『とりかへばや物語』における「笛」の演奏表現(二〇一六年度卒業論文要旨集)
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(2) 『とりかへばや物語』における「笛」の演奏表現. 『栄花物語』における有国像. 『栄花物語』に六度登場する藤原有国の描かれ方 本研究では、 の特徴を、史実や同僚藤原惟仲・妻橘徳子と比較しつつ探った。. 古典文学研究室 三四七四 遠藤 彰悟. 『とりかへばや物語』の笛については、女君の男性らしい器 量や公的生活の象徴との指摘はあるが、演奏表現の分析はされ. 古典文学研究室 三四三六 板垣 文乃. ていない。よって本研究では、その特徴を探った。. まず、史実通り藤原道隆・道長らの父兼家の家司として惟仲 と共に登場し、「左右の御まなこ」などと両者が称賛されている。. き別る」という他に用例のない複合動詞と「雲居(天上と宮中). 澄ます」「吹きたつ」を用いて笛の上達を表し、「吹き増す」 「吹. ことからも、女君の笛は「すさび」ではない。女君には「吹き. しての心身共に余裕のある様を描く。一方、吉野では吹かない. 「吹き鳴ら また、「吹く」とその複合動詞の使い分けがある。 す」「吹きすさぶ」を男君の演奏に用い、取り替え後の男性と. 総合的に踏まえているのだろう。. 美声を欄柯の故事で表すことからも、 『うつほ』の琴の表現を. 笛に用いており、それらの影響も考えられるが、女君の朗詠の. の例が早い。 「澄みのぼり」は『源氏』や『狭衣物語』などが. 演奏による天地振動や音の上昇表現も、『うつほ』の琴(きん). まず、冒頭で「琴笛の音」の句を用いて主人公の器量を示す。 これは『うつほ物語』の仲忠や『源氏物語』の光君と共通する。. させ、祖父成忠の死に目に会わせないことに繋がっていた。. うにみえる。しかし彼の行動は、伊周に権帥となった恥を自覚. また、有国が大宰府で道隆の嫡男伊周を厚遇し、上洛の際に 助言したのは、一見「人格者」としての有国が描かれているよ. 長賛美のために対照的に描いているのであり、 両者に軽重はない。. るが、 『栄花』は大幅な史実の書き換えを行って道隆批判と道. 六年も待つ。惟仲は「あはれな」有国を描くための人物とされ. の後の官位剥奪は有国が事件に連座したためで、復位復官は道. しかし史実では、道隆は有国を従三位に上げ就任したばかり の頭の弁を解任したが、積善寺供養の願文を作らせている。そ. れ、夫の箔付けになっている。惟仲は、時に左大弁だった。. た。妻徳子は、下向の記事で「帝の御乳母の橘三位」と紹介さ. 有国は参議、さらに大宰大弐に任命され、世人が人事を評価し. 兼家死後、関白道隆に疎まれて除名され、惟仲は厚遇された ので、道兼・道長が同情し世人が道隆を非難した。道隆死後、. に届く」という表現により、男性らしさを象徴する笛と別れる. 女君の笛の演奏の記述は六か所。うち一か所は男女が入れ替 わる場面で、女君と男君が「琴笛」を教え合う。. 切実さを描いている。. . 有国が「絶賛」され、肯定的に描かれているとは言えない。. 隆生前だった。道兼死後すぐに道長に申文を奉ったが任参議は. 表現に注目すると、笛の重みや役割がより明確になった。. - 73 -.
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