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帝国書院 | 高校の先生のページ 高等学校 世界史のしおり 2004年 4月号

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Academic year: 2018

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世界史A 学習の評価について

 高校世界史の授業では、教師が年代や人名・事項等

の一連の膨大な量の知識をできるだけ系統立てて教授4 4

しようとするため、生徒は授業に対して受け身となり、 与えられた知識を暗記することに専念する傾向にある のではないか。生徒にとって興味が持て、学ぶ意義を 実感できる授業を作りあげるためにも、教師が「歴史 を通して何を教える(伝える)のか」その歴史教育観に 基づいて教育内容を組み立てる必要があるのではない だろうか。

 その際のメルクマールとして、①「連続性の原理」 と②「相対化の原理」が考えられる。

 ①「連続性の原理」は、現在(いま)をよりよく理 解するために、過去・現在・未来の「連続性」のなかに、 現在をきちんと位置づけて把握することである。こう した「“続き”の思考」は異文化を理解し国際的資質 を養うためにも不可欠であり、世界史Aの近・現代史 の重視はこれに当たる。しかし、この視点では、現在 により近いものほどより重要な価値を持つことになる が、現在の社会は「現在」を固定点として見ているだ けでは分からない。

 そこで、われわれ自身4 4 4 4 4 4を、さらには現在4 4を相対化し 他者と比較することを通してより深く考えることが要 請されてくる。われわれは誰しも「歴史的存在」であ るがゆえに、歴史を学び、歴史認識を図ることは、自 らのアイデンティティを確立するための自己認識の作 業の過程に他ならない。ただし、変化の度合いが大き い昨今ほど、できるだけ遠く離れた時代を比較対象と し、1000年など長いタイムスパンで考える必要がある。 これが②「相対化の原理」の視点である。

 本稿では1部3、4の「中世ヨーロッパ」をおもに ②「相対化の原理」の視点より捉え、学習の評価のあ り方を考えていくことにする。

 中世ヨーロッパを通して相対化できる「現在」とし て①国家の仕組み(支配の枠組み)と②庶民の生活の 様子(被支配者の日常性)をあげることができる。前 者からは「国家(統合)の形」を、後者からは「個人」 についてより深く考えることができよう。

(1) 授業の流れ…『祈る人・戦う人・働く人』『「まち」と 「くに」の発達』

(2) ワークシート 授業の構成について

図1 「連続性の原理」と「相対化の原理」の模式図

中世ヨーロッパで「現在」の何を相対化するのか?

評価の実際

第1時「ヨーロッパ世界の風土と人々」「一つの世界だった地中海」 第2時『祈る人・戦う人・働く人』『「まち」と「くに」の発達』

 ●「祈る人・戦う人・働く人」……ヨーロッパ封建社会はどのようにして成立したか? 1 ヨーロッパ世界を形成したのはどのような民族か?

 :地中海世界(古代ローマ世界)にはいかなる民族が侵入したか?  →ゲルマン人,スラヴ人,イスラム,アジア系遊牧民,ノルマン人…… 2 庶民の日常性(ひいてはそこにみられる意識構造)はどのようなものであったか?  :空間認識(→宇宙観),子供観,農民の日常性,貴族の日常性,都市の市民の日常性…… 3 中世ヨーロッパ世界を特徴づける枠組みは何か?

 :封建社会,キリスト教社会,封建制と教会の国家との関わり……

●「「まち」と「くに」の発達」……ヨーロッパ封建社会はどのようにして解体したか? 4 12,13 世紀における革新とはどのようなものであったか?

 :物質面での革新,精神面での革新,ヨーロッパの成立,個の発見,ヨーロッパの膨張…… 5 絶対王政(近世)への移行にはどのような変化があったか?

 :封建制の崩壊,教皇権の衰退,ヨーロッパの中央集権化……

2 庶民の日常性(ひいてはそこにみられる意識構造)はどのようなものであったか? 2 庶民の日常性(ひいてはそこにみられる意識構造)はどのようなものであったか? 2 庶民の日常性(ひいてはそこにみられる意識構造)はどのようなものであったか?

3 中世ヨーロッパ世界を特徴づける枠組みは何か? 3 中世ヨーロッパ世界を特徴づける枠組みは何か? 3 中世ヨーロッパ世界を特徴づける枠組みは何か?

5 絶対王政(近世)への移行にはどのような変化があったか?

 ワークシート(個人用)       ( )年( )組( )号 氏名        0.ヨーロッパについて連想するものをできるだけたくさん書き出してみよう。

1. 地 中 海 世 界( 古 代 ロ ー マ 世 界 ) に 侵 入 し た 異 民 族 を 地 図 上 に 記 入 し て み よ う。 また、その地図からどのようなことが言えるか、考えて書いてみよう。

ヨーロッパの白地図を入れる

① ② ③

2. このような状況下で、中世ヨーロッパの人びとはどのようなことを考えたのだろうか。彼らの

① 空 間 認 識 ② 子 供 観 ③ 農民の意識 ④ 貴族の意識

⑤ 都市の市民の意識

3. 中世ヨーロッパはどのような社会なのだろうか。中世ヨーロッパ世界を特徴づける枠組みにつ いて考えてみよう。

  (1)封建社会とはどのような社会なのだろうか。考えて書いてみよう。

  (2)キリスト教社会とはどのような社会なのだろうか。考えて書いてみよう。

  (3)封建制と教会は国家とどのように関わったのだろうか。考えて書いてみよう。

  (4)国家とは何なのだろうか、考えて書いてみよう。

  (5) 中世ヨーロッパの国家とは何なのだろうか。「神聖化」と「世俗化」の過程を通して考え てみよう。

はじめに

2. このような状況下で、中世ヨーロッパの人びとはどのようなことを考えたのだろうか。彼らの 意識について、考えて書いてみよう。

「1部 諸地域世界と交流圏」

3 祈る人・戦う人・働く人 4「まち」と「くに」の発達 を例として

佐賀県立神埼高等学校

 堤 敏 浩

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(2)

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(3)「中世ヨーロッパ」の指導目標と学習内容

【指導目標】①一つの文明を形成したヨーロッパ世界の 特質を理解させ、ビザンツ帝国と東ヨーロッパの世界 像及び封建社会に立脚した西ヨーロッパの世界像を把 握させ、中世像を探る。

②キリスト教、都市の発達と王権の伸長にふれ、ヨー ロッパ世界変動の過程を把握させ、近代像へ迫る。 ③現在を相対化し、国家と個について考えさせる。 【学習内容】異民族の侵入、キリスト教の発展と封建社

会の成立、そして世俗化の進行などを通して、ヨーロ ッパ世界の特質と中世像を理解する。

【指導上の留意点】

①「国家の仕組み」について、まず「あなたが日本とい う国家(日本国民であること)を意識したのはどのよう なときですか」と尋ね、プロスポーツ選手のメジャー 移籍や研究者の海外移住、またEUの取り組みなどに ふれた後で、「(現在のような)国家の枠組みは本当に

必要だろうか?」「理想の国家とはどのような国家だろ

うか?」と生徒に質問してみる。そして国家の変遷を 中世よりたどりながら、国家にはいろんな形(形態)が あることを理解させる。

②「庶民の生活の様子」について、子供が死んでもすぐ に別の子供が代わりに生まれてこようと考えられてい た子供の匿名状態や、子供を取りまく街路や広場の濃 密かつ熱い環境にふれた後で、生徒に「もしあなたに 名前がなくて、番号でよばれていたとしたらどうだろ うか?」(現行本 p.103 の図などを示しながら)「いつも 家族一緒に一つの部屋で生活するとしたらどうだろう

か?」「いつも街路から他人が入ってくるかもしれない

部屋で過ごすとしたらどうだろうか?」と尋ね、「個」 の大切さについて生徒とともに考えながら、「個人の 誕生」の過程を中世よりたどってみる。

(4)「中世ヨーロッパ」の評価規準

【関心・意欲・態度】ヨーロッパ世界について関心を高 め、意欲的に追究するとともに、ヨーロッパ世界の特 質と中世像(そして現在を相対化して「国家」と「個」な ど)について考えようとしている。

【思考・判断】(現在を相対化することを含めて)ヨーロ

ッパ世界について考察し、判断している。

【技能・表現】(現在を相対化することを含めて)ヨーロ

ッパ世界に関する資料を活用するとともに考察した過 程や結果を適切に表現している。

【知識・理解】基本的知識を身に付けている。

(5)指導と評価の展開例

 「関心・意欲・態度」や「思考・判断」はとくに生徒の 内面の活動であるので、ワークシート等を準備して記 入内容より判断するとよい。1部は近・現代を学ぶた めの概説で終わることにもなりかねないので教師が独 自の教育目標を定めることも重要である。そして、遠 く離れた時代を比較対象として「現在」について考える ことを通して歴史的思考力の育成を図るとともに、そ

の意見・内容を(【知識・理解】ではなく)【思考・判断】

の観点から評価していきたい。

参考文献

山田欣吾,『教会から国家へ』,創文社,1992

阿部謹也,『ヨーロッパ史をいかに学ぶか』,河合文化教育 研究所,1991

C. モリス,『個人の発見』,日本基督教団出版局,1983 F. ブローデル,『文明の文法Ⅱ』,みすず書房

 ワークシート(個人用)       ( )年( )組( )号 氏名        0.ヨーロッパについて連想するものをできるだけたくさん書き出してみよう。

1. 地 中 海 世 界( 古 代 ロ ー マ 世 界 ) に 侵 入 し た 異 民 族 を 地 図 上 に 記 入 し て み よ う。 また、その地図からどのようなことが言えるか、考えて書いてみよう。

ヨーロッパの白地図を入れる

① ② ③

2. このような状況下で、中世ヨーロッパの人びとはどのようなことを考えたのだろうか。彼らの 意識について、考えて書いてみよう。

① 空 間 認 識 ② 子 供 観 ③ 農民の意識 ④ 貴族の意識

⑤ 都市の市民の意識

3. 中世ヨーロッパはどのような社会なのだろうか。中世ヨーロッパ世界を特徴づける枠組みにつ いて考えてみよう。

  (1)封建社会とはどのような社会なのだろうか。考えて書いてみよう。

  (2)キリスト教社会とはどのような社会なのだろうか。考えて書いてみよう。

  (3)封建制と教会は国家とどのように関わったのだろうか。考えて書いてみよう。

  (4)国家とは何なのだろうか、考えて書いてみよう。

  (5) 中世ヨーロッパの国家とは何なのだろうか。「神聖化」と「世俗化」の過程を通して考え てみよう。

指導と評価の展開例

時 程 学習の目標(ねらい)及び学習活動 評価規準 評 価 方 法 等

第2時 前半

○ ヨーロッパ世界の特質を理解するため ヨーロッパを取囲む環境について考え させ、多角的な視点を身につけさせる ・地図上に異民族の侵入を記入する。 ・ゲルマン人だけでなく、侵入した全て

の異民族を1つの地図上に記入する。 ヨーロッパを取囲む環境についてどの ようなことが言えるか、考え、発表する。

・ 連想し、なぜそのように考えたのか、 理由を述べながら発表する。 ・ なぜそうように考えたのか、判断の根

拠となるような、庶民の日常生活を示 す資料を収集し、考える。発表する。

○ その中で、どのような枠組みがつくら れていったのか、考えさせる。 ・ 封建社会とキリスト教社会について、

どのような社会なのか、またなぜその ような社会が成立したのか考える。発 表する。

・ 「世俗化」の過程を通して、国家の変遷 をたどる。

関心・意欲 ・態度 技能・表現

思考・判断

思考・判断

技能・表現

思考・判断

知識・理解

思考・判断

● 意欲的に取り組んでいるか、ワークシ ートの記入内容で確認する。 ● 資料集では数枚の地図に分かれている

ものを、きちんと1つの地図上に整理 して記入しているか点検する。 ● 発言や発表内容より分析する。

● ワークシートの記入内容や発言、発表 内容より分析する。

● どのような資料を収集しているかを確 認する。

  ワークシートの記入内容や発言、発表 内容より分析する。

● ワークシートの記入内容や発言、発表 内容より分析する。

● ワークシートやノートの記入内容より 分析する(場合によってはペーパーテ ストの解答より分析する)。

● ワークシートの記入内容より分析する (場合によっては「理想の国家」  などの題で作文を書かせ、分析する)。

○ そのような状況下で、中世に生きる 人々はどのようなことを考えたのか、 連想させる。そして判断のために必要 な資料を収集させ、分析させる。

○ 「国家」(の在り方)について考えさせ る。また、そのことを通して、「現在」 を相対化させる。

国家とは何か、どのようにあるべきか 考える。発表する。

【指導目標】①一つの文明を形成したヨーロッパ世界の

【学習内容】異民族の侵入、キリスト教の発展と封建社

【指導上の留意点】

【関心・意欲・態度】ヨーロッパ世界について関心を高

【思考・判断】(現在を相対化することを含めて)ヨーロ

【技能・表現】

参照

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