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発泡スチロールの実験 研究発表一覧 第46回関東理科教育研究発表会千葉大会

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Academic year: 2018

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……… 第46回関東理科教育研究発表会

 1 はじめに

 発泡スチロールは、軽くてある程度の強度を持ち、容器として使用頻度は高い。しかし、かさばるために 輸送が大変である。ここでは、発泡スチロールの溶解、再発泡をおこない、そのリサイクルを理解する。

2 実験方法および結果

 (1)リモネンによる溶解実験について   ① 溶 解

    シャーレに2㎝四方に切った発泡スチロール5個(約0.6g)を入れ、リモネン(3mL)に溶かす。 リモネンは、スチレンモノマーに構造がよく似ていることから発泡スチロールをよく溶解する。最初 ゆっくりと溶けていき、樹脂の中に閉じこめられた空気が泡になって出てくる。かなりの量の発泡ス チロールを溶解し、無色透明の粘性の高い液体になる。

  ② ゲル化

    ポリスチレンのリモネン溶液をエタノールに滴下する。ポリスチレンは無極性であるため、極性溶 媒のエタノールには溶けにくいと考えられる。リモネン溶液をエタノ-ルに滴下すると無色透明の液 滴が沈む。よく振り混ぜると白色の固まりになる。

   この物質は、空気中で丸められるが、熱湯に入れると膨らまず、融けて平たくなってしまった。  これは、エタノールが水の沸点に近く、水に浸透性が高いため発泡できなかったと考えられる。   ③ フィルムの作成

   ①の溶液をスライドガラス上に3滴ほど滴下し、薄くのばす。自然乾燥では、1時間ほどかかるが、 ホットプレートが有れば数分で乾く。その後、熱湯の中にスライドガラスごと入れて温めると、剥が れやすくなる。このフィルムは比較的強度があり、窓付き封筒などに使用されている。

  ④ 熱湯による現象

   リモネン溶液に熱湯を加えると、液面に油状物質(膜状)が現れる。割れやすいがガラス棒などで すくうと糸状に引っ張れる。ただし、強度はかなり低い。これは、熱湯に浮いてきたリモネン溶液か らリモネンだけが蒸発したためにポリスチレンの膜ができたことによる。

 (2)アセトンによる溶解実験について   ① アセトンによる溶解

   アセトン4mLに対し、前述の発泡スチロールが5から10個 溶け、徐々に粘性の高いペースト状になる。アセトンが無く なってからしばらくガラス棒でかき混ぜると表面が乾いて手 で触ってもベタつかなくなる(図1)。

  ② ポリスチレンビーズ作成

    この物質は中にアセトンを含んでいるので柔らかい状態に なっている。これを小さなビーズ状にちぎって丸めると発泡 スチロールの原料ができる。

発 泡 ス チ ロ ー ル の 実 験

神奈川県立二宮高等学校 

深野 和裕

 

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千葉大会

  ③ 茶漉しの中にビーズ状のポリスチレンを入れる。

    熱湯の中に入れると、すぐに膨らんでくる。ただし、放ってお くとしぼんでしまうので1分くらいで熱湯から引き上げて水道水 で冷却する(図2)。

3.溶媒の性質

 アセトンは両親媒性の無色の液体で、水、アルコール類、クロロホルム、 エーテル類、ほとんどの油脂をよく溶かす。両親媒性とは、1つの分子 内に水(水相)になじむ「親水基」と油(有機相)になじむ「親油基」(疎 水基)の両方を持つ分子の総称。  

リモネンは、単環式モノテルペン。化学式はC10H16で表され、分子量が136である無色透明の液体。柑

橘類の皮に含まれる。スチレンの構造によく似ているのでポリスチレンをよく溶かす。

4.企業での取り組み

 (1)ブタンを使った場合

  ① ポリスチレンビーズ(非発泡)にブタンなどの発泡剤を封入し 球状の原料を作る。

  ② このビーズに水蒸気を作用させると柔らかくなり、中の発泡剤 の影響で膨らんでくる。これが発泡スチロールの原料となる。   ③ この原料を金型に入れ、水蒸気を用いてさらに膨張をさせてい

く。この過程で1つ1つのビーズがくっついて発泡スチロールが 出来上がる。1)

 (2)リモネンを使った場合

  ① 発泡スチロールをリモネンに溶かして体積を50分1程度に溶解処理をする。

  ② 発泡スチロール溶解液は、再生プラントにてリモネンを蒸発させ、発泡スチロールの原料となるビー ズを作る。リモネンは分離再生してリサイクルしている。

5.まとめ

 授業での展開。発泡スチロールが溶媒に溶けて、体積縮小することは知っていても実際目の当たりにす るとより興味を引く。リサイクルの過程を体験することで、プラスチックゴミの分別回収に意識が高まり、 身近にあるプラスチックの種類にも興味を持った。この実験後は、合成高分子化合物の化学反応過程やその 性質にまで発展させることができた。また、自然界に放置されたプラスチックが微生物や酸化反応によって 分解される現象にまで造詣を深めた。

 最後に、ゴミの分別回収が行われるようになってからずいぶんと経つ。特にプラスチック類は自然界で分 解されず残ってしまうので回収は必須である。容積を小さくして輸送できる方法や再生技術の方法を学習す ることでリサイクルの意識を少しでも高められたら幸いである。

参考文献

1)http://www.menac21.co.jp MENACホームページ(2014.12.03)

参照

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