ミニトマトのソバージュ栽培における乾物生産の観点からみた収量に影響を及ぼす要因の定量的解析
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(2) 61 ミニトマトのソバージュ栽培における乾物生産の観点からみた収量に影響を及ぼす要因の定量的解析 トマトの‘ロッソナポリタン’ (パイオニアエコサイエンス(株) ) を用いた. ‘ロッソナポリタン’は,過去のソバージュの報告でも. 緒 言. 使われている品種である. .. 1-3). ミニトマトには促成長期栽培や半促成栽培,抑制栽培,夏. 2017 年 4 月 6 日に,128 穴セルトレイに播種し,4 月 24 日. 秋栽培など多くの作型があり,国内では主にハウスを利用し. に台木の‘グリーンガード’ (タキイ種苗(株) )に接ぎ木し. て生産されている.側枝をすべて取り除く主枝 1 本仕立て栽. た.その後,5 月 1 日に 10.5 cm ポリエチレン製ポットに鉢上げ. 培(以下,慣行)が中心であり,側枝の整理や誘引作業な. して育苗し,第 1 花房開花期であった 5 月 22 日に圃場に定. どに多大な労力が必要である.多くの産地で生産者の高齢. 植した.ソバージュの栽植様式は,北條ら に準じ,畝幅 2.2. 化や後継者不足などによる労働力の不足が顕在化しており,. m,ベッド幅 0.8 m,株 間 1.0 m の 1 条 植え(栽 植 密 度は. 栽培管理の省力化や軽作業化などが望まれている.一方,. 0.46 株 m )とした.一方,慣行の栽植様式は,神奈川県の. ハウス栽培はハウスの建設に大きな費用が必要となり,新たに. ミニトマトの栽培基準 に準じ,畝幅 1.8 m,ベッド幅 0.8 m,. ミニトマトの生産を始める際の障壁となっている.. 株 間 0.4 m,条 間 0.4 m の 2 条 植え(栽 植 密 度は 2.78 株. 1). -2. 7). 著者らは,ミニトマトを露地で省力的に生産する方法とし. m )とした.施肥は,ソバージュ,慣行ともに神奈川県の施. て,ソバージュ栽培(以下,ソバージュ)の開発に取り組ん. 肥 基 準 に準じ,N:P2O5:K2O = 15:15:15(kg 10 a ). -2. 8). -1. できた .この栽培方法は,低い栽植密度で,夏秋どりキュウ. を定植 2 週間前に施用し,追肥として N:P2O5:K2O = 4:. リ栽培に用いるネットを逆 U 字型のアーチ支柱にとりつけて植. 4:4(kg 10 a )を 7 月中旬および 9 月中旬の計 2 回施用し. 物体を誘引するもので,側枝の整理や誘引作業などが不要と. た.また,地温の安定を図るため,定植の 2 週間前に畝を白. 1). -1. なり,極めて省力的であり ,また,ハウスも必要ないので生. 黒マルチ(こかげマルチ,大倉工業(株) )で被覆し,通路. 産コストを大幅に削減できる .これまでに,ソバージュの栽植. に防草シートを敷設した.灌水は定植および追肥時以外は行. 方法を検討し,畝幅 2.2 m,ベッド幅 0.8 m,株間 1.0 m の 1. わなかった.定植後の栽培管理として,ソバージュは地際の. 条植え(0.46 株 m )とした場合に,慣行(畝幅 1.8 m,ベ. 過繁茂による病害の発生を防止するため,北條ら に準じ,. 2). 3). -2. 1). ッド幅 0.8 m,株間 0.4 m,条間 0.4 m の 2 条植え(2.78 株. 第 1 花房直下までの側枝はすべて除去し,その後は植物体. )と同等または同等以上の収量が見込めると報告してい m ). を生育に合わせて 5 ~ 6 回程度生分解性の誘引紐で誘引し. る .今後,ソバージュの栽培面積をさらに広げるためには生. た.慣行は河合. 産性の向上が重要である.収量に関係する要因を乾物生産. べて取り除き,第 9 花房開花時に第 8 花房の上位 2 葉を残. の観点からいくつかの要素に分解して解析することによって,. して摘心した.本実験ではソバージュが長さ 18 m の畝を計 6. .東. 列,慣行が長さ 7.2 m の畝を計 3 列用いた.栽培期間中の. -2. 1). 収量に影響を及ぼす要因を明らかにすることができる. 4-6). 9). および菅原. 10). の栽培法に準じて側枝をす. 出ら はキュウリの整枝誘引法の違いが収量に及ぼす影響. 気温,降水量および日射量のデータは,農研機構メッシュ気. を調べ,収量の違いは光利用効率の違いによる総乾物生産. 象データから入手した(https://amu.rd.naro.go.jp/) .. 4). と,果実への乾物分配率で説明できるとしている.金子ら は. 定 植 時(0 日) ,定 植 後 55 日(慣 行 の 摘 心 時) ,77 日. トマトの低段栽培において,定植時の苗ステージや栽植密度. (慣行の収穫終了時)および 98 日に破壊調査を行い,地上. 5). などの違いが収量に及ぼす影響を調べ,光利用効率には差. 部について器官別に新鮮重,乾物重を測定した.乾物重. がないので,収量の違いは群落の積算受光量で説明できると. は,70 ℃の送風定温乾燥機(DRM620TB,アドバンテック. している.ソバージュについても,同様な解析を行い,慣行と. 東洋(株) )で 72 時間以上乾燥させ,それぞれの器官の. 比較して,収量に及ぼす影響を要素別に調べることによっ. 重量を測定した.また,葉面積を葉面積計(LI-3100,LI-. て,栽培管理上の改善点を明らかにできると考えられる.そこ. COR)で測定した.破壊調査には,定植時は 3 株,慣行の. で,本研究では,ミニトマトをソバージュで栽培し,収量に及. 摘心時および慣行の収穫終了時,ソバージュの収穫終了時. ぼす影響を乾物生産の観点から調べ,慣行と比較して栽培. はそれぞれ 4 株を供試した.果実の収穫調査は,北條ら. 管理上の改善点を明らかにすることを目的とした.. に準じ,ソバージュでは定植後 51 ~ 129 日まで,慣行では定. 1). 植後 51 ~ 77 日まで,週 1 回,催色期以降の果実をすべて 収穫した.慣行では第 8 花房の果実の収穫が終了した時点. 材 料 および 方 法. で収穫調査を終了したため,収穫期間はソバージュよりも短. 明 治 大 学 生 田 キ ャン パ ス(北 緯 35.612857,東 経. い.収穫調査は,いずれの区において,破壊調査の影響を. 139.549126)の露地圃場(標高 65 m,赤黄色土,pH 6.0,. 受けない別の 4 株を対象とした.ソバージュは,株の定植位. EC 0.1 dS m )で栽培実験を行った.供試品種として,ミニ. 置を中心に幅 1 m の範囲で収穫を行い,単位面積当たりの. -1. ─ 15 ─.
(3) 髙橋・堤・岩崎・元木. 62. 収量に換算した.慣行は,株ごとに収穫を行った.慣行の側. ソバージュでは定植後 98 日,慣行では定植後 77 日に葉を. 枝は発生初期に取り除いたため,重量は無視した.両栽培. ランダムに 60 葉ずつ採取し,葉 1 枚当たりの葉面積および新. 法において,人為的な葉の整理は行わず,自然落下した茎. 鮮重を測定し,破壊調査の葉の新鮮重から 1 m 当たりに存. 葉の乾物重は本実験では無視した.ただし,観察によると実. 在する葉の枚数を計算した.また,葉面積と葉の乾物重から. 験期間中に自然落下した茎葉はほとんど見られなかった.. 比葉面積(SLA)= 葉面積/葉の乾物重として求めた.. 2. 破壊調査および収穫調査から,葉,茎および果実の乾物 重の合計値を地上部総乾物重として,果実への乾物分配率. 結 果. は果実乾物重/地上部総乾物重として求めた.果実乾物重. 実験期間中の気象データを Fig. 1 に示した.2017 年と過. は,破壊調査の時点までに収穫された果実には平均果実乾 物率を乗じて乾物重を計算して求め,破壊調査時に株に着. 去 5 年の平均値を比較すると,日平均気温はほぼ同じであ. 生していた未収穫果実の乾物重と合計した.平均果実乾物. り,降水量は 6 月に少なく7 月前半に多かったが,栽培期間. 率は,ソバージュでは,定植後 55 および 98 日に,慣行は,. 中の合計は過去 5 年の 2 / 3 程度であった.日射量は 7 月. 定植後 55 および 77 日に 30 果ずつ選んで,新鮮重と乾物重. 後半が多く,8 月は少なく推移し,合計値はほぼ過去 5 年と同. から果実乾物率=乾物重/新鮮重として求め,その平均値. じであった. 栽培法の違いがミニトマトの果実収量に及ぼす影響を Fig.. を求めた. 吸光係数の測定は,定植後 55 日に行った.地表面から. 2 に示す.ソバージュ,慣行ともに定植後 51 日から収穫が始. 0.5,1.0,1.5,2.0 m の高さで,棒 状の光 量 子センサ(LI-. まり,慣行は第 8 花房まで収穫して,定植後 77 日で収穫が. 191R,LI-COR)を群落内部に差し込み,水平面の光の強. 終了し,合計収量は 3.4 kg m であった.一方,ソバージュ. さを 1 区画当たり3 か所ずつ,合計 10 区画測定した.ソバ. は定植後 129 日まで収穫を行った.収量は収穫開始から定. -2. ージュは測定時の群落の高さが 2.0 m 未満であったので,測. 植後 77 日までは慣行が多かったが,定植後 83 日にソバージ. 定は 1.5 m までとした.また,測定点付近の個体を破壊調査. ュが慣行を上回り,収穫終了時の合計収量は 6.0 kg m で. し,葉面積指数(LAI)を調査した.群落上部の光強度を. あった.慣行は収穫開始時が果数,重量ともに最も多く,以. I0,高さ別の群落内光強度を In(n = 1 ~ 3)として,高さ別. 降漸減した.一方,ソバージュは果数は収穫開始後から増加. の LAI を横軸にとり,相対光強度(In / I0)の対数変換値. し,定植後 77 日で 115 果となり,その後低下したが,定植後. を縦軸としてプロットし,原点を通る一次式で回帰し,その傾き. 106 日以降は再び増加し 120 果前後で推移した.重量は定. を吸光係数(k)として,栽培法ごとに求めた. .. -2. 植後 77 日が最も多くその後減少した.平均果実重量は慣行. 11). では 12 g 程度で安定していたが,ソバージュは収穫後から In / I0 = e(-k LAI) . (1). 低下し,12 ~ 4 g で大きく変動した.平均果実乾物率は,ソ. 相対受光量 = (1-e. (2). バージュで 9.6 %,慣行は 9.2 % であった.. -k LAI. ) . 吸光係数はソバージュが 0.86,慣行が 1.26 であり(Fig. 積算受光量は,LAIと吸光係数から相対受光量を求め,積. 3) ,ソバージュが慣行に比べて有意に小さかった.吸光係数. 算日射量に乗じて算出した.その際,破壊調査で得られた葉 面積データから,線形補完によって破壊調査間の値を推定し 日ごとの LAI を求め,日ごとの積算日射量と吸光係数から日ご とに積算受光量を計算した. 積算受光量(MJ m ) -2. =(1-e. )×積算日射量(MJ m ). -k LAI. (3). -2. 定植時,定植後 55,77 および 98 日における積算受光量とそ の時点における総乾物重をプロットし,原点を通る一次式で 回帰した場合の傾きを光利用効率とした.. Fig. 1. 光利用効率(g MJ ) -1. /積算受光量(MJ m ) =総乾物重(g m ) -2. -2. (4) ─ 16 ─. Daily precipitation, average air temperatures, solar radiation during the experiment (2017) at the experiment site (N35.612857, E139.549126) (https://amu.rd.naro.go.jp/)..
(4) 63 ミニトマトのソバージュ栽培における乾物生産の観点からみた収量に影響を及ぼす要因の定量的解析. Fig. 3. Relationship between LAI and relative light intensity in the plant canopy. Light extinction coefficient (95 % confidence intervals) of Sauvage and Conventional are 0.86 (0.830.93), 1.26 (1.05-1.47) respectively.. 日のソバージュは同等であった.定植後 55 日では,果実への 乾物分配率は,ソバージュが慣行に比べて有意に低かった. 一方,葉への乾物分配率に差はなく,ソバージュでは茎への 乾物分配率が高かった.定植後 77 日ではソバージュと慣行 は器官別の乾物分配率には有意差が認められず,定植後 98 日のソバージュは定植後 77 日の慣行に比べて有意に果実 Fig. 2. Fresh fruit yield(a), number of fruit(b), and average fruit weight(c) of cherry tomatoes grown by two cultivation methods during the experimental period, Jul. 12-Sep. 29, 2017. (n = 4) Sauv.: Sauvage, Conv.: Conventional.. への乾物分配率が高かった.LAI は定植時および定植後 55 日ではソバージュが慣行に比べて有意に低かったものの,定 植後 77 日では有意差が認められず,定植後 98 日のソバージ ュと定植後 77 日の慣行においても有意差が認められなかっ た.積算受光量は,定植~定植後 55 日および定植~定植 後 77 日は慣行に比べてソバージュが有意に低かったものの,. を測定した定植後 55 日の作物の状況を Fig. 4 に示した.慣. 定植~定植後 98 日のソバージュは,定植~定植後 77 日まで. 行区は摘心時であり,ソバージュでは隣接する株の葉が重な. の慣行と同様の数値であった. 光利用効率は,ソバージュが 0.88 g MJ ,慣行が 0.87 g. り始めた時期であった.. -1. Table 1 に器官別乾物重,地上部総乾物重,器官別乾物. . MJ であり,有意差は認められなかった(Fig. 5) -1. 分配率,SLA,LAI および積算受光量を示した.1 m 当たり. 収穫終了時における葉の新鮮重と葉面積の関係を Fig. 6. の地上部総乾物重は,定植後 77 日までは慣行がソバージュ. に示した.葉 1 枚当たりの葉面積はソバージュが 40.0 cm ,. に比べて有意に高かった.定植後 77 日の慣行と定植後 98. 慣行が 333.7 cm で大きく異なった.収穫終了時の 1 m 当た. 2. Fig. 4. 2. 2. View of the experimental field at 1st destructive measurement (55 days after transplant). Left: Sauvage, Right: Conventional. ─ 17 ─. 2.
(5) 髙橋・堤・岩崎・元木. 64. Table 1 Effects of cultivation methods on leaf, stem and fruit dry weight, distribution to fruits, specific leaf area (SLA), leaf area index (LAI) and light interception. Weight. Distribution. Days after transplanting (d). Cultivation method. Leaf. Stem -2 (g m ). 0. Sauvage Conventional. 1.16 7.07. 0.72 4.42. 55. Sauvage Conventional. 127.9** 251.7. 77. Sauvage Conventional. 166.0** 255.5. 98. Sauvage. 181.4**. Days after transplanting (d). Cultivation method. SLA 2 -1 (m g ). 0. Sauvage Conventional. 55. Sauvage Conventional. 0.012* 0.009. 1.54** 2.2. 466** 741. Sauvage. 0.012**. 1.97n. s.. 661**. 0.008. 2.15. 979. 0.010n. s.. 1.77n. s.. 930n. s.. 77 98. Conventional Sauvage. z. y. Fruit. Total 1.9 11.5. Leaf. Stem (%). 61.5. 38.5. Fruit. 107.0* 144.3. 128.6** 286.1. 363.6** 682.1. 35.2n. s. 36.9. 29.4** 21.2. 35.4** 42.0. 147.3* 188.1. 334.2n. s. 395.1. 647.4* 838.7. 25.6* 30.5. 22.7n. s. 22.4. 51.1n. s. 47.2. 201.9n. s.. 422.0*. 805.3n. s.. 22.5**. 25.1n. s.. 52.4*. Light LAI interception 2 -2 (m m ) -2 (MJ m ) 0.03 0.16. z. n. s. = Nonsignificant; * and ** indicate significant correlation at the 0.05 and 0.01 levels, respectively by t-test (n = 4). y T-test was applied between the data of Sauvage at 98 DAT and data of Conventional at 77 DAT.. Fig. 6 Fig. 5. Above ground dry weight as a function of light interception grown with two cultivation methods. Light use efficiency (95 % confidence intervals) of Sauvage and Conventional are 0.88 (0.83-0.93), 0.87 (0.820.90) respectively.. Relationship between leaf fresh weight and leaf area with two cultivation at the end of the harvest (Sauvage, 98 DAT, Conventional, 77 DAT, n=60).. に比べて薄くて小さかった. 考 察. りの葉の着生枚数を計算すると,ソバージュが 444 枚,慣行 が 59 枚であった.新鮮重 1 g 当たりの葉面積は,ソバージュ. 本研究では,ソバージュと慣行について,乾物生産の観点. が 24.6 cm ,慣行が 13.1 cm であり,ソバージュの葉は慣行. から収量に関係する要因を葉面積や乾物重,受光態勢,光. 2. 2. ─ 18 ─.
(6) 65 ミニトマトのソバージュ栽培における乾物生産の観点からみた収量に影響を及ぼす要因の定量的解析 利用効率,果実への乾物分配率などの要素に分解して比較. 培上の課題でもある.収量は総乾物重と果実への乾物分配. し,収量増加の可能性を検討することを目的とした.. 率および乾物率によって決定される.. 吸光係数の測定は,定植後 55 日に行った.この時期は慣. 総乾物重は積算受光量と光利用効率の積として表され .本 実 験では,光 利 用 効 率は,ソバージュが 0.88 g. 行の摘心期であり,ソバージュでは隣接する株の葉が部分的. る. に接触する時期である(Fig. 4) .吸光係数は,ソバージュで. MJ ,慣 行 が 0.87 g MJ で有 意 差 が 認められなかった. は 0.86,慣行で 1.26となった(Fig. 3) .吸光係数は受光態. (Fig. 5) .両栽培法において,光利用効率が同等であるの. 勢を表す指標として使われ,葉の配列,着生角度,光の透過. で,定植~定植後 55 日までの総乾物重の違いは積算受光. が,. 量の差として説明される.積算受光量は相対受光量に積算. との. 日射量を乗じることによって求められ(3) 式,相対受光量は. は, トマトの吸光係数は 0.6 ~ 1.0 の範. LAIと吸光係数の関数として表される(2) 式.ソバージュの. の報告でも0.72 ~ 0.99 である.. 栽植密度(0.46 株 m )は,慣行(2.78 株 m )に比べて. 本実験における慣行区の吸光係数は 1.26 であり,これらの. 極めて低いため,栽培初期は LAI が小さい.吸光係数は群. 数値より大きい.本実験で使用したミニトマト品種‘ロッソナポ. 落の受光態勢の指標であり,同じ LAI であれば吸光係数が. 率などによって決まり,品種特性の 1 つとされている 施肥条件. 11-13). ,栽植密度や生育段階によって変動する. 14). 報告もある.東出. 12). 囲としており,Saito ら. 16,17). 15). 4, 5) -1. -1. -2. -2. リタン’の吸光係数はこれまで報告がなく,吸光係数が大きい. 小さいほど相対受光量は小さくなる.相対受光量が 0.9 以上. 理由は,本実験のデータだけで説明することはできないが,. となる LAI を計算で求めると,ソバージュ(吸光係数 0.86). 以下のことが考えられる.吸光係数は葉が水平で節間が長. では 2.7となり,慣行(吸光係数 1.26)では 1.9となる.つま. いオランダ品種で小さく,葉が下方に垂れていて節間が短い. り,葉に吸収されずに地表に落ちる光を少なくするには,ソバ. および Saito. ージュは慣行より大きな LAI が必要である.本実験では,定. の実験はハウス内で行われたものであり,一方,本実. 植後 55 日で隣接する株同士の葉が重なり始まる状況(Fig.. 日本 品 種で大きいとされている ら. 16, 17). .東出. 18, 19). 12). 験は,群落が風雨にさらされる露地条件で行っており,風雨. 4)で,逆 U 字の支柱の上部に群落が届いたのは,さらに数. の影響を小さくする形態的適応のため葉がより下垂し,その. 日後であった.慣行よりはるかに小さい栽植密度で栽培を開. 結果,吸光係数が大きくなった可能性がある.また,ソバージ. 始するソバージュは LAI が低い期間が長く,また最大でも2.0. ュの吸光係数は慣行より小さかった.これはソバージュでは慣. 以下であり,群落の吸光係数が慣行より小さいことから作物. 行に比べて多数の小さい葉で構成されていることを反映して. が利用できない光が多いことが示された.. はサトウキビの吸光係数を品種ごと. 次に果実への乾物分配率の違いについて考察する.定植. に調べて比較し,葉幅が小さいと吸光係数が小さくなると報. ~定植後 55 日における果実への乾物分配率は,ソバージュ. 告しており,本実験の結果と一致する.本実験では吸光係数. が 35.4 %,慣行が 42.0 % であり,ソバージュは慣行に比べ. の測定は慣行の摘心期(定植後 55 日)のみである.1 本仕. て有意に低かった.葉への乾物分配率は両者で差がなく,ソ. 立ての場合,吸光係数の測定は栽培期間中に 1 度だけしか. バージュでは茎への乾物分配率が高かった.定植~定植後. ,生育段階によって吸光係数. 77 日でみると,果実への乾物分配率はソバージュと慣行で有. いると考えられる.島袋. 20). 行っていない報告が多く. 16, 17, 19). が大きく変化することはないと一般に認識されている.一方,. 意差がなく,定植後 98 日のソバージュの果実への乾物分配. ソバージュの吸光係数はこれまで報告がなく,生育段階によっ. 率は,定植後 77 日の慣行の場合よりやや高かった.ソバージ. て吸光係数に変化が生じるかどうか明らかではない.本実験. ュと慣行の栽培上の大きな違いの 1 つは,ソバージュでは側. において,定植後 55 日に測定した吸光係数を用いて破壊調. 枝を放任することである.ソバージュでは,定植後に各葉腋か. 査ごとに,それまでの積算受光量を計算し,破壊調査時の総. ら側枝が多数発生し,側枝の葉や茎などが成長するために. 乾物重との関係をプロットして調べたところ,慣行と同様にソ. 多くの光合成産物が費やされる.また,通常主枝に着生する. バージュにおいても両者の関係は一次式で表された(Fig.. 花房は葉が 3 枚発生するごとに次の新しい花房が発生する. 5) .これは,ソバージュにおいても,慣行と同様に生育段階が. が,これに対して,側枝では最初の花房は葉が 5 枚発生した. 進んでも吸光係数に大きな変化が生じなかったことを示す.. 後に発生する .つまり,ソバージュでは栽培初期は,慣行. 以上のことから,本実験において求めたソバージュおよび慣. に比べて茎葉の発生が多くなり,茎葉がシンク器官となって成. 行の吸光係数は妥当であり,それを利用して計算した積算受. 長に多くの光合成産物が必要となり,光合成産物の果実へ. 光量や光利用効率も妥当であると判断した.. の分配率が低下すると考えられる.また,ソバージュでは花房. 21). 定植後 77 日まではソバージュより慣行の収量が多かった.. 当たりの着果数が慣行に比べて少ないことが観察されてい. ソバージュの収量が慣行より多くなるのは,定植後 83 日以降. る.これは,花房が分化してから花数が決まる段階で,茎葉. であった.初期収量が低いことはソバージュの特徴であり,栽. との競合によって光合成産物が不足した結果,花数が減少し. ─ 19 ─.
(7) 髙橋・堤・岩崎・元木. 66 たと考えられ. ,このことも,この期間の果実へ乾物分配. 22, 23). 培可能であることが大きな特徴である.ソバージュは初期収. 率が低下した要因の 1 つと考えられる.定植後 55 日以降は. 量が低いものの,長期栽培を行いやすく,多くの収量を得るこ. ソバージュ,慣行ともに果実への乾物分配率が高まった.定. とができる.本実験では乾物生産の特徴を把握することを目的. 植~ 77 日の果実分配率はソバージュと慣行で有意差が認め. としたため,9 月末で栽培を打ち切ったが,筆者らのグループ. られず,定植~ 98 日のソバージュの果実への乾物分配率は. がこれまで行った実験. 2,3). では,霜によって収穫が不可能とな. 52.4 % で,定植~ 77 日の慣行の分配率に比べて有意に高. る 12 月まで栽培を継続し,慣行と同等以上の収量を得ている.. かった.定植後 55 ~ 77 日の期間に生産された乾物の果実. 本実験では,ソバージュの栽植様式は,北條ら に準じ,. への分配率を求めると,ソバージュが 72.4 %,慣行が 69.6 %. 畝幅 2.2 m,ベッド幅 0.8 m,株間 1.0 m の 1 条植え(栽植. であった.ソバージュでは,発生した多数の側枝に花房が着. 密度は 0.46 株 m )としているが,この栽植様式では,LAI. 1). -2. 生し,果実に多くの光合成産物が転流した結果として,果実. は最大でも2.0 以下となっており, トマトが利用できない光が多. への分配率が高くなったと考えられた.一方,慣行では定植. い.畝幅,ベッド幅,株間は栽培する地域の気象条件,定植. 後 55 日に行った摘心によって,茎葉の成長が抑えられたた. する時期に合わせて検討することによって収量を増加できる. め,果実への分配率が高くなったと考えられた.. 余地がある.. 以上から,乾物生産の観点でソバージュの特徴を整理する. ソバージュにおいて,定植後 98 日は定植後 77 日と比べ. と,慣行よりも吸光係数が小さく,光利用効率は慣行と同等で. て,葉の乾物重は増加しているものの,LAI はやや減少して. あること,栽培初期の果実への果実分配率が低いことがあげ. いる.これは SLA が減少していることによる.SLA は水分スト. られる.ソバージュは疎植で栽培を開始するため,慣行と同. レスがかかると減少することが報告されており. 時に栽培を開始するとLAI の増加速度が小さいことと,吸光. おいても8 月後半の好天による水分ストレスによって SLA が. 係数が小さいことから栽培初期は慣行より受光量が少なくな. 減少した可能性がある.本実験では人為的な灌水を行って. り,総乾物重が少なくなる.栽培初期は果実へ光合成産物の. いないが,長期間安定して収量を得るためには土壌水分を. 分配率が低いので,総乾物重,果実への乾物分配率の両. 安定させるための灌水の効果について検討する必要がある.. ,本実験に. 24, 25). 方が少ないことから慣行より初期の収量が低くなることが明ら. ソバージュはほぼ放任栽培であり,側枝の除去,摘果,摘. かとなった.その一方で,茎葉が伸長して群落が連続する状. 葉など,ソース能力やシンク強度の調節に関係する人為的な. 態となり受光量が慣行と同等となれば,光利用効率はソバー. 作業は行っていない. ジュと慣行で差がないため,総乾物重は同等となり,果実へ. 積が慣行の 1 / 8 程度と極めて小さい.また,上述したよう. の乾物分配率,果実乾物率についても,慣行とソバージュで. に,花房当たりの着果数も少ない.ソバージュでは,茎葉と花. 同等もしくはそれ以上なので,時間当たりの果実生産量はソ. 房間の光合成産物の競合が強く,常に光合成産物が不足し. .ソバージュでは葉 1 枚当たりの葉面. 1-3). た状態で生育が進み,その結果,葉が小さく着果数が少なく. バージュと慣行は同等となる. 一般的な慣行のミニトマト夏秋どり栽培では,地上から 1.8. なったと考えられる.ソバージュは,慣行に比べて,多数の. ~ 2.0 m の高さに誘引用のパイプやワイヤーを水平に設置. 葉,多数の花房から群落が構成されており,環境の変化に対. し,そこから,紐を垂らしてトマトの茎に巻き付けて誘引する. 応しやすいように形態的に適応したと考えることができる.一. か,株元に立てた誘引用のポールに,茎をテープや麻紐など. 般に, トマトの栽培で収量を高めるためには,栽培期間をとお. で数十 cm 間隔で括りつけて固定する .通常,作業者の手. して,栄養成長と生殖成長のバランスをとることが重要とされ. が届く高さで摘心を行うため,第 6 ~ 8 花房で収穫を終了す. る. る短期栽培となることが多い .摘心を行わずより長期間栽培. が抑制され,障害果が発生しやすくなる.一方,生殖成長が. 9). 9). .栄養成長が強くなると,花芽分化が遅れ,果実肥大. 19,26). を続けることも可能であるが,その場合は手の届く高さ以上に. 強くなると,葉面積が減少し,茎径が細くなり,収量が低下す. 茎が伸長した時点で,誘引紐を緩めて繰り出すか,ポールに. る .日射や気温などは日々変化し,とくに梅雨から初夏にか 21). 固定している茎をいったん外して成長点の位置を 0.3 ~ 0.5. けての気象の変化が激しい.花房が分化し,花数が決まると. m 下げたところで再び固定するつる下ろし作業を数日間隔で. きの環境条件とその後の果実肥大期の環境条件は同じでは. 繰り返す必要があり,大きな作業負担が生じる.ソバージュに. なく,光合成産物の過剰と不足を繰り返しながら群落は成長. おいても,誘引用の逆 U 字型アーチの高さは慣行と同様,栽. を続ける.ソバージュはシンク強度とソース能力の調節を作物. 培者の手の届く範囲である 1.8 ~ 2.0 mとする場合が多い. に委ねている.サイズが小さい多数器官で群落を構成してい. が,成長点が支柱の最上部まで届いた後も,アーチの反対. るソバージュは環境適応性が高く,ハウス内と比較して気象. 側の面に沿って伸長を続けるため,人為的に誘引や整枝を行. 条件の変化幅が大きい露地栽培に適した栽培方法であると. う必要はない.つまり,慣行よりも少ない作業負担で長期間栽. 考えられる.ソバージュにおいてシンクとソースのバランスの調. ─ 20 ─.
(8) 67 ミニトマトのソバージュ栽培における乾物生産の観点からみた収量に影響を及ぼす要因の定量的解析 節がどのようなメカニズムによって行われているか,今後実験 を継続する必要がある.. 引用文献. 摘 要. 1). ソバージュ栽培(以下,ソバージュ)は,ミニトマトを露地 で生産する省力的で低コストな新しい栽培法である.これ は,主枝 1 本仕立て栽培(以下,慣行)と比較して,栽植 密度が低く,側枝の除去や誘引作業などが必要ないという特 徴がある.本研究では,ソバージュについて,乾物生産の観. 2). 3). 点から,収量に影響を及ぼす要因をいくつかの要素に分解し て解析し,栽培管理上の改善点を明らかにすることを目的とし た.ミニトマト(品種‘ロッソナポリタン’ )をソバージュによって 栽培し,葉面積,乾物重,受光態勢,光利用効率,および果. 4). 実への乾物分配率を調べ,慣行と比較した.定植後 77 日ま では,ソバージュより慣行の収量が多く,定植後 83 日以降と なってはじめて,ソバージュの収量が慣行より多くなった.定. 5). 植後 77 日までは,ソバージュは,総乾物重および果実への 乾物分配率の両方が低かった.ソバージュと慣行は光利用 効率に差がないので,総乾物重の違いは積算受光量の違い に起因している.定植後 77 日までは,ソバージュは栽植密度. 6). が低いため LAI が低く推移し,さらに吸光係数も小さいた め,相対受光量が慣行に比べて小さかった.また,ソバージ ュは側枝を放任するので,側枝が多数発生し,側枝の茎葉. 7). が成長するために多くの光合成産物が使われるため,栽培 初期は果実への乾物分配率が低下しやすいことが示唆され. 8). た.一方,茎葉が伸長して受光量が慣行と同等であれば, 光利用効率はソバージュと慣行で差がないため総乾物重は 同等となり,果実への乾物分配率も慣行とソバージュで同等 なため,時間当たり果実生産量はソバージュと慣行は同等と なる.ソバージュでは,人為的に誘引や整枝を行う必要がな. 9) 10) 11). く,少ない作業負担で長期間栽培することが可能である.ソ バージュは,初期収量は少ないが,長期間栽培することで, 慣行と同等以上の収量を得ることができる.. 12). 13). 謝 辞 本研究の一部は,食料生産地域再生のための先端技術 展開事業「ブランド化を促進する野菜の生産・加工技術の 実証研究」により実施した.また,本研究を遂行するに当た. 14). 15). り,パイオニアエコサイエンス(株)の川崎智弘氏に多大なる ご協力をいただいた.ここに記して謝意を表する. 16). ─ 21 ─. 北條怜子,柘植一希,樋口洋子,山初仁志,加藤正一, 藤尾拓也,岩﨑泰永,元木悟.露地夏秋どりミニトマトの ソバージュ栽培における収量および品質.園芸学研究. 16: 137-148. 2017. 元木悟,北條怜子,染谷美和,藤尾拓也.露地夏秋ど りミニトマトのネット誘引無整枝栽培における作業性.農 作業研究.52: 15-25. 2017. 元木悟,柘植一希,北條怜子,甲村浩之,諌山俊之, 藤尾拓也,岩崎泰永.露地夏秋どりミニトマトのネット誘 引無整枝栽培(ソバージュ栽培)における収量および 品質の地域間差異および経済性評価.園芸学研究. 18: 269-279. 2019. 東出忠桐,後藤一郎,鈴木克己,安場健一郎,塚澤和 憲,安東赫,岩崎泰永.収量構成要素の解析からみた キュウリ短期栽培の摘心およびつる下ろし整枝法の差 異.園芸学研究.11: 523-529. 2012. 金子壮,東出忠桐,安場健一郎,大森弘美,中野明正. 収量構成要素の解析からみたトマト低段栽培における 定 植 時の苗ステージと栽 植 密 度.園 芸 学 研 究.14: 163-170. 2015. 岩崎泰永,安東赫,下村晃一郎,東出忠桐,中野明正. 仕立て法および栽培環境の違いが,べイトアルファ型, 温室型および日本型キュウリ品種の生育,収量に及ぼす 影響.野菜茶業研究所研究報告.13: 65-73. 2014. 神奈川県環境農政局農政部.神奈川県野菜優良種導 入指針.神奈川県園芸種苗対策協議会,神奈川.7477. 2018. 神奈川県環境農政部農業振興課.神奈川県作物別施 肥基準. トマト・ミニトマト.神奈川県環境農政部農業振 興課,神奈川.8. 2010. 河合仁. ミニトマトの栽培. 農業技術大系野菜編 2トマト. 農文協,東京.基 597-605. 1997. 菅原眞治.ミニトマトの絵本.農文協,東京.16. 2010. Monsi M, Saeki T. On the factor light in plant communities and its importance for matter production. Ann.Bot. 95: 549-567. 2005. 東出忠桐.施設トマトの収量増加を目的とした受光と物 質 生 産 の 関 係 の 利 用.園 芸 学 研 究.17: 133-146. 2018. 林健一.イネ品種の受光態勢講座 作物の育種とその 生理 8.農業技術.30: 540-542. 1975. 楠谷彰人,李柱三,後藤寛治.オーチャードグラスの生 産 性に関 する研 究 V.日本 草 地 学 会 誌.25: 16-25. 1979. 広田修,秋山侃,武田友四郎,松井健,相賀一郎. トウ モロコシ個体群における吸光係数の構成要素としての 単葉の光透過率と草型の検討.日本作物学会紀事.43: 283-288. 1974. Saito T, Mochizuki Y, Kawasaki Y, Ohyama Y, Higashide T. Estimation of leaf area and light-use efficiency by non-destructive measurements for.
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