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小学校教員の運動観察力に関する研究

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宇都宮大学教育学部教育実践紀要 第2号 2016年8月1日

小学校教員の運動観察力に関する研究

―男子6年生の走り幅跳びを事例として―

那花 和哲

・尾崎  大

**

・加藤 謙一

***

芳賀町立芳賀北小学校

宇都宮大学大学院教育学研究科

**

宇都宮大学教育学部

***

Abstract This study examined the effect of learning key points for observing elementary students long jumps on the observation skills of 11 elementary school teachers. The elementary school teachers as observers learned points of observation by watching a DVD that showed students movements when performing the long jump clearly and in detail for 1 week. Before and after learning, a test to confi rm their skills was conducted. Based on their correct test answer rates and contents of their free descriptions, the teachers motor observation skills and changes in their awareness of observation-based assessment were examined. The results revealed improvements in these items after learning.

 キーワード:観察評価,走り幅跳び,学習用DVD

  Kazuaki NABANA*, Dai OZAKI**, Ken-ichi KATOH***:Elementary school teachers motor observation skills;The case of sixth-grade male students long jump

Keywords :observational evaluation, long jump, a DVD for learning

 * Haga-Kita Elementary School, Haga-machi. ** Graduate School of Faculty of Education

Utsunomiya University

*** Faculty of Education Utsunomiya University (連絡先:[email protected]:著者 3) 1.緒言  文部科学省は,中央教育審議会1) の答申を踏まえ て,小学校学習指導要領を改訂した.そこでは,体 育科において運動技能の基礎・基本の習得が一層重 視され,児童に運動の基礎となる動きや基本的な技 能を着実に身に付けさせることが求められている.  体育の授業において,児童一人一人が着実に基礎 となる動きや基本的な技能を身に付けているかどう かを教員が的確に把握するためには,観察評価を適 切に行わなければならない.小学校学習指導要領4) をもとに,栃木県教育委員会8) は,技能を評価する 配慮事項として,運動の時間や距離などの量を他人 と比較するのではなく,適切な動きを身に付けてい るかどうかを評価することをあげている.そのため には,体育を指導する教員が技能を指導する上で, 児童の動きを観察的にとらえて質的に評価する力, すなわち,的確に運動を観察する力が必要となる. このような運動観察力を重要視する考え方は新しい ものではなく,これまでも著名な運動学者がその必 要性を指摘している.  マイネル3) は「運動観察力は,音楽教師が音楽を 聴き分けることとまったく同様に,体育教師にとっ て基本的な,中核的な能力である.何一つ見抜けな い者は運動経過を修正することができない.われわ れは何を見ているのか,何を見ることができるのか ということは決定的なことである.体育教師は結果 からその成り立ちへと目の付け所や自分の注意を戻 してゆかなければならない.」と述べている.言い 換えれば,体育教師は,学習者の運動技能を高める ために問題となる修正点を把握するための運動観察 力を身につけることが必要となる.  同時に,マイネル3) は「多くの教師たちは,全く 素人がするように,その注意をもっぱら結果に,運 動成果に向けてしまっており,そこでは,達成に至 る成り立ちは見落とされてしまっている.」とも述 べている.このことは,運動経過のような質的な評 価よりも,運動成果のみで評価していることを意味 している.  ところで,日本体育協会6) が基礎的動きとしてあ

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げている運動のひとつに走り幅跳び(以下「走幅跳」) がある.走幅跳は,助走速度を利用して決められた 踏み切り(以下「踏切」)ゾーンで踏み切り,より 遠くへ跳ぶことを楽しむ運動としてとらえられてい る4) .しかし,運動技能を観察的に評価することに 関して,教員の中にはその評価結果の妥当性に不安 を感じていることも考えられる.そのような観察的 評価への不安意識があるゆえに,小学校教員が,走 幅跳の動きの質を評価することよりも,跳躍距離と いった客観的数値を技能評価とすることも考えられ る.しかし,跳躍距離を評価することは,前述した 運動成果を評価することに他ならない.一般に小学 校では,体育を専門としない教員が多い.そこで, そうした教員にも動きの質が理解できる運動観察の 観点を提示して,その観察力を高めるような方策を 考えることは,重要である.  これまでに,基礎的動きの評価方法や,評価者の 運動観察・評価力向上のための方法に関する研究2)5) では,運動観察の評価観点を提示したり,それらを 学習したりすることにより,運動観察力は向上する ことが明らかにされている.これらの研究は,いず れも体育学習の評価の課題を改善する上で,有益な 知見を提供している.しかし,これらの研究におけ る観察者は大学生や保育士が多く,小学校教員を対 象にしたものは数少ない.したがって,小学校教員 を対象として運動観察力の学習効果を明らかにする ことは有意義であると考えられる.  本研究の目的は,小学校教員を対象として,児童 の走幅跳における観察の観点について学習し,その 学習効果を検討することである. 2.研究方法 (1)観察者  観察者は,小学校で体育授業を担当している教員 11名(経験年数18.7±11.1年)であった.そのうち, 体育を専門としている教員は1名であった. (2)観察対象および観察モデルの抽出  1)観察対象の動作とその評価観点  観察対象となった動作は,小学生の走幅跳動作で あった.観察評価では,先行研究7) をもとに男子小 学6年生 20名の動作映像を用いた.  評価観点は,日本体育協会6) の基礎的動きにある 走幅跳の観察評価の観点を一部改変して使用した. 観点の内容は,それぞれ,全体印象が「助走のスピー ドを生かして,スムーズに踏み切って跳躍するこ とができる」,部分観点①が「踏切脚を力強く伸ば して前上方に跳び出している」,部分観点②が,「尻 と膝がほぼ同じ高さで前方へ両足着地している」で あった.評価は,全体印象ではA(十分満足できる), B(おおむね満足できる),C(努力を要する)の3段階, 部分観点①―②では,それぞれの項目について「で きている」を○,「できていない」を×として評価 した.  2)観察モデルの抽出  先述した評価を,キネマティックデータを用いて 客観化するために,踏切前3−0 mの助走区間速度 と以下のα―γの跳躍の動作要因を求めた.すなわ ち,跳躍角度(α)は,踏切脚が離地した直後の身 体重心の移動を示すベクトルと水平線がなす角度, 着地角(β)は,水平線と砂場に初めて触れた脚(踵 と大転子を結んだ線)がなす角度,着地直後の膝か ら大転子までの高さ(γ)は,着地直後の大転子中 心と膝のそれぞれの高さの差であった.  図1に,走幅跳の観察評価の観点とそれらに対応 させた動作要因を示した.全体印象は,踏切前3− 0 mの助走区間速度,部分観点①は跳躍角度(α), 部分観点②は着地角(β)および着地直後の膝から 大転子までの高さ(γ)にそれぞれ対応させた.  また,評価観点に対応させた動作要因の分析結果7) にもとづいてそれらを以下の基準に当てはめ,観察 モデル10名を抽出した.すなわち,全体印象は,踏 切前3−0 mの助走区間速度の数値が平均値+標準 偏差より大きいものを評価A,平均値±標準偏差の 範囲内のものを評価B,平均値−標準偏差より小さ いものを評価Cとした.部分観点①は,跳躍角度の 値が平均値+0.5標準偏差より大きいものを○,平 均値−0.5標準偏差より小さいもの×,部分観点② は,着地角および着地直後の膝から大転子までの高 さの差の値がともに平均値−0.5標準偏差より小さ いものを○,平均値+0.5標準偏差より大きいもの を×とした.なお,部分観点②は,これら2つの動 作要因のうち,どちらか一方が○のものを評価○, どちらも×のものを評価×とした.  抽出した10名の客観的評価の内訳は,全体印象 がAで部分観点①と②のどちらも○のものが2名で あった.全体印象がBについては,部分観点①と部 分観点②のどちらも○のものが2名,部分観点①は ×,部分観点②は○のものが3名,部分観点①と部

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分観点②のどちらも×のものが1名であった.全体 印象がCについては,部分観点①は×,部分観点② は○のものが1名,部分観点①と部分観点②のどち らも×のものが1名であった. (3)観察評価テスト  観察評価テストは,抽出した観察モデルの走幅跳 動作の映像をもとに,学習前後に観察者に対して, それぞれ1回ずつ実施した.テストは,事前に図1 に示された走幅跳の観察の観点についての説明を受 けた後,観察評価した.テストの手順は,観察モデ ル1名につき10秒間の間隔をあけて3回繰り返し観察 した.そして評価は,全体印象では,A,B,Cで, 部分観点①と部分観点②は○または×で,それぞれ 回答させた.観察者11名の回答をもとに,preおよ びpostテストの正答率をそれぞれ算出した.また, preおよびpostテストの観察的評価に関する感想を 自由記述させた.なお,preテストとpostテストでは, 観察モデル10名は同一であったが,postテストでは それらの再生順番を入れ替えて行った.また,観察 モデルと観察者は,それぞれ別の小学校に所属する ものであった. (4)学習用DVDによる評価観点の学習  観察者は,preテスト終了後,小学生の走幅跳 を観察するための観点を学習するために,学習用 DVDを用いて学習した.学習用DVDは,十分満足 できる動きのモデル(以下「模範モデル」)の動作 から,評価の観点が理解できるよう編集した.すな わち,スロー再生(2回)→全体印象のスロー再生(2 回)→部分観点①のスロー再生(2回)→部分観点 ②のスロー再生(2回)→通常再生(2回)となって いる.  その映像の中に全体印象や部分観点①−②の観察 点のコメントを挿入した(図2).なお,1回の視聴 に要する時間は3分であった.このDVDを用いて学 習した期間は,7日間で,毎日1回以上,少なくとも 7回は視聴するように依頼した. (5)正答率の算出方法  preおよびpostテストの正答率は,全体印象およ び部分観点①−②の客観的評価について,それぞれ の客観的評価と一致した回答数をもとに集計し,算 出した. (6)研究に関わる観察者の同意  本研究の実施にあたって,予め校長に研究内容や データの取り扱いについて十分な説明を行い,校長 を通して研究に関わる観察者の同意を得た. 3.結果および考察  一般的に動作の学習は,連続写真や動きのポイン トなどを拠り所とすることが多い.それに対して本 研究では,望ましい動作を有した模範モデル(1名) 㻌 㻌          ホ౯ࡢほⅬ ホ౯ࡢほⅬ࡟ᑐᛂࡉࡏࡓືసせᅉ ඲య༳㇟ ຓ㉮ࡢࢫࣆ࣮ࢻࢆ⏕࠿ࡋ࡚ࢫ࣒࣮ࢬ࡟㋃ࡳษࡗ࡚ 㻌  ㋃ษ๓㸫㻌 P ࡢຓ㉮༊㛫㏿ᗘ  ㊴㌍ࡍࡿࡇ࡜ࡀ࡛ࡁࡿ 㻌 㻌  㒊ศほⅬձ ㋃ษ⬮ࢆຊᙉࡃఙࡤࡋ࡚㸪๓ୖ᪉࡟㊴ࡧฟࡋ࡚࠸ࡿ  Į㸸㊴㌍ゅᗘ 㒊ศほⅬղ  ᑼ࡜⭸ࡀ࡯ࡰྠࡌ㧗ࡉ࡛㸪๓᪉࡬୧㊊╔ᆅࡋ࡚࠸ࡿ   㒊ศほⅬձ㻌 㒊ศほⅬղ㻌 ȕ㸸╔ᆅゅ Ȗ㸸╔ᆅ┤ᚋࡢ⭸࠿ࡽ኱㌿Ꮚࡲ࡛ࡢ㧗ࡉ ඲య༳㇟ 図1 走幅跳の観察評価の観点とそれらに対応させた動作要因

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の動画を用いた.その理由は,児童の動画をもと に学習することによって観察力を高めることが期待 できると考えたからである.以下は,動作分析にも とづいた客観的評価と映像観察による質的評価の比 較,および観察者の感想をもとに観察学習の効果に ついて考察する.  表1に,学習前後における観察モデル10名の全体 印象,部分観点①および部分観点②の評価に対する 正答率,表2に,学習前後における観察モデル10名 の全体印象の評価内容,表3にpreおよびpostテスト に記述された感想をそれぞれ示した. (1)全体印象について  観察モデルaは,学習後に全員が正答できた(pre: 81.8%,post::100%)のに対し,観察モデルbは, 正答率が低下していた(pre:18.2%,post:9.1%). このことは,評価Aの2名(観察モデルaおよびb) は客観的評価が同じであるにも関わらず,観察者の 評価の正答率は,大きく異なっていたことを示唆し ている.両者の評価の違いは,なぜ生じたのであろ うか.  その原因として,観察モデルaは,模範モデルの 動きと類似していたことが考えられる.それに対し て,観察モデルbは,模範モデルのような動作の特 徴を示さず,動作が評価Aのレベルに達していない と観察者に判断されたと推察される.すなわち,客 観的評価がAであっても観察者には,十分に助走の スピードを生かしてスムーズに踏み切ったとは判断 されていなかったことを示唆している.  一方で,評価Cの2名(観察モデルi,j)は,どち らもpostテストの正答率が80 %以上(観察モデルi: 90.9%,観察モデルj:81.8%)の高い値を示した. この結果は,学習によって未熟な動作は理解されや すかったことを示唆していると考えられる.  評価Bの6名(観察モデルc,d,e,f,g,h)は, 評価の正答率が向上したもの(d,f,g)と,評価 の正答率が低下したもの(c,e,h)に分かれた. このことは,前述の観察モデルaとbの事例と同様 ことが考えられる.また,学習後に正答率が70%以 上の値を示したモデルは1名のみ(観察モデルf)で あり(表1),観察モデルf以外の5名の観察モデルに 対する観察者の回答は,観察モデルcでは評価A: 54.5%,評価B:45.5%,観察モデルgでは評価B: 63.6%,評価C:36.4%のように大きく2つに分かれ ていた(表2).さらに,観察者の感想には,次のよ うな記述がみられた.「他の子と見比べてしまう」, 「Cの子が分かったら,それよりはよいと思われる 子をBとしてしまった」と,観察モデル同士を比較 して評価していたことや,「全体印象はBをつける ことが難しく迷った」,「一定の感覚でとらえきれず, 書き直すこともあった」,「自分の評価にブレを感じ た」であった(表3).これらのことから,観察者は 評価の判断基準を十分に定義することができずに, 評価していたことが推察される.  本研究の全体印象の評価観点は,動作分析の数値 と対応させて踏切前3−0 mの助走区間速度のみを 対象とした.しかし,実際の評価において観察者は 助走から着地までの一連の動作を観察したものと考 えられ,観点の示し方に課題が残された.  以上のことから,走幅跳の特徴を全体印象として とらえることは,かなり優れた動きを示すものや, 反対に未熟な動きを示すものは,観察的に評価がし やすいが,動きに特別な特徴を示さないものの評価 図2 学習用DVDに編集されている評価の観点

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は難しいことが示唆された. (2)部分観点①について  部分観点①は,学習後に正答率が向上した観察モ デルが6名(b,c,d,f,h,j),正答率の向上はみ られなかったが,その値が90 %以上(90.9−100%) のものが3名(a,g,i)であり,観察モデル全10名 の う ち8名(a,b,c,d,g,h,i,j) の 正 答 率 が 70 %以上(72.7−100%)であった.この結果は, 部分観点①の学習に効果があったことを示唆してい る.その理由としては,学習用DVDにより,注目 すべき動きの「良い例」と,「良くない例」を図で 示したり,スロー再生や静止画を組み合わせたりし て編集したことがあげられる.このことから,観察 者は,学習を通して踏切動作の良否の判断基準をと らえることができたと考えられた.  また,postテスト後の感想からも「部分観点の評 価がよく見えた」,「部分観点を自分でしっかり把 握して観察することで児童の動きをよく見るように なった」,「部分観点のとらえ方が少し分かってきた ように思える」など,部分観点①に関する記述が増 加した.このことは,部分観点①に対する視点が理 解できるようになったことを示唆している. (3)部分観点②について  部分観点②は,観察モデル10名のうち,正答率が 向上したものが6名(a,b,c,e,f,g),正答率の 向上はみられなかったが,その値が90 %以上のも のが2名(h:90.9%,j:100%)であった.しかし, 正答率は向上したが,観察モデル10名のうち5名(b, d,e,f,i)が70 %未満(27.3−63.6%)であった. このことから,部分観点②は部分観点①とは異な り,その学習に効果がみられなかったことが示唆さ 表1 学習前後における観察モデル10名の全体印象,部分観点①および部分観点②の評価に対する正答率 表2 学習前後における観察モデル10 名の全体印象 の評価内容

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れた.それでは,なぜ部分観点①とは異なる結果と なったのであろうか.  この原因として,部分観点②に対応した客観的な 判断基準を2つ設定してしまったことが考えられる. すなわち,部分観点②を客観的に評価するための動 作要因は,1)着地角と2)着地直後の膝から大転 子までの高さの2つであった.また,その評価の基 準は,2つの動作要因がともに×の場合は評価を×, どちらか一方でも動作要因が⃝の場合は評価を⃝と した.それに対して観察者は,どちらか一方でも動 作要因が×であれば,評価を×としたと考えられる. そして,このことが部分評価②の正答率を下げた要 因と考えられた.実際に,正答率が低かった観察モ デル(b,d,e,f,i)はすべて○と評価されたも のであった.したがって,評価基準を決める際には, 観点に対応させた動作要因を1つに絞る必要がある と考えられる. (4)観察者の意識について  preテストの自由記述の内容の多くは「正しく評 価できるか不安」,「ごくわずかな時間での動きの中 の評価なのでとても難しかった」などのように,運 観察的に運動を評価することへの不安やその難しさ について記述するものが多く,運動の質を評価する ことに関する重要性を指摘する記述は少なかった. しかし,postテストの自由記述の内容では,観察評 価への不安や難しさについて記述するものは少なく なり,また,「走幅跳だけでなく,他の運動もポイ ントをよく知り,観察評価したい」,「身長が低いた め記録が伸びなくてもきちんと走幅跳のフォームが できている児童をしっかり認めてあげる大切さを学 べた」のように運動の質を評価することの意義を理 解する記述が多くみられた.このことは,観察学習 を通して体育を専門としない教員に対して,体育の 学習では動きの質に着目して評価しようとする必要 性を促したと考えられる.  以上のことから,観察評価の観点を学習したこと により,体育を専門としていない小学校教員であっ ても運動を観察的に評価することができる可能性 や,教員の観察的評価の意識の向上がみられた.と くに,その動きのポイントとなる部分的な観点を知 り,観察的に評価できることは,子どもの動きの細 かな修正点を把握し,適切な助言を与え,技能を高 めていくためにも有意義であると考えられる.しか し,全体印象と部分観点②について,動作分析にも とづいた客観的評価と走幅跳の動作とを的確に対応 させ,観点として示せなかったことが課題として 残った.  また,学習用DVDについて,観察者から「体育 の技能評価について,このような資料で学習できる ことはありがたい.」と好意的な意見があったが, それに加えて「十分満足できる動きの児童の映像だ けではなく,おおむね満足できる動きや努力を要す る動きの児童の映像もあれば,その違いが分かりや すかった.」という意見も多くあった.このことは, 学習用DVDを作成する際に留意すべき事項として 考えられた.  しかし,努力を要する動きの児童の映像を見せる ことは,倫理的に問題があると考えられる.小学 校の教育現場で学習用DVDが積極的に利活用され るようにするためには,観察の観点をより簡潔に示 すように映像を編集することや,評価の判断基準を より具体的に明記することが必要である.また,児 童の代わりに指導者の動きを収録することなどによ り,努力を要する動きを提示する方法について検討 していくことも課題として残された. 4.要約  本研究の目的は,小学校教員を対象として,児童 の走幅跳における観察の観点について学習し,その 学習効果を検討することであった.その結果は,以 下のように要約できる.  1)全体印象において,学習後の評価Aと評価Cの モデル3名に対する正答率は高かった(80%以上で あった)が,評価Bのモデル6名に対する正答率は 低いものであった. 2)学習後において,部分観点①の正答率は,10名 中8名のモデルで高かった(70%以上であった)が, 部分観点②の正答率は,5名のモデルで低いもので あった. 3)観察者の感想は,学習前では運動観察の難しさ や不安に対する記述が多かったが,学習後には少な くなり,動きの質を評価することの意義について記 述するものが多くみられた.  以上のことから,全体印象や部分観点において, 優れた動きや未熟な動きは, 観察的評価がしやすい ものであったが,特別な特徴を示さない動きは,そ の評価が難しいことが明らかとなった.また,運動 観察による評価の学習を通して,動きの質を見取る

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ことの重要性を指摘する教員が多数見られた.一方 では,評価観点の示し方や学習用DVDの編集の仕方 について検討していくことが課題として残された. 謝辞  本研究を実施するにあたり,芳賀町立芳賀北小学 校の職員の皆様には多大なご支援ご協力を賜りまし た.記して感謝申し上げます. 参考文献 1) 中央教育審議会.健やかな体を育む教育の在り 方に関する専門部会.審議経過報告(2005). 2) 加藤謙一・川本 睦・阿江通良・森丘保典.小 学校における前転および後転動作の観察評価の 妥当性.発育発達研究,64:1−10(2014). 3) クルト・マイネル 著.金子明友 訳,スポーツ 運動学.大修館書店:東京,pp.140−143(1981). 4) 文部科学省.小学校学習指導要領解説体育編. 東洋出版:東京,pp.3−21,69−70(2008). 5) 日本体育協会.幼少年期に身に付けておくべき 基本運動(基礎的動き)に関する研究―第3報 ―.日本体育協会スポーツ医・科学研究報告Ⅰ: 1−71(2007). 6) 日本体育協会.子どもの発育発達に応じた体力 向上プログラムの開発事業―文部科学省委託事 業―平成21年度日本体育協会スポーツ医・科学 研究報告Ⅳ:8−11(2010). 7) 尾崎 大・加藤謙一・阿江通良.男子児童の走 幅跳動作の横断的発達.日本陸上競技学会第14 回大会大会号:24(2015). 8) 栃木県教育委員会.新学習指導要領に基づく評 価規準設定のための参考資料.p.56(2011). 平成28年 3月31日 受理

参照

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