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注意欠陥多動性障害を早期に発見する心理学的診断法の開発研究

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Academic year: 2021

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(1)

注意欠陥多動性障害を早期に発見する心理学的診断法の開発研究

平成 13年度 平成 16年度科学研究費補助金(基盤研究

(

C

)

(2)) 研究成果報告書(課題番号 13610130) 平成 17年3月

滋賀大学教育学部

研究代表者

近 藤 文 里

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(2)

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6

注意欠陥多動性障害を早期に発見する心理学的診断法の開発研究

平成 13年度 平成 16年度科学研究費補助金(基盤研究 (C) (2)) 研究成果報告書(課題番号 13610130) 平成17年3月

滋賀大学教育学部

研究代表者

近 藤 文 里

(3)

目 次

まえがき 第1章 幼 児 期 の 注 意 欠 陥 多 動 性 障 害 児 の 理 解 と 研 究 の 課 題 設 定 ー... ・0・...・ 5 第2章 幼 児 期 の 行 動 調 節 に 関 す る 行 動 評 定 尺 度 に よ る 検 討 (1) ... ー...33 一 一 教 師 に よ る 行 動 評 定 資 料 に も と づ く 分 析 一 一 第3章 幼児期の行動調節に関する行動評定尺度による検討 (2) ... 50 一 一 教 師 と 保 護 者 に よ る 行 動 評 定 資 料 に も と づ く 分 析 一 一 第4章 幼 児 の 行 動 調 節 に 関 す る 観 察 法 に よ る 検 討 ...-・・・・ ・・・ 0 ・ 59 第5章 ADHDの傾向を示す幼児の神経心理学的検査を用いた検討 ••••••••••••••••• “..72 第6章 健 常 幼 児 に お け る 神 経 心 理 学 的 検 査 の 実 施 時 期 の 検 討 ーー...… 81 第

7

章 総 合 的 考 察 ・・・・ ー“・・ ・ ・…...・…・・・… - ・ ………

88

文 献 "・・ ・ " ・・ … ・・…・"…・ …・・・・・・・・……

9

4

付 録 付 録1 調 査1と調査2の代表値、最大・最小値、パーセンタイル値 …...100 付 録2 幼児用行動観察システム ・" ー・ ・・ h ・ー・・ー ー 103 付 録3 模写図形とその評価基準 ・・・・…“"・……・・・0・…… "ー ・ー・ … … … …...…....109

(4)

まえがき

今日、日本の障害児教育は大きな転換点にある。それは、

2

0

0

1

1

月に文部科学省調査 研究協力者会議が公表した

r

2

1

世紀の特殊教育のあり方について(最終報告)Jで、注意欠 陥 多 動 性 障 害

(ADHD:

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、 学 習 障 害

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、高機能広汎性発達生障害

(HFPDD

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Diωrder)

等、通常の学級に在籍する児童生徒への教育的支援を積極的に 行うことが明らかにされたことに関係している。 このような「特別支援教育Jについては検討されるべき課題は多い。しかし、そのよう な議論とともに、忘れることができない重要な問題がある。それは、このような軽度発達 障害の早期診断と対応という問題である。普通、このような子ども達の問題は、学齢期に 気づかれることが多く、気づいた時には二次的な問題を引き起こしていて、対応に苦労す る。したがって、障害の早期診断は、教育的支援を行ううえで欠かせない問題と言える。 乳児健診、 1歳半健診、

3

歳児健診のなかで、脳性マヒ、先天性疾患、重度ないしは中度 の知的障害、自閉症などは発見され、それぞれについては療育をはじめとして適切な対応 がとられてきた。しかし、軽度発達障害の場合、子どもの抱える問題が見逃されてしまう ことがある。このことは、幼児期には問題が顕在化していなかったという側面もあるかも しれないが、その後の発達を予測する重要なサインを知る手がかりを我々が未だ得ていな いことに起因している可能性が高い。 この問題は、就学を前にした一斉健診システムがない、という問題が関係している。幼 児期の後期は、既に幼稚園や保育園で集団生活を経験しており、対人関係、言葉の遅れ、 不器用さ、などの問題が明らかになり、子ども自身の自己評価の低下とともに、集団場面 で生じるトラブルや我が子の発達に関する不安が高まる時期である。就学前に問題をとら えて援助し、二次的な障害を予防することは特別支援教育につなげていくうえで重要な課 題であると思われる。 本研究のねらいは、

ADHD

の早期診断法の開発を試みることである。そのための作業と して第

1

に必要なことは、幼児期の

ADHD

児の発達特徴、および

ADHD

の症状に影響す る幼児期の発達課題を明らかにすること、である。第 2に必要な作業は、幼稚園、保育園 児を対象に、

ADHD

の診断法を開発するための試みとして、行動評定尺度、観察法、実験 法を用いた研究を行うことである。このような研究にもとづいて、心理学的診断の方法や 時期をはじめとして、

ADHD

の診断において重要な必要条件を明らかにしたい。 本研究を実施するにあたり、学術振興会の科学研究費の補助を受けることができた。ま た、この研究を進めるうえで協力していただいた滋賀大学研究生の米田正司さんと現職教 員で滋賀大学大学院生の永野優子さんには心から感謝の意を表するものである。 平成 17年3月 近 藤 文 里

(5)

研 究 組 織 研究代表者 近 藤 文 里 ( 滋 賀 大 学 教 育 学 部 教 授 ) 交付決定額(配分額) 直接経費 間接経費 合 計 平 成

1

3

年 度

900

千円

0

千円

900

千円 平 成

1

4

年 度

800

千円

0

千円

800

千円 平 成

1

5

年 度

7

0

0

千円

0

千円

7

0

0

千円 平 成

1

6

年 度

600

千円 O千円

600

千円 総 額

30

∞ 千 円

0

千円

3000

千円 研 究 発 表 (口頭発表) 近藤文里 幼児期における注意欠陥多動性障害に関する調査. 第

40

回日本特殊教育学 会発表論文集. p

.

3

5

2

.

2002

8

月. 近藤文里・米田正司 幼児期における注意欠陥多動性障害に関する調査 (2) ー 幼 児 に 対 す る 保 護 者 と 教 師 に よ る 行 動 評 定 の 検 討 第

4

1

回日本特殊教育学会発表論文集.p

.

3

1

7

.

2

3年 8月. 米田正司・近藤文里 幼児期における注意欠陥多動性障害に関する調査 (3)一異なる 観 察 場 面 に よ る 健 常 児 と の 比 較 検 討 一 . 第

42

回日本特殊教育学会発表論文集. p.4

6

9

.

2004

8

月. 近藤文里・米田正司 幼児期における注意欠陥多動性障害に関する調査 (4) 一 神 経 心 理 学 的 検 査 に よ る 検 討 第

4

2

回日本特殊教育学会発表論文集.p.4

70.2004

8

月 (出版物) 近 藤 文 里 注意欠陥/多動性障害. 下山晴彦・丹野義彦編『講座 臨床心理学3 異 常心理学

Ij

東京大学出版会.

245

2

6

6

. 2002

2

5

日. 近藤文里 注意欠陥ー多動性障害のぱあいの援. 須田治・別府哲編著『社会・情動発 達とその支援』 ミネルヴァ書房.

207-216. 2002

8

30

日. 近藤文里 注意欠陥多動性障害.黒田吉孝・小松秀茂編『発達障害児の病理と心理』培 風館. 2

2年 8月. 近藤文里 ADHD児に対する心理学的理解.障害者問題研究,

3

0

巻,

108-117. 2002

年8月

25

日. 近藤文里 ADHD児の心理学的理解. 全国障害者問題研究会『みんなのねがし \~428 号,

12-15. 2003

4

1

日.

(6)

1

幼 児 期 の 注 意 欠 陥 多 動 性 障 害 の 理 解 と 研 究 の 課 題 設 定

1

節 障 害 名 の 変 遷 と

ADHD

に 関 す る 理 論 1 . 障 害 名 の 変 遷 と 障 害 の タ イ プ 落 ち 着 き の な い 行 動 を 示 す 子 ど も に つ い て は 既 に 20世 紀 の 初 頭 か ら 知 ら れ て お り 、 障 害 の 名 称 は

1940

年 代 か ら い ろ い ろ と 変 わ っ て き た 。 彼 ら は 、 か つ て 「 脳 損 傷 児 症 候 群J、「微細脳損傷 J、「微細脳機能障害J と呼ばれたことがある。 ま た 、 そ の 名 称 は 現 在 で も 国 に よ り 様 々 で あ る 。 ヨ ー ロ ッ パ で は 、 世 界 保 健 機 関の『国際疾病分類(ICD)Jにもとづいて「多動性障害J(hyperacticity disorder) と い う 名 前 が 用 い ら れ て い る 。 ま た 、 北 欧 諸 国 で は 「 注 意 と 運 動 制 御 と 知 覚 の 障 害J を意味する D

AM

P

(deficit in attention, motor control, and perception) という包括的な概念でとらえている。一方、アメリカでは、米国精神医学会の『精 神 疾 患 の 診 断 と 統 計 の マ ニ ュ ア ル 第

4

(DSM-N

)Jにもとづいて

ADHD

と い う 名 称 が 用 い ら れ て お り 、 日 本 も こ の 診 断 基 準 を 用 い る こ と が 多 い 。 こ こ で 、 米 国 精 神 医 学 会 の

DSM

に 限 っ て 見 た 場 合 で も 、 そ れ 自 体 が 改 訂 さ れ る 度 に 障 害 の ど の よ う な 障 害 の 側 面 を 重 視 す る か で 変 化 し て き て い る 。

1968

年 に 公 表 さ れ た

DSM-ll

で 「 子 ど も の 多 動 性 反 応j と い う 言 葉 が 使 わ れ た こ と に 示 されるように多動の側面が重視された。ところが、

1

9

8

0

年 の

DSM-ID

で は 「 注 意 欠 陥 障 害(attentiondeficit disorder;

ADD)

という障害名がつけられたように、 不 注 意 の 側 面 が 重 視 さ れ 、 多 動 に 関 し て は 、 注 意 欠 陥 障 害 に 多 動 を 伴 う 場 合 と 、 多動を伴わない場合に分類された。さらに、

1987

年 の

DSM-ill-R

で は 、 不 注 意 と と も に 多 動 も 再 び 重 視 さ れ て 、 名 称 は 注 意 欠 陥 多 動 性 障 害

(ADHD)

となっ た 。 そ し て 、 そ れ 以 前 の 多 動 を 伴 わ な い 注 意 欠 陥 障 害 は 、 分 類 不 能 の 注 意 欠 陥 障 害とされた。しかし、

1994

年 に 公 表 さ れ た 現 在 の

DSM-N

で は 、 不 注 意 と 多 動 一衝動性という

2

次元的な把握をするようになり、

ADHD

は不注意優勢型、多動 ー衝動性優勢型、両方の混合型、という 3つのサプタイプに分けられている。 こ の よ う に 、 時 代 に よ り 、 国 に よ り 障 害 名 や そ の と ら え 方 が 異 な っ て き た の は な ぜ か 。 そ れ は 、 不 注 意 、 多 動 、 衝 動 性 を 主 症 状 と す る 子 ど も が 過 去 か ら 現 在 に い た る ま で 確 か に 広 く 存 在 し て い た に も か か わ ら ず 、 障 害 の 本 質 や 発 現 過 程 が 明 確でなかったからである。

2

.

ADHD

に 関 す る 理 論 の 変 遷 さ て 、 こ れ ま で

ADHD

児 が 示 す い ろ い ろ な 症 状 に 対 し て 中 核 的 症 状 が 何 で 、 そ の 基 本 と な る 障 害 は 何 か に つ い て 心 理 学 的 に 理 解 し よ う と す る 試 み が な さ れ て

5

(7)

-き た 。 そ こ で 提 起 さ れ た 理 論 は 、 研 究 方 法 の 発 展 と 不 可 分 な 形 で 結 び つ い て 発 展 したものであった。そこで、 A D H Dに 関 す る 理 論 と 、 そ れ が 提 起 さ れ る 背 景 と なった研究について述べることにする。 ( 1 ) 覚 醒 の 障 害 説 これまでA D H Dに 関 し て は 覚 醒 を 問 題 に し た 議 論 が 皮 膚 電 気 活 動 を と ら え る 生 理 心 理 学 的 指 標 を 用 い た 研 究 か ら 提 起 さ れ た。この種の議論の単純なものは、 A D H D児 で は 低 覚 醒 で あ り 、 落 ち 着 き の な さ は 、 適 度 な 覚 醒 水 準 に 近 づ け よ う と す る 自 ら の 補 償 作 用 の 現 わ れ で あ る と す る 考 え 方 で あ る。

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(1971)は、 A D H D児 は 安 静 時 の 皮 膚 電 気 活 動 が 不 活 発 で あ る と い う 結 果 を 得 た こ と に よ っ て 仮 説 は 裏 付 け ら れ る と し た。し か し 、 他 の 研 究 者 は 、 む し ろ逆の結果を得ており、 A D H D児 の 低 覚 醒 を 裏 付 け る 結 果 と な ら な か っ た。覚 醒 に 関 す る 第 2の考え方は、 A D H D児 は も と も と 過 剰 覚 醒 で あ り 、 落 ち 着 き の な さ は そ の 直 接 的 な 現 わ れ で あ る と す る も の で あ る

(

W

e

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e

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,1972)。この考えは、 刺激のなし、小さな個別学習室が学習に有効とする治療教育の普及につながったが、 効 果 は 必 ず し も 認 め ら れ な か っ た 。 第3の考え方は、

S

r

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f

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(1975)の 生 理 心 理 学的指標を用いた研究によるもので、 A D H D児 に は 低 覚 醒 や 過 剰 覚 醒 を 示 す 者 がいる一方で、覚醒の変動性が高い者がし、ることを明らかにした。このことから、 単に覚醒が低し、か高いかという単純な問題ではなく、行為の実行に及んで覚醒を 調 節 で き る か ど う か 、 が 大 切 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。 覚醒の障害説は、 A D H D児 に お け る 中 枢 神 経 刺 激 剤 の 効 果 と の 関 係 で 議 論 さ れることが多かった。 A D H Dの 問 題 は 、 一 般 的 にA D H D児 の 覚 醒 が 低 い か 高 い か よ り も 、 あ る 状 況 に 及 ん で 不 安 や 怒 り な ど の 情 動 を 調 節 で き る か 否 か が よ り 大 切 で あ る こ と が 大 切 で あ る こ と が 明 ら か に な っ て き た 。 1970年 当 時 、 覚 醒 の 障 害説は、覚醒がA D H Dをとらえる主要な問題と考えられたが、今日から見ると、 A D H Dの 全 体 像 を と ら え る う え で 必 ず し も 十 分 な も の と は 言 え な い も の で あ っ た。 ( 2 ) 動 機 づ け の 障 害 説 覚 醒 の 障 害 説 と は 異 な る 立 場 か ら 提 起 さ れ た の が 、 動 機 づ け の 障 害 説 で あ る。 この説は、 A D H D児 が 報 酬 に 対 し て 高 い 感 受 性 を も っ て い る こ と を 根 拠 に し て いる。例えば、

Parry

&

Douglas

(1

9

8

3

)

は 、 次 の よ う な 動 機 づ け の 研 究 を 行 っ て い る 。 す な わ ち 、 左 右 同 時 に 視 覚 呈 示 さ れ る 2つ の 絵 刺 激 の う ち 、 あ る 概 念 ( 例 え ば 花 ) に 該 当 す る 絵 を 選 ぶ 度 に 報 酬 が 与 え ら れ る 概 念 同 定 実 験 を 行 っ た 。 報 酬 の 与 え 方 は 次 の 2条件であった。 1つ は 、 正 し い 反 応 を す る 度 に 後 で お 金 に 交 換 さ れ る オ ハ ジ キ が も ら え る 連 続 強 化 条 件 で あ る 。 も う 1つ は 、 正 し い 絵 を 選 ん だ

(8)

と き は 黒 か 白 の オ ハ ジ キ が 半 々 の 割 合 で 渡 さ れ る が 、 白 い オ ハ ジ キ だ け が 換 金 さ れ る 部 分 強 化 条 件 で あ るo実 験 の 結 果 、 連 続 強 化 条 件 で は

ADHD

児 と 健 常 児 に 成 績の差はなかったが、部分強化条件では

ADHD

児 は 欲 求 不 満 と 動 機 づ け の 低 下 に よ っ て 顕 著 な 成 績 の 低 下 を 示 し た 。 し か し な が ら 、 こ の 結 果 は 他 の 結 果 で も 支 持 されたわけではなく

(Pelham e

t

a

.

1

1987)

、 結 果 の 知 何 は 手 続 き や 報 酬 の 種 類 に大きく依存したものだった。

Glow

&

Glow

(I

9

7

9

)

は、

ADHD

を 動 機 づ け の 発 達 障 害 と と ら え 、 次 の よ う な 論 を展開している。すなわち、

ADHD

児 で は 発 達 の 早 い 段 階 か ら 皮 質 下 に 異 常 が あ り 、 注 意 の 持 続 が 困 難 で あ る 。 ま た 、 注 意 の 持 続 に 必 要 な フ ィ ー ド パ ッ ク ・ シ ス テ ム に も 発 達 の 遅 れ が あ り 、 行 動 し た 結 果 に つ い て フ ィ ー ド パ ッ ク 情 報 が 十 分 に 受 け ら れ な い 。 そ の た め 、 自 分 が 努 力 し た こ と と 外 界 の 変 化 と の 関 係 が と ら え ら れ ず 、 無 力 感 を 感 じ る と と も に 、 い ろ い ろ な 問 題 を 生 じ る 、 と 考 え た 。 Glowらの説は、

A D H D

に は 行 動 療 法 的 手 法 が 効 果 的 で あ る こ と を 説 明 す る こ と に 使 わ れ た 。 し か し 、 こ の 説 に は 、 行 動 を う ま く コ ン ト ロ ー ル で き な い 問 題 を 本 人 の 「 や る 気 の な さj に よ る と す る 誤 っ た 見 方 に 導 く 危 険 性 も 有 し て い る 。 こ の動機づけの障害説も、覚醒の障害説と同様に、

A D H D

の 一 面 は と ら え た も の であるが、その全体像をとらえたものと言えない。 ( 3 ) 自 己 コ ン ト ロ ー ル の 障 害 説 既 に 述 べ た 覚 醒 の 障 害 説 と 動 機 づ け の 障 害 説 は 、 中 枢 神 経 系 の 中 で も 皮 質 下 の 異 常 を 重 視 し た 考 え で あ っ た 。 そ れ に 対 し て 、 皮 質 機 能 、 特 に 前 頭 葉 機 能 の 不 全 を 重 視 し た 仮 説 が 自 己 コ ン ト ロ ー ル の 障 害 説 、 な い し は 前 頭 葉 機 能 障 害 説 と 言 わ れるものである。この説は、

ADHD

が 示 す 行 動 特 徴 が 前 頭 葉 に 損 傷 を 受 け た 成 人 患者のそれと極めて似ていることから、

ADHD

児 に は 前 頭 葉 機 能 に 障 害 が あ る と 言 え る か ど う か に つ い て の 神 経 心 理 学 的 研 究 が 行 わ れ た 。 研 究 で 用 い ら れ た 検 査 は 、 前 頭 葉 損 傷 患 者 で 実 施 さ れ た 検 査 課 題 を 用 い た も の が 中 心 で 、 「 プ ラ ン ニ ン グj、「注意の持続J、「認知的柔軟性」、「流暢性J、「抑 制 ・ 衝 動 性J な ど を 調 べ る 課 題 で あ っ た 。 近 藤 ( 1

996)

が そ れ ら の 研 究 を 展 望 し たところ、「プランニングjに 関 係 し た ポ ー テ ワ ス 迷 路 課 題 や 「 注 意 の 持 続Jに関 係した連続的遂行課題では、児童から成人の

ADHD

に 至 る ま で 一 貫 し て 成 績 が 低 く な る こ と が 認 め ら れ た 。 た だ し 、 そ れ 以 外 の 前 頭 葉 機 能 を 反 映 す る と さ れ た 検 査では研究開で統ーした結果は得られなかった。 自己コントロールの障害説、ないしは前頭葉機能障害説は、

ADHD

が 知 能 の 障 害ではなく行為の障害であること、つまり、「わかっていてもできなしリところに 問 題 が あ り 、 そ れ が 前 頭 葉 機 能 の 問 題 で あ る こ と を 明 確 に し た 点 で は 意 義 が あ っ た。しかし、

1980

年 代 半 ば か ら

90

年 代 に か け て 行 わ れ た 脳 画 像 研 究 で 明 ら か に

-

7

(9)

-な り つ つ あ っ た 成 果 が 反 映 さ れ た も の で は -な か っ た 。 -な ぜ -な ら ば 、 脳 の 局 所 的 血 流 量 を 調 べ た 研 究 で は 、 前 頭 葉 だ け で な く 前 頭 葉 と 尾 状 核 を 結 ぶ 線 条 体 に お い て 低 血 流 量 、 つ ま り 低 活 性 を み と め て い る か ら で あ る

(

L

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u

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1

9

8

4

)

。 脳 画 像 研 究 に は 、 脳 の 局 所 的 血 流 量 を 調 べ る 単 一 フ ォ ト ン 断 層 撮 影 法 (SPECT)や グ ル コ ー ス 代 謝 量 を 調 べ る ポ ジ ト ロ ン 断 層 撮 影 法 (PET)の ほ か に 、 脳 の 各 部 の 容 積 情 報 を 知 る 核 磁 気 共 鳴 画 像 法

(MRI)

が あ る が 、 研 究 が 蓄 積 さ れ る に つ れ て 、 前 頭 葉 と と も に 皮 質 下 の 働 き も 重 要 な 働 き を し て い る こ と が 明 ら か に な っ て き た の である。 ( 4 ) 行 動 抑 制 の 障 害 説 脳 画 像 研 究 の 成 果 を 踏 ま え 、 前 頭 葉 と 皮 質 下 の 相 互 作 用 を 重 視 し た の が 行 動 抑 制 の 障 害 説

(

B

a

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k

l

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y

1

9

9

7

)

で あ る 。 行 動 抑 制 と は 刺 激 が 誘 発 し そ う に な る 優 勢 な 反 応 を 遅 ら せ た り 、 進 行 中 の 行 動 を 停 止 し た り す る こ と で あ る。

ADHD

児 に 認 め ら れ る 衝 動 性 に は こ の よ う な 行 動 抑 制 の 障 害 が あ り 、 そ れ が 本 質 的 な 問 題 で あ っ て 、 不 注 意 や 多 動 は 行 動 抑 制 の 障 害 を 基 礎 に し て 現 わ れ た も の と 考 え る 。 行動抑制に障害があると、刺激と反応の問に「高J (遅延時間)を入れられない。 そ れ は 、 考 え て か ら 行 動 す る こ と が で き な い こ と を 意 味 す る。「考えてから行動す るJの 「 考 え て か らJの 過 程 を い つ も 飛 び 越 し て し ま う の で 、 新 し い 解 決 が 必 要 な 状 況 で 、 目 標 を 達 成 す る う え で 必 要 な 種 々 の 力 が 育 た な い こ と に な る。神 経 心 理 学 で は 、 こ れ を 「 実 行 機 能j と言うが、「コトをすすめる力j と言い換えること ができる。

B

a

r

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y

は 、 行 動 抑 制 を 基 礎 に し て 形 成 さ れ る 4つ の 実 行 機 能 を 重 視 し た 。 そ れは、 1)非言語的ワーキング・メモリ、 2) 言 語 的 ワ ー キ ン グ ・ メ モ リ ( 内言、 ないしは内的言語)、 3) 情 緒 ・ 動 機 づ け ・ 覚 醒 の 調 節 、 4)再構築、である。

B

a

r

k

l

e

y

(1

9

9

7

)

は、

ADHD

の 場 合 、 行 動 抑 制 に 障 害 が あ る た め 、 こ れ ら が う ま く 育たないと考えたのである。 第

2

B

a

r

k

l

e

y

の ハ イ ブ リ ッ ト ・ モ デ ル と そ の 発 達 的 特 徴

1.ADHD

の 基 本 的 障 害 は 何 か

ADHD

に つ い て は 、 こ れ ま で い ろ い ろ な 説 が 提 起 さ れ た。

ADHD

は 低 覚 醒 状 態 に あ る た め 自 己 刺 激 に よ っ て 高 め て い る と す る 「 覚 醒 水 準 の 障 害 説J

(

Z

e

n

t

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1

9

8

8

)

が提起された。また、

ADHD

の 行 動 が 報 酬 の 有 無 に 強 く 影 響 さ れ る こ と か ら、かつて「動機づけの障害説J

(Glow

&

Glow

1979)

が提起された。さらに、

ADHD

を 情 報 の 統 合 、 プ ラ ン ニ ン グ 、 調 節 と い う 高 次 な 前 頭 葉 機 能 の 障 害 だ け で

(10)

と ら え る 「 前 頭 葉 機 能 障 害 説J(例えば

Shue

&

Douglas

1

9

9

2

)

が 出 さ れ た 。 し かし、これらの仮説は

ADHD

の 一 面 は 説 明 で き て も 、 全 体 を 説 明 し う る も の で は ないという問題があった。 これに対して、

8

a

r

k

l

e

y

(1

9

9

7

)

の行動抑制の障害説は、

ADHD

の 発 現 メ カ ニ ズ ム を 明 ら か に し た だ け で な く 、 従 来 の 仮 説 を 統 合 し 、 発 展 さ せ た 点 で 注 目 に 値 する。

B

a

r

k

l

e

y

は 、 行 動 抑 制 の 障 害 を 重 視 し た 自 分 の モ デ ル を ハ イ ブ リ ッ ド ・ モ デ ル 、 す な わ ち 「 混 成 モ デ ルJ と呼んだ。それは、従来の

ADHD

に 関 す る 理 論 の 長 所 を 総 合 的 に 取 り 入 れ た と い う 意 味 が 含 ま れ て い る か ら で あ るb 図 1は 、 モ デ ル を 簡 略 化 し た も の だ が 、 次 に モ デ ル の 構 成 要 素 を 個 別 に み た う え で 、 そ れ ら の 発達的検討を行うことにする。 非言語的ワーキン グ・メモリの障害 行動抑制の障害

I

4

4つの実行機能

c

r

コトを進める力J)の障害 言語的ワーキング

1

1

情緒・動機づけ・

1

1

1

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8

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1

1

再構築の障害

1

・メモリの障害

1

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覚醒の調節の障害

1

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1

工工

│注意と運動のコントロール障害

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ADHD

に関するハイプリッド・モデル

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1

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9

7

を改変) 2. 行 動 抑 制 の 障 害

ADHD

は 、 も と も と 問 題 が 不 注 意 や 多 動 性 に あ る の で は な く 、 症 状 の 中 心 は 衝 動 性 に あ る こ と が 明 ら か に な っ て き た

(

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は 、 こ の よ う な 衝 動 性 の 背 景 に あ る 行 動 抑 制 の 障 害 を

ADHD

の 本 質 的 障 害と考えた。

DSM-

N

ADHD

診断基準にもとづけば、

ADHD

には

3

つのサプ タイプ(多動・衝動優勢型

ADHD

、不注意優勢型

ADHD

、混合型

ADHD)

があるが、

B

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y

のモデルは、多動・衝動優勢型

ADHD

と混合型

ADHD

に 関 す る も の で あ り 、 不 注 意 優 勢 型

ADHD

は異質なものとして除外してとらえられている。 さ て 、 こ の よ う な 行 動 抑 制 の 障 害 が あ る と 刺 激 と 反 応 の 問 に 「 商J(遅延時間) を 入 れ ら れ な い 。 そ れ は 考 え て か ら 行 動 す る こ と が で き な い こ と を 意 味 す る 。 人 の 話 を よ く 聞 か な い で 答 え た り 、 車 が 来 な い こ と を よ く 確 認 し な い で パ ッ と 道 路 に飛び出したりする。 行 動 抑 制 と は 、 刺 激 が 誘 発 し そ う に な る 反 応 を 抑 制 し た り 、 進 行 中 の 反 応 を 停 止 さ せ る こ と で あ る 。 典 型 的 な 実 験 に 、

Go/No

Go

課 題 が あ る 。

Shue

&

(11)

-Douglas(1992)は 、 リ ン ゴ と ア イ ス ク リ ー ム の 絵 カ ー ド を ラ ン ダ ム な 順 序 で 呈 示 し ( 刺 激 聞 の 間 隔 は 1秒 間 ) 、 リ ン ゴ の 絵 に は ボ タ ン を 押 し 、 ア イ ス ク リ ー ム の 絵には押さないように教示した。そうすると、

ADHD

児 は 反 応 す べ き で な い 絵 カ ー ド に ま で 反 応 し て し ま う の で 、 成 績 は 健 常 児 よ り も 低 か っ た。また、

S

t

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p

課 題 も 行 動 抑 制 を よ く 表 わ す 。 こ の 課 題 は コ ン ピ ュ ー タ の 画 面 中 央 に X か O の文字が 現われ、各々に対応するボタンをできるだけ速く押すのだが、文字と同時に音(ス ト ッ プ 信 号 ) が 鳴 っ た と き に は 反 応 し な い 左 い う 約 束 さ れ た 。 し か し 、 こ の よ う な約束にもかかわらず、

ADHD

児 は 進 行 中 の 反 応 を 抑 制 す る こ と が 困 難 で あ っ た のである

(

S

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l., 1993)。

3

.

非 言 語 的 ワ ー キ ン グ ・ メ モ リ の 障 害 行 動 抑 制 の 障 害 に よ っ て 、 非 言 語 的 ワ ー キ ン グ ・ メ モ リ の 障 害 を も た ら す。非 言語的ワーキング・メモリは、「過去の経験で得た感覚・運動的情報を一時的に思 い 出 し 、 そ れ を 行 動 や 決 断 に 生 か す 力j で あ る 。 こ の よ う な 力 が

A D H D

児で弱 い こ と は 、 遅 く な っ て も 家 に 帰 ら な い 、 忘 れ 物 が 多 い 、 物 を よ く な く す 、 な ど に 見 ら れ る 。 つ ま り 、 時 間 観 念 の 減 少 は 、 過 去 を 想 起 す る だ け で な く 将 来 に 対 す る 思慮、の弱さをもたらす。

ADHD

児 の 非 言 語 ワ ー キ ン グ ・ メ モ リ の 弱 さ は 、 実 験 で も 示 さ れ て い る 。 時 間 評 価 の 実 験 は 、 指 示 さ れ た 時 間 が 経 過 し た 時 点 で 被 験 児 に 何 ら か の 合 図 を さ せ る 方法をとるが、

ADHD

児 は 健 常 児 に 比 べ て 実 際 の 経 過 時 聞 と の 間 の 誤 差 が 大 き い だけでなく、 15秒、 30秒、 60秒 の よ う に 、 推 定 さ せ る 時 間 間 隔 が 長 く な る ほ ど 誤 差 が 拡 大 す る

(

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l

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,.l 1977)。 ま た 、 特 定 の 文 字 呈 示 に で き る だ け 早 く反応させる課題では、

ADHD

児 は 準 備 的 構 え の 弱 さ が あ る の で 、 刺 激 呈 示 間 隔 が 長 び く ほ ど が 反 応 が 著 し く 遅 れ る

(Cheee

t

a

,.l 1989)。 さ ら に 、 手 の 動 作 系 列 を う ま く 模 倣 で き な い (Grodzinsky& Diamond,1992)。これらの実験結果は、 非言語的ワーキング・メモリの弱さを裏付けるものである。このような弱さがある と 、 過 去 、 現 在 、 未 来 の つ な が り が 希 薄 で 行 動 の コ ン ト ロ ー ル に は 多 大 な 悪 影 響 を及ぼすことが考えられる。 4. 言 語 的 ワ ー キ ン グ ・ メ モ リ の 障 害 行 動 抑 制 の 障 害 は 、 言 語 的 ワ ー キ ン グ ・ メ モ リ の 障 害 を も た ら す 。

ADHD

児 で は 内 言 ( 内 的 言 語 ) の 働 き 、 す な わ ち 「 心 の 中 で 自 分 と 対 話 す る 力 」 が 十 分 に 育 たない。それは、日常生活でも観察される。例えば、

ADHD

児 は 話 す 必 要 な い こ と を 喋 り 過 ぎ る 反 面 、 冷 静 に 考 え る べ き 場 面 で は 自 分 に 向 け ら れ る 会 話 が 極 め て 少 な い た め に い ろ い ろ な 間 違 い が 多 い 。 ま た 、 内 言 が 弱 い と 、 ル ー ル の あ る 遊 び ゃ 道 徳 的 推 理 も 困 難 に な る 。 さ ら に 、 言 語 的 、 非 言 語 的 な ワ ー キ ン グ ・ メ モ リ の n u

(12)

障 害 は 自 己 認 識 に 弱 さ を も た ら す 。 例 え ば 、 親 や 教 師 が 自 分 の こ と で 心 配 し て い て も 、 本 人 は か な り 違 っ た 認 識 を し て い る こ と が あ る 。

ADHD

児 の 言 語 的 ワ ー キ ン グ ・ メ モ リ の 弱 さ は 、 実 験 的 に も 示 さ れ て い る 。 例 えば、

ADHD

児 は 数 の 復 唱 課 題 が 困 難 で あ る と か

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1

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、 暗 算 課 題 が 困 難 で あ る

(Akermane

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1

9

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)

の も 言 語 的 ワ ー キ ン グ ・ メ モ リ の 弱さに関係している。

Berk

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Potts(99

1)は、

ADHD

児 と 健 常 児 を 対 象 に 、 算 数 問 題 解 決 中 の つ ぶ や きについて検討し、

ADHD

児 は 健 常 児 に 比 べ て 外 言 か ら 内 言 へ の 移 行 が 遅 れ る こ と を 示 し た 。 す な わ ち 、 健 常 児 は

6""7

歳 で 声 に は 出 な い が 発 話 時 の よ う な 舌 や 唇 の 動 き が 多 く 認 め ら れ た の に 対 し て 、

ADHD

児 は 明 確 に 聞 き 取 れ る 自 己 会 話 (つぶやき)が目立った。しかし、

ADHD

児も

8

9

歳から

1

2

歳 に な る と 、 芦 には出ない自己会話が増える傾向がみられた。

5

.

情 緒 ・ 動 機 づ け ・ 覚 醒 の 自 己 調 節 の 障 害 行 動 抑 制 の 障 害 は 、 情 緒 ・ 動 機 づ け ・ 覚 醒 の 自 己 調 節 、 す な わ ち 「 気 分 を 切 り 換 え た り 、 や る 気 を 起 こ し て 持 続 さ せ る カ 」 に ま で 悪 影 響 を 及 ぼ す 。 こ の よ う な 力が

ADHD

児 で 弱 い こ と は 、 日 常 生 活 で 観 察 さ れ る 。 カ ッ と な っ て 相 手 を た た い て し ま う 、 す ぐ 飽 き て し ま う 、 授 業 中 席 に 座 っ て お れ ず 立 ち 歩 く な ど は 、 こ の よ うな力の弱さを示している。 それは実験的でも示されている。

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Douglas(983)

は 、 呈 示 さ れ る

2

つ の 絵 刺 激 の う ち 、 あ る 概 念 ( 例 え ば 花 ) に 該 当 す る 絵 を 選 ぶ た び に 後 で お 金 に 交 換 さ れ る オ ハ ジ キ が も ら え る 連 続 強 化 条 件 と 、 正 し い 絵 を 選 ん だ と き は 黒 か 白 の オ ハ ジ キ が 半 々 の 割 合 で 渡 さ れ る が 、 白 い オ ハ ジ キ だ け が 換 金 さ れ る 部 分 強 化 条 件 に お け る 概 念 同 定 実 験 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 連 続 強 化 条 件 で は

ADHD

児 と 健 常 児 に 差 は な か っ た が 、 部 分 強 化 条 件 で は 欲 求 不 満 と 動 機 づ け の 低 下 に よ っ て

ADHD

児は顕著な成績の低下を示した。 また、

ADHD

児 ・ 者 は 、 ヴ ィ ジ ラ ン ス 課 題 で も 覚 醒 の 調 節 が 困 難 な こ と が 明 ら か に さ れ て い る 。 こ の 課 題 は 、 単 純 な 作 業 を 長 時 間 さ せ 、 時 間 経 過 と と も に 反 応 成 績 が 低 下 し て い く 様 子 と ら え る も の で あ る が 、 連 続 的 遂 行 課 題

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もその一つである。

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課 題 は 、 視 覚 的 な い し は 聴 覚 的に数字か文字が一つずつランダムに与えられるが、被験者がボタンを押すのは、 例 え ば

9

に続いて

1

が 呈 示 さ れ た と き だ け だ と す る 。 こ の 課 題 で

ADHD

児・者が 示 す 特 徴 は 、 見 逃 し 反 応 や お 手 つ き 反 応 (9以 外 の 数 に 続 い て 1が 呈 示 さ れ た 時 まで反応する)が多く、反応成績が低いことである。

6

.

再 構 築 の 障 害 4 2 A

(13)

行 動 抑 制 の 障 害 は 再 構 築 の 障 害 ま で も ら ら す こ と に な る 。 再 構 築 左 は 、 「 情 報 を 部 分 に 分 解 し ( 分 析 ) 、 再 組 織 し て 全 く 新 し い 情 報 と し て と ら え る 力 ( 総 合 )Jで あ る 。 そ れ は 、 目 標 を 実 現 す る と き 、 過 去 の 行 動 の 構 造 を 分 割 し 、 全 く 新 し い 行 動 を っ く り あ げ る こ と で も あ る 。 新 し い 行 動 は い ろ い ろ あ り う る が 、 そ の 場 に 最 も ふ さ わ し い も の が 選 択 さ れ る 。 そ の 選 択 は 、 頭 の 中 の シ ュ ミ レ ー シ ョ ン ( 思 考 実 験 ) で 行 わ れ る 。 再 構 築 の 力 が な い と 、 行 動 に 計 画 性 、 柔 軟 性 、 創 造 性 が な く なる。

ADHD

児 に お け る 再 構 築 の 弱 さ は 、 日 常 生 活 の 行 動 や 発 話 に 見 ら れ る 。 す な わ ち 、 計 画 性 が な い た め 行 動 が 場 当 た り 的 で あ る と か 、

ADHD

児 が 話 す の を 聞 い て い て も 話 題 が 頻 繁 に 飛 ぶ の で 理 解 で き な い こ と が し ば し ば あ る 。 再 構 築 を よ く 表 わ す 実 験 と し て 語 の 流 暢 性 課 題 が あ る 。 こ の 課 題 は 、 あ る 文 字 で 始 ま る 単 語 を

1

分 以 内 に で き る だ け た く さ ん 口 頭 で 言 わ せ る も の だ が 、

ADHD

児 は 健 常 児 に 比 べ て 有 意 に 少 な か っ た ( 近 藤 、

1

9

9

6

)

。 ま た 、 再 構 築 の 障 害 は 物 語の叙述にも現われる。

Tannocke

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l.(1

9

9

2

)

の研究では、

ADHD

児 と 健 常 児 は 物 語 の 内 容 理 解 に は 差 は な い が 、 そ れ を 人 に 伝 え る 形 で 叙 述 さ せ る と 順 序 を 間 違 え た り 、 適 切 な 語 を 選 択 で き な か っ た 。 こ れ は 、 発 話 内 容 を 分 析 し 総 合 す る 力 や 発 話 活 動 を モ ニ タ ー す る 力 が 弱 い か ら で あ る 。 7. 行 動 の 自 己 コ ン ト ロ ー ル 障 害 行 動 抑 制 の 障 害 と 、 そ れ に 起 因 し た 4つ 実 行 機 能 の 障 害 が 結 び つ く と 、 運 動 の コ ン ト ロ ー ル 障 害 を 導 く

(

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1

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)

。これまでの研究によれば、

ADHD

児 は フ ィ ン ガ ー ・ タ ッ ピ ン グ テ ス ト や ベ グ ボ ー ド ( 玉 は め ) 課 題 の よ う な 単 純 な 運 動 に は 問 題 な い が 、 よ り 複 雑 な 協 調 動 作 が 必 要 な 課 題 で は 困 難 で あ る こ と が 明 ら か に さ れ て い る 。 特 に 、 運 動 系 列 を 含 む 課 題 は 困 難 で 、 手 の 動 作 系 列 の 模 倣 は 低 い こ と が 認 め ら れ て い る

(

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Diamond

1

9

9

2

)。また、

ADHD

児 の 運 動コントロール障害には、誤りに対する感受性の低下、行動の時間的構造の崩壊、 中 断 し た 活 動 に 戻 る こ と の 難 し さ 、 が あ る と 考 え ら れ て い る 。 さて、

B

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は 実 行 機 能 の 障 害 の 結 果 と し て 運 動 の コ ン ト ロ ー ル 障 害 を 考 え た 。 し か し 、 運 動 の コ ン ト ロ ー ル カ が 低 下 す る と は 、 行 動 が そ の 場 の 状 況 に 左 右 さ れ る こ と で あ る 。 そ の 結 果 、 触 ら な い よ う に 言 わ れ て い て も 触 っ た り 、 課 題 に 関 係 の な い 刺 激 に 気 が 散 っ た り す る 。 図 1で 「 注 意 と 運 動 の コ ン ト ロ ー ル 障 害J とした理由は、運動面の問題だけではなし、からである。従来、

ADHD

は不注意と か 多 動 性 と い う 言 葉 で 表 現 さ れ て き た が 、 結 局 の と こ ろ 知 覚 と 運 動 の コ ン ト ロ ー ル 障 害 で あ り 、 行 動 の 自 己 コ ン ト ロ ー ル 障 害 で あ る 。 行 動 を コ ン ト ロ ー ル で き な い と い う こ と は 、 未 来 に 向 け て 行 動 を 組 織 化 す る 力 が な い こ と で あ る 。

8

.

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の モ デ ル と 脳 の 働 き 内 , u 噌 EA

(14)

脳画像法の研究から、実行機能が脳のどのような働きと関係するのかについて、 仮 説 的 段 階 で は あ る が 、 示 唆 さ れ て い る 。 そ の よ う な 研 究 は 、 各 実 行 機 能 に 関 係 す る 課 題 を 健 常 者 に さ せ た 時 に 脳 の 活 性 化 す る 領 域 を 調 べ る 方 法 を と っ た 。 そ れ に よ る と 、 行 動 抑 制 は 眼 宮 前 頭 前 野 の 働 き に 関 係 す る こ と が 示 さ れ た が 、 行 動 抑 制 に は 眼 寓 前 頭 前 野 と と も に 尾 状 核 も 重 視 さ れ て い る 。 ま た 、 非 言 語 的 お よ び 言 語 的 ワ ー キ ン グ ・ メ モ リ は 各 々 右 半 球 と 左 半 球 の 背 側 前 頭 前 野 の 働 き で あ る こ と を 示 す 結 果 が 得 ら れ て い る 。 さ ら に 、 情 緒 ・ 動 機 づ け ・ 覚 醒 の 自 己 調 節 は 、 脳 画 像 法 の 研 究 で 前 頭 前 野 の 腹 内 側 領 域 が 重 要 で あ る こ と を 示 す 結 果 が あ る が 、 前 頭 葉 損 傷 患 者 に ヴ ィ ジ ラ ン ス 課 題 を 行 わ せ た 研 究 で は 、 右 半 球 の 前 頭 前 野 ( 特 に 前 頭 極 ) も 重 視 さ れ て い る 。 し か し 、 再 構 築 に 関 し て は 、 ワ ー キ ン グ ・ メ モ リ が 関 係 す る 背 側 前 頭 前 野 と 重 な り 、 明 確 に 区 別 で き て い な い こ と か ら 、 再 構 築 は ワ ー キング・メモリが後に高次化したものではないかという議論がある。その意味で、 再 構 築 と ワ ー キ ン グ ・ メ モ リ の 関 係 に つ い て は 今 後 の 検 討 が 必 要 で あ る 。 な お 、 行 動 抑 制 が 眼 宮 前 頭 前 野 と 尾 状 核 を 結 ぶ 神 経 回 路 に 関 係 す る が 、 こ の 神 経 回 路 は

ADHD

の 発 現 に 注 目 さ れ て い る 神 経 伝 達 物 質 ド ー パ ミ ン が 支 配 す る 領 域である。 ド ー パ ミ ン は 、 情 動 や 運 動 の 働 き に 関 係 し た ニ ュ ー ロ ン の 働 き を 調 節 す る 。 ニ ュ ー ロ ン の 接 合 部 分 は シ ナ プ ス と 呼 ば れ 、 二 つ の ニ ュ ー ロ ン 問 に は す き 間 ( シ ナ プ ス 間 隙 ) が あ る 。 こ の す き 間 で ド ー パ ミ ン の 受 け 渡 し が 行 わ れ る が 、 そ の 受 け 渡 し に 関 与 す る ド ー パ ミ ン の レ セ プ タ ー ( 受 容 体 ) と ト ラ ン ス ポ ー タ ー の 性 能 に 関 係 し て い る と 考 え ら れ て い る 。 す な わ ち 、 シ ナ プ ス 間 隙 に 放 出 さ れ た ド ー パ ミ ン が 次 の 神 経 細 胞 側 の レ セ プ タ ー で う ま く キ ャ ッ チ さ れ な い か 、 キ ャ ッ チ さ れ な か っ た ド ー パ ミ ン を 再 利 用 す る た め に 働 く ト ラ ン ス ポ ー タ ー の 回 収 が 早 過ぎてしまうことによる、と考えられている。

9

.

Barkley

の モ デ ル と 発 達 的 特 徴 さ て 、 先 に 述 べ た よ う な 実 行 機 能 は 、 一 度 に 出 現 す る よ う な も の で は な い 。

Barkley

は 、 個 々 の 実 行 機 能 は 異 な る 年 齢 で 発 達 す る が 、 重 複 し て 発 達 す る 時 期 もある、と考えている。 さ て 、 す べ て の 実 行 機 能 の 形 成 に 影 響 す る と さ れ る 行 動 抑 制 は 、 い つ 頃 か ら 発 達するのだろうか。

Barkley

に よ る と 、 行 動 抑 制 は 誕 生 直 後 と し ば ら く の 聞 は 備 わ っ て お ら ず 、 満 1歳 頃 か ら 発 達 し 始 め 、 そ の 後 数 年 に わ た っ て 発 達 し 続 け る も の と 考 え て い る 。 こ の 問 題 に つ い て は 、 健 常 乳 幼 児 を 対 象 と し て 行 わ れ た 遅 延 反 応の発達的研究が重要な手がかりを与えてくれる。

Diamond

&

Goldman

-

Rakic

(1989)

は、生後

7

8

か月から

1

年 目 に か け て 遅 延 反 応 が 急 激 に 発 達 す る こ と を 明 ら か に し て お り 、 そ の 後 も 児 童 期 に か け て 発 達 し て い く と 考 え ら れ て い る 。 非 言 語 的 ワ ー キ ン グ ・ メ モ リ に つ い て は 、 行 動 抑 制 と 並 ん で 発 達 の 早 い 段 階 で 円 べ U ' z i

(15)

出 現 す る と 考 え ら れ て い る。そ れ は 、 発 達 の 早 い 段 階 か ら 徐 々 に 遅 延 反 応 が 可 能 に な っ て い く こ と で 示 さ れ る。遅 延 反 応 実 験 で は 、 行 動 抑 制 と と も に 非言語的ワ ー キ ン グ ・ メ モ リ が 反 応 の 成 否 を 決 定 す る 重 要 な 要 素 と な る。し か し 、 反 応 抑 制 と 非 言 語 的 ワ ー キ ン グ ・ メ モ リ は 別 個 の 機 能 で あ る。Barkleyは、出来事のイメ ー ジ を 心 の 中 に 保 持 す る こ と 、 未 来 の で き ご と を 思 い 浮 か べ る こ と 、 時 間 感 覚 の 発達は、 2歳 か ら 4歳 頃 に か け て 急 激 に 発 達 す る と 考 え て い る。なぜならば、 子 ど も を 対 象 と し た 位 置 に 関 す る 記 憶 課 題 が 非 常 に 発 達 す る の も

3

歳から 4歳 頃 で あるからである。 次 に 、 情 緒 ・ 動 機 付 け ・ 覚 醒 の 自 己 調 節 は、Barkleyによると、 2歳 こ ろ か ら 4 歳 頃 に か け て 著 し く 発 達 す る と 考 え て い る。しかし,

2

歳 以 前 で は 、 こ の よ う な 力 が 問 題 に な ら な い の か と い う と 、 そ う で は な い。子 ど も 一 人 ひ と り の 気 質 の 違 い に よ っ て 情 緒 の 現 れ も 違 っ て く る こ と が も っ と 早 い 発 達 の 段 階 で 見 ら れ る から である。ま た 、 情 緒 の 調 節 に お け る 初 歩 的 形 態 の よ う な も の は 3か月から 9か月 の 乳 児 に も 見 ら れ る こ と を

Kopp(989)

が 明 ら か に し て い る。す な わ ち 、 こ の段 階 の 子 ど も は 情 緒 を コ ン ト ロ ー ル す る 手 段 と し て 、 視 線 回 避 や 騒 ぎ 立 て を す る と いう。そ し て 、 そ の 数 か 月 後 に は 、 不 快 や 悲 し み が 現 わ れ る 場 面 で は 、 オ モ チ ャ で 気 晴 ら し を す る と か 、 誰 か の 身 体 を 触 る 、 自 分 の 指 を 吸 う 、 な ど の 行 動 を と る ようになる。

Kopp

に よ る と 、 幼 児 は 生 後

2

年 目 か ら

3

年 目 ま で に は 自 己 認 識 を 発 達 さ せ る と い う 。 こ の 時 期 の 幼 児 は 、 自 分 の 情 緒 に 気 づ く だ け で は な く 、 そ れ に 対 処 す る た め の 何 ら か の 術 を 身 に つ け る こ と が で き る。例 え ば 、 情 緒 な 苦 痛 を 低 減 さ せ る た め 、 幼 児 は お 気 に 入 り の オ モ チ ャ や ブ ラ ン ケ ッ ト を 離 さ な い。ま た 、 言 語 の 発 達 は、情 緒 の 調 節 を す る う え で 重 要 な 手 段 と な る。1歳 半 か ら 2歳 半 に か け て 見 ら れ る 言 語 能 力 の 著 し い 発 達 と 相 応 す る 形 で 、 幼 児 は 自 分 の 気 持 ち に つ い て 話 す よ う に な る 。 こ の よ う な 言 語 は 、 養 育 者 を 情 緒 の 調 節 過 程 に 組 み 入 れ 、 他 者 の 励 ま し ゃ 教 え を 幼 児 が 自 分 の 情 緒 を 調 節 す る 手 段 と し て 利 用 す る よ う に な る。そし て 、 最 終 的 に は 、 独 り 言 の 形 で 行 わ れ る 自 分 に 向 け ら れ た 発 話 が 、 安 心 す る た め の 手 段 に な る 。 こ の よ う な 自 己 志 向 的 言 語 は 動 機 付 け や 、 覚 醒 の 調 節 手 段 に も な る 。 さ ら に 、 情 緒 の 調 節 で 忘 れ ら れ な い 要 因 は 、 他 の 子 ど も と の 関 係 で あ る。た と え ば 、 幼 児 期 に 自 分 を 強 く 押 し 出 す こ と ( 自 己 主 張 ) は 、 し ば し ば 他 児 と の ぶ つ か り 合 い に な る。こ の 場 合 、 相 手 の 子 ど も の 気 持 ち に 気 づ く だ け で は な く 、 仲 良 く 遊 び た か っ た な ら 相 手 の 子 ど も の 言 い 分 や 大 人 の 言 い 分 を 受 け 入 れ な け れ ば ならないことを学ぶようになる。 こ の よ う に 、 情 緒 ・ 動 機 づ け ・ 覚 醒 の 調 節 は 長 い 発 達 の 過 程 で 形 成 さ れ て く る も の で あ る が 、 そ の 始 ま り は 内 的 言 語 が 出 現 す る 以 前 か ら 認 め ら れ る の で あ る。 次 に 、 言 語 的 ワ ー キ ン グ ・ メ モ リ の 発 達 に つ い て 述 べ る 。 言 語 的 ワ ー キ ン グ ・ d 品 a 唱 EA

(16)

メ モ リ の 発 達 を 考 え る う え で 大 切 な の は 、 内 言 の 発 達 を と ら え る こ と で あ る 。 発 達 心 理 学 的 研 究 に よ る と 、 話 し こ と ば が 独 り 言 ( セ ル フ ス ピ ー チ ) の よ う な 形 を と り な が ら 、 徐 々 に 私 的 で 、 非 顕 在 的 で 、 内 化 し た も の に な っ て い く こ と は 自 己 コ ン ト ロ ー ル の 発 達 に お い て 重 要 で あ る こ と を 示 し て い る ( 例 え ば 、 Berk,1992)。 独 り 言 が よ く 現 わ れ る の は

3

歳 か ら

5

歳 で あ る が 、 こ の 段 階 で は 外 的 に 観 察 で き る形であらわれる点に特徴がある。それが、 Luria(973)の 随 意 運 動 の 発 達 に 関 す る一連の研究から明らかにされたように、 5歳を過ぎた頃から徐々に内在化し、 声 を 出 し な が ら 行 為 す る よ り も 黙 っ て 行 為 し た 方 が う ま く で き る よ う に な っ て く る 。 そ し て 、 こ の よ う な 内 在 化 は 、 初 等 教 育 の 初 期 段 階 を 通 し て さ ら に 進 ん で い き、9歳から 12歳 ま で に は 内 言 が 優 勢 な 形 で 認 め ら れ る よ う に な る (Berk,1992)。 こ の よ う な 内 言 の 発 達 は 、 先 に 述 べ た 実 行 機 能 に 大 き な 影 響 を 与 え る ば か り で は な く 、 運 動 の コ ン ト ロ ー ル に も 、 そ の 力 を 発 揮 す る よ う に な る 。 さ て 、 次 は 再 構 築 の 発 達 に つ い て 考 え て み る 。 再 構 築 と は 、 反 応 選 択 肢 の 中 か ら 、 あ る も の を 選 ぶ 前 に 内 的 に 行 動 の シ ュ ミ レ ー シ ョ ン を 行 い 、 起 こ り う る 結 果 に つ い て テ ス ト す る こ と で あ っ た 。 こ の よ う な 実 行 機 能 は 、 内 言 が 十 分 に 発 達 し て い な い 5歳 頃 ま で に は 発 達 し て い な い こ と は 明 ら か で あ る 。 Barkley (1997) は 、 「 再 構 築 は 自 己 志 向 的 な 操 作 、 実 験 、 な い し は 遊 び の 形 を と るjこ と だ と す れ ば 、 再 構 築 の 発 達 に 関 す る 問 題 の 答 え は 、 遊 び の 発 達 的 研 究 に 見 出 す こ と が で き るとし、想像遊びCimaginativeplay)や 空 想 遊 び(fantasyplay)に注目している。 また、 Barkleyは 、 語 の 流 暢 性 や デ ザ イ ン 図 形 の 流 暢 性 と い っ た 神 経 心 理 学 的 検 査 が 、 創 造 性 に 関 係 す る 再 構 築 の 発 達 過 程 を 知 る 手 が か り に な る と 考 え て い る 。 さ ら に 、 こ の よ う な 再 構 築 の 働 き は 、 発 達 心 理 学 的 研 究 で は プ ラ ン ニ ン グ の 研 究 に 重 な る と こ ろ が 大 き い と 考 え て い る 。 プ ラ ン ニ ン グ の 発 達 に よ る と 、 そ の 初 期 的 形 態 は 既 に 就 学 前 期 ( 特 に 5歳 ) に あ る が 、 プ ラ ン の 形 成 と 実 行 、 修 正 、 結 果 の 確 認 を 含 む 本 格 的 な 調 節 は 、 児 童 期 後 期 か ら 青 年 期 に か け て 可 能 に な っ て い く ものである。 Barkley自 身 は 、 再 構 築 は 何 歳 頃 か ら 始 る の か 不 明 で あ る と し な が ら も 、 敢 え て 言 え ば 7歳から 12歳 と し て い る よ う に 、 こ れ ま で 述 べ て き た 行 動 抑 制 を 含 む 4つ の 実 行 機 能 よ り も 遅 れ て 発 達 す る と 考 え て い る 。 Barkley (2000)は、 ADHDの 子 ど も で は 、 行 動 抑 制 の 障 害 が 原 因 と な っ て 、 そ れ 以 外 の 4つ の 実 行 機 能 の 発 達 が 開 始 す る 時 期 が 他 の 同 年 齢 の 子 ど も よ り も 遅 れ る こ と が 、 将 来 の 研 究 で 示 さ れ る も の と 推 測 し て い る 。 Barkleyが 提 起 し た モ デ ル に 示 さ れ た よ う な 実 行 機 能 が 確 認 で き る か ど う か 、 ま た 、 そ の よ う な 要 因 が 確 認 で き る と す れ ば 、 発 達 過 程 の し 、 か な る 段 階 で 現 わ れ る の か 、 に つ い て 検 討 さ れる必要があると思われる。 に d

(17)

3

節 幼 児 期 の

ADHD

児 の 特 徴 幼 児 期 の

ADHD

児 の 特 徴 を 具 体 的 に 明 ら か に す る た め に 、 乳 児 期 か ら の 連 続 性 に お い て と ら え な け れ ば な ら な い。そ こ で 、 本 節 で は 、 乳 児 期 、 幼 児 期 前 期 、 幼 児 期 後 期 に お け る

ADHD

児 の 特 徴 に つ い て 検 討 す る こ と に し た い。こ こ で 紹 介 す る内容は、

ADHD

児 を 持 つ 保 護 者 が 子 育 て を 振 り か え っ て 話 し た こ と か ら 明 ら か に な っ た 特 徴 で あ る。 1.乳児期 (0---1歳)

ADHD

児 の 母 親 に 、 乳 児 期 の 特 徴 に つ い て 思 い 出 し て も ら う と

2

つのタイ プの 赤 ち ゃ ん が 明 ら か に な っ て く る。 1つ の タ イ プ は 、 動 き が 過 剰 で 、 た え ず 体 を 動 か し て 上 に 掛 け た シ ー ツ を 挑 ね 除 け た り 、 オ ム ツ を 換 え る の も 苦 労 す る 乳 児 で あ る。刺 激 に 対 し て 敏 感 で 泣 い た り 、 む ず か っ た り す る こ と が 多 い。ま た 、 か ん し ゃ く を よ く 起 こ し た り 、 だ っ こ を 嫌 が る こ と も あ る。さ ら に 、 泣 く と ど う あ や し て も 泣 き 止 ま な い 、 夜 泣 き が 激 し い 、 睡 眠 や 食 事 な ど の 生 活 リ ズ ム が 不 規 則 、 な ど 気 難 し く て 育 て に く い 子 で あ る。こ の よ う な 乳 児 は 、 オ モ チ ャ を 与 え て も か か わ る 時 間 が 短 い。 もう 1つ の タ イ プ は 、 動 き は む し ろ 少 な く 、 お と な し く て 手 の か か ら な い 子 ど もである。こ の よ う な 傾 向 は 、 精 神 遅 滞 児 や 自 閉 症 児 の 乳 児 期 に も 見 ら れ る 特 徴 で あ り 、 周 囲 へ の 関 心 や 探 索 活 動 の 低 さ を 反 映 し て い る。 しかし、 1歳 を 過 ぎ て 歩 き 始 め る と 、 ど ち ら の タ イ プ も 動 き が 激 し く な り 、 危 な く て 目 が 離 せ な く な る 。 ま た 、 呼 び か け に 応 え な い の で 聞 こ え て い な い の で は ないかと疑われ、耳鼻科を受診した子どももいる。 さ て 、 こ の よ う な 子 ど も の 場 合 、 子 ど も 自 身 が も っ 脆 弱 性 に 加 え て 、 育 て る 側 の 問 題 も 考 え て お く 必 要 が あ る 。 つ ま り 、 子 ど も の 側 の 要 因 が 母 親 に 子 育 て に 傾 倒していけない困難な要因をっくりだし、「可愛し、J

e

か「し、とおししリという感 情 よ り も 、 わ が 子 に 対 し て 否 定 的 な 感 情 ば か り を 生 じ さ せ て し ま う 。 ま た 、 こ の よ う な こ と か ら 母 子 関 係 に 歪 み が 生 じ る と 、 養 育 者 は 周 囲 の 理 解 が 得 ら れ ず 、 孤 立 し て い く 危 険 性 を も っ て い る 。 こ の よ う な 母 子 関 係 の 最 初 の つ ま づ き か ら 虐 待 や ネ グ レ ク ト に つ な が る ケ ー ス も 少 な く な い。 2.幼 児 期 前 期 (1"-'3歳) 幼 児 期 前 期 は 、 多 動 や 注 意 集 中 困 難 な ど の 落 ち 着 き の な い 行 動 が 問 題 に な る。 しかし、歩き始めから 3歳 頃 ま で の こ の 時 期 は 、 健 常 児 で あ っ て も 動 き が 激 し い 時 期 で あ り 、 男 児 で は 特 に そ の 傾 向 が 強 い。そ の た め 、 専 門 家 で も 3歳 頃 ま で は なかなか

ADHD

の診断をすることが困難な場合が多い。 円 h v t E A

(18)

正常な発達では、 1歳 を 過 ぎ る こ ろ か ら 養 育 者 の 言 語 的 な 指 示 や 働 き か け が 分 か る よ う に な る 。 そ し て 、 自 分 の 思 い も 身 振 り な ど で 非 言 語 的 に 表 現 で き る よ う になり、やがて 1歳 半 頃 に な る と 意 味 の 理 解 で き る こ と ば を 少 し ず つ 話 せ る よ う になる。しかし、

ADHD

が 疑 わ れ た 子 ど も の 場 合 は 、 視 線 が 合 わ な い 、 呼 び か け に 反 応 し な い な ど 、 人 へ の 関 心 の 弱 さ が あ り 、 自 閉 症 と 間 違 わ れ る こ と が あ る 。 こ の よ う な 子 ど も で は 、 こ と ば の 遅 れ が 同 時 に 認 め ら れ る 。 特 に 、 言 語 理 解 能 力 よ り も 表 出 言 語 能 力 に 遅 れ を も っ て い る こ と が 多 く 、 始 語 の 遅 れ や 語 葉 数 が 少 な いことが認められる。 正 常 な 発 達 を し て い る 場 合 、 こ の 時 期 、 母 親 は こ と ば を 用 い て 子

r

もの気持ち を 調 整 す る 。 ま た 、 母 親 の 意 図 と 子 ど も の つ も り の 問 で 微 妙 な 駆 け 引 き を 行 い 、 共 感 し た り 衝 突 が 生 じ た り す る 。 さ ら に 、 こ の 時 期 は 、 他 児 の 存 在 が 大 き な 意 味 を も ち 始 め 、 他 児 を 鏡 に し て 自 分 と い う も の に 気 づ く よ う に な り 、 他 児 の す る こ とを取り込んで自分というものを膨らませていくようになる(鯨岡・鯨岡,

200

1)。 しかし、

ADHD

児 の 場 合 は 、 そ の よ う な 気 持 ち の 調 節 が 極 め て 難 し い ば か り か 、 養 育 者 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 困 難 な こ と が 多 い 。 次に、 2歳 を 過 ぎ る 頃 か ら は 、 外 界 の 世 界 を 自 分 に 中 心 化 さ せ よ う と す る 働 き が強くなり、

roo

ちゃんのJ な ど 他 児 と の 関 係 で 自 己 主 張 が 明 確 に な っ て く る 。 こ の こ と と の 関 係 で 、 養 育 者 が 注 意 し な け れ ば な ら な い こ と は 、 子 ど も の こ の よ うな特徴を、「わがままJとか「反抗期jと い う こ と で 全 面 的 に 制 止 し た り 禁 止 し た り す る の で は な く 、 子 ど も の 要 求 は 受 け 止 め つ つ 、 行 き 過 ぎ は 抑 え た り 方 向 転 換をはかることである。しかし、

ADHD

児 の 場 合 は 、 他 児 の 存 在 を 認 め た う え で 自 分 へ の 中 心 化 す る と い う よ り も 、 周 囲 と は 別 個 な 自 分 と い う も の に 気 づ か な い ま ま 、 欲 求 の 赴 く ま ま に 行 動 し て い る と こ ろ が あ る 。 そ の た め 、 養 育 者 か ら 禁 止 や 制 止 に あ う と 、 大 き な 情 動 の 爆 発 と な っ て 現 わ れ 、 な か な か 気 持 ち を 立 て 直 す こ と が で き な い 。 し か も 、 禁 止 さ れ た 行 動 を 度 々 す る の で 、 母 子 間 で 交 わ さ れ る 会 話 が 楽 し い も の と い う よ り は 、 禁 止 な い し は 否 定 的 な こ と ば で 占 め ら れ た も の になっていることが多い。

ADHD

児 の こ の 時 期 の 特 徴 と し て は 、 執 着 や 関 心 の 偏 り な ど 認 知 の 問 題 を も っ 子 ど も が 少 な く な い 。 幼 児 期 前 期 で 、 多 動 や 注 意 集 中 困 難 の み を 主 訴 と し て 病 院 を 訪 れ る ケ ー ス は 殆 ど な く 、 た い て い は 言 語 発 達 遅 滞 、 対 人 関 係 の 成 立 困 難 、 そ の 他 の 行 動 上 の 問 題 な ど で 病 院 を 訪 れ る 。 し か し 、 そ の よ う な 主 訴 の な か に 多 動 などの問題が含まれている場合が多い。 3. 幼 児 期 後 期 (4'"'-'6歳) 多 動 や 注 意 集 中 困 難 の 問 題 が 顕 著 に な る の は 、 幼 稚 園 や 保 育 園 で の 集 団 生 活 の 中 に 入 っ て か ら で あ る 。 専 門 家 が

ADHD

と わ か る の は 大 体

3

歳 頃 と 言 わ れ る が 円 i T i

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(町沢,

2

0

0

2

)

、 健 常 児 で あ っ て も

DSM-m-R

ADHD

の 診 断 基 準 を 満 た す 行 動 を 示 す 男 児 は 4歳 ( 幼 稚 園 入 園 ) ま で は 決 し て 少 な く な く 、 正 確 な 診 断 法 の 開 発が求められる。 こ の 時 期 は 、 言 語 や 認 知 能 力 の 偏 り も な く 発 達 し て い る 場 合 、 言 語 能 力 と 身 辺 自立能力に急激な発達がある。子どもは、大人の話すことはたいていは理解でき、 流 暢 に 話 せ る よ う に な る。ま た 、 指 示 し な く て も 着 替 え や 食 事 が で き る よ う に な ってくる。そして、 5歳 こ ろ に な る と 、 だ い た い ど う す れ ば ど う い う 結 果 に な る か が 見 通 せ る よ う に な っ て く る。 ところが、

ADHD

児 は 、 大 人 の 話 す こ と ば は 簡 単 な も の で 短 い 形 で 指 示 さ れ た 場 合 は 理 解 で き る が 、 内 容 が 少 し 難 し か っ た り 長 い 形 で 与 え ら れ た 場 合 は 理 解 し て い な い こ と が 多 い 。 話 す こ と ば も 衝 動 的 に 脈 絡 な く 話 そ う と す る た め 、 理 解 が 困 難 な こ と が し ば し ば あ る 。 ま た 、 基 本 的 な 生 活 習 慣 が 確 立 し て い な い こ と が 見 られる。例 え ば 、 欲 求 の 赴 く ま ま に 間 食 を す る の で 、 食 事 も 不 規 則 で 偏 食 傾 向 が ある。不 規 則 な 食 生 活 が 朝 か ら 晩 ま で 続 く の で 、 睡 眠 の パ タ ー ン が 未 確 立 に な る。 ま た 、 睡 眠 が 短 か か っ た り す る の で 昼 間 の 活 動 に 影 響 を 与 え る 場 合 が 多 い。

ADHD

児 の 昼 間 の 活 動 は 、 こ の 時 期 に な る と 問 題 が 益 々 明 ら か に な っ て く る。 子 ど も は 少 し も じ っ と し て お れ ず 、 何 か に よ じ 登 っ た り 、 あ る 事 を し て い た か と 思 う と 、 突 然 に 別 の 事 を す る よ う に な る。事故でケガをすることが多いが、 一向 に 物 怖 じ す る 様 子 が な い 。 幼 児 期 は 誰 で も 少 な か ら ず 多 動 と 衝 動 性 を 示 す が 、 A

DHD

児 は そ れ が 並 外 れ て 強 い だ け で な く 、 気 分 が 不 安 定 で い ら だ ち が 激 し い。 ま た 、 ル ー ル を 守 れ な い と か 、 自 分 の 欲 求 に こ だ わ る た め に 友 達 と 仲 良 く 遊 べ な い 。 ま た 、 運 動 能 力 や 話 し こ と ば の 遅 れ な ど が あ る だ け で な く 、 就 学 前 段 階 で 早 く も 算 数 能 力 が 有 意 に 低 い と い う

(Mariniani

&

Barkley

1

9

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4

.

学 童 期 (

6

'

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-

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1

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歳) 幼 児 期 後 期 に 続 く 学 童 期 に つ い て も

ADHD

児の発達を概観しておきたい。 小 学 校 に 入 学 す る と

ADHD

児 に は 大 き な 試 練 が 待 っ て い る 。 な ぜ な ら ば 、 小 学 校 で は 運 動 や 読 み ・ 書 き ・ 算 数 の 基 本 的 な 学 習 ス キ ル の 他 に 、 静 か に 座 っ て 先 生 の 話 し を 聞 く 、 指 示 に 従 う 、 衝 動 的 反 応 を 抑 え る 、 他 の 子 ど も と 協 力 し 仲 良 く 遊 ぶ 、 な ど の 力 を 要 求 さ れ る か ら で あ る 。 そ の た め 、 小 学 校 に 入 学 す る と

ADHD

の 症 状 が 最 も 顕 著 に あ ら わ れ る だ け で な く 、 学 習 上 の 遅 れ の 他 に 、 対 人 関 係 の ト ラ ブルが多くなる。 高 学 年 に な る と 多 動 ・ 衝 動 性 は 少 し ず つ 減 少 し て く る が 、 不 注 意 は 持 続 す る。 また、依然として学力の遅れと友人関係の問題は残り、生活面でも忘れ物が多い、 整理整頓ができない、などの問題がある。

ADHD

児 は 失 敗 経 験 が 多 く 、 自 己 評 価 が 低 く な り が ち で あ る 。 そ の た め 、 周 囲 か ら 受 け 入 れ ら れ な い と 、 他 人 を 故 意 に n O 4 E A

(20)

い ら だ た せ た り 、 反 応 と 敵 意 の 行 動 パ タ ー ン を 形 成 す る 反 抗 挑 戦 性 障 害 (oppositional defiant disorder : ODD)が現われてくることがある。 5.思 春 期 、 青 年 期 以 降 思 春 期 に は 、 児 童 期 にA D H Dと 診 断 さ れ た 子 ど も の 約 7割 か ら 8割 が 症 状 を 持 ち 越 す と 言 わ れ て い る 。 こ の 頃 は 多 動 や 衝 動 性 は 目 立 た な く な る が 、 学 業 面 の 遅 れ と 対 人 関 係 の 問 題 は む し ろ 大 き く な る 。A D H Dであることによる不注意と、 学 習 内 容 を 理 解 で き な い と こ ろ か ら く る 注 意 力 の 低 下 に よ り 学 業 面 の 遅 れ は 益 々 深 刻 で 、 進 学 す る 高 校 を 見 つ け る の に 苦 労 す る こ と が 多 い 。 ま た 、 進 学 し て も 留 年 や 停 学 ・ 退 学 が 多 い 。 叱 ら れ て ば か り い る 場 合 は 、 自 尊 心 が 育 た ず 、 抑 う つ 状 態 に な り や す い 。 こ の 時 期 は 、 他 の 生 徒 が 精 神 的 に も 身 体 的 に も 大 き く 成 長 す る 時 期 な の でA D H D児 は ま と も に 相 手 に さ れ な い こ と が 多 い 。 そ の た め 、 A D H D児 は 孤 立 感 、 劣 等 感 を 深 め 、 敵 が い 心 を 生 じ や す い 。 ま た 、 そ れ が 高 じ る と 他 人 の 基 本 的 人 権 を 踏 み に じ る 行 為 や 社 会 的 規 則 を 侵 害 す る 行 為 障 害 (conduct disorder: CD)に 発 展 す る こ と が あ るo 青年期以降どうか。従来、 ADHDは子

r

も の 障 害 と 考 え ら れ て い た が 、 児 童 期 に ADHDと 診 断 さ れ た 者 の 3割カミら 5割 以 上 が 青 年 期 や 成 人 期 で も 症 状 を 残 す と 言 わ れ る 。 こ の こ と か ら 、 米 国 に お い て は 、 近 年 、 大 人 の ADHDが 注 目 さ れ る よ う に な っ た 。 大 人 の 場 合 で も 、 発 言 や 行 動 が 衝 動 的 で 、 計 画 性 の な い 行 動 が み ら れ る が 、 今 後 、 日 本 で も こ の よ う な 行 動 がA D H Dと の 関 連 で 問 題 に な る こ と と思われる。 神 経 心 理 学 的 検 査 でA D H Dの 特 徴 を 検 討 し た 近 藤 (1996) の研究によると、 大 人 のA D H Dで も 解 消 さ れ ず に 残 る 心 理 機 能 の 問 題 は 、 プ ラ ン ニ ン グ の 弱 さ と ヴ ィ ジ ラ ン ス ( 注 意 の 持 続 ) の 弱 さ で あ っ た 。 前 者 は 職 業 の 選 択 に 影 響 す る こ と が 考 え ら れ る が 、 後 者 の ヴ ィ ジ ラ ン ス の 弱 さ は 交 通 事 故 に も つ な が り か ね な い 要 素 に な る 。 実 際 、 米 国 の 統 計 に よ る と A D H Dの 青 年 、 成 人 の 事 故 率 が 高 い こ と が 明 ら か に さ れ て い る が 、 長 時 間 の 自 動 車 の 運 転 に よ る 注 意 の 低 下 が 影 響 し て い る可能性がある。 上 記 の こ と と 併 せ て 、 む し ろ 問 題 な の は 、 成 長 過 程 で 失 敗 経 験 を 繰 り 返 し て き た 結 果 と し て 、 挫 折 感 と 孤 立 感 か ら 自 分 に 対 す る 否 定 的 感 情 を 蓄 積 し て い る こ と で あ る 。 そ の 場 合 、 抑 う つ 状 態 や 不 安 状 態 に 陥 り 、 気 を 紛 ら わ せ る た め に ア ル コ ー ル や 薬 物 を 濫 用 す る 傾 向 が あ り 、 最 悪 の 場 合 は 反 社 会 的 人 格 障 害 に 発 展 す る こ とがある。しかし、 ADHD成 人 が 自 分 の 興 味 あ る こ と を 仕 事 に 生 か し 、 ま た 、 周 囲 の 人 達 も 本 人 の 積 極 的 な 側 面 を 評 価 す る な ら ば 、 心 理 的 、 社 会 的 な 面 で の 問 題 を 克 服 し て 社 会 で 活 躍 し て い る 人 が 多 い こ と も 事 実 で あ る 。 -

表 1 教師による幼児と児童の行動評定尺度(調査 1)  (調査対象児) の幼稚園、保育園、小学校での様子についてうかがいたいと思います。 最近の特徴について、最初に先生の頭にうかんだ印象について記入してください。 質 問 ほ と ん ど な い す く な い 方 や や 多 い きわめて多い 1.体験したことをなかなか思い出せな し、 。 1  2  3  4  2
表 3 から明らかなように、 Barkley の モ デ ル に も と づ く 仮 説 で は 実 行 機 能 に 関 し て 5つ の 因 子 が 分 離 す る こ と が 予 想 さ れ た が 、 結 果 は 2因 子 し か 抽 出 さ れ なかった。 第 1 因 子 に 関 し て は 、 例 え ば 、 行 動 抑 制 機 能 を 反 映 す る 項 目 ( 例 、 「 突 発 的 な 行動をする。 J と 、 情 緒 の 調 節 に 関 す る 項 目 ( 例 、 「 根 気 の い る
表 4 調査 2の因子分析結果 変数 因子 1 項目 1 0 . 8 1 4 6 本 項目 2 0 . 8 1 1 3 キ 項目 3 0 . 8 4 4 6 牢 項目 4 0
表 5 3  4 歳児と 5 . 6 歳児の異なる ADHD サスベクト・タイプ出現率(%) 3.4 鹿児 5 .   6 歳児 全体 男児 女児 全体 男児 女児 混合型 1 1
+2

参照

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