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研究開発投資に関する一考察 : 企業業績および株式価格との関連性について

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(1)研究開発投資に関する一考察 企業業績および株式価格との関連性について. 真. 鍋. 和. 弘. れを生み出すと考えられるR&D投資の重要性 第1節. 本稿の目的. 今日,日本経済は産業経済から知識創造経済 へと移行の過渡期にある.こうした経済基盤の 変化により,企業の競争優位の源泉としてブラ ンド,ノウハウ,技術,特許などの知的資産の 重要性が高まっている1).こうしたなか,日本. は,現実の企業活動および多くの先行研究の結 果によって示されている.. 一方で,日本における研究開発(R&D)投 資に関する会計基準として, 1998年に企業会 計審議会4)によって『研究開発等に係わる会計 基準』が公表されている.当該会計基準は,栄. 企業は概して,技術および特許といった知的資. 国における会計基準(Statement. 産を生み出すと考えられる研究開発(R&D)2). Accounting. への投資を増加させている. Lev (2001)は,こうした知的資産の急速な. research. cost)と同様に, R&D投資を発生時に一括費用処理することを. 重要性の高まりの背景に,. 求めている.. 「取引のグローバル. 化と経済の重要部門におけるディレギュレー ションによってもたらされた企業間競争の高ま り」および「ごく最近のインターネットに代表. Standards and. No.. of Financial. 2 -. for. accounting. development. 当該会計処理の他にもR&D投資の代替的な 会計処理案として,. ①全額資産計上(投資時点. される情報技術(IT)の出現」という経済お. で支出額を全て資産計上を行う), (彰条件付資 産計上(一定の条件を満たす支出だけ資産計上. よび政治の発展と技術の発展があると指摘して. を行う)が考えられる.しかしながら,日本の. いる.また,彼はこれらの要因により企業の構 造が劇的に変化し,結果として先進国の企業に. 会計基準設定主体であった企業会計審議会は,. とって無形資産が重要な「バリュー・ドライバー. の不確実性, (2)資産計上を認めた場合におけ. (Value Driver)」となったと指摘している.. る企業間の比較可能性の阻害から,. また, Blair and. Brookings研究所の研究報告である Kochan (2000)は,企業の所有する. 有形資産と無形資産のうち,企業価値に対す. (1)研究開発費によってもたらされる将来収益 R&D投資. を発生時に即時費用処理することが妥当である と結論付けている. また,米国の会計基準設定主体であるFASB. る影響が1978年と20年後の1998年では,逆. も, (1)将来の効用が不確実であること,. (2)支. 転していることを明らかにしている.つまり,. 出と効用の因果関係が欠如していること,. (3)経. 1978年には企業価値のほとんどを有形資産が. 済資源としての会計的認識が困難,. 決定していたのに対し,. 益の対応関係が適用されない,. 20年後の1998年には. (4)費用と収. (5)情報の有用性. むしろ無形資産のほうが企業価値を決定してい. の観点から,. るのである3).このように,知的資産およびそ. 理することが妥当であると結論付けている.. R&D投資を発生時に即時費用処.

(2) 104. 横浜国際社会科学研究. (452). 第11巻第3号(2006年9月). び株式価格との関連性について考察していく.. つまり,現行の会計基準は, R&D投資に関す る上記の問題点のために,その結果R&D投資. 最後に,第4節は本研究,特に第3節における. を一括費用処理すること求めているのである.. 実証研究に関する問題点と今後の課題を明らか. このことにより,当該会計基準に基づく会計情. にする.. 報はR&D投資を通じてもたらされる将来収益 第2節. に関する情報を直接的には公表していない. しかし当該投資は,. R&D投資を通じて生み. 研究開発投資に関する先行研究. 本節は,先行研究で用いられた実証モデルを. 出された知的資産が適切に将来の企業活動に用. 当該モデルの特徴により分類し,またそこで明. いられたとすれば,間接的に財務諸表における 収益および利益項目の数倍に影響を与える.だ. る.. らかとなった経験的結果を整理することを試み R&D投資に関する先行研究は,海外にお. がR&D活動に長期間を要する場合,これらの 影響はR&D投資時点からの相当の時間のずれ. いてすでにかなりの蓄積がある.しかし,日本. があると考えられる.そのため,経営者の持つ. まだ僅かな蓄積しかない.今後,日本において. R&Dに関する有意訓育報が直接的にまた迅速. 同様の研究を進めていくにあたって,海外の先. に利益や資本の測定値を通じて市場に伝わるこ. 行研究を考察し実証モデルを分類することは,. とは無いのである.. 海外での先行研究の実証モデルおよびそれによ. では,市場はこうした現行制度のもとで全額 費用処理されるR&D投資をどのように評価し. る実証結果を明らかにし,深遠に解釈する上で. ているのであろうか.つまりここでの疑問は,. においては,当該研究は始まったばかりであり,. 有益であると考えられる. Lev教. また,本節で取り上げる先行研究は,. 市場は企業によって行われるR&D投資を将来. 授およびSougiannis教授を中心とするもので. の利益獲得の源泉と評価しているのか,または 将来の利益獲得の源泉ではなく単なる費用と考. ある.彼らは長期的にR&D投資に関する研究. えているのかである.. み,多くの実証結果を得ている.. つまり本研究は,. R&D投資の即時費用処理. の理由の1つであるR&D投資の価値関連性に. を行い,その過程で様々な実証研究の方法を試 そこで用いられた実証モデルは,ミクロ経 (Markets済学,ファイナンスおよびMBAR. ついて明らかにすることを試みる.また本研究 の研究対象は, R&D投資の企業業績としての. based. 利益および市場の評価としての株式価格との関. のため,モデルを類型化する場合,修正を加え. 連性である.. る前の先行研究が依拠したモデルによって分類. しかし,. R&D投資に関する先行研究は海外. research)の分野で発展した モデルに修正を加えたものが含まれている.そ accounting. することで,モデル間での相違をより明確にす. においてすでにかなりの蓄積があるものの,日 本における当該研究は始まったばかりでありま. ることができると考える.. だ僅かな蓄積しかない5).そこで,本稿はまず. の利益の関連性に関する実証モデルを類型化. 第2節において,先行実証研究で用いられた実 証モデルを当該モデルの背後にある理論フレー. し,その後でR&D投資と市場の評価である株 式価格の関連性に関する実証モデルを類型化す. ムワークによって分類し,またそこで明らかと. ることを試みる.. 以下では,まずR&D投資と企業業績として. なった経験的結果を整理することを試みる.ま た,その過程で日本において同様の実証研究を する上での問題点を指摘する.その後で,第3 節は,日本におけるR&D投資の企業業績およ. 1.研究開発投資と企業業績の関連性 Sougiannis. (1994)は,ミクロ経済学の分野. における研究(Grabowski. and. Mueller. (1978),.

(3) 研究開発投資に関する一考察(寅鍋) Ravenscraft. and. (1982)など)に依拠. Scherer. し,現行の会計基準のもとでの報告利益が過. (453). 105. 増加することを導くことが明らかにされた. 日本において上記のモデルを用いる場合,特. 去R&D投資からの便益を反映しているか否. に注意が必要な変数として研究開発投資額vitTl. かについて,下記の(1)式を用いて明らかにし. が挙げられる.なぜなら,日本において長期的. た6).また,. にR&D投資額に関するデータを企業が公表す. Sougiannis. (1)式はその後の研究(Levand (1996), Lev. Sougiannis. (1999)). において,一部修正されR&D資産を計算する. R&Dに関する る財務諸表から入手する場合, 数値が1999年を境に本質的に変化している恐. ために用いられている7).. れがあるからである.これは,. 1. and. 1998年に「研 究開発費に係る会計基準」が施行されるまでは, N('.. 1/I.. 盟-α砺+α1語・α2畏・言α3,I. 多くの企業が商法第286条の3における試験研. tr. ⅣC≠′. 究費および開発費に関する規定に従って会計処. +eit. (1). NCit AXit. NCit 〟≠′. Vit-I. :i企業のt期末の税引き後利益(特別項 目,広告宣伝費およびR&D投資控除前). 理を取っていたためである. つまり,商法によって規定されている試験研 究費および開発費の定義範囲と新たに制定され た「研究開発にかかる会計基準」よる研究費お. :i企業のt期末の正味資本ストック. よび開発費の概念が必ずしも同じではないこと. :i企業のt期末の広告宣伝費. に注意する必要があると考えられる.. :i企業のt-1期のR&D投資額. 実証研究を行う上での当該問題への解決策と. (1)式は利益と資産簿価,広告宣伝,. R&D投 資を関連付けている8). (1)式におけるR&D投. しては,サンプル企業の注記項目等を注意深く 検討し,当該企業がこれらの基準間の相違をど のように考え会計処理を行っているかを明らか. 資の回帰係数の合計値∑α3ノは,t-1時点におけ るR&Dへの1ドルの投資によるt-1からt期. にしたうえで,サンプル選択を行う必要性があ. にわたる税引後の実現全利益の総計への影響,. て異常な数値の変動を有するサンプルは排除す. つまりR&D投資の利益への長期間の影響を表す 9).これにより, (1)式は報告利益から実現した. ることが必要となると考えられる.. R&D投資の便益を抽出する. (1)式の推定結果は,利益と株主資本,広告. 2.研究開発投資と株式価格の関連性 (a) Ohlson (1989)に基づく実証分析. f. 宣伝,及びR&D投資との問の強い関連性を指. Sougiannis. し示している.特にR&D投資との関連性に関 R&D. 投資の便益が平均して7年間(3.4の2倍)継 続すること示している.さらに,前年におけ るR&D投資の利益に対する全影響(∑α3,∫)は, n. 平均して2.083の値をとっている. 以上のことから,. Sougiannis. (1994)は上記の. 研究を通じてR&D投資と当期業績との関連性 を明らかにした.より具体的には,. (1994)は,株式市場におけるR. Brenan &D投資の評価を明らかにするために, (1991)に依拠し, Ohlson (1989)の資産価値. していえば,平均ラグは2.3年から4.1年であ り,平均して3.4年である.このことは,. るであろう.また,何らかの統計処理に基づい. R&D投資が 1ドル増加すれば7年間に渡って利益が2ドル. 評価モデルに基づき次式を展開した10).そして, 当該式を用いて,. R&D投資と株式価格との関 連性についての実証分析が行なわれた.当該式 における資本簿価および利益数値は,上記の(1) 式の実証結果に基づき,研究開発投資が繰延べ 処理されたものとなっている..

(4) 横浜国際社会科学研究. (454). 106. 第11巻第3号(2006年9月). 若(1. 1Tit)-rYト.]. ・n(i〕 -af・poi・pl. Kothariand の価値を明らかにするために, zimmerman (1995)に基づく同期間分析モデ. ル(contemporaneous (2)ll). ・p2箸+∑p"賢・uit. analysis)を用い,株式 リターンモデルと株価モデルを展開した15).. J=0. まず,株式リターンモデルは次のように展開 された.. Pit. :i企業のt期末から3ケ月後の株価. Tit. :. i企業のt期末における株主資本簿価. Rit. -αl. x,P i企業のt期における研究開発費控除前の :. Rit. 利益 vit. :. 丁f′. :i企業のt期における税率. -. i企業のt期における研究開発投資. α2. (311). 'PIXlf'rl(x,Ft -Xlf)'uit. 'P2Xlf I,,AXlf'62(x13 -X,f)+. (3-2) Xlf)'uit E12△(xl; α3+P3X,fI,3AYlf+63(xlf -xlf)+ (3-3) xLf)I El,A(xlf -. Rit. -. (2)式は,株価と株主資本簿価,修正利益,. uit. -. R&D支出を関. R&Dによるタックスシールド,. (2)式におけるR&D. 連付けている12).ここで,. Ri[. 変数の合計値写叫ま卜1時点におけるR&Dへ の1ドルの投資によるt-1からt期にわたる株 式価格への長期間の影響を表す13). クス・シールドとの間の強い関連性を示してい る.しかし, n. ターン. xlf. GAAPに従って報告された1株あた り営業利益. xlf. 初究開発投資を資産化して修正した. R&Dタッ. (2)式の推定結果は,株価と利益,. t期の4月目から12ケ月間の株式リ. 1株あたり営業利益. R&D支出の直接的な影響を表す. ∑β3,18ま1983年及び1984年にのみ1次であり,. x,P. J=0. 研究開発投資控除前の報告された1 株あたり営業利益. その他の年では0次であった.また,全期間に おける平均ラグは0であった.. 0次の多項式は,. データにラグパターンがないことおよび当期の. XIY-XLE :研究開発投資の全額費用処理化した 場合と資産化した場合との差額 △. R&D変数に限って価値関連性があることを意. :年度成長率. 味している. 以上のことから,. 式の結果から,. Sougiannis. (1994)は,. R&D変数が短期的には株式価. (2). (3-1)式は,. Kothari. and. Zimmerman. (1995). の株式リターンモデルに,報告利益と修正利益. xlf-xlf. 格と関連性があるものの,長期的には株式価格. の差額(利益のミスステートメント). との関連性を有しないことを示した14). (1995)に基づ (b) Kothhari and Zimmerman. を含めたものである.そのため(3-1)式は,樵. く実証分析 Lev. and. Sougiannis. (1996)は,. R&Dに対. 式リターンと報告利益および利益のミスステー (3-2) トメントとの関連性を検証する.また, 式は説明変数として1株当たりの報告利益と. する株式市場の評価,つまりR&Dと企業の株. xif-xlfの年度成長率を含んだものである・さ. 価および株式リターンの相関関係について実証. らに(3-3)式は,. 研究を行った.. 明変数として用いられた,. Lev. and. Sougiannis. (1996)は,. R&D投資. が行われた当該期において認識されるR&D. (3-1)式および(3-2)式で説 1株当たりの報告利. 益xlfを修正利益xlfに取り替えたものである16). また,株価モデルは,次のように展開された..

(5) 研究開発投資に関する一考察(異鍋). 13t-α.. ・P.Xlf'r.(xi?. (4-1). -Xlf)'uit 13t 'P5Xlf'r5(xlf xif)'E25 (4-2) (BVf BV.tE). α5. -. -. uit. -. 1期3月目の月末時点の株価. :t+. BV:・lC-BV;tE :研究開発投資の償却を考慮した期. 107. (1992)に基づき,異期間分析モ. Fama&French. デル(intertemporal analysis)を次式のように 展開している.ここでLev and Sougiannis (1996) ①投資家がR&D情報の報告時 の問題意識は, 点で,その情報の価値関連性を完全に認識して ②投資家はGAAPのもとでR&Dの. いるのか, I3At. (455). 費用処理を不十分にしか調整していないのかの 2点にある.. 末の研究開発資本. Rit. (411)式は,. Kothari. and. -. Co,j. I. (1995). Zimmerman. ・. の株価モデルに依拠するものであり,さらに報 告利益と修正利益の差額(利益のミスステート メント) xlf-xlfを含めることにより株価とミ スステートメントとの関係性を考慮したモデル である. (4-2)式は,さらにBf;・tC-BV;・tEを含め ることによりR&D資本と株価の関係に焦点を 当てている.. I. c5,j. (E/M dummy)i,t. ・. c6,j. ・. c,,jZn(RDC/M)i,i. Ri,i+j. I. ei,i.,. (5). i企業のt期末から7ケ月日の 月末から12ケ月間のストック・ リターン. /7';. ,. リスク.. CAPMのもとでのi企. 業のβ値. た.全ての株式リターンモデルおよび株式価格 モデルにおいて,報告利益への調整部分を表す. ・. (E(I)/M)i,t c.,jln(A/B)i,i. 株式リターンモデルと株価モデルによる(3)式 および(4)式の推定結果は,次のように示され. I. cl,jPi,ic2,jln(M)i,i c,,jZn(B/M)i,t. Mi,t. xLf-xlfの回帰係数の推定値は正であり,かな (B/M)i,t り統計的に有意である.また, xif-xlfは1年. 企業規模.株式市場におけるi 企業のt期の期末時点での市価. 間におけるR&Dへの正味投資額に等しいこと. 簿価対市価比. i企業のt期末に おける普通株から税効果を加算. から,この大きな回帰係数は投資家によって. した簿価対市価の割合. 当該投資を高く評価していることを証明してい. (A/B)i,t. る.. めた場合,その回帰係数は極めて統計的に有意. (E(I)/M)i,t :株価収益率.. I企業のt期末に おける株価収益率.損失の場合. であった.. はKothari. and. Lev. Zimmerman. andSougiannis. Ⅰ企業のt期末にお ける稔資産の簿価対普通株の簿. 価の割合. また,測定されたR&D資本は株価回帰に含. 以上のように,. :リバレッジ.. は0を入れ替える.. (1996). (1995)に基づき,. : (E/Mdummy)i,i i企業のt期に損失が生じた場合. R&Dへの投資額および蓄積されたR&D資本. には1とし,そうでない場合に. がともに投資家が利用するのに役立つ情報であ. は0とする.. (RDC/M)i,i :R&D資本.. ることを指摘している.. (c). Fama&French. Lev. and. I企業のt期末にお ける計算したR&D資本に対す. (1992)に基づく実証分析. Sougiannis. (1996)は,. 出が行われた当該期において認識されな かったR&Dの価値を明らかにするために. る持分の市価の割合. R&D支 そのため,. (5)式は,被説明変数として株式. リターン,また説明変数としてβ値,企業規模,.

(6) 横浜国際社会科学研究. (456). 108. 簿価対市価費,財務レバレッジ,. 第11巻第3号(2006年9月). E/P比率を. Jit. -. rot. 含んでいる. (1992)の回帰. r,tRDSit. 式に含まれる場合,その係数は正の値をとり, 10/.水準において統計的に有意である.. +. r2tLNAGEit. i企業の各の株式リターンの変動性 (その後の12ケ月間の月々のリターン. 0-it. 変換される.これは,. R&D集約型企業のR&D 資本の平均的な市場の価格付け間違いの推定で. の標準偏差) RDSit. :i企業のt期末における売上に対する R&D集約度の割合. LNSIZEit. :. i企業のt期末における株式市場の株 式資本(対数において). LNAGEit. :. i企業のt期末における企業の年数 (対数において). INDljt. :. i企業のt期末における産業のダミー. (1996)は,この結. LevandSougiannis. 果が企業のR&D資本が結果として生じる株式 ストックと関連性を示していると述べている. andSougiannis. (1996)は,結果として生. じる株式リターンとR&Dの関連性が価格付け 間違いを示唆するのか,それとも特別な市場リ. 変数. スク要因の存在を示しているのかは明らかでな いが,当該結果はR&D資産の価値関連性に関 する自分たちの結論を強めると主張している. (1992)に基づく異. また,このFama&French. (6). +Sit. +∑¢jtINDljt ノ-1. RDC/M. の平均値0.327を考えると,回帰パラメーター o.o114 (毎月)は4.57%のリターン(年間)に. Lev. ritLNSIZEit L. RDC/肘比率がFama&French. ある.. +. (1999). 皮(売り上げに対するR&Dの割合)の関係性 を検証するものであるが,株式リターンの変動. 期間分析モデルは,. Lev. およびCbanetal.. (2001)においても用いられ. 性が企業規模および企業年数,特定の産業に影. ている.この実証結果は,先に挙げたOhlson (1994)による株 モデルに基づくSougiannis. 響を受けることが考えられることから,それら. and. Sougiannis. (6)式は,株式リターンの変動性とR&D集約. 価と研究投資の関連性が明らかとされなかった. の変数をも含んである. (6)式の推定結果は,売上高に対するR&Dの. という実証結果を覆すものである.. 割合で5分位のポートフォリオの最高部に位置. (d) R&DとReturn. する企業とR&Dを行っていない企業とを比較. chanetal.. Vola川ityの関連性 (2001)は,平均してR&Dを行. すると, R&D集約度の最も高い企業の月々の. う企業と行わない(No-R&D)企業の間に株式 R&D. リターンの差がないという実証結果と,. リターンの変動性が2.21%大きいことが示され Chanetal. (2001)は,平均的なR&D. ている.. が平均的な株式リターンを超えて財務活動に影. を行っている企業のリターンの変動が月々平均. 響を与えることから,次の仮説を導く.つまり,. 13%であったことと比較し,. R&D集約型企業の将来の予想は高度な不確実. 式リターンに対して重要であること指摘してい. 性に取り囲まれている.その結果,リターンの. る.また,. 変動性はR&D支出とともに高まる.したがっ. についての制限された開示が株式収益率変動性. て,. R&D集約度は,結果として投資家に実質 的な費用を負わせ, R&D集約型企業の資本コ. の一因である場合, R&Dの現在の会計処理方 法に関連がある犠牲かもしれないと指摘してい. ストに影響を与える. chanetal. (2001)は,この関連性を明らか. る.. にするために,次式を用いて回帰分析を行って. 企業業績の関連性に関する,またR&D投資と. いる.. 株式価格に関する研究をミクロ経済学,フア. R&D集約度が株. Chanetal.はこの結果を受け,. これまでの考察により,本節はR&D投資と. R&D.

(7) 研究開発投資に関する一考察(異鍋) イナンスおよびMBARの分野における理論フ. 集約度がどのように高まってきているかを表し. まずSougiannis (1994)は,ミクロ経済学の分 R&D投資と企業業績. ている.また表1のパネルBは各産業のR&D 集約度がどういった特徴を有するかを表して. の関連性について実証研究を行った.その実証 結果は, R&D投資と企業業績とには正の関連性. R&D集約度が企業業績 いる.次に,表2は, および株式価格に与える影響を明らかにする.. があることを示している.また,当該モデルは,. また,その過程で株主資本利益率(ROE),研. Lev. (1996),. Sougiannis. Lev. 究開発株価収益率(P/E)および株価簿価比. Sougiannis (1999)において,一部修正されR&D資本を計. 率(P/B)とそれぞれの修正比率を比較するこ. 算するために用いられている.また,. とを通じて,. and. (2001)は,. and. Cha血et. andSougiannis (1996)の当 該モデルによる実証研究で示されたR&D投資の al.. 109. まず,表1のパネルAは日本企業のR&D. レームワークに基づき分類した.. 野における研究に依拠し,. (457). Lev. 耐用年数および償却率をモデル化し,. R&D資本. R&Dの即時費用化がぞれぞれの 比率に与える影響を明らかにする.最後に,義 2の修正P/B比率の比較を通じて,投資家の R&D集約型企業の評価を考察する.. の推定を行っている. は,. 1.日本企業の研究開発集約度の傾向 表1は, R&D投資17)と推定されたR&D資. 基づき株式市場におけるR&D投資の評価を試. 本に関する期間(1988年-2003年)の要約統. みた.この実証結果は,. R&D変数が短期的に は株式価格と関連性があるものの,長期的には. 計量を示している.. 株式価格との関連性を有しないことを示した.. 表されている.また,. R&D投資と株式価格に関する研究に関して Sougiannis (1994)はOhlson (1989)に. しかし,この実証結果は,その後のLevand. R&D資本は,資産合計 および自己資本の割合として表される.. (1996)によって覆される.つまり,. Sougiannis Lev. R&D投資は売上高,当期 利益,自己資本,資産合計に対する割合として. Sougiannis. and. (1996)がFama&French. (1992)に基づき行った異期間分析の実証 結果は,株式リ. 表1のR&D集約度の分析において用いられ たサンプルは,次の条件で抽出されている. ①. 1984年から2003年までの東証1部に上場. ターンとR&D投資の間に. している企業(個別財務諸表)18) (ただし,銀行,証券,保険業,その他金融. は関連性があるというものであった.この (1992)に基づくモデルは,そ. Fama&French. の後のLev C血an. etal.. and. Sougiannis. (1999)および. 業は除く) ②. R&D投資の繰延処理を行わず,発生時に. (2001)においても用いられている.. 一括費用処理を行っている企業 ④. 第3節. 上記の期間にR&D投資を継続的に行って. 研究開発集約度と企業業績. する会計基準が施行される前後におけるデータ. いる企業 1999年度からR&Dに関する会計基準が 施行されたことによって,当該年度から「販. の相違を考慮したうえで,. 売費および一般管理費」でR&D投資額の開. 本節は,前節で挙げた1999年にR&Dに関 R&D集約度と企業. の業績の関連性について検討する. 当該相違は,現在のR&Dと企業業績および. 示を行っている企業は,実際には当該年度以. 株式価格の関連性を考察する場合,極めて大き. るがその値は明らかでないことからサンプル. いものである.なぜなら,無意識のうちに本来. には含めないこととする.. の対象でないものと企業業績および株式価格の 関連性を考察することになりうるからである.. 前からR&D投資は発生したものと推測され. ④. 1999年以前に「試験研究費」勘定を用い, 2000年以降に「研究開発費」勘定を用いて.

(8) 110. (458). 横浜国際社会科学研究. R&D/. パネルA. R&D/. 売上高. R&D/. R&DCapita1/. 資産合計. 当期利益. 第11巻第3号(2006年9月). 資産合計. R&D/. 自己資本. R&DCapita1/. 自己資本. R&DCapita1/. (自己資本+R&DCapita1). 1988年. 3.44%. 122.42%. 2,81%. 6.60%. 8.68%. 20.35%. 16.91%. 1993年. 4,040/o. 194.09%. 3.14%. 8.83%. 8.79%. 24.74%.. 19.83%. 314%. 8.84%. 8.09%. 22.72%. 18.52%. 7.05%. 22.07%. 18.08%. 1998年. 4.14%. 208.89%. 2003年. 4.49%. 349.51%. 14.79%. 141.31%. 7.970/o. 21.61%. 10.51%. 28.51%. 22.18%. 化学. 4.96%. 157.02%. 3.42%. 10.32%. 6.51%. 19.66%. 16.43%. 機械. 1.78%. 75.47%. 1.78%. 5.48%. 4.00%. 1.72%. 189.58%. 1.29%. 3.86%. 2.16%. 6.46%. 6,07%. 1.67%. 82.76%. 1.56%. 4.68%. 2.81%. 8.44%. 7.79%. ・3.03%. .9.47%. パネルB 製■薬. 非鉄金属 食品. ・12.30%. 10.95%. 1999 いる企業はサンプルに含める.ただし, 年以前には「試験研究費」を用い, 2000年. このことは,もしR&D資本が貸借対照表に加. 以降において「試験研究費」と「研究開発費」. なったかもしれないことを示唆している.ま. の両方を用いている企業,および2000年以 降に極端に増減している企業は,以前の「試. た,研究開発投資の当期利益に対する割合は, 122%から349%へと増加している.このこと. 験研究費」と「研究開発費」を異なるものと. は,企業経営者の短期的な利益よりも長期的な. 捉えている可能性があることから,サンプル. 利益を期待する研究開発投資-の高いインセン. に含めないこととする.. ティブを表していると考えられる.. えられたら,比率分析の結果が違ったものと. ここで注意すべき点は,研究開発投資額およ. (釘 R&D資本の算出方法は次の方法を用い. び研究開発資本の自己資本に対する割合がとも. る.. に1988年から2003年までの期間に単調に増加 RDCit. RDit. -. 0・4. + *. 0・8*RDit_1. RDit_3. +. 0・2. 0・6*RDiト2. + *. +. していない又は低下していることである.この ことは,先行研究と同様に日本経済の不景気に. RDit_4. よる1980年後半からの日本企業のR&D集約 RDi(. :i企業のt期のR&D投資. 度の低下を示すものか.しかしながら,表1の. RDCit. :i企業のt期のR&D資本. 研究開発投資の資産合計に対する割合は,対照 的な結果を示している.つまり,当該割合は. (釘 パネルBの各産業は,. 10社以上のサンプ. 1988年の2.810/.から2003年の3.030/.まセの単. ルを含んでいる.. 調な増加を示している.この差は,おそらく日. パネルAにおいて,. R&D投資は媛やかでは あるものの増加している.まず,売上高に対す. 本企業の資本構成の変化を意味していると考え. る研究開発支出額の割合は,. 離するため控えることとする.また,ここでは. であり,. 1988年には3.44%. 2003年には4.49%であり,. 1.3倍以上. られるが,これ以上の詳述は本稿の目的から乗 研究開発の資産合計に対する割合がより資本合. 2003年においてR&D. 計よりもより正確な集約度を表すと考える.. 資本は自己資本の22%の大きさを超えている.. これまでのパネルAの結果は,当該期間を. に増加している.また,.

(9) 研究開発投資に関する一考察(寅鍋). (1)Low. (459). (2). (3). (4). (5)High. 111. NoR&D. 売上に対する研究開発投資の割合. 0.0031. 0.0108. 0.0268. 0.0474. 0.1042. 0. 株式時価総額に対する研究開発の割合. 0.0085. 0.0225. 0.0432. 0.0485. 0.0701. 0. -0.0193. 0.0215. 0.0214. 0.0293. -0.0376. -0.0197. 0.0219. 0.0158. 0.0177. -0.0376. 70.5406. 57.8304. -31.0466. 160.5544. 69.6214. -31.0466. ROE. -0.0992. 修正ROE. -0.0973. 株価収益率. -10.9193. -51.5537. 54.0433. 修正株価収益率. -10,8192. -47.1965. 46.3750. 株価簿価比率. 1.0829. 0.9949. 1.1594. 1.5107. 1.6934. 1.1665. 修正株価簿価比率. 1.0527. 0.9288. 1.0135. 1.2014. 1.2298. 1.1665. 通じて日本企業のR&D集約度が高まっている. く,産業の比較することが困難であると考えら. ことを示している.また,. R&D投資の当期利. れる.しかし,ぞれぞれの産業において,利益. 益に対する割合から,企業経営者の研究開発投. に対するR&D投資の割合が高いことが示され. 資へのインセンティブへの高まりを見ることが. ている.. できる.また,. R&D資本の自己資本に占める. 割合は,もし当該資本が貸借対照表の簿価に加 えられたなら,株式価値がもう少し低く評価さ れうることを示唆していると考えられる. 表1のパネルBは,. R&D支出が技術および 知識集約的な産業に集中していることを示して. 2.. R&D集約度と企業業績との関連性 表2は,. 2003年までの5年間をサンプル 期間とし,売り上げ対する研究開発の割合 でR&Dを行っている企業を5分位に分類し, R&Dを行っていない企業も比較対象としてあ. いる.パネルBは,特に関心のある産業をい くつか抜き出し, 2003年の財務報告に基づき,. げている.. 売上高に対するR&D支出の割合に従って並べ. たサンプルは,次の条件で抽出されている.. たものである.. ①. パネルBにおいて,特に集約度の高い産業. 表2のR&D集約度の分析において用いられ 表1の(参③④. (勤1998年から2003年まで東証1部に上場し. は製薬業である.製薬業の売上高に対する研究 開発投資の割合14.79%は,パネルAにおいて 全産業におけるは4.49%に対して,. 5分位の企業数は,各51社である.また,. 10%以上も. 大きい.それに対して,一般に研究開発集約度 が高いと考えられる化学は,産業平均の4.96% であり,その他の機械,非鉄金属,食品は産業 平均より低い値となっている.. 研究開発を行っていない企業は57社である. ④. 修正簿価-個別貸借対照表の資本合計+ R&D資本. (釧参正利益-当該利益+ RDil. また,パネルBのその他の比率に関しても, 同様の結果を示している.ただし,. ており,決算日が3月末の企業 ④. R&D投資. の利益に対する割合は,かなり異なった特徴を 示している.これは利益数値が各産業の景気の 影響を受けているためと考えられ,当該数値は 長期的にこれらの数値が継続するとは考えづら. -. 0.2x. 19). +RDiト2 (RDt・ト.. 'RDL-ト3. +RDit_.十RD,・t_5). (a)株主資本利益率(ROE) 表2における3行目のROEの数値は,各5 分・位を通じて著しい傾向を有している.具体的 には,最も集約度の低い5分位(1)は-0.09であ り,最も集約度の高い5分位(5)は, 0.029であっ.

(10) 112. (460). 第11巻第3号(2006年9月). 横浜国際社会科学研究. 位の(1)と(2)は負の値であり,それ以外は正の. た.. 周知のとおり,. 値である.正の値をとる5分位のなかで,最も. ROEは,株主によって投資. された資金を使って経営者がどれだけ効率的に. 大きな値は(4)の160.55であり,最も小さな値. 利益を生み出したかを示すものであり,企業業. は3番目の46.37であった.修正P/E比率は,. 績の包括的な指標である.. p/E比率と同様の傾向を有しており,必ずし も研究開発集約度とともに増加していない.特. この5分位を通じて明らかなことは,研究開. に,. 4番目の160.55はかなり大きく,不自然な 数値であるように考えられる.. 発投資の集約度が低い5分位は低い又は負の ROEの倍をとるのに対して,集約度が高い5 分位は大きなROEの値をとるということであ. このようにP/E比率が不自然な値をとりう. る.このことは,研究開発集約度と企業業績と. るのは,. の関連性を直感的にではあるが表しているよう に考えられる.ただし, 5分位の(3)と(4)の間. れる.まず,. P/E比率の次のような特徴が考えら p/E比率は,次にように展開さ. れる.. には,. ROEの単純な増加傾向は見られず,横 ばい傾向である.. 株主資本の市場価値 当期利益. また,ここでのROEは現行の会計基準に従 ROEの い計算された数値である.そのため, 分子にあたる利益額は研究開発投資を費用処理. 株主資本の市場価値. 株主資本簿価 利益. 株主資本の簿価. した値であり,分母である自己資本は研究開発 資本を含んでいない.そのため,当該修正を加. (9). えた修正ROEを比較することとする. 4. 修正ROEは,. 5分位の3番目が最も高く, 番目および5番目が正の値を示している.しか. それに対して,. し, 5分位の1番目および2番目は依然として,. P/B比率は「割引超過利益. モデル」に基づくと次のように展開される.. 負の値を示している.このことは,依然として 研究開発集約度と企業業績との何らかの関連性. 株主資本の市場価値. を表しているように考えられる.ただし,集約. 株主資本の簿価. 度の高まりによるROEの単純な増加は示され ていない.. (ROEt. (b)株価収益率(P/E比率). -r)x%. P/E比率は,表2の5行目に表されている.. r. -要求利益率(資本コスト). BVt_1/BVo・・・純資産簿価成長率. で,最小値は5分位の3番目の54.04であり, る.. (10). (1+r)I. P/E比率は,最も低い五分位で-10.91であり, 最も高い5分位で57.83である.正の値をなか 最も大きな値は,. 〔言)-1+. 5分位の4番目の70.54であ (9)式および(10)式で明らかなように,株価収. P/E比率は,研究開発集約度ととともに単. P/E比率はROE と同様に,現行の会計基準に従い求められた数. 益比率(P/E)は,株価簿価比率(P/B)と同. 値である.そのため,分母の利益額を調整した. 比率は当期のROEに大きく影響を受けるのに. 修正P/Eによる比較を行う.修正P/Eは,衣. 対して, P/Bはそうではない.このことは,. 調に増加していない.また,. 2の6行目に表されている.修正P/Eは,. 5分. じ要因によって決定されている.しかし,. つの比率の重要な相違である.そのため,. P/E. 2 P/E.

(11) 研究開発投資に関する一考察(真鍋). (461). は現在のROEが小さければ非常に大きな値と. 値であるの対して,修正P/B比率では集約度. なり,また現在のROEの倍が大きければ小さ. に従っているということは,当該5分位に属 する企業のR&D投資を市場が評価していると. な値となり,. ROEが負又はゼロである場合,. その値を定義できか、20). いうようにも考えられる.つまり, づけば,. このように, P/E比率は現在のROEに影響 数値となりうるのである.それに対して,. P/B. 比率における当期ROEの影響は,割引率の. (10)式に基. 5分位の(5)がその他の5分位より修正. P/B比率の倍が大きいということは,. を受け,極めて不安定な数値であり,不自然な. 113. 2つの要. 因によるものであると考えられる. 1つ目の要因は,将来の超過ROEである.. 影響を無視すれば1-∞のなかの1つであり,. 将来の超過ROEとは,将来のROEから株主. P/Eにおける影響と比較すれば相対的に大き. 資本コストであるrを控除した値のことである.. くない21).そこで,. 正の超過ROEを持つということは,当該投資. P/E比率と比べ安定的な. P/B比率と研究開発集約度との関連性を見て. が株主価値創造を果たすことを意味しており,. いく. (c) P/B比率. その結果であるP/B比率は1より大きくなる. このことは,経営者が将来にわたって株主資本 から効率的に利益を生み出すかを表している.. P/B比率は,表2の7行目に示されている. P/B比率は,最小の5分位では1.0829であり, 最大の5分位では1.6934である.また,. 2つの要因は,株主資本簿価の成長である. P/B. 比率はR&D集約度の高い5分位の(4),(5)がそ. 資本簿価の成長は,驚によ-て求 この値が1を上回る理由は,新株の発行および. の他の(1),(2),(3)よりも大きな借をとっている. 利益の再投資が考えられる.これらの資本が. ことを示している.このことから,研究開発集 約度とP/B比率の関連性が示されているよう. 超過ROEをもたらす事業等に投資されれば, P/B比率は成長する.このことは,企業の行っ. に考えられる. しかし,ここでのP/B比率は,. ROE,. P/E. ている事業が将来にわたって成長する機会を有 していることを意味する.. 比率同様に現行の会計基準に従い求められた数 値である.そのため,分母である株主資本簿価. つまり, 5分位の5番が最も大きなP/B比 率をもつことは,投資家がR&D集約型企業が. にR&D資本を加えた修正P/Bの比較を行う. 将来にわたって株主資本から効率的に利益を生. 必要があると考えられる.. み出し,また企業の行っている事業またR&D. 修正P/B比率は,表2の8行目に示されて. の成果によって新たに創り出された事業が将来. 5分位の(5)であり,義 いる.最も大きな値は, も小さな値は(2)である.このことは,修正前. にわたって成長する機会を有していると期待し. のP/B比率と同じ特徴である.ここで注目す べきは,集約度の高い5分位の修正P/B比率. このことは,経営者の持つR&Dに関する有 意な情報が直接的にまた迅速に利益や資本の測. の値ほど大きく低下しているということであ. 定値を通じて市場に伝わることは無いにもかか. る.このことは,投資家がR&D集約度の高い 企業の株式評価をおこなう場合に価格付け間違. わらず,市場は何らかの方法でR&Dに関する. いを導く可能性があることを示している. さらに,修正P/B比率の値が依然として研 究開発集約度の高い(4),(5)において大きいとい うこと,またROE及び修正ROEにおいて5 分位の(3),. (4)では集約度とは逆に(3)が大きな. ていると考えられる.. 情報を入手し,株式価格を形成していると考え られる.. 第4節. 今後の課題. 本稿は,日本企業に関するR&D投資の企業 業績および株式価格との関連性について考察を.

(12) 114. (462). 横浜国際社会科学研究. 第11巻第3号(2006年9月). おこなった.まず第2節は,先行実証研究で用. 本研究は,クロステーブルを用いた研究開発投. いられた実証モデルを当該モデルが依拠する 理論フレームワークによって分類し,またそこ. 資のその他の変数の関係性の考察に留まってい. で明らかとなった経験的結果を整理することを 試みた. R&D投資と企業業績の関連性に関す (1994)によって用い る研究では, Sougiannis. の実際調査および仮設構築型の研究に留まって. られたミクロ経済学の分野における先行研究 (Grabowski. Mueller. and. (1978),. Ravenscraft. (1982)など)に依拠する実証モ. andScherer. (1994)は, デルが挙げられる.またSougiannis 当該モデルを用いてR&D投資と当期業績との 間の関連性があることを証明した.またその 級,当該モデルはLev and Sougiannis (1996), Lev. and. Sougiannis (1999)において,一部停. ることから,今後の研究のための前段階と.して いるといわざるをえない.. 表1は,. R&D投資は緩やかではあるもの増 加していること,またR&D資本の自己資本に 占める割合が高く,投資家の投資意思決定に影 響を持つ可能性があることを示した. 表2はR&D集約度の高い企業がROEにつ いても正の倍をとることを示していることか ら, R&D集約度と企業業績の間に正の関連性. があることを表していると考えられる.ただ し, 5分位の(3)と(4)のROEの値がR&D集約. 正されR&D資本を計算するために用いられて. 度とともに単調に増加していないことを表して. いる.. いる,. 次に, R&D投資と株式価格の関連性に関 Sougiannis (1994)によっ する研究では, て用いられたOblson. (1989)の資産価値評. 価モデルに依拠する実証モデル,またLev andSougiannis Kothhari. and. (1996)によって用いられた Zimmerman. (1995)に基づく同. 期間分析モデル,およびFama&French. (1992). に基づく異期間分析モデル(intertemporal (1994)は, analysis)が挙げられる. Sougiannis 当該モデルによる実証研究を通じて,. R&D変 数が短期的には株式価格と関連性があるもの. また,表2はR&D集約度の高い企業がP/B 比率および修正P/Bについても正の値をとる ことを示していることから,. R&D投資と株 式価格との間に正の関連性があることを表し ていると考えられる.その関連性の背景には, R&D集約型企業に対する投資家の期待がある と考えられる.つまり,それはR&D集約型企 業が今後R&Dを通じて生み出す新たな技術等 の競争優位および新たな市場の創造を通じて今 後実現されると考えられる超過ROE及び株主 資本簿価の成長である.. の,長期的には株式価格との関連性を有しな. ただ,本稿での日本企業に関する分析は,サ. LevandSougiannis いことを示した.一方, (1996)は,長期的なR&D投資と株式リター. ンプル収集面で大きな制約があり,また償却率 をはじめ多くの仮定に立っているため,妥当性. ンの価値関連性を証明し,先に挙げたOblson (1989)に基づくSougiannis (1994)の実証結. には限界があると考えられる.また,十分・な仮 説設定等もなく,現状分析にとどまることを認. 果を覆した.. めざるをえない.そのため,より妥当性を有す. 第3節は,. 1998年にR&Dに関する会計基準. が施行される前後におけるデータの相違を考慮. るR&D投資の企業業績および株式価格との関 連性ついての研究は,今後の課題としたい.. したうえで, R&D集約度と企業の業績の関連 性について検討を行った.日本の先行研究にお いて,この点を考慮したものが無いことから, より正確な対象間の関係性を明らかにするため に有益であったと考えられる.しかしながら,. 注 1)産業経済から知識創造経済への経済構造の変 化と無形資産の重要性の高まりに関しては,古.

(13) (463). 研究開発投資に関する一考察(暴鍋) 賀(2005)を参照されたい. 2)ここでの研究および開発は,企業会計審議会 によって公表された「研究開発費に係る会計基 準」に従い,次のように定義する.つまり,研 究とは,新しい知識の発見を目的とした計画的 な調査及び探究をいう.また開発とは,新しい 製品・サービス・生産方法についての計画若し くは設計又は既存の製品等を著しく改良するた めの計画若しくは,設計として,研究の成果そ の他の知識を具体化することをいう. Blair, M and I(ochan, T. 3)詳細に関しては, (2000)を参照されたい. 4)日本における新たな会計基準設定主体として, 2001年に企業会計基準委員会が設立されてい. A.. (1)式は左辺の税引き後利益として,広告宣伝 費と研究開発投資控除前のものを用いている. この利益調整は,等式の両辺にそれらを含める ことを避けるための方法である. (1994)は, (1)式の説明変数であ 9) Sougiannis るR&D変数の間に高い自己相関の問題につい て,アルモン分布ラグ推定法およびフォーム・ フリー推定法を用いている. また, Sougiannis (1994)は,タイムラグ期 間のパラメーターを用いて研究開発資産の償却 率を推定できると考えており,以下の式で求め られるという. α3,∫. 6l. =. 「㌻-----. る.. 5)近年の日本におけるR&D投資とそれに対す る市場の評価に関する研究として,中野(2005), 野間(2005),八重(2005),劉(2005)が挙げ られる.これらの研究は,主に海外における Lev 実証研究であSougiannis (1994)および, (1999)の実証モデルを日本に and Sougiannis 適用したものあるいは発展させたものである. そのため,日本における当該研究の実証モデル およびその背後にある理論モデルはここでは触 れないものとする. Scherer (1982)は, 6) Ravenscraft and Griliches (1979)に基づき回帰モデルを次のよ うに展開した.. L,RDt LmMi. cu NK TI. n. ∑α,,lなお, ∑6l-l i=O. 61. I-0. :tJ期の研究開発投資の償却率. 10) Oblsonモデルに基づけば,株価は下記のよ うに表される. pf Pt Xi. -. Yt. 'P[xt-rYt_l]'rZ,. :株式の市価, yt :純資産簿価, :会計報告の利益, zf :人手可能な他の情報. ここでの[xt-rYtーl]は,残余利益と定義され. る.また,会計情報の利益および純資産簿価に よって企業価値を十分に評価することができる とすれば,他の情報zlのパラメーターrは0に. (i)it なる. ・b2Lm〔芸〕it十b3〔晋)it a・b.Lr(%〕it ・elt. -. H. 115. :税引き前利益 :タイムラグ期間の研究開発投資 :タイムラグ期間のプロモーションのため の広告宣伝費など :キャンパスシティ利用率 :設備投資の帳簿価額 :投資稔額. ここでの研究開発投資は,応用研究および開 発研究に関する支出を対象としており,基礎研 究は含まれていない. (1994)は, R&D便益のタイムラ 7) Sougiannis グの推定結果を用いて, R&Dの償却率が計算 できることを示唆している.詳細に関しては, Sougiannis (1994) p.59を参照されたい. 8)また, (1)式は,無形資産への投資変数とし て,研究開発投資(Ⅴ)の他に広告宣伝費(〟) Sougiannis を含んでいる. (1994)は,この 広告宣伝費に関する先行研究(Ravenscraft Scherer (1982) Bublitz Ettredge and and (1989))の実証結果に基づき, (1)式には当期 の広告宣伝支出のみを含めている.さらに, ,. (1994)は, (2)式においても説明 ll) Sougiannis 変数であるR&D変数の間に高い自己相関の問 題について,アルモン分布ラグ推定法および フォーム・フリー推定法を用いている∴ 12)また, (1)式は,無形資産への投資変数と して,研究開発投資(Ⅴ)の他に広告宣伝費 Sougiannis (1994)は,こ (〟)を含である. の広告宣伝費に関する先行研究(Ravenscraft Scberer (1982), Bublitz Ettredge and (1989))の実証結果に基づき, (1)式には当期 の広告宣伝支出のみを含めている.さらに, (1)式は左辺の税引き後利益として,広告宣伝 費と研究開発投資控除前のものを用いている. この利益調整は,等式の両辺にそれらを含める ことを避けるための方法である. (1994)は, (1)式の説明変数であ 13) sougiannis るR&D変数の間に高い自己相関の問題につい て,アルモン分布ラグ推定法およびフォーム・ フリー推定法を用いている. また, Sougiannis (1994)は,タイムラグ期 間のパラメーターを用いて研究開発資産の償却 率を推定できると考えており,以下の式で求め and.

(14) 116. 横浜国際社会科学研究. (464). 第11巻第3号(2006年9月). られるという. 6l. 参考文献. n. -」聖-. ∑6l-1 ∑a,,.なB・. (海外文献). /=O. i=0. Blair,. 61:i-l期の研究開発投資の償却率 (1994)は,タイムラグが存 14)また, Sougiannis 在しない理由について,次の3点を挙げている. つまり, ①利益充足性(earningssu艮ciency) 利益はタイムラグのあるR&D投資に関して十 分な情報を提供している, ②市場効率性(market. -α+JiXt. APT. The. "The. E.and. 考慮するモデルである. (6-2)式の4つの説明変 16)取り替えた理由は, 数の要素に含まれており,その影響を取り除く ためである. 17)具体的には, R&D投資のデータとして1999 年以前は「試験研究費」勘定を用い, 2000年 以降に「研究開発費」勘定を用いる. 18)サンプル抽出の開始年を1984年とした Tower 理由は,有価証券報告書を『eoIDB Service』を通じて利用しおり,当該データベー スのサービスが1984年以後となっていること によるものである. 19)修正利益は, R&D投資額が一度R&D資本 として計上され,その後均等償却されることを 通じて求められる数値である. Palepu, K. G.,P. M. Healy, and V. 20)詳しくは, L. Bernard (2000).を参照されたい. 21) 2002から2003年における日本経済は,長く 続いた景気停滞から脱却し僅かに景気回復に向 かう時期にあたる.また,多くの企業は設備投 資等の整理等を進めている段階にある.そのた め,当期利益は必ずしも短期的および長期的な 企業の業績の指標とならないことがありうる.. 2431. profit 328-343.. 9, pp.. (1992),"The. K.French,. capital Bell. rates'',. (Financial Accounting (1974), Accounting Development. Costs,. Journal. cross-section. Journal. Standards for. No.. Broad). and of Financial. Statement. Standards. of. Research 2.. S. P, and J.L. Zimmerman Return Models", Joumal. Kothari,. -2456.. (1978),``Industrial. development,intangible. Accounting. (2)は,ストック・ (3)は,年次変化率を. 56, pp.. D, Mueller. firm. of. Expenditures'',. returns", of expected stock Finance, 47, pp. 4271465.. +Si. Press. Sougiannis. Valuation. Development. and. stock, and Economics,. T.. New. Amen'ca. the. l'n. and Market. Stock. H., and. The. (2000). Institution. Jouz・nal ofFl'nance,. research. Fama,. A.. Capl'tal. Brookings. and. Grabowski,. -α+PAXi十Ct. (1)は,株価モデルである.. T.. ∫.Lakonishok,. C.,. Researcb. FASB. pt:t期末の株価,xt:t期末の利益,A:年次成 長率. リターンモデルである.. L.. (2001),. :. +6t. P[/PIJ -a+PXi/PTA. Kochan,. and. CozIPOratl'on, C血an,. e丘cientcy) :当期のR&D変数が株価の予想に (釘当期のR&D変数でタ 用いられていること, イムラグのあるR&D変数を十分補っている, である. (1995)は,次の 15) Kothari and Zammerman 3つの回帰式を考案した. Pt. M. Relatl'onshlb.・Human. (1995),"Price. of Accountl'ng 20, pp, 155-192. and Economl'cs, Lev, B. (2000) Zntangl'bles: Management, and. MesuTement,. Repwtl'ng,. and. The. Brookings. Press.広瀬義州・桜井久勝訳『ブ ランドの経営と会計-インタンジブルズ』 東洋新報社, 2001年. B. and T. SougiaⅢnis (1996), ``The lnstitution. Lev,. Capitalization,. Amortization,. Relevance. Valueand of Accountl'ng. R&D"Joumal. of Economl'cs,. 21, pp. 107-138. and Lev, B. and T. Sougiannis (1999), "Penetrating Black Box: The R&D tbe Book-to-Market Effect",. Fl'nance of Busl'ness and 26, pp. 419-449. P. Zarowin (1999),"The Boundaries. Joumal. Accountl'ng, Lev,. B, and Financial. to Extend How and tl'ng Research, 37, Accoun of. Reporting. Them''Jouz・nal pp.. 353-385.. Ohlson,. J.A (1989)."Accounting. Value,. and Surplus. Clean Columbia Palepu,. K.. Diviends:. Equation'',. University, G., P. M.. (2000),Busl'ness. Analysl's. Ravenscraft, Lag. ts. York,. Second. Publishing.. D., and. F.. Development",. M.. of the Paper,. NY.. V. L. Bernard and & Vduatllon: Usl'ng. College. Structure. Book. Theory Working. New. Healy,. Fl'naDCl'al Statemen Western. Earnings,. The. Scberer. Edl'tl'on South,. (1982),"The. to Research and of Return Applied Economics, 14, pp..

(15) 研究開発投資に関する一考察(異鍋) 603. 『経営財務研究』第24巻第2号,. - 620.. Sougiannist Valuation Accountl'ng. T. (1994), ``Tbe. Accounting. of Corporate Revl'ew, 69, pp.. R&D",. Based T12e. 44168.. (国内文献) 加賀谷哲之(2003), 「無形資産の開示とIR」,一 橋大学イノベーション研究センター編者『一 橋ビジネスレビュー』. 『企業評価と知的資産』税務経 岡田依理(2003), 理協会. 古賀智敏(2005), 『知的資産の会計』東洋経済新 報社. 総務省統計局(1994), 『科学技術研究調査報告』. 総務省統計局(2004) 『科学技術研究調査報告』. 日本会計研究学会特別委員会(2005) 『無形資産 会計・報告の課題と展望』. 内閣府(2005), 『経済財政自書』. 中野誠(2005), 「研究開発投資と企業価値の関連 性一日本の科学産業における実証研究-」, ,. (465). 117. pp.133-. 146.. 「研究開発投資に関する株式 野間幹晴(2005), 市場の評価」,日本会計研究学会特別委員会 『無形資産会計・報告の課題と展望最終報告』 日本会計研究学会. 潰本道正(2006), 「研究開発のフアンダメンタル ズと会計測定」, 『企業会計』,第58巻第5 号, pp. 676-684. 『企業経営の分析』. 三菱給合研究所(2004), 八重倉孝(2005), 「研究開発投資の費用処理と将 来業績の関連性」,日本会計研究学会特別委 員会『無形資産会計・報告の課題と展望最終 報告』日本会計研究学会. 劉慕和(2005), 『研究開発投資の会計処理と市場 の評価』同文館出版. [まなべ かずひろ 横浜国立大学大学院Bl際社 会科学研究科博士課程後期].

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