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平成26年度アーチル発達障害基礎講座 「発達障がい児者支援の展望」 ~望ましい支援のあり方について~

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Academic year: 2021

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(1)

平成26年度アーチル発達障害基礎講座

「発達障がい児者支援の展望」

~望ましい支援のあり方について~

小児科医 今 公弥 1

本日の流れ

1. 現在、発達の障害はどうとらえられているか

2. 新しい診断基準からみると

3. 支援する立場からみると

4. 望ましい支援とは(生活障害の予防を意識

して)

2

発達特性+生活の障害=発達障害

発達凸凹+適応障害=発達障害(杉山) 発達上のくせがなかなか理解されず、適切な援助や 練習の工夫がうまくなされないことで、社会生活上の 困難が、本人とその周囲におきている状態 単なる「早期発見」 というよりは、子育て支援を充実 させ予防策の取られる中で「適正発見」するほうが望 ましい(発見できなくても対応できるスキルの獲得) ASWD(本田)を増やすことで成人相談件数の減少が期待される AS(D)を増やすスキルを見つけ、ひろめよう(今) 3 発達の障害の成因はどうとらえられてきたのか? -自閉症を例に取れば- • 極端な環境因説: (自閉症心因論)育て方が原因で生じた ものであり、育て方によって治癒する(1950-1970年代)『まと もには取り合われないが、根強く残り、ゆり戻す』 • 遺伝的要因説: (先天的な脳障害説)遺伝的に規定される ものであり、生涯変化しない(1980-2000年代)『一卵性双子 は確かに似ているが、どうして違うところができるの?』 • 遺伝-環境相互作用説: (エピジェネティックスの考え方)遺 伝的に規定される部分(ゲノム)と環境により修飾を受け発 現が変化する部分(エピゲノム)がある(2000年代-)『遺伝的 に弱いところを持つものが、ある環境にさらされ発症する。環 境の変化により変えられるものがあるはずだ』 • 科学的証拠は?・・・・・いまだ確定しているとはいえない。 4

(2)

小児神経科医が考えている発達障害の成因 環境要因 遺伝要因 環境 × 遺伝 心因論・しつけの問題 全遺伝子配列の解明 エピジェネティックスという考え方 環境因によって遺伝子 に修飾が施され、発現 様式は変化する 揺れ動くが、結局、常識 的なところに落ち着くの ではないだろうか? 誰もが見ている常識的な現象に理論的な説明をつけてきたのが科学の歴 史と考えれば、我々は、極端に偏らない考え方と態度を持つ必要がある。 5

新しい診断基準からみると

6

代表的な発達障害(新診断基準との比較)

知的能力障害群(知的発達症) コミュニケーション症群 自閉症スペクトラム症 注意欠如・多動症 限局性学習症 運動症群 精神遅滞(MR) 広汎性発達障害(PDD) 注意欠如/多動性障害 (AD/HD) 学習障害(LD) 発達性協調運動障害(DCD) 自閉症スペクトラム障害 (ASD) 注意欠如/多動性障害 (AD/HD) 特異的学習障害 (SLD) 知的機能障害(ID) 運動障害(MD) 神経発達障害 新しい診断基準から見る発達障害 DSM-5より改変 コミュニケーション障害 (CD)

(3)

新診断基準(DSM-5)によりかわったところ • 精神遅滞(MR)から知的発達障害へ(ID:disorderからdisabilityへの意 識変化) • 広汎性発達障害(PDD)から自閉症スペクトラム症(ASD)へ • ASDの特性を社会的コミュニケーション・相互関係とこだわり・パターン 的行動の二つの特徴でとらえた(三つ組から二つ組へ) • 自閉症・アスペルガーなどの名前が消えた • 社会的要求が高度になるまで特性がはっきりしないこともあることが 明記される • 社会的コミュニケーション症(SCD)という名前が登場 • 機能障害の程度が重視された • ADHDの発症年齢7歳から12歳へ(大人のADHDをより意識した) 9

診断について

• 早期の適切な関わりが、発達を促すことにつながる • 正確な診断は、正しい対応につながる • 早期の診断→『適正な時期』の診断(発達には時期 がある) • 正確な診断→正しいがすべての状態を表すとは限 らない • 支援には対応策の積み重ねが重要 • 診断基準は変化するが、その人への対応は基本的 に同じはず • 診断はなくても対応のできる力を蓄えよう 10

診断と支援

• 生活のしにくさを見つけ る • 生活しやすいように支 援する(そのための知 識・技術) • 生活の障害を予防する • 予防には一般の状態と 本人の特性の両方を知 る必要がある • 病理を見つける(その ための知識・技術) • 生理的状態に近づける • 病理的状態にならない ように予防する • 予防には、生理的状態 と病理的状態の両方を 知る必要がある 11 診断→行動特徴の確認と除外診断 支援→行動特徴と要因確認、さらに将来に学ぶ姿勢も 個人の特徴 現在の環境 生育環境 出 現 す る 行 動 診 断 医者の目 支援する目は過去・ 現在そして将来に向 けられる 12

(4)

将来に学ぶ

成人期・老年期に

いま必要な支援と予防のヒント

があるはずだ

13

発達障がいを整理してみる

A) 知的発達障害(ID)・・知能のおくれ・・噛み砕か ないとなかなかわからない B) 自閉症スペクトラム障害(ASD)・・感覚のゆが み・・同じ言い方だとわからない C) 注意欠如・多動性障害(ADHD)・・行動のかたよ り・・・わかっちゃいるけどやめられない D) 発達性協調運動障害(DCD)・・運動の不器 用・・・わかっていても動かせない これらへの基本的対応を覚えておいて損はない 14

望ましい支援とは

(生活障害の予防を意識して)

ASD者が成人期に社会適応できる要件

自律スキルと社会スキルの確立

1. 自律スキル

• 自己肯定感を持つ

• 自分の限界を知る

2. 社会スキル

• ルールを守る

• 他者に相談できる

(本田:2013年アーチル療育セミナーより) すべての人に通じるもの であろう

(5)

発達障がい特性を持つことは

いろいろな障害のハイリスク

• 二次障害(本人の特性に対する周囲の無理

解・無配慮)

• 反応性精神障害(変化に弱く、不安を持ちや

すく、誤解しやすい。慢性的にストレスの多い

環境におかれやすい)

支援には大人の精神医学・臨床心理学の知識も必要 17

予防的かかわりの重要性

• 10%はまれなケースではないが、90%を無視

した支援は不可能(理解を広める工夫)

• 子どもの時の特徴はおとなになっても残る事

が多い

• 生活の障害を予防するという発想

• 多様な発達特性を容認し、その人たちとコミュ

ニケーションをとれるスキルを持つ人間の育

成→妊婦からの子育て教育・学齢期からの多

様性・子育て教育→結局は二次障害予防・マ

ルトリートメント予防につながる→母子保健・

教育との協働

18

最後に確認、今後の支援の方向

1. 発達特性を生活の障害にしない支援技術を

持ちたい(当事者へ:現実的対応と予防策)

2. 多様性教育の充実による生活の障害の予

防方略を意識したい(周囲へ:障がいのみに

目を向けず、多様な感覚・スキルを持てる人

育てを、母子保健・教育との連動)

3. 強度行動障害への対応策を確立したい(充

実と同時に予防的方策の確立)

4. 成人期の問題から小児期へのフィードバック

を意識しよう(自らも伝える意識を)

19

付録

【話を聞きなさい!】→「話を聞いているように見える態度をとりなさい」 態度は教えられる可能性・練習できる可能性がある。 20

(6)

子育ての基本原則(1)

1. 何をするかわからなければ、できない

2. わかってもやりたくなければ、やらない

発達の特徴を知ったほうがわかりやすい方法をイメージしやすい すると自分にとって良かったと思えることが待っていれば、またした くなる気持ちは起きやすい ただし、何がうれしいかはその人の特徴次第 子どもたちは将来を実感できはしない→保護者は子どもたちより先を経験している

わかりやすくする工夫とやりたくなる工夫

21

子育ての基本原則(2)

子どもには、声をかければかけるほどその行動

が増えていく傾向がある

止めてほしい行動よりも

やってほしい行動に

声をかけていく癖をつけよう

22

なかなかわかりにくいひとへは

IDの対応を借りてみよう

スモールステップ

1. 紙一枚のステップを作るセンス 2. それでも続けば目標に近づけることを示す 3. 結果と同様に経過も評価 4. 形に残す 5. 到達よりも接近に協力したい 門前の小僧習わぬ経を読むのなら・・・・・・・

(7)

なかなか慣れにくいひとへは

ASDの対応を借りてみよう

25

ASDへの基本対応

1. 言葉だけではなく、実際に

「見せる

2. この先がどうなっていくのか

「予定」

を見せる 3. こうすればうまくいくという

「成功体験」

を繰り 返す 26

わかりやすいものを使う

• 身振り・絵カード・写真・文字を活用しよう(くれぐ れも言葉だけの対応をしないように) • 言葉のわかる子でも、見て確認すると安心するこ とがある • 見たものに左右され易い • 話し言葉を教え込むよりコミュニケーションの道 具を豊富にしたい

27

見通しをつける

• 構造化の考え方 • これから何をするのか、どうしたら終わりになって 次に何をするのか • この場所ではいつもこれをする 1.ご飯を食べる 2.服を着替える 3.仏壇に手を合わせる 4.学校に出かける ご飯の 場所 着替え の場所 寝る 場所 確認の 場所 28

(8)

他者の視点を持つ修行

1.実際にビデオにとる 2.一緒に見る 3.考えを出し合う 4.ビデオの目になってくれる人を探す 5.その人の目でみたことを想像する 常にモニターが大切 べろべろべー 注)一緒に見るのが 楽しいと思えること が土台ですよ 29

多動で落ち着かないひとへは

ADHDの対応を借りてみよう

30

1. 近付いて

(C

lose)

2. 落ち着いて

(C

alm)

3. 穏やかに

(Q

uiet)

ADHDへの基本対応

気持ちを切り替える方法は?

1. タイムアウト

2. クールダウン

3. リカバリー

① ② ③ 頭の中でやれる ようになれば・・・ 般若心経 を唱える

修行だね!

すべて具体的に決めよう 決めれば

(9)

衝動性のコントロール?とは

おもう

する

く っ つ い て い る

別の行動

おもう

する

別の行動 「だるまさんが転んだ」 「10数えてみよう」 「書いてみよう」などなど 練習

しない

うまくいかなければ、方 法を変えよう 33 いやな気持ち イライラ感 大声で騒ぐ 人をたたく 共感できる 行動(表現)が不適切 行動(表現)を変えると協力できる できない 注意された 思うとおり いかない 共感を持って行動変容を求める カラオケで大声を出す 止めるだけでは芸がない 「これ」を伝えたい 具体的行動を出すと練習できる・応援しやすい 34

バスの中やお集まりなど静かにしなければなら

ない時に、思いついたまま話し続けるが、やめさ

せる方法はあるか?

口をふさぐ ふさいだ手を 外そうとする さらに力を入れる 力が強くなれば話してもよ いことを教えている バスに乗ったら本を見ようと決める 本を見たら降りてからごほうびが あることを伝える 練習する 乗るときにすることを決めしたく なるように工夫している こんなときは? 35

こんな配慮に気づく先生はエライ!

具体的なイメージができる相談や支援 どこから切るの? ココ! 36

参照

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