ELT K eyw or d 英 語教 育キー ワード
臨時休校時におけるオンライン授業とその評価
田縁 眞弓 ノートルダム学院小学校 1.研究の背景2020
年春、突如始まった全世界でのCOVID-19
の感染拡大により91
%の学校が臨時休校を実施し、 教科書に基づいた紙学習に加え、オンライン教材等 を活用した学習や同時双方向型のオンライン指導 を通じた家庭学習などが推奨された(文部科学省,2020
)。それに先駆け、2019
年にはGIGA
(Global
and Innovation Gateway for All
)スクール構想が、文科省より発表され小中の児童全員が一人一台の端 末を持ち、学校には高速大容量の通信ネットワーク を整備した上、創造性を生む教育を実現する計画が 掲げられていたが、その時点では誰もその翌年にこ のような事態になるとは予想だにしていなかった。 しかし、小学校英語において
ICT
を使用すること で、児童の主体性や協働性が高まり創造性が生まれ るといった私立小学校での実践や(東口,2020
)、オ ンライン学習を一人で行うより、そこに指導者が関 わりインタラクティブに指導を行うことで高い学習 効果があり、かつ人前で発表活動を行うといったス トレスを下げ学習支援に繋がる(赤堀,2020
)といっ た、オンライン学習が小学校英語の新たな学びに繋 がる可能性が示唆されている。 さらに、2020
年は小学校の高学年に教科としての 英語が導入される初年度にあたり、その指導と評価 の一体化が大きな課題となるはずであった。児童の 自己効力感を高め、自らをモニタリングできる4
段 階のCan-Do
指標を用いた振り返りシート(泉ほか,2019, 2020,
など)やワークシートなどによる形成的 評価、また、児童の作品、パフォーマンスや単元クイ ズなどで行う総括的評価を如何に取り入れ、それを どう児童生徒の学習改善、教師の指導改善につなげ るのか。臨時休校で対面授業がなくなり、そもそも 評価自体が実施可能かどうかといった状況下で、い まだかつてない現実に翻弄され、多くの小学校が先 の見通せない状況に立たされた。 2.研究の目的 本研究は、臨時休校時において「児童の学びを止 めない」ために指導者は一体何が出来るかを模索し、 実践することを目的とした。在宅する児童に向け一 方的に発信するだけでなく、単元目標を見据えそれ らを児童と共有しその達成のための言語活動と、目 標と一致した評価を取り入れる、特に毎回4
段階のCan-Do
指標を用いた振り返りシートを実施し活動 に取り組むことで、学びは保証できるという仮説を 立てた。 3.授業実践の内容 3.1 研究の方法 私立小学校1
∼6
学年692
名を対象に、2
か月間オ ンラインで英語指導を行い、評価の見取りから成果を 振り返る。実践では、できるだけICT
を使った提出物 を課し双方向での指導を進め、学年の発達段階を考慮 したカリキュラムに、Stay home
という児童に共通す る生活様式も取り入れ、場面や状況を身近なものにす る工夫を行った。各学年の単元名及び指導回数は表の とおりである。(図1
)評価方法は、1
年生以外は単元の 内容に関わらず、毎回のCan-Do
振り返りを実施した。 図1.各学年の単元名及び指導回数 443.2 配信内容
Zoom
配信で同期型の授業は担任を中心に他教科 で行われていたが、英語科では非同期型のオンデマ ンドを配信することとした。その理由は、この機会 を利用し、児童に出来るだけ英語の音声に慣れ親し ませたかったことが挙げられる。一度しか視聴しな い可能性の高い同期型よりも、コンテンツを児童が 何度も再生し視聴することで自律学習にもつながる と考えた。配信は、初回に『単元の目標』、そしてそ のあとには毎回『めあて』を示し、そのめあてに沿っ て毎回必ず4
段階のCan-Do
指標をつけた振り返り シートおよび単元の最終ゴールに向けてのワーク シートを配信の上、提出させた。振り返りの分析か ら、児童の取り組みの実態(視聴回数や理解度)をモ ニターし、次の配信コンテンツの参考とした。 各学年の単元計画は、前年度のものをベースに、今 現在何が起こっていて、児童を取り巻く状況がどん なものかを考慮にいれ、Here & Now
のコンテンツを 各学年担当教員が協議を重ねながら作成した。 具体例としては、3
年生の「今、家でしているお手 伝い」や4
年生の「Stay home
の一日」が児童にはと ても身近なものとなった。動画では、ネィティブ教 師の素顔に触れ、先生の実際の生活に興味を惹かれ つつ視聴し、単元の最後には自分たちが同じような 動画を録画し、英語発表とともに提出させた。一方、 高学年では、単元目標に「読み」「書き」を入れ、5
年 生では、児童が提出した自己紹介原稿をほかの児童 が読み、内容から「友達当てクイズ」をしたり、6
年 生では発表準備段階のノートをカメラ撮影して提出 させて、指導者が何度かコメントを返すといった双 方向のやり取りを行った。 3.3 配信方法3
年生以上の児童はすでにiPad
を授業で使用 していたが、低学年は保護者のICT
機器に配信し た。図2
のように単元を組み、Loilo Note
とClassroom
を使い配信し、児童にはLoilo Note
で期限を決め提出を求めた。授業は平常週
2
回のところ、 配信は2
回の授業の内容を1
回にまとめて週1
回と し、Loilo Note
には主に、本時のめあてや活動の取 り組み方、ワークシート、振り返りシート、グーグル クラスルームには動画や歌、チャンツなどをコンテ ンツとし配信した。動画の長さは、学年の発達段階 を考え、1
年生から6
年生まで、7
、8
分から、長くて も15
分程度とした。そのことで、機器に不慣れな低 学年でも、頭出しなどを気にせず何度も同じ動画を 視聴できるようにした。 図2.単元の組み方 4.授業実践の分析と考察 4.1 授業実践と評価 毎回の提出物やCan-Do
振り返りシートで形成的 な評価を行うと同時に、単元末には統括的な評価も 行った。6
年生で実践した「町紹介」の単元を例に挙げる。 図3
は、児童に配信したファイルとその日の配信 の課題に関しての振り返りシート(カード)となる。 図3.実際に配合したコンテンツ 45 KELES journal vol. 6 ELT Keyword 英語教育キーワード本単元目標は「自分たちが住む地域について、相 手に伝わるように、伝える内容を整理したうえで、 自分の考えや気持ちなどを発表したり、音声で十分 慣れ親しんだ語句や表現を用いて書いたりすること ができる。また、自分たちが住む地域についてより よく理解するために音声で十分慣れ親しんだ語句や 表現で書かれた友達の考えや気持ちなどを推測しな がら読んで意味が分かる。(下線部筆者)」である。児 童は、単元の最後には、
Loilo Note
で各自キーノー トを使ったプレゼンテーションに音声を吹き込んで 提出する(発表評価)するが、それまでにも下書きをLoilo Note
でやり取り(記述観察)を行うとともに、 図3
で挙げたようなCan-Do
振り返りシートを毎時 提出した。最後の単元テストでは、単元で出てきた 単語の読みのテストに加えて、評価事例集(国立教 育政策研究所,2020
)にある単元を越えた読みのテ ストを実施した。 読みのテストでは、提出した91
名中、単元内新出 語彙の意味を問う問題で7
問中全問正解者が全体の75
名(82.4
%)残りの16
名(17.6
%)が一問間違い、 参考資料事例集にある単元を越えた読みのテストで は、4
問中全問正解が80
名(87.9%
)、1
問間違いが7
名(7.7%
)2
問間違いが4
名(4.4%
)と、予想を超え た出来であった。また、同時に行ったCan-Do
振り 返りでは、「あなたは英語で書かれた文が読んでわ かりますか?」という問いに対して、①の「まだ難 しい」が2
名(2.1%
)、②の「絵のヒントがあれば」が12
名(13.2%
)、③の「この単元で学んだことはわか る」が38
名(41.8%
)④、「内容はほぼわかる」が39
名(42.9%
)、と、③と④の合計は84.7%
と、いつも授 業では平均70%
であることを考えると、この値も高 かった。 原因は、オンライン後のアンケートに多くの児童 が挙げていた、今まで自分ではアクセスできなかっ た音源に自宅で、しかも自分が好きな時間にアクセ ス出来、文字を読む機会が多く確保できたことが大 きいと考えられる。 しかし、3
割近くの児童がこの単元テストそのも のが未提出となり、リモートであるだけに放課後に 残ってさせるといった術もなく、結果、英語が得意 で好きな子の全体における割合が普段より高かった とも考えられる。さらに、自宅で解答していること で、そこに保護者や兄弟の介入があったことも否定 できない。 4.2 オンライン授業の振り返り 全学年対象に、臨時休校が終了し、対面授業が再 開した時に、自らの学習の取り組みを問うCan-Do
振り返りを実施した。質問と結果は以下のとおりで ある。(図4
) おおむね取り組めたと考えられる③と④の合計を みると、低学年は9
割であるのに対して、学年があが るにつれどんどん減少する傾向にあり、その原因と しては別にとったアンケートの、取り組みに対して のネガティブだった理由として挙げられていた、 ・難しくても先生にすぐ聞くことが出来なかった。 ・塾の勉強が忙しい。 ・機器が上手く使えなかった。 ・家では集中できなかった。 等が原因ではないかと推測できる。 同時に取ったアンケート結果で、半数以上が保護 者の補助を受けた答えた低学年に比べ、iPad
の機器 の扱いだけには慣れていたが故、まわりの助けもな かった中学年高学年の児童は、家で長時間学習する Q.オンラインでのあなたの英語学習への取り組みはどうでしたか? (n=661) (%
)1
年生2
年生3
年生4
年生5
年生6
年生 ①ほとんどできていない4
0
3
6
7
13
②ときどきは取り組んだ6
10
16
30
29
45
③だいたい取り組めた20
37
55
44
37
19
④しっかり取り組めた70
53
26
20
27
23
図4.Can-Do振り返りに関するアンケート結果(全学年) 46 ELT Keyword 英語教育キーワード習慣が身についていない上、自律して自己を高めて いくことが求められる