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ターンテーキングに関わるあいづち表現の再考 -あいづちの認定基準の検討-

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ターンテーキングに関わるあいづち表現の再考 −

あいづちの認定基準の検討−

著者

太田 有紀

雑誌名

文化

84

1,2

ページ

58-79

発行年

2020-10-31

URL

http://hdl.handle.net/10097/00129706

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令和 2 年 10 月 31 日発行

ターンテーキングに関わる

あいづち表現の再考

―あいづちの認定基準の検討―

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ターンテーキングに関わるあいづち表現の再考

―あいづちの認定基準の検討―

太 田 有 紀

1.はじめに あいづちとは、会話中の聞き手が発する「うん」「はい」「そうそう」あるい は笑いといった短い反応の事である。聞き手は、様々なあいづちを送ることで 会話に参加していることを示しているとされる。 これまで、多くの研究者があいづちの使用実態を把握すべく研究を行ってき た。例えば、あいづちの出現位置について論じた中島(2003)、話速とあいづ ちのタイミングを明らかにした羅(2016)、あいづちを方言の立場から研究し た黒崎(1987)、東京と大阪の地域差を論じた杉藤(1999)など、分析視座は 多岐に渡る。 しかし、同じ表現形式でありながら、多くの研究者があいづちと認定しない あいづち表現が存在する(例 1 の太字部分)。 例 1では、あいづち表現が 3 箇所(矢印)見られるが、これらはすべてあい づちから除外される場合が主である。なぜなら、これらのあいづち表現はター ン(発話)を構成する 1 つの要素と考えられているからだ。確かに、B04 と M05について言えばあいづち表現が出現した直後に発話が継続されている点 話 発 号 番 M01 [きれ]いだった写真>見せてもらった<唯ちゃんに B02 銀座の(0.77)キラリと銀座 → M03 そうそうそう(0.21)あたら‐結構新しいとこだ[よね] → B04        [そう]そうその時に:結構CMやってたんだよ= → M05 そう[だよ]できたばっかぐらいの[頃だ]ったよね= →は注目か所、[ ]は重複、=発話と発話の間に間隙無し、(数字)秒数、:直前の音の引き延ばし、太字はあいづち表現 【例1】 (T-2)

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で、一般的なあいづちとは出現状況が異なっている。しかし、M03 はどうであ ろうか。あいづち表現と後続発話の間にごくわずかではあるがポーズが生じて おり、一般的なあいづちのようにも見える。仮に、話者が M03 のあいづち表 現をあいづちとして発話したつもりであっても、現在の捉え方ではあいづちと 認められないのである。 筆者は、会話のストラテジーの 1 つに、ターンテーキングを目的としたあい づち表現の使用があるのではないかと考えており、ターンテーキング時に見ら れるあいづち表現のあいづち認定が可能か否かを検討すべきであると考える。 これまではあまり注目されてこなかったあいづち表現の実態を把握できれば、 日本語のあいづちをより詳細に特徴づけることができる。もちろん、筆者のこ れまでの研究においても便宜上、基準1を設け分析を行ってきたが、その基準 の検討は未だ行っていない。 したがって、本稿では、あいづち表現前後のポーズの長さや後続話題の変化 などを関係づけながら話者のターン取得の意志の有無を検討し、ターンテーキ ング時に見られるあいづち表現をあいづちと認定するための基準を明らかにす ることを試みる。 2.先行研究 ターンテーキング時に見られるあいづち表現をあいづちと認定しない立場が 主であることは既に述べたが、全ての研究がその立場を取っているわけでは ない。Clancy et al.(1996)は、話し手が話をしている間に聞き手が送る短い 反応(非主流ターン)をリアクティブトークン(Reactive token)と名付け英 語、日本語、中国語を比較してその特徴を明らかにし、リアクティブトークン の特徴から、各言語におけるコミュニケーションの異なりを論じた。

Clancy et al.(1996)の定義によれば、リアクティブトークンとは「'a short utterance produced by an interlocutor who is playing a listener's role during the other interlocutor's speakership'.(会話参加者の一人が話し手になっている間 に、聞き手役が発する短い発話(筆者訳))」とされている。この研究では、従

1 先の発話の直後にあいづち表現が出現し、あいづち表現の発話後に間(0.3 秒以

上)が見られた場合は、その後に続く発話内容を検討したうえで最終的にあいづ ちか否かの認定をした。

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来 backchannelsと表現されてきたものとターンの開始時に見られるあいづち 表現(Resumptive Openers(再開する言葉))がリアクティブトークンの下位 分類として位置付けられている点で注目に値する。 このような定義付けや分類が行われた背景には、3 言語を比較するという 目的が大きく影響していたことが挙げられる。以下の引用では、Clancy らが backchannelsという用語を使用しない理由が明記されている。

In this study, we do not restrict ourselves to ‘backchannels’ since there are other important types of ‘non-primary’ turn that occur, as we will show, with differing frequencies across languages.

本稿では、「バックチャンネル」に限定することはしない。なぜなら、 後に示すように言語間で異なる頻度で出現する「非主流」ターンには、 他にも重要な種類が見られるからである。(筆者訳) (Clancy et al. 1996:357) これらの点から考えると、Clancy らの研究が聞き手役の送る短い発話を全 て分析対象としたのは純粋なあいづちについて論じるためでなく、聞き手の役 割から言語別によるコミュニケーションの違いを解明するためであったと言え る。また、Clancy らの研究では、ターンテーキング時に現れるあいづち表現が 純粋なあいづちか否かという議論についてはなされておらず、検討の余地があ る。 次に、日本語のあいづち研究に大きな影響を与えたメイナード(1992)を 挙げ、ターンテーキング時に見られるあいづち表現の扱いについて見ていく。 メイナードは、ターンテーキング時に見られるあいづち表現をあいづちと認 定しない立場をとる。そして、あいづちを「話し手が発話権を行使している 間に聞き手が送る短い言語表現(非言語行動を含む)で、短い表現のうち話 し手が順番を譲ったとみなされる反応を示したものは、あいづちとしない。 (p.58)」と定義付けた。図 1 は、2 人会話(A と B)における、あいづち表現 の出現位置を示したものである。同じあいづち表現でも出現する位置によって あいづちか否か判断が異なっている。

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メイナードによれば、聞き手が相手の発話順番中に送る(1)(4)さらに、相 手の発話終了後すぐ送る(2)はあいづちで、発話終了後にポーズがあり、自分 の発話の直前に送る(3)と、話し手が発話順番を終了し、聞き手が話し手とし て順番を開始するまでの間の状況で出現した(5)(6)はあいづちではないと指 摘する。 しかし、ここで 1 つの疑問が生じる。それは(2)と(5)の違いである。メ イナードによれば、(2)はターン終了直後で未だ話し手の行動が及んでいる範 囲内であり、(5)は話し手がターンを終了し、聞き手が話し手としてターンを 開始するまでの間発話順番状況であるという。その違いが、あいづちか否かの 判断基準になったようである。言い換えれば、発話終了後すぐにあいづち表現 が出現するかどうかという点が問題視されたわけであるが、あいづち表現が少 し遅れて出現したからと言って、それが先行発話に対するものでないことを示 す要素になるだろうか。筆者の考えは否である。したがって、本稿では、あい づち表現出現の遅速があいづちの認定基準として十分でないこと示す。 さらに、(2)と(5)の状況は、あいづち表現を発した会話参加者があいづち 表現発話後にターンを維持している点で同様であると言える。もしそうである ならば、(2)も(5)と同じようにあいづちではないと考えられるのではないだ ろうか。メイナード(1992)でも「もしポーズがあっても同一の話し手が続け て発話する場合は、発話順番中の状況」との指摘がある。つまり、(2)も発話 順番中であると考えられるのだ。よって、(2)と(5)の認定が異なっている点 図1 対象とするあいづちと話者交替のコンテクストの関係(メイナード 1992)

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も問題があると思われる。 以上、メイナード(1992)における問題点を指摘したが、メイナードのあい づち認定の基準及び定義は、現在も日本語のあいづち研究の基礎となっている。 さて、これまでターンテーキング時のあいづち表現に対する 2 つの立場を見 てきた。従来の研究では、「あいづち=ターンを主張しないという」認識が専ら であるが、こうした認識の背景には、英語圏の backchannels 研究の影響がある ことを指摘する研究者もいる。 大浜 (2006)では、日本語における従来のあいづち研究の流れを次のように述 べる。   80 年代には、バックチャンネルに関するこれらの研究に大きな刺激を 受けて、日本語の相づち研究が始まっていく。(中略)日本語には「相 づち」という表現が既によく知られたものとしてあったため、名称に ついて対立することはなく、また対象となる範囲についてもバック チャンネルのそれを受け入れ、バックチャンネル研究の成果を日本語 のあいづち研究に応用する形で進められてきたということができる。 言い換えれば、日本語の相づちもバックチャンネル同様、聞き手が会 話相手の発話を受けて、それへの反応として打つものであり、その際 ターンを主張するものではないという枠組みで研究が進められてきた。 (大浜 2006:19) そのうえで、日本語のあいづち研究についての問題点を以下のように指摘し、 ターンテーキング時に見られるあいづち表現をあいづちに含める立場をとった。   バックチャンネルと共通する部分の解明は進んだが、一方で日本語の 相づちの特殊性が強調されながら、何がそのような特殊性を生み出し ているのか解明されないままであると言わなければならない。(中略) 従来暗黙の内に、「相づち」イコール「バックチャンネル」と捉えられ ていたことを問い直してみることが必要であろう。 (大浜 2006:20)

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大浜(2006)のような指摘が見られること、また、Clancy et al.(1996)やメ イナード(1992)などにおいて、ターンテーキング時に見られるあいづち表現 についての議論が充分になされていないことなどを考えると、ターンテーキン グ時に見られるあいづち表現を取り上げ、分析、考察することは必然であると 思われる。筆者はターンテーキング時に見られるあいづち表現の中には、あい づちと認定できるものがあるのではないかと考えていることは先に述べた。こ れまであまり論じられることのなかったターンテーキング時に見られるあいづ ち表現について分析、考察することで、日本語会話におけるあいづち使用の実 態をより詳細に記述できるようになるのではないかと考える。 さて、ターンの取得を目的とするあいづち表現の場合、あいづち表現の直後 に発話が後続することは想像に難くない。問題は、あいづち表現直後にポーズ が見られるような場合である。聞き手である話者が、あいづちとして発したも のであっても、結果的にターン交替のきっかけに見えてしまった場合、これま でのあいづち研究では分析対象から除外されてきた。筆者は、ターンテーキン グ時に現れたあいづち表現がすべてターン取得を目的とするものであるとは思 わないし、すべてがあいづちであるとも思わない。だからこそ、ターンテーキ ング時に見られたあいづち表現をあいづちかそうでないか認定するための基準 の検討が必要であると考える。 あいづちの認定をする上で重要なのは、あいづち表現を発話した時点で話者 がターンの取得を意図していないことが示されることである。なぜなら、あい づちはターンを主張するものではないとされているからだ。したがって、あい づち表現後のポーズの長さと後続発話の内容から、話者のターン取得に対する 意志が読み取れるのかどうかを考察し、ターンテーキング時に見られるあいづ ち表現のあいづち認定が可能かどうか検討する。また、本稿で得られた結果を もとに、あいづちの再定義を試みる。以下、本稿の目的をまとめる。 ① 先行発話とあいづち表現のポーズの長さがあいづち認定の基準になり得るの か検討する。 ② あいづち表現後のポーズと後続発話の内容から、あいづち表現発話者のター ン取得に対する意志が読み取れるのか検討する。もし可能であるとして、ど の程度のポーズがあればターンテーキング時に見られるあいづち表現をあい

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づちと判断することができるのか、その目安を明らかにする。 ③ 本稿で得られた結果をもとに、あいづちを再定義する。 3.本研究における定義 本節では、本稿で使用する用語の定義を示す。 [ターン]   話し手が話し始めてから他者の発話(あいづち以外)やポーズで区切られ 話すことをやめるまでのひとまとまりの発話。また、話す権利のこと(発 話権)もターンと呼ぶ。 [ターンテーキング]  上記ターンの交替のこと。ただし、あいづちは含まない。 [あいづち]   話し手がターンを保持している間に聞き手が送る短い表現のこと。上昇音 を伴ったあいづち表現とその直後に現れるあいづち表現は、相手への働き かけが強いと考えられることからあいづちに含まない。また、非言語行動 である笑いについても音声として聞き取れる範囲であいづちとする。あい づちと認定するものは以下の通り(表 1)。 応答系感動詞 「ああ」「うん」「ええ」「はい」など 感情表出系感動詞 「あっ」「あー」「えっ」「ふうん」「へえ」など 語彙的応答 「なるほど」「確かに」「そう(ですね)」「ね」など,習慣化された応答表現 評価応答 「すごい」「おもしろいな」「こわ」など , 直前の相手の発話の内容に対する評価的な応答 繰り返し 直前の相手発話 ( の一部 ) の繰り返し 共同補完 相手発話に後続するであろう要素を聞き手が予測し,補ったもの (伝 2015より抜粋) 表 1 あいづちの表現の形態と分類

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4.データ及び分析方法 4.1 データ 使用するデータは、 東京及び大阪在住の 20 代から 30 代女性を対象として筆 者が自ら収集したものである。インフォーマントは親しい友人同士、特にテー マを設けずに会話をしてもらった。データは全部で 8 組(大阪 4 組、東京 4 組)、各データの中間部分約 20 分間(計 160 分)を分析対象とした。 4.2 分析方法 ターンテーキング時に見られるあいづち表 現については 1 節で述べたが、それらはあい づち表現後にポーズがあるか(M03)無いか (B04)で 2 つに分けられる。筆者はあいづち 表現後にポーズが無い場合、話者のターン取得 への意志が明らかであると考えることから、本 稿では M03 のようにあいづち表現後にポーズが 生じているものを分析対象とする。 ポーズの計測には音声分析ソフト(praat)を 用いた。理由は、スペクトログラム及び波形を 同時に参照することができ、音の響きの細かい 部分まで把握できるからである。さらに、上部 には秒数も示されており、ごく短い無音区間で もしっかりと計測することが可能である。 図 2は、上記例 1(一部再掲)の音声を分析 したものである。矢印部分があいづち表現の出 現箇所であり、左から順に M03、B04 のあいづち表現に該当する。この図から も、M03 の後にごく短い沈黙が生じていることがわかる。 話 発 号 番 → M03 そうそうそう(0.21)あたら‐結構新しいとこだ[よね] → B04        [そう]そうその時に:結構CMやってたんだよ= 【例1】一部再掲      (T-2) →は注目か所、[ ]は重複、=発話と発話の間に間隙無し、(数字)秒数、:直前の音の引き延ばし 図 2 praatによる分析

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5.分析・考察 本節では、まず、各データに見られたターンテーキング全体を概観する (5.1 節)。そして、5.2 節で対象となるターンテーキングの先行発話とあいづ ち表現出現のタイミングの分析及び考察を、5.3 節であいづち表現後のポーズ と後続発話の内容についての分析及び考察を行う。 5.1 概観 データ 種類 O−1 O−2 O−3 O−4 T−1 T−2 T−3 T−4 計 BC-S 33 28 12 19 26 20 43 19 200 (11.4) (19.4) (4.7) (8.7) (11.4) (9.3) (15.2) (9.0) (10.9) BC-NS 35 27 53 28 19 41 42 49 294 (12.1) (18.8) (20.5) (12.8) (8.3) (19.1) (14.8) (23.3) (16.0) TT 220 86 193 172 183 156 190 142 1342 (76.1) (59.7) (74.8) (78.5) (80.3) (72.6) (67.1) (67.6) (73.1) 計 288 141 258 219 228 217 275 210 1836 (100) (100) (100) (100) (100) (100) (100) (100) (100) 上段は実数、下段は割合%(小数点以下 1桁まで表示) 分析した全てのデータのターンテーキング出現数と割合を種類別にまとめた ものが表 2 である。表の項目にある TT2は、あいづち表現を含まないごく一般 的なターンテーキング、BC- という表記がついているものはあいづち表現を伴っ たターンテーキングであり、本稿の分析対象は BC-S にあたる。また、データ 欄の「O ‐ 」は大阪の会話、「T ‐ 」は東京の会話を示す。 今回分析に用いたデータには、計 1836 回のターンテーキングが出現してお り、そのうち BC-S は 200 回の出現が確認された。これは全体の 1 割程度であ り、他の種類のターンテーキングと比べると最も少ない。あいづち表現を伴っ たターンテーキングは、今回対象としないものを含めても全体の 30%に満たな い結果となった。一方、全てのデータにおいて最も多く観察されたターンテー

2 TTは turn-taking、BC-S は Backchannels-Silence、BC-NS は Backchannels -Non

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キングは、あいづち表現を伴わない TT で、これがターンテーキングの主たる ものであると言える (60%∼ 70%程度)。各データを見ても TT > BC-NS > BC-Sという傾向が主であり、BC-NS と BC-S の順位が逆になっているデータ でも、大きな差があるわけではない。 筆者はこれまで、あいづちの使用に関する地域的差異を見ることを主なテー マとしてきたが、今回の出現傾向については地域的差異はほぼ無いと言える。 以降 5.2 節からは、BC-S に焦点をあて分析及び考察を行っていく。 5.2 先行発話とあいづち表現 5.2.1 先行発話とあいづち表現の間のポーズの長さ 本節では、先行発話とあいづち表現の間のポーズを分析し、ポーズの長さが あいづちか否かを判断する基準になるのかどうかを検討していく。 先行発話からあいづちの出現までの間を 100ms(0.1 秒)毎に計測し、グラ フ化したものが図 33である。この図の Just は、先行発話の後、矢継ぎ早にあ いづち表現が発話された状況を 示しており、図 1 の(2)の状 況に該当する。図から Just は 2 番目に多く出現していること がわかる(24.0%)。最も高い 値を示したのは、先行発話に重 複してあいづち表現が出現す る状況(Overlap)で、全体の 35%を占める。Just と比べても 10%強も多く出現しており、そ の差は大きいと言えよう。そし て、100ms 以 降はだんだんと 減っていく傾向が見られ、500ms ∼ 700ms 代になると 2%弱、800ms 以降にな ると 1%弱程度までその出現が減少する。図 3 から、あいづち表現の多くは、 先行発話の後、400ms の間に出現している(計 89.5%)ことがわかる。 さて、ここで 1000ms ∼の項目だけ前後の出現よりも高い値になっている点 3 実数及び割合は巻末の資料1参照のこと。 図 3 先行発話からあいづち出現までのタイミング

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について述べておく。この値の半数(6 回中 3 回)は T-3 から得られたもので あり、データによる偏りがあったと考えて問題ない(個人差)と思われる。 以下、Overlap(重複)、Just(矢継ぎ早にあいづち表現が発話される状況)、 長いポーズの実例を挙げながら、あいづち表現が先行発話に対するものである ことを確認する。 上記例 2は、先行発話とあいづち表現が重複している例である。N03 が当該発 話であり、先行発話 S02 の末尾「やな」と重複するかたちであいづち表現が開始 されている。今回観察された重複するあいづち表現は、先行発話の末尾と重複す るように発話されているものが主であり、話し手の妨害になることはない。 次の例 3 は、Just の例である。N02 の「へ::」というあいづち表現が、先 行発話である H01 の終了後すぐ出現していることがわかる。このタイプのあ いづち表現も先行発話に対するものであると判断できるが、その理由について は次節 5.2.2 で述べる。 さて、本節の最後の事例として挙げるのは、長いポーズが観察された例であ る。例 4 は、数カ月後に結婚式を控えている S と T の会話場面(話題は結婚 式)だ。矢印の部分が、あいづち表現を含んだ発話であり、その直前の S04 の 後には 0.72 秒のポーズが生じていることがわかる。0.7 秒と聞くとごく短いよ 話 発 号 番 N01 [ま]なんかそれも聞かれて私 S02 あ::みんなにゆってるみたい[やな] → N03 [うんうん]うんうん.(0.32)いつがひどかった:みたいな感じで言 われ↑て:= 【例2】Overlap (重複)       (O-2) ↑はその直後の部分で急激な抑揚の上昇があることを示す 話 発   号 番 H01 [良か]った小説::も読んでみたくなっ゜た゜= → N02 =へ::(0.9)゜(すごい)あたしも映画大好きでさ: H03 >うんうんうん<= N04 =大好きっていうか暇:になっちゃうとずっと映画見ちゃうの[.h]゜そう゜ 【例3】Just (矢継ぎ早に発話が続く)       (T-4) .hは吸気、>文字<は囲まれた部分がその前後に比べ速く発話されていることを示す

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長いポーズであると言える。 この長いポーズが生じた原因は、「S の発話に対する T の不理解(戸惑い)」 と述べることができよう。一般的に、結婚式というと昼前後あるいは午後の早 めの時間というイメージを持つ人が多いはずである。しかし、「朝 10 時から結 婚式をする」と言われたらどうであろう。普通の人は予想よりも早い時間だと 感じるはずだ。その点についてはもちろん T も例外ではない。T05 のあいづち 表現の最後には「えっ」という表現(驚きを表すと考えられる)と、「朝 10 時 からスタート?」と再度時間を確認する発話が見られるが、この点からも T に とって S の発話内容が予想外であったことをうかがい知ることができる。つま り、あいづち表現を発話した最初の時点では状況の把握ができておらず、あい づち表現の発話途中で状況が理解出来たというわけである。今回分析したデー タでは、このように戸惑いや、予想外の事に対する反応、気持ちが強く現れる 反応の場合に長いポーズが観察されている。 以上、本節では分析結果と会話例を見てきた。次節では、本節で得られた結 果について考察する。 5.2.2  先行発話とあいづち表現の間のポーズの長さ関する考察 まず、あいづち表現が重複して生じているものについては、明らかに先行発 話に対するものであると考えてよいであろう。そして、メイナードの(2)と 同様の状況である Just も、先行発話に対するものであると判断可能である。な ぜそのように考えられるのか、その理由づけには榎本(2009)の主張を援用し たい。 番号 発話 S01 [で:h式が:あたし:(.)>ごめんな]<朝やねやんか:式さ:そう T02 あ:うんうん[いいよ]朝は= S03         [朝で:] S04 =えとな:(0.48)朝10からやねやんか:(0.72) → T05 ん:ん:ん[:えっ](0.21)朝の10時からスタート? S06      >[朝の]< S07 うん[じゅ] T08    [めっ]ちゃハタモン早いやんじゃ: 【例4】       (O-3)

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榎本(2009)によれば、人が発話末要素4を認識してから実際に声が発せら れるまでおよそ 220ms ∼ 250ms かかるという。さらに、発話末要素の長さや有 無など、状況が変化すれば認識から発話までの時間も変化すると指摘する。つ まり、Just のようなタイプのあいづち表現が出現可能であるのは、先行発話中 に既に聞き手が発話の準備をしていたからにほかならない。榎本の主張から考 えれば、少なくとも先行発話終了後、200ms 程度までのポーズ後に出現したあ いづち表現に対しても同様の説明が可能である。さらに、ターン終了の完結点 についても言及されており、それによると、節末5に 300ms 以上のポーズが続 けば発話の完結を示すとの指摘がある。もし、発話の完結を待って聞き手があ いづち表現を出現させたとすれば、500ms(300ms(発話の完結)+ 約 200ms(発 話準備時間))程度までは先行発話に対するあいづちであると言える。当該発話 の全てをこの状況に当てはめて結論づける気はないが、あいづち表現を先行発 話に対する反応であるかどうか判断する上で、榎本の主張は重要であろう。 次に、長めのポーズが観察された例 4 で不理解や戸惑いが長いポーズの原因 と考えられると言及したが、この点についても先行研究の見解を挙げながら考 えていきたい。 先行発話に対する聞き手の理解度や態度を調査したものに羅(2016)があ る。羅によれば、350ms 以降に現れたあいづちは、相手の発話に対し「不理 解」や「不賛成」を表すと指摘しているが、例 4 の解釈もこの主張が当てはま ると考えられる。 さらに、今回の分析を通し「強い同意や賛成」など聞き手の強い気持ち(不 理解・不賛成のみでなく)を表現する時に間隔が長くなるという状況も観察さ れている。これは、先行研究では指摘されていないことであり、本稿の分析で 新たに示されたものである。 これまで、先行発話とあいづち表現の間に見られるポーズの長さからあいづ 4 榎本(2009)は、ターンテーキングのタイミングについて述べているものであ り、あいづちについて論じているわけではない。また発話末要素として(補助動 詞(ください、みる、もらう等)、補助動詞相当(てる、ちゃう)、形式名詞(こ と、よう、わけ等)、助動詞(です、ます、だた、う等)、終助詞(ね、か、よ 等))を挙げている。 5 節末とは 1.用言、助動詞終止・命令形、終助詞、感動詞類、2.ガ・シ・ケレド

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ちの認定が可能か否かを検討してきたが、本稿で観察したデータのほとんどが ボーズの長さに関係なく、先行発話に対する反応と解釈できるものであった。 もちろん、あいづち表現は基本的に先行発話に対するものであることは言うま でもないが、ポーズの長短が先行発話に対する反応か否かを判断する決め手に なるのか確認するために検証したわけである。 以上、本節の分析及び考察から先行発話とあいづち表現間のポーズの長さが あいづちの認定基準として有用であるか否かを検討してきたが、先行発話とあ いづち表現間のポーズの長さはあいづちの認定基準として適したものであると は言い難い結果が示された。よって、メイナードの(2)と(5)は基本的に同 様の状況であると考える事ができる。 次節では、あいづち表現のあいづち認定に関わる、発話者のターン取得に対 する意志の有無について、あいづち表現後のポーズの長さと後続発話の内容を 関係づけて考えていく。 5.3 あいづち表現と後続発話 5.3.1 あいづち表現後のポーズの長さと後続発話内容 本節では、あいづち表現後のポーズと後続発話の内容を関係づけ分析を行 う。続く後節 5.3.2 で考察を行い、あいづち表現がターン取得を意図したもの ではない(つまり、純粋なあいづちである)と判断するための筆者の主張を論 じたい。 さて、あいづち表現後のポーズ を 100ms ごとに区切り、後続発 話の話題に変化があるのかを調べ た。時間の経過と話題変化をグラ フ化したものが図 46である。 図 4の灰 色で示した部 分は、 ポーズが出現した後も同じ話題が 継続されたこと表しており、黒色 で示され部分は、ポーズ後の話題 に変化が見られたものである。時 図 4 ポーズの長さと話題変化の関係 6 分類不明のものについてはグラフから除いている。詳細は巻末資料2を参照のこと。

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間を細かく区切り、変化を捉えようとした結果、個々の秒数に対する出現数自 体が少なくなってしまったことは否めないが、図 4 を見ればポーズの長さと話 題の変化の関係は明らかである。 あいづち表現後 100ms 未満∼ 300ms 代のポーズの後に会話が再開された場 合、再開された話題にほぼ変化はなかった(90%∼ 100%)。特に、ポーズが 100msに満たない場合、話題の変化は全くないことから、ポーズが無い場合 (BC-NS)と同じ状況であると考えて良さそうである。そして、400ms から 600ms 代では 30%強の割合で後続の話題に変化が生じている。さらに、700ms を境に話題変化と話題継続の割合が逆転し、それ以降はポーズが長ければ長い ほど話題の変化が起きやすい傾向が示された。 今回の結果から、ポーズの長さと話題の変化には関係があることが示され たが、図 4 を見るとその傾向が当てはまらない項目が 2 つあることに気づく (500ms ∼と 1000ms ∼)。この理由について、以下に実例を挙げ説明する。 例 5は、A と K が塾講師の経験について話している場面である。もともと数 学を担当していた K が英語を教えることになり、心苦しかった心境を話している (K03)。ここでは、K05 の発話に注目していただきたい。A の発話後、K は短い笑 いで対応し、その後 0.56 秒のポーズが生じる。笑いの後 A が一向にターンを取ら なかったため、K が再度ターンを取り「英語もしたしね」と発話を続けたが、そ の後も A がターンを取ることなく再び 1.4 秒ものポーズが生じることとなる。最 終的に K が 1.4 秒の沈黙後再びターンを取り「そ:」と発話し話題が終了する。 この例からもわかるようにある話題が終了の方向に向かうとき、その話題に ついてまとめたり、評価したり、あいづちをうったりすることはこれまでの研 話 発 号 番 A01 だって教えるっつってもね(0.33)[こ]ういうのがあるっていうだけ= K02       [ね] K03 =そうそうそう(0.6)英語もちょっとあったよ:(0.8)私なんかが英語教えていいのかって 思[ったけど] A04   [いやいや]それは教えていいと思う → K05 hh.h(0.56)英語もしたしね:(1.4)そ: 【例5】       (T-1)

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発話がまとめの表現に該当すると考えられる。この「評価やまとめの表現」が 500ms ∼ 600ms 未満に多く観察されており、それによって「話題継続」の割 合が増加したというわけである。同様の現象は、話題変化の割合が減少してい る 1000ms ∼の項目でも観察されている。 ところで、筆者はこれまで「話題変化」と単に表現してきたが、話題には 様々な段階が存在する。本稿では、できる限り小さな話題に区切って変化を捉 えている。以下、実例を挙げ話題の認定について説明するとともに、変化にも いくつか種類があることを見ていこう。例 6、例 7 では、話題に変化が生じて いるところを網掛けの有無で示している。 次の例 6 では、話題が「電車で歌う」→「食べ始めたらお腹がすく」→「電 車で歌う(前出話題の再開)」と変化している。あいづちを含んだ当該発話は 矢印 U07であり、あいづち表現が出現してから 0.2 秒後、突然話題に変化が生 じている。M08 の発話を見ると、この突然の変化に対応できていないことがわ かるが、その直後の M09 では、何事もなかったかのように新たな話題に対応 しているのである。そしてまた、U が突然前に話していた話題を再開したこと で、話題が急激に変化している(U12)。

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さて、例 6 のようにはっきりと違う話題へ変化したことがわかる場合もあれ ば、例 7 のように大きなテーマの中で少しずつ話題を変化させていく場合もあ る。 例 7は、C が持ってきたお菓子について話している場面である。A01 ∼ A08 の前半までは「お菓子を温めること」について話が展開されているが、0.47 秒 のポーズをおいて、A08 の後半「これ何?」という質問の発話から話題は「お 菓子の味」に変化していく。さらに、今回のデータでは、前に出た話題の中の 1つの要素に焦点を当てて、新たな話題を展開させるような例も観察されてい る。 以上、本節の分析からポーズが長くなればなるほど話題が変化しやすい傾向 が明らかになった。また、一定の間隔で話題終了に向けた発話が出現すること が示されたことは興味深い。次節では、本節で得られた結果をふまえ、あいづ ち表現発話者のターン取得に関する意識の有無と、ターンテーキング時に見ら れるあいづち表現のあいづち認定について論じる。

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5.3.2 あいづち表現後のポーズの長さと後続発話内容に関する考察 本節では、ターンテーキング時に見られるあいづち表現をあいづち認定する ため、あいづち表現発話者のターン取得に対する意志の有無について検討す る。さらにそれをふまえ、あいづち認定に関わるポーズの長さについて考えて いきたい。 5.3.1 節の結果から、あいづち表現後のポーズの長さは話題変化に関係する ことが示された。つまり、話題を維持したい場合にはポーズを短く、話題を維 持したくない(あるいは終わらせたい)場合にはポーズを長くすることで無意 識のうちに会話参加者同士が話題維持(あるいは話題選択)についての調整を 行っていると考える事ができる。また、ある一定時間が経過すると、話題を終 える方向へ会話が進むことも述べた(例 5)。筆者は、この一定の時間を話者 のターン取得の意志と関係づけ解釈することで、ターンテーキング時に見られ るあいづち表現のあいづち認定に利用できるのではないかと考えた。以下、そ の解釈について述べる。 例えば、会話参加者 A があいづち表現を発したとしよう。もし、A にターン を取得する意志が無いならば、もう一人の会話参加者 B が自分の発話の後に反 応することを期待するはずである。しかし、A の期待をよそに B が反応しなけ れば、その期待が裏切られることになる。その結果、それまでの話題を維持す るという方向から終了する方向へ動き出すことになるわけだ。つまり、ターン を取らないという会話参加者 B の意志(あるいは反応)によって再度Aがター ンを取らなければならない状況が生じたとするならば、会話参加者 A のター ン取得への意志は無いと言える。したがって、ここで A が発したあいづち表 現は、通常のあいづちと変わらないものであると解釈できるのではないだろう か。 さらに、5.2.2 で述べた榎本の主張を思い出して欲しい。榎本によれば先行 発話が完結するのは節末表現の出現から 300ms 以上のポーズが後続する場合 であった。ということは、あいづち表現を発した話者が、自らの発話の完結を 認識し、その後さらに反応した場合 500ms 以上のポーズが生じることになる (認識から反応するまで 220ms ∼ 250ms 程度)。つまり、あいづち表現出現後 から後続発話が開始されるまでのポーズが 500ms 以上あれば、そのあいづち 表現は先行発話に対する単なるあいづちであると判断することができるのであ る。ちなみに、「発話の完結点+反応時間」と一定時間が経過し後話題終了へ

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と向かうタイミング(500ms 代)がほぼ同じ間隔となる点は興味深い。 以上、5.3.1 節の結果をふまえ、あいづち表現のあいづち認定について考察 を行った。今回得られたデータは十分とは言えず、可能性を示したに過ぎない が、もし話題変化、特に話題が終了に向かう過程の解釈が合っているとすれば 「あいづち表現と後続発話の間に約 500ms 以上のポーズ」が観察できる時に は、ターンテーキング時に見られたあいづち表現にターン取得の意志が無いと 判断しあいづちと認定することが可能になるわけである。ただし、これはあく まで 1 つの目安であり、これだけであいづちの認定を行うわけではないことは 申し添えておく。 6.まとめと課題 本稿は、これまで多くの研究者があいづちと認定してこなかったターンテー キング時に見られるあいづち表現に着目し、あいづち認定のための検討を行っ てきた。本稿の分析及び考察で明らかにしたことを以下にまとめる。 ① 先行発話後に見られるあいづち表現の多くは、ポーズの長さに関わらず 先行発話に対する反応であると言える。つまり、あいづち表現の出現の 遅速はあいづちを認定するにあたり基準となるものではない。   また、あいづち表現が出現するまでのポーズの長さは先行発話に対する聞 き手の気持ちが関係する。特に不理解や不賛成以外にも、賛成や納得と いった肯定を表す強い気持ちが現れる時にポーズが長くなる場合がある。 ② あいづち表現後のポーズと後続発話の内容から、ターン取得に対する話 者の意識を読み取ることは可能であると考える。また、ターンテーキン グ時に見られたあいづち表現をあいづち認定する際には、あいづち表現 と後続発話の間に 500ms 以上のポーズが見られるかどうかが目安の 1 つ となる。 ③ 本稿で明らかになった結果をもとに、あいづちを以下のように再定義する。  [あいづち ]   話し手がターンを保持している間に聞き手が送る短い表現(表 1 参照)の

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相手への働きかけが強いと考えられることからあいづちに含まない。ま た、非言語行動である笑いについても音声として聞き取れる範囲であいづ ちとする。   さらに、ターンテーキング時に見られたあいづち表現については、便宜上 あいづち表現後に 0.5 秒以上のポーズがあった場合、後続発話の内容を検 討した上であいづちと認定する。 本稿で扱ってきたあいづち表現は、通常、ターンの一部として扱われあいづ ちから除外されるものである。本テーマを論じるに至った理由は冒頭でも述べ た。今回使用したデータは決して多いとは言えないが、今回得られた結果は考 察で挙げた先行研究と照らし合わせて考えても、大きくずれているようには思 われない。 今回の主張を強固なものにするため、データを増やすことはもちろん、今回 は分析から除外した BS-NS の傾向などについても分析を行い、ターンテーキ ング時のあいづち表現の使用実態を明らかにし、日本語におけるあいづちの特 徴を見出したいと考えるが、それらは今後の課題とする。 参考文献 榎本美香(2009)『日本語における聞き手の話者移行適格場の認知メカニズム』ひつじ 書房 大浜るい子(2006)『日本語会話におけるターン交替とあいづちに関する研究』渓水社 黒崎良昭(1987)「談話進行上の相づちの運用と機能 ―兵庫県滝野方言について―」『国 語学』50 pp.122-109. 杉藤美代子(1999)「東京と大阪の談話におけるあいづちの種類とその運用」『日本語科 学』5 pp.26-45. 泉子・K・メイナード(1992)『会話分析』くろしお出版 伝康晴 (2015)「対話への情報付与」『講座日本語コーパス 話し言葉コーパス3 設計と 構築』pp.101-130. 朝倉書店 中島悦子(2003)「発話上におけるあいづちの出現位置とその分布―自然談話録音資料 にもとづいて―」『21 世紀アジア学会紀要』1 pp.65-78. 堀口純子(1997)『日本語教育と会話分析』くろしお出版 羅希(2016)「日本語のあいづちの頻度とタイミングに関する総合的考察」『日本音声学 コミュニケーション』4 pp.23-43. 

(23)

reactive tokens in English, Japanese, and Mandarin. , 26, 355-378.

Senko Kumiya Maynard(1997)

. Ablex Publishing Corporation. <転記記号> = 言葉と言葉、発話と発話が途切れなくつながっていることを示す [ 二人の発話の重なりの開始を示す ] 二人の発話の重なりの終了を示す (0.3) 0.2 秒以上の沈黙の長さを( )の数字で示す > < 記号で囲まれた発話は他より速度が速いことを示す < > 記号で囲まれた発話は他より速度が遅いことを示す : 音が伸ばされている状態を示す    下線部の声が大きく強調されていることを示す ? 上昇調のイントネーション ゜゜ 記号で囲まれた発話は他より小声で話されていることを示す . 下降調のイントネーション (…) 発話が不明な部分を示す h 笑いを示す .h 吸気音を示す (.) 0.2 秒以下の沈黙

(24)

< 資 料 1 先 行 発 話 と あ い づ ち 表 現 間 に 見 ら れ た ポ ー ズ の 長 さ > < 資 料 2 あ い づ ち 表 現 後 の ポ ー ズ の 長 さ と 話 題 変 化 > ※ 資 料 1 、 資 料 2 共 に ( ) は 実 数 、 括 弧 に 入 っ て い な い も の は % を 示 す 。 100ms~ 200ms~ 300ms~ 400ms~ 500ms~ 600ms~ 700ms~ 12.0 (24) 7.0 (14) 6.0 (12) 5.0 (10) 1.5 (3) 2.0 (4) 2.0(4) 800ms 900ms~ 1000ms~ 2000以降 Overlap Just 計 0.5 (1) 1.0 (2) 3.0 (6) 0.5 (1) 35.5 (71) 24.0 (48) 200 (100) 100未満 100~ 200~ 300~ 400~ 500~ 600~ 話題継続 100.0 (3) 85.2(23) 88.5 (23) 84.2(16) 65.0 (13) 81.3 (13) 63.6 (7) 話題変化 0 (0) 11.1(3) 11.5(3) 15.8 (3) 35.0 (7) 18.8 (3) 36.4 (4) 不明 0 (0) 3.7(1) 0.0 (0) 0.0(0) 0.0 (0) 0 (0) 0 (11) 計 100.0 (3) 100 (27) 100.0 (26) 100.0 (19) 100.0(20) 100.0 (16) 100.0 (11) 700~ 800~ 900~ 1000~ 2000~ 計 話題継続 44.4 (4) 44.4 (4) 30 (3) 52.6 (20) 25.0 (3) 66 (132) 話題変化 44.4 (4) 55.6 (5) 60.0 (6) 39.5 (15) 66.67 (8) 30.5 (61) 不明 11.1 (1) 0 (0) 10 (1) 7.9 (3) 8.3 (1) 3.5 (7) 計 100.0 (9) 100 (9) 100 (10) 100.0 (38) 100.0 (12) 100.0 (200)

(25)

针对有关说话者交替的附和的重新考察

—关于 Aizuchi 基准的探讨—

太 田 有 纪

本论文主要分析考察的是在说话者交替时出现的表示 Aizuchi( 听话者对说话者发 出的短信号,表示自己在听对方说话或表示理解的短语 ) 的词汇。这些词汇在以往的 研究当中均未被看作是表示 Aizhchi 的词汇。 我们首先基于先行研究的问题探讨先行讲话和表示 Aizuchi 词汇之间的长度是否能 作为表示 Aizhchi 词汇的认定基准。其次,我们探讨能否通过关联表示 Aizuchi 词汇 之后的停顿和后续讲话的内容来确定说话者对于是否取得说话权的意愿。之后,我们 将明晰在能够判断说话者有意愿取得说话权的情况下,以多长时间的停顿作为标准。 我们将此看作是认定表示 Aizuchi 词汇的基准。最后,基于分析结果我们将再次定义 何为表示 Aizuchi 的词汇。 分析结果得出,先行讲话和 Aizuchi 之间出现的停顿长短不能作为 Aizuchi 的认定 基准。此外,调查显示通过关联表示 Aizuchi 词汇之后的停顿和后续讲话的内容,可 以确定说话者对于是否有取得说话权的意愿。当判断是否有取得说话权意愿的时候, 可以以表示 Aizuchi 词汇之后是否超过约 500ms(0.5 秒)的停顿为标准。 基于以上的结果,本论文对 Aizuchi 进行如下的重新定义。 “说话者在保持说话权时,听话者说出的短词。伴随有上声语调以及在那之后出现 的表示 Aizuchi 的词汇不包含在 Aizuchi 概念之内。另外,关于作为非语言行为的发 笑,其作为声音在听觉范围内的部分也可认定为 Aizuchi。更重要的是,针对出现在 发话者交替时的表示 Aizuchi 的词汇,笼统地说在表示 Aizuchi 词汇之后出现 0.5 秒 以上的停顿时,可以在鉴定完后续说话内容的基础上认定其为 Aizuchi。”

参照

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