子どもの証言をどう得るか-司法面接の研究

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子どもの証言をどう得るか−司法面接の研究

大学院文学研究科 教授

なか

真紀子

ま き こ

(文学部人文科学科)

専門分野 : 認知心理学

研究のキーワード : 記憶,コミュニケーション,裁判,証言,面接法

HP アドレス : http://www.let.hokudai.ac.jp/human-sciences/psychology/staff-list-040.php

これまでの道のり

私は鉄腕アトムの育ての親、お茶の水博士にあこがれて科学者になりたいと思ったので

した。最初は建築に魅力を感じて美学を志したものの、その入り口にもいたらないまま、

一般教養の心理学の授業に関心をもつようになり、友人の誘いもあって心理学に転科しま

した。学問との出会いとは不思議なものです。突如、人の心のメカニズムを探る心理学の

面白さに目覚め、ぐいぐいと引き寄せられて修士課程、博士課程へと進みました。

一口に心理学といってもその内容は様々です。大ざっぱに言えば、心理学は臨床心理学

(カウンセリングや心理療法など個人を対象とする)と実験心理学(認知心理学、発達心

理学、社会心理学など、実験や調査により一般的な規則性を明らかにする)に分けられま

す。私は認知・発達心理学を専攻し、発話の理解(例えば「考えとくわ」という発話をど

う理解するか)や母子のコミュニケーション(子どもが母親との対話のなかでどのように

語彙を学ぶか)、日常場面での記憶(繰り返し書くとよく覚えられるか)などの研究をし

てきました。どれもこれも没頭できる、楽しく面白い研究でした。けれどもいつの頃から

か、現実世界とは隔絶した「実験室」にこもりっぱなしで心の世界を構築しているような、

どこかゲームをしているような気持ちになってきたのでした。

そのようなとき、弁護士さんから目撃証言の信用性の検討を依頼されました。ある人が

事件や出来事を目撃する、その体験にもとづいた証言を目撃証言と言います。目撃証言は

事件を解明する上で重要な手がかりとなりますが、その正確性には知覚(どのように見え

たか、聞こえたか)、記銘(どのように記憶したのか)、想起(どのように思い出したか)

など、認知心理学的な要素がたくさん関わっています。目撃証言の信用性!こんなに重要

で、かつ興味深い研究課題があるとは・・・という驚きによって、私は実験室と現実世界

を行きつ戻りつしながら研究を進める目撃証言

研究のとりこになってしまいました。

現在の取組:子どもの目撃証言

目撃証言に関する研究課題はたくさんありま

す。私が今取り組んでいるのは、子どもの目撃

者・被害者からいかに供述(報告)を得るかと

いう問題です。いじめ、事故、犯罪など、子ど

もから正確に話を聞かなければならないケース

出身高校:東京都立三田高校 最終学歴:お茶の水女子大学大学院

人間文化研究科

こころ

子どもの証言に焦点を当てた模擬裁判。心理学者、法 学者、法の実務家、市民が参加した。

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は少なくありません。

言語能力、記憶能力が十分ではなく、暗示にもかかりやすい子どもからどのように話を

聞けばよいか。精神的負担をかけず、誘導せずに正確な情報を引き出すにはどうすればよ

いのか。欧米では1980年代頃より、証拠的価値の高い供述(報告)を得るための面接法(司 法面接)の研究が行われ、現場でも実践的に用いられてきました。しかし、国内での研究

は十分に行われていませんでした。

そこで、実験や調査により、子どもの記憶や言語報告の特徴を調べ、子どもから供述を

得る際の問題点と工夫の可能性を探りました。その成果として、大人はクローズド質問

(YESかNOで答える質問や選択式の質問「車は 白?黒?」等)をたくさんしがちであること、質問

に含まれる情報(「白、黒」など)は子どもの記憶を

書き換えてしまうおそれがあること、しかし、オー

プン質問(「お話ししてください」「それから?」な

ど、回答の幅に制約のない質問)ならば誘導となり

にくいことなどが確認できました。こういった知見

や、国外での司法面接についての調査を踏まえ、ガ

イドラインなどもいくつか翻訳・出版しました。

これからのこと

しかし、研究成果を現実世界に還元するには、情報を提供するだけでなく、実際に使っ

てもらう必要があります。そこで近年は、子どもに関わる福祉・司法の専門家、たとえば

児童相談所の職員、警察官、検察官、家裁調査官などを対象に研修を行うようになりまし

た。こういった実務家・専門家とのやりとりのなか

で、私たちもさらなる研究課題を見出し、研究への

動機づけを与えられています。

こうした経過のなかで、2011年度、法学者、心理・ 社会科学者、実務家が恊働して研究を行う新しい学

術領域「法と人間科学」プロジェクトが立ち上がり

ました。今読んでくださっている皆さんのなかから

も、この新しいフィールドに関心をもち、一緒に研

究を進めてくれる人が現れたらいいなぁと強く願っ

ています。

参考書

(1) 仲真紀子(著),『法と倫理の心理学-心理学の知識を裁判に活かす:目撃証言、記憶

の回復、子どもの証言』,培風館

(2) ブルほか(著),『犯罪心理学-ビギナーズガイド:世界の捜査裁判、矯正の現場から』,

有斐閣

心理学の研究をふ ま え た面接法:負担を低減 し、より正確な情報を得ることを目指す。

専門家を対象とした司法面接の研修。面接の ロールプレイを行いスキルアップを目指す。

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参照

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