教師と児童とが対話をとおして道徳的価値を発見す
る授業デザインの開発(III) : 小学校低学年の
道徳の時間における生命尊重を扱った対概念の対比
型対話デザインの開発
著者
假屋園 昭彦, 馬塲 智也, 小峯 三朗, 京田 憲子
雑誌名
鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要
巻
24
ページ
157-168
別言語のタイトル
Developmental study of lesson design for
discovering moral value through dialogue
between teacher and children (III) :
developmental study of lesson design of
contrasting pair moralistic concept on
respecting for life in moral lesson in the
lower classes at elementary school
BulletinoftheEducationalResearchandDevelopment,FacultyofEducation,KagoshimaUniversity 2015,Vo1.24,157-168
教 師 と児 童 とが 対 話 を と お して 道 徳 的価 値 を 発 見 す る授 業 デ ザ
イ ンの 開発(皿)1
一 小 学 校 低 学 年 の 道 徳 の 時 間 に お け る 生 命 尊 重 を 扱 っ た 対 概 念 の 対 比 型 対 話 デ ザ イ ン
の 開 発 一
假 屋 園
昭
彦[鹿 児島大学教育学部(教 育心理学)]・馬
場
智
也[シ カ ゴ 双 葉 会 日本 人 学 校]2
小
峯
三
朗[さ つ ま 町 立 泊 野 小 学 校]2・京
田
憲
子[鹿 児 島 市 立 田 上 小 学 校]
Developmentalstudyoflessondesignfordiscoveringmoralvaluethroughdialogue
betweenteacherandchildren(皿)
‐Developmentalstudyoflessondesignofcontrastingpairmoralisticconceptonrespectingforlifein morallessoninthelowerclassesatelementaryschool‐ KARIYAZONOAkihiko・BABATomoya・KOMINESaburo・KYODANoriko キ ー ワ ー ド:対 話 、 道 徳 、 授 業 デ ザ イ ン 、 生 命 尊 重 、 小 学 校 低 学 年 問 題 と 目 的 1.本 研 究 の 位 置 づ け 本 研 究 は 、 假 屋 園 ・馬 膓 ・小 峯 ・京 田(2013、 2014)に よ っ て 実 施 さ れ て き た 、 対 話 を とお して 道 徳 的 価 値 を 発 見 す る た め の 授 業 デ ザ イ ン 開 発 の 継 続 研 究 で あ る 。 本 研 究 の こ う し た 性 質 を 受 け 、 こ れ ま で の 研 究 成 果 に も と つ く 本 研 究 の 位 置 づ け に つ い て 整 理 し て お く。 ま ず 、 假 屋 園 ・馬 膓 ・小 峯 ・京 田(2013)の 研 究 は 以 下 の 三 種 類 の 目 的 で 実 施 さ れ た 。 第 一 の 目 的 は 、 これ ま で 小 学 校 高 学 年 で 検 証 さ れ て き た 児 童 同 士 の 対 話 活 動 が 、 低 学 年 の 児 童 に お い て も可 能 か ど うか の 検 証 で あ っ た 。 検 証 授 業 の 結 果 、 低 学 年 の 児 童 は 、 児 童 同 士 の 班 別 対 話 活 動 を 行 う こ とが 可 能 で あ る こ とが 実 証 され た 。 第 二 の 目的 は 、 児 童 同 士 に よ る 班 別 対 話 活 動 時 の 教 師 の 指 導 的 参 加 に お い て 、 教 師 の 中 心 発 話 は 存 在 す る か ど うか の 検 証 で あ っ た 。 こ の 問 題 に つ い て は 、 これ ま で の 研 究 展 開 を 踏 ま え て 述 べ る 必 要 が あ る 。 假 屋 園 は 、 児 童 同 士 の 班 別 対 話 活 動 時 に お け る 教 師 の 指 導 の あ り方 と し て 、 指 導 的 参 加 と い う 方 法 を 提 案 し て き た(假 屋 園 ・永 田 ・中 村 ・丸 野 、 2009;假 屋 園 ・永 里 ・坂 上 、2010;假 屋 園 ・永 里 ・ 坂 上 、2011a;假 屋 園 ・永 里 ・坂 上 、2011b;假 屋 園 ・永 里 ・坂 上 、2012a)。 指 導 的 参 加 と は 、 班 別 対 話 活 動 時 に 教 師 が 各 班 を 巡 回 し 、 児 童 同 士 の 対 話 に教 師 が 積 極 的 に 参 入 し な が ら 、 児 童 の 対 話 展 開 を促 進 さ せ る指 導 方 法 で あ る 。 こ の 指 導 方 法 開 発 の 過 程 で 、 指 導 的 参 加 時 に教 師 が 用 い る 発 話 の 種 類 が 特 定 さ れ た(假 屋 園 ・永 里 ・坂 上 、2010)。 さ ら に こ の 後 の 研 究 に お い て 、 指 導 的 参 加 時 に 教 師 が 用 い る 発 話 の 中 で も 、 特 に 児 童 の 対 話 を 深 化 さ せ る 機 能 が 高 い 中 心 発 話 が 存 在 す る こ とが 明 らか に な っ た(假 屋 園 ・永 里 ・坂 上 、2012b;假 屋 園 ・永 里 ・坂 上 、2013)。 小 学 校 高 学 年 を 対 象 に し た これ ら の 研 究 で は 、 児 童 の 対 話 を 深 化 さ せ る機 能 を もつ 教 師 の 中心 発 話 は 「内 容 へ の 問 いか け」 発 話 で あ っ た 。 「内 容 へ の 問 い か け 」 と は 、 児 童 発 話 の 具 体 的 な 内 容 を尋 ね る 発 話 で あ る 。 假 屋 園 ・馬 場 ・小 峯 ・京 田(2013)で は 、 小 学 校 低 学 年 の 対 話 活 動 に お け る 指 導 的 参 加 時 に も 、 1本研 究 は 日本 学術 振 興会 科学 研究 費助 成 事業(学 術研 究助 成基 金助 成 金)に も とつ く研 究(基 盤 研 究(C) 、研 究代 表 者 假 屋 園昭 彦 、課 題番 号24530829、 平 成24年 度 ∼平 成26年 度 、研 究課 題 名 児童 の 思考 力 を伸 ばす 対話 指 導 力を もつ教 師育 成 を 目指 した授業 デザ イ ンの 開発)の 一 環 と して 行わ れた 。 2前 鹿児 島市 立 田上小 学校教 師 の 中 心 発 話 が 生 じ る こ とが 見 出 さ れ た 。 低 学 年 で は 、 「児 童 の 言 葉 の 受 け 止 め 」 発 話 、 「児 童 の 意 見 へ の 反 証 」 発 話 が 中心 発 話 と して の 機 能 を も っ て い た 。 これ ら の 研 究 か ら 、 児 童 同 士 の 対 話 に 教 師 が 参 入 す る 場 合 で も 、 教 師 発 問 の 中 に 特 に対 話 を深 化 さ せ る 中 心 的 な 役 割 を も つ 発 問 が 存 在 す る こ とが 明 らか に な っ た 。 第 三 の 目 的 は 、 対 話 を と お し て 道 徳 的 価 値 を 発 見 す る た め の 授 業 デ ザ イ ン の 開 発 で あ っ た 。 これ ま で 假 屋 園 の 対 話 研 究 で は 、 研 究 対 象 が 児 童 同 士 に よ る班 別 対 話 活 動 の み で あ っ た 。 こ の 段 階 か ら 假 屋 園 ・馬 場 ・小 峯 ・京 田(2013)で は 、 研 究 対 象 が 拡 大 さ れ 、 児 童 同 士 の 班 別 対 話 活 動 に 加 え て 、 一 斉 指 導 時 の 教 師 と 児 童 と の 対 話 が 研 究 対 象 と し て 分 析 さ れ た 。 こ こ で は 、 一 斉 指 導 時 に お い て 教 師 と 児 童 と の 対 話 が 深 化 す る 機 序 は 、 抽 象 命 題 と 具 象 命 題 の 往 還 に よ る こ と が 小 学 校1年 生 を対 象 に 示 さ れ た 。 す で に班 別 対 話 活 動 に お け る 教 師 と 児 童 と の 対 話 の 深 化 の 機 序 が 抽 象 命 題 と具 象 命 題 との往 還 に よ る こ とは示 さ れ て い る(假 屋 園 ・永 里 ・ 坂 上 、2011a;2011b)。 し た が っ て 、 假 屋 園 ・馬 膓 ・小 峯 ・京 田(2013)の 結 果 を 合 わ せ る と 、 抽 象 命 題 と具 象 命 題 と の 往 還 に よ っ て 授 業 全 体 の 対 話 活 動 を 組 み 立 て る こ と が 可 能 で あ る こ と が 示 さ れ た こ と に な る 。 假 屋 園 ・馬 膓 ・小 峯 ・京 田(2013)を 受 け 、 假 屋 園 ・馬 膓 ・小 峯 ・京 田(2014)で は 、 抽 象 命 題 と具 象 命 題 と の 往 還 型 授 業 デ ザ イ ン モ デ ル が 作 成 さ れ 、 そ の モ デ ル の 検 証 授 業 が 実 施 され た 。 2.本 研 究 の 目 的 上 記 の よ う に 、 こ れ ま で 假 屋 園 ら は 、 対 話 の 深 化 の 機 序 と し て の 抽 象 命 題 と具 象 命 題 の 往 還 運 動 を 見 出 し、 こ の 往 還 運 動 に よ る 対 話 の 深 化 と授 業 構 成 を 試 み て き た 。 これ ら の 知 見 を 土 台 と し て 本 研 究 で は 新 た な 目 的 を 設 定 す る 。 す な わ ち 本 研 究 で は 、 道 徳 的 価 値 の 発 見 に 至 る 対 話 の 機 序 と して 新 た に 以 下 の 目 的1と 目 的2を 設 定 す る 。 そ して こ れ ま で 見 出 し て き た 、 対 話 深 化 の 機 序 と し て の 抽 象 命 題 と具 象 命 題 の 往 還 運 動 の 再 現 性 の 検 証 を 目的3と す る 。
さ らに 目的4と 目的5に つ いて は 、実 際 に授 業
の 中で は、 どのよ うな 姿 で 出現 す るのか を検 証 す
る こ とを目指 した 。
目的1.道
徳 的価値 の 発見 に至 る機序 と しての 対
概 念の 対比 型対 話 の有効 性 の立証
道 徳的 価値 の発見 に至 る経 路 と して、 対話 のな
かで対 概 念 を対 比 させ る と い う思 考 過程 の有 効 性
を立 証す る。假 屋 園 は これ まで 、道徳 の時 間 にお
け る対 概 念 の対 比型 授 業 デザ イ ンの 開発 に取 り組
んで きた(假 屋 園、2014a;2014b)。
これ らの研
究 で は、 道徳 的価 値 概 念 を対 に して 取 り上 げ、 対
比 させ 、そ の関係 性 を明 らか にす る ことによ って、
対 にな って い る概念 の本質 を明 らか にす る思 考 過
程 の有効 性 が理 論 的 に検 討 され た。 これ らは哲 学
で構造 主義 と呼 ばれ る枠組 みで あ る。本研 究で は、
理 論 的 に検 討 さ れた 假 屋 園(2014a;2014b)に
よ る対 比 型対 話 とい う方法 を、授 業 で の対話 活 動
で実 践 し、 そ の有効 性 を検 証 す る こ とを 目的1と
す る。
対 比型 対 話 の展 開仮 説 と して以 下 の よ うな 内容
を設定 した。
①
児 童 が意見(具 象命 題)を 提 出す る 。
②
教師が 児童 の意見 へ の反証 を示す(反 証発 話)。
この こと によ って 、教 師 が児 童 の意見 と対 比で き
る対概 念 を形成 す る。 この段 階 を対概 念 の形 成 過
程 と呼 ぶ 。
③
この対概 念 に対 し、児 童 と教 師 とが 弁証 法 的
思 考 に よ って、 新 しい道徳 的価 値 を発見 す る。 こ
の段 階 を対 概念 の解 釈過 程 と呼ぶ 。
こ う した対 話 が教 師 と児 童 との問 で可 能 で ある
ことを検証 授業 によ って 立証 す る。
目的2.道
徳 的価 値 の 発 見 に至 る機 序 と して の
共 通特 徴 の抽 出活動 の有 効性 の立 証
本研 究 お よび これ まで の研 究(假 屋 園 ・馬 膓 ・
小峯 ・京 田 、2012;2014)で
提 案 して い る授 業
デザ イ ンは 以下 の基 本 過程 か ら成 立 す る.①
授
業 のなか で 、複 数 の生 活事 例 に共 通 す る特徴 を抽
出す る。 ②
そ してそ の共 通 特徴 に含 まれ る道 徳
的価値 を発見 す る。③
授 業 で発 見 した道徳 的価
値 に もとづ き、 生活 事 例 を捉 え直 す 。そ して生 活
事 例 を道 徳 的価 値 に よ って意 義 づ け し、道 徳 的価
値 を実感 す る。
本研 究 で も、共 通特 徴 の抽 出 型授 業 デザ イ ン に
よ る授業 が 可能 か どうか を立 証 す る。低 学 年 を対
象 と した これ まで の検 証 授業 で は 、 この共 通特 徴
の抽 出型授 業デ ザイ ンによ る実 践が 可能 であ った 。
本研 究で もこの授業デザイ ンを継続する ことによ り、
本授 業デ ザイ ンの定着 と普 及 を 目指 す。
目的3.道
徳 的価 値 の発 見 に至 る機 序 と して の抽
象命題 と具象命 題 の往 還型 対話 の有効 性 の立証
対 話 の深 化 が抽 象命 題 と具 象 命題 の往 還 で展 開
す る こ とが 、班 別 対話 活 動お よ び一 斉指 導 に お い
て示 され た(假 屋 園 ・長里 ・坂上、2011a;2011b、
假屋 園 ・馬 場 ・小峯 ・京 田、2013;2014)。
通 常 、
特定 の現 象 が確 か に存 在 す る こ とを立証 す る ため
に は、そ の現 象 の再現 性 を検 証 す る こ とが 必要 で
あ る。假 屋 園 らの対話 研 究 は、 そ の性質 か ら質 的
な事 例研 究 に な らざ る をえ な い。 した が って 、 こ
れ まで の假 屋 園 らの研 究 で見 出 され た現 象 は 、常
にそ の再 現 性 を確 認 して お く必 要が ある。 そ のた
め本研 究 にお いて も、班別 対 話活 動 にお ける教 師
の指 導 的参 加 時 の対話 、 お よび 一斉 指導 時 の教 師
と児 童 との対話 に、抽 象 命題 と具象 命題 との往 還
型対話 が見 られ るか ど うか を確 認す る。
目的4.発
問 の意 義:児 童の 思考 力を育 て る対 話
一児 童が 「
問 い」 を体 験す る ことの 意味
現 在の学校場面で、発 問は、中心発問、基本発 問、
補助 発 問 とい った 分類 が な され て い る。 これ らの
分類 は 、 あ くまで 発 問 を授業 展 開上 の位 置 づ け と
して 捕捉 した も ので あ る。 した が って 、何 を訊 く
か と い う、 あ くまで発 問の 内容 だ け に着 目 した分
類 にな って いる。
本 研究 で は 、 こ う した従 来 の 実践 側 に よる発 問
の捉 え方 とは 異な り、教 師か らの発 問 を児 童 の思
考 体験 と して 捉 える視 点 を提案 す る。
すなわち、発 問の意義 は、何を訊いたかで はな く、
児童 に どん な思 考 を体 験 させ た か 、 とい う点 に あ
る とい う見 方 で ある。
授 業 は教 師 と児 童 とが 協 同で 作 り上 げ る思考 過
程で ある。 児童 は教 師 の援 助 を受 け、 あ るい は教
師 に導 か れ な が ら 、 授 業 を と お し て ひ と つ の 思 考 展 開 を 体 験 す る 。 こ の 思 考 の 展 開 を つ く っ て い る の が 、 教 師 と 児 童 と の 対 話 お よ び 児 童 同 士 の 対 話 に な る 。 対 話 活 動 の 目 的 は 、 「多 様 な 意 見 や 価 値 観 に ふ れ る 」、 「表 現 し 、 伝 え 合 う 」 と い っ た 皮 相 な 水 準 に と ど ま る の で は な い 。 対 話 活 動 の 目 的 と は 、 対 話 の や り と りそ の も の の な か に 存 在 す る論 理 を 児 童 が 習 得 す る こ と に よ っ て 、 児 童 が 新 し い 論 理 を 習 得 し、 自 らの 論 理 の 構 築 力 を 高 め る と い う 思 考 力 の 育 成 に あ る 。 児 童 は 教 師 と の 対 話 を と お して 問 い の 立 て 方 と し て の 論 理 を 習 得 す る 。 す る とそ れ ま で 教 師 が 立 て て い た 問 い を 、 今 度 は 児 童 が 独 力 で 立 て る こ と が 可 能 にな る 。 そ の うえ で 新 た に 習 得 した 論 理(問 い の 立 て 方)を 児 童 は 以 後 の 自分 達 同 士 の 対 話 で 生 か せ る よ う に な る 。 こ う し て 児 童 の 対 話 の 質 は 向 上 す る 。 こ の 論 理 習 得 過 程 は 児 童 同 士 の 対 話 に も あ て は ま る 。 これ ら の 体 験 が 児 童 の 論 理 的 思 考 力 の 向 上 に つ な が る 。 こ う し た 対 話 の 目的 は 、 児 童 同 士 の 対 話 だ け で な く一 斉 指 導 時 の 教 師 発 問 に も あ て は ま る 。 通 常 、 教 師 発 問 を考 え る 際 は 、 児 童 の 回 答 の 内 容 の み に 関 心 が 集 ま る 。 しか し 重 要 な こ と は 児 童 の 回 答 の 内 容 で は な い 。 児 童 が 教 師 の 発 問 に 回 答 す る と い う 行 為 の 重 要 性 は 、 教 師 が 立 て た 問 い と い う論 理 を 児 童 が 再 度 自 ら な ぞ っ て い く と こ ろ に あ る 。 こ の 体 験 の 蓄 積 に よ っ て 、 児 童 は 自 ら で 問 い を 立 て る こ とが で き る よ う に な る 。 こ の こ と は 教 師 の 発 問 の 意 義 が 児 童 に 回 答 さ せ る と こ ろ に あ る の で は な く 、 児 童 に 問 い を 立 て る 力 を 習 得 さ せ る と こ ろ に あ る こ と を 意 味 す る 。 す な わ ち 教 師 発 問 は 児 童 に 問 い を 立 て る 力 を育 て る た め に 行 う も の で あ る 。 い か な る と き に 、 い か な る 行 為 に 対 して 、 い か な る 問 い を 立 て れ ば よ い の か を 、 児 童 自身 が 授 業 で の 思 考 過 程 を と お して 習 得 し て い く の だ 。 教 師 は 授 業 の な か で の 児 童 と の 対 話 を と お し て 、 「こ ん な 状 況 で は 、 こ ん な 行 為 に 対 して は 、 こ ん な 問 い を 立 て て 思 考 を 進 め て い く の だ 」 と い う体 験 を 児 童 に も た せ て い る の で あ る 。 本 研 究 に お け る 検 証 授 業 の な か で 生 じ た 思 考 展 開 に 身 を お い た 児 童 は 、 個 々 の 行 為 の 価 値 を 考 えるた めの 問い の立て方(論 理)、 そ してそ れ ら個 々
の行 為 の価 値 を さ らに高 い視 点 か ら価 値 づ け るた
め の問 いの 立 て方(論 理)を 体験 す る。 そ して弁
証法 的思 考 過程 と して、教 師 との対 話 のな か で生
成 した術 轍 的 な価 値 の視 点か ら再 度 自 らの 具体 的
行 動 の意 味 を考 え る体 験 をす る 。 この体 験 は もの
ごと を道 徳 的 に考 え て い くた め に必 要 な思 考過 程
をな ぞ って い る営 み で ある。 そ して こ うした授 業
体 験 を蓄 積 して い く ことに よっ て、 児童 の な か に
は道 徳 的 に もの ご とを考 えて い く倫 理 的思 考 力が
育成 され て い く。
上 記 のよ うな発 問 の意 義 を提案 した うえ で 、本
検 証 授業 で は この 意義 が どのよ うな 姿 で対 話 の 中
に 出現す るの か、 とい う現 象 面 の検 証 を行 う こと
を 目的2と す る。
目的5.資
料 の活 用方 法:生 命 尊重 型資 料 の扱 い
方
現 在 の道 徳 の授 業 にお け る資 料 は、以 下 の位 置
づ け とな って い る。す な わ ち、 児童 の 生活 経験 は
一人 ひ と り異 な る
。そ こで一 つ の資 料 を児 童 に提
供す る ことに よ って全 員 が一 つ の生 活事 例 を共 有
しな が ら考 え る こ とがで き る。 上記 の位 置 づ けは
確 か に一 つ の資 料 活用 方 法で あ るが 、 これ がす べ
てで はな い。
本研 究 で は 、上 記以 外 の資 料活 用 の あ り方 を提
案 して みた い。 こ こでは本 検 証授 業 で用 いた 内容
項 目で あ る 「
生命 尊重 」 につ い て の資料 活 用方 法
についての提案 を行 う。授 業で使用 した資料 は、 「
い
の ちが あ って よか っ た」 とい う題 名 で 、主 人公 の
少女 が交通事故 に会 い、幸 い、命 に別 状はなか った 、
とい う物語 で あ る。
生 命尊 重 の資 料 は 、重 た い病気 や 事故 にあ った
物 語 を扱 う場合 が 多 い。 こう した物 語 か ら生命 の
重 要 性 を考 え させ る。 しか し、 こう した物 語 の問
題 点 は 、内 容 が非 日常 的 で ある た め、児 童 が 自分
達 の 日常 と して捉 え られ な い と ころ にあ る。資 料
と自分達 の 日常 との 間 に乖離 が あ るた め、 どう し
て も児 童 は資 料 を他 人事 と して捉 えて しま う。
た と え ば次 の例 で 考 え て み よ う。 「
難病 と闘 い
なが ら懸 命 に 生 きて い る人達 もい るの です 。 だか
ら命 を粗 末 に した り、投 げや りに生 き ては な りま
せ ん 」 と い う 命 題 が あ る 。 こ の 命 題 は 「地 球 に は 飢 え に 苦 し ん で い る 人 達 も い る の で す 。 だ か ら 食 べ 物 を 粗 末 に し て は い け ま せ ん 」 と い う命 題 と 同 じ 論 理 で あ る 。 す な わ ち 「病 気 や 飢 え に 苦 しみ な が ら も 懸 命 に 生 き て い る 人 も い る の で す 。 だ か ら あ な た 達 もそ う い う 人 達 の こ と を 考 え て 日常 の 生 活 を 送 りな さ い 」 と い う 論 理 で あ る 。 こ の 論 理 は 、 児 童 か ら 「で も そ れ は 僕 達 の 暮 ら し とは 別 の 、 遠 い と こ ろ の 出 来 事 で し ょ。 な ん で 、 今 、 こ こ で 僕 達 が そ う しな い と い け な い の?」 と い う受 け と め 方 を さ れ る と 説 得 力 が な く な る と い う 弱 点 が あ る 。 な ぜ こ の よ う な 問 題 点 が 生 ま れ る か と い う と 、 資 料 の 論 理 で 自 分 た ち の 日常 を 解 釈 し よ う と し て い る か らで あ る 。 これ は 「あ な た 達 も 資 料 の 主 人 公 を見 習 い な さ い(私 達 も 資 料 の 主 人 公 を 見 習 い ま し ょ う)」 型 の 資 料 活 用 方 法 と言 え る 。 こ の 型 だ と 、 ど う し て も児 童 の 側 に 「こ れ は 、 こ の 主 人 公 だ か らで き た の で あ っ て 、 自分 達 に は で き な い 」 と い っ た 理 屈 を 生 ん で し ま う 。 こ こ で は この 型 と は 異 な る 資 料 活 用 方 法 と し て 、 資 料 と 自分 達 の 暮 ら し を 対 比 させ 、 そ の 違 い か ら、 自 分 達 の 暮 ら し に 内 在 す る 道 徳 的 価 値 を浮 か び 上 が らせ る 型 の 活 用 方 法 を 提 案 す る 。 具 体 的 に は 次 の 過 程 を と る 。 ま ず 資 料 の 物 語 を 抽 象 化 す る 。 こ こで 抽 象 化 の 視 点 は 複 数 あ る 。 抽 象 化 の 際 は 、 授 業 で 発 見 し よ う と す る 道 徳 的 価 値 の 視 点 か ら抽 象 化 す る 。 本 授 業 で 発 見 し よ う と す る 道 徳 的 価 値 は 、 「平 凡 で 、 あ た り ま え の 生 活 が で き る と い う こ と に 生 命 の価 値 が あ る 」 と い う 内 容 で あ る 。 そ こで こ の視 点 か ら資 料 を抽 象 化 す る と、 「日 常 生 活 の 崩 壊 」 と な る 。 そ し て 日常 生 活 の 崩 壊 と い う 特 別 の 出 来 事 と 自 分 た ち の 暮 ら し の 対 比 か ら 、 平 凡 な 毎 日 の 重 要 性 を浮 か び 上 が らせ る こ と が で き る 。 特 別 な 出 来 事 を 扱 っ た 資 料 か ら、 平 凡 な 毎 日 の 価 値 を 発 見 さ せ る 活 動 が 授 業 で の ね ら い に な る 。 資 料 か ら 自分 達 の 暮 ら し を 照 射 し 、 今 ま で 気 づ か な か っ た 日常 生 活 に 含 ま れ る 価 値 を 発 見 す る と い う活 用 方 法 で あ る 。 目 的5は 、 こ う した 活 用 方 法 を 実 際 の 授 業 で 検 証 して い く こ と で あ る 。方 法 1.検 証 授 業 の 実 施 方 法 (1)実 施 日時:平 成24年3月8日 (2)実 施 校:鹿 児 島 市 立 田 上 小 学 校 (3)指 導 者:京 田 憲 子 教 諭 (4)対 象 児 童:1年 生 児 童27名 (5)授 業 時 間:45分 (6)主 題 名:た っ た 一 つ の 命(資 料 名 「い の ち が あ っ て よ か っ た 」 東 京 書 籍) (7)ね らい:か け が え の な い 生 命 の尊 さ に気 付 き 、 大 切 に しよ う と す る 心 情 を 育 て る 。 学 習 指 導 要 領 の 内 容 項 目で は 、 「3一 ① 生 命 尊 重 」 に 該 当 す る 。 (8)班 編 成:児 童 は7つ の 班 に 分 か れ た 。3班 は 男 子3名 女 子1名 の4名 、5班 は 男 子1名 女 子 2名 の3名 で あ っ た 。 残 り の5つ の 班 は す べ て 男 子2名 女 子2名 の4名 か ら成 っ た 。 2.分 析 方 法 児 童 と 教 師 の 発 話 は す べ て ビ デ オ カ メ ラ に 録 画 した 。 そ の う え で 児 童 と教 師 の 発 話 の 逐 語 録 を 作 成 し 、 これ を 分 析 の 対 象 と し た 。 逐 語 録 の 作 成 と 分 析 は 、 本 研 究 の 第 一 著 者 と 対 話 分 析 経 験 を も つ 大 学 院 生 一 名 の 合 計 二 名 で 実 施 した 。 結 果 と考 察 最 初 に 授 業 の 各 学 習 過 程 に つ い て 解 釈 し 、 次 に 対 概 念 の 対 比 型 対 話 に つ い て の 考 察 を 行 う 。 1.授 業 の 各 学 習 過 程 に つ い て の 結 果 と考 察 検 証 授 業 の 逐 語 録 を も と に 、 授 業 展 開 に 沿 っ て 教 師 と児 童 と の 対 話 を微 視 的 に解 釈 す る 。 授 業 展 開 の 記 載 に 出 て く る 「展 開 型 論 理 様 式 」、 お よ び 「精 緻 化 型 論 理 様 式 」 は 、 以 下 の 意 味 で 使 わ れ て い る(假 屋 園 ・馬 膓 ・小 峯 ・京 田 、2013; 2014)。 す な わ ち 「展 開 型 論 理 様 式 」 は 、 授 業 全 体 の 展 開 を貫 く論 理 様 式 で あ る 。 一 方 で 、 「精 緻 化 型 論 理 様 式 」 は 、 班 別 対 話 活 動 の 中 で 教 師 と 児 童 と の 対 話 の な か で 現 れ る論 理 様 式 で あ る 。 一 斉 指 導:展 開 型 論 理 様 式 教 師 発 話1:み ん な 命 が あ っ て よ か っ た と 思 っ た こ と あ りま す か?ど ん な と き? 解 説:具 象 命 題 と して の 問 い か け 。 児 童 の 生 活 経 験 の な か か ら具 体 例 を 収 集 し た 。 児 童 発 話1:い と こ と会 っ た と き ・ハ ー モ ニ ー ラ ン ドに行 っ た と き ・旅 行 に 行 っ た と き 教 師 発 話2:「 今 日 は な ぜ 、 命 が あ っ て よ か っ た の だ ろ う」 に つ い て 考 え て み ま し ょ う 。 解 説:抽 象 命 題 と し て の 授 業 目標 を 挙 げ た 。 教 師 は 資 料 を 音 読 す る 。 教 師 発 話3:(資 料 読 解 の 後)私 、 入 院 し て い る と き 、 どん な 気 持 ち だ っ た か な? 解 説:① 資 料 中 の 登 場 人 物 の 気 持 ち の 読 み 取 り。 ② 具 象 命 題 と して の 学 習 課 題 。 児 童 発 話2:あ ん な こ と し な け れ ば 、 早 く退 院 し た い 、 あ りが と う、 疲 れ る 、 動 か せ な い 、 や り た い こ と が で き な い 、 友 達 に 会 え な い 。 教 師 発 話4:退 院 し た と き は? 児 童 発 話3:い の ち が あ っ て よ か っ た 。 教 師 発 話5:み ん な も さ 、 い の ち が あ っ て よ か っ た と思 っ た こ と あ る? 解 説:① 「登 場 人 物 は 、 ケ ガ して 入 院 し た と き に 命 が あ っ て よ か っ た と思 っ た の だ ね 。 み ん な は 、 ど ん な と き に 命 が あ っ て よ か っ た と思 い ます か?」 と い う展 開 型 論 理 展 開 に な っ て い る 。 こ こで は 、 特 定 の 徳(命 の 尊 さ に 気 づ き 、 大 切 に し よ う とす る 心 情)が ど ん な 時 に 生 じ る の か を 問 い か け た 。 特 定 の 徳 が ど の よ う な 時 に 生 じ る の か 、 あ る い は 必 要 に な る の か を 考 え る 問 い か け は 、 徳 の 本 質 を 浮 き 彫 りに す る 上 で 重 要 で あ る.② 資 料 を 使 っ た 場 面 の 教 師 発 問(教 師 発 話5)は 、 次 に 来 る 班 別 対 話 活 動 に お け る 対 話 課 題 と 同 じで あ っ た 。 こ の 場 面 の 意 味 は 以 下 の よ う に解 釈 で き る 。 資 料 を 使 っ た 一 斉 指 導 で 、 教 師 が 次 に 来 る 対 話 課 題 と 同 じ 問 い を 児 童 に投 げ か け た 。 この 問 い へ の 思 考 体 験 は 児 童 に と っ て 、 班 別 対 話 活 動 の 予 行 練 習 と し て の 意 味 を も つ 。 す な わ ち 、 あ ら か じ め 共 通 の 資 料 で 、 児 童 に 班 別 対 話 活 動 時 と 同 じ思 考 体 験 を 予 行 と して も たせ て お く 。 こ の予 行 体 験 は児 童 に と っ て 班 別 対 話 活 動 時 の 対 話 を深 化 さ せ る意 味 を もつ 。 同 じ課 題 に 対 し て 思 考 体 験 を重 ね る こ と は 、 思 考 の深 ま り を 生 む か ら で あ る 。 班 別 対 話 活 動:精 緻 化 型 論 理 様 式 教 師 発 話6:今 日 は 二 つ の 課 題 を 考 え ます 。 一 つ
目(第 一 課 題)は 「命 が あ っ て よ か っ た と 思 う と き は 、 ど ん な と き か を 考 え て み ま し ょ う。」、 二 つ 目(第 二 課 題)は 「そ れ は ど う し て そ ん な ふ う に 思 っ た の か 」 を考 え て も らい ま す 。 解 説:① 資 料 を 使 っ た 一 斉 指 導 で の 学 習 課 題 を そ の ま ま 対 話 課 題 と し た 。 ② 対 話 課 題 は 具 象 命 題 と し た 。 4班 で の 指 導 的 参 加 児 童 発 話4:お 母 さ ん に会 え る 。 教 師 発 話7:お 母 さ ん に 会 う と き も 、 お 母 さ ん に 怒 られ る と き って あ る で し ょ。 怒 られ る の だ っ た ら、 命 が な くて も い い ん じゃ な い の? 解 説:目 的1の 検 証:対 概 念 の 対 比 型 対 話:児 童 の 意 見 へ の 反 証 発 話 に よ っ て 児 童 の 意 見 と 対 比 で き る 意 見 を 教 師 が 提 出 し た 。 教 師 が 対 概 念 を 形 成 し た 。 児 童 発 話5:怒 られ て ど ん ど ん 成 長 す る 。 解 説:目 的1の 検 証:対 概 念 の 対 比 型 対 話:① 教 師 に よ っ て 形 成 さ れ た 対 概 念(怒 ら れ る)を 児 童 が 解 釈 す る こ と に よ っ て 新 命 題 を 形 成 した 。 ② 成 長 と い う 高 次 で 術 目敢 的 な 視 点 を 形 成 す る こ と に よ っ て 、 児 童 が 怒 ら れ る こ と を 否 定 的 な 体 験 と し て で は な く、 肯 定 的 な 体 験 と し て 捉 え 直 し、 新 命 題 を提 出 した 。 この 思 考 過 程 が 弁 証 法 的 思 考 で あ る 。 児 童 発 話6:み ん な と し ゃ べ れ る か ら。 教 師 発 話8:み ん な と しゃ べ っ て 喧 嘩 に もな る よね 。 解 説:目 的1の 検 証:対 概 念 の 対 比 型 対 話:児 童 の 意 見 へ の 反 証 発 話 に よ っ て 児 童 の 意 見 と 対 比 で き る 意 見 を 教 師 が 提 出 し た 。 教 師 が 対 概 念 を 形 成 し た 。 教 師 発 話9:例 え ば 、 家 族 と一 緒 に い て 命 が あ っ て よ か っ た と 思 う と き は ど ん な と き か 、 考 え て く だ さ い 。 解 説:具 体 的 な 場 面 を 与 え る こ と に よ っ て 、 課 題 を 考 え る た め の 視 点 を 提 供 し た 。 7班 で の 指 導 的 参 加 児 童 発 話7:み ん な と鬼 ご っ こ し て い る と き 、 命 が あ っ て よ か っ た と思 う。 教 師 発 話10:で も さ 、 お 友 達 と い て も喧 嘩 す る こ と な い? 解 説:目 的1の 検 証:対 概 念 の 対 比 型 対 話:児 童 の 意 見 へ の 反 証 発 話 に よ っ て 児 童 の 意 見 と 対 比 で き る 意 見 を 教 師 が 提 出 し た 。 教 師 が 対 概 念 を 形 成 した 。 児 童 発 話8:喧 嘩 して も 楽 し い こ と も あ っ て 、 み ん な 大 き くな っ て い く。 解 説:目 的1の 検 証:対 概 念 の 対 比 型 対 話:① 形 成 され た 対 概 念 を 児 童 が 解 釈 す る こ と に よ っ て 新 命 題 を 形 成 し た 。 ② 児 童 は 「大 き く な る 」 と い う 傭 目敢的 で 高 次 な 視 点 を 形 成 した 。 この 視 点 か ら児 童 は 「喧 嘩 と楽 し さ の両 方 が あ っ て 大 き くな っ て い く」 とい う新 命 題 を 提 出 した 。 この 過 程 が 「止 揚 」 で あ り、 弁 証 法 的 思 考 過 程 で あ る 。 児 童 が 「大 き くな る た め には 快 体 験 と不 快 体 験 との 両 方 が 必 要 」 との 見 解 を 示 した 。 教 師 発 話11:喧 嘩 し て も 命 が あ っ て よ か っ た と 思 え る か ど う か を考 え て み て 。 1班 で の 指 導 的 参 加 児 童 発 話9:00さ ん と遊 ん で い る と き 。 教 師 発 話12:な ん で そ う思 っ た の? 児 童 発 話10:楽 し い か ら 。 教 師 発 話13:楽 しい と き に は 、 命 が あ って よ か っ た と思 う の か な? 児 童 発 話11:寂 し い とき 。 教 師 発 話14:寂 し い の だ っ た ら命 は い らな い よ 。 解 説:目 的1の 検 証:対 概 念 の 対 比 型 対 話:児 童 の 意 見 へ の 反 証 発 話 に よ っ て 児 童 の 意 見 と対 比 で き る 意 見 を 教 師 が 提 出 し た 。 教 師 が 対 概 念 を 形 成 した 。 児 童 発 話12:寂 し い 気 持 ち に な る の は 命 が あ る か ら 。 教 師 発 話15:寂 し い 気 持 ち 。 た と え ば 、 ど ん な 時? 解 説:教 師 は 具 象 命 題 を 考 え させ る 。 児 童 発 話13:喧 嘩 し た 時 と か 、 転 ん だ 時 とか 、 入 院 した 時 と か 。 教 師 発 話16:ど う し て?痛 い の は 嫌 で し ょ? 解 説:目 的3の 検 証:抽 象 命 題 と 具 象 命 題 の 往 還 型 対 話:教 師 発 話15、 児 童 発 話13、 教 師 発 話 16が 抽 象 命 題 と 具 象 命 題 と の 往 還 運 動 に な っ て い る 。 児 童 発 話14:こ ん な こ と に な る の は 、 自分 が 生 き て い る っ て こ と 。 解 説:目 的1の 検 証:対 概 念 の 対 比 型 対 話:①
假 屋 園 ・馬塲 ・小 峯 ・京 田:教 師 と児 童 とが 対 話 を とお して 道 徳 的 価 値 を発 見 す る授 業 デ ザ イ ンの 開 発(III) 児 童 発 話14で は 、教 師 が 形 成 した 「寂 し い気 持 ち 」 と い う対 概 念 を 、 児 童 が 解 釈 す る こ と に よ っ て 新 命 題 を 形 成 し た.② 児 童 発 話14で は 、 寂 し い 、 痛 い 、 と い っ た 出 来 事 を 積 極 的 に 意 味 づ け る 高 次 で俯瞰 的 な 視 点 で あ る 「自分 が 生 き て い る 」 と い う視 点 を 児 童 が 形 成 した 。 ③ 児 童 が 「寂 し くな っ た り、 痛 くな っ た りす る の は 、 自分 が 生 き て い る っ て こ と 。」 と い う新 命 題 を提 出 した 。 こ の新 命 題 が 、 児 童 に よ っ て 発 見 さ れ た 価 値 に な る 。 ③ 教 師 と の 対 話 を と お して 、 児 童 に よ る 命 の 捉 え 方 が 一 面 的 で 低 次 な 見 方(生 き て い る こ と は 楽 し い こ と) か ら両 面 的 で 高 次 な 見 方(生 き て い る こ と に は 、 楽 しい こ と とつ らい こと の 両 方 が あ る)に 変 化 し た 。 こ の過 程 が 止 揚 で あ り、 弁 証 法 的 思 考 過 程 に な る 。 3班 で の 指 導 的 参 加 教 師 発 話17:命 が あ る っ て こ と は ど う い う こ と? 児 童 発 話15:命 が あ る っ て こ と は 身 体 が 大 き く な る こ と 。 教 師 発 話18:ど うや っ た ら 身 体 が 大 き くな る? 児 童 発 話16:運 動 し た り、 ごは ん 食 べ た り。 教 師 発 話19:運 動 した り 、 ご は ん 食 べ た り して い る か ら身 体 が 大 き くな る っ て こ と 。 児 童 発 話17:命 も成 長 し て い る 。 教 師 発 話20:命 も成 長 し て い る 。 解 説:目 的3の 検 証:抽 象 命 題 と 具 象 命 題 の 往 還 型 対 話:こ こで の指 導 的参 加 の 教 師 と児 童 の対 話 は 、 命 、 身 体 、 運 動 と ご は ん 、 身 体 、 命 、 と い う 展 開 に な っ て お り 、 抽 象 命 題 と具 象 命 題 の 往 還 型 対 話 とみ な す こ と が で き る 。 一 斉 指 導:展 開 型 論 理 様 式 教 師 発 話21:命 が あ っ て よ か っ た と思 う と き は 、 ど ん な 時 で し ょ う 、 そ し て そ れ は ど う して で し ょ う? 教 師 発 話22:ど ん な と き に そ う思 っ た の か 。 そ れ は ど う して な のか 。1班 さ ん か ら言 って く だ さ い 。 解 説:各 班 の 代 表 児 童 と 教 師 が 対 話 を とお し て 各 班 か ら出 され た 意 見 を抽 象化 して い く活 動 を始 め た 。 1班 児 童 発 話18:命 が あ っ て よ か っ た と 思 う 時 は 、 ケ ガ し た り、 泣 い た り し た と き 。 ど う して か と い う と 、 今 、 生 き て な か っ た ら、 転 ん だ り、 ケ ガ は して な か っ た 。 解 説:教 師 は 黒 板 に 二 枚 の 絵 を貼 る 。 教 師 発 話23:さ っ き 、 ○ ○ さ ん が ね 。 「寂 し い と き 」 っ て 書 い て い た の で す 。 「寂 し い と き に 僕 は 命 が あ っ て よ か っ た 」 と 書 い て い ま し た 。 そ こ を 班 で 話 し た らね 、 ケ ガ 、 病 気 、 泣 い た り した 時 も だ よ っ て 話 が 出 て き ま し た 。 解 説:目 的3の 検 証:抽 象 命 題 と 具 象 命 題 の 往 還 型 対 話:児 童 発 話18と 教 師 発 話23は 具 象 命 題 と 抽 象 命 題 と の 往 還 運 動 で 展 開 して い る 。 2班 児 童 発 話19:学 校 に 行 け る こ と は 命 が あ っ て よ か っ た と 思 い ま す 。 ど う して か と い う と 、 命 が な か っ た ら学 校 に も行 け な い し 、 み ん な と も遊 べ な い か らで す 。 教 師 発 話24:学 校 に 行 っ て み ん な 何 を し ます か? 児 童 発 話20:勉 強 、 遊 ぶ 、 給 食 。 解 説:目 的3の 検 証:抽 象 命 題 と 具 象 命 題 の 往 還 型 対 話:児 童 発 話19、 教 師 発 話24、 児 童 発 話 20は 抽 象 命 題 と具 象 命 題 と の 往 還 型 対 話 に な っ て い る 。 解 説:教 師 は 黒 板 に 三 枚 の 絵 を貼 る 。 3班 児 童 発 話21:命 が あ って よか っ た と思 う時 は 、 今 、 こ こ に い る 時 で す 。 な ぜ か と い う と 、 死 ん じ ゃ っ た ら 、 今 、 こ こ に も い られ な い し、 身 体 も大 き く な ら な い か ら で す 。 教 師 発 話25:3班 さ ん は ね 、 成 長 す る っ て 、 ご は ん を 食 べ た り、 運 動 し た り して 、 身 体 が 大 き く な っ て い く と き に命 が あ っ て よ か っ た と い う話 を して い ま し た ね 。 解 説:目 的3の 検 証:抽 象 命 題 と 具 象 命 題 の 往 還 型 対 話:児 童 発 話21、 教 師 発 話25は 抽 象 命 題 と 具 象 命 題 と の 往 還 型 対 話 に な っ て い る 。 解 説:教 師 は 黒 板 に 「今 、 こ こに い る こ と」、 「成 長 」 と 書 く。 4班 児 童 発 話22:命 が あ っ て よ か っ た と 思 う時 は 、 家 族 と一 緒 に い る 時 で す 。 ど う して か と い う と お 母 さ ん に会 え る か らで す 。 教 師 発 話26:お 母 さ ん と 会 え る か ら命 が あ っ て よ か っ た と い う こ と で す ね 。 5班
児 童 発 話23:家 族 が い る と わ くわ く して う れ し くな る か らで す 。 うれ し い顔 に な りま す 。 解 説:教 師 は 黒 板 に 一 枚 の絵 を 貼 る 。 教 師 発 話27:で も怒 られ た 時 。 児 童 発 話24:泣 く。 教 師 発 話28:怒 ら れ た 時 は 泣 い た りす る ね 。 で も命 が あ っ て よ か っ た と思 う? 児 童 発 話25:命 が な い と 何 に もで き な い 。 教 師 発 話29:笑 うだ け じゃ な く 、 泣 いた り、 怒 っ た り した 時 に 命 が あ っ て よ か っ た と 思 え る 。 児 童 発 話25:命 が な い と怒 られ な い し、 笑 えな い 。 解 説:目 的1の 検 証:対 概 念 の 対 比 型 対 話:5班 で は 教 師 に よ る 対 概 念 の 形 成 が 行 わ れ た 。 そ の 過 程 は 、 ① 児 童 発 話23に よ る快 経 験 の 回 答 ② 教 師 発 話27に よ る 不 快 経 験 の 指 摘(ゆ さぶ り 発 問)、 ③ 教 師 発 話29に よ る 対 概 念 の 形 成 、 と い う道 筋 を と る 。 6班 児 童 発 話26:命 が あ っ て よ か っ た と 思 う 時 は 、 聴 か れ た 時 。 教 師 発 話30:「 ど う し て 」 っ て 聞 か れ な い と 。 い つ も こ ん な こ と考 え て い ま し た? 児 童 発 話27:で も急 に は言 え な い 。 教 師 発 話31:今 日 は 、 む ず か し い こ と を 考 え ま した ね 。 解 説:目 的4の 検 証:児 童 の 思 考 力 を 育 て る 対 話 6班 に お け る 児 童 発 話26か ら教 師 発 話31ま で の 対 話 は 、 目的4に あ げ た 教 師 の 発 問 に 含 ま れ る 論 理 を 児 童 が 学 習 す る 例 と し て 捉 え る こ と が で き る 。 教 師 と児 童 と の 対 話 の な か に は 論 理(特 定 の 思 考 様 式)が あ る 。 こ の 論 理 は 教 師 の 問 い か け の な か に 含 ま れ て い る 。 問 い か け が 論 理 で あ り、 問 い か け が 児 童 の 思 考 様 式 を 決 定 す る 。 特 定 の 問 い か け を 児 童 が 考 え る と い う こ と は 、 児 童 に と っ て は 特 定 の 論 理 を 考 え る こ と を 意 味 す る 。 こ の こ と は 児 童 に と っ て 特 定 の 思 考 様 式 を体 験 す る こ と を 意 味 す る 。 こ の よ う な 体 験 を 蓄 積 す る こ と に よ っ て 児 童 は 論 理 様 式 の 数 を 増 や して い く 。 そ し て こ の よ う な 機 序(メ カ ニ ズ ム)に よ っ て 児 童 は 問 い を 立 て る 力 、 も の ご と を 倫 理 的 に捉 え る視 点 を 獲 得 して い く 。 「命 が あ っ て よ か っ た と 思 う の は ど ん な 時 か 」 と い う 問 い を 、 児 童 は 今 ま で 自分 の な か に も っ て い な か っ た 。 児 童 発 話26は こ の 点 を 表 し て い る 。 こ こ で 教 師 か ら こ の よ う な 問 い か け を 与 え られ 、 自 分 で 考 え る こ と に よ っ て 、 こ の 児 童 は 、 今 後 、 自 分 自身 で 「命 が あ っ て よ か っ た と思 う の は ど ん な 時 か 」 と い う 問 い(視 点)で 、 物 事 を 捉 え る こ と が で き る よ う に な る 。 答 え は 児 童 の 成 長 に 応 じ て 変 化 し て よ い 。 どれ だ け た く さ ん の 問 い か け を 自 分 の な か に も っ て お く こ と が で き る か 、 と い う と こ ろ に 人 間 と して の 器 の 成 長 が あ る 。 個 々 の 問 い か け が 価 値 の も の さ し に な る 。 こ の こ とが 傭 目敢 力(全 体 を 見 渡 す 力)を 育 て て い く。 7班 児 童 発 話28:命 が あ っ て よ か っ た と思 う時 は 、 喧 嘩 を し た り、 笑 っ た り 、 病 気 に な っ た り した 時 で す 。 ど う して か と い う と 、 自分 が い な け れ ば 何 も で き な い か らで す 。 児 童 発 話29:心 が な か っ た ら、 喧 嘩 し た り、 家 族 に会 っ た り、 勉 強 した りで き な い 。 一 斉 指 導:展 開 型 論 理 様 式 教 師 発 話32:君 達 の な か で 出 て き た の は これ な の で す 。 解 説:教 師 は 、 児 童 か ら 出 さ れ た 意 見 を 絵 に し た カ ー ドを 黒 板 に 貼 付 す る 。 教 師 発 話33:こ の 絵 を 見 て 、 言 え る こ と は あ り ま せ ん か? 解 説:目 的2の 検 証:個 々 の 具 体 例 の 共 通 特 徴 を 抽 出 さ せ る 対 話:教 師 発 話33は 、 共 通 特 徴 を 抽 出 させ る た め の 発 話 で あ る 。 教 師 発 話34:こ れ は い つ の こ と で す か? 児 童 発 話30:一 日の こ と。 教 師 発 話35:一 日の こ と 。 勉 強 し た り、 給 食 食 べ た り、 運 動 し た り、 お 手 伝 い し た り、 家 族 。 い つ の 一 日で す か? 児 童 発 話31:今 日の 一 日。 教 師 発 話36:こ れ が 今 日 だ け の こ と で は? 児 童 発 話32:な い 。 教 師 発 話37:明 日で 終 わ りで も? 児 童 発 話33:な い 。 ず っ と 続 い て い る 。 教 師 発 話38:こ れ を毎 日 の 生 活 と い い ま す 。 解 説:目 的2の 検 証:個 々 の 具 体 例 の 共 通 特 徴 を
抽 出 させ る 対 話:教 師 発 話35で 児 童 か ら出 た 具 体 例 を整 理 し 、 そ れ ら に 共 通 す る 特 徴 を 教 師 発 話 38で 抽 出 し た 。 解 説:教 師 は 黒 板 に 「毎 日 の 生 活 」 と書 く。 教 師 発 話39:ト キ ヤ さ ん は 「聞 か れ た 時 じ ゃ な い と 、 命 が あ っ て よ か っ た 」 な ん て 考 え な い よ 、 と言 い ま し た 。 そ う だ と 思 い ま す 。 普 段 の 毎 日の 生 活 で は 、 な か な か 考 え て い な い け れ ど 、 実 は 、 勉 強 し た り、 ご飯 食 べ た り、 成 長 し た り、 運 動 し た り 、 遊 ん だ り、 お 手 伝 い し た り、 家 族 とい た り 、 病 気 や ケ ガ に な っ た り、 泣 い た り笑 っ た り、 怒 っ た り 、 こ ん な こ と が で き る の は … 。 児 童 発 話34:命 が あ る か ら。 教 師 発 話40:そ う 、 命 が あ る か ら。 毎 日の 生 活 。 す べ て こ う や っ て 、 お 勉 強 で き る の も 、 命 が あ る か ら こそ で き て い る こ と な の で す ね 。 今 日は 、 と て もす ば ら し い こ と を 勉 強 で き ま し た ね 。 解 説:目 的2の 検 証:共 通 特 徴 に 含 ま れ る 道 徳 的 価 値 の 発 見 を め ざ す 対 話 教 師 発 話32か ら教 師 発 話40ま で が 、 目 的2 で 挙 げ た 、 「① 授 業 の な か で 、 複 数 の 生 活 事 例 に 共 通 す る 特 徴 を 抽 出 す る 。 そ して そ の 共 通 特 徴 に 含 ま れ る 道 徳 的 価 値 を 発 見 す る 。」 に相 当 す る 。 共 通 特 徴 を 抽 出 す る 際 の 留 意 点 は 、 抽 出 す る 視 点 を あ ら か じ め 教 師 が 確 定 し て お く こ と で あ る 。 各 事 例 を抽 象 化 す る 際 の 視 点 は 複 数 あ る 。 し た が っ て 授 業 で 抽 出 す る こ と を 目指 し て い る 道 徳 的 価 値 の 視 点 か ら抽 象 化 す る 必 要 が あ る 。 本 検 証 授 業 で 発 見 を 目指 して い る道 徳 的 価 値 は 、 「平 凡 で 、 あ た り ま え の 生 活 が で き る と い う こ と に 生 命 の価 値 が あ る 」 と い う 内 容 で あ る 。 し た が っ て 教 師 は 、 「平 凡 で あ た り ま え の 生 活 」 と い う 視 点 か ら抽 象 化 の 問 い か け を 行 っ た 。 これ が 教 師 発 話34「 こ れ は い つ の こ と で す か?」 、 教 師 発 話 36「 これ が 今 日 だ け の こ と で は?」 と い う発 問 に 相 当す る 。 そ して そ の結 果 、 個 々 の 事 例 か ら 「毎 日の 生 活 」 と い う命 題 を共 通 特 徴 と して 抽 出 し た 。 ワ ー ク シ ー トの 配 布 教 師 発 話41:命 が あ っ て よ か っ た と思 う 時 は ど ん な 時 な の か が 、 い っ ぱ い 出 て き ま し た 。 そ れ は 実 は 、 毎 日の 生 活 な の で す 。 普 段 、 送 っ て い る 生 活 な ん だ 、 と い う こ と に気 付 き ま し た 。 そ れ で は ワ ー ク シ ー トの 下 の 段 、 今 日 の 学 習 で ど ん な こ と に 気 付 い た か 、 黒 板 を み な が ら。 そ し て そ れ を も と に今 ま で の 私 は ど う だ っ た の か 。 そ し て 、 こ れ か ら、 と い う と こ ろ を 書 い て い き ま し ょ う 。 児 童 に よ る ワー ク シ ー トの 記 入 教 師 は 各 班 を 巡 回 児 童 発 話35:今 ま で 私 は 、 こん な こ と な ん か 考 え て い な か っ た 。 こ れ か ら も っ と生 き て い て よか っ た と思 う時 を 思 い 出 した い で す 。 教 師 発 話42:00さ ん が ね 、 命 が あ っ て よ か っ た っ て 、 最 初 に 書 い た の は ハ ー モ ニ ー ラ ン ドに行 っ た 時 の こ と だ っ た の ね 。 で も 、 あ あ 、 こ ん な に あ る の だ な って 、 今 日、 た く さ ん 気 付 い た の で す ね 。 そ し て 、 これ か ら も こ う い うふ う に た く さ ん 気 付 い て い き た い な あ 、 と い う こ とで す 。 児 童 発 話36:今 日の 学 習 で 毎 日の 生 活 が 大 事 な の だ と思 い ま し た 。 ご飯 を 食 べ られ る の も、 毎 日 の 生 活 が あ る か らな の だ と思 い ま した 。 教 師 発 話43:毎 日の 生 活 を続 け られ る っ て こ とは 、 命 が あ る っ て こ とな ん だ よ ね 。 ビデ オ 視 聴 教 師 発 話43:い ま 見 た も の す べ て 、 み ん な の 命 が あ る か ら で き る こ と な の で す ね 。 これ か ら も そ の 毎 日の 生 活 を 大 切 に で き る と い い で す ね 。 解 説:目 的5の 検 証:資 料 の 活 用 方 法:生 命 尊 重 型 資 料 の 扱 い 方 本 授 業 で 発 見 さ れ た 道 徳 的 価 値 は 、 「毎 日 の 暮 ら し の な か で こ そ 、 命 が あ っ て よ か っ た こ と を 実 感 す る こ とが で き る 。」 と い う 内 容 で あ っ た 。 授 業 の 冒頭 に教 師 が 「命 が あ って よか っ た と 思 う時 は 、 ど ん な 時 で す か?」 と い う 発 問 を し た と き 、 児 童 か ら 出 た 回 答 は 、 「い と こ に会 っ た と き 」、 「ハ ー モ ニ ー ラ ン ド に行 っ た と き」、 「旅 行 に行 っ た と き 」 と い う 内 容 で あ っ た 。 これ ら は 、 い わ ゆ る 特 別 な 出 来 事 な の で あ る 。 こ の こ と か ら児 童 は 、 特 別 な 出 来 事 を 体 験 し た 時 に命 が あ っ て よ か っ た こ と を 実 感 す る 、 と捉 え て い た こ と が わ か る 。 こ こか ら授 業 を と お して 、 児 童 は 命 を 実 感 す る と き は 特 別 な 時 だ け で は な く 、 教 師 発 話42に あ る よ う に 「こん な に あ る の だ な っ て 。 今 日、 た く さ ん 気 付 い た の で す ね 。」 と い う 発 見 に 至 っ た 。 こ の こ と か ら児 童 は 、 児 童 発 話36に み られ る よ
う に 「
命 の よ さは 特別 な 出来 事 の時 で はな く、毎
日の、平 凡 で 、あ た りまえ の生活 が で き る とい う
と こ ろ にあ る 。
」 とい う道 徳 的 価 値 を 習得 した と
い う ことが で き る。 こ こに授 業 の始 ま りと終わ り
とで は 、児 童 の価 値観 に変 化 が み られ た こ とを指
摘 す る ことが で きる。
この活 動 に よ って、 目的5で 提 案 した資 料 の活
用方 法は可能であ ることが立証 された と判断でき る。
本 時 で の資 料活 用 の意 義 は、 日常 生活 の崩壊 と い
う特 別 の 出来 事 と 自分 達 の暮 らし と を対 比 させ 、
平 凡 な毎 日の重 要 性 を浮 かび 上 が らせ た と ころ に
あ る。特 別 の 出来事 を扱 った 資料 か ら、平 凡 な出
来 事 の大 切 さ に気 付か せ た と ころ に新 たな 資料 活
用 方 法 をみ る こ とがで き る。 この方 法 は、 資料 と
自分 達 の暮 らし とを対 比 させ 、そ の違 いか ら、 自
分 達 の暮 ら しに内在 す る道 徳 的価 値 を浮 か び上 が
らせ る型 と呼 ぶ こ とが で きよ う。
2.対
概念 の 対比型 対話 の有 効性 につ いての考 察
児 童の意見 に対 して教師が反例 を示す発問方法 は、
いわ ゆ る 「
ゆ さぶ り発 問」 と して従 来 の教 師発 問
で もよ く使 われ て い た。 これ は教 師 が 「
ゆ さぶ り
発 問」 をす る こ とに よ って児 童 の意見 の妥 当性 を
問 うや りと りで ある。
本研 究 で は この 「
ゆ さぶ り発 問」 を、 「
弁 証 法」
と い う思 考 過程 まで に高 め る こと によ って 、道 徳
的価 値 の発見 に至 る機 序 と捉 え 、そ の有 効 性 を授
業 で検 証す る ことを 目指 した。
実 際 の 教 師 と児 童 との 対 話 か ら、 本 研 究 で は、
対 概 念 の対 比型 対 話 を以下 のよ うな 弁証 法 的思 考
と してモ デル化 す る こ とを提 案す る。
一対概 念 の対比 型対 話 デザ イ ンモデル ー
(1)対
概 念の 形成
①
児 童 によ る快経 験 の回答
②
教 師 によ る不快 経験 の指 摘(ゆ さぶ り発 問)
③
教 師 によ る対概 念 の形成
(2)対
概 念の解 釈
④
新 命題 として高次 で術 目
敢的 な視点 を形 成す る。
⑤
その高次で術目
敢的な視点 か ら対概 念 を捉え直す。
⑥
対 概 念 にお ける不 快経 験 の方 を高次 で 術目
敢的
な視 点 か ら意 味 づ けを し直 す 。
⑦
その結果、不快経験 はもはや 不快 経験ではな く、
不可 欠 の経験 と して捉 え る ことが でき る。
この術 目
敢的な視 点 は 、快体 験 と不快 体験 との 両
方 を包 摂 す る高次 の新命 題 で あ る。傭 目
敢的な 視点
に立 った高次 の新命 題 か ら不 快経 験 を捉 え 直す と、
不 快経 験 は もはや 単 に不 快 な体 験 とい う意 味 には
な らず 、 必要 不 可欠 な体 験 にな る。 この 高次 で術
目
敢的な視 点が 児童 によ って発 見 された価 値 にな る。
そ して この思 考過 程 は 、低 次 な視 点で は対 立 関係
にあ る二 つ の概念 を、 高次 で傭 目
敢的 な視点 を形成
す る ことに よ って解 消 し、 二つ の概 念 は もはや対
立 で はな く両 方共 に必 要な 要 素で あ る こ とを立 証
す る思考 過程 で あ る。
このよ うな思考 過 程 を哲 学 の分 野 では弁 証 法 と
呼 ぶ。 本研 究 にお いて 、 こ う した 弁証 法 的思 考 が
道 徳 の 時 間で 適 用 可 能 で あ る こ とが実 証 され た 。
そ こで 本研 究 で は こ う した 思考 過 程 を弁証 法 的対
概 念の解 釈 と呼 ぶ。
4班 、7班 、1班 の児 童 は 、教 師 との対 話 の な
か で弁 証 法 的思考 を行 った 。以 下 にそ の思 考 過程
の具体 的実相 を示す 。
(1)対
概 念 の形 成
児童 の 意見 へ の教 師 の反 証発 話 に よ って児 童 の
意 見 と対 比で きる意 見 を教 師が 提 出 した 。 この対
話 によ って対 概念 が 形成 され た。 この対概 念 を児
童 が弁 証法 的思考 で解 釈 し、新 命題 を形成 した 。
(2)対
概 念 の解 釈
①4班
高次 の 、新 しい視 点 を形 成す る こと によ って不
快 経験 の 意 味 を捉 え直 し、 児童 が 発見 した価 値 は
「
怒 られ て どん どん成 長す る。」で あ った。
「
命が あ ってよ か った と思 うの は どんな ときか?
そ して 、 それ は どう してか?」 とい う学習 課 題 に
対 して 、 児童 は児 童 発話4に お いて 「
お母 さん に
会 え る」 と回答 した 。そ の回答 に対 し、教 師 は教
師 発話7に お いて 「
お母 さん に怒 られ る ときっ て
あ るで し ょ。」 と対 比意 見 を出 した。 この 対 比意
見 に対 し、児 童 は児童発 話5に お いて 「
成長 す る」
とい う新 しい視点 を形成 した。 この新 た な視 点 は
「
怒 られ る こ とに よ って 成 長 で き る」 と い う意 味
で あ る。 そ して 「
成 長す る」 と い う新 た な視 点 か
らみ た とき、 「
怒 られ る こ と」 は も はや 不 快 の経
験で はな く、成長 するため には不可欠な経験 になる。
低次 な 視点 で は不 快経 験 と して 捉 え られ る 「
怒
ら れ る 」 と い う事 実 を 、 「成 長 」 と い う 新 た に 形 成 し た 高 次 な 視 点 か ら と らえ 直 す こ と に よ っ て 、 不 可 欠 の 経 験 と し て 意 味 づ け を し直 し た の で あ る 。 ②7班 高 次 の 、 新 し い 視 点 を 形 成 す る こ と に よ っ て 不 快 経 験 の 意 味 を 捉 え 直 し 、 児 童 が 発 見 し た 価 値 は 「喧 嘩 して も楽 し い こ と も あ っ て 、 み ん な 大 き くな っ て い く。」 で あ っ た 。 「命 が あ っ て よ か っ た と 思 う の は ど ん な と き か? そ して 、 そ れ は ど う して か?」 と い う 学 習 課 題 に 対 して 、 児 童 は 児 童 発 話7で 「み ん な と鬼 ご っ こ を し て い る と き 」 と 回 答 し た 。 そ の 回 答 に 対 し 、 教 師 は 教 師 発 話10で 「友 達 と い て も 喧 嘩 す る こ と な い?」 と 対 比 意 見 を 出 した 。 こ の 対 比 意 見 に 対 し、 児 童 は 「大 き く な る」 と い う 新 し い 視 点 を 形 成 した 。 こ の 新 た な 視 点 は 「快 体 験(鬼 ご っ こ) と不 快 体 験(喧 嘩)と 両 方 経 験 す る こ と に よ っ て 大 き く な る 」 と い う 意 味 で あ る 。 そ し て 「大 き く な る 」 と い う 新 た な 視 点 か ら み た と き 、 「喧 嘩 」 は も は や 不 快 経 験 で は な く 、 大 き くな る た め に は 不 可 欠 な 経 験 に な る。 低 次 な 視 点 で は不 快 経験 と して 捉 え られ る 「喧 嘩 」 と い う事 実 を 、 「大 き く な る 」 と い う 新 た に 形 成 し た 高 次 な 視 点 か ら と らえ 直 す こ と に よ っ て 不 可 欠 の 経 験 と し て 意 味 づ け を し直 し た の で あ る 。 ③1班 高 次 の 、 新 し い 視 点 を 形 成 す る こ と に よ っ て 不 快 経 験 の 意 味 を 捉 え 直 し 、 児 童 が 発 見 し た 価 値 は 、 「寂 し さ や 痛 み を 感 じ る の は 自分 が 生 き て い る と い う こ と 。」 で あ っ た 。 「命 が あ っ て よ か っ た と思 う の は どん な と き か? そ して 、 そ れ は ど う して か?」 と い う 学 習 課 題 に 対 して 、 児 童 は 児 童 発 話11で 「寂 し い と き 」 と 回 答 し た 。 そ の 回 答 に 対 し 、 教 師 は 教 師 発 話14 で 「寂 し い の だ っ た ら命 は い らな い よ 」 と 対 比 意 見 を 出 し た 。 こ の 対 比 意 見 に 対 し 、 児 童 は 児 童 発 話14で 「生 き て い る と い う こ と」 と い う 新 し い 視 点 を 形 成 し た 。 こ の 新 た な 視 点 は 「苦 悩(寂 し さ と 痛 み)に よ っ て 生 き て い る と い う こ と を 実 感 す る 」 と い う 意 味 で あ る 。 そ し て 「生 き て い る こ と を実 感 す る」 と い う新 た な 視 点 か らみ た と き 、 「寂 し さ や 痛 み 」 は も は や 不 快 経 験 で は な く 、 生 き て い る こ と を 実 感 す る た め に は 不 可 欠 な 経 験 に な る 。 低 次 な 視 点 で は 不 快 経 験 と し て 捉 え られ る 「寂 し さ や 痛 み を 感 じ る 」 と い う事 実 を 、 「生 き て い る こ と」 と い う 新 た に 形 成 し た 高 次 な 視 点 か ら と ら え 直 す こ と に よ っ て 不 可 欠 の 経 験 と し て 意 味 づ け を し直 した の で あ る。 引 用 文 献 假 屋 園 昭 彦2014a道 徳 の 時 間 に お け る 対 概 念 の 対 比 型 授 業 デ ザ イ ン の 開 発(1)一 対 概 念 の 対 比 を と お し た 道 徳 的 価 値 の 本 質 へ の ア プ ロ ー チ ー 鹿 児 島大 学 教 育 学 部 教 育 実 践 研 究 紀 要 、23、 121-129. 假 屋 園 昭 彦2014b道 徳 の 時 間 に お け る対 概 念 の 対 比 型 授 業 デ ザ イ ン の 開 発(II)一 生 命 尊 重 を とお し て 生 き る 原 理 を 考 え る た め の 道 徳 の 時 間 を め ざ して 一 鹿 児 島 大 学 教 育 学 部 教 育 実 践 研 究 紀 要 、23、131-141. 假 屋 園 昭 彦 ・馬 膓 智 也 ・小 峯 三 朗 ・京 田 憲 子 2013教 師 と 児 童 とが 対 話 を と お し て 道 徳 的 価 値 を 発 見 す る 授 業 デ ザ イ ン の 開 発(1)一 小 学 校 低 学 年 に お け る 対 話 活 動 の 可 能 性 を 探 る 一 鹿 児 島 大 学 教 育 学 部 研 究 紀 要(人 文 ・社 会 科 学 編)、64、107-135. 假 屋 園 昭 彦 ・馬 膓 智 也 ・小 峯 三 朗 ・京 田 憲 子 2014教 師 と 児 童 とが 対 話 を と お して 道 徳 的 価 値 を 発 見 す る 授 業 デ ザ イ ン の 開 発(H)一 抽 象 命 題 と 具 象 命 題 の 往 還 型 対 話 に よ る 授 業 デ ザ イ ン の 開 発 一 鹿 児 島 大 学 教 育 学 部 研 究 紀 要(教 育 科 学 編)、65、87-123. 假 屋 園 昭 彦 ・永 田 孝 哉 ・中 村 太 一 ・丸 野 俊 一 2009対 話 を 中 心 と し た 授 業 デ ザ イ ンお よ び 教 師 の 対 話 指 導 方 法 の 開 発 的 研 究 鹿 児 島 大 学 教 育 学 部 教 育 実 践 研 究 紀 要 、19、123-163. 假 屋 園 昭 彦 ・永 里 智 広 ・坂 上 弥 里2010児 童 の 対 話 活 動 に 対 す る 教 師 の 指 導 的 参 加 の 分 析 的 研 究(H)一 対 話 に 対 す る 教 師 の 指 導 方 法 の 開 発 を 目指 して 一 鹿 児 島 大 学 教 育 学 部 研 究 紀 要(教 育 科 学 編)、61、111-148. 假 屋 園 昭 彦 ・永 里 智 広 ・坂 上 弥 里2011a児 童 の 対 話 活 動 の 指 導 方 法 と し て の 教 師 の 指 導 的 参 加 の 開 発 的 研 究(1)一 教 師 と 児 童 と の 相 互 影
響 性 の 分 析 一 鹿 児 島大 学 教 育 学 部 研 究 紀 要(教 育 科 学 編)、62、217-240. 假 屋 園 昭 彦 ・永 里 智 広 ・坂 上 弥 里2011b児 童 の 対 話 活 動 の 指 導 方 法 と して の 教 師 の 指 導 的 参 加 の 開 発 的 研 究(H)一 新 命 題 の 発 生 機 序 に 関 す る微 視 的 分 析 一 鹿 児 島 大 学 教 育 学 部 研 究 紀 要(人 文 ・社 会 科 学 編)、62、101-116. 假 屋 園 昭 彦 ・永 里 智 広 ・坂 上 弥 里2012a児 童 の 対 話 活 動 の 指 導 方 法 と して の 教 師 の 指 導 的 参 加 の 開 発 的 研 究(皿)一 指 導 的 参 加 モ デ ル の 構 築 一 鹿 児 島 大 学 教 育 学 部 研 究 紀 要(教 育 科 学 編)、63、97-105. 假 屋 園 昭 彦 ・永 里 智 広 ・坂 上 弥 里2012b児 童 の 対 話 学 習 に お け る 教 師 の 発 問 方 法 と評 価 規 準 の 開 発(1)一 対 話 展 開 の 予 測 に も とつ く教 師 の 中心 発 問 と 対 話 へ の 評 価 規 準 の 開 発 一 鹿 児 島 大 学 教 育 学 部 教 育 実 践 研 究 紀 要 、22、101-115. 假 屋 園 昭 彦 ・永 里 智 広 ・坂 上 弥 里2013児 童 の 対 話 学 習 に お け る 教 師 の 発 問 方 法 と評 価 規 準 の 開 発(H)一 対 話 展 開 の 予 測 に も と つ く 教 師 の 中 心 発 問 と対 話 へ の 評 価 規 準 の 開 発 一 鹿 児 島 大 学 教 育 学 部 研 究 紀 要(教 育 科 学 編)、64、101 -115 .