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「内発的学校改善」の取組 ―教育課程の編成・実施・改善を通して―

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Academic year: 2021

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(1)Title. 「内発的学校改善」の取組 ―教育課程の編成・実施・改善を通して―. Author(s). 辻川, 智宏. Citation. 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 : 教職大学院研究紀要 , 6: 71-82. Issue Date. 2016-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/7901. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 第6号. 「内発的学校改善」の取組 ―教育課程の編成・実施・改善を通して― 辻 川 智 宏*. 概 要 本研究は、学校が公教育を行う機関としての役割をもつことを踏まえつつ、教職員集団が主体的・ 自律的・協働的に機能するような「内発的学校改善」のあり方を検討するものである。勤務校におけ る実践を通して、その考察や検証をおこなったところ、研究の成果として、次の2点が明らかとなっ た。 1)内発的な学校改善による教育活動は評価(教員、保護者、生徒ともに)が高い傾向にある。ただ し、即時的な改善の場合は、より意図的・計画的に教員の共通理解を図ることが必要である。 2) 「自分の意見がこの部分の改善に関わっている」という実感をもたせることは有効である。具体 例として、教員の学校評価を活用し、次年度の教育課程に反映させるなどは大変有効である。ミド ルリーダーに限らず、学級担任の立場であっても、学校運営に参画する視点をもつことは必要であ る。. 1 はじめに 「学校改善」という用語は一定の価値志向性を内包しながら現象的には多様であるため、定義づけ が難しいといわれる。1983年、OECDのCERIによる「学校改善に関する国際共同研究プロジェクト」 で用いられたschool improvement が「学校改善」と邦訳され、一般に定着したようである。その意 味は、「学校の教授・学習活動をより善くすること、またはそのための営み」とおさえられ、広く用 いられている。 国公立の学校は、 法律上「公の施設」 「公教育機関」であるため、 社会的環境(制度環境、 政策環境) の変動に大きく左右される。これまで、我が国における学校改善の流れは次の表1のように大きく4 つの時期に区分されている1)。. ───────────────────── *. 北海道教育大学附属釧路中学校. 71.

(3) 辻 川 智 宏. 表1 我が国における学校改善の流れ 【第一期】学校の民主化(戦後期):教師集団による自律的・自治的な内発的改善 ・学校改善は、民主教育の実現のために教師による自主的な授業づくり(例:社会科を中心とした郷土学 習など)などが中心 【第二期】学校の効率化(56年体制期):政策による外発的改善 ・学習指導要領が告示化され、国家による教育課程管理が強化 ・学校運営面で職務遂行の合理化を図る組織効率化が求められた(例:教頭職の法制化、主任職の法制化、 勤務評定の実施など) 【第三期】学校のガバメント化(90年体制期):外発的学校改善 ・教育委員会による規制を緩和し、学校の主体性・自律性を尊重し、学校経営の裁量性を重視した。 ・校長のリーダーシップ強化を学校内外から図る(例:職員会議は校長の補助機関と法定、学校評議員を 諮問委員と法定)。 ・学校評価制度を導入し、学校の説明責任を求めた。 【第四期】学校のガバメント化とマネジメント化(00年体制期):内発的・外発的の複合 ・90年体制期の具現化のために多くの変化を現在まで受けている。学校の主体性と自律性を尊重するが、 それは学校改善の成果(結果)説明を求めるためである。また、学校改善は学校評価方法としてマネジ メント化(内的介入)するという特徴がある。 ・学校経営の計画化と効率化の重視 ・校長のリーダーシップ強化による学校経営の集権化 ・副校長・総括教諭・指導教諭などの新しい管理職の導入による学校組織のピラミッド化 篠原清昭ら(2012)に基づいて筆者が表を作成 . 以上のように、学校改善の流れをまとめると、学校改善は教育政策としての外発的な側面と学校・ 教員本体による内発的な側面があることがわかる。特に、現代の「学校改善」には2つの側面が複合 的に存在していることがわかる。篠原(2012)は著書の中で、その類型を下表2のように整理してい る。 表2 「学校改善」の類型 類 型. 外発的 学校改善. 主 体 国 家 (経済界、政府、 文科省). 考 え 方 学校の教育目標・経営目標を統制 し、校長・教師の役割や組織をコ ントロールすれば学校は改善でき る。. 方 法 (例) 校長のリーダーシップ強化 職員会議の補助機関化 新しい職(主幹教諭・指導教諭)の設置 学校評価の導入 学力調査. 学 校 が 主 体 的・自 律 的 に 教 育 目 学力向上のための授業開発 内発的 学校改善. 学 校. 標・経営目標を定め、教師集団が 指導力向上のための校内研修. (教職員集団). その目標を共有化し、協働的に働 PDCAによる教育課程経営 けば学校は改善できる。. 72. 学校と地域社会との連携など.

(4) 「内発的学校改善」の取組. 2 先行研究の検討 「内発的改善」 「自律性・組織性の高まり」 「教育課程編成」の視点で先行研究を概観した。後述す るが、内発的改善を支える内発的動機づけや組織の形成については、佐古・宮根(2011)の「良循環 サイクル」及びスピラーン(2007)の「分散型リーダーシップ理論」を本研究理論の参考とした。 また、自律性・組織性を高める学校改善については、上山・松本・藤井(2014)の「教育課程編成 過程に着目した実践」を本研究実践の参考とした。. 3 研究の目的 以上の考察から、本研究は学校が公教育を行う機関としての役割をもつことを踏まえつつ、教職員 集団が主体的・自律的・協働的に機能するような「内発的学校改善」に視点を定め、実践を通し、そ の考察や検証をまとめ、今後の教育活動にいかそうとするものである。 また、本研究は上表2の方法例の教育課程経営に視点をもち、実践する。教育課程は教育の内容を 生徒の心身の発達に応じ、授業時数との関連において総合的に組織した学校の教育計画であり、学校 改善の中核に位置づくものと考えられる。そのため、本校における次年度に向けた教育課程編成の取 組で研究実践を検証する。具体的には、自らが直接的、または間接的に内発的改善による学校課題解 決に向けた実践を行い、その検証結果をもとに次年度の教育課程に反映させるプロセスで行った。. 4 研究の実践 先述の通り、本校における平成27年度に向けた教育課程の編成を研究の実践として位置付ける。具 体的には、次の2つの取組で実践の経過をまとめ、検証と考察を加える。 ・現行教育課程の編成まで(平成21~23年度) ・現行教育課程の実施・評価・改善(平成24~26年度) ⑴ 現行教育課程の編成まで(平成21~23年度) 教育課程の定義については諸説あるが、一般的には「学校教育の目的や目標を達成するために、教 育の内容を生徒の心身の発達に応じ、授業時数との関連において総合的に組織した学校の教育計画で ある」とされている。各学校においては、当然のことながら法令並びに学習指導要領などの基準に従 うとともに、地域や学校の実態及び生徒の心身の発達段階や特性等を十分考慮して、適切な教育課程 を編成する必要がある。 平成18年12月に教育基本法の改正、平成19年6月に学校教育法の改正、平成20年3月に中学校学習 指導要領の改訂が行われ、新しい(現行の)教育課程は平成24年4月1日から全面実施されている。 前課程に引き続き「各学校において、生徒に生きる力をはぐくむことを目指す」こととし、知・徳・ 体の調和のとれた育成の重視が教育課程編成の一般方針として示されている。 【中学校学習指導要領の改訂の基本方針】 ① 教育基本法改正等で明確となった教育の理念を踏まえ「生きる力」を育成すること。 ② 知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重視すること。 73.

(5) 辻 川 智 宏. ③ 道徳教育や体育などの充実により、豊かな心や健やかな体を育成すること。 以上の改正・改訂の点を踏まえ、本校では次の4点を重点方針として現行課程の編成に着手した。 この時、私は教務主任として編成を進めた。 ・心豊かなたくましく生きる人間を育てるために、生徒に生きる力をはぐくむことを目指し、創 意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する中で、基礎的・基本的な知識及び技能を確実に 習得させ、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能 力をはぐくむとともに、主体的に学習に取り組む態度を養い、個を生かす教育が行われる学校 を目指した教育課程を編成する。 ・本校の教育研究との有機的な関連を図った教育課程を編成する。 ・学習指導要領の趣旨を生かした教育課程を編成する。 ・各教科、道徳、特別活動及び総合的な学習の時間の内容を十分に研究するとともに、学校暦、 週時程の検討を加えた教育課程を編成する。 本校における各種調査やアンケートの結果からの学校課題を踏まえつつ、編成に取り組んだが、1 つの大きな問題に直面した。年間総授業時数が各学年とも年間35単位時間増加(前課程の総授業時数 は980時間)になり、学校週5日制のもとで「1015時間の確保」は現状のままでは困難を極めた。そ こで、次のように週時数を28時間から30時間に段階的に変更するとともに学校行事の精選を行い、時 数の確保を図った。 【時数の確保】 ○平成21年度・・・週28時間、年間授業時数980時間 ○平成22年度・・・週29時間、年間授業時数1030時間(※教員にかなりの多忙感) ○平成23年度・・・週30時間、年間授業時数1030時間 (※職員会議の日は午前授業にするなど多忙感の解消を図る) ☆平成24年度では、週30時間、年間授業時数1045時間を確保するために、次のような運用の工夫を行 う。 ・NRTなどの学力検査を春季休業中に行う。 ・中学3年生の定期テストを長期休業中に行う。 ・中学1年生の職場体験活動を夏休み中に行う(1日間) 。 ・宿泊的行事は3年間を見通して計画的に配置する。 ・前日祭・文化祭・体育祭を連続3日間で行う。 以上のように、現行の教育課程の編成は外発的学校改善の取組であったと考える。 ⑵ 現行教育課程の実施・評価・改善(平成24~26年度) 平成24年4月より現行教育課程の全面実施が始まった。実施1年目2年目、私は教務主任として関 わった。上記の運用のもと新しい教育課程を実施した結果、 「授業時数が確保できたか?」 「行事の実 施時期は適正だったか?」など、学校評価を反映しての編成は点検と修正が中心の「外発的な学校改 善」に終始した。しかし、平成25年4月、私は北海道教育大学教職大学院に入学し、学校経営・学級 74.

(6) 「内発的学校改善」の取組. 経営コースを専攻。講義や院生との討論を通して、 「内発的な学校改善」の在り方を学び、学校課題 の改善を図りながら、教職員集団が主体的・自律的・協働的に機能させるという視点を得ることがで きた。平成26年度、本校校舎の耐震化改修工事という大きな課題を抱えながらではあったが、 「内発 的学校改善」を目指し実践を行った。 佐古(2011)は、教職における内発的動機づけの形成に必要な2つの要因について、次のように述 べている。1つ目の要因である「効力感」については、 教員がその教育活動を通して児童生徒の成長・ 変容を実感した時に強く形成され、もう1つの要因である「行為の統制感(自己決定性の認識)」は 他律感に束縛されておらず、児童生徒の課題に即して自らの教育活動を構成・実践していることとし て認識されている状況で形成される。いうまでもなく、内発的動機づけは外発的動機づけに対して、 個人や集団の創意を喚起し、目標達成に向けた行動を持続させる効果に優れていることが知られてい る。以上の点をふまえ、 教員が主体的・自律的に取り組む教育活動(内発的改善)の展開サイクル(佐 R児童生徒の実態把握→□ P児童生徒の改善を目指す教員の 古は良循環サイクルと名付けている)を「□ D実践→□ S実践の経過と成果に関する評価・確認→□ R次の課題へつなげる」と示している 課題生成→□. (図1参照)。. 効力感形成の局面. S. 行動の自己始発性の局面. 子どもの実態. R. P. D 実践. 課題づくり. 教員の自律性(内発的動機づけ)の要因 図1 良循環サイクルと内発的動機付け. この「良循環サイクル」は自律的な教育. 「リーダー」 「リーダー」 「リーダー」 「リーダー」. 活動を推進する際には「当然の」サイクル である。しかし、現実に教員が個人レベル でこのサイクルを成立させるには、困難が. 時間の経過. ともなう。それは、PやSの段階で個々の 教員の認知的な制約が主な原因、特に教員. リーダーシップの実践. の「思い」に沿った行動が取りにくい児童 生徒について、教育期待の喪失や理解の固 着化などを生じやすくなる、つまり、サイ クルが成立しにくいことが大いに予想され. 「状況」. 「フォロアー」 「フォロアー」 「フォロアー」 「フォロアー」. 図2 分散型リーダーシップ. る。しかし、言いかえれば、このサイクル を集団的ないし組織的な取組の中で成立させることができるならば有効となり、学校における教育活 動が活性化されることが予想できる。. 75.

(7) 辻 川 智 宏. そこで、私はスピラーン(2007)の「分散型リーダーシップ理論」に着目した。例えば、立案した 計画を具体化させ、児童生徒に直接的に実践するのは校長ではない。日ごろ各教室で奔走する教師こ そが計画の実践者である。その教師たちが学校経営計画や具現化する教育課程を十分に咀嚼した上で 実践を行えるかが重要である。そこで、このリーダーシップ理論であるが、実際の教育活動は実践に 関わるメンバーの中で、 誰かがリーダーとなり、 それに従うフォロアーがいて進めていくことが多い。 この場合において、リーダーとフォロアーは対話と協働によって相互に影響し合い、そして依存し合 うことになる。また、刻々と変化する状況や組織に応じるために、時にリーダーシップの役割をフォ ロアーに移行させ推進することもある。このように、実践を進める中で編み込まれるリーダーとフォ ロアーの関係性は、地位に付随する固定的な役割とすると機能しない。実践を構成するメンバー全体 のものとしてリーダーシップを発揮することこそ、現実を踏まえた妥当な考え方であり、これこそが 「分散型リーダーシップ」の考え方である(図2参照) 。 これらの理論を参考に「内発的学校改善」を目指した今年度の実践を紹介する。 【実践①:2年生5月実施の宿泊研修Ⅱ】 これまで、本校では2年進級時に学級再編制を終えた後、新学級で取り組むはじめての行事が9月 の学校祭であった。生徒個々の取組はあるが、集団としての深まりが見られないとの教員側の評価が 挙げられた。具体的には、学級全体の集団づくりにつながる行事を1学期に実施したいという要望を 受け、昨年度末に教育課程編成委員会で大綱を立案、検討を行った。その際のリーダーは編成委員長 であるが、その後は当該学年主任が実施計画作成を担当し、実質的なリーダーとなる。 今年度、私は校内での立場が主幹教諭(校内教頭)および教育課程編成委員長となり、この件に関 わった。作成された具体的な計画について、教育課程編成委員会を開催し、ねらいの精査、達成に向 けた取組内容、活動の配置等を検討し、短期間の準備に対応できるよう意見した。初の行事というこ ともあり、2学年教員団との連絡を密にできるよう職員室の座席を私の近くに配置した。 宿泊研修は成功裏に終え、教員・生徒・保護者ともに高い評価を得て、次年度に引き継ぐことがで きた。 ・教員評価:「ねらいが明確で、短い準備期間であったが、効率的に指導できた。 」等の意見が多 かった。 ・生徒評価:99% ・保護者評価:94% 【実践②:1学年における教育相談等の実施】 9月の学校祭が終わり、1年生は大きな行事のない10~12月を迎える。その前に1学年主任と打ち 合わせを持ち、1年生の学習や生活に関する実態を話し合い、その改善に向けた取組として、生徒全 員と学級担任が教育相談を実施するよう促した。過去の自分自身の実践と効果などからその重要性を 伝えたところ、快く同意してくれた。昨年の1学年にも同様に教育相談の実施を促したが、今年度は 自分の経験則に加えて、1年生の実態を事前に把握し、その改善を目指すというねらいを明確に示し ながら打ち合わせをした。 実施を終え、教員・生徒・保護者ともに高い評価を得ることができた。. 76.

(8) 「内発的学校改善」の取組. ・教員評価:「学習習慣の定着に向けて、課題をもって学習する雰囲気が高まった」等の意見 ・生徒評価:「先生へ質問」の調査項目 51.9%→60.2%→67.0% 先述の先行研究の課題の中で、上山・松本・藤井(2014)は、自律性と組織性が高まる教育課程編 成には「教員の対話」 「教務主任の働き」 「校長のリーダーシップ」の3つの視点が重要であると述べ ている。また、編成に必要な「客観的データの結果が出る時期と課題改善について話し合う時期のず れ」や「教員の対話不足」は、自律性・組織性の高まり、ひいては、内発的な学校改善を阻害する要 因になるとの知見を得た。以上の課題の改善を踏まえた実践を紹介する。 【実践③:教員によるブレーンストーミングの実施】 本校教員の学校改善に関わる多くの意見や考えを抽出するため、学校評価のまとめを終えた12月 に、次年度の教育課程編成に向けた教員によるブレーンストーミングを計画した。事前に生徒が有す る課題の改善に関わる事項を討議の柱とし、その根拠となる各種調査資料を提示、年齢等を配慮した グループ編制を行い、実施した(終末の資料1を参照) 。 その結果、多くの意見を集約することができた。特に、 「総合的な学習の時間について、学習内容 や培いたい力を系統的な視点で再検討が必要」等、教育課程編成に関わる意見が出された。 以上の実践は、生徒の課題解決、変容を目指し、私たち教員が主体となって計画・実践した教育活 動、つまり内発的学校改善の取組である。 これら3つの実践の効果と年度末反省などの評価結果を踏まえ、平成27年度に向けて教育課程編 成委員会を中心に、以下のように編成を推進した。 . 5 次年度(平成27年度)の教育課程 社会の変化に主体的に対応し、生涯学習の基礎を培うという本校の役割と使命を踏まえながら、次 年度の教育課程の編成を進めたい。そのために、次年度の教育課程を継続的な視点で考え、その指針 となる「中期ビジョン」の設定が重要となる。あらためて本校の教育目標、ミッションや実態を把握 することから始めることとした。 ⑴ 本校の教育目標 教 育 目 標. 次年度の重点目標に流れる根底. ・たくましく生きる人間. ・ 「教師の成長なくして、生徒の成長はない。 」. ・創造することのできる人間. ・ 「生徒にとっての学校生活の充実とは、わかる. ・個性をつくりあげていく人間 ・共に高まろうとする人間 ・広く豊かな心をもつ人間. 授業と活気溢れる生徒会活動にある。 」 ・ 「保護者の理解と協力、そして成長なくして、 生徒の成長はない。 」 ・ 「連携なくして、本校の存在意義はない。 」. 77.

(9) 辻 川 智 宏. ⑵ 教育系大学の附属学校園としての基本的役割と使命 ・大学の教育研究への協力 ・教育実習の実施 ・国の拠点校として先導的・実験的な教育・研究の推進 ・地域のモデル校として教育・研究の推進 ・小中一貫(連携)、義務教育9年間のあり方の検討 ⑶ 生徒・保護者・地域・教員の実態 ・生徒…学習に対する意識は高いが、結果(テストの点数)に関心も高い。この数年間で、 「各教 科のもつ本質的な楽しさ」に興味をもつ生徒が減少している。また、学校生活に充実感 がもてない、心に悩みを抱えている生徒が増加している。 【生徒学校評価、スクールサーベイ、心の健康調査、教育目標に関する調査より】 ・保護者…多くの保護者が協力的であり、子どもの(学校)教育に関心はあるが、依存している数 も1割程度存在する。 【保護者学校評価より】 ・地域…釧路市の東端に位置しており、学校周辺はお年寄りが多く住んでいる。しかし、釧路市 内全域および通学可能な近隣町村まで生徒宅が存在し、地域が無いことが実態ともいえ る。また、国立大学法人および附属学校という性質上、文科省や教育委員会、大学から のニーズに対応しなければならない実態がある。 ・教員…道教委からの派遣人事により本校勤務を命じられている。附属学校のミッションを承知 で赴任していることから、向上心が非常に高い。しかし、通常の業務に加えて教科研究 や実習生の指導、大学との連携などの負担が年々増加しており、心身の疲労が心配であ る。 以上の分析、考察より、本校の「中期ビジョン」を、 【目指す学校像】地域教育の「モデル校」として、道東の中学校における教員の資質・能力の向 上や教育活動の推進に寄与する学校を目指す。 【目指す生徒像】将来的に地域を支える人を育成するため、自ら学ぶ意欲と活力ある生徒を目指 す。 と設定し、具体的な取組として、次の4点を重点とした。 【学校】道教委、大学との連携…学力向上フォーラム開催、出前授業実施など 【学校】他校の中学校教員との教科研究連携 【生徒】活気ある生徒会活動の企画・運営 【生徒】わかる授業の構築…各教科における習得すべき学習内容の理解とともに、思考力・判断 力・表現力の向上。総合的な学習の時間の充実。 特に、教員評価やブレストでの意見による総合的な学習の時間の充実を改善の重点に置く。 紙面 の関係上、編成した教育課程の一端を終末の資料2に掲載した。. 78.

(10) 「内発的学校改善」の取組. 6 研究の成果と課題 ⑴ 成果 ・内発的な学校改善による教育活動、は評価(教員、保護者、生徒ともに)が高い傾向にある。ただ し、即時的な改善の場合は、より意図的・計画的に教員の共通理解を図ることが必要である。 ・ 「自分の意見がこの部分の改善に関わっている」という実感をもたせることは、有効である。具体 例として、教員の学校評価を活用し、次年度の教育課程に反映させるなどは大変有効である。ミド ルリーダーに限らず、学級担任の立場であっても、学校運営に参画する視点をもつことは必要であ る。 ⑵ 課題 ・本研究は、外発的な学校改善を否定するものではない。学校は公教育を行う役割をもつことを踏ま えれば、外発的学校改善との複合的な視点で、実践、検証することが必要である。 ・学校改善の評価は長期的なスパンでの検証も必要であり、限られた時間の中で学校改善を実現する ためには、組織マネジメントの充実等、多様な手立てを講じることが必要である。 註 1)篠原清昭ら(2012) 『学校改善マネジメント』ミネルヴァ書房. 参考文献 北海道教育大学附属釧路中学校(2012) 『附中の教育課程』 北海道教育大学附属釧路中学校(2013) 『附中の教育課程』 小島弘道、熊谷愼之輔,末松裕基(2012) 『学校づくりとスクールミドル』学文社. 文部科学省(2008) 『中学校学習指導要領解説-総則編-』 佐古秀一,宮根修(2011) 『学校における内発的改善力を高めるための組織開発の展開と類型』鳴門教育大学紀要, 26. 佐古秀一,曽余田浩史、武井敦史(2011) 『学校づくりの組織論』学文社. 上山登,松本敏,藤井佐知子(2014) 『教員の自律性と組織性を高める学校改善の在り方』宇都宮大学教育学部教育実 践総合センター紀要、37.. 79.

(11) 辻 川 智 宏. 資料1. 80.

(12) 「内発的学校改善」の取組. 資料2 資料2. 81.

(13) 辻 川 智 宏. 82.

(14)

参照

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