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ICPの実践的意義を考察するための手がかりについて : 泉弘志・李潔・梁炫玉著, 「購買力平価と産業連関表の多国間比較 日中韓2000年を対象に」におけるICP購買力平価計算式の利用形態を素材として

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全文

(1)

て : 泉弘志・李潔・梁?玉著, 「購買力平価と産業

連関表の多国間比較 日中韓2000年を対象に」にお

けるICP購買力平価計算式の利用形態を素材として

著者

松川 太一郎

雑誌名

経済学論集

69

ページ

1-16

別言語のタイトル

Some theoretical thoughts on the content of

ICP data

(2)

一泉弘志・李潔・梁焙玉著,「購買力平価と産業連関表の多国間比較 口中韓2000年を対象に」におけるICP購買力平価計算式の利用形態を素材として一

松 川 太一郎

1.はじめに 泉弘志氏・李潔氏・梁舷玉氏による論 文「購買力平価と産業連関表の多国間比較 日 中韓2000年を対象に」1(以下「本論文」と呼称) は,統計加_l二の形式としてInternationalCom− parison Programme(諸国際機関によるGDPの 国際比較プログラム,以下ICPと略称)で用い られている購買力平価の計算法を利用した国際 的な不変価格表示法を用いるご,日中韓三カ国 の産業連関表の比較分析である。この統計加工 においてはICPの方法が,本来とは異なる目 的と形態で適用されているため,臼的不適合性 も里している。それは,ICPの方法の理論的・ 技術的な適用限界を反映しているので,それを 分析することは「本論文」における研究目的と 統計方法との適合性の検討に止まらず,ICPの 実践におけるGDP国際比較の理論的・実践的 な意義を把握するための好個の手がかりをも提 供する。このような手がかりを導出することが, 本稿の課題である。考察手順として,「本論文」 の研究目的に対する統計加工法の適合性という 観点で問題を検討し,それを踏まえて,ICPの 統計実践上の意義を考察するための手がかりを 摘出することにする。 2.「本論文」の概要 まず,「本論文」の統計利用法研究上の貢献 を押さえておこう。それは,産品の生産に必要 な全労働量に比例する理論的な価格を推計し, それからの市場価格こうの乗離を認識して,これ ら二種類の価格を国際比較上の不変価格として 導き出した産出額の間にある異なりについて分 析を試みたことにある。1 採用されている統計加工の方法の概要は次の とおりである。産業別産出量を国際比較上の不 変価格で表示するために国際平均価格を計算す る。それは後述するように理論的な基礎付けが あり,かつ,比較における形式的要件としての 」泉・李・梁[2007]。 ご「本論文」は冒頭で「生産性やエネルギー効率等技術水準の国際比較を全産業について産業別に行なおうと すれば同一形式・同一通貨単位・軒一価格で表示された産業連関表が必要になる。」(p.3)と述べている。そ の根拠は「1円の表わす諸商品の数量を同じにする,つまり同じ価格水準で表示されている産業連関表でな ければ生産性やエネルギー効率等の国際比較は正確に行われない。」(p.4)ということである。そのための統 計方法上の手段として「同一一一〟・通貨単位にすると同時に同一一価格水準にする換算比率が購買力平価である。」 (p.4)としている。なお,「同一価格で表示」とは,国際的な不変価格表示と同義にとっても差し支えない。 i「本論文」は「現実価格」という言葉を用いている。これは,産業連関表の表示価格が生産者価格であるか らであろう。 】「本論文」,PP.13、14。 −1−

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行列整合性,推移性,基準国不変性を満足す る∴ものである。計算の手順として,まず,各 国の全産業部門に渡って,それぞれの産品につ いて生産に直接・間接に要する全労働量ならび に市場価格からなる二種類の基礎的な体系的デー タを作成する。そのための方法は次の段落で述 べられるように,産業連関分析法とICPの方 法が利用される。これにより得られた両体系ご とに,その構成データが相対的関係において捉 えられる。こうして相対的に捉えられた二種類 の各国の基礎的体系的データの各々について3 カ国の平均が計算される。次に,この国際的平 均的な相対的に捉えられたままの体系的データ に対して絶対的な価格水準が,基準国の市場価 格表示総産出額をアンカーとして決定される。 全労働量に比例する理論的な国際平均的不変価 格を計算するのが「本論文」の理論的規定に基 づく「国際平均全労働法」である。これにより 計算される国際比較用不変価格は「国際仝労働 価格」,その表示単位は「労働国際円」と呼ば れている。もう一つの市場価格に基づく国際平 均的不変価格の計算方法がICPで採用されて いるGK法であり,それにより計算される国際 平均的不変価格が「国際価格」である。 「国際平均仝労働法」の基礎的な体系的デー タの作成にあたり,まず,各国の各産業の産品 の生産に要する仝労働量を推計するために産業 連関分析法が用いられる。それにより得られた 各国の産品の通貨一単位額あたり物量の生産に 要する仝労働量は,基準国通貨一単位額あたり 物量の仝労働量に変換されて,3カ国の平均値 が計算される。この変換のための換算比率とし て,ICPの購買力平価計算法の一つであるEKS 法を産業部門別に適用した購買力平価が用いら れる。また,この仝労働量の3カ国平均計算に おけるウェイトとして各国の産業部門別生産量 データが用いられるが,それは各産業部門の生 産額を上述の購買力平価で除して導き出される 不変価格表示額である。他方,「国際価格」の 計算に用いられる市場価格の基礎的体系的デー タとして上述の購買力平価が用いられ,これに ょり各国の産業別産出額を換算した値が国際平 均的不変価格を計算する以前の基準国価格によ る不変価格表示額として用いられる。これにつ いては,4−1節で改めて見ることにする。

3.「本論文」の統計利用の特殊性

「本論文」の研究目的により,その統計利用 が帯びる特殊性を確認しておこう。まず,購買 力平価の概念が通常とは異なっている。「本論 文」では,各国通貨表示の産出額を不変価格表 示するための換算比率全般を「購買力平価」と 呼んでいる。これらの換算比率は,むしろ,国 際不変価格表示デフレーターと称するのがその 本質をより適切に表す。理由は二つある。 理由の第一は概念上の問題である。通常,購 買力平価の概念は次のように理解される。「商 品バスケット(選ばれた商品が入った買物かご) の国外の値段と日本の値段を比較して求めた外 国通貨の価値。」hこれに照らしてみると,各国 通貨表示の産出総額を「国際全労働価格」で不 行列整合性は,購買力平価による換算値の集計関係における形式的整合性である。次節で詳しく見ることに する。推移性は,フィッシャーの指数テスト理論における循環テストを満たすことに相当する。基準国不変 性は,基準国の変更にかかわらず,比較結果の相対的関係が一定していることである。 伊東光晴編[2004],項目0749。

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変価格表示して「労働国際円」総額に換算する 「購買力平価」において,それを構成する「国 際全労働価格」は市場価格によって乗離される ところの理論的に規定された労働量比例的な産 業部門別価格であるから,買い物かごの値段を 表すものではない。また,前節で見た産業部門 別生産額と「全労働量」の換算比率として,な らびに,市場価格の基礎的体系的データとして 過日ほれる購買力平価も,それを構成する価格 が産業連関表の表示価格に対応すべく生産者価 格であるため,同様の帰結に到る。 理由の第二は,「購買力平価」計算の論理構 成である。ICPの実践における購買力平価では, GK法とEKS法の併用に見られるように,比較 されるGDPを行列整合性の要件下で国際的不 変価格表示することよりも,その物価水準を国 際的に平準化して比較することが優先されてい る。丁 これとは逆に,「本論文」は,産出額を理 論的な意味を持つ不変価格で表示することが分 析上重要であり,さらに不変価格表示額の集計 関係における形式的整合性の実現に従属した 「購買力平価」の計算形式(後述のインプリシッ ト・デフレーター)の採用が伴う。 上記の第二にかかわる統計加工の技術的な構 成を見ていこう。「本論文」は個別商品レベル に至る不変価格表示を理想型とする。ト そのた めに,表示価格の換算比率としてEKS法によ る産業部門別「購買力平価」が用いられる。こ れによる換算によって(主産業部門別生産量の不 変価格表示額が得られたとされる。さらに①の 全産業に渡る総計と,②本来の価格で表示され ている産品の全産業産出総額を(卦この総額に対 応する「購買力平価」によっで①換算した総額 の「実質値」とが等しくなること,つまり,行 列整合性が要件に加えられる。それを満たすた めに,②の本来価格表示の全産業産出総額を 耳の部門別不変価格表示額の全産業総計で除し て,こ勤こ示す全産業産出総額に対応する「購買 力平価」を逆算する,いわゆる,インプリシッ ト・デフレーターの形式が必然とされる」論理 的には,不変価格表示が第 一義であり,ICl〕の 意味での購買力平価の計算という意義が後景に 退いている。これは,産業連関表をその形式的 枠組みを保持して国際比較分析するというl川勺 に対応するためである。 さて,不変価格表示額は,・基準同の価格体 系があらゆる国の組み合わせの比較において固 定的に採用されている限iH佐移住を満たすけれ ども,基準国不変性を満たさない。.後者をも満 たすように国際平均的不変価格表示法が導入さ れる。その計算法が「国際平均全労働法」と GK法である。ただし,これらの匝=賢平均計算 は,単に形式的要件を満足させる手段ではなく, 後述するような理論的な基礎があり,一一定の意 味を伴っている。とは言え,計算の技術的構成 を見ると,「国際平均仝労働法」はインプリシッ ト・デフレーターの形式により,不変価格表示 が論理的に第一義であることに変わりはない。 これに対してGK法は,不変価格表示と購買力 平価の計算との間の一義性と二義性との問題に ついては中立的である。購買力平価がインプリ シット・デフレーターとして二次的に計算され るのではなく,国際平均的不変価格と相互依存 関係において計算されるため,それとの−・次的・ T EKS法は行列整合性を満たさない。 ト「本論文」p.4。産業連関表による生産性やエネルギー効率等の国際比較に,産業連関表を「同一価格で衣示」 することを要件としている。 −3−

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二次的の関係が存在しないからである。それゆ えに,GDPの国際平均的不変価格表示の方法 のみならず,国際的にGDPレベルでの物価水 準を平準化するための方法という両義性を持ち, EKS法と二者択一一一一性がある。この点で,「本論 文」の「国際平均仝労働法」と論理的な性格を 異にする。 以卜の二つの理由から,「本論文」の特殊な 目的に対応した「購買力平価」は,国際不変価 格表示デフレーターとして概念規定されるのが 適当と思われる。 次に,「本論文」における統計利用の全体と 理論的基礎との対応関係を見ると,研究視角が, 前節で「本論文」の統計利用法上の貢献として 述べた,二種類の不変価格で表示された産業連 関衣相互の比較分析よりも,産業連関表の不変 価格表示法に傾斜していることが浮彫りになる。 それは次の理由による。「本論文」は,不変価 格である「国際全労働価格」の計算の理論的根 拠として,次のように述べている。「仝労働量 をウェイトにして統合産業産出量を比較すると いう方法は,いかなる場合でも生産の主体は労 働である,という生産というものの本質に適合 した方法である。半 ここでの生産の本質規定は, 研究視角を産業連関表の国際比較のための不変 価格表示法に止まらずに,「国際仝労働価格」 ならびに市場価格10の二種類の不変価格で表示 された産業連関表の国際比較結果の乗離を分析 することにまで展開する時,理論的基礎として 十分ではないからである。以下,これについて 見ていく。 「本論文」は上記のように規定した生産にお ける全労働量の被規定的な関係について,次の ように述べている。「全労働量は物量と労働係 数,中間投入係数,固定資本減耗係数という生 産技術だけによって決定され,賃率,利潤率等 の分配関係には影響されない。労働係数,中間 投入係数,固定資本減耗係数は生産があれば必 ず存在するものであり,賃率,利潤率等が特定 の経済制度(資本主義経済等)のもとでのみ存 在するものであるのとは異なる。」1】すなわち, 「生産があれば必ず」「労働係数,中開投入係数, 固定資本減耗係数という生産技術」が存在し, これと「物量」「だけによって」「全労働量は」 「決定される。」対して「仝労働量は」「特定の 経済制度のもとでのみ存在する」「賃率,利潤 率等の分配関係には影響されない。」というこ とである。よって,「全労働量をウエイトにし て統合産業産出量を比較するという方法は,い かなる場合でも生産の主体は労働である,とい う生産というものの本質に適合した方法である。」 となるのであろう。しかし,引用文にある生産 の本質規定は,統計利用が不変価格表示から展 開して「国際全労働価格」ならびに市場価格12 で不変価格表示された二種類の産業連関表の国 際比較結果の乗離を分析することにまで進むと, 理論的基礎として十分でない。なぜなら,経済 活動としての生産は,生産の超歴史的側面(ま さに労働と生産技術を要素とした生産力側面) と歴史的側面(利潤率を指標とした資本による U「本論文」,P.11。 川ここでの市場価格は,基準国の価格データに基づくものであって,GK法による国際価格ではない。脚注2で 述べたように,「本論文」が周いているのは生産者価格であり,当該の分析箇所では「現実価格」という言葉 で表現されている。 11「本論文」,P.11。 1ごここでの市場価格についても,脚注7と同様である。

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社会的分業の編成と,その下での賃労働という 生産関係)の総体である。だからこそ,「本論 文」の貢献として述べた全労働量比例的な理論 的価格表示の産業連関表の比較結果と,それか らの市場価格表示による比較結果の乗離の分析 に,事物論理に即した意味が与えられるからで ある。従って,「本論文」の統計利用全体を見 ると,資本制生産の歴史的側面をも含めた生産 の本質規定を行うことの方が,理論的基礎とし てより適切であると思われる。それは,資本制 生産の枠外にある無償労働が分析対象からはず されていることから,なおさらの感がある。以 上のように,「本論文」の理論的基礎が,産業 連関表の国際比較において「国際全労働価格」 表示結果からの市場価格表示結果の尭離を分析 することよりも不変価格表示法に直結している 点に,後者への研究視角の傾斜が見て取れる。 こうした研究視角の不変価格表示法への傾斜 をもたらす理論的契機は,「本論文」の生産の 捉え方が,生産における仝労働量の被規定的な 関係についての〔注〕15)の補足説明「使用し ている産業連関表が物量単位であればもちろん, 金額単位の表でも,産出物量あたりの仝労働量 は,価格が変化しても技術が変化しなければ (金額単位の表の場合労働係数,中間投入係数, 固定資本減耗係数の数値は変化するが,それが表 している技術が変化しなければ)変化しない。」】・− から読み取れるように,生産の技術的関連を捉 える産業連関分析モデルの論理に基づくことに よると思われる。さらに,ここでは「技術が変 化しなければ」と前提しているが,技術変化の 要因には資本による賃労働の機械による置き換 えのように経済的生産の制度的側面も含まれる のだから,それを抜きにした前提条件は,経済 的生産からの歴史的側面の捨象をいっそう強く 意識させる。このような産業連関分析モデルの 論理の重視が,「本論文」の研究視角を産品の 不変価格表示法に傾斜させていると言えよう。 4.「本論文」の研究視角と統計加工の適合性 前節では「本論文」の統計利用の特殊性を見 てきた。以下では,「本論文」の研究視角に対 する統計加工法の不適合性を理論的に分析する ことにする。 4−1.「数量」の意味と「本論文」の統計利 用の意図との適合性 「本論文」で不変価格表示される数量的デー タを,各種商品銘柄について日常的に感覚して いる具体的な個々の単位(「ユニット」)を計数 して求められる数量として解釈するのは十分で はない。図1に沿って説明する。ここで用語上 の混乱を避けるために注意を喚起しておく。 「本論文」において「数量恥」を導き出すため に用いられた統計加工法と,その結果が持つ意 味は次のとおりである。「数量恥は…(中略)… 日本を基準国にする場合各国産業連関表の国内 生産額(及び輸入数量)を第1表のEKS法の 欄の購買力平価で円表示に変換した値となる。」 (図1−①)。1−なお,「本論文」の「購買力平価」 は産業部門別にEKS法で計算されたものであ るが,問題を原理的に示すために図1−①に示 すように単一一一・銘柄の価格比率として簡単化する。 こうして得られた換算額に次のようにして数量 1「本論文」,p.15。 =「本論文」,PP.9\10。引用中の「国内生産額」は,図1では⑤・のV(元)に相当する。それは,これ以l二組分割 されないので,EKS法による行列整合性の抵触は問題とならない。 −5−

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禁三言芸完結需品「需品慧誌:′し→V(几)−p(几//個)×q(個)\ ▲ ▲ E書聖三三警禦二三∵誓讐空監禁  ⑤ 数敬的成分の閑係式 商品の価格化 部門の購買り伴価1 予定讐禦警警豊富誓琶諸富言し.それが各国通貨いくらで表示 されているかということで表わす 1ことにする_(本論文p鋸 Jブリ = ▼ p(化//個) p(Frレ/個) ∴、 ; ′購買ノ月乙価J l ¶−−←一一,一一一一一一   一ノ \ \ / ④クリX q・「= 寸  土//′ p(′亡/仰 l)(円/個) ト数竜恥は−同じく基準即)通 1単位で表小されている数量を単 数敏とし,各国の産業連関表の 産業の国内生産額数量(及び輸人 数農)がこの肘位数量の何倍であ るかということで表示することに する _(本論文p9) 日常感覚している商品単位1個 当たりの価格をplljとする一 二の商品の1円額分に相当する 数瞳を教皇計測の単位として定 義しl自二すと,日常的な単位によ り計量された数最は,P倍され ることになるっi 叫二 q(個)×p(「レ/個) p(じ//個)×q(佃) \・(/亡) ︶ 個 / p X 個 q 「これは日本を基準【卦こする場 合各同産業連関表の回内生確執 (及び輸入数最)を第1表のEKS 法の欄の購買力平価で円表不に 変換した値となる」(本論文 pp.9∼10) p(几/個) Ⅴ(元):− p(円/個) 二(p(′亡/個)×q(個)) = q(個)× p 州/個) 一 寸り 図1価額と「購買力平価」と「数量」の関係 的な解釈が施されている。「数量恥は,同じく 基準国の通貨1単位で表示されている数量を単 位数量とし,各国の産業連関表の国内生産額数 量(及び輸入数量)がこの単位数量の何倍であ るかということで表示することにする。」15。こ の解釈に伴う操作を図1−②疋示す。この操作 を問題にするのではない。この「数量恥」は 対応する価格データ釣に「購買力平価」が採 用されているのでlb(図1−③),両者の積は通 常の意味での価格と数量の積としての価額に還 元される(図1−④,⑤)。この方式はICPで も採用されているやり方である。17問題は,「本 論文」の意味する「数量恥」を素直に本来の 不変価格表示額として見た時(図1−①)に, それを構成する数量的成分である「q(個)」の 内容である。以下,これを「本論文」の「数量 恥」と区別して「数量」と表記する。現実の 産業別産出額(図1−①,⑤のV(元))は,品 p(元/個) p 押i/個) ノ 質上のバリエーションを伴う商品諸銘柄から構 成されているが,他方で,それに一一定品質の銘 柄商品の価格比である「購買力平価」を換算 比率として用いている(図1−①の最上式), あるいは,価格データとして適用している(図 1−④の最上式)。こうした両者の間の銘柄構 成の不対応は,後に考察するように,産業部門 の産出額を構成する「数量」に商品のバリエー ション間にある品質差を含ませることになる。 これにかかわる問題は,「本論文」の「数量恥」 にも同様に該当する。なぜなら,「数量恥」は 図1−②に見られるように「数量」の倍数形式 だからである。したがって,ここでは「数量」 の形態で考察を進めることにしよう。 「本論文」の方法が持つ意味は,個々の商品 のすべてをそれぞれに対応する不変価格で表示 して集計値を得ることを理想型と考えるなら, 現存する商品各種の価格を完全に網羅する資料 ト「本論丈」,P.9こ、 い「本論文上 p.9。 1㌻技術的説明ついては,松川[1997],Pp.225、229を参照されたい。

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を求めるのが無理であるという基礎資料の制約 性に対して理想型の近似値を求めるという,代 用的・間接的な接近法に位置付けられるに過ぎ ないように思われる。しかし,この方法はICP でも採用されているから,「本論文」の不変価 格表示法に傾斜した研究視角の下での合理性以 外に,何らかの普遍的な意味を持つはずである。 それはいったい何であろうか。 上記の理想型自体は,商品の様態と照らし合 わせるとナンセンスな場合がある。たとえば, 「本論文」の産業連関表の第15部門「輸送機械・ 機械設備修理」には,日本の自動二輪車の場合 いわゆるレーサーレプリカと呼ばれるカテゴリー の生産量が含まれているはずである。これらは 国内4メーカー(カワサキ,ホンダ,スズキ, ヤマハ)の主力商品の一一種であるが,仕様は競 技用車両に準ずるものである。対して中国・韓 国はこの種の商品の生産能力を持たない。川対 応商品が比較対象国においてそもそも生産され えない結果,基礎資料が存在しえないのである。 このタイプの商品の生産量を中国もしくは韓国 の価格で不変価格表示しようとしても不可能で ある。そのため,このような商品の様態に適合 して国際比較データを把握するための基礎理論 と実践的方法が積極的に要請される。これに応 えているのがICPならびに「本論文」が用い た購買力平価換算法である。この内容について, 以下で考えてみよう。そこから,基礎資料の制 約性により間接的・代用的とも思えた方法は, それ自体で積極的な実践的意義と理論的な基礎 を併せ持つことが見出せよう。 問題のケースでは,価額を購買力平価で割算 して得た換算値を数量的データとする方法は, 商品の様態に対して,形式上明らかに実践的適 合性を持つ。個別商品の価格を逐次不変価格に 変換する必要は無く,レーサーレプリカの不変 価格表示に見られた問題を回避できるからであ る。理論的基礎については,経済統計論の教科 書に標準的な理解がある。「生産指数のいま1 つの問題は,『数量』をどのように把握するか である。物価調査の場合には,銘柄を指定して 同一品質のものの比較が可能であるが,生産量 の場合には各種の品質を込みにした『靴下○○ ダース』という形でしか調査できない。しかし, そこに含まれる品質は時点間では一様ではない。 概して,時間の経過にしたがって平均的な質は 向上し,それにともなって1個当りの平均価格 も上昇することが多い。注意しなくてはいけな いのは,このような平均価格の上昇は,同一銘 柄の価格が2時点間で同一一であっても発生する ということである。(・‥中略…)金額の2時点 間での変化は,(…中略…)純粋な『価格変化』 (同一一一銘柄比較による価格変化),純粋な『数量 変化』と平均品質の変化に分解できるはずであ る。物価指数は純粋の物価変動のみをつかまえ ているから,金額指数を物価指数で割ることに よって求められる『実質額』には,数量の変化 とともに品質の変化を含んでいる。」19 ここで, 「時点」を「国」に,そして,「物価指数」を 「購買力平価」に読み替えたら,国際比較にも 妥当する理論的基礎が得られる。 以上の理論的基礎により,実際には不変価格 ート筆者は権威ある自動二輪車雑誌『ライダースクラブ』の20年以上に渡る愛読者でもあるが,その記事で同産 レーサーレプリカに競合する中国・韓国製品が国際見本市に出品されたという紹介があった記憶はない。そ の種の商品を製造しうる日本以外の国はイタリアにすぎない。 lU溝「1[1985],PP.72、73。 ー7−

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表示額である「数量恥」において,その数量 的成分である「数量」は日常的に感覚している 個々の商品ユニットを計数単位とした物量では なく,品質差も含む。これに関して原理的具体 的な理解を得るために,引き続き1産業部門に 関する「購買力平価」が単一一の銘柄商品の価格 比率により計算されているという単純なケース を考えよう。この場合「数量恥」は部門別の 生産額を「購買力平価」で割ることにより導き 出されるが(図1−①),これを素直に不変価 格表示額として見た時の数量的成分である「数 量」(図1−①の「q(個)」)は単なる銘柄商品 の数量ではない。同一部門内には当然品質差を 伴う商品のバリエーションが存在するから,そ れとの品質差も銘柄商品の1ユニットを計測単 位とした数量で含まれている。たとえば,先の 自動二輪車を例にすると,生産額がレーサーレ プリカ1台150万円+スクーター1台20万円で あり,「購買力平価」の算定基礎となる銘柄商品 がスクーターであるなら,「数量」は(150万円 +20万円)÷20万円=8.5台である。これからレー サーレプリカとスクーターの合計2台という純 粋な数量を差し引くと6.5台という値が得られ るが,これがスクーター1台を単位として表さ れたレーサーレプリカの品質差である。 上記のようにして「数量」が品質差を含むこ とは,「本論文」における数量の不変価格表示 という目的に対して,下記(1)、(3)の問題をも たらす。 (1)上記の自動二輪車の例で日韓二国間比 較を考えると,品質差を含む「数量」8.5に韓 国のスクーターの価格を乗じて不変価格表示す ることになる。ここでは,日本国内での品質差 6.5が韓国でも妥当であると仮定されている。 しかし,このような仮定は妥当であろうか。も しも,韓国でも日本産と同スペックのレーサー レプリカが生産されてそれなりの台数で取引さ れているとして,その価格とスクーターの価格 との差で表される品質差が日本と同様に6.5で あるとは限らない。20であるかもしれない。こ の場合に,同一スペックのスクーターのみの 「購買力平価」で日本のレーサーレプリカの生産 額をウォン価格表示に換算すると,生産台数の 数量比較としてみると,韓国のレーサーレプリ カと比較して過小評価に至る。20産品の数量比 較が目的なら,自動二輪車部門の「購買力平価」 を計算するために両タイプの自動二輪車の価格 を用いるか,部門を両タイプについて細分する か,いずれかの処置が必要であろう。この問題 は,自動二輪車に限らず,他の商品一般につい 単純な仮設例で考えよう。円本ではスクーター1台が20万円,レーサーレプリカ1台が150万円であ1㌦それ ぞれ1台生産したとする。韓国ではスクーター1台が100万ウォン,レーサーレプリカ1台が2100万ウォンで あり,同じくそれぞれ1台生産したとする。「購買力平価」がスクーターの価格だけで計算されるとき,(20万 Il廿150別丁目 ×(100万ウォン÷20力円)=850万ウォンと換算される。しかし,韓国では台数は同じなのに (100万ウォン+2100万ウォン)=2200万ウォンである。 この「数量」と台数の尭離の問題は,「数量」について見ても,「本論文」の「数量恥」について見ても全 く同じことであることを確認しておく。H本の生産額を換算するとき,(20万円/台+150万円/台)×(100 叩 当 方 万ウォン/台÷20万円/台)=8.5台×100万ウォン/台=850万ウォン。この式で,8.5台が「数量ヴ」に和 し,8.5台×100万ウォン/台=850万ウォンが「本論文」の「数量的」に相当する。韓国の生産額は(100 ウォン+2100万ウォン)=(100万ウォン+2100万ウォン)÷100万ウォン/台×100万ウォン/台=22台× 10n万ウォン/台=2200万ウォンとなる。この式で22台が「数量ヴ」に相当し,2200万ウォンが「本論文」の 「数量裾」に相当するCどちらの場合でも・同じ比例関係で台数との乗離を示すロこれは,先に指摘したよ うに「数量恥」が「数軸」の倍数形式であるから当然である。

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ても品質差を伴うバリエーション銘柄の間で同 株に該当するであろう。この間題は原理的に見 て,「本論文」の研究に限らず,購買力平価を 用いた換算値の比較一般に該当する。これに対 して,部門別購買力平価の計算にEKS法を採 用することは,一定の限界の下で合理性を持つ のであるが,それについては適用限界外での議 論と併せて,購買力平価計算式と事物論理との 対応に関する問題点として4−2の(1)−2節 で触れることにする。 (2)「本論文」の著者達は別論文で「本論 文」の基礎データの公表も行っているが21,そ れによると産業連関表の第15部門「輸送機械・ 機械設備修理」に関する「購買力平価」の基礎 データには,自動二輪車の価格比率がない。こ の価格比率が自動車のそれによって代表されて いないならば,次の間題が生じる。まず,(1) と同様の問題が生じる。なぜなら,(1)と同 じ論理により,この部門の「数量」は,自動車 に対する自動二輪車の品質差を自動車の一一台を 単位として含むことになるからである。さらに, 事物のあり方からの乗離という問題が加わる。 すなわち,使用価値の全く異なる産品を単位と して品質差を計算することの意味である。これ らの問題に対して,産品の数量比較が目的なら, 部門を細分するか,この部門の購買力平価を計 算するのに自動二輪車の価格を用いるか,いず れかの処置が必要であろう。 (3)「国際仝労働価格」の計算基礎となる 「本論文」の(4)式22では,「価格1単位で表され る物量当り仝労働量」に「数量恥」をウェイ トとした加重算術平均を用いている。ここでも, 「数量」において,品質差が数量差として表さ れているため,次のような問題がある。ある国 内ではある産業部門の「数量」において,比較 的品質の高いA商品と当該部門の「購買力平価」 計算の銘柄とされたB商品に関して,A商品の 品質差がB商品の1個(1ユニット)を基準と した3個:1個の関係で表されているとする。 同時に同部門産品の単位額量あたり仝労働量が 購買力平価と同様にB商品について計算されて いるとする。A商品の高品質性の生産に必要な 全労働量のB商品に対する差が,品質差と比例 して3:1であるなら,(4)式の平均計算は意 味がある。しかし,A商品の仝労働量が品質差 とは比例せず,逓減的にしか増加しない場合は, 品質差を持つA商品の生産に必要な仝労働量が 過大評価されて国際平均の計算に入り込む。た だし,「本論文」では,「価格1単位で表される 物量当り全労働量」が産業連関表の構成部門に 関して計算されて部門平均値としての性格を持 つため,このような誤差が相殺される可能性も ある。詳細な検討が望まれるが,そのためには, 各国各部門の生産の実情に精通しておく必要が ある。 JI泉弘志・李潔・梁焙玉・金満浩・任文・小川雅弘[2007]。 JJ「本論文」p・12。TJ語句 r握,第確業部門産品の「国際平均全労働量」。項よ科剛二おける第濾業部門産品の「価格1酎位で表さ れる物量、Llり全労働量」(ただし基準国をH本としているので,中国と韓国については産業別EKS法「購買力 平価」により1円分に相当する物量当りの「全労働量」に換算されている),町は図1で確認したように, 範個における萱翫産業部門産品の「価格1単位で表される物音」を単位とした数量である。 ー9−

(11)

4−2.「購買力平価」計算式と事物論理との 対応 ここでは,「購買力平価」計算式の数理と事 物論理との対応について,(1)なぜ3カ国を 対象とした多数国間比較法が採用されなければ ならないのか,という問題,(2)生産性格差 と「国際仝労働価格」計算における国際平均の 妥当性に関する問題(3),「国際全労働価格」 の計算式の意味が「本論文」の生産の本質規定 と理論的に整合していないこと,という観点か ら問題を考える。 (1)−1まず,「本論文」におけるGK法 の適用形態について考える。「本論文」におけ るGK法の説明は次のとおりである。「GK法 は以下のような架空の状態を頭の中で組み立て, それと現実とを関連させながら考えると分かり やすい。架空の状態というのは,対象にしてい る全ての国(我々の場合日本,中国,韓国)の 市場が一つに統一され,国際通貨(我々の場合 は国際円)を使用して売買が行われ,その場合 の各商品の価格は現実の各国価格の加重算術平 均(ウエイトはその商品に関する各国数量)で あるという状態である。」23これに対して問題に なるのは,「架空の状態を頭の中で組み立て」 たことそれ自体ではなく,日中韓三カ国につい て組み立てたことである。 GK法の国際的な加重平均価格の理論的な解 釈は,商品とサービスの国際的な移動の自由化 により世界市場で一物一価が成立した場合に収 束するであろう理論的価格とすることもできよ う。封その場合,統計加工と事物論理との対応 を考えるなら,昨今の世界経済状況をも考慮に 入れて次のように説明される形態で適用する可 能性もある。すなわち,「GK法は以下のよう な架空の状態を頭の中で組み立て,それと現実 とを関連させながら考えると分かりやすい。架 空の状態というのは,我々が比較対象とする日 本,中国,韓国の三カ国が含まれるアジア諸国 の市場が一つに統一され,国際通貨を使用して 売買が行われ,その場合の各商品の価格は現実 のアジア諸国価格の加重算術平均(ウエイトは その商品に関する各国数量)であるという状態 である。」このように考えてGK法を適用する 方が,より事物の論理に即していないだろうか。 この時には,日中韓三カ国の比較といえども, アジア平均価格を用いることになる。しかし, このような形態でGK法が利用されていない理 由は「本論文」では積極的に述べられていない。 強いて述べるならば,日中韓三カ国の価格デー タに限定して他国の価格データを排除すること によって,三カ国の産業連関表の不変価格表示 による数量比較に対して,それぞれの同の相対 価格の実状から乗雛の程度が低いと考えられる 平均価格が適用されるということであろうか。 とはいえ,このような部分的な国際平均価格は, グローバリゼーションの文脈においては何らか のバイアスを帯びていることが考えられる。あ るいは,その他のアジア諸国のデータ入手の制 約が問題なのであろうか。それとも,三カ国の 比較だから機械的に三カ国のみを対象として適 用した,ということであろうか。同じ問題が, 「本論文」の(4)式による「国際仝労働価格」 の平均計算にも当てはまる。 (1)−2 第3節では,EKS法により計算 ご∼「本論文」p.9。 コ1統計学の教科書には,平均の意味の−▲つとして「均等化運動の収そく点」が挙げられている。大屋・野村・広 田・是永編著[1984],P.123。

(12)

第 1 銘柄 第 2 銘 柄 第 3 銘 柄 日  本 : タ ロl 夕 日2 I l 中  国 ク中 l ク中 3 † 韓 国 ク韓 1 ク韓 2 ! 鴨 3 産業部門別EKS法による日本と中国の「購買力平価」= される購買力平価について,産業部門別の国際 不変価格表示デフレーターを目的とする場合と, 通常の意味での購買力平価に適用される場合と では,異なる概念として取り扱う必要があるこ とを述べた。「本論文」では産業部門別の国際 不変価格表示デフレーターとして用いられてい るから,本節では,この観点から計算式の適用 目的に対する適・不適合性を考察する。通常の 意味での購買力平価としてみた適用限界につい ては,第5節で改めてみることにする。 結論的に言えば,「本論文」の目的に対して, EKS法の数理は適用される価格の相対的な関 係のあり様を条件として,適合性にも不適合性 にも転じるということである。適合性について は4−1−(1)節で注意を喚起しておいたが, 改めて本節で見ていくことにする。 問題を原理的に考えるために,単純化した例 を用いよう。下記の表は,ある産業部門につい て,日本では第1銘柄の価格pHlと第2銘柄 の価格pHZが得られたことを表している。同 様にして,中国では第1銘柄の価格桝】1と第 3銘柄の価格p中3が,また,韓国では三つの )1・

)×(一覧))盲

×(思)吊

銘柄について価格ク韓1,ク韓2,ク韓3が得られた ことを表している。この場合に「本論文」が採 用した産業部門別のEKS法による「購買力平価」 は表の下にある式のようにして計算されよう。25 右辺を変形した式に注目しよう。まず,日中両 国で共通の第1銘柄の価格比が,購買力平価の 基礎データとなっている。次に,日本の第2銘 柄の価格郎2に韓国の銘柄価格の比ク韓3/ク韓2 が乗ぜられて,中国の第3銘柄の価格ク中3に 対する比が計算されている。ここでは,日本の 第2銘柄の価格に韓国の第2・第3銘柄の価格 比を適用して,日本で得られなかった第3銘柄 の価格を推計していることになる。ここで問題 なのは,韓国の第2・第3銘柄の価格比の推計 用データとしての妥当性である。妥当性が認め られるなら,この方法による購買力平価の推計 は意味がある。しかし妥当性を持ち得ないとき は,購買力平価が歪曲される。 以上の問題を考慮すると,たとえば,日中の 購買力平価を計算するのに,推移性と基準国不 変性を犠牲にしてでも,二国間比較が妥当なの か,あるいは,適用地域をアジア諸国に拡張す コ「泉・李・梁・金・任・小川,前掲,P.8を参照すると,用いている単純化した例については,このように示す ことができる。この計算式は,本来のEKS法が次節に示されているようにフィッシャーの理想算式から構成 されている代わりに,二国間で共通な銘柄の価格比を単純幾何平均した指数が用いられる。それは資料の制 約によるのであるが(泉・李・梁・金・任・小川,前掲,PP.4、5),接近値としての意味は持ちうるもので ある。 −11−

(13)

るほうがより有用な情報が得られるのか,それ とも,日中韓の三カ国比較の万が有用な情報も 十分に得られ,かつ,歪曲もないという意味で 最適なのか。この点に関する吟味は必要ではな いのだろうか。 (2)「国際仝労働価格」が計算される産品 であっても,その一単位の含む直接労働量が国 際的平均計算を妥当としないほど異なる場合が ある。理論的にはそのような産品は市場から排 除されるということから,演樺的に,得られた 仝労働量データも国際的な平均計算が妥当と考 えられるだろう。とはいえ,現実にはそのよう な演樺的解釈を可能としない重要な例もないわ けではない。26従って,産品の生産事情につい ての精通が必要である。 (3)「国際仝労働価格」の計算式27は,基準 国の全産業部門の産出総額を,同じ総生産量の 生産に要する国際平均仝労働量の総計で際して, 後者の一単位当たり平均でみた絶対的な価格水 準を計算している。したがって,この価格の絶 対水準は労働量のみならずアンカー機能として 市場価格にも依存している。市場価格は分配関 係も含んだ概念であるから,「国際仝労働価格」 の概念が「本論文」の生産の本質規定にもかか わらず,制度的なものを含まざるを得なくなっ ている。もちろん,「国際全労働価格」を乗じ て計算された不変価格表示生産額の相互を国際 比較するときには,絶対的な価格水準を決定す る係数部分が共通係数なので約分されて,本来 の労働量規定の関係に還元されるから,市場価 格依存の問題は帳消しにされる。とはいえ, 「本論文」は「日中韓3ヶ国に関する推計結果 は,各国の産業別現実価格の全労働に比例する価 格からの禿離の状況に応じて両者の推計結果に かなり大きな相違が生まれることを示した。十指 と述べており,「現実価格」表示額と「全労働 価格」表示額との比較を行っているから,全体 的な分析の枠組みにおいては「国際全労働価格」 の絶対価格水準の問題は避けることはできない。 5.EKS法の適用地域について 本節では,これまでの考察を展開して,4− 2節(1)−2で触れた,EKS法の通常の意味 ご・−たとえば,日中韓3カ国比較には該当しないが,ELについては次のような事例が見受けられる。『モーター マガジン』誌2008年2月弓一の掲載記事「2008欧州車大予想」には,ドイツのメジャーブランド車であるフォ ルクスワーゲン社のゴルフについて,次の記述がある。ト ・新会長のDr.ヴインターコルンは,これ(引 用者注;早くても2009年末ないしは10年に予定されていた現行ゴルフのフルモデルチェンジのこと。)を2年 も早めたのである。理由は簡単,現行ゴルフの生産はコストがかかり過ぎなのである。具体的にいえば,1 台当たりの生産にかかる時間が長すぎるのだ。スペインや英国で作っている口産車の2倍はかかっているよう だ。コストセーブと利益率の向上を目指す新会長としては,主力車種の見直しは急務だったのだ。」(『モーター マガジン』2008年2月恥139)このような商品の生産が生産者の計画よりも早く市場から撤退されるという 事態は理論と整合しているが,それでも,まだこのゴルフは硯行車種として販売されているのである。 ご7「本論文」p.12。冗㌔丁目 ∑ク仏ヴ′占 J=/ 弓 rJ=ノ.…mノ 昌で鵜」 打*は,第慮業部門産品の国際平均全労働量価格。丁握,第慮業部門産品の単位価額量あたり国際平均全労 働量。紬は基準国における第億業部門産品の単位価額貰あたり数量。抑留路は基準剛二おける第成業部門産 品の生産額である。 コト「本論文」,P.14。

(14)

/ / ① EKS比較H/桟準回=H .t t ′/ F取刷/椚【り F恥【ll比種目 多数国間比較の対象となる任意の第a国を 橋渡しとして間接的に計算される基準国と 比較国の購買力平価 Ⅰ五帖≠鮒 蟻川 比較国 三 日・ の単純幾何平均⊃ 1′/k

∴−∴一・・∵∵㍉言∴■∴二一一㌍.「

基準国」に表されているように,EKSの基準 国がそのまま基準国である。また,比較国 は,同じ添え字に表されているように,多 数国間比較の対象である任意の第a国であ る。. 分付のF h汗.較両はフィッシャーの理想算式 を表す。その基準r輔i,添え字の「第a国′‘ 比較同」に表されている上うに,1:KSJ)比較 国が基準国とされろ 圭た,比較国は,同 じ添え字に表されているように,多数国間 比較J)対象である任意Ⅴ)第a同である〔 ド・し中州  Flり\州  「紬ト ▲州 一一一一一一− ×        一  ×  一一一一一一一一一一 F山町冊丈+F梱′/Ei本  F馴///「1本 図2 EKS法の計算式 での購買力平価として見た適用限界について考 えてみる。まず本来のEKS法による購買力平 価の計算式を確認しておく(下記の図2の①式 参照)ご。。右辺の小括弧内の大文字Fは,フィッ シャーの理想算式を意味する:10。①式を「本論 文」における日中韓三カ国の場合に適用したの が図2の②式である。②式を変形すると,「本 論文」に示されている式31と類似の形式になる。 ①式は,図2の中の説明文に示すように,多 数国間比較の対象となる任意の第a国を橋渡し ナ▼一「rニ Ⅰご・一1中州二日ノ日本=1 F中/ /日本=Frて付目可 として間接的に計算される,基準同と比較同の 購買力平価の単純幾何平均である。この形式に 対する理論的な解釈を試みることにする。 考察のための素材として,EKS法の基礎と なる二国間の購買力平価Fが図3に示される 値で与えられているとする。これらは現実の価 格とウェイトから計算されたのではなく,全く 仮設的な数字であるが,当面の理論的考察には 十分である。図3の①に示すように,日本円と 中国元との購買力平価が30円/1元であるとし J。たとえば,Eurostat[1996],P.14を参照のこと。 1ハフィッシャー式を用いる意味についての考察は別の機会に譲りたい。本稿では,それによる購買力平価を所 与とする。なお,物価指数論上の議論ではあるが,永井[2006]「第6章 指数算式とテスト理論」によると, フィッシャーの指数テスト理論は,指数により総合的に比較される諸経済量の経済的な性質が指数算式と比 較の意味(=指数の「通約性」)を規定すると考えるカジネッツによって,その規定関係が考慮されていない ため指数算式に形式性をもたらす契機として批判されている。これを論拠として,永井は,フィッシャーの テストに合格する算式の通約性が,指数化される諸経済量の経済的な性質から遊離する問題を指摘している。 (永井[2006]p.93)なお,永井[2006]の内容については,松川[2006]と岩崎[2006]による書評を参照 されたい。 う1「本論文」,P.8。 −13−

(15)

日中の直接計算される購買力平価 ①ド梱ノ/中岡=30円/1元 (0.033…元ノ/円) ②F作木/中国=2細1元 (0.04元′/円) 元安 日中の韓国を介して間接的に計算される購買力両面 ①′−1        ①′__2 F軋司//H本=15ウォンノ′1円      F韓同 L‡憫=180ウォン′′′′1ノ亡

」奄与 「 て

12円−→1元 ト ②′1−1 ウォン高 tl韓巨1日九二10ウォンノIlリ ②′−3 + 20円→1元 円安・元高 (0.005555‥元/1ウォン) J ②′−2    ′い冒】 1柑†=・吊=2()()ウナン ト几 (0.〔()5元′′1ウTン) 図3 EKS法の基礎となる,二国間のみの価格とウェイトで直接計算される購買力平価と・橋渡 し国に介在されて間接的に計算される購買力平価 よう。これは,30円と1元が,二国間で規定さ れた商品バスケットに関して等しい購買力を持 つという意味での交換比率である。次に図3の ①′†1を見よう。ここではまず,円と韓国ウォ ンの購買力平価が15ウォン/1円とする。また, ①′ −2に示すように韓国ウォンと中国元との 購買力平価が180ウォン/1元であるとする。 3国間での完全に自由な財・サービスの移動 を仮定する。①′ −1の場合,日本の産品12円 分を韓国で販売すると12円×15(ウォン/円)= 180ウォンを得る。次にこの180ウォンで韓国の 産品を買って中国で販売すれば,①ノ ー2より 1元を得ることができる。結局,①′ −3に示 すように12円で1元を得ることができることに なる。他方,日中間で直接計算される購買力平 価が①に示す値であれば,30円で1元を得るこ としかできないから,円と元の交換において裁 定取引が行われよう。そのために,まず,韓国 への日本産品の供給が増加するが,日韓の購買 力平価が計算される商品バスケットの範囲で見 るかぎi)韓国がすでに需給均衡しているなら, このバスケットで見て韓国の物価が下がる。そ れは,このバスケットで見る限りで韓国ウォン の購買力の増加を意味する。その結果,・②′ −1 に示すように,日韓購買力平価をウォン高に方 向付ける。次に,この過程で得たウォンで中国 に売るための韓国産品を買い,中国で売る。中 国への韓国産品の供給が増加するが,韓中の購 買力平価のバスケットで見る限りで中国がすで に需給均衡しているなら,このバスケットで見 て中国の物価が下がる。32それは,このバスケッ トで見る限りで中国元の購買力の増加を意味す る。その結果,②′ 一2に示すように,韓中購 買力平価を元高に方向付ける。結局,②′ −3 に示すように20円で1元を得ることができるこ とになる。①′ −3と②′ −3の過程を段階的 に見ると,韓国を介して間接的に計算される日 中購買力平価が円安・元高に方向付けられてい 32購買力平価F韓国/中国の逆数であるカッコ内の比率の分子が・0・005555…から0・005に減少したことに表されて いる。

(16)

る。他方頁)について見ると,中国への日本産品 の供給が減少し,口中の購買力平価が計算され る商品バスケットの範囲で見るかぎり中国がす でに需給均衡していたなら,このバスケットで 見て中国の物価が上がる。33それは,日中の購 買力、円面のバスケットで見る限りで中国元の購 買力の低下を意味する。その結果,②疋示すよ うに,口中二国間で直接計算される日中購買力 、円浦を元安に方向付ける。以上のようにして直 接的な「1中購買力平価と韓国を介した間接的な 口中購買力平価は逆方向に動くが,両者は理論 的にはどこかで均等化すると考えられる。その 均等化運動収束値の指標としてEKS法におけ る幾何平均が機能する。 上記の解釈のもとではEKS法の幾何平均が 適用される国々の範囲が,財とサービスの国際 的移動の実状と照らし合わせてみて,当然妥当 性が問われてこよう。 6.ICPの実践的意義を考察するための手がかり 第4節では,「本論文」の研究目的に対する 統計加工の適合性という観点で問題を検討した。 そこでは①産出額を国際比較するために「購買 力平価」で換算して導き出される「数量」が, 「購買力平価」の基礎データとして価格比率が 計算される銘柄商品1ユニットを計測単位とし た物質的な数量に加えて,同部門に属する他品 目の品質差もその数量の倍数形式で含むため, 集計される部門の範囲によっては物質的な数量 と購買力平価による換算から導き出される「数 量」または「数量恥」との間に乗離が生じる こと,②多数国間比較のための「購買力平価」 の計算が,基礎データである価格比率,また, 産品の単位価額量あたり「全労働量」の国際的 な平均を用いるため,国際比較される諸国グルー プの構成により事物論理に対する適合性もしく は不適合性を示し,対象反映性に影響すること を原理的に指摘した。これらの問題は,ICPの 方法に本来備わっている理論的・技術的な適用 限界が「本論文」における異なる利用形態のも とで露呈したものであって,それを指摘するこ との意義は「本論文」における統計加工目的に 対する適合性を問うことに止まらない。まず ・丑の問題の考察は,「数量」に「品質差」が含 まれるという購買力平価換算値の教科書的普遍 的な基礎理論に対しても,国際的に同等な品質 を持つ各国の銘柄が,国際比較において異なる 数値で比較されるという問題を提起する。次に ②の問題の考察から展開して,第5節ではICP で採用されているEKS法に対してその平均の 数理と適用する地域的範囲との適合関係につい て考察を試みることができたのである。 上記のようにして考察されたICPの方法に 本来備わっている理論的・技術的な適用限界は, ICPの実践的意義を考察するための手がかりと なる。ICPが初期にはGDPをユニバーサルに 比較していたのに,後に地域分散化体制へと移 行してゆく事態について,従来は国際機関によ る運営体制という制度面からの要請が注目され ていた31が,それに加えて統計加工方法の内容 を比較対象地域に備わる事物論理に照らし合わ せて見た適合性という観点からの考察課題が提 起されてくるからである。さらに,ICPが統計 加工を技術的要件とし,かつ運営体制を制度的 要件としていることを考えると,これらの技術 購買力平価F日本/中国の逆数であるカッコ内の比率の分子が,0.033‥・から0.04に増加したことに表されている。 竹内編[1989],P.693参照。 −15−

(17)

的側面と制度的側面との関係を具体的に把握す ること一一SがICPの実践的意義を考察するために 必要に思われるからである。そのための1ステッ プとして,ICPの統計加工法の適用が妥当性を 持つ地域的範囲と地域分散化運営体制との間に 生じる緊張関係が考察の姐上に載せられてこよ っっ

参考文献

泉弘志・李潔・梁柁王[2007]「購貰力平価と産 業連関表の多同朋此較 日・回章2000年を対象に上 『正業連関』\701.15,\0.2し。 泉弘志・李潔・梁眩い金満告作 文・小川 雅弘 [2007]「日中韓2000年産業別購買力・円朗の推計上 『統計研究参考嚢料』\0.96,法政大学日本統計研 究所。 伊東光晴編[2004]『告波 現代経済学事典』。 岩崎俊夫[2006]「書評永井博著『経済体制と指 数・指数算式−エリ・エス・カジネッツの指数理 論と現在一』」,『統計学』第91片,経済統計学会。 大犀祐雪・野村良樹・広田純・是永純弘編著[1984] 『統計学』,産業統計研究社。 竹内啓編集代表[1989]『統計学辞典』,東洋経済 新報社。 永井博[2006]『経済体別と指数弓旨数算式 一エ リ・エス・カジネッツの指数理論と現在−』,梓出 版社。 松川太一一郎[1997]「GDPの国際比較」,武野秀樹・ 金丸暫編著『国民経済計算とその拡張』,勤草書房。 松川太一一郎[2006]「書評永井博著『経済体制と 指数・指数算式−エリ・エス・カジネッツの指数 理論と現在−』」,『熊本学園大学経済論集』第13巻 第1・2合併号,熊本学園大学経済学会。 溝口敏行[1985]『経済統計論 第3版』,東洋経済 新報社。 Eurostat[1996]compari50nlnRea17trmsqtheAggre− gdJg∫すESd尺が㍑損♪rJ994・ ilこのような観点から社会主義体制の物価指数について考察した労作に,永井[2006]がある0

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