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コミュニケーションへの意欲がコミュニケーション活動の言語パフォーマンスに与える影響について

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(1)Title. コミュニケーションへの意欲がコミュニケーション活動の言語パフォー マンスに与える影響について. Author(s). 横山, 吉樹. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 70(1): 175-184. Issue Date. 2019-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/10544. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第70巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 70, No.1. 令 和 元 年 8 月 August, 2019. コミュニケーションへの意欲がコミュニケーション活動の言語パフォーマンスに 与える影響について 横 山 吉 樹 北海道教育大学札幌校 英語教育研究室. Task-Specific Willingness to Communicate and Its Effect on Language Performance in Communication Tasks YOKOYAMA Yoshiki Department of English Education, Hokkaido University of Education. Abstract A bulk of research has investigated willingness to communicate (WTC), since MacIntyre, Clément, Dörnyei & Noels (1998) have proposed a heuristic model of variables influencing WTC. However, many of them have highlighted a stable enduring aspect of WTC (trait WTC) and its relations to motivational and psychological properties. However, there is more immediate and situationally oriented WTC (state WTC) which is assumed to be influenced by “situational antecedents” such as “desire to communicate with a specific person” and “state communicative confidence” (MacIntyre et. al, 1998). This paper attempts to investigate how task-specific WTC, one kind of the state WTC, has some impact on second language (L2) use when the participants are given a different type of communication task. The results of the factor analysis indicated that task-specific WTC differed according to the task type. In the post-survey which attempts to elicit task-specific WTC perceived during the tasks, it was combined with orientation for language performance. In the pre-survey, on the other hand, WTC is combined with other situational variables. The results of two-way ANOVA suggested that a jigsaw task significantly triggered more task-specific WTC than the decision-making task. However, the results of L2 use unexpectedly suggested more lexical and structural complexity in the decision-making task. キーワード:WTC,タスク,第2言語習得. 175.

(3) 横 山 吉 樹. 図1 WTCのプラミッド型モデル(MacIntire, et al., 1998). 1.はじめに 第二言語習得研究において,コミュニケーションの意欲(WTC)は,心理要因の一つではあるが,実際 のコミュニケーションに密接に結びつくものとして期待されている(Cao, 2011; MacIntyre et al., 1998; Yashima, Zenuk-Nishide & Shimizu, 2004)。しかしながら,実際の第2言語(L2)使用に及ぼす影響を調 べたものはあまりない。そのため,WTCが高いことが,実際のL2使用に好影響であるとする裏付けがない という問題がある。そのため,本研究では,与えられるコミュニケーションタスクによって,WTCがどの ように変化するのか,さらに,それによって,学習者のL2使用,特に,流暢さ,正確さ,そして,複雑さに, どのような影響を与えるのかを調査する。 MacIntyre, et al.(1998)は,“Heuristic model of variables influencing WTC”として,WTCに与える要 因が階層をなして複雑に影響しているという概念モデル(図1)を示した。第1層を第2言語学習の目的で あるL2使用とし,それに影響を与えるものとして第2層にWTCを,さらに,第3階層から第6階層をそれ ぞれsituational antecedents, motivational properties, affective-cognitive context, social and individual contextと し た。 そ れ ぞ れ の 層 を 詳 し く 見 て い く と, 3 層 に は, 即 時 的 に 場 に 依 存 す る(immediate situational)要因として, 「特定の相手とコミュニケーションをとりたいという欲求」や「一時的なコミュ ニケーションに対する自信」が含まれ,それが第2層のWTCや第1層のL2使用に影響を与えることを図示 している。つまり,ある状況の下,即時的にL2使用に影響を及ぼす要因を表している。一方,その下層に ある3層には, 「コミュニケーションの過程に対して安定し,持続的な(stable, enduring)な要因である,パー ソナリティ,グループ間の継続的傾向(intergroup climate),コミュニケーション能力,自信,個人間やグ ループ間の動機などとなっている。つまり,WTCは,このピラミッドの下位3層に位置する「安定して, 持続的な」要因から,WTCに近接し,「即時的で場に依存する(immediate situational)」要因まで,多岐. 176.

(4) コミュニケーションへの意欲が言語使用に与える影響. にわたる影響を受けているということになる。 また,Noel(2001)では,L2使用を教室外と教室内に分けて考え,前者はグループ間の要因と考えられ る統合的な動機づけの方向性に影響され,後者には,個人間の要因と考えられる内発的な動機づけの方向性 に影響を受けるとした。八島(2004)は,MacIntyre, et al.(1998)にも,パーソナリティから始まり,コミュ ニケーション能力,場に左右されない自信,場に左右される自信,そしてWTCへとつながる情意的な要因 の流れがあり,教室内のL2使用に大きな影響を及ぼすものと考えられると述べている。 Yashima, et al.(2004)では,短期留学をした日本人高校生を対象として調査を行った。結果は,WTCが 高い学生はL2使用の頻度が高く,国際的志向性が高い学生は,WTCもL2使用の頻度も高いことが観察され た。また,一年間の長期留学をした高校生を対象にした調査によって,事前のWTC調査と留学中のL2使用 頻度に相関があること,また,滞在中の経験やホストファミリーへの満足度がL2使用の頻度と相関が高い ことが示された。つまり,日本の高校生においては,WTCは,国際的志向生によって直接的または間接的 に影響を受け,しかも教室内外いづれにおいてL2使用に密接に影響を及ぼすことが示された。この結果は, Noel(2001)で提言されているものとは異なった結果となっている。 MacIntyre & Legatto(2010)は,WTCの即時的変化をidiodynamic methodによって記録した。その分 析結果から,WTCは,言語活動中に動的に変化する仕組みがある(dynamic system)ことを突き止めた。 また,観察結果から,その原因として,語彙力欠如のために生じる語彙探索のプロセスがWTCの一時的な 低下の引き金となっている。また,自己評価では見られなかったが,L2に対しての不安というものも,即 時的変化を引き起こしている可能性が指摘された。 一方,Cao & Phillip(2006)は,WTC自体2つに区分されると唱えた。一つは,特質(trait)と同様に, 場によって変化しないtrait WTCであり,もう一つは,場に依存する(situational)state WTCがあると唱え た。彼らは,アンケート,インタビュー,そして,授業観察によって,前者と後者のWTCの相関を調査し たが,明確な相関が見られなかった。しかしながら,state WTCでは,3つのコンテクスト(whole class, group work, pair work)で有意な相違が見られたと報告している。また,影響を与える要因としては,グルー プサイズやパートナーとの親近感,トピックに対して精通しているといった即時的で場に依存する要因から 文化的背景といった安定して持続的な要因が挙げられた。Cao(2011)も,state WTCを対象とした研究を, 授業観察,刺激再生法によるインタビュー,回想日誌(reflective journals)によって明らかにしようとした。 結果は,パーソナリティなどの安定し,持続的な要因だけでなく,トピック,タスクの種類,パートナー, 教師,グループサイズといった即時的で場に依存する要因も挙げられた(situational dynamic system)。つ まり,WTC研究は,trait WTCとstate WTCに区分して研究すること,また,後者の研究をする場合は, 場に応じて変化する要因だけでなく,パーソナリティや動機などの安定した持続的要因も影響を与える場合 があるということを留意する必要がある。 これまでの研究は,パーソナリティなどの特質がWTCにどのように影響を与えるのかを研究するものと, 場に依存するWTCにも着目する研究があった。Yashima, MacIntyre & Ikeda(2018)は,それら2つの側 面からWTCを調べるという新たな試みもなされている。教室環境において,発話の分析をした結果は,自 発的な発話(self-initiated turn)の頻度は,パーソナリティやコミュニケーション能力などの特質と,学生 の応答や発話間のポーズなどの場に依存する要因が互いに影響し変化することが確かめられた。 タスク研究は,様々されているが,最初に,タスクと言語の複雑さという観点からこれまでなされている 研究を振り返ることにする。Foster & Skehan(1996)では,情報のやりとりをするタスクよりも物語タス クの方が,複雑さと流暢さが増加としたと報告している。そのような結果となった理論的根拠として,学習 は第2言語を使用する時に,注意資源が限られるため,言語のすべての側面にその資源を用いることができ. 177.

(5) 横 山 吉 樹. ず, 特定の側面にのみ注意を向ける傾向があるとする仮説がある(Skehan,1998)。一方,Robinson(2005) は,タスクの複雑さを増すと,注意の資源は,特定の領域ではなくて,多くの領域にまたがる分散する。タ スクの特徴の中には,学習者の注意の資源を特定の側面に向ける役割をするものがある。Robinson(1995, 2007)では,タスクの複雑さが与える影響が相反する結果となった。前者では,タスクの複雑さは,語彙の 複雑さに貢献したが,統語的な複雑さには貢献しなかった。一方,後者では,単純なタスクでは,語彙の複 雑さが増したが,統語的複雑さに関しては統計的に有意な違いは見られなかった。Iwashita, MacNamara, Elder(2001)は,タスクをコンピュータの前で行うスピーキングテストに用いるという観点から,研究を 行った。193人の英語学習者を対象にして,物語タスクにおける特徴が言語使用に与える影響を調査した。 タスクの特徴は,視点(主観 vs. 客観),親密度(here and now vs. there and then),情報の充足度(絵の すべてのコマ vs. 絵のコマの一部欠損) ,プランニング時間の有無により8つの異なるタイプのタスクが使 用された。その結果,タスクの特徴はタスクパフォーマンスにほとんど影響を与えなかった。しかしながら, 予測に反して,親密度が高く易しいタスクより親密度が低く難しいタスクの方が,正確さの上昇が見られた。 これまでの研究の様々な結果を見ると,タスクの種類や特徴だけが,言語使用に影響を与えるのではないと いうことがわかる。 次に,WTCとタスクに関わる研究をみることにする。Kormos & Dörnyei(2004)は,英語を第2言語 として学ぶ16-17才の学生に対して意思決定タスクを課して,心理的要因,授業やタスクへの姿勢という要 因,また,trait WTCが言語パフォーマンスに及ぼす影響を観測した。結果は,タスクに対する姿勢は,流 暢さ(総ワード数,総ターン数)や語彙の複雑さに影響を与えるが,正確さ,統語的複雑さ,討論などの構 造にはあまり貢献しないという結果となった。しかしながら,タスクに対する姿勢が高いサンプルと低いサ ンプルに区分して比較すると,前者では,WTCを含む重相関が流暢さと複雑さに見られたが,後者ではみ られなかった。後者で唯一見られたのは,授業に対する態度と正確性であった。このことから,タスクに対 する興味関心やWTCは,流暢さと複雑さに影響を与えるが,正確さには必ずしも与えないことがわかった。 タスクに対してTerashita(2016)は,タスクの種類によって,WTCがどのように異なるのかを調査したが, 有意な差を見つけることができなかった。しかしながら,WTCが高い日本人大学生の方が,流暢さが高い 傾向にあることを指摘した。. 2.研究課題 本研究は,trait WTCではなく,state WTCの中でも,タスクという環境におけるstate WTC(以後, task-specific WTC)を主に調査対象とする。また,それに影響を与える要因としてタスクの種類を挙げ, Task-specific WTCがタスクの事前と事後でどのように変化するのかを調査する。また,従来の研究では, WTCを計測することに留まるものが多かったが,MacIntyre, et al.(1998)の第1層である「L2使用」に及 ぼす影響も調査する。よって,本研究の研究課題は,次のようになる。 1.タスクの事前と事後によって,WTCへの志向性は異なるのか。 2.タスクの種類によって,WTCへの志向性が異なるのか, 3.また,タスクの種類でWTCの志向性が異なるのであれば,それが,L2使用,特に,流暢さ,正確さ, 複雑さにどのような影響を与えるのか. 178.

(6) コミュニケーションへの意欲が言語使用に与える影響. 3.研究方法 本研究の質問紙を作成するにあたって,タスクの種類におけるWTCの変化を研究したTerashita(2016) を参考にして作成した(付録2)。質問紙は,ペアワークを課すため,「パートナーとの人間関係に関わる」 質問, 「タスクの内容に関わる興味・関心などに関わる」質問,さらに,言語パフォーマンスへの意識に関わ る質問を設定し,5件法で回答するようにした。 国立大学の学生50名を対象者として,英語の習熟度試験を課した。その結果に基づき,30名の被験者を選 定し,ほぼ同じ習熟度の者同士がペアを組み実験を行った。実験では,これからの行うタスクについて,研 究協力者から説明を行った後に,WTCへの志向を調べるための事前アンケートを課し,タスクを行い,事 後に,回想法として,タスクをしていた時のWTCを回想するアンケートを行った。この2つのアンケート は,内容はほぼ同じであるが,質問項目の順番を変えて行うようにした。 ジグソー(又は意思決定)タスク内容の説明 ↓ WTC事前調査 タスクの説明をあらかじめ受け,WTCを予測する調査(prospective survey) ↓ ジグソー(又は意思決定)タスクの実施 ↓ WTC事後調査 タスクを行った後に,その時のWTCを回想する調査(prospective survey) 図2 本調査の実験方法. タスクは,意思決定タスク1とジグソータスク2の2種類を行った。練習効果に配慮して,ジグソータスク を先に行うペアと意思決定タスクを先に行うペアを交互に組み合わせ,カウンターバランスを取るようにし た。Cao & Phillip(2006)では,クラス全体で行う活動よりもペア・グループ活動のほうがWTCは高くな る傾向があること報告した。Cao(2011)では,プロジェクトワークがWTCを高める活動であるという報 告もある。今回使用した2種類のタスクは,いずれもペアワークであり,相互にコミュニケーションをとり ながら,間違いを探す(ジグソータスク) ,または,相手と話し合いながら最もふさわしいものを選び,そ の順位を決めていかなければいけないもの(意思決定タスク)である。Pica, et al.(1993)によると,ジグソー タスクの方がより意味の交渉が図られるとされている。また,Yokoyama(2009)では,ジグソータスクよ り意思決定タスクの方が,言語の複雑性は高くなる傾向があるという報告がなされている。 表1 実験で使用するタスクの特徴 情報の流れ. インタラクション. 成果. 意味交渉. 複雑性. ジグソー. two-way. +. 1. +. +−. 意思決定. two-way>one-way. −. 1+. +−. +. 本調査では,言語パフォーマンスを測る指標として,Ellis(2008)で用いられていたものを使用した。 ○ 流暢さ numbers of syllables per minute ○ 複雑さ ○ 統語的複雑さ (amount of subordination) the total number of separate clauses divided by the total number of AS-units. 179.

(7) 横 山 吉 樹. ○ 語彙的複雑さ (Type-token ratio) the total number of different words (types) Used divided by the total number of words (tokens) ○ 正確さ (percentage of error-free clauses) the number of error-free clauses divided by the total number of independent clauses, sub-clausal units, and subordinate clauses x 100. 4.結 果 アンケートを主因子法によって因子分析し,タスクを行う前後でどのように因子が変化するのかを観察し た(研究課題1) 。結果は,事前と事後に行われた調査では,抽出された因子の数は2つと同じであるが, 因子自体は大きく異なる結果となった(表2・表3参照)。事前では,WTCはそれを支えるタスクの面白さ やパートナーとの相性を巻きこんで一つの因子を形成した。また,言語パフォーマンスに対する志向は, WTCやその状況とは結びつかずに,独立した因子を形成した(表2)。それは,WTCが場に依存する志向 を有し,state WTCの様相を呈していると言える。しかしながら,事後に行った,タスクを行っている時に は,WTCは,言語パフォーマンスへの志向を包括したものへと変容する(表2参照) 。そして,WTCを支 える場の状況に関わるもののみ独立して一つの因子を形成した(表3参照)。それは,WTCがタスクをする 上で必要となる言語パフォーマンスをより一層意識したもの,MacIntyre, et al.(1998)が唱えるheuristic modelの最上部に位置するL2使用への志向を帯びてきたことを意味すると考えられる。つまり,WTCは, 事前では,heuristic modelの下層にあるの場の状況に応じた要素(desire to communicate with a specific person, state communicative self-confidence)の影響を受けているが,事後に行ったタスクをしている時の 調査では,その上部に位置するL2使用の影響を受ける。 表2 事前アンケートの因子分析の結果 番号. 項目. 因子1. 因子2. WTCを支える状況への志向(α=.663) 7. タスクの話しやすさ. .765. −.318. 6. コミュニケーションの意欲. .671. .126. 8. タスクの面白さ. .490. −.078. 9. パートナーとの相性. .433. .144. 言語パフォーマンスへの志向(α=.534) 11. 英語の意図を工夫. .032. .663. 10. 英語の正確さ. −.082. .530. 12. 英語の流暢さ. .396. .424. 注 因子抽出法:主因子法 回転法:Kaiserの正規化を伴うバリマックス法 *3回の反復で回転が収束. さらに,2要因のANOVAを用いて,タスクによってWTCへの志向が異なるのかを調査した(研究課題 2) 。結果は表3及び4に示すように,事前の調査では,意思決定タスクが,場に依存するWTCは低いが, 言語パフォーマンスへの志向が高く,ジグソータスクでは,前者は高いが後者は低いという結果となった ( t a s k : F ( 1 ) = 4 . 5 1 3 , p = . 0 4 2 ,η2= . 1 3 5 ; o r i e n t a t i o n : F ( 1 ) = 0 . 0 0 0 , p = 1 . 0 0 0 ,η2= 0 0 0 ;. 180.

(8) コミュニケーションへの意欲が言語使用に与える影響. task*orientation:F(1)=51.254,p=.000,η2=.639)。事後に行ったタスク中のWTCへの志向に関しては, WTCの意欲を支える点でも,WTCとその言語パフォーマンスを伴ったWTCへの志向という点でも,意思決 定型タスクよりもジグソータスクが高い値を示した(task:F(1)=37.132,p=.000,η2=.561;orientation: F(1)=0.000,p=1.000,η2=000;task*orientation:F(1)=28.872,p=.000,η2=.499)。よって,事前と事 後では,タスクによるWTCへの志向が大きく変化しいるのがわかる。事前と事後の調査における因子が同 じではないが,事前ではタスクの種類によって異なる志向を示しているが,事後に行った調査では,ジグソー タスクが,意思決定タスクよりも,どちらの志向においても高くなっている。 表3 事後アンケートの因子分析の結果 番号. 項目. 因子1. 因子2. WTCを支える状況への志向(α=.879) 15. タスクの話しやすさ. .882. .211. 19. 内容の話しやすさ. .855. .160. 20. パートナーとの相性. .738. .158. 言語パフォーマンスを伴ったWTCへの志向(α=.755) 18. 英語の流暢さ. .197. .725. 13. コミュニケーションの意欲の維持. .441. .641. 17. 英語の意図を工夫. .114. .530. 14. コミュニケーションの意欲の喪失(逆転). −.278. −.525. 16. 英語の正確さ. −.009. .525. 注 因子抽出法:主因子法 回転法:Kaiserの正規化を伴うバリマックス法 *3回の反復で回転が収束 表4 事前アンケートにおけるタスク毎のWTCへの志向の記述統計 意思決定タスク. ジグソータスク. WTCへの志向. M. (SD). M. (SD). WTCを支える状況への志向. −.475. (.795). .475. (.698). 言語パフォーマンスへの志向. .270. (.716). −.270. (.802). 注 数値は因子得点 表5 事後アンケートにおけるタスク毎のWTCへの志向の記述統計 意思決定タスク. ジグソータスク. WTCへの志向. M. (SD). M. (SD). WTCを支える状況への志向. −.651. (.869). .651. (.382). パフォーマンスを伴ったWTCの志向. −.021. (.911). .021. (.821). 注 数値は因子得点. 181.

(9) 横 山 吉 樹. 対応のあるt検定を用いて,タスクの種類によって,流暢さ,正確さ,複雑さが異なるのかを調べた。結 果は,流暢さと正確さにおいては,違いは見られなかった(それぞれ,t(15)=1.76,p=.10,d=.39;t(15) =1.64,p=.12,d=.50) 。一方,複雑さにおいては,統語的,語彙的両方とも,意思決定タスクが有意に高 いことが判明した(それぞれ,t(15)=8.41,p=.00,d=3.5;t(15)=2.23,p=.03,d=.23)。特筆すべきは, 統語的な複雑さにおいては,効果量も大きく,有意に大きな差をもって異なっているのがわかる。しかしな がら,語彙的複雑さにおいては,効果量も小さく,平均値と同じ位の標準偏差値がどちらのタスクにも見ら れることから,統計的には有意な差であるといっても,個人差が大きいという結果となっていることがわか る。 表6 タスクの種類における流暢さ,正確さ,複雑さの記述統計 意思決定タスク. ジグソータスク. M. (SD). M. (SD). 流暢さ. 81.97. (22.66). 74.49. (14.28). 統語的複雑さ. 1.28. (0.12). 1.02. (0.01). 語彙的複雑さ. 14.83. (16.82). 11.44. (12.84). 正確さ. 82.71. (7.41). 86.05. (5.90). 次に,WTCの志向性が異なる2種類のタスクは,L2使用の流暢さ,正確さ,複雑さに,どのような影響 を与えたのか(研究課題3)について述べる。事前調査では,意思決定タスクは,WTCを支える状況への 志向は低いが言語パフォーマンスへの志向は高く(表4参照),それが,表6で示される複雑さの上昇に影 響を与えていると考えられる。しかしながら,事後に行われた調査(表5参照)では,ジグソータスクが, WTCを支える志向だけでなく言語パフォーマンスを伴ったWTCの志向という要因も高くなっているにもか かわらず,L2使用(流暢さ,正確さ,複雑さ)に関しては,何ら有意な効果を及ぼさない結果となっている。 一方,どちらの要因も低くなっている意思決定タスクにおいては,予想に反して,複雑さを上昇させている 結果となった。このように,事前と事後に行われたWTCの調査は,L2使用の予測に関して全く異なる結果 を示していることとなった。. 5.結 論 本研究では,タスクを行う前とタスクをしている際のWTCの変化を観察した。結果は,タスクを行う前 のWTCは,それを支える状況の一つとして要因を形成し(表2参照),state WTCの様相を呈していると考 えられる。しかしながら,タスクを行っている時のWTCは,言語パフォーマンスへの志向を包括したもの, つまり,task-specific WTCの様相を帯びてくる(表3参照)。しかしながら,サンプル数が30と低いことか ら,この結果については信頼できるものとはなっていない(Hair et al., 1994; Kline 1994)。そのため,今後 は,十分なサンプル数を確保し,実験を行い,今回の結果を検証する必要がある。 タスクの種類とL2使用に関しては,意思決定タスクの方が複雑さにおいて有意に高い結果が得られた。 しかしながら,タスクをしている際のWTCは,ジグソータイプが有意に高い結果となっているので,WTC が必ずしもL2使用には結びついていない結果となった。さらに,予想に反して,タスク中のWTCよりも, 事前に測ったWTCの方がL2使用を予測している結果となった。よって,本研究の結果は,Task-specific WTCは,L2使用に影響を与えていないことを示している。. 182.

(10) コミュニケーションへの意欲が言語使用に与える影響. この予想に反した結果に関しては,Cao(2011)やMacIntyre & Legatto(2010)が主張するように, WTCがdynamic systemとして機能している結果と言えるかもしれない。つまり,タスクの種類などの状況 的要因だけでなく,心理的要因も複雑に関わり合って,WTCが,言語パフォーマンスに影響を与えるとい うことを示唆しているのかもしれない。また,考えられる他の要因としては,タスクをしている際の自らの WTCやL2使用に関して,実験参加者の振り返りが,実態を反映していないという可能性がある。数名から のインタビューであるが,複雑さが増加している学生であっても,予想したようにうまくしゃべれなかった と述べているものが多かった。 本研究は,予想したような結果とは至らなかったが,WTCと言語パフォーマンスを研究する上で,重要 な示唆を与えものである。それは,state WTCの一つとしてtask-specific WTCがあり,それはタスクする 以前に予想するものとタスクをしている時に意識するものでは大きく変容することが確かめられた。また, これまでのWTC研究と異なり,本研究は事前と事後に調査を行った。それによって,事前にしたもののほ うが,予想した結果と近いものとなった。これは,学習者は。実験が終わった後で,実験中の言語パフォー マンスを正確に振り返ることができるのかという疑問を投げかけている。このような第2言語学習者要因 も,WTC研究の実験の手続きとして,今後課題としていかなければいけないと考える。. 注 1.本研究で行った意思決定タスクは,職業に就いた時に重要だと思うことを,あらかじめ挙げられている 6つから3つ選ぶというタスクである。それぞれのペアごとに,なぜそのように考えるのかを理由を含め て話し合い,意見が食い違う場合は,合意するまで討論を積み重ねて3つ選んでいく。指示の一部が付録 2に慶されている。 2.本研究で行ったジグソータスクは,場面や人物が同じであるが,8箇所違った点がある絵が渡され,お 互いの絵を見ないで,間違いを探すタスクである。. 謝 辞 1.本研究は,文部科学省科学研究費基盤(C)16K02914の助成を受けて行ったものの一部である。 2.実験及び分析にあたっては,北海道教育大学修士課程の市澤彗太郎氏と三分一稿氏に協力して頂いたこ とに深く感謝する。. 引用文献 Cao, Y. (2011). Investigating situational willingness to communicate within second language classroom from an ecological perspective. System 39, 468-479. MacIntyre, P.D., Clément, R., Dörnyei, Z., Noels, K.A. (1998). Conceptualizing willingness to communicate in an L2: a situational model of L2 confidence and affiliation. Modern Language Journal 82, 545-562. MacIntyre, P.D. & Legatto, J.J. (2010). A Dynamic System Approach to Willingness to Communicate: Developing an Idiodynamic Method to Capture Rapidly Changing Affect. Applied Linguistics 32(2), 149-171. Hair.J.F.Jr., Anderson, R.E., Tatham.R.L., and Black, W.C. (1998) Multivariate data analysis. 5th ed. Upper Saddle River, N.J : Prentice Hall. Iwashita, N., McNamara, T., Elder, C. (2001). Can we predict task difficulty in oral proficiency test? Exploring the potential. 183.

(11) 横 山 吉 樹. of an information-processing approach to task design. Language Learning 51(3), 401-436. Kline, P. (1994)An easy guide to factor analysis. Oxford, U.K.:Routledge. Kormos, J., & Dörnyei, Z. (2004). The interaction of linguistic and motivational variables in second language task performance. Zeitschrift für Interkulturellen Fremdsprachenunterricht [Online], 9(2), 19 pp. Noels, K.A. (2001). New orientations in language learning motivation: Toward a model of intrinsic, extrinsic, and integrative orientations and motivation. In Z. Dörnyei, & R. Schmidt (Eds), Motivation and second language acquisition (pp. 43-68). Honolulu, HI: Second Language Teaching & Curriculum Center, University of Hawaii. Robinson, P. (1995). Task complexity and second language narrative discourse. Language Learning, 45(1), 99-140 Robinson, P. (2007). Task complexity, theory of mind, and intentional reasoning: effects on L2 speech production, interaction, uptake and perceptions of task difficulty. International Review of Applied Linguistics, 45(3), 193-213. Skehan, P. (1998). Cognitive approach to language learning. Oxford, U.K.: Oxford University Press. Terashita, K. (2016). WTC fluctuation and task performance on the Japanese EFL context. Unpublished M.A. thesis,. Hokkaido University of Education, Hokkaido, Japan. Foster, P., & Skehan, P. (1996). The influence of planning and task type on second language performance. Studies in Second Language Acquisition, 18, 299-323. Yashima, T., Zenuk-Nishide, L., Shimizu, K. (2004). Influence of attitudes and affect on willingness to communicate and L2 communication. Language Learning 54, 119–152. Yashima, T., MacIntyre, P.D., Ikeda, M. (2018). Stimulated willingness to communicate in an L2: Interplay of individual characteristics and context. Language Teaching Research 22(1), 115–137. 八島智子(2004).「外国語コミュニケーションの情意と動機―研究と教育の視点」大阪:関西大学出版部。. 付 録 付録 1 タスク後アンケート(本研究に関係のある質問項目のみ) 13.このタスクでは、コミュニケーションする意欲を維持できた。 14.途中で、コミュニケーションする意欲があまりわかなくなかった。 15.このタスクは、英語で話しやすかった。 16.このタスクでは、英語を正確に話そうとした。 17.このタスクでは、自分の意図が伝わるように英語を工夫した。 18.このタスクでは、できるだけたくさん英語を話そうとした。 19.このタスクの内容は話しやすかった。 20.このタスクでは、パートナーに話しかけやすかった。 付録 2 タスクの説明(Job Security)一部のみ  Let’s start the task 1. Look at your task sheet. You can find you will do individual work and then pair work. In the individual work, you have to imagine you were an office worker. You are not a student. And you have to think about what factors are important to you in a carrier. OK, so look at the task sheet. There are six factors. No.1, salary means that how much money do you earn or get from the company? 以下省略 . 184. (札幌校教授).

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