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生活保護ケースワーカーの対人援助業務に対する意識について : 追跡調査結果を中心として

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Academic year: 2021

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著者

?井 由起子

雑誌名

教育学論究

3

ページ

25-34

発行年

2011-12-25

URL

http://hdl.handle.net/10236/8598

(2)

生活保護ケースワーカーの対人援助業務に対する意識について

追跡調査結果を中心として ―

Attitudes toward the Current Public Assistance among Social Caseworkers

― A Follow-up on the Original ―

! 井 由起子

Abstract

The purpose of this study is to clarify the relationships between social caseworker attitudes toward public assistance and also their experience. The study is based on interviews conducted with10 social caseworkers. Out of the10 social caseworkers interviewed 6 were men and 4 were women who have given their approval for participating in the study. They had been interviewed in2007 and also have 80―150 cases. The results of the interviews are as shown below ;(1)Whether they have a license or have no license, social caseworkers wrestle with difficulties regarding public assistance.(2)Some social caseworkers who have license of national social worker aren’t satisfied with public assistance training.(3)It is necessary for social caseworkers to take benefit training and supervision of public assistance. The result of the present study suggested that it is necessary to consider system of public assistance. キーワード:生活保護、生活保護ケースワーカー、対人援助

はじめに

生活保護の現況をみると、被生活保護世帯数が 2008年度、114万8766世帯となり、2007年度に比較 して、4万3491世帯増加となった。世帯類型別では 「高齢者」が52万3840世帯、「障害者・傷病者」が40 万7095世帯、「母子」が9万3408世帯、「その他」が 12万1570世帯となっている1)。以降29年12月には 保護世帯数が初めて130万を越え、2009年度の保護 世帯数(1か月平均)は127万世帯となり、2008年 度より更に増加している。その後2010年6月現在、 被生活保護世帯は137万世帯となり、被生活保護受 給者は190万人を超えた。190万人を超えたのは1955 年以来であるという2) 一方で、「2009年福祉事務所現況調査」(厚生労働 省)の結果では、生活保護ケースワーカー(以下「生 活保護 CW」と表記する)の人員が配置標準数に満 た な い 福 祉 事 務 所 が3分 の1あ る こ と が 分 か っ た3) このような状況の中で、生活保護 CW の業務内 容は増加の一途をたどることは想像に難くない。 森 川 美 絵 ら の、2003年 実 施 の713名 の 生 活 保 護 CWへのアンケート調査によると、1人あたりの担 当ケースが90を越える場合、援助を振り返る余裕も なく、援助関係作りや援助方針の設定も困難である と感じる傾向にあった。また新任職員だけでなく、 中堅職員らも多様な負担要素を抱えている可能性が あった。また業務に対して負担感を感じている人は 「業務量過多」であると感じている傾向があった4) 近年の傾向は、森川らが指摘する状況に拍車をかけ ていると言える。 加えて、松崎が指摘するような実情も存在する。 松崎は次のように述べている。「ケースワーカーは、 法や制度に精通し、的確なケースワークができる専 門職と位置づけられています。しかし、他部門との 人事異動が激しく、現在のケースワーカーの約4分 の1は経験1年未満です。また、ケースワーカーを 教育したり、保護の実施状況をチェックする査察指 * Yukiko TAKAI 教育学部准教授 1)株式会社福祉新聞社「週刊福祉新聞2009年10月19日号」 2)株式会社福祉新聞社「週刊福祉新聞2010年10月4日号」 3)株式会社福祉新聞社「週刊福祉新聞2010年10月11日号」 4)森川美絵他「生活保護現業員の困難経験とその改善に関する研究」『厚生の指標』厚生統計協会 2006年 25

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導員もケースワーカーの経験がないなど、経験年数 はたいへん浅くなっています」5) 小村は生活保護 CW133名に質問紙調査、そして 10名に対してインタビュー調査を実施している。な かでも2005年11月に実施された質問紙による調査で は、生活保護 CW の仕事を始める前に十分な研修 を受けたという人は、回答者のうちわずか1割程度 であったという。そして研修について「不十分」だ とする人の割合は5割弱とのことである。そして 「自らが希望しなかった職場への配属に加え、事前 の教育・研修なども不十分であるため、現場の仕事 に戸惑い、自分の仕事ぶりに自信を持てず不安定な 状態で仕事をすることになってしまう。その結果、 よりいっそう仕事に対する意欲や関心の低下を招く とともに、被保護者に対して十分なサービスを提供 できないという罪悪感や不全感を生んでいる」と指 摘している6) つまり、生活困難の状態にある被保護者に向き合 う生活保護 CW の状況としては、十分とは言い難 い研修の後、厳しい現場の最前線に立ち、その経験 年数は不十分なままである。また、生活保護 CW を指導する立場にある職員も生活保護 CW の年数 が浅い傾向にあることが指摘できる。それだけでな く生活保護世帯は増加の一途を辿っているため、生 活保護 CW1人当たりの担当ケース数は過剰傾向に あり、非常に厳しい現状にあるといえる。 これまで、生活保護 CW の職務に関する意識調 査については上記に見てきたとおり、複数ある。し かし生活保護 CW が業務内容に対して、職歴を重 ねることにより、どのように意識が変容するか、ま たそうでないかを明確にすることを目的とした調査 は皆無である。したがって本研究により、職務に対 してどのように意識が変容していくかを明らかにす ることとする。そのことにより、厳しい現状にある 生活保護 CW の職務に関する意識を明確にしてい きたい。

1 .研究の視点および方法

2007年、筆者と中村は、被保護者のみならず、被 保護者を支援する立場にある生活保護 CW の現状 が厳しさを増す今日にあって、生活保護 CW の業 務負担感に問題意識をもつに至った。そして、生活 保護 CW16名に対してインタビュー調査を実施し た。そのことにより、現場の生活保護 CW がどの ようなことで負担感を感じているのか、また一方で やりがいを感じているのか、ということについて把 握することとした。特に生活保護 CW 職務に対す る困難性を把握するために、職務について間もな い、若手の生活保護 CW を中心としてインタビュー 調査を実施した。その結果、社会福祉士有資格者と 社会福祉主事有資格者とで回答の傾向に違いが見ら れたことから、これらの比較分析を行った7) 今回は更に、生活保護 CW は年数を重ねるごと にどのような意識をもって支援にあたるのかという 問題意識に基づき、2007年に調査協力いただいた生 活保護 CW のうち、2009年10月現在、継続して 生 活保護 CW 業務あるいは関連業務に従事している 方に対し、インタビューを通して聞き取り調査を実 施した。このことにより、生活保護 CW の業務内 容に対して、職歴を重ねることにより、どのように 意識が変容するか、またそうでないかを明確にする ことを目的とした。 フェイスシートとして、2007年調査とほぼ同様、 ①経験年数、②大学等での専攻、③資格、④前任部 署、⑤年齢、性別、⑥担当数及び持ちケースの負担 感、とした。そして質問項目としても2007年調査と 同様、①仕事に対するやりがい、②仕事上ストレス を感じること、③困難性を感じること、④関係機関 との連携について、⑤被保護者に指導・助言する時 配慮している事、⑥業務に関する研修についての考 え、⑦必要と思われる知識、技術について、⑧異動 希望、等とした。 調査方法は、調査表の質問項目に従い筆者が直接 聞 き 取 り を 行 な っ た。そ し て 承 諾 の 上、イ ン タ ビュー内容を録音し、収集したデータを前回調査の 内容と比較分析した。 調査期間は2009年10月、A 県下4箇所の福祉事務 所にて、B、C 福祉事務所では1名ずつ、D 福祉事 5)松崎喜良「情報公開と専門性の確立」杉村宏他『よくわかる公的扶助』ミネルヴァ書房、2008年189ページ 6)小村由香「公的部門における感情労働―生活保護ケースワーカーを事例に―」『日本労働社会学会年報第19号』日本 労働社会学会 2009年 7)以下、これらの調査結果の詳細については、!井由起子、中村又一「生活保護ケースワークの課題―生活保護ケース ワーカーの対人援助業務に対する意欲と負担感に関する研究」『大阪社会福祉士第14号』大阪社会福祉士会 2008年、 23∼29ページに報告している。 教 育 学 論 究 第 3 号 2011 26

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務所では6名に対して、E 福祉事務所では2名に対 して調査を実施した。

2 .倫理的配慮

本研究の倫理的配慮として、インタビュー対象者 の個人や所属が明らかにされることのないよう、そ の内容の詳細を分類することとした。また、インタ ビューに際しては協力者に対し、調査結果の報告や 研究発表を行うにあたってはインタビュー対象者、 各機関に関すること等について、固有名詞や個人等 が特定される内容とはしないことについて文書を もって説明し、すべての対象者から調査協力の同意 を得た。

3 .調査結果

(1)生活保護 CW 経験年数、大学等での専攻等(表 1) 生活保護 CW としての経験年数は、6年未満で ある。平均4.6年となっている。また、大学等での 専攻について、社会福祉専攻者は10名中5名であ る。それ以外は、法学が3名、心理学、社会学がそ れぞれ1名である。全員が大学卒以上の学歴で、大 学院修士課程修了者1名が含まれている。また、社 会福祉士有資格者は5名である。その内3名は精神 保健福祉士、保育士、福祉住環境コーデイネーター の資格をそれぞれ併せ持つ。また担当ケース数につ いては全員標準数80世帯を上回っている。 (2)生活保護ケースワークに関する意識等につい て―前回の調査結果との比較を通して(表2・ 3) ①生活保護 CW 職務のやり甲斐について 前回の調査結果では、全般的には「被保護者から の感謝の言葉をもらえたとき」「就職し、自立して くケース」「感謝の言葉がもらえたとき」「学んだこ とが活かされるとき」等があった。なかでも、社会 福祉士資格取得者では「就職し、自立していくケー スに立ち会えたとき」が多く、社会福祉主事資格取 得者では「感謝の言葉がもらえたとき」が多い傾向 にあった。 今回の調査では、資格に関係なく、「ケースの自 立に立ち会えたとき」「生活の落ち着きが見られた とき」等が多くなっていた。 ②仕事をする上でストレスを感じるとき 前回の調査結果では「ケースについての近所から の苦情」「今までの人生経験の中では理解できない 価値観や生活様式と直面したとき」「指導を伴う援 助を行うとき」また、「感情的になっている被保護 者への対応」等があげられた。ケースからの苦情を 受けることで、被保護者に対して指導する必要性も 出てくることや、第3者がからみ、事情が複雑にな ることがストレスにつながるようであった。 今回の調査では前回同様のこともあげられてお り、また「言葉や表情 の 汚 さ が 感 じ ら れ た と き」 「ケース数の増加」「時間外の業務」「仕事がたまっ たときにややこしいケースと直面するとき」等があ り、前回調査より、業務量が増加したためのストレ スに関する意見が目立つものであった。 ③困難性を感じるとき 前回の調査結果では前項とも共通することも多い が、被保護者の生活について、先行きが見えにくい ことや、ソーシャルワークの方法についてもあげら れていた。また、特に「ストレス解消法」「経験、 知識不足を実感するとき」「他の機関と連携がうま 表 1 ワーカー歴・大学等の専攻・資格・年齢・性別・担当ケース数一覧 データ番号 ワーカー歴 専攻 資格 年齢 性別 ケース数 1 6年未満 社会福祉 社会福祉士 30代 男 120未満 2 3年未満 社会福祉 社会福祉士 20代 女 90未満 3 6年未満 社会福祉 社会福祉士 20代 女 90未満 4 6年未満 その他 社会福祉士 20代 女 100未満 5 6年未満 社会福祉 社会福祉士 30代 女 100未満 6 5年未満 法学 社会福祉主事 30代 男 100未満 7 4年未満 法学 社会福祉主事 20代 男 90未満 8 6年未満 社会福祉 社会福祉主事 30代 男 100未満 9 3年未満 法学 社会福祉主事 20代 男 150未満 10 3年未満 その他 社会福祉主事 20代 男 120未満 生活保護ケースワーカーの対人援助業務に対する意識について 27

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表 2 社会福祉士有資格者の追跡調査結果 2007年調査 2009年調査 ケースワーカー 職務のやり甲斐 1 大学等で学んできたことが活かされ たと感じるとき. 論文やテキストにあることが被保護者に説明できる.言葉で 説明できるようになった.意図をもって説明できるように なったとき. 2 仕事につき、被保護者がいきいきと して自立していく様子を見ることが できたとき. 特になし 3 就職し、自立していくケース.「就 職決まったよ」と報告に来てくれた とき. 自分がかわることで、被保護者がこのままではいけないと気 づいてもらえたとき、前向きになる.自立は難しくとも「あ の時お話できてよかったです」といってもらえたとき. 4 ケースに対し、援助する過程で就労 支援した結果、働きだし、指導して きたことが結びつき、達成感を味わ えたとき. 自立されたとき.気づいていない他法や年金、制度がうまく 使えたとき.障害年金等の資源を発掘できたとき. 5 被保護者が自立していくとき.生活 保護を受給し、生活が安定し幸せそ うなケースをみたとき. 生活が落ち着いてきたとき.食生活が安定しているなど. ストレスを感じ るとき 1 感情をぶつけられるなどして関係が 作りにくいと感じたとき. 意図していないときにどなられる.そのつもりで言っていな いのにというときにどなられる.怒りをさけるようにしてい るが、それでも上手くいかないとき. 2 ケースについての第3者の苦情.保 護費を上げて欲しいなど、制度上、 どうにもできない苦情を言われると き.指導的なことを言うとき. 権利ばかり主張し、無理なことでもしてもらおうと引き下が らない.また対応できない旨伝えると「死ねというのか」な どと、脅迫的に迫るような対応のケース.なかなか就労に結 びつかないケース.自立の意思が低いケースの対応.子ども が働くと保護費の支給が下がるので嫌がるなど. 3 今までの人生経験の中では理解でき ない価値観や生活様式と直面したと き.ストレスをぶつけられたとき. 男性1人世帯への家庭訪問. 以前は理不尽なことでどなられるときと思っていたが、今は その理由や背景を理解するようにしている.下手なことはで きないという緊張感が今はある. 4 個人とのかかわりの中で感情的に言 われるときが多く、それが蓄積する とストレスの要因となることがあ る. ケース数の増加.対立する指導をしなければならないとき. 指導がとどかないときや、就労など、のってもらえないとき. 5 被保護者にどなられたときやケース を進める際の指導.指示事項がた まったとき. 言葉のきたなさ等を感じてしまったとき、あとに残る. 困難性を感じる とき 1 切り替えがなかなかできないときが ある.家までひきずってしまうこと がある. レールにのってきてもらえないとき. 2 経験、知識不足を実感するとき.こ んな方法でよいのかと戸惑いながら 実践している. 子どもが高校を卒業してもなかなか就職しない、できない、 あるいは就職しても転出してしまい、世帯主のみずっと保護 を受けている.世帯主はパートで社会保険がなく、収入も非 常に少ない.また次の職場が見つからない.このようなケー スへの対応. 3 事務所内で後ろ盾がないと感じると き.事務所内で意思統一をはかるこ と. 年齢.20代という自分自身の年齢.年上の方に対する指導. 4 他の機関と連携が上手くいかないと き. 母子ケースの就労支援.自立に結びつかない場合があった り、指導することが難しく、一方求められることが多く難し い. 5 生活全般が見えてこないケース. 支援計画が立てにくいケース. 本人の気持ちに、仕事に就く気がない等.不正受給がわかっ たとき、悪いと思っていない等. 関係機関との連 携について 1 病院のソーシャルワーカー. 保 健 セ ン タ ー の ソ ー シ ャ ル ワ ー カー. うまくいっている.積極的な機関を選ぶ.保健センターの ソーシャルワーカー、就労支援相談員、病院のソーシャル ワーカー等. 教 育 学 論 究 第 3 号 2011 28

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2007年調査 2009年調査 2 職務経験が浅いため、連携している 関係機関はない. ハローワークとの連携.就労指導していたケースを就労支援 事業にあげても、却下となり、確実に就労できる人のみを対 象にしてほしいといわれる.そういう人は自分で見つけてく るので少し問題のあるケースこそ支援してほしいのにと思う が受け入れてもらえない. 保健所の精神保健福祉士や保健師との連携.精神障害と疑わ れる世帯員とその家族に対する支援や単身の精神障害者で問 題行動により対応を迫られる.対応に困って相談していても 最終的にはお手上げと言われたりすると、他にどうしたらよ いのか、専門職に言われるとなすすべがない. 3 病院・高齢者ホームヘルパーとよく 連携している. 家庭児童相談室、病院、民生委員等に対し、日常的に地域で 困ったことがあると教えてほしいと伝えるようにしている. 4 上手くいかない.他の専門職がどう いった役割をもっているかわからな い. 特に実践していない.担当地区にもよるように思える.継続 して連携、というよりも単発的に連携している. 5 機関の押し付け合いがよく見られる ような印象がある. 福祉機関とはうまくいっている.医療機関とは、ときどき個 人情報について医者としゃべるとき緊張する.障害者支援セ ンター、包括支援センターの方等、よくしていただいている. 大家さんとの連携については、個人情報が言えない難かしさ がある. ケースワークで 気をつけている こと 1 言葉遣い.自分自身を振り返るよう にしている. なるべく時間を取るようにしている. 2 敬語をつかうようにしている.失礼 のないようにしている.時間を守る ようにしている. ケースによってはなじみのない言葉が多く、わかりやすく説 明するようにしている. 3 対立しないようにしている. 意志や希望をきくようにしている. 時間をかけて指導するようにしている.前は「しないといけ ない」と思っていた.急いでいた.「私は今までこうしてき たよ」と伝えている. 4 被保護者と共感するように心がけて いる.こちらの意向を伝えるのみで は無理であると感じる. その方の状況をよく見たうえでニーズを把握して共感受容し たうえで助言する.相談に乗った上でこうなりますよと、説 明する.長いスパンで考えられるよう説明する. 5 考えを正確に伝えるようにしてい る.被保護者の視点で助言指導を行 うこと. 言葉遣い、言い方について、優しすぎてもだめだと思う.そ の時自分の生い立ちを認識する.また将来の見通しも含めて 説明するようにしている. 希望する研修 1 福祉事務所におけるケース ワーカーの役割・保護費算出. スーパービジョンの研修、事例研究. 2 面接技法.コミュニケーション. 研究報告もよいが、加えて、実践に役立つ研修内容がほしい. 3 同じ職につく同年代とのグループ ワーク. 他機関連携のための会議に参加したい.知っているを人たく さん作るネットワークにつながるような会議. 4 業務に直結するような研修. 研修よりも査察指導員との動向訪問 を希望する. 情報が入ってこないので、最近は行っていない.実践的なこ と.他市ではどのような実践をしているのか.他市の視察に 行ったことがあった.それはすごくよかった.業務のこと、 年金について. 5 実施要領等、具体的な例をあげ、即 実践で使える内容の研修. 研修は自分のしんどさをいいあうような場のような気がし て、あまり実があるように思えない.他法、専門的知識を得 られるような研修があればと思う.ロールプレイの研修もあ るが、現実のケースは型にはまったようなものではないと思 う. 必要と思われる 知識・技術 身につけたい知 識・技術 1 法律の解釈・他法. ワーカーである前に地方公務員であるという気づきがある. そのため市町村自治に関する知識を深めたい.また、危機介 入のタイミング(虐待ケース等)についても学びたい. 2 上手な聞き出し方、聞き出す技法等 の面接技法. 他法律について、特に年金制度.複雑なため、ある程度専門 性がある方がよいとは思う.精神障害者への対応などのとき に精神疾患、精神障害に関する知識が必要であると思う. 3 年齢に応じた対応の仕方.心理的な 知識・コミュニケーション. 他法、保険、雇用保険、借金、自己破産の制度など. 4 年金、雇用保険等の知識. 年金、保険、社会保険労務士に関する知識等. 生活保護ケースワーカーの対人援助業務に対する意識について 29

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2007年調査 2009年調査 5 他法・新しい法律内容. 社会福祉の現場で活かせるような知識は勉強だけで得られる ものは少ないと思う.実践のみでも難しい.他法もいろいろ 変わるので学ばなければいけない知識は広いと感じる. 異動希望 1 なし. あり. あり. 2 なし. 3 なし. どちらでもない. 4 なし. どちらでもない. 5 あり. どちらでもない. 表 3 社会福祉主事有資格者追跡調査結果 2007年調査 2009年調査 ケースワーカー 職務のやり甲斐 6 支援していて感謝の言葉をもらった とき. 困っている方が元気になられる、やる気になられたとき. 7 感謝の気持ちが感じられる言葉をも らったとき. ケースを進める上で方向性に乗って下さり、被保護者もあり がとうと言ってくださるとき. 社会的問題を抱えている方でも自立して生活されたとき.他 の資源をつかえることがわかり、それを進めて、自立につな げる. 8 一時的に生活困窮になられた人に対 しては支援することにやり甲斐があ る.また感謝されたとき. 9 「ありがとう」などと感謝の言葉を もらったとき. 仕事をさがして自立されていくケースにたちあえたとき. 10 自分のペースでできる. 就労支援の結果就職できたとき. 自分の考えで仕事ができる.絵を描いて仕事ができる.その 通りになるとうれしい. 人間関係やかかわりあい.それぞれの中で相性のあうケース とそうでないケースがある.支援するときはよいが、支援を 切るとき等. ストレスを感じ るとき 6 就労指導・動機付けに関連する指導 や援助. 7 すべてケースワーカーの責任のよう に言われるとき. 押される傾向にあるとき.第3者から「役所で面倒みてくだ さい」と言われるとき. 8 母子世帯への指導指示、家庭訪問. 暴力団関係者への対応. 理不尽な要求.「死ねというのか」と何人もの方に言われた ことがある. 生活全般にかかわること、介護関係の雑用をたのまれるな ど. 9 指導・指示事項が伝わらないとき. 第3者からの苦情. 10 先行きの見通しが立たないケースへ の支援. 自分の仕事がたまったときにややこしいケースと直面すると き. 困難性を感じる とき 6 事務処理とソーシャルワークとを比 較して、ソーシャルワークを実践す るときに困難性を感じる. 被保護者が思っていることと反対のことをすすめなければな らないとき.働くようにすすめる、病院にいくようにすすめ るなど. 生活保護制度に対する依存が強い方との対応. 7 指導指示をしてもなかなか被保護者 に聞き入れてもらえないとき. 8 上司との連携や上司と気が合わない など事務所内での連携.特に支援が 上手くいかないとき等強く感じる. 立ち入り調査証のみで厳しい指導をすることは非常に困難だ と感じる.暴力団ケース、薬物依存のケース等. 9 法律や年金などの多くの知識が必要 であると感じるとき. 自立に向かわせることはとても難しい.がんばっていないよ うに見える人も自分はがんばっていると思っていることがあ る. 制度上やってもらいたいことを相手に伝えても伝わらないこ と.精神疾患のある方や、自分の思う通りにしたいという方 との相談. 10 判断に困ることが起こるとき. 質問されたとき. 関係機関との連 携について 6 保 健 セ ン タ ー の ソ ー シ ャ ル ワ ー カー・病院とよく連携している. ハローワーク、医療関係、地域福祉課、高齢課、女性相談、 包括支援センター等、活用をよくしている. 7 連携に際して、機関の押し付け合い がよく見られるように感じる. 病院、保健センター等あるが、実際には難しさを感じる.保 護を切ることを嫌がる関係機関もあり、困難性を感じる. 8 上手くいかない.連携の判断ができ ない. 保健センター等とは上手く連携ができている.しかし、大家 さん、家主さん等とは困難を感じることがある. 教 育 学 論 究 第 3 号 2011 30

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くいかないとき」等、自分自身の知識や経験等から くる困難性を感じる傾向にあった。 今回の調査では、「被保護者が希望していること と逆のことを指導しなくてはならないとき」「制度 上、してもらわなくてはならないことを指導すると き」「自立に向かってもらうこと」「母子世帯のケー ス」等と、ケースの運営等について困難性を感じる 傾向にあった。 ④関係機関との連携についての意見、現在連携して いる関係機関 前回の調査結果では病院のソーシャルワーカー、 ハローワーク、児童相談所などがあがったが、連携 2007年調査 2009年調査 9 障害福祉課、高齢福祉課とよく連携 している. 障害福祉課、子育て関係の部署、病院等と連携をしている. 連携するためには、時にはボランティアのように仕事以外の 業務をしなくてはならないところが難しい. 10 子育て支援課などあるが、基本的に は連携の必要性を感じない. 病院、高齢福祉課、障害福祉課、子育て支援課、社会福祉協 議会等、連携をとっている方が楽である. ケースワークで 気をつけている こと 6 人に応じて接し方を変える. 先入観なしで相手の話を聞くように している. 本人が受け入れるような言い方、内容、伝え方をするように している. 7 細かく説明する.達成感を得られる 目標を立てる.面接に時間を割く. 人によって顔を変えるようにしている.性格を変えるように している. 8 就労支援する際、生活歴や本人のス キルを考慮した上で、環境整備を 行った上で指導するようにしてい る. 優しく言ってうまくいく人か、厳しく言って上手くいく人 か、見極めるのが難しい.説明はわかりやすくするようにし ている. 9 頭ごなしに言わないようにしてい る.選択肢を準備して提示する. 性格が色々あるので、それぞれにあわせて接し方を変えるよ うにしている. 10 説明をわかりやすくする. 言葉遣いを相手によって変える. 信頼されるように話すこと.指導するとき、事務的に言うだ けでは動いてくれないので、病気等に対する理解を深め、相 手にあわせて対応を変える. 希望する研修 6 他法・新しい法律内容. ソーシャルワークに関すること. 人格障害に対する知識、コーチング、カウンセリング、面接 技法、事例研究. 7 社会福祉の専門知識. 隣接領域の知識. 税金に関する研修. 8 知識を増やすことや、社会資源に関 する情報等についての研修. キャリアカウンセラーや臨床心理士の方の話から、違った視 点で就労支援を考えることができる.行政暴力、不当要求へ の対応. 9 他法・新しい法律内容. 手順・事務手続きについて. 精神障害の方等との接し方が難しいことがあるので、その方 法.母子支援も難しいので、専門の方による研修. 10 クレーム対応.話し方等コミュニ ケーション技法. 説得、交渉する方法.クレーム処理の方法.他機関の機能. 年金. 必要と思われる 知識・技術 身につけたい知 識・技術 6 法律の解釈・他法. ソーシャルワークの知識・技法. ストレス発散方法.実習等で学べる実践的なもの. 7 精神保健福祉士の資格に関するこ と. 本人の意欲を持ち上げるためのコミュニケーション技法. 8 他法・新しい法律内容. 他法、トラブル対処法.福祉の知識だけでは厳しいと感じる. 9 障害者、高齢者への理解. 他法・新しい法律内容. 他法等、「こういう制度が始まります」と回覧で回ってくる だけでは不十分だと感じる. 10 コミュニケーション技法. 機関等の知識、年金、介護、他法の知識. 異動希望 6 あり. あり. 7 あり. あり. 8 あり. あり. 9 あり. どちらでもない. 10 あり. どちらでもない. 生活保護ケースワーカーの対人援助業務に対する意識について 31

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が上手くいかないことや、他職種がどのような仕事 をしているのが十分理解できていないがゆえに上手 く連携を取ることができない、という声もあった。 今回では、前回同様、病院のソーシャルワーカー、 ハローワーク、児童相談所などがあがったが、ほと んどの回答者が難しさを感じながらも努めて連携を 実践しようとしている傾向にあった。そして公的機 関とは比較的上手く連携できていると感じるが、ア パート管理者や近隣の住民等との連携については難 しさを感じるという意見もあった。 ⑤被保護者に助言、指導を行う上で特に配慮してい ること 前回の調査結果では「言い方に気をつける」「話 を聞くようにしている」「人によって話し方を変え る」「わかりやすく説明する」等があがった。また 「選択肢を設けて提案するようにしている」「達成し やすい目標を提示し、達成感が得られるようにして いる」等、被保護者に応じたケースワークを心がけ ている意見もあった。今回でも、「話し方、伝え方、 表情等を相手にあわせて変える」「説明をわかりや すくするようにしている」「話をしっかり聞く」等 があげられていた。 ⑥希望する研修に対する意見 前回の調査結果では「ストレスマネジメント」「他 法、他の制度の最新情報」「手続きの方法」などが あがり、ソーシャルワークに関する研修の要望は、 予想に反して少ない印象であった。社会福祉主事有 資格者はソーシャルワークに関する技術や知識より も、制度等の知識を吸収する事により円滑に業務遂 行することを重要視している事がうかがえる結果と なっていた。 今回は、「ストレスマネジメント」「他法、他の制 度の最新情報」「手続きの方法」「コーチング・カウ ンセリングの知識」「税金・年金」「他専門職の講演」 「精神疾患の知識」「母子世帯への支援方法」「交渉 術」「クレーム処理技術」「他市の実践方法、視察」 等があげられた。特徴的であったのが、社会福祉士 資格者において、研修に対して期待感が薄い意見が 多く聞かれたことである。 ⑦必要と思われる知識・技術、身につけたい知識・ 技術 前回の調査結果では⑥の事項とも共通するが、 「ストレスマネジメント」「他法、他の制度の最新情 報」などが多くあげられていた。また面接技法関係 の習得もケースワークを実践するうえで重要視され ていた。 今回では、「ストレスマネジメント」「コミュニ ケーション技法」「他法・年金・財政・社会保障・ 地方自治・社会保険・借金・自己破産」「トラブル 対処法」「危機介入」「精神疾患・障害についての知 識」等があげられていた。 ⑧異動希望の有無 前回の調査結果では各市職員採用の際、生活保護 CWに配置を希望していたか否かを問うた。結果、 社会福祉士有資格者では配置希望が少なく、社会福 祉主事有資格者で配置を希望していた方が予想して いたより多い結果となっていた。 そして異動希望については、前回の調査結果では 調査実施に際して、他部署への異動希望者が多いこ とを予測していた。予測通り「業務がきついので他 部署への異動希望を毎年提出している」という声も あったが、「当初覚悟していたよりやり甲斐もあり、 異動希望もない」という意見もあった。また異動希 望の内実は、「現職が嫌だから」ということよりも、 「他部署へ異動することにより、社会福祉職務に関 する領域の幅を広げたい」「他部署の実情も知りた い」という意見の方が多い印象であった。 今回の調査結果では10人中、5名が異動希望とい う意見であった。「生活保護業務についてはやりつ くした感がある」「他の部署についても知りたい」と いう意見が多い印象であった。一方、5名について は「どちらでもない」という意見であった。そこで は「最初は厳しい職場であると感じたが、ようやく 慣れた」「どの部署も厳しさは同じようであると感 じる」「自分のペースで仕事ができる良さがある」等 といった意見が聞かれた。

4 .考察

2007年の調査において、調査実施するまでの予測 としては、社会福祉主事有資格者の人が、生活保護 CWという職務に就くにあたって、様々なストレス と困難性を抱えているものと予測していた。それに 対する研修や必要と思われる知識、技術について は、ソーシャルワークに関する知識や、実践に根付 いた事例研究などが多いものと考えていた。実際に 調査を行ってみて、社会福祉主事有資格者も「大変 な職場だと思っていたが、やりがいもあるし、喜び も多い仕事である」という声を聞く機会も多い印象 教 育 学 論 究 第 3 号 2011 32

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であった。ただ、異動希望は社会福祉士有資格者よ りも多い結果となった。この異動希望であるが、「こ の仕事が嫌だから異動したい」という声も若干あっ たが、一方で見識を広めたいため、という理由も多 く聞かれた。また、社会福祉士有資格者と社会福祉 主事有資格者との比較では、必要と思う知識や技 術、また希望する研修などについて、社会福祉士有 資格者は「コミュニケーション技法」をあげる傾向 にあり、一方社会福祉主事有資格者は「他法や新し い制度等に関する情報」をあげる傾向が見られたこ とが興味深いものであった。そして社会福祉主事有 資格者は「他法や新しい制度等に関する情報」を重 視する傾向にあり、インタビューをしていても「職 場でのストレスはプライベートにもちかえることは ありません」ときっぱり話された方が多いことが印 象深いものであった。 これら前回調査に比較して、特に変化が見られた 項目について整理してみたい。まず、「①ケースワー カー職務のやり甲斐」についてである。前回調査で は社会福祉士有資格者ではケースの自立をあげる傾 向にあり、社会福祉主事有資格者では感謝の言葉を かけられたとき、とする傾向にあった。しかし、今 回調査結果では資格に関係なく、ケースの自立をあ げる人が多い傾向となった。ケースにとって良い方 向性が見られることに対して、資格に関係なく仕事 のやり甲斐を感じる傾向にある結果となった。 次に「④関係機関との連携について」であるが、 前回調査結果では、特に社会福祉主事有資格者の一 部では、「連携していない、必要がない」という意 見や連携先をあげる意見があったが、今回調査結果 では、資格に関係なく、連携の有効性、困難性等が 具体的にあげられていた。生活保護 CW としての 経験を積み、他機関等との連携に関して効果的であ る面と困難性を感じる面との両面を実感しているこ とが考えられる。 また、「⑦必要と思われる知識・技術、身につけ たい知識・技術」について、前回調査では社会福祉 士有資格者は「コミュニケーション技法」をあげる 傾向にあり、一方社会福祉主事有資格者は「他法や 新しい制度等に関する情報」をあげる傾向にあっ た。今回調査では資格に関係なく「他法や新しい制 度等に関する情報」をあげる傾向にあった。日々の ケースワーク業務にあっては、被保護者といかにコ ミュニケーションをとるかということよりも、様々 な制度等に精通することを重視する傾向にあった。 最後に、「⑧異動希望の有無」についてであるが、 前回調査では、社会福祉士有資格者では希望なし、 とする意見がほとんどであった。社会福祉主事有資 格者では全員が異動希望であった。今回調査では、 10名中5名が異動希望、残り5名は「どちらでもな い」であった。希望なしは0名であった。 前回調査においては社会福祉士資格者と社会福祉 主事資格者とでは若干の違いが認められたが、今回 の調査結果では、おおよそ違いがない結果となって いた。今回の特に「必要と思われる知識・技術、身 につけたい知識・技術」に対する意見に関して、何 人かが「社会福祉を専門に勉強されていた方はケー スに甘いような気がします」という意見を語ってい た。また社会福祉士資格者のある方からの「生活保 護 CW はいろいろな方があたる方がよいと思いま す」という意見もあった。また社会福祉士資格者の 別の人は、「社会福祉の基本的なことも大切ですが、 一般市民感覚も大切であると思います」ということ であった。バイスティックのケースワーク7原則に ある「受容」や「非審判的態度」のような態度もも ちろん大切であるが、市民感情として客観的にみた 場合、適切な支援であるのか、考えることも大切で ある、ということであった。 前回2007年、また、今回調査の実施にあたって、 生活保護 CW はストレスも多く、また多くの専門 的知識も必要であるため、社会福祉士資格取得者で あるほうが望ましいという仮説をもっていたが、実 際には「一概にそうとは言えない」という意見が聞 かれる結果となった。 今回の調査において、社会福祉主事資格取得者の 生活保護 CW が意欲的に職務に取り組んでいる傾 向がうかがえるものであったが、一方、社会福祉士 資格取得者にあっては、大学等で社会福祉を専門に 学び、更に国家資格を取得した、社会福祉専門職と してのアイデンティティが十分保障されているの か、という疑問を持つに至った。それは、社会福祉 士資格取得者からは現在の研修に関して期待感が薄 い傾向にあった調査結果からも考察されることで あった。一つの方法として、社会福祉士資格取得者 の専門性が活かされるような研修のあり方や、効果 的な現業員訓練について検討を深める必要性を感じ るに至った。 生活保護ケースワーカーの対人援助業務に対する意識について 33

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おわりに

今回の調査結果の限界と課題であるが、前回調査 同様、全国には約1万名の生活保護 CW が職務に あたっている。そのうちの今回は A 県下に限定さ れていることと、また、追跡調査のため仕方のない ことであるが、社会福祉士資格取得者について1名 以外女性であったこと、社会福祉主事資格者が全員 男性であったこと等、調査対象者に片寄りがあっ た。また10名によるインタビュー調査の結果である ため、今回の結果が全国の生活保護 CW の実態を つぶさに網羅しているとは言いがたいといえる。 また、今回のインタビューにおいては、不満や多 くのストレスに関すること、また異動希望が多いこ と等について、「どのような職場体制があれば不満 やストレス等の軽減、また現職の継続の意思につな がりうるか」といった聞き取りも行うべきであっ た。それが、生活保護 CW という仕事を魅力ある ものとする一つの方策について検討するきっかけと なり得たであろう。 あわせて、例えば査察指導員等、生活保 護 CW の上司にあたる人から見てはどうなのか、また被保 護者から見て、どのような生活保護 CW を望むの か、という視点から、生活保護 CW の在り方を考 察する必要もあるだろう。 以上のような限界点はあるものの、それらをふま えた上で、今回得られた貴重な調査内容含め、今後 も継続して分析を行っていきたいと考えている。生 活保護 CW の職務に関しては、技術性や個人のや り甲斐に頼るだけでは、職務遂行をする上で十分と はいえない。社会保障制度が大幅に変更されている 状況の中、生活保護制度そのものが現状に合致して いない面も考えられる。その両輪で検討する必要が あると考えるに至った。 謝辞 個人情報を保護するため、調査ご協力いただきま した機関やそこで調査の手配の労をいただきました 方々のお名前を明記できませんが、この調査を実施 するにあたり、多忙にもかかわりませずご協力頂き ました生活保護 CW の方々、並びに関係各位の方々 に末尾ながら感謝申し上げる次第でございます。 また、武庫川女子大学の中村又一先生には、先行 研究結果の掲載の了承、そして本調査に関する示唆 に富むご指導を賜りました。また内閣府障がい者制 度改革推進会議総合福祉部会委員の北野誠一先生か らも示唆に富むコメントをいただきました。深く感 謝申し上げます。 附記 今回の論文は「生活保護ケースワーカーの対人業 務に対する意欲と負担感に関する研究―追跡調査結 果を中心として」(日本社会福祉学会第58回秋季大 会 ポスター発表2010年10月10日)の内容を大幅に 加筆修正したものである。 参考文献 岩田正美・西沢晃彦『貧困と社会的排除―福祉社会を蝕 むもの(講座・福祉社会)』ミネルヴァ書房 2005年 橘木俊詔『日本の貧困研究』東京大学出版会 2006年 小野哲郎『公的扶助とケースワークをめぐる基本問題・ 再考(上)―公的扶助ケースワークの理論的研究を 中心として』公的扶助研究第205号 40∼47ページ 2007年4月 小野哲郎『公的扶助とケースワークをめぐる基本問題・ 再考(中)―公的扶助ケースワークの理論的研究を 中心として』公的扶助研究第206号 43∼60ページ 2007年9月 岩田正美他『公的扶助論―低所得者に対する支援と生活 保護制度』ミネルヴァ書房、2009年 宮本義信『アメリカの対人援助専門職―ソーシャルワー カーと関連職種の日米比較』ミネルヴァ書房、2004 年 小村由香「感情労働としての生活保護ケースワーカー」 『公的扶助研究第43号』2006年、42∼49ページ 日本嗜癖行動学会『アディクションと家族第25号第3巻 ―特集感情労働とセラピー』株式会社 IFF 事業部 2008年 本多勇他『ソーシャルワーカーのジレンマ』筒井書房、 2009年 内田充範「生活保護ケースワーカーの専門性修得のプロ セス―生活保護実践からの考察」『山口県立大学社会 福祉学部紀要第13号』2007年 23∼36ページ 新保美香「新人生活保護ソーシャルワーカーとしての大 変さや悩み、そしてやりがいとは」『季刊公的扶助研 究第217号』全国公的扶助研究会 萌文社 2010年4 ∼14ページ 桜井啓太・中村又一「ワーキングプア化する生活保護「自 立」世帯―P 市生活保護廃止世帯の分析」『社会福祉 学 Vol.52―1』日本社会福祉学会 2011年 教 育 学 論 究 第 3 号 2011 34

表 2 社会福祉士有資格者の追跡調査結果 2 0 0 7年調査 2 0 0 9年調査 ケースワーカー 職務のやり甲斐 1 大学等で学んできたことが活かされたと感じるとき. 論文やテキストにあることが被保護者に説明できる.言葉で説明できるようになった.意図をもって説明できるように なったとき. 2 仕事につき、被保護者がいきいきと して自立していく様子を見ることが できたとき. 特になし 3 就職し、自立していくケース. 「就 職決まったよ」と報告に来てくれた とき. 自分がかわることで、被保護者がこのままで

参照

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