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心理学ワールド 77号 巻頭言 心理学のフロンティア─心理学は生き残れるか 西川 泰夫(上智大学 名誉教授/日本ヒューマンファクター研究所 顧問) | 日本心理学会

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Academic year: 2021

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巻 頭 言

Profile─西川泰夫 慶應義塾大学文学部卒 業。同大学院社会学研 究科修士課程・博士課 程修了。文学博士。上 智大学教授,北海道大学 大学院教授,放送大学教 授・客員教授を歴任。日 本心理学会終身会員,元 評議員・専門別議員,認 定心理士。日本認知科学 学会元編集委員長,日本 基礎心理学会終身会員, 元運営委員,日本理論心 理学会理事,北海道心 理学会名誉会員など。専 門は心理学史,認知科 学,数理心理学。著書は 『心をめぐるパラダイム』 (左右社),『新版 認知 行動科学』(放送大学教 育振興会),『心理学史』 (共編著,日本放送協会), 『認知科学』(編著,至文 堂),『心の科学のフロン ティア』(培風館)など。  筆者は,かつてこのタイトルを主,あるいは副としてそのつど個別の 論旨で10数編の心理学論考を公刊した。各編ごとに帰結をもつが,文 末に〈未完〉と記したものも多い。だが,その〈続き〉に当たる論考 は,中断したまま現在に至っている。現在に至るまで筆者の学問への関 心事,研究テーマが多岐にわたり自身それなりの確信を得るのに時間を 要するためである。さらに,核心となる論点は,そもそも心理学とはい かなる学問か,である。しかし,内部にある者の仕事は具体的な実践活 動と成果(論文数)をあげることであって,そうすることの意味づけや 価値・評価ではない。それには外部の視点,メタ認識が要る。この自覚 的で独自な営みによって研究者が暗黙に共有する考え方,検証の手続き や方法論,理論やモデルなどの意味とその評価などが可能になる。この 前提をパラダイムというが不変固定したものでなく,新たな事態に応じ てパラダイム・シフトは必然である。  ところで,筆者の根本を問う姿勢の源は,研究者を志し大学受験を決 意した頃であった。しかし,当の心理学について何一つ知らなかった。 子供の頃からの漠然とした科学者へのあこがれと算数やラジオ工作に親 和感があっただけであった。したがって,心理学と科学の関わり,いわ んや本格的な数学や物理学や電子工学,生理学などとの関係性など知る 由もない。  この無知を解決するため,一つは人類文明史の始めから現在に至る哲 学者の思索,心の科学哲学史に通じる必要がある。また,近代科学革命 をもたらした物理学や生理学,科学に共通の基盤である数学の習得は基 礎リテラシーとして必須である。この科学革命の影響のもと哲学から自 立した新心理学,つまり現在の心理学,科学的・実験心理学が培った, 心や行動,無意識をめぐる多彩なパラダイムの歴史的変遷,心理学史の 学びが要る。また現状,コンピュータを中核とする高度科学技術情報化 社会での新たな局面の認識が要る。とくに人工知能(AI)研究,脳神 経科学,量子力学,複雑系やカオスなどの非線形系科学などの進展をあ げる。この状況で,今あるような心理学がそのまま将来に生き残ること はありえない。新たな局面への洞察のもとで創造的に新・新心理学を構 築する取り組みが欠かせない。〈未完〉

心理学のフロンティア

─ 心理学は生き残れるか

上智大学 名誉教授/日本ヒューマンファクター研究所 顧問

西川泰夫

(にしかわ やすお)

参照

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