木星の衛星食と光の速さ : レーマーによる光速度測定
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(2) . 北海道教育大学紀要 (教育科学編) 第51巻 第1号. 2年9 月 平成 1. lof Ho逓凱do UPiversiけ of Edu{盟non億ducaロon)VO1 J ouma ‐51 ‐1 ,No. Sept e } mber ,2000. 木星の衛星食と光の速さ -レーマーによる光速度測定-. 岡崎. 隆・佐藤. 瑞紀. 北海道教育大学札幌校物理学教室. 1. は じめ に. 土初‐めて光の有限な伝播速度を導いた. イオは一定 レーマーは木星の第一衛星イオの衛星食の観測から史- 周期で木星のまわりを公転しているが, これによっ て生ずる衛星食を地球で観測するとき食の周期変動から のずれが観測され, これが光の有限な伝播速度によるものと考えたわけである. レーマーは木星の 「衝」 か ら 「合」 における食時刻の遅れを22分と見積もり, これを光が地球の公転軌道直径を伝播するのに要する時 間であるとして光速度を導いたとされる ( 167 5年) . しかし, 彼の得た結論は直ちには受け入 れらず, 光速 - -ブラッ ドジーによる光行差の発見以降であるといわ ▼ 度が有限である との r認識が確立するのはおよそ50年後, れる. 高校の教科書や科学史の解説等に単純化されて紹介されるレーマーの業績について, 以下に実際の観 測はどのようなものであり, 誤差の主要な原因がどこにあるかを明らかにしつつその実像を考察する. 2. 木星の衛星食 はじめに, 木星の衛星食についてまとめておこう. 木星の第一衛星イオを地球の衛星である月と比較する と, 表1に示すように本体の大きさと軌道半径はほぼ同じであり, 木星から眺めるイオは地球から眺める月 とよく似ていることになる. ところが大きな違いは公転周期で, イオは二日たらずで木星のまわりを回って いる. この違いは万有引力の大きさの違いからくるもので木星本体が地球の約30 0倍の質量を持っ ているこ と による. ケ ブ ラ ー の 第 三 法則 か ら, イ オ, 月 の公 転 半 径r , Mが ほ ぼ等 しい と して 公 転周 期T, ,r , TMにつ い. て次の関係が得られる. 2キ 趣4 md ]1 2 ′ / T, /TM r,3ME / ]1 rM3MJ E ;. 表1. 衛星に関するデーター (天文年鑑より). 軌道半径 (万k ) D I イオ. 月. ・. ( ) 1. 公転周期(日). 軌道傾斜角 (度). 半径(km). 42 16 -. 1 769 .. 3 13 . 040 +0 .. 1815. 38 44 ‐. 27 3217 ‐. 5 15 ‐. 1738. 213.
(3) . 岡崎. 隆・佐藤 瑞紀. 木星の強い引力によって, イオは月の15倍を超えるス ピー ドで動いているわけである. この公転運動に伴 ) が生ずる (図1) い, 衛星が木星の影に入ることによって輝きを失う衛星食 (Ec . 月 でいえ ば月 食に相当 する. この食には木星の影に衛星が入る 「消滅 (EcD) 」 と影から衛星が出る 「出現 (EcR)」 があり, これ らは太陽, 木星, 衛星の位置関係のみで決まる現象であるが, 地球からは木星の 「合」 以降 「衝」 に向かっ ては 「消滅 (EcD)」 が , 「衝」 から 「合」 にむかつては 「出現 (EcR)」 が観測できる (図2) .. ○ 太陽. 地球. EcR. ECD. 合か ら 衝. 図1. 衝 か ら合. 図2. 衛星食と天体の配置. 地 球 か ら見 た 衛星 食. ) ), 衛星の木星面経過 (Tr 食現象としてはこの他に衛星が木星の背後にかくれる掩蔽 (oc , 衛星の影の木 ) がある. 稀にしか起こらない月食と異なり, イオは公転のたびに食を起こすが, これは木 星面経過 ( Sh ) ) ) i 星の大きさ (RJ r nゅ<Rj r ,s , , イオの軌道半径 ( , イオの公転軌道傾斜角(ゐ)の間に成立する条件 ( 13度) が極めて小さいという偶然が 0 4度) 3 によっている. イオの軌道傾斜角 ( 00 . . , 木星の赤道面傾斜角 ( われわれに格好の周期現象を提供しているといえる. 5時間) で起こるが地球は公転運動によって木星に近付いたり遠ざかっ たり イオの食は一定周期T (約42 . をくり返すため, 地球で観測される食周期は変動することになる. 周期的な現象 (周期T) は, 伝播速度 r ) ( )、に対して無視できないス ピー ド (V) で近づきながら (遠ざかりながら) 観測すると異なる周期 (T v で観測される. 音による ドッ プラー効果の表式を用いれば以下が得られる. (光による ドッ プラー効果との 相違は(V/ c)2であらわれるためこれは無視できる.) T▼ = ▽ / ( v± ▽}T キ (1± V/v)T, V/v《1. 吃). 4ノ 地球の木星に対する相対速度が最大になるとき (「矩」) sによ っ て周 期 はお , 地球の公転速度VE=3 ×101n. 0 よそ0 1%ずれる. 約15秒ほどの周期の増加または減少である. ‐ /T キ (T‐T ). VE /c = 10-4. 御. 周期のわずかな遅れ (進み) は累積されて食の遅れ (進み) として観測されることになる. レーマーは 「衝」 2分の遅れが, 地球の公転軌道を光が横切るのに要する時間であるとして有限な光速 -「合」 における食の2 ) ) ’2 度 を得た と さ れる. 1 214.
(4) . 木星の衛星食とその速さ一レーマーによる光速度測定一. 3.. 光速度の導出. ) が有限である時, 衛星食の起こっ た時刻をt 光の伝播速度 ( c , 地球‐木星 , 地球で観測する食の時刻をで ’ d) ま で の 時 間 間 隔 は, 間距 離 をrと す る と, で= t / t t +r c o) して か らn回 目 の食 ( ‐ 従 っ て, は じめ に観 測 (. 食周期をTとすると ▼ = t ‐t 十( / tゴーto ) )/c c ; nT十( r。-ro 。 o r。-ro. 4 ( ). すなわち地球で観測する食の時間間隔は, 食周期の整数倍からこの間に変化した地球‐木星間距離を光が伝 播するのに要する時間だけずれる. 有限な光速度の効果は食の周期的変動からのずれ△t = tゴーto’‐nT と し /△tと して 求 め ら れ てあらわれ, このときの地球‐木星間距離変化△r = r - r oが分れば光の速度が c = △r 。 るわけである. 「衝」 と 「合」 における食が観測できれば, この間の地球‐木星間距離の変化は地球の公転直 径であるから容易に光の速度が得られる. しかし 「合」 において木星は地球から見て太陽と同方向あり, 衛 星食を観測することはほぼ不可能である. 一方, 木星の 「衝」 から三ヶ月後の地球‐木星間距離は1%以下 の誤差で木星の公転軌道半径で近似できるため, この食の観測から以下のように光速度を求めることができ る.. - =r‐ 木 星 の 「衝」 にお ける 食 か ら観 測 を ス タ ー トする ( ). 三 ヶ月 後 の 食 (ムヒTE 4 ) は, こ / t o,r o Jr E 。 ,r. のときの木星‐太陽‐地球のなす角度をeとすると, 地球の木星に対する相対角速度がの. 1 1 /TE- /T. )で あ 冗(. るからβ=のTE 4 / , 地球‐木星間距離は次式で与えられる. 2 2 2 / r, +rE ‐2r立Ecose]1 r。=[. 2 1 006 1十( / / / )6]=r ) )2 ( rE - ‐0 r r r r . E J[ J( J 。キr .. ( 5 ). こ こ でrJ 2 (TE ) と した. r /TJ E 。は1% ,r , TJ , TEはそ れ ぞ れ 木星, 地 球 の公 転 半 径, 公 転周 期, ま た 6=冗/. 以下の誤差でr ,と近似でき, 「衝」 から三 ヶ月 間の地球‐木星間距離変化△rは地球の公転軌道半径とする こ ’ と が で き る. こ の 間 の 食 の 回 数n=Quodent[ /□ は約50回 で あ る. 従 っ て, 木 星 の 「衝」 とそ の 三 ヶ tゴー t ( ) o. ▼ t’ ) を見 積 も り, こ れ が 月後の食の観測 ( t t o oLPT (n=50 , 。) から食の周期的変動に対する遅れ△t = tゴー .地球の公転軌道半径を光が伝播する のに要する時間であるとして光速度を算出することができる. i c =r (ム ーo -nT) E/. ( ) 6. レー マ ー はこ の 観 測 を次 の よう に記 述 して いる. 「 11月 9 日にパリで観測された第一衛星の出現 ( EcR) は,. …. 地球が木星に最接近した8月 に観測された出現 (EcR) から考えて, 当然予想 される時刻よりも10分. ) 遅 れて い た.」 1. レーマーが見積もっ た 「合」 における食の遅れはこの観測結果を外挿したものに他ならない, ところで, 光速度に換算する前段階の 「レーマーの観測した遅れ ( 1 0分)」 には大きな誤差がある ( 25パー セント) . この原因が食周期の観測, 評価によっ て生ずるものであることを以下で明らかにする.. 215.
(5) . 岡崎. 隆・佐藤. 瑞紀. 4. 食周 期 に つ いて. ▼ ) は食周期Tをどうとるかに強く依存する. 食周期を1秒小さくと 食の遅れの評価△t = tゴー t -nT ( n;50 o ると遅れは50秒大きく見積もられることになる. 今日知 られている光速度から逆算すると, 地球の公転半径 0秒大きく評価していたわけであり, を光が伝播するのに要する時間は8 3分であるからレーマーはこれを約10 . 食周期に2秒の誤差があったことになる. ( )式から得られる誤差の関係は, 食周期の測定誤差をど秒, 光速度, 地球軌道半径の相対誤差をそれぞれ 6 △. , △2とする と ne キ ( ) (△.十△2) rE/co. (7 ). l lm c =3×108 キ50で あ る か ら, こ こ で, rE=1 5×lo 1nノs . , o ,n. ど キ10×(△,十△2) sec. ( 8 ). cの許容誤差を10%, 地球軌道半径の誤差も 同程度 とすると, 食周期Tの測定誤差E は数秒程度でなければ な ら ない.. 食周期Tは, 「衝」 における連続した食の観測から得られる. 即ち, 式蝿)において右辺第二項を無視する - こ と が で き る た めt o= Tとすることができる. ところで, 数秒の精度が要求される食周期とはどのよう ,Lt な も の で ある だ ろ う か ?. 86年 で あり, こ の 二 5時 間 に対 し木 星 の公 転周 期 はTJ;11 イ オ の公 転 周 期T,=42 . .. / つ から食周期はT=T,TJ )で与えられる. 公転運動によって移動する木星の影に追いつくためにイ オ (TrT. の食周期は公転周期T,より約62秒長い. 数秒の精度が要求されるとき, 食周期は衛星の固有運動 だけでは 決まらず, 木星の軌道運動の影響を受けることになる. イオの公転角速度をの, , 木星のそれをのJとすると食周期Tは T. = 2冗/ (の1 -のj). { 9 ). で与えられ, のJは一定でない. 従っ て食周期Tも変動していることになる. 万有引力の下で楕円軌道 (離 ) を描く天体 (質量m) の角速度のは, 角運動量をL (一定) とすると次式であらわされる変動をする. 心率e. の=. 2m) r =え/(1十ecose) 0≦ e ≦2冗 L/ ( r , ,. ( 0 1 0. 048 5 ) を考慮に入れると, 食周期は木星の一公転周期を通 じて平均食周期 木星の公転軌道の離心率 ( =0 e . TAv=T,TJ / ) に対 して お よそ ± 6秒 の範 囲で 変動 して いる こ と が分る. (TrT.. 0004 1十△( 1+2ecose) TキT,[ /TJ=0 ], 4=T, ‐ ,. ーTAV-T- ≦24eT,寺6sec. QP. 従っ て, 「衝」 に近い時期に連続して起こる食時間間隔を数秒の精度で正確に測り, これをこの年の食周期 216.
(6) . 木星の衛星食とその速さ一レーマーによる光速度測定一. 、の誤差で行っ たことになる. この誤差には二 Tとして用いることが必要であり, レーマーはこの測定を二秒 回の食時刻の測定誤差とこの間の時計の誤差が含まれている. 前者は後に述べる観測上の困難があり, 後者 はレーマーの時代の時計の精度がどれほどであっ たかと関わっ ている. 木星の衛星食の観測は, もともと標 ) を考えると時計の精度が数秒以下であったとは考え 準時の較正を目的として始まっ たとされていること3 られない. 従って, 食周期の測定にレーマーの観測の信頼性に対する疑問と検証の困難さがあり, ここに彼 の得た結論が広く受け入れられなかった理由があると考えられる. 5..衛星食の観測 イオ本体の大きさ (半径R. ), 公転速度 ( ) から, 食の開始から終了に要する時間 ( 2R, ) を約3 5 / v, v, . 分と見積もることができる. 原理的にこれだけの時間を要する現象を地球の大気を通して観測することにな る. 従って, 食の開始または終了の一瞬をとらえた観測時刻をデータとすることになるが, 観測時の気象条 件,ー観測の熟練度によって, この時刻の測定誤差は大きく影響される. 眼視観測による精度は0 1分程度と . ) 特に 「衝」 における食時刻の測定に高い精度を要求されるが この食は木星本体のごく近 されている4 . , , くで生ずるために, 相対的に微弱な光度の衛星を捕らえるという点での困難さをもつ」 我々の観測には30 0mm) 40mmを用いたが, この場合, cmカセ グレイン式反射望遠鏡 (西村製, 焦点距離450 , 接眼レンズor 眼視観測で食の開始から終了まではおよそ1分を要した. 「消滅 (EcD)」 の開始, 「出現 (EcR)」 の終了は 眼視による判定が困難であり, 「消滅 (EcD)」 では終了時刻, 「出現 (EcR)」 では開始時刻が測定に適して いる. 時刻測定には, 標準電波時報J JYを利用する. 日本水路協会による食予報時刻が天文年鑑に掲載され ) これを目安として観測を準備することができる また 同協会による地球‐木星間距離 (地心距 ており5 , , . 離) 予報値を利用することによっ て式錘 )から直接, 食周期T, 光速度cを求めることもできる. } 1998年は食 ( EcR) を五回観測することができ, 結果は表2のとおりである6 . 表 2 1998年 の食 観 測 デ ータ ー. データ. 番号 食時刻 時:分:秒. 地心距離 予報値(AU). 1. 2. 3. 4. 5. 9 28 / 20 23 00 : :. 10 5 / 22: 19 16 :. 10 13 / 00 1 4 12 : :. 10 21 / 20 8 3 55 : :. 22:33:35. 3 961 .. 3 975 .. 4 005 ‐. 4 063 ‐. 4 .121. 10 /28. 気象条件のため 「衝」 (9月17日) 前後で連続した食を観測する ことができなかったため, 観測から食周期 Tをおさ ‐えることができない. 観測時刻における地球‐木星間距離を予報値から近似関数を使っ て求め, 式 は)を使 っ て, 三つ の 観 測 データ ( i ,j , k) か ら食周 期T, 光 速 度cを求 める.. c = 悶h( tj)-Ni ( ti- tk- ) ]/{無ね( rk-ri ( ti ri‐rj)‐Ni ) ] j j. ,. T;[ trt t t ( )( )( ‐ ) - ( rk ri ) ]/回ガ r r - ( ) ‐N駁( ] rrn) ri - r i‐ k j i j j. ( ) 1 2. ここでNi t t i =Quo口ent【 jはデータ 番 号iとjの 食 の間 に起 こ っ た食 の 回数 で ある (Ni ,‐ i j ,j , k) と して , T]). ( ), ( ( 2 1 ) をと っ た と き の結 果 を表3 に示 す. ,3 ,3 ,5 ,4 217.
(7) . 岡崎. 表3. 隆・佐藤. 端紀. 観測データーから得られた光速度, 食周期. i ,j ,k. ) n / s I c(×108. /co c. ) T( sec. ) T-TAV(sec. 3 1 , ,4. 3 58 .. 1 19 .. 152932. 19 O .. 2 ,3 ,5. 62 1 .. 0 54 .. 152917. 5 4 .. 光速度が20~50パーセントの精度で求められた. 食周期については, 一方は木星の離心軌道から予想される 変動を大きく超 えている. 他の観測データの組み合わせからは上で得たより小さな光速度 しか得られず, 負 の値を導くものがある. これらは, 食時刻の測定誤差が全体として数秒以内 におさまっていないこと, それ によって矛盾した結果を導くデータの組み合わせが存在することを意味している. 食時刻の測定に熟練が必 要であるが, 気象条件 (大気の状態等) による不可避の誤差が影響していると考えられる. 6. レーマーによる光速度測定について 食時刻の測定を数秒の誤差内で行うには食の一瞬をとらえる熟練が求められ, また正確に時刻を刻む時計 も必要である. 食周期を求めるための時計には二日間に誤差一秒以下の精度が求められる. こうした測定を 行ってはじめて数十パーセントの誤差の範囲で光の速度が得られるわけであるから, レーマーの観測と光速 度の導出が決して容易なものでなかったことが分かる. 一方で, 木星という地球から適度に離れた惑星に, 規則正しい食をくり返す衛星が存在しているという幸運にもこの歴史的発見はよっている. 木星は他の惑星 に比べて赤道面の対軌道傾斜角が極めて小さいという特徴があり, これが周期的な衛星食をもたらす要因と な っ て い る.. 食周期の変化の累積を食の目に見える遅れとして観測することで有限の光速度を得たとしてとしてレーマー の業績が紹介されることがある. しかしながらこの方法は, デモンストレーションとしての性格が強く, 前 提として食時刻測定, 食周期測定に困難で厳しい精度 が要求されていることを忘れてはならない. 食時刻の 測定を数秒の誤差の範囲で行うことができるなら, 食周期そのものの変動あるいは, 最大の変動となる 「東 矩」 「西矩」 における食周期の相違から光速度を求めることが可能でありレーマーも論文においてはじめに ) こ の場 合 地 の公 転 速度 と光 速度 の 比( 3 )が得 られる こ と にな る. レーマ ー の 業 こ の こ と に言 及 して いる1 , .. 績を引用する際に, こうした点に注意が払われる必要があると考える. レーマーの光速度測定を理科教育教材として生かすことが考えられる. 衛星の運動とその結果生ずる衛星 食はそれ自体興味深い自然現象である. 木星の衛星の発見がガリレイ に地動説の正しさを確信させように, ′衛星の運動は, 万有 衛星の運動の観察は我々に世界を異なる視点から眺める機会を提供しているといえる. 引力によりひき起こされる運動として力学法則を理解する題材となり, 地球で観測される衛星食周期の変動 はドッ プラー効果の例として取り上げることができる. 物理法則の発見と実験・観察 (測定精度) との関わ りを考えるうえで興味深い事例でもある. また, レーマーの業績の科学史上の意味を考えることも重要であろう. 光速度が有限である という主張は 従来の常識をくつがえすという点で, 地動説 (コペルニクス) , 惑星の楕円軌道の発見 (ケプラー) に匹敵 する内容をもっていたと考 えられる. またそれは, 現代物理学の成果のひとつである相対性理論へ至る道筋 の出発点ともなっている. 17cという時代の制約のなかで, 自然現象を注目深く観測することによって得ら 218.
(8) . 木星の衛星食とその速さ-レーマーによる光速度測定-. れた科学的発見としての意義をとらえることが重要である. 引用文献 1)大野陽朗監修, 近代科学の源流= (レーマー, 「光の運動に関する証明」 ) , 北大図書刊行会. p‐ 236,. 2)霜田光一, 講座:歴史的物理実験, パ リティ ー08 ( ) 79 1995 3)鬼塚史朗, 物理教育45 ( 1997 ) 36 4 6 ( 9 9 8 ) 1 3 3 5 ,. 4)田中 済, 惑星とその観測, 恒星社厚生閣 5)天文年鑑, 誠文堂新光社 0年度卒業論文, 北海道教育大学札幌校 6)佐藤瑞紀, 平成1. 219.
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