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「発達障害」の早期発見・早期支援

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Academic year: 2021

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125 ─  ─ 2018;68:125~126

 流 れ

「発達障害」の早期発見・早期支援

十枝はるか

1 1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院保健学研究科リハビリテーション学 「発達障害」の早期発見・早期支援の試み  2004年,発達障害者支援法が成立(施行2005年)され たこの年は,私が長崎大学に助手として着任した年である. 同法では,「発達障害」すなわち高機能自閉スペクトラム症 (以下,ASD)や注意欠如・多動症(以下,ADHD)等を もつ子どもの早期発見・早期支援が地方自治体の役割とし て唱えられている.不登校,ひきこもり,虐待といった社 会問題につながった子どものほとんどは,未診断でこれま でに特別な支援を受けた経験のない「発達障害」であった ことが明らかになってきており,「発達障害」のこのような 二次障害の予防のためにも早期発見・早期支援が課題とさ れている.  長崎県では,同法が施行される前のこの年から、「発達障 害児早期発見,相談支援体制整備事業」を開始した.「早 期発見」事業として乳幼児健康診査(以下,健診)におい て「発達障害」のスクリーニング精度向上に向けて取り組み, 有意に発見率の向上につながった.しかしながら,専門機 関のない市町村では専門的な支援が早期に開始できず,早 期発見・早期放置の現状があることも同時に明らかになっ た.  私は,「相談体制整備」事業として長崎県が2006年にペ アレント・トレーニングを導入した際に携わった.ペアレ ント・トレーニングとは,専門家が専門機関でADHDを もつ子どもへ支援を行うのではなく,その親が日常生活の 中で子どもへ適切に支援できるようになるためのプログラ ムである.本プログラムは行動療法に基づき,不適切な行 動を減らし適切な行動を促すための心理社会的治療とされ, 実際、子どもの行動改善に効果があることが明らかにされ ている.我が国でもADHDの診断治療ガイドラインにお いて「基本治療キットの次段階で考えるべき有用な治療法」 と推奨されている.1~2名のインストラクターが小集団 の親に実施する形態が主流になってきており,全10回, 隔週にて実施することが標準版とされている.近年では、 高機能ASDをもつ子どもの親を対象としたペアレント・ トレーニングも実施されるようになってきた.  長崎県においては,まずは「発達障害」をもつ子どもの 親のグループを対象としたペアレント・トレーニングの普 及を図った.その後,2008年からは、保育所の保育士等 を対象としたペアレント・トレーニング保育士版(以下, ティーチャー・トレーニング)を県の事業として始まり, 私もインストラクターとして参画した.保育士は,子ども の生活の大部分を共に過ごし,時には子どもにとって親と 同様の役割さえ担っている.その保育士が,他の子どもと 同じような対応では上手くいかない,「発達障害」があるの かもしれない,ちょっと「気になる」といった気づきの時 点で,保育士自身が保育所内でその子どもへの適切な支援 ができるようになるためのプログラムがティーチャー・ト レーニングである.すなわち,専門機関のない地域におい てでも,保育士が「気になる」と気づいた時点でその子ど 文献情報 投稿履歴:  受付 平成30年2月21日  採択 平成30年3月8日 論文別刷請求先:  十枝はるか  〒371-8514 群馬県前橋市昭和町3-39-22        群馬大学大学院保健学研究科リハビリテー ション学  電話:027-220-8953  E-mail: [email protected]

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126 ─  ─ 「発達障害」の早期発見・早期支援 もを支援できる体制づくりとして,私は作業療法士(以下, OT)として,ティーチャー・トレーニングを用いて保育 士との協働を開始したのである.  OTは,診断名の有無に関わらず子どもの発達支援を遂 行する役割があり,さらに専門機関で専門的支援を行うと いった医療モデルでの実践にとどまらず,保育所等の子ど もの生活の場において支援を行うといった生活モデルによ る実践も得意としている.よって,専門機関のない地域に お い て で も 子 ど も の 生 活 の 場 で あ る 保 育 所 で テ ィ ー チャー・トレーニングを実践しその効果検討を行うことは, OTが果たすべき役割の一端であると考え,2012年から 2013年の2年間は、科学研究費助成事業(学術研究助成 基金助成金 若手(B)課題番号:24700538)の助成も得 ることができ,「ティーチャー・トレーニングの効果に関す る研究」を実施することができた.以下,その結果を紹介 する. ティーチャー・トレーニングの効果に関する研究  専門機関のないA市の保育所において,OTが保育士を 対象に約半年に渡るティーチャー・トレーニングのプログ ラムを用いて介入した.介入期間の前後に1ヵ月のベース ライン期を設け,ベースライン前,介入前・後,ベースラ イン後の計4回,保育士から挙げられた子どもの「気にな る行動」に対する保育士の「重要度」,子どもの「遂行度」, 保育士の「満足度」を「カナダ作業遂行測定(COPM)」を 用いて測定した.対象者は7名であった.介入前から介入 後において「重要度」は有意に低下し,「満足度」は有意に 向上した(P0.01).さらに1ヵ月後においても「重要度」 も「満足度」は持続した.「遂行度」は介入前・後では効果 は認められなかったが,1ヵ月後には有意に向上した.す なわち,本トレーニングを受け「気になる行動」の「重要度」 が低下したことから,保育士の「気になる」程度が下がっ たと考えられる.さらに介入後においては,子どもの「遂 行度」は向上せずとも保育士の「満足度」は向上したこと から,子どもの行動に対する捉え方が変化し子どもとの関 係に満足できるようになり,最終的には子どもの「遂行度」 の向上,すなわち「気になる行動」の減少につながったと 考えられた. 「早期支援」の普及を目指して  私が現職に着任した2013年は,前橋市にて「5歳児就学 前健診モデル事業」が実施され,群馬県作業療法士会とし て「学校における外部人材活用・特別支援学校機能強化モ デル事業」が開始された.群馬県においても,「発達障害」 の早期発見・早期支援の取り組みが始まっている.そして 2017年,私が育児休業より復職したこの年は,伊勢崎市 において「5歳児就学前健診モデル事業」が開始され,私 はその事業に参画できる機会を得た.そして「早期発見」 だけでなく「早期支援」として,伊勢崎市においてティー チャー・トレーニングの普及を目指した研究を展開中であ る(科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金 基盤 研究(C)課題番号:16K01498).「発達障害」を薬物療法 といった医療の対象となる前に,適切な保育・教育環境に よる発達支援を提供することができる地域社会の構築とそ の人材を養成することが,OTとしての私の次なるチャレ ンジである.

参照

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27 はじめに 2005年より「大学及び高等専 門学校は,発達障害者の障害の状 態に応じ,適切な教育上の配慮を するものとする」と明記された発 達障害者支援法が施行されて以 降,全国の大学において,発達障 害学生支援のニーズが急速に高ま っている。さらに2011年8月に 「障害者基本法」が改正され,障 害者の定義に発達障害が明記され たことから,発達障害の社会的認