で議論を行った.授業を実施した教師が通常 の授業でグループ学習させた後に行っているのは, 各グループに発表させ学習者の理解や意見を収集し, 考えが出揃ったところでそれを整理し,全体での議 論を行っていた.しかし,その形式では時間がかか り,発表から整理するだけで授業が終わってしまう ことが多かった.今回実施した授業では,グループ で作成したマップの重畳マップを学習者に示し,グ ループ毎の考えの違いを見ると共に,それぞれのリ ンクについて,教師がいくつかのグループを指定し, 理由を発表させた.これによって,教師の方で全体 議論の時間をコントロールしやすくした.実際に授 業の中では図5 のように,スクリーンに重畳マップ を写し,学習者に自分のグループと他のグループの 考えを示しながら,議論を行った.こうすることで,

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学習者は他のグループの考えを見て,考えたうえで, 自分の意見を述べることができる. 図5 全体議論の様子 授業内において教師が提示した重畳マップの一部 を,図6 から図 8 に示す.これは,アマゾンの産業 である鉱工業に繋がるリンクのみを抽出したもので ある.これらを見ればわかるように,各クラスで考 えのバラつきが大きい命題は同じものもあるし,異 なっているものもある.例えば,図6 を見ると鉱工 業と森林伐採の間には影響大・小・無の3 種類のリ ンクが引かれているが,他の図では影響大・小の 2 種類しか引かれていない.全体的に1 組でバラつき の大きい命題は,「鉱工業が森林伐採に与える影響」, 「交通・その他が日本に与える影響」,「農林畜産業 が日本に与える影響」であり,3 組では,「農林畜産 業が経済発展に与える影響」,「交通・その他が日本 に与える影響」,「農林畜産業が日本に与える影響」, 4 組では,「農林畜産業が経済発展に与える影響」, 「農林畜産業が森林伐採に与える」,「交通・その他 が日本に与える影響」,「農林畜産業が日本に与える 影響」であった.この重畳マップを用いた分析から 得られる情報を用いて,実際のそのクラスの学習者 の状態に合わせた授業のコントロールが行えた. 例えば図6 では,「鉱工業」と「森林伐採」の間に は,影響度を大にしたグループが5 つ,小が 1 つ, 無が2 つとなっており,システム上ではどのグルー プがどの選択をしているのが分かるようになってい る.今回の授業では教師はその情報を見て各選択肢 から最低1グループを指定して理由を発表させた. このようにすることにより,全てのクラスにおい て「交通・その他,農林畜産業,鉱工業」と「経済 発展,森林伐採,日本」の掛け合わせの9 つの関係 全てにおいて,少なくとも2 つの異なる意見を発表 させ,意見の違いを意識させることができた. また,マップだけでは考察結果が示されているだ けで,その理由が分からないが,このようにして発 表させることによって,例えば,同じように影響大 としている関係であっても,他の産業と相対的に設 定しているものもあれば,その産業の過去と現在を 比較して設定しているなど,考えの違いが表出され た.このような考えの違いはどれかが間違いである というわけでは無く,妥当な論理であれば教師が認 め,考えに多様性があることも示した. 図6 重畳マップ(1 組) 図7 重畳マップ(3 組) 図8 重畳マップ(4 組)

4. まとめと今後の課題

本実践において,教授者はグループの意見を KB マップシステムから把握し,全体議論において生徒 の発表のみで授業を終わるのでは無く,できるだけ 異なる意見を表出させ,その違いを考えさせるよう に授業を運営することができた.前述のように,こ のような形式の授業では,全体議論においてグルー プ毎の意見を収集し,出てきた意見を整理し,それ らを基に議論することで授業目標としてまとめると いった活動が一般的である.キットビルド概念マッ

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プを用いずに授業を行った場合は,意見の収集は学 習者に発表させることで行い,意見の整理は教授者 が聞き出した情報から行う.この場合,各自が多様 な意見を自分の言葉で表現する可能性があり,照 合・比較が難しく,各発表に時間がかかることも多 い.そのため,全グループに意見を聞くことが難し く,教授者はランダムにいくつかのグループや学習 者を指定するか,経験を基に学習者を選択して発表 させることもある.そのような活動では,学習者の 意見の取りこぼしにも繋がり,学習者全体の意見を 把握できず,議論のコントロールも難しい. キットビルド概念マップを用いた授業では,グル ープでの活動成果を収集するのはマップのアップロ ードで行い,その整理は重畳マップを自動生成する ことで行える.つまり,学習者の意見を即時的に収 集し,それらの意見の違いを即時的に抽出すること ができる.重畳マップでは,誰がどのようなリンク を引いているかわかるため,今回の授業内では教授 者はそれを基に学習者の意見を引き出し,議論をさ せて学習目標へガイドすることができた. 今後の課題は,授業全体を通した教授者による学 習状況のモニタである.キットビルド概念マップの 仕組みを用いることで,今回紹介したグループ活動 の情報を用いた全体議論における教授者のアクティ ブ化のみでなく,個人活動の情報を用いたグループ 活動におけるアクティブ化,また,個人・グループ 活動中のアクティブ化も可能である.これらの情報 は,個人活動・グループ活動の結果・プロセス・関 係で定義でき,個人・グループ活動の結果はそれら の重畳マップとして,プロセスは概念マップ作成過 程のログを参照することで,関係はマップの一致率 等の情報から小集団における個人間の関係・全体に おけるグループ間の関係を定義することで教授者を 授業全体でアクティブにすることができると考えて いる.概念マップから得られる情報の分析を自動化 し,その機能の授業内外における適切なタイミング での利用を目指したKB マップシステムの機能拡張 が今後の課題となる.

参考文献

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参照

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