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超音波透過法を使用した非侵襲的誤嚥検出法に関する研究

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(1)

超音波透過法を使用した非侵襲的誤嚥検出法に関す

る研究

著者

原 陽介

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

11301甲第19128号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00129223

(2)

博士論文

超音波透過法を使用した非侵襲的誤嚥検出法に関する研究

東北大学大学院医学系研究科 医科学専攻 神経・感覚器病態学講座 耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野

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目次 1. 要約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 2. 研究背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 (1) 嚥下障害および嚥下訓練の現状と課題 ・・・・・・・・・・・・・・・ 6 (2) 既存の誤嚥検査法とその問題点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 (3) 超音波透過法について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 (4) 超音波透過法を用いた本検査法の仮説的原理 ・・・・・・・・・・・・12 3. 研究目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 4. 研究方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 (1) 二次元コンピュータシミュレーション ・・・・・・・・・・・・・・・19 (2) ブタ喉頭を用いた ex-vivo 実験(誤嚥物による信号変化の初期的検討) ・21 (3) ブタ喉頭を用いた ex-vivo 実験(誤嚥物の部位による信号変化) ・・・・23 (4) ブタ喉頭を用いた ex-vivo 実験(トランスデューサーの部位による信号変

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(3) ブタ喉頭を用いた ex-vivo 実験(誤嚥物の部位による信号変化) ・・・・28 (4) ブタ喉頭を用いた ex-vivo 実験(トランスデューサーの部位による信号変 化) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 6. 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31 (1) 超音波透過法による誤嚥検出技術の可能性について ・・・・・・・・・31 (2) 本研究の限界について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 (3) 本研究の展望 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 (4) 本技術の将来的な応用例について ・・・・・・・・・・・・・・・・・39 7. 結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41 8. 文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42 9. 図 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50 10. 表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・73

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1. 要約 背景:嚥下障害のリハビリテーションを安全に行うためには、非侵襲の誤嚥の検出が 重要である。従来の誤嚥検出技術の中ではB モード超音波検査が最も精度が高いもの の感度64%、特異度 84%であり、誤嚥を十分な感度で検出することができなかった。 感度が低い主な理由は、解剖学的に喉頭の後壁にある誤嚥物から反射波を受信するこ とが難しいためと考えられる。 目的:本研究の目的は、超音波透過法を用いた非侵襲的誤嚥検出手法が、従来のエコ ー法と比較して気道後壁の誤嚥物をより高感度で検出できる技術的可能性を示すこ とである。 方法:本研究では、喉頭壁、特に検出が最も困難な誤嚥である後壁に位置する誤嚥物 に起因する受信信号の波形変化を検出するための手法として、超音波透過法を使用し た誤嚥検出手法を考案した。頸部X 線 CT 画像モデルに基づく二次元コンピュータシ ミュレーション、ブタ喉頭標本を用いたモデル実験を行い、気道後壁における誤嚥検

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後壁の誤嚥物は、それぞれ平均最大振幅が107%、71.1%、63.5%の受信信号の波形変 化をもたらした。このときの後壁における誤嚥検出精度は、感度90.0%、特異度 84.0% であった。また超音波トランスデューサーの装着位置は信号強度から輪状軟骨レベル が適切であることが示された。 結論:本研究によって、超音波透過法を用いた誤嚥検出手法は従来のエコー法では検 出が困難であった後壁の誤嚥物をより高感度で検出できる可能性が示された。

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2. 研究背景 (1) 嚥下障害および嚥下訓練の現状と課題 嚥下障害は脳卒中、神経筋疾患、認知症、および頭頸部癌等が原因で食物摂取が困難 になり肺炎、窒息、および栄養失調につながる疾患で、高齢化の進む本邦では大きな 社会的課題となっている。高齢者における嚥下障害の有病率を調査した研究によると、 高齢者施設 10 施設の入居者 435 名に対して、摂食嚥下障害スクリーニング質問紙、 簡易スクリーニング検査、および代表的な精密検査である嚥下内視鏡検査を元に評価 したところ、嚥下障害例が196 名(45.0%)、疑い例が 169 名(38.8%)であった。こ のことから、医療機関で嚥下障害を診断されていない一般高齢者の中にも相当数の潜 在的な嚥下障害患者が存在しており、その中には上記のような介護・福祉施設でケア を受ける高齢者や在宅患者が多いと考えられる。 米国でも嚥下障害の入院患者数は2009 年の 408,000 人から 2013 年には 657,000 人に 増加していることが示されている2)。米国では1980 年と比較して 2010 年では 36.2%

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社会状況が異なっているものの、加齢疾患とそれに伴う嚥下障害の増加という点では 共通の課題を持っている。 誤嚥性肺炎は嚥下障害によって引き起こされる代表的な疾患である。Teramoto らによ れば国内の誤嚥性肺炎は 70 歳以上の肺炎全体の 80.1%を占めていると言われており 4)、年齢の増加とともに誤嚥性肺炎の割合が上昇することを示している。また厚生労 働省が公開する平成30 年人口動態統計によると、(他の原因の肺炎を除いた)誤嚥性 肺炎による死亡数は38,462 名に上り、総合で第 7 位の死亡原因であり、早急に対処す べき重要な健康課題の1つと言える。また誤嚥性肺炎の原因としては、嚥下障害患者 が食事を行うときに誤嚥すること以外に、睡眠中の胃液の逆流など食事と関連の低い 誤嚥の発生が多いとされている5) 嚥下障害の主な治療は摂食嚥下リハビリテーション、外科治療、薬物治療に大別され る。外科治療には誤嚥防止術、嚥下機能改善手術の2種類があり6)、適応を判断でき れば高い治療効果が期待できるが、実施できる施設は限られている。薬物治療には咳 反射を誘発しやすくする薬剤(アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アマンタジンなど)、 嚥下障害の原因疾患を改善させる薬剤(パーキンソン病に対するレボドパ、重症筋無 力症に対する抗コリンエステラーゼ薬)などがある7)。リハビリテーションは食物を 使用する直接嚥下訓練と食物を使用しない間接嚥下訓練に大別される。間接嚥下訓練

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は口腔や咽頭の運動訓練が主体であり、経口摂取を開始できない早期から実施可能で ある。口腔・舌・頸部の筋力増強訓練、嚥下反射誘発法などが存在する8)。一方で直 接嚥下訓練では、嚥下代償手段としての姿勢調節、頸部回旋、食形態の調整や、新た な飲み込み方を習得する嚥下手技訓練等が行われている。経口摂取の早期開始は最終 的な経口自立促進、栄養管理にとって有効と言われており 9) 10) 11) 、嚥下障害の重症 度を評価すること12) 13) 14)、食形態等を適切に調整し、栄養管理を行うことが重要であ る15)。一方で食事中または食事後の誤嚥による肺炎のリスクを防ぐためには、咳やむ せがみられない誤嚥である不顕性誤嚥の検出が重要であり、特に嚥下後に食残が気道 に流入する嚥下後誤嚥が多いと言われている。しかし簡易スクリーニングではリスク 評価に限界があり安全管理が難しいといったことが示唆されている16)。例として一度 肺炎を起こした患者では経口摂取による肺炎の再発を懸念することが多く10)、経口摂 取開始が遅延する要因となっている。このようなときに医療者が不顕性誤嚥を疑う患 者に対してリスク管理ができる客観的な手法があれば、経口摂取をより早期に行うこ

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発生すると考えられるがまだ十分には解明されていない。Nakagawa らによれば、両 側大脳基底核梗塞の患者では脳血管障害が無い高齢者と比較して、肺シンチグラムに よる夜間の誤嚥の発生が非常に高く(90% vs 15%)、また平均 2 年間の経過観察中の 肺炎の発症率も有意に高い結果となった(50% vs 15%)17)。この結果は夜間の口腔内 雑菌や胃内容物の誤嚥と、脳梗塞のための嚥下障害による咳反射や咽頭反射の減弱が 相まって、肺炎の発生リスクが非常に高くなったと考えられる。胃酸逆流や口腔内雑 菌の気道への流入があった場合でも、そもそも嚥下障害による嚥下反射、咳反射が正 常であれば、防御機能が働くため肺炎のリスクが軽減できる。Nakajoh らによれば、 誤嚥性肺炎を生じた患者の多くは嚥下反射潜時が遅延し、咳反射にも異常があった18) つまり嚥下障害が合併しているために防御機能が働かず、高率に肺炎を発症したもの と言える。このような病態に対する既存の治療法は、口腔内雑菌を減少させるための 口腔ケア、および前述の咳反射を亢進する薬物治療である。しかしそれでも十分に咳 反射が改善しない場合に、対処できる方法は確立されていない。 (2) 既存の誤嚥検査法とその問題点 誤嚥を直接的に検出できる方法として、嚥下内視鏡検査および嚥下造影検査がある。 嚥下内視鏡検査は嚥下反射の惹起性、誤嚥、残留などの評価に加えて、食形態や粘性、 頭位を指導することで所見が改善するかどうかをその場で観察することができると

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いう利点がある19) 20) 21)。一方で課題としては、嚥下時に内視鏡の視野が咽頭収縮によ り遮られるホワイトアウトが起こる21)ため観察が不十分であること、国内では医師や 歯科医師による内視鏡操作が必要になることが挙げられる。嚥下造影検査もまた誤嚥、 残留、食形態、粘性、頭位などの治療に直結する所見を得ることが可能だが22) 23)、透 視室で医師や歯科医師が実施する必要があるため簡便さに欠ける。これらはいずれも 嚥下障害の病状を評価およびスクリーニングするための有用な方法であるが、侵襲性 があり直接嚥下訓練や日々の病室での食事の最中に安全管理をするには適さない。 嚥下障害や誤嚥リスクを簡便に評価する手法として、30 秒間の平均空嚥下回数を計 測し 2 回以下を嚥下障害の疑いとする反復唾液嚥下テスト 24)、3mL の水を口腔内に 注いで飲水のむせを見る改訂水飲みテスト18)、茶さじ1杯のプリンを食べさせて評価 するフードテスト18)、スクリーニング質問紙25)、酸素飽和度(SpO 2)モニターを用い た誤嚥の評価法26)、理学療法士や言語療法士による嚥下中の呼吸音聴取法27)、および 頸部聴診法28)等が用いられている。なお酸素飽和度については単純に呼吸機能低下を

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音波エコー法で用手的検査を行い咽頭残留や誤嚥を評価する方法 32) 33) 等があり、将 来的に臨床応用できる可能性がある。しかし上記はいずれも食事中の誤嚥物を直接検 出することができず、食事中以外で咽頭残留物や胃内容物が侵入する誤嚥も検出でき ないため、検出感度が不十分であると言われている34) 35) 特に誤嚥性肺炎のリスクが最も高い重症の嚥下障害患者に対して、経口摂取を行える かどうかを評価する場合、代表的な方法としては改訂水飲みテスト、またはフードテ ストなどが用いられる。経口摂取開始後もリスクが軽減されるまでは同様の評価を行 う。このような簡易スクリーニング検査の評価では、咳が生じれば誤嚥した危険があ ると判断されるが、逆に咳が誘発されないときは、きちんと水を飲めた場合と、誤嚥 していても咳反射が消失しているため、咳が誘発されなかった場合の2つの可能性が ある5)。この場合、評価者は正常と判断して誤嚥性肺炎を発生させてしまうか、リス クが残存していると判断して慎重に対応し経口摂取開始を延期することになる。適切 に誤嚥を評価する方法が存在すれば患者の経口摂取自立に役立つため、新たな技術の 開発が望まれている。前述の技術の中で、超音波は気道の構造を観察するのに非常に 有利な高い空間分解能を有する36) 37)ため、より小さな誤嚥物を検出できる可能性や感 度向上の可能性が期待できる。先行研究 33)ではエコー法を使用した B モード超音波 検査を使用した誤嚥検出法が検討されており、Gold Standard である嚥下造影検査との

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比較を行ったところ、感度と特異度はそれぞれ 64%と 84%であった。これは患者の 安全性の担保という目的から考えると不十分な感度であるが、その理由は送信された 超音波が、音速が大きく異なる空気と気道粘膜間で反射され、喉頭の後壁にある誤嚥 物からの反射波を受信することが困難であるためと考えられる。 (3) 超音波透過法について 超音波透過法は、古くは工業製品の超音波探傷技術で用いられ、例えば目視が困難な 金属等の微小な傷を非破壊で調査する技術として発展してきた。その後、医療用途と して主に骨密度を評価するために踵骨の骨構造を測定する定量的超音波測定法に使 用されてきた 38) 39) 40)。エコー法と比較して、透過法は遥かに高い信号対雑音比を持 ち、組織の定量的測定に適していることが知られている41)。エコー法が定量的測定で 劣る理由は、エコー法では組織内に存在する多数の散乱体からのエコー、後方散乱信 号を計測することになり、補正が難しいためである42)。透過法の応用例として、音響 特性を高い精度で測定することで正確な生体内温度測定を行う研究等も行われてい

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図1 は、輪状軟骨レベルでのヒトの頸部断面における模式図を示している。輪状軟骨 は、図の中央のように喉頭と気管の境界にあるリング状の構造であると見なすことが できる。図1a は B モード超音波エコー法の検査の様子を示しているが、頸部前面か ら照射された超音波は、表1で示すように軟骨と空気の音速に大きな差があることに よって気道表面でほぼ全て反射される。したがって気道後壁に付着した誤嚥物による 受信信号の変化は認められないことになる。このことから、誤嚥を検出するのが最も 難しい事例は、主に気道後壁に付着した誤嚥物を検出することであると考えられる。 そこで本研究では喉頭壁、特に後壁に付着する誤嚥物を検出することで全体としての 検出感度が向上するであろうという仮説のもとで、超音波透過法の技術的可能性を評 価するため以下の手法を考案した。 頸部皮膚の両側に輪状軟骨を挟むように一対の超音波トランスデューサーを配置す る。気道内腔に付着した誤嚥物は、気道軟骨の付着部位を通過する超音波伝播特性を 変化させると考えられる。超音波を送信した状態で誤嚥が発生すると、誤嚥物は輪状 軟骨を通過する超音波伝播特性を変化させ、その結果、受信信号の波形が変化する。 したがって、超音波透過法を使用して気道軟骨を通過する超音波伝播特性の変化に基 づいて誤嚥の発生を推定することができると考えられる(図1b)。なお誤嚥のリスク が高い食事中から食事後一定時間継続して超音波を照射・測定することで、安全を担

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3. 研究目的 本研究の目的は、超音波透過法を用いた非侵襲的誤嚥検出手法が、従来のエコー法と 比較して気道後壁の誤嚥物をより高感度で検出できる技術的可能性を示すことであ る。 そのためのステップとして、本手法を用いてデータが取得可能な部位を特定し、安定 したデータを取得可能であることを示すこと、取得した信号の演算方法について検討 し改善点を明確にすることを、副次的な目的とする。

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4. 研究方法 本法では喉頭後壁に向かって前頸部体表から発せられた超音波信号を効率的に測定 するため、トランスデューサーの位置は喉頭の解剖学的構造を元に以下のように決定 した。 行実らによると、剖検された成人の甲状軟骨(下角基部)における横幅の平均値(正 中から右または左端まで)は、男性で15.4mm, 女性で 13.9mm,男女平均で 14.7mm で あった 44)。したがって左右幅の男女平均は 29.4mm である。図 2a のように、1ペア のトランスデューサーの中心間距離が遠くなる程、前頸部から喉頭後壁までの距離が 長くなり信号が減弱する。しかし喉頭の幅よりもトランスデューサーの中心間距離が 小さい場合は、超音波ビームが前壁に向かって直接照射されてしまうため後壁の誤嚥 信号が取得しにくい。以上の理由から、甲状軟骨の横幅を基準にトランスデューサー の中心間距離を30mm と設定した。男女差や個人の体格により厳密に合わせる手法に ついては今後の課題とし、本研究では全てを30mm で統一した。

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信号強度が減弱してしまい体表からの測定には不向きであるため、本研究では甲状軟 骨(声帯レベル)、輪状軟骨、第一気管軟骨の3箇所を候補部位として選択し、実験を 行った。 本手法を実証するためにブタ喉頭モデルを用いた実験を計画したが、取得したデータ に誤嚥物による変化が見られただけでは、それが後壁を経由した信号なのか、それと も前壁の反射信号なのか評価することは難しい。そこで前段階としてシミュレーショ ン研究を計画し、原理通りの経路で超音波信号が通過するのか、変化を示す信号がど のように確認できるのかを予備的に検討することとした。シミュレーション研究は頸 部X 線 CT 画像に基づいて二次元の頸部喉頭モデルを作成し、コンピュータシミュレ ーションを行った。トランスデューサーの直径、中心間距離、中心周波数、送信信号 は、ブタ喉頭モデルを用いた実験用の試作品と同一の数値に設定した。仮説では頸部 前面の皮膚から発せられた超音波が気道の軟骨に到達し、軟骨内を曲線的に進むこと によって信号が誤嚥物を通過すると考えられる。一旦誤嚥物まで到達した超音波は反 対側で同様の経路を辿り、受信器に到達する。この経路の通りに信号が進むのか、進 んだ場合は受信信号の強度に対して誤嚥物に起因する信号変化は何%になるのか、非 連続の超音波発振であるバースト波の送信から誤嚥信号の検出までの時間はどの程 度になるか、等といった点を検証するためにも、モデル実験を実施する前にシミュレ

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ーションによる評価が必要と考えた。 次に本原理の基礎的検証のために、ブタの喉頭を使用した ex-vivo 実験を行った。こ の実験の目的は、実際に誤嚥信号を検出可能なのか、後壁に誤嚥物が付着した時の信 号と前壁または側壁に誤嚥物が付着した時の信号でどのような違いが見られるのか、 超音波トランスデューサーの装着位置によって信号がどのように変化するのか等に 対して初期的な検討を行い、本研究の目的を達成することができると考えた。また今 後はこの結果を元に超音波素子やオシレーター、増幅器などのハードウェアの改良設 計やソフトウェアの改良の手順を検討することが可能になると考える。

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(1) 二次元コンピュータシミュレーション

二次元コンピュータシミュレーションのシステムモデルを図2a に示す。本研究では、

有限差分時間領域(Finite-difference time domain: FDTD)法に基づく商用ソフトウ ェアPZFlex Ver. 3.0(Weidlinger Associates, Inc. Mountain View, CA)を使用した。二次

元モデルの分解能を示すグリッドサイズは0.1 mm×0.1 mm に設定し、想定するモデル のサイズを示す横方向・縦方向の計算範囲はそれぞれ120 mm と 100 mm とした。皮 膚および皮下組織、筋肉、輪状軟骨、気道を作成してモデルに配置した。また後壁に 付着した誤嚥物を加えたモデル(図2b)を作成し、誤嚥物ありモデルとした。各組織 の音速と質量密度を表1 に示した。送信信号は、中心周波数が 1 MHz の 30 サイクル のバースト波とした。また図3 に示すように、輪状軟骨後壁の誤嚥物が付着する点に 向かう超音波ビームを形成するように、あらかじめ中心間距離を調整した。各トラン スデューサーの中心間の距離は30 mm に設定し、直径 10.4 mm の超音波送信器と受 信器をそれぞれ頸部皮膚の左側と右側に配置した。気道の前壁、右側壁、および後壁 に付着した誤嚥物がある場合と、誤嚥物がない場合の受信信号を比較した。 嚥下障害の患者は粘性のある食品や液体を摂取することが多いが、水を誤嚥する可能 性は粘度の高い他の物体よりも高いため、臨床的に重要である。しかし水の誤嚥は粘 性が無い分喉頭を早く通過してしまうため、これを即時検出することは難しい課題で

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ある。したがって本研究では、二次元コンピュータシミュレーションおよび後述する

ブタ喉頭を用いた ex-vivo 実験の各々において、水を誤嚥対象物として想定し、単純

化するために各誤嚥物の特性として水の音響特性を使用した。

各信号は、送信器から各バースト波の最初の信号が発せられた時間をt = 0 μs とし、

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(2) ブタ喉頭を用いたex-vivo実験(誤嚥物による信号変化の初期的検討) 次に新鮮なブタ喉頭を使用した ex-vivo 実験を実施した。ブタの喉頭は、サイズと形 状といった点でヒトの喉頭に類似しており簡単に入手できることから今回の試験に 使用した。食肉業者より入手した新鮮なブタの咽喉頭、気管、食道が付着したものを 5 個用意し、それぞれ図 4a のように下咽頭上端を最上部として切断し、頸部食道と第 四気管軟骨を最下部として切断し、その間の範囲を喉頭モデルとして使用した。また 前頸部の筋肉と甲状腺を切離し、甲状軟骨、輪状軟骨、第一気管軟骨の解剖学的位置 が明確になるようにした。超音波送信器、受信器は、中心周波数1 MHz の直径 10 mm の超音波トランスデューサーの特注品(Okusonic、埼玉、日本)を使用した。振動子 の材料はチタン酸鉛を使い、1つのトランスデューサーにそれぞれ1個の振動子を装 着した。輪状軟骨の両側に1 つずつトランスデューサーを取り付け、各トランスデュ ーサーの中心間の距離を 30 mm に設定した。トランスデューサーの表面には超音波 用ゲルのプロゼリー(ジェクス株式会社、大阪、日本)を少量塗布した。図 4b に示 すように、トランスデューサーと喉頭は木製の板に固定した。固定にはコーケンカニ ューレホルダースタンダード(成人用)(株式会社高研、東京都、日本)を用いた。直 接嚥下訓練を始めたばかりの嚥下障害患者は、リクライニングベッド上で 30〜45 度 の角度で、かつ頸部前屈位で食事を摂取することが多いため43)、固定板は 45 度に傾

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けた。 18 ゲージの静脈内カテーテルの先端を喉頭後壁に挿入して水を注入した(図 4c)。 送信器は BNC ケーブルでファンクションジェネレーター WF1973(株式会社エヌエ フ回路設計ブロック、神奈川、日本)に接続し、送信信号は中心周波数1 MHz の 30 サイクルのバースト波、出力する最大電圧は、20 Vp-p (peak to peak)とし、パルス繰り 返し間隔は10 ms に設定した。受信器は BNC ケーブルでプリアンプ SA-410F3(株式 会社エヌエフ回路設計ブロック、神奈川、日本)を経由してアナログデジタルコンバ

ータ PicoScope 3204B(Pico Technology, Cambridgeshire, UK)に接続した。送信器から

バースト波が出力された瞬間をT = 0 s と定義し、T = 0〜10 s の 10 秒間の受信信号を

コンピュータに記録し、数値解析ソフトウェアであるMATLAB 2016b(The MathWorks,

MA, USA)を用いてデータの解析およびグラフの表示を行った。

まずは初期的検討として、(A)誤嚥無し信号、および(B)誤嚥あり信号の 2 回のデータ を記録した。(A)では水を注入せずに 10 秒間信号を記録した。(B)では T = 5 s のとき

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(3) ブタ喉頭を用いたex-vivo実験(誤嚥物の部位による信号変化) 次に、(2)と同じ測定系を用いて複数回の測定を試行し、誤嚥物の付着部位による信号 変化を統計学的に検討した。まず 18 ゲージの静脈内カテーテルの先端をブタ喉頭モ デルの前壁、右側壁、後壁にそれぞれ挿入して水を注入した(図4c)。各実験では 10 回ずつ測定を行った。また、使用したブタ喉頭の個体差を評価するため、初めの個体 と合わせて 5 個のブタ喉頭モデルに対して、18 ゲージの静脈内カテーテルの先端を 喉頭後壁に挿入して水を注入し、10 回ずつ測定を行った。

本実験では、3 つの受信信号 a(T1, t)、a(T2, t)、a(T3, t)を以下のように定義し、統計学

的に解析した。初めの超音波が送信された時刻からの経過時間をT とし、T = 3 s に 2 mL の水を 1 mL / s の流量で注入した。受信信号 a(T1, t)は誤嚥が無いことが既知であ る信号としてT1 = 1 s と設定し、差分信号を計算する際に使用した。次に対照群の受 信信号を a(T2, t)と定義した。対照群は水の注入前で誤嚥による信号変化が無い状態 にするため、T2 = 2 s と設定した。全ての試行で測定開始から 3 秒後に水を注入した ため、T2 は常に誤嚥の無い状態を示すことになる。最後に受信信号 a(T3, t)を誤嚥群 として定義した。T3 は注水後に明らかな受信信号の変化が確認できた時刻とした。な お実際には信号変化は試行によって若干の変動がありT3 = 3〜4.2 s の範囲であった。

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比較した。各差分信号は、送信器から各バースト波が発せられた時刻をt = 0 μs とし、

受信信号はt = 0〜90 μs で計測し、各差分信号の最大振幅が記録された。 a(T1, t) −

a(T2, t)から得られた値は対照群の差分信号として定義され、a(T1, t) − a(T3, t)から得 られた値は誤嚥群の差分信号として定義された。スチューデントのt 検定を使用して、 これらのグループの有意差を比較した。 また、5 個の喉頭の測定(合計 50 回)の誤嚥群および対照群のデータを用いて、本手 法の感度を算出した。エコー法では後壁の信号の感度が低い点が課題であるため、比 較検討を行うために、エコー法を用いた先行研究と特異度が同等(84%)となる最大振 幅の変化率の閾値における、超音波透過法の感度を算出した。 また、本実験において従来法であるエコー法によって喉頭後壁の異物が検出可能かど うかを評価するための予備的検討を行った。使用した超音波機器はポケットエコー miruco(日本シグマックス、新宿区、東京)である。プローブは付属品の 3.5MHz コ ンベックスプローブを使用し、設定は標準-浅部を選択し、後壁の誤嚥物の検出を試み

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(4) ブタ喉頭を用いたex-vivo実験(トランスデューサーの部位による信号変化) 次に、トランスデューサーの位置と波形変化の強度との関係を調査した。新鮮なブタ 喉頭を使用したベンチモデル実験が実施された。甲状軟骨、輪状軟骨、および第一気 管軟骨の両側に一対のトランスデューサーをそれぞれ設置し、18 ゲージの静脈内カ テーテルの先端をブタ喉頭モデルの後壁に挿入して水を注入した。各実験では 10 回 ずつ測定を行った。(2)と同様の方法で、誤嚥物によって引き起こされる受信信号の強 度の時間的変化を測定し誤嚥物の部位による信号変化を統計学的に検討した。 差分信号は、送信器から各バースト波が発せられた時刻をt = 0 μs とし、受信信号は t = 0〜90 μs で計測し、各差分信号の最大振幅が記録された。 a(T1, t) − a(T2, t)から得 られた値は対照群の差分信号として定義され、a(T1, t) − a(T3, t)から得られた値は誤 嚥群の差分信号として定義された。スチューデントのt 検定を使用して、これらのグ ループの有意差を比較し、適切なトランスデューサーの装着位置を検討した。

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5. 研究結果 (1) 二次元コンピュータシミュレーションの結果 図5a〜c はそれぞれ、前壁、右側壁、後壁に誤嚥物が付着した条件のシミュレーショ ン結果である。各図における(A)は誤嚥が無い場合の受信信号、(B)は誤嚥物がある場 合の受信信号、(C)は(A)と(B)の差分信号の波形を示している。各図の縦軸は誤嚥物が ある場合の受信信号(B)の振幅の正の最大値が 1 になるように正規化して表示した。 この結果から、気道壁に誤嚥物が付着することによって、本手法によって得られた受 信信号に波形変化が生じることが示された。各図とも特にt = 50〜70 μs の時間領域で 差分信号(C)の振幅が最大になった。上記の 3 つの条件下での差分の最大振幅は、誤 嚥物での受信信号の最大振幅のそれぞれ96.1%、46.4%、および 4.3%であった。

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(2) ブタ喉頭を用いたex-vivo実験(誤嚥物による信号変化の初期的検討) 図6 は後壁に付着した誤嚥物によって生じる受信信号の強度の時間変化を示したグ ラフである。縦軸は超音波の送信開始からの経過時間T、横軸は 1 個のバースト波 の送信開始から受信までの時間t を示しており、バースト波の生成と受信信号の測 定は10 ms のパルス繰り返し間隔で 10 秒間継続的に実行された。グラフの色調は受 信信号の振幅の大きさを表しており、最大信号強度を各図で0 dB に設定した。 図6a では、誤嚥物を注入せずに T = 0〜10 s で受信信号を記録し、10 秒間で受信信 号の振幅には変化が起こらなかった。図6b では誤嚥物が後壁に注入されたことによ りT = 5〜9 s の範囲で明らかな振幅の変化が確認された。 ここで、図6b の T = 1s のバースト波の受信信号を(A)誤嚥なし信号とし、T = 6 s の 受信信号を(B)誤嚥あり信号とし、その差分信号を(C)として1つのグラフに表記した ものが図7 である。この図では差分信号の振幅の最大値は、誤嚥あり信号の振幅の 最大値の43.3%になった。

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(3) ブタ喉頭を用いたex-vivo実験(誤嚥物の部位による信号変化) 図8 は前壁(図 8a)、右側壁(図 8b)、および後壁(図 8c)に付着した誤嚥物によっ て生じた受信信号の強度の変化であり、各 10 回の試行のうち代表的な 1 試行のデー タを示した。最大信号強度は、各図で 0 dB に設定した。バースト波の生成と受信信 号の測定は 10 ms のパルス繰り返し間隔で 10 秒間継続的に実行された。それぞれ異 なる時間領域で受信信号の強度に変化が見られ、例として図8a では T = 4〜6 s、t = 3070 µs、図 8b では T = 3〜5 s、t = 30〜60 µs、図 8c1 では T = 4〜6 s、t = 30〜70 µs の 範囲で明らかな変化が観察された。また誤嚥物の注入が開始されたT = 3 s に対して、 実際に誤嚥物が信号変化として観測され始めた時間T3 は、各試行によって T3 = 3〜 4.2 s の範囲内で変動があった。 2 秒後(T2)の受信信号を対照群 a(T2, t)とし、誤嚥物が信号変化として観測され始め た時間T3(図中の白い破線)の受信信号を誤嚥群 a(T3, t)として、それぞれ 1 秒後(T1、

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表2 は、前壁、側壁、後壁の比較、および後壁の 5 個のブタ喉頭モデル間の比較を行 った結果である。それぞれの条件における差分信号の平均、分散、およびスチューデ ントのt 検定(P value)の結果から、いずれの条件でも誤嚥の有無が検出できたこと が示された。 次に、5 個の喉頭で後壁の誤嚥を測定したデータを、誤嚥群および対照群に分けてプ ロットし、箱ひげ図で図10a に示した。誤嚥群、対照群の平均はそれぞれ 76.7%、22.3% であり、有意に誤嚥群の方が高値を示した。また先行研究と同等の特異度(84%)に なる閾値は最大振幅の変化率が33%のときであったため、このときの感度・特異度を 計算したところ、それぞれ90.0%、84.0%であった(図 10b)。 また本研究では対照群として前頸部正中にエコー法のプローブを当てて後壁の検出 精度を評価するように試みたが、図 11 で示したように輪状軟骨レベルの後壁は無信 号領域(矢印)になっており、超音波による描出自体が難しい状態であった。誤嚥物 を注⼊したときにも異物は検出されず、そのため感度を算出することはできなかった。 したがって本モデル実験では、先⾏研究の⽂献にある感度・特異度と⽐較することで 評価することとした。

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(4) ブタ喉頭を用いたex-vivo実験(トランスデューサーの部位による信号変化) 図12 は甲状軟骨レベル(図 12a)、輪状軟骨レベル(図 12b)、および第一気管軟骨レ ベル(図 12c)にトランスデューサーを装着した場合に、後壁に付着した誤嚥物によ って生じた受信信号の強度の変化を示している。各 10 回の試行のうち代表的な 1 試 行のデータを示した。最大信号強度は、各図で 0 dB に設定した。バースト波の生成 と受信信号の測定は 10 ms のパルス繰り返し間隔で 10 秒間継続的に実行された。そ れぞれ異なる時間領域で受信信号の強度に変化が見られ、例として図12a を含む甲状 軟骨レベルの試行では信号変化が確認できず、図12b(輪状軟骨レベル)では T = 4〜 5 s、t = 30〜60 µs の時間領域で大きく信号変化が見られ、図 12c(第一気管軟骨レベ ル)ではT = 3〜4 s、t = 80〜90 µs の範囲で局所的な信号変化が確認できた。 表3は、それぞれの実験における差分信号の平均、分散、およびスチューデントの t 検定結果を示している。後壁の誤嚥物は輪状軟骨(平均79.2%)および第一気管軟骨 (平均60.3%)のレベルで波形振幅の変化をもたらした。甲状軟骨のレベルで波形の

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6. 考察 (1) 超音波透過法による誤嚥検出技術の可能性について 本研究の新知見は、超音波透過法を用いた誤嚥検出手法は従来のエコー法では検出が 困難であった後壁の誤嚥物をより高感度で検出できる可能性が示されたことである。 ブタ喉頭モデルを用いた 50 件のデータを元に算出した喉頭後壁の誤嚥検出精度は、 感度90.0%、特異度 84.0%であった。Miura らによれば、過去の研究では反復唾液嚥下 テストの誤嚥リスク評価精度は感度28%、特異度 76%、100 mL 飲水テストでは感度 48%、特異度 92%、フードテストは感度 72%、特異度 62%、超音波エコー法による誤 嚥の即時検査精度は感度64%、特異度 84%であった。これらの結果と比較した場合、 本手法が臨床試験まで進んだ場合の誤嚥検出精度は、従来の他の手法に優る可能性が あることが示された。以下に各実験の結果とその解釈について順に述べる。 頸部X 線 CT 画像のモデルに基づく二次元コンピュータシミュレーションでは、喉頭 の前壁、側壁、および後壁に付着した誤嚥物は、誤嚥時の受信信号に対してそれぞれ 最大振幅96.1%、46.4%、および 4.3%の波形変化をもたらした。図 5a の(C)差分信号 の波形を見ると、前壁および側壁の誤嚥物は、バースト波が送信されてから誤嚥物を 通過して受信器に到達するまでの時間がどちらも20 μs と短くなっているが、後壁の 誤嚥物は受信器に到達するまでの時間が50 μs と長くなっている。これは送信器から

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輪状軟骨の背側を経由して受信器に超音波信号が戻る分、前壁などと比べて距離が伸 びていることに起因する。将来的に、後壁からの信号に特徴的な時間枠を区切って差 分の計算以外のコンピュータによる演算処理を加えれば、より感度上昇に繋がる可能 性があると考えている。 ブタの喉頭を使用した ex-vivo 実験における初期的検討では、まず本計測装置が安定 した信号を受信していることが示された。喉頭後壁に誤嚥物を注入した場合、誤嚥物 があるときと無いときの差分信号の振幅は、誤嚥物があるときの受信信号の振幅と比 べて最大で43.3%であった。このことから本手法で最も検出が困難と考えられる、喉 頭後壁のみに誤嚥物が付着した状態であってもこれを検出できる可能性が示唆され た。また誤嚥物が喉頭を通過している間、信号に特徴のある持続的な揺らぎが観測さ れることが確認された。本手法で喉頭の後壁を通過する誤嚥物と食道を通過する食物 は、解剖学的には非常に近接しており単一のバースト波だけをみても判断は難しいが、 このような信号変化は、健常者の平均的な食道入口部開大時間45)0.36 s と比較して

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ュータシミュレーションでは後壁の信号変化は前壁や側壁と比べて小さいものであ ったが、ex-vivo 実験では後壁の受信信号に大きな変化が見られた。これは解剖学的部 位を明確にするため皮膚や皮下組織を除去し、ブタ喉頭にトランスデューサーを直接 接触させたことが1つの要因であると考えられる。 皮膚が付着したモデルで行った予備的検証では、実験中に目標となる位置に正確にト ランスデューサーが装着し続けられているかを客観的に確認することが困難であっ た。そこで安定したデータの取得、および装着部位の確認を優先するため皮膚を除去 した状態での喉頭モデル実験を行った。皮膚が付着したモデルと比べて筋が露出した モデルでは、体表から誤嚥物までの距離が僅かに短くなったことにより、誤嚥物に由 来する信号が増強され、信号強度が増した可能性が考えられる。また、二次元コンピ ュータシミュレーションで使用した半円形の誤嚥物と比べて、実際の水は異なる体積、 異なる立体的形状で気道壁に接しており、これにより差分信号の振幅が増大した可能 性が考えられる。 実験(3)で使用したデータより、最大振幅については誤嚥物が通過しない状態を示す対 照群であっても平均22.3%のノイズが発生していることが判明した。モデル実験はコ ンピュータシミュレーションと比較して、最大振幅の変動幅がノイズの分だけ増大し て大きな波形変化の原因となった可能性がある。一方で、単純に差分信号を取得する

(35)

だけの演算方法ではノイズが大きく、微弱な信号は埋もれてしまう可能性がある。信 号ノイズ比を改良するか別の演算方法を考案する必要性があると考える。 5 個のブタ喉頭モデル間で後壁の誤嚥物による信号変化の比較をした試験では、いず れの個体でも誤嚥信号の検出には成功したが、個体によって分散値に 0.98%〜24.5% と大きな変動を認める結果になった。これは喉頭のサイズや解剖学的構造の違いによ るトランスデューサーの装着位置や、取得した超音波信号の計算方法が適切に設定で きていないことが原因と考えられる。実際に臨床応用をするためには、患者の体格差、 および筋肉量や原疾患による喉頭の位置的変化などに対応する必要があるため、複数 の個体で安定した分散値を示すデータが取れるように 2 つの信号の差分を計算する 方法に変わる新たな演算方法の開発を行うことが望ましいと考えた。 また本手法の最大振幅の変化率をt 検定で評価する妥当性を調べるために、図 10a で 使用した誤嚥群のデータ(n=50)を用いて、歪度の検証を行った。Excel バージョン 16.32(日本マイクロソフト株式会社、東京、日本)を用い、SKEW-P 関数で算出した

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した演算方法の開発が望ましいと考えられた。 次にトランスデューサーの装着位置による信号強度の違いを調査した実験的研究で は、甲状軟骨、輪状軟骨、第一気管軟骨において誤嚥物は平均最大振幅がそれぞれ 19.5%、79.2%、および 60.3%の受信信号の波形変化をもたらした。甲状軟骨におい て受信信号変化に有意差が見られなかった要因として、甲状軟骨は喉頭の前壁を形成 しているが、図1b のように後壁まで連続性が無いため波形が伝播しにくかったこと が考えられる。輪状軟骨および第一気管軟骨はリング状の構造を有するため、本原理 通りの経路を通って超音波が伝播した可能性が示唆された。 近年、嚥下障害患者、特に誤嚥性肺炎の発症後の患者に対する早期経口摂取の有用性 について論じられるようになってきた15)。長尾ら15)は、早期介入による経口摂取開始 を行った患者は、絶食が長引いた患者と比べて抗菌薬継続日数、院内肺炎再発率を低 下させるという結果が得られたと報告している。また、小山ら8)は、高齢肺炎患者に お け る 早 期 経 口 摂 取 は 入 院 期 間 を 短 縮 し 、 経 口 摂 取 の 状 態 を 改 善 す る と い う Retrospective study の結果を報告している。逆に、経口摂取をしない状態が長期化する と、摂食嚥下機能に加えて、臥床による心配機能低下、覚醒不良による脳機能低下、 発動性の低下、感覚情報や運動上方の統合不良、視覚や聴覚での情報処理低下を引き 起こすことが知られており 46)、不適切な絶飲食による悪影響は大きいと考えられる。

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本手法が目指すものは、単に高精度の検査法の選択肢が増えるだけではなく、医療従 事者が早期経口摂取を促進することに役立つソリューションである。本研究の将来的 な展望として、臨床研究でコンセプトの実証ができれば、超音波透過法を活用した誤 嚥検出を目的とした医療機器を開発することが可能になる。以下の使用例を示す。嚥 下専門医の居ない臨床現場(回復期病棟、慢性期病棟、在宅、介護・福祉施設)で、 ケアの担当者は簡便に誤嚥検査を行うための機器を用意する。患者は機器を装着した 状態で普段通り食事を行う。食事中に誤嚥発生が検出できた場合はアラームを鳴らし て看護師、介護者に知らせることで、自発的な咳を促進する。患者自身が十分に咳を 行えなかった場合、吸引器などを使用して誤嚥物を除去するように介助を行い、胸部 聴診で安全を確認する。また、食後にデータを見返すことによって、適切な食形態を 提供できていたのか、ポジショニングや嚥下運動はうまく行っているのかを評価し改 善できる。このような環境整備があることによって、経口摂取時の肺炎発生に対する 懸念が軽減され、経口摂取を促進できる可能性が上昇すると考えられる。

(38)

超音波診断で用いるような画像を作成するために複雑な演算が必要になると言われ ているためである。本手法が実証されれば、超音波画像の作成を行わなくても誤嚥物 の評価が定量的に可能になる点で、有用性が高いと技術になり得ると考えている。 (2) 本研究の限界について 本研究は誤嚥検出のために本手法を新しく応用し、その実現可能性を評価することに 主眼を置いたため、実際にはトランスデューサーの直径、中心間距離、中心周波数、 送信信号の種類、電圧等について、詳細な設定値の検証や精度向上のための実験は行 っていない。したがって本研究の限界としては以下が挙げられる。(1)この実験では ヒトの喉頭ではなくブタの喉頭を使用したため、解剖学的構造の差による検出精度の 差が考えられる。(2)本論文ではアルゴリズムの開発は実施しておらず、単純に振幅 の最大値に関して誤嚥がある場合とない場合の受信信号の差を調査した。アルゴリズ ムを適切に開発すれば検出精度が向上する可能性があるが、現時点では未知数である。 (3)本手法と従来のエコー法を直接比較するデータはまだ得られていない。(4)ブ タ喉頭を用いた ex-vivo 実験において、誤嚥物として水、2mL のみを使用した。実際 の対象患者が摂取する可能性がある他の食形態については評価しておらず、誤嚥物の 体積を減らしたときに検出精度がどのように変化するのかは明らかにされていない。 (3) 本研究の展望

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今後の研究の展望としては、まずは注入する水の量と検出精度の関係を明確にする必 要がある。通常誤嚥の評価では少量の水として 1mL、嚥下造影では 3〜10mL の水を 検査に用いる47)が、1 回で嚥下した全量を誤嚥することは考えにくいので実際は 1mL よりも少量を誤嚥している。本研究では 2mL としたが、更に少量の誤嚥を検出でき ることは臨床的に意味を持つ。したがって最小検出量を評価する試験および精度を高 める機器およびアルゴリズムの工夫が必要となってくる。また実験で使用する食形態 についても、水、トロミ水、ゼリー(スライス、クラッシュ)、粥、ご飯などでそれぞ れ物性と検出精度の両面を評価する必要がある。これらを踏まえた上で ROC 曲線

(Receiver Operating Characteristic curve: 受信者操作特性曲線)を作成して適切な感度 特異度を調査するというステップで開発を進めることが望ましいと考えている。

他にも誤嚥を判定するアルゴリズムの開発も必要になる。本研究での誤嚥判定の方法

は、送信時間と受信信号強度の関係を一度グラフにし、著者がその変化を見て判定し

(40)

ず動物モデルを用いた検証には限界があるため、いずれヒトを対象とした嚥下造影検 査または嚥下内視鏡検査(ゴールドスタンダード)との比較を行う臨床試験が必要に なる。患者を対象に嚥下造影検査または嚥下内視鏡検査を比較対象とし、従来のエコ ー法と同時に実施して制度を比較する試験デザインにより、本手法の技術的優位性が 示されると考える。 (4) 本技術の将来的な応用例について 本手法は主に病院で使用し、早期経口摂取を開始したが誤嚥リスクがある患者と担当 の医療従事者に対して、安全管理のアラームを提供するといった使用方法が想定され る。この場合は食事の前後に装着し、嚥下後誤嚥のリスクが低い時間帯には外しても 良いものとする。また本手法は既存の超音波透過法を用いた骨構造の測定機器のよう に送信器と受信器で生体を挟み込まなくても微小な構造変化を測定することが可能 である。本手法が輪状軟骨では可能だが甲状軟骨では十分評価が出来なかったように、 この特性は解剖学的構造に依存するが、喉頭以外の部位でも転用できる可能性を秘め ている。例えば頸部食道における逆流の評価等に応用できた場合、逆流を制御する治 療機器48)と併用して治療効果を客観的に評価することが可能になる。 また本手法は1 対の小型超音波プローブさえ装着すれば良いので、これまで可搬性や 簡便さなどのため不可能であった持続的な誤嚥発生の検査が可能になる。これは、例

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えば家庭内での誤嚥の発生およびそのメカニズムを解明する研究で使用できる可能 性がある。医師が不顕性誤嚥を疑う患者に対して検査を指示し、自宅で 24 時間持続 モニタリングをして得られたデータを解析し、診断の補助に使用できる可能性もある。 将来的には患者の家庭内の持続誤嚥データの収集により、適切な直接嚥下訓練(ポジ ショニングや食形態の指導の効果判定)、嚥下リハビリテーションの管理に役立つ臨 床指標の設定に活用すると言った、新しいIoT(Internet of Things, モノのインターネ ット)技術が実現可能になると期待できる。

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7. 結論 超音波透過法を用いた非侵襲的誤嚥検出手法が、従来のエコー法と比較して気道後壁 の誤嚥物をより高感度で検出できる技術的可能性を評価する研究を実施した。頸部の X 線 CT 画像に基づく二次元コンピュータシミュレーション研究では、喉頭の前壁、 側壁、および後壁に付着した誤嚥物によって、誤嚥時の受信信号に対してそれぞれ最 大振幅96.1%、46.4%、および 4.3%の波形変化をもたらした。ブタの喉頭モデルを使 用した実験的研究では、前壁、側壁、後壁の誤嚥物は、それぞれ平均最大振幅が107%、 71.1%、63.5%の受信信号の波形変化をもたらした。このときの喉頭後壁における誤 嚥検出精度は、感度90.0%、特異度 84.0%であった。また超音波トランスデューサー の装着位置は信号強度から輪状軟骨レベルが適切であることが示された。本研究によ って、超音波透過法を用いた誤嚥検出手法は従来のエコー法では検出が困難であった 後壁の誤嚥物をより高感度で検出できる可能性が示された。

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9. 図 図 1 B モード超⾳波エコー法、超⾳波透過法の⽐較 (a) B モード超⾳波エコー法を⽤いた場合の模式図。プローブから照射された超⾳波 では気道の反対側(背側)に位置する誤嚥物は検出ができない。 (b) 超⾳波透過法の場合の模式図。誤嚥物が気道後壁に付着すると誤嚥物を通過する 超⾳波によって波形が変化するため、超⾳波受信器で得られる信号が時間ととも に変化することで誤嚥が検出可能になる。

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図 2 コンピュータシミュレーションで作成した本⼿法の⼆次元モデルを⽰す。頸部 前⾯に 1 対の送受信機を配置した輪状軟⾻レベルにおける頸部⽔平断を模した⼆次 元モデルを作成した(a)。次に気道後壁に誤嚥物を付着させた誤嚥モデルを作成した (b)。

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図 3 PZ Flex によるシミュレーション結果。ビーム形成によって輪状軟⾻を経由し て気道後壁に向かうように波形が伝播している様⼦が⽰されている。

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図 4 ex-vivo 実験の設定 (a) ブタ喉頭モデルの解剖学的部位を⽰した。 (b) モデルを固定する板は 45°の傾斜を掛けた。モデルと超⾳波トランスデューサー は気管カニューレ⽤ホルダーで固定した。 (c) モデルを上⽅から⾒た図である。誤嚥物(⽔)の注⼊点は前壁、右側壁、後壁の 3 箇所とし、本図の位置と定義した。喉頭前壁に装着した超⾳波トランスデューサ ーの位置を⽰した。

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図 5 シミュレーションにおける誤嚥物による波形変化 a. 気道軟⾻の前壁に付着した誤嚥物による信号変化 b. 気道軟⾻の右側壁に付着した誤嚥物による信号変化 c. 気道軟⾻の後壁に付着した誤嚥物による信号変化

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図 6 (a)水を注入せずに 10 秒間信号を記録した。(b)T = 5 s のときに 2 mL の水を喉 頭後壁から1 mL / s の流量で注入した。

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図 7 図 6bにおける(A)誤嚥なし信号、(B)誤嚥あり信号、およびその(C)差分信号を それぞれグラフ化して表⽰した。

(63)

図 8 受信信号強度の時間変化。縦軸は超⾳波送信時間を⽰し、横軸は各バースト波 の受信時間を⽰した。 a. 18 ゲージのカテーテルの先端を喉頭前壁に固定した場合の信号変化 b. 18 ゲージのカテーテルの先端を喉頭右側壁に固定した場合の信号変化 c. 18 ゲージのカテーテルの先端を喉頭後壁に固定した場合の信号変化。5個の喉頭 (c1-c5)についてそれぞれ実施した。

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図 9 受信信号強度の時間変化。(A)誤嚥物の付着時、(B)誤嚥物不在時、および(C)そ れらの差分信号を⽰した。縦軸は超⾳波の振幅(強度)、横軸は受信時間を表してい る。 a. 18 ゲージのカテーテルの先端を喉頭前壁に固定した場合の信号変化 b. 18 ゲージのカテーテルの先端を喉頭右側壁に固定した場合の信号変化 c. 18 ゲージのカテーテルの先端を喉頭後壁に固定した場合の信号変化。5個の喉頭 (c1-c5)についてそれぞれ実施した。

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図10

a. 5 個の喉頭で後壁の誤嚥物を計測した(計 50 回の測定)際の誤嚥群および対照群 の最大振幅の変化率(%)の比較。

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(71)

図11 前頸部正中にエコー法のプローブを当てて、喉頭後壁の水平断の描出を試み た際の超音波画像。A は気道、M は筋肉を示す。輪状軟骨レベルの後壁は無信号領 域(矢印)になっており、超音波による描出自体が難しい状態で誤嚥物の通過によ る画像の変化は見られなかった。

(72)

図 12 トランスデューサーの装着位置を変更したときの誤嚥物による受信信号強度 の時間変化を⽰した。装着位置は(a)甲状軟⾻前⾯、(b)輪状軟⾻前⾯、(c)第⼀気管軟 ⾻前⾯とした。縦軸は超⾳波送信時間、横軸は各バースト波の受信時間を表してい る。

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10. 表 表1 各物質の密度および⾳速 物質 密度 (kg/m3) ⾳速 (m/s) 空気 1.293 340 皮膚および皮下組織 1120 1611 筋肉 1050 1547 軟骨 1000 1665 誤嚥物(水) 1000 1500

(75)

表2 誤嚥物の付着位置による差分信号の平均、分散、およびスチューデントの t 検 定結果。検定の結果はP value で示す。 実験 前壁 側壁 後壁 1 後壁 2 平均 107% 71.1% 63.5% 84.7% 分散 13.0% 2.34% 2.37% 0.98% P value 0.0002 <0.0001 0.0001 <0.0001 実験 後壁 3 後壁 4 後壁 5 平均 53.9% 95.2% 86.5% 分散 4.32% 6.54% 24.5% P value 0.0018 0.0005 0.0012

(76)

表3 超⾳波トランスデューサーの装着位置による差分信号の平均、分散、およびス チューデントのt 検定結果。検定の結果は P value で示す。 実験 甲状軟骨 輪状軟⾻ 第⼀気管軟⾻ 平均 19.5% 79.2% 60.3% 分散 1.20% 33.0% 76.6% P value 0.82 0.012 0.0035

図 2  コンピュータシミュレーションで作成した本⼿法の⼆次元モデルを⽰す。頸部 前⾯に 1 対の送受信機を配置した輪状軟⾻レベルにおける頸部⽔平断を模した⼆次 元モデルを作成した(a)。次に気道後壁に誤嚥物を付着させた誤嚥モデルを作成した (b)。
図 3  PZ  Flex によるシミュレーション結果。ビーム形成によって輪状軟⾻を経由し て気道後壁に向かうように波形が伝播している様⼦が⽰されている。
図 4  ex-vivo 実験の設定  (a)  ブタ喉頭モデルの解剖学的部位を⽰した。  (b)  モデルを固定する板は 45°の傾斜を掛けた。モデルと超⾳波トランスデューサー は気管カニューレ⽤ホルダーで固定した。  (c)  モデルを上⽅から⾒た図である。誤嚥物(⽔)の注⼊点は前壁、右側壁、後壁の 3 箇所とし、本図の位置と定義した。喉頭前壁に装着した超⾳波トランスデューサ ーの位置を⽰した。
図 5  シミュレーションにおける誤嚥物による波形変化  a.  気道軟⾻の前壁に付着した誤嚥物による信号変化  b.  気道軟⾻の右側壁に付着した誤嚥物による信号変化  c
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