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『子どもの発達障害と支援のしかたがわかる本』

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Academic year: 2021

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『子どもの発達障害と支援のしかたがわかる本』

(西永堅著 日本実業出版社)

阿 部 利 彦

星槎大学紀要(Seisa Univ. Res. Bul.)共生科学研究 No.14 106〜107(2018)

星槎大学大学院教育実践研究科

星槎大学には魅力的な先生がたくさんおられるが、特別支援教育の分野でひときわ輝いて いるのは本書の筆者である西永堅氏であろう。西永氏は深い知識と豊富な経験に裏打ちされ た確かな学びを保障して下さる。笑いあり、時にぐさっと心に突き刺さる言葉あり、感動あ り……と、学び手の心(頭)に残る授業を展開する。星槎大学は多様な学び手が在籍してい るので、西永氏はまさに本学におけるインクルーシブな学びの実践者であると言えよう。

そんな西永氏から、発達障害の理解と支援について基礎からやさしく学ぶことができるの が本書である。とは言え、読み進めればただ基礎的なところだけにとどまらないことがわか るだろう。子どもたち一人ひとりの発達に合わせたサポート方法について、初心者には基礎 的な考え方を、実践経験のある者には新たな視点を獲得させてくれる。言うなれば本書自体 がインクルーシブな書なのである。読み手の実践度によって読み取り方が変わってくるので はないだろうか。半年後、一年後、なんども読み返せば、そのたびに新たな発見があるだろう。

本書が学び手にやさしいのは、まず発達障害に関わる者がかならず直面するような問題す べてをとりあげてくれていることである。支援者がぶつかる壁(バリア)を予想し、そのバ リアを丁寧に取り払ってくれる。また、見開き2ページで1つのテーマが学べる仕組みになっ ているので、どこから読み始めてもポイントを的確に学習することができる。

章の構成は、「発達障害とは何か?」、「自閉スペクトラム症とは何か?」、「ADHDとは何 か?」、「LDとは何か?」、「知的障害とは何か?」、「発達障害を対象とした支援方法」、「発 達障害の支援で大切なこと」、の7章から成る。発達障害に関する書籍には知的障害を除外 しているものも多く見られるため、発達障害に知的障害は含まれない、という誤解を招きや すい。その点、しっかり知的障害(ダウン症なども含む)についておさえられていることも 本書の確かさを示している。

さて、本書では発達障害のある人(子)の課題と見えるような行動を私たちがついとりが ちな行動と結びつけ、新たな見方を提供してくれる。たとえば、オウム返し(エコラリア)

については下記のように述べられている。

「これは、いきなり外国人に How are you? と聞かれたときに、本来なら I am fine.

Thank you と答えるべきところを、 How are you? とそのまま繰り返してしまうことがあ

るのと似ていると思います。(p.37)」

書 評

(2)

― 107 ―

そして、ついつい支援者が気にしてしまったり、改善を求めてしまったりする自閉スペク トラム症の「こだわり」についてはこのようにまとめられている。

「こだわりをなくすのではなく、許せることを広げていくのが発達支援だと考えられます。

(p.47)」

私たち支援者が自閉スペクトラム症の方の「こだわり」にこだわらない関わりをすること の重要性を伝えてくれるのである。

さらに、一部の教育現場では誤解も生じているインクルージョンについても、しっかり方 向修正されている。

「日本の目指しているインクルージョンは、障害のある子どももない子どもも一緒に学ば せることを第一に目指しているのではなく、従来の特殊教育も通常教育も、インクルードし て、それぞれのよさをさまざまな子どもたちの教育に活かしていこうとする考え方になりま す。(p.139)」

すべての子どもが同じ場所で一緒に学ぶべき、というのはインクルージョンとは言えない。

その子どもの発達・成長の場をしっかりと保障することが重要なのだ。

また、本書では西永氏のあたたかなまなざしも随所に感じ取ることができる。

「しかし、そうであればなおさら、発達障害が増えてきたからといって親や社会のせいと 原因探しをするよりも、どんなニーズ(支援を必要とすること)があっても生まれてきたこ とを喜べる社会になることが大切だと思いますし、そのニーズに対して支援方法を考える社 会のほうが素晴らしいと私は考えています。(p.15)」

これまで発達障害について「思考」や「性格」の課題とされていたことも、「知覚・認知」

の問題として見直す方向に変わってきている。今後、脳認知科学や医療技術の発展に伴い、

診断名も変化していくと思われる。診断名というのは分けるためのものではない。現時点で の診断名をあくまで支援の手がかりとし、目前の子どもが「何に困っているのか」をしっか りとらえていく、支援者は「何を大切にすべきか」を見失ってはいけないということを本書 は示唆してくれる。診断名にこだわりすぎない、という支援者の姿勢が求められているので ある。

本書は、発達障害のある人(子)をリスペクトし、彼ら彼女らへのやさしさにあふれている。

ただし、優しい本ではあるが、易しい本ではない。支援に迷った時に何度も読み返し、「今、

ここ」での自分と本書との対話の中で学びを深めていく、そんな一冊なのだ。

参照

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